JP5311380B2 - 難燃性エポキシ樹脂及びその製造方法 - Google Patents
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Description
硬化前のエポキシ基を含む化合物は、低分子又は中分子量物質で、固体状態のものもあるが、多くは液状である。エポキシ基を含む化合物は、種々の硬化剤により、エポキシ基(オキシラン)の開環による高分子化と架橋反応が起こり硬化した樹脂を与える。なお、一般に「エポキシ樹脂」といった場合、硬化前のエポキシ基を有する化合物を指す場合と、硬化後の樹脂を指す場合があるが、ここでは、硬化前の液状または固体状のエポキシ基を有する化合物を、「エポキシ化合物」と称し、硬化後のものを、「(エポキシ)硬化樹脂」と称することとする。
得られたエポキシ硬化樹脂は、大気下で燃焼性を有するため難燃化が重要な課題であるが、これらの従来の硬化剤には、硬化樹脂に難燃性を付与できる元素(塩素や臭素などのハロゲン、またはリンなど)が含まれず、また一般のエポキシ化合物も同様に難燃性を付与するような元素を含まないため、得られるエポキシ硬化樹脂は難燃性に乏しい材料である。
しかし、燃焼の際にハロゲン化水素等の有害な物質であるハロゲン化物を生成するという問題がある。この問題を解決するため、特許文献2,3では、エポキシ樹脂にリン化合物を反応せしめたものを用いることが提案されている。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、低い製造単価で、難燃性のエポキシ硬化樹脂の製造を可能とすることを目的とするものである。
このフィチン酸は、多価アルコールであるイノシトールのヘキサリン酸エステル構造を持つ強酸性の物質である。リン酸に比べて遙かに強い酸性を示すが、天然物であるが故に、簡単な中和により廃棄ができるので、フィチン酸塩は酸化防止剤などとして、食品や化粧品の添加物として用いられている。
本発明者らは、上記課題を解決するために更に鋭意検討を重ね、グリセリンなどのアルコール類を含むエポキシ化合物を、植物由来の物質であるフィチン酸を酸触媒としてカチオン重合させるとともに、フィチン酸を化学結合させることによりリン含有難燃性エポキシ硬化樹脂を得ることが出来ることを見いだした。また、フィチン酸を、油脂のエステル交換反応の酸触媒として用いることにより、フィチン酸を含むグリセリンを製造した場合には、この混合物からも難燃性エポキシ硬化樹脂を得ることができることも判明した。
[1]エポキシ化合物、及び水分を除去したフィチン酸−アルコール混合物を含有することを特徴とする硬化性組成物。
[2]前記アルコールが、グリセリンであることを特徴とする前記[1]の硬化性組成物。
[3]エポキシ化合物に、水分を除去したフィチン酸−アルコール混合物を混合して
フィチン酸を反応せしめてなることを特徴とする難燃性エポキシ硬化樹脂。
[4]前記アルコールが、グリセリンであることを特徴とする前項[3]の難燃性エポキシ硬化樹脂。
[5]エポキシ化合物に、水分を除去したフィチン酸−アルコール混合物を添加して混練した後、得られた混合物を室温又は加温下で放置して硬化させることを特徴とするエポキシ硬化樹脂の製造方法。
[6]前記アルコールが、グリセリンであることを特徴とする前記[5]のエポキシ硬化樹脂の製造方法。
[7]油脂と低級アルコールの混合物にフィチン酸を添加してエステル交換反応により脂肪酸エステルとグリセリンを生成せしめた後、得られた脂肪酸エステルを蒸留除去し、蒸気圧の低いフィチン酸とグリセリンの混合物を得、これにエポキシ化合物を混合し、得られた混合物を室温又は加温下で放置して硬化させることを特徴とするエポキシ硬化樹脂の製造方法。
具体的には、二官能性エポキシ化合物として、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビス[4−(グリシジルオキシ)フェニル]メタン(ビスフェノールFジグリシジルエーテル)、ヘキサヒドロビスフェノールAジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレンルグリコールジグリシジルエーテル、などが挙げられる。三官能性エポキシ化合物として、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートなどが挙げられる。四官能性エポキシ化合物として、4,4´−メチレンビス(N,N−ジグリシジルアニリン)、テトラグリシジルメタエチレンジアミンなどが挙げられる。また、3.4−エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート等の脂環式エポキシ化合物やエポキシ化大豆油、なども用いることができる。
(実施例1)
フィチン酸50%水溶液1重量部をグリセリン1重量部に混合し、混合物を60℃で2時間、減圧下で攪拌し、フィチン酸中に含まれていた水分を除いた。
