以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る現金自動取引装置(ATM)の外観を示す斜視図である。
この図に示す現金自動取引装置101は、利用者から入金(投入)された紙幣を内部に保管するとともに、内部に保管されている紙幣を利用者へ出金(放出)するもので、上部正面板101aと、装置筐体101bと、紙幣入出金機1と、金庫筐体106と、入出金口(開口部)21と、顧客操作部105と、カード・明細票処理機構102を備えている。なお、以下においては、図1中の矢印に示すように、紙面手前側を装置前側と、紙面奥側を装置後側と、紙面上側を装置上側と、紙面下側を装置下側と、紙面右側を装置右側と、紙面左側を装置左側と称することがある。
紙幣入出金機1は、紙幣を処理するもので、装置筐体101bの内部に設けられている。紙幣入出金機1の下部には紙幣が保管される下部紙幣機構1b(後述)が設けられている。下部紙幣機構1bは装置筐体101bとは別の鉄板(例えば、厚さ数十mm)で形成された金庫筐体106で囲まれている。装置筐体101bも堅固な筐体構造であるが、金庫筐体106はさらに堅固な構造で形成されており、現金自動取引装置101のセキュリティを高めている。
入出金口(開口部)21は、利用者が紙幣の投入及び放出を行うために設けられた開口部であり、装置前側(正面側)の表面に設置された上部正面板101aに設けられている。入出金口21の紙幣の厚み方向の大きさは利用者の手が入る程度に確保することが好ましい。入出金口21の内側には投入及び放出される紙幣を処理する入出金口機構20(後述)が設けられている。
顧客操作部105は、取引の内容を表示および入力するもので、装置筐体101bの上部における左側に設けられている。カード・明細票処理機構102は、上部正面板101aに設けられたカードスロット102aを介して利用者のカードを処理したり、取引明細票を印字して放出したりするもので、装置筐体101bの上部内部における右側に設けられている。
図2は現金自動取引装置101の制御関係を示す制御ブロック図である。
この図に示すように、カード・明細票処理機構102と、紙幣入出金機1と、顧客操作部105は、バス107aを介して本体制御部107と接続されており、本体制御部107の制御の下に必要な動作を行う。本体制御部107は、バス107aを介して、さらに、インターフェース部107b、係員操作部107c、及び外部記憶装置107dと接続されており、これらと必要なデータのやりとりを行っている。電源部101eは、現金自動取引装置101における上記各機構及び構成部分に電力を供給している。
ここで本発明の実施の形態における主要部である入出金口機構について図を用いて説明する。
図3は第1の実施の形態に係る入出金口機構の構成を示す側面図であり、図4はその斜視図である。
これらの図における入出金口機構20は、利用者が入出金口21を通じて紙幣を入出金方向202へ入出金できるように構成されている。入出金口機構20は、装置101内における入出金口21の下方に設けられた収納部204を備えている。収納部204は、(1)入出金口21を介して投入された紙幣を内部で保管する前に一時的に収納する機能と、(2)内部で保管された紙幣を入出金口21を介して放出する前に一時的に収納する機能を有する。収納部204は、主に、前板203bと、押板(後板)203aと、底板601で構成されている。
前板203bは、収納部204における装置前側の壁面を形成するもので、装置101の前後方向に移動可能に設けられている。前板203bが移動する位置には、(1)収納部204内に紙幣を受け入れるときの位置(図3における実線で示した位置で、以下、「入出金位置」と称することがある)と、(2)入出金位置から下端を装置前側に移動させた位置であって、収納部204に受け入れた紙幣を装置内部に取り込むときの位置(図3における破線で示した位置で、以下、「取込位置」と称することがある)がある。前板203bを取込位置に移動させると、収納部204は紙葉類取込口206と連通される。紙葉類取込口206は、紙幣が収納部204から装置101内部に取り込まれる際に通過する部分であり、紙幣搬送路501a(後述)と接続されている。紙葉類取込口206に取り込まれる場合、紙幣は、押板203a等によって適度な押圧力をかけられた状態でピックローラ205aに一枚ずつピックされ、分離ローラ205bによって取り込まれる。分離ローラ205bの後側に設置されたゲートローラ205cは、分離ローラ205bとラップすることで紙幣の重送を防止している。
押板203aは、収納部204における装置後側の壁面を形成するもので、前板203bと対向配置されている。また、押板203aは、アクチュエータ(図示せず)等によって装置101の前後方向(図3の矢印213方向)に移動可能に設けられている。押板203aが移動する位置には、(1)収納部204内に紙幣を受け入れるときの位置(図3における実線で示した位置で、以下、「入出金位置」と称することがある)と、(2)入出金位置から装置後側に移動した位置であって、装置101内部から紙幣を取り出すときの位置(図3における破線で示した位置で、以下、「取出位置」と称することがある)がある。押板203aを取出位置に移動させると、収納部204は紙葉類取出口208と連通される。紙葉類取出口208は、紙幣が装置101内部から収納部204に取り出される際に通過する部分であり、紙幣搬送路501l(後述)と接続されている。スタックローラ207によって紙葉類取出口208を介して取り出される紙幣としては、利用者が出金の要求をして出されるものの他に、内部の紙幣判別部30(後述)で異常があると判定された場合(例えば、紙幣の金種が読み取り不可能だった等)に返却(リジェクト)されるものがある。なお、返却された紙幣と、取り込み中(分離中)の紙幣は、底板601の上面に設置された仕切板600によって仕切られる。仕切板600は押板203aと同様に矢印方向213に動作可能である。また、押板203aは、装置前側における任意の位置まで移動することができ、入出金口21から収納部204に投入された紙幣に対して、適度な押圧力を掛けられるようになっている。