また、ビスフェノールAジグリシジルエーテル9重量部とトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル1重量部とを混合し、攪拌により均質に混和し、エポキシ混合物を調製した。
先に調製したフィチン酸−グリセリン混合物の1重量部と、エポキシ混合物の1.5重量部とを攪拌により均質に混練した。
この混練物を金型に流し、12時間静置し、硬化物を得た。続いて硬化物を150℃の恒温室内で1時間加熱処理を行い、半透明樹脂を得た。硬化物は大気下で着火性を持たなかった。
フィチン酸50%水溶液1重量部をグリセリン1重量部に混合し、混合物を60℃で2時間、減圧下で攪拌し、フィチン酸中に含まれていた水分を除いた。調製したフィチン酸−グリセリン混合物の1重量部と、ビスフェノールFジグリシジルエーテルの3.87重量部とを攪拌により均質に混練した。
この混練物を金型に流し、80℃で1時間、続いて150℃で1時間加熱処理を行い、白色樹脂を得た。硬化物は大気下で着火性を持たなかった。
フィチン酸50%水溶液1重量部をエチレングリコール1重量部に混合し、混合物を60℃で2時間、減圧下で攪拌し、フィチン酸中に含まれていた水分を除いた。調製したフィチン酸−エチレングリコール混合物の1重量部と、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの4.68重量部とを攪拌により均質に混練した。
この混練物を金型に流し、80℃で1時間、続いて150℃で1時間加熱処理を行い、半透明樹脂を得た。硬化物は大気下で着火性を持たなかった。また、得られた樹脂の、示差走査熱量計によるガラス転移温度は、57.3℃であった。
フィチン酸50%水溶液3重量部をエチレングリコール1重量部に混合し、混合物を60℃で2時間、減圧下で攪拌し、フィチン酸中に含まれていた水分を除いた。また、ビスフェノールAジグリシジルエーテル8重量部とトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル2重量部とを混合し、エポキシ化合物混合液を調製した。
先に調製したフィチン酸−エチレングリコール混合物の1重量部とエポキシ化合物の混合液の2重量部とを攪拌により均質に混練した。
この混練物を金型に流し、80℃で1時間、続いて120℃で1時間加熱処理を行い、半透明樹脂を得た。硬化物は大気下で着火性を持たなかった。
フィチン酸50%水溶液1重量部と1,3−プロピレングリコール1重量部を混合し、混合物を60℃で2時間、減圧下で攪拌し、フィチン酸中に含まれていた水分を除いた。この混合物7.4重量部に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル28重量部を混合し、攪拌により均質に混練した。
この混練物を金型に流し、80℃で1時間、次いで150℃で1時間加熱処理を行い、半透明の硬化物を得た。また、得られた樹脂の示差走査熱量計によるガラス転移温度は、49.7℃であった。さらに、この樹脂について、JIS規格(JISK7201)の方法に準拠して限界酸素指数を測定したところ、24.1%(標準偏差0.45%)であった。
フィチン酸50%水溶液5.28g(4mmol)とトリメチロールプロパン3.22g(24mmol)とを混合し、60℃に加温しながら2時間、真空下で水分を除去した。ビスフェノールAジグリシジルエーテル20.4gを加え混練した。
混練物を金型に流し、45℃に1時間、さらに120℃で1時間加熱することにより、半透明の硬化物を得た。得られた樹脂の示差走査熱量計によるガラス転移温度は、65.0℃であった。
Claims (7)
- エポキシ化合物、及び水分を除去したフィチン酸−アルコール混合物を含有することを特徴とする硬化性組成物。
- 前記アルコールが、グリセリンであることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
- エポキシ化合物に、水分を除去したフィチン酸−アルコール混合物を混合してフィチン酸を反応せしめてなることを特徴とする難燃性エポキシ硬化樹脂。
- 前記アルコールが、グリセリンであることを特徴とする請求項3に記載の難燃性エポキシ硬化樹脂。
- エポキシ化合物に、水分を除去したフィチン酸−アルコール混合物を添加して混練した後、得られた混合物を室温又は加温下で放置して硬化させることを特徴とするエポキシ硬化樹脂の製造方法。
- 前記アルコールが、グリセリンであることを特徴とする請求項5に記載のエポキシ硬化樹脂の製造方法。
- 油脂と低級アルコールの混合物にフィチン酸を添加してエステル交換反応により脂肪酸エステルとグリセリンを生成せしめた後、得られた脂肪酸エステルを蒸留除去し、蒸気圧の低いフィチン酸とグリセリンの混合物を得、これにエポキシ化合物を混合し、得られた混合物を室温又は加温下で放置して硬化させることを特徴とするエポキシ硬化樹脂の製造方法。
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