底板601は、収納部204に収納された紙幣の下端を支持する部分で、入出金口21の下方において収納部204の底面を形成している。本実施の形態における底板601は、収納部204に導入された紙幣を前板203b側に寄せるために、装置前側に下るように傾斜している。また、底板601にはスリット(図示せず)が切られており、そのスリットの下方には異物受箱602が配置されている。このようにスリットを設けると、紙幣とともに入り込んだ異物を重力によって異物受箱602に落下させることができるので、装置101内に異物が侵入することを防止できる。
入出金口21と底板601との間には、前クランプ209と後クランプ210が装置前後方向において対向して配置されている。前クランプ209と後クランプ210は、入出金口21を介して投入及び放出される紙幣を搬送ベルト300,400で狭持して入出金口21又は収納部204に向かって一括搬送する一対の搬送手段であり、前クランプ209は装置前側に、後クランプ210は装置後側に設置されている。
前クランプ209は、上下方向の異なる位置に設けられた2つの搬送プーリ(前クランプ搬送プーリ)404,405と、2つの搬送プーリ404,405に掛け回され紙幣を搬送する搬送ベルト(前クランプベルト)400と、2つの搬送プーリ404,405を回転させて搬送ベルトを循環駆動するモータM1(駆動源)を備えている。詳細は後述するが、本実施の形態における搬送プーリ404,405は、モータM1によって間接的に回転されている。
本実施の形態における前クランプ209は、紙幣を安定して搬送するために、図4に示すように装置左右方向に間隔を介して配置された2本の搬送ベルト400によって構成されている。この2本の搬送ベルト400を駆動する2つの搬送プーリ405は、同一の駆動軸420(図5参照)に固定されており、駆動軸420には第1駆動プーリ411(図5参照)が固定されている。第1駆動プーリ411の装置前側には第2駆動プーリ412が設置されており、第2駆動プーリ412の下方には第3駆動プーリ413が設置されており、第3駆動プーリ413の装置前側には第4駆動プーリ414が設置されている。第1駆動プーリ411と第2駆動プーリ412には第1駆動ベルト403が掛け回されており、第2駆動プーリ412と第3駆動プーリ413には第2駆動ベルト402が掛け回されており、第3駆動プーリ413と第4駆動プーリ414には第3駆動ベルト401が掛け回されている。
第4駆動プーリ414はモータM1と連結されており、モータM1は駆動ベルト401,402,403を介して間接的に搬送プーリ405を回転させている。ここでは、搬送ベルト400で紙幣を収納部204に向かって搬送するときの搬送プーリ405の回転方向を正転方向R1(後の図7参照)とし、紙幣を入出金口21に向かって搬送するときの回転方向を反転方向R2(後の図9参照)とする。
搬送プーリ404,405及び駆動プーリ411,412,413は、それぞれの相対位置が一定に保持されるように固定部材(図示せず(例えば板材))に固定されている。第3駆動プーリ413は前クランプ209の回動軸になっており、搬送プーリ404,405及び駆動プーリ411,412は第3駆動プーリ413を中心に矢印212方向に回動可能に構成されている。これにより前クランプ209は、(1)紙幣を搬送するときの位置(図3における実線で示した位置で、以下、「搬送位置」と称することがある)と、(2)収納部204から待避するときの位置(図3における破線で示した位置で、以下、「待避位置」と称することがある)に移動可能となっている。すなわち、前クランプ209は、後クランプ210とともに紙幣を狭持する方向と、紙幣の狭持を解除する方向とに移動可能である。このような前クランプ209の回動移動を可能にするために、前板203bには、図4に示すように前クランプ209(搬送ベルト400)が通過する溝部416bが設けられている。
ところで、搬送ベルト400が掛け回されている2つの搬送プーリ404,405が上記のように固定部材に固定されている関係上、入出金口21から投入及び放出される紙幣の姿勢は、「搬送位置」における当該2つの搬送プーリ404,405の配置によって主に規定される。したがって、利用者にとっての紙幣の投入及び受け取り易さを向上する観点からは、搬送位置において上側の搬送プーリ405が下側の搬送プーリ404よりも装置前側に位置するように固定することが好ましい。このように搬送プーリ404,405を固定すると、紙幣が垂直方向ではなく利用者に向かって搬送されるので、利用者のスムースな入金及び出金を促進することができるからである。
なお、上記のように前クランプ209を回動させるための駆動力としては、第3駆動プーリ414に連結されたアクチュエータ(図示せず)からの駆動力や、紙幣を介して伝達される後クランプ210からの押圧力等が利用可能である。また、前クランプ209の位置を検出する位置検出手段としては、複数対で構成される光学式センサS4(図3参照)を設置することが好ましい。例えば、前クランプ209が搬送位置に移動したときにセンサ光軸が遮られるようにセンサS4を設置すれば、前クランプ209が搬送位置に位置することを検出することができる。
また、本実施の形態の前クランプ209には、後クランプ210の方向に付勢力を付与する付勢手段(例えば、ばね)700が取り付けられている。本実施の形態における付勢手段は、搬送プーリ404,405及び駆動プーリ411,412,413の相対位置を固定する固定部材に取り付けられている。このように付勢手段700を取り付けると、後クランプ210とともに紙幣を狭持して搬送するときであって、当該紙幣を介して後クランプ210からの押圧力を受けて装置前側に移動したときに、その移動量に応じた圧力を紙幣に付与することができる。これにより紙幣を狭持する力を向上することができ、紙幣を安定して搬送することができる。
なお、ここでは搬送ベルト400を装置左右方向に2つ設置した例について説明したが、装置左右方向に1つ設置するだけでも良い。搬送ベルト400を1つにする場合には、紙幣を安定して搬送する観点から、各搬送プーリ404,405の軸方向長さを長くし、搬送ベルト400の幅を広くすることが好ましい。
次に、後クランプ210の構成について説明する。図5は後クランプの構成を示す斜視図である。
後クランプ210は、上下方向の異なる位置に設けられた2つの搬送プーリ(後クランプ搬送プーリ)306,307と、2つの搬送プーリ306,307に対して装置後側に設けられた駆動プーリ(後クランプ駆動プーリ)303と、搬送プーリ306,307及び駆動プーリ303に掛け回され紙幣を搬送する搬送ベルト(後クランプベルト)300と、搬送プーリ306,307及び駆動プーリ303を回転させて搬送ベルトを循環駆動するモータM5(駆動源)(図5参照)を備えている。
上側の搬送プーリ307と駆動プーリ303は、互いの相対位置が一定に保持されるようにブラケット309(図5参照)に固定されている。ブラケット309はスライドプレート305から突出した部材である。スライドプレート305は、搬送プーリ306,307及び駆動プーリ303を支持する部材であり、装置101内を前後方向に移動可能に設けられている。スライドプレート305を前後移動させると、後クランプ210を矢印方向213(すなわち、前クランプ209とともに紙幣を狭持する方向と、紙幣の狭持を解除する方向)に移動させることができる。これにより後クランプ210は、(1)紙幣を搬送するときの位置(後の図7に示した位置で、以下、「搬送位置」と称することがある)と、(2)収納部204から待避するときの位置(図3における破線で示した位置で、以下、「待避位置」と称することがある)に移動可能となっている。後クランプ210の位置を検出する位置検出としては、前クランプ209と同様に、複数対で構成される光学センサを設置することが好ましい。また、押板203aには、図4に示すように後クランプ210(搬送ベルト300)が通過する溝部416aが設けられている。
搬送位置における後クランプ210の下側の搬送プーリ306は、後述の図7に示すように、前クランプ209の下側の搬送プーリ404と接触している。これにより搬送ベルト300及び搬送ベルト400によって略V字状の凹部が形成され、利用者は当該凹部に紙幣を投入することができる。また、搬送位置における搬送プーリ306,404の高さは、当該凹部に紙幣が投入されて搬送ベルト300,400が紙幣の下端を支持している場合において、その紙幣の一部が入出金口21を介して外部に露出する程度に調節されている。
ところで、本実施の形態における後クランプ210は、紙幣を安定して搬送するために、装置左右方向に間隔を介して配置された2本の搬送ベルト300によって構成されている。2本の搬送ベルト300を駆動する2つの駆動プーリ303はそれぞれ駆動軸301に固定されており、駆動軸301はモータM5と連結されている。ここでは、搬送ベルト300で紙幣を収納部204に向かって搬送するときの搬送プーリ307の回転方向を正転方向R1(後の図7参照)とし、紙幣を入出金口21に向かって搬送するときの回転方向を反転方向R2(後の図9参照)とする。
なお、下側の搬送プーリ306は、上側の搬送プーリ307とリンク部材310(図5参照)を介して連結し、上側の搬送プーリ307の軸心を中心に矢印215方向(図3参照)に回動可能とすることが好ましい。このように構成して、後クランプ210を搬送位置から装置前側にさらに移動させると、搬送プーリ306が装置後側に回動し、2つの搬送ベルト300,400における紙幣側の面を互いに略平行にすることができるからである。このように2つの搬送ベルト300,400を略平行にした姿勢で紙幣を搬送すると、紙幣に対して搬送ベルト300,400を面接触させることができるので、紙幣を安定して搬送することができる。さらにこの場合、リンク部材310には、リンク部材310に前クランプ209の方向へ付勢力を付与する付勢手段(例えば、ばね)311(図3参照)を取り付けることが好ましい。これにより、前クランプ209同様、後クランプ210の位置に応じた圧力を紙幣に付与できるので、紙幣をさらに安定して搬送することができるからである。
また、本実施の形態では、2つの搬送プーリ306,307と1つの駆動プーリ303に1本の搬送ベルト300を掛け回して後クランプ210を構成した。しかし、先述した前クランプ209のように、搬送ベルト300を2つの搬送プーリ306,307のみに掛け回し、別のベルト(駆動ベルト)を駆動プーリ303と搬送プーリ307に掛け回し、駆動プーリ303を直接又は間接的にモータM5で回転させることで搬送ベルト300を循環駆動させても良い。
ここで図5を参照して後クランプ210の移動機構について説明する。
図5に示すように、スライドプレート305の左右にはフレーム603がそれぞれ設置されている。フレーム603の外側には、装置前後方向において互いに間隔を介して配置された2つのプーリ304が取り付けられている。これら2つのプーリには駆動ベルト308が掛け回されており、一方のプーリ304に連結されたモータM4を駆動させると駆動ベルト308は循環駆動される。また、2つの駆動プーリ304の間には装置前後方向に延びるスライド溝604が設けられている。スライド溝604にはスライドプレート305の側面から突出した2本の軸がそれぞれ挿入されており、一方の軸の端部には転動プーリ302が取り付けられている。転動プーリ302は、駆動ベルト308上に回転可能に載置されており、モータM4の回転方向に応じて駆動ベルト308上を転動する。この構成により後クランプ210を矢印213の方向、すなわち搬送位置と待避位置に移動させることができる。
ここで図3に戻る。図3に示す入出金口機構20には、内部における紙幣の位置を検出するセンサS1と、センサS3が設けられている。センサS1,S3は、光学式センサであり、各センサから発せられる光軸が紙幣によって遮られたか否かで紙幣の位置を検出している。センサS1は、紙幣が搬送ベルト300,400近傍に位置するか否か(すなわち、入出金口21への紙幣の投入及び放出の完了)を判定するもので、搬送プーリ306,404と入出金口21の間に光軸を発するように設置されている。センサS3は、紙幣が収納部204に収納されたか否かを判定するもので、底板601と搬送プーリ306,404の間に光軸を発するように設置されている。
また、入出金口21には、アクチュエータM3によって、入出金方向202と交差する方向へスライドして入出金口21を開閉するシャッタ201が設けられている。シャッタ201は、装置101内に雨や埃、異物等の進入を防ぐためのものであるが、装置101を室内に設置する等して環境の影響を受けにくい場合等は設けなくても良い。また、外環境の影響を著しく受けやすい場所に設置する際には、現金自動取引装置101の装置筐体101bと紙幣入出金機1にそれぞれシャッタを設けて、2重シャッタ構造にしてもよい。
次に上記のように構成される入出金口機構20の入金時における動作について説明する。
図6は本実施の形態に係る入出金口機構20の入金時のフローチャートであり、図7はこのフローチャートにおいて紙幣が収納部204に搬送され始めたとき(後述のステップ105開始直後)における入出金口機構20の構成図である。
処理開始時には前クランプ209及び後クランプ210は待避位置にあるものとする。本体制御部107において利用者が入金することが確認できたら、図6に示すように、まず、前クランプ209が搬送位置に移動する(ステップ101)。なお、ステップ101の処理に先駆けて、入金準備として、図7に示すように押板203a及び前板203bを入出金位置に移動させておくことが好ましい。
ステップ101が完了したら、後クランプ210が搬送位置に移動し、搬送プーリ306を搬送プーリ404に接触させる(ステップ102)。ステップ102が完了したら、シャッタ201を開いて入出金口21を開口し、利用者からの紙幣218の投入を待つ(ステップ103)。紙幣の投入の判断は、センサS1の光軸が紙幣によって遮られたか否か(ダークかライトか)で行う(ステップ104)。ここにおいて、搬送位置における搬送プーリ306,404の高さは、投入された紙幣の一部が入出金口21を介して外部に露出する程度に調節されているので、利用者は手指を入出金口21内に入れることなく紙幣を投入することができる。
ステップ104において、センサS1がライトからダークになって紙幣218が投入されたことが確認できたら、搬送プーリ307,405が正転方向R1に回転するようにモータM1,M5が作動し、収納部204への紙幣218の一括搬送を開始する(ステップ105)。このとき、後クランプ210における搬送プーリ306(リンク部材310)は、付勢手段311によって前クランプ209の方向に付勢されているので、紙幣218を前クランプ209と挟持しながら搬送することができる。このように付勢手段311を利用すると、紙幣218の取り込みと同時に紙幣が装置内部に引っ張り込まれる感触を利用者に与えることができる。また、ATMを設置する国や地域によっては入金枚数が多くなったり、紙幣の摩擦係数が低かったりするが、その場合には、より安定した紙幣の搬送を可能とするために狭持力を適宜調節すれば良い。なお、搬送プーリ306を搬送プーリ307に対して矢印215方向に回動可能に設けている場合には、紙幣の搬送を開始する前に、後クランプ210をさらに装置前側に移動させて、紙幣を挟んだ姿勢で搬送ベルト300と搬送ベルト400を平行にしても良い。このようにすると紙幣を安定して搬送することができるとともに、上記の紙幣が装置内部に引っ張り込まれる感触をさらに強調することができる。
紙幣218が収納部204に収納されたかどうかは、センサS1がダークからライトになったかどうか、若しくは、センサS3がライトからダークになったかで判断する(ステップ106)。なお、例えば、処理速度向上等の理由でその後の動作タイミングを早めるときには、紙幣検出をセンサS1で行うことが好ましい。
紙幣218が収納部204に収納されたことが確認できたら、モータM1,M5が停止して、搬送ベルト300,400の駆動が停止する(ステップ107)。搬送ベルト300,400の駆動が停止したら、シャッタ201は入出金口21を閉じる(ステップ108)。そして、前クランプ209及び後クランプ210は待避位置へ移動し収納部204の外へ退避して(ステップ109)、処理が終了する。
上記のように入金紙幣の収納部204への収納が終了したら、前板203bを取込位置に移動し、紙幣218の装置内への取込の準備をする。投入された紙幣218は立位状態で収納部204に集積されるので、たとえ投入前にスキューされた状態であったとしても、収納部204の底板601に紙幣218が突き当たった時にスキューを修正することができる。また、紙幣218内に硬貨等の異物が紛れ込んでいたとしても、その異物は垂直方向に配置された異物受箱602に集積することができる。スキューの修正及び異物の除去がなされた紙幣218は、押板203aによって適度の押圧力を付与された状態でピックローラ205aに一枚ずつピックされ、分離ローラ205によって一枚ずつ分離されて装置内に取り込まれる。ここで、投入された紙幣218の状態をセンサS3で検知することでスキューしていると判断された場合には、その投入された紙幣を利用者に返却しても良い。
次に上記のように構成される入出金口機構20の出金時における動作について説明する。
図8は本実施の形態に係る入出金口機構20の出金時のフローチャートであり、図9はこのフローチャートにおいて前クランプ209及び後クランプ210が搬送位置に移動したとき(後述のステップ205完了時)における入出金口機構20の構成図である。
本体制御部107において利用者が出金することが確認できたら、図8に示すように、まず、前クランプ209が待避位置に移動する(ステップ201)。なお、ステップ201の処理に先駆けて、出金準備として、図9に示すように押板203aを取出位置に移動させ、前板203bを入出金位置に移動させておくことが好ましい。
ステップ201が完了したら、後クランプ210が待避位置に移動し(ステップ202)、スタックローラ207を回転させることで装置101の内部から紙幣(出金紙幣)218を収納部204に集積する(ステップ203)。出金要求額を満たす枚数の紙幣218が収納部204に集積されたことが本体制御部107等で判断できたら、前クランプ209が搬送位置に移動し(ステップ204)、後クランプ210が搬送位置に移動する(ステップ205)。これにより、紙幣218は前クランプ209及び後クランプ210によって狭持され、紙幣218には一定の圧力または紙幣枚数や紙幣状態に応じた圧力が付加される。なお、図9では搬送プーリ306を搬送プーリ307に対して回動可能に設けた場合を示している。すなわち、紙幣を安定して搬送するために、後クランプ210を搬送位置から装置前側にさらに移動させて、搬送ベルト300と搬送ベルト400を平行にしている。しかし、搬送プーリ306を回動可能に設けることなく、搬送ベルト300と搬送ベルト400でV字を形成した状態で紙幣を搬送しても勿論良い。
ステップ205が完了したら、シャッタ201を開いて入出金口21を利用者に開口する(ステップ206)。ステップ206が完了したら、搬送プーリ307,405が逆転方向R2に回転するようにモータM1,M5が作動し、搬送ベルト300,400の駆動が開始される。これにより入出金口21への紙幣218の一括搬送が開始される(ステップ207)。ステップ207が開始したら、紙幣の放出が完了したか否か、すなわち、紙幣218の一部が入出金口21を介して外部に露出したか否かの判断を行う(ステップ208)。この判断は、センサS1がライトからダークになったか、若しくは、センサS3がダークからライトになったかで判断する。すなわち、紙幣が入出金口21から露出する程度は、例えば、センサS1又はセンサS3の位置で調節可能である。これにより紙幣の放出が完了したと判断されたら、搬送ベルト300,400の駆動が停止する(ステップ209)。これにより、利用者は手指を入出金口21の中に入れることなく紙幣を受け取ることが可能となる。
なお、このとき、入出金口21から紙幣を突出させる程度や強風等の装置設置環境によって、前クランプ209及び後クランプ210に挟持されている紙幣が飛散する場合には、後クランプ210を矢印213a方向に移動させる等して、紙幣を狭持する力を増加することが好ましい。また、紙幣状態が悪く、利用者が紙幣を受け取る際に紙幣が破れる場合は、反対に紙幣を狭持する力を低減することが好ましい。
ステップ209が完了したら、利用者による紙幣の抜き取りが完了したか否かの判断を行う(ステップ210)。ここでは、センサS1がダークからライトになったら紙幣の抜き取りが完了したと判断する。これによりステップ210で紙幣の抜き取りが完了したと判断されたら、シャッタ201を閉じて処理を終了する(ステップ211)。
なお、入金途中に発生したリジェクト紙幣を利用者に返却する場合は、上記と同じ動作で返却する。リジェクトが発生した段階で、なんらかの理由で紙幣の分離が停止した場合には、リジェクト紙幣と未取り込みの紙幣が仕切り板600の前後に存在することがある。しかし、その場合でも、前クランプ209及び後クランプ210を利用して仕切板600の前後に存在する紙幣を一括して狭持し、入出金口21に向かって搬送すれば良い。
また、上記では、前クランプ209及び後クランプ210を動作させることで、入出金時に利用者が手指を入出金口21の中に入れることなく紙幣を受け取ることができるように構成したが、本体制御部107のプログラムを変更する等して前クランプ209及び後クランプ210を動作させないモード(通常モード)にも変更可能に装置101を構成することが好ましい。すなわち、当該モードに変更した場合には、前クランプ209及び後クランプ210を待避位置に移動させて、利用者が収納部204に対して直接入金したり出金したりすることになる。このようにモード変更可能に装置101を構成すると、例えば、ATMを設置する国や地域に合わせたモードを採用することができるし、前クランプ209及び後クランプ210の動作に不具合がある場合にも利用者と確実な紙幣の受け渡しを行うことができる。
以上説明したように、本実施の形態に係る紙葉類取扱装置は、入出金口21と底板601との間に対向配置され、入出金口21を介して入出金される紙幣を狭持して入出金口21又は収納部204に向かって一括搬送する前クランプ209及び後クランプ210を備えており、当該前クランプ209及び後クランプ210は、入金の場合に、入金紙幣の一部が入出金口を介して外部に露出するように紙幣を支持し、その後、当該支持した紙幣を狭持して収納部204に向かって搬送している。
このように紙葉類取扱装置を構成すると、紙幣の入出金口21から露出している部分を介して入金することができるようになり、いわゆるポケット式の入出金口を備える装置において利用者が装置内に手指を入れることなく入金することができる。したがって、本実施の形態によれば、紙幣の投入時に生じるおそれがある心理的負担を軽減することができる。
また、本実施の形態では投入された紙幣の端面を底板601で整列させることができるので、様々なサイズや姿勢で紙幣を入金してもスキューを防止することができる。したがって、その後の装置内での紙幣搬送の場面において、ジャムやリジェクトの発生を防止することができ、信頼性の高い装置を提供することができる。さらに、底板601で紙幣の端面を揃える際に、底板601に設けたスリットを介して紙幣に入り込んだ硬貨などの異物を除去することができる点も信頼性の向上に寄与する。
さらに、本実施の形態によれば、入金時において搬送ベルト300及び搬送ベルト400によって形成される略V字状の凹部に対して紙幣を投入することができるので、紙幣端部が広がる場合(例えば紙幣を複数枚投入する時)にも容易に投入可能である点もメリットである。
また、本実施の形態では、一対の搬送手段のうちの一方である後クランプ210が、紙幣を挟持する方向と、当該挟持を解除する方向とに移動可能に構成されている。例えば、箱状に設けた収納部(紙幣ホッパー)を装置前後方向に回動可能に設け、重力を利用して当該箱の一辺に紙幣を集めて入出金を行っている技術(特開2000−172903号公報等参照)があるが、本実施の形態は、収納部の回転動作を利用した当該技術と比較して、後クランプ210の動作領域がコンパクトである。したがって、当該技術と比較して、装置の小型化、集積容量の大型化を図ることができる点もメリットである。なお、上記の説明では、前クランプ209は回動可能に設けたが、後クランプ210と同様に、紙幣を挟持する方向と、当該挟持を解除する方向とに移動可能に設けても良い。
さらに、入金時のステップ104において入出金口21に紙幣を投入すると入出金口機構20は図5の状態となるが、このとき、前クランプ209及び後クランプ210は装置左右方向における中央付近で前板203b及び押板203aよりも紙幣側に配置されている。これにより装置前後方向における幅は開口部の中央付近よりも左右両端が大きくなり、前板203b及び押板203aと前クランプ209及び後クランプ210との間に段差Tが発生する。このように段差Tを設けると、投入される紙幣の枚数が多くて当該紙幣の両端が装置前後方向(矢印403方向)に広がっても、その広がりが邪魔にならないので紙幣の投入を容易に行うことができる。
ところで、本実施の形態に係る現金自動取引装置は、上記のように装置前後方向に移動する前板203b及び押板203aを備えており、これら前板203b及び押板203aを利用して紙幣の取り込みと取り出しを収納部204で一括して行うタイプのものである。そのため、この種のタイプの現金自動取引装置では、前板203b及び押板203aの移動を考慮して、前クランプ209及び後クランプ210を構成することが好ましい。そこで、本実施の形態では、前クランプ209の搬送ベルト400を駆動する駆動源(第4駆動プーリ414)を搬送ベルト400よりも装置前側に配置し、後クランプ210の搬送ベルト300を駆動する駆動源(駆動プーリ303)を搬送ベルト400よりも装置後側に配置することで、各搬送ベルト300,400の駆動源を搬送ベルト300,400から離れたところに配置している。すなわち、各クランプ209,210は、搬送ベルトを構成する2つの搬送プーリと、当該2つの搬送プーリに対して装置前後方向に間隔を介して配置された駆動プーリとの少なくとも3つのプーリによって構成されており、2つの搬送プーリと駆動プーリの間に前板203b又は押板203aの紙幣側の面が位置可能に構成されている。このように各クランプ209,210を構成し、各搬送ベルト300,400の駆動源が前板203b及び押板203aの背面側(紙幣側の面と反対方向側)に常に位置するように各クランプ209,210を移動すれば、前板203b及び押板203aの移動を考慮することなく搬送ベルト300,400の駆動源及びその近傍の設計を行うことができる。
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、入出金口21と底板601の間に紙幣の下端を支持するストッパ211と、センサS2を備えている点で先の実施の形態と異なる。
図10は本発明の第2の実施の形態に係る入出金口機構20Aの構成を示す側面図である。なお、先の実施の形態と同じ部分には同じ符号を付して説明は省略する。
この図に示す入出金口機構20Aは、ストッパ211と、センサS2を備えている。
ストッパ211は、入出金される紙幣の下端を支持するもので、入出金口21と底板601の間に設置されている。収納部204内におけるストッパ211の設置高さは、ストッパ211に下端を支持された紙幣の一部が入出金口21を介して外部に露出するように設定されている。これにより利用者が装置内に手指を入れることなく入出金を行うことができる。また、ストッパ211にはアクチュエータM3が接続されており、ストッパ211はアクチュエータM3によって収納部204から出没自在に設けられている。すなわち本実施の形態のストッパ211は、アクチュエータM3によって図10中の矢印214方向に移動され、(1)入出金口21を介して紙幣が投入及び放出されるときの位置(図10に示した位置で、以下、「入出金位置」と称することがある)と、(2)収納部204から待避するときの位置(以下、「待避位置」と称することがある)に移動可能となっている。なお、本実施の形態におけるストッパ211は、入出金口21の開口面と略平行に設置されている。
センサS2は、センサS1,S3と同様に紙幣の位置を検出する光学式センサであり、センサS1とストッパ211の間に設置されている。すなわち、センサS2がダークのときは、ストッパ211上に紙幣が載置されていると判定することができる。
上記のように構成される入出金口機構20Aの入金時における動作について説明する。
図11は本実施の形態に係る入出金口機構20Aの入金時のフローチャートである。
処理開始時には前クランプ209及び後クランプ210は待避位置にあるものとする。本体制御部107において利用者が入金することが確認できたら、図11に示すように、まず、前クランプ209が搬送位置に移動する(ステップ301)。なお、ステップ301の処理に先駆けて、入金準備として、図10に示すように押板203a及び前板203bを入出金位置に移動させておくことが好ましい。
ステップ301が完了したら、ストッパ211が入出金位置に移動する(ステップ302)。なお、ここで、処理開始時の前提と異なり、後クランプ210が搬送位置にある場合には待避位置に移動させる。また、後クランプ210は、待避位置でなくても、押し板203aにおける紙幣側の面(図中T面)の近傍に搬送プーリ307が位置するように移動させれば良い。
ステップ302が完了したら、シャッタ201を矢印217a方向に開いて入出金口21を開口し、利用者からの紙幣218の投入を待つ(ステップ303)。利用者は紙幣218を掴んでストッパ211に突き当たるまで入出金口21内に挿入する。この時、前述したように、ストッパ211の設置高さは、投入された紙幣の一部が入出金口21を介して外部に露出するように設定されているので、利用者は手指を入出金口機構20の中に入れる必要が無い。
紙幣の投入の判断は、センサS2の光軸が紙幣によって遮られたか否かで行う(ステップ304)。ここで、センサS2がライトからダークになって紙幣218が投入されたことが確認できたら、後クランプ210が搬送位置に移動して、前クランプ209とともに紙幣を狭持する(ステップ305)。なお、このとき、第1の実施の形態と同様に、前クランプ209及び後クランプ210に付勢手段を取り付けたり、後クランプ210の搬送プーリ306を回動可能に設けたりすれば、紙幣を狭持する力を増加でき紙幣を安定して搬送することができる。
後クランプ210が搬送位置に移動したら、ストッパ211が矢印214a方向に移動して収納部204から退避する(ステップ306)。そして、搬送ベルト300,400の駆動が開始し(ステップ307)、収納部204への紙幣の搬送が開始される。ステップ308以降の処理は、第1の実施の形態における入金時のステップ106以降の処理と同じなので省略する。
一方、出金時における動作について、第1の実施の形態の説明に用いた図8で説明する。本実施の形態における出金時の動作は、ステップ208までは第1の実施の形態と同じである。そして、ステップ208で紙幣の放出が完了したと判断されたら、ストッパ211を待避位置から入出金位置に移動させ、搬送ベルト300,400の駆動を停止する(すなわち図8のフローチャートのステップ209に戻る)。このようにストッパ211を利用すれば、入出金口21から紙幣が露出する程度を容易に一定に保つことができる。
搬送ベルト300,400の駆動を停止したら、利用者による紙幣の抜き取りが完了したか否かの判断を開始する(ステップ210)。ここで利用者による紙幣の抜き取りが完了したと判断されたら、シャッタ201を閉めるステップ211の前又は後でストッパ211を待避位置に移動し、処理を終了する。なお、本実施の形態でも第1の実施の形態同様に、前クランプ209及び後クランプ210を動作させない通常モードに変更可能に構成しても良いことはいうまでもない。
上記のように、ストッパ211を利用して紙幣の投入を行っても、利用者が装置内に手指を入れることがなくなるので、紙幣の投入時の心理的負担を軽減することができる。特に、本実施の形態は、ストッパ211の設置位置のみで紙幣が外部に露出する程度を調節できる点が第1の実施の形態に対するメリットとなる。
また、入金時のフローチャートのステップ301及びステップ305では、前クランプ209及び後クランプ210を搬送位置まで移動させているが、このとき、各クランプ209,210を搬送位置よりも板203b,203a側で停止させ、紙幣を投入する空間Q(図5参照)を第1の実施の形態よりも広くしても良い。このように空間Qを広くすると、入金可能枚数を増加することができ、例えば、日常的に入金枚数が多い国や地域で使用される場合にもATMの利便性を向上させることができる。なお、この場合、センサS1又はS2で紙幣の投入が確認できたら、前クランプ209及び後クランプ210を搬送位置に移動させて紙幣を狭持しても良い。
最後に紙幣入出金機構1について説明する。図12は紙幣入出金機1の構成図である。
紙幣入出金機1は、上部搬送機構1aと、上部搬送機構1aの下方に設けられた下部紙幣機構1bとから構成されている。下部紙幣機構1bは、金庫筐体106内に収納されている。
上部搬送機構1aは、利用者が紙幣の投入・取り出しを行う入出金口機構20と、紙幣の判別を行う紙幣判別部30と、入金した紙幣を取引成立までの間一旦収納する一時保管庫40と、利用者が入金時および出金時に取り忘れた紙幣を回収する取忘回収庫61と、偽券と判別された紙幣を収納する1ヶの偽券回収庫62と、リサイクル庫から回収した紙幣を収納する装填・回収庫81と、これらに紙幣を搬送する紙幣搬送路50(搬送路501a〜501q)を備えている。
紙幣搬送路50のうち、紙幣搬送路501a〜501f,501j〜501qは、上部搬送機構1a内において、入出金口機構20、紙幣判定部30、一時保管庫40、取忘回収庫61、偽券回収庫62、及び装填回収庫81を接続している。また、紙幣搬送路50のうち、搬送路501g〜501iは、上部搬送機構1aと下部紙幣機構1bとを連結する連結搬送路である。連結搬送路501hは、金庫筐体106(下部紙幣機構1b)の上面側であって、上部搬送機構1aにおける搬送路501gと連結する位置に設けられている。連結搬送路501iは下部紙幣機構1bの搬送路901a(後述)と連結する位置に設けられている。また、連結搬送路501hと連結搬送路501iは、互いに連結する位置に設けられている。ところで、金庫筐体106の上面には連結搬送路501iが通過するスリットが設けられている。当該スリットは、紙幣が通過するための長さを有しており、搬送されてきた紙幣を挟持して繰り出すために取り付けられた搬送プーリ(図示せず)の幅の大きさを有している。なお、下部紙幣機構1bを金庫筐体106で囲わない場合は、下部紙幣機構1b上に上部搬送機構1aが直接載置して当該スリットを省略しても良い。
一方、下部搬送機構1bは、入金取引が成立した紙幣を収納する1ヶの入金庫60と、出金に不適切な紙幣を収納する1ヶのリジェクト庫63と、出金用の紙幣を収納する2ヶの出金庫70と、入出金兼用の2ヶのリサイクル庫80と、各収納庫60,63,70,80に紙幣を搬送する紙幣搬送路90(搬送路901a〜901e,903a〜903e)から構成されている。搬送路901a〜901e,903a〜903eは、下部紙幣機構1b内において、入金庫60、リジェクト庫63、出金庫70、及びリサイクル庫80を接続している。
なお、図12において、各紙幣搬送路50,90は片方向矢印又は両方向矢印で表現されている。片方向矢印で表されたものはその矢印方向にのみ紙幣を搬送する一方向紙幣搬送路であり、両方向矢印で表されたものは取引動作に応じて切り換えられる方向に紙幣を搬送する双方向搬送路である。すなわち、例えば、搬送路501dは、紙幣判別部30に対して双方向に紙幣を通過させている。また、紙幣搬送路50,90は、図示しない駆動モータ(駆動源)で駆動されており、駆動モータの回転方向は各取引動作毎に切り替えられる。さらに、紙幣搬送路50,90の分岐点には、切り替えゲート502,503,504、505、506、507,902が設置されている。当該各切換ゲートは、取引動作毎に図中の符号a,bで示すように切り換えられ、紙幣搬送方向を切り替える。
図13は主に紙幣入出金機1の制御関係を示す制御ブロック図である。
紙幣入出金機1の制御部35は、バス107aを介して装置の本体制御部107と接続されている。制御部35は、本体制御部107からの指令および紙幣入出金機1の状態検出に応じて紙幣入出金機1の制御を行い、また、必要に応じて紙幣入出金機1の状態を本体制御部107に送っている。紙幣入出金機1の中では、各ユニット(紙幣収納部としての入出金口機構20、紙幣判別部30、一時保管庫40、紙幣搬送路50、入金庫60、取忘回収庫61、偽券回収庫62、リジェクト庫63、出金庫70、リサイクル庫80、装填・回収庫81)の駆動モータや電磁ソレノイドやセンサと接続され、取引に応じて、センサで状態を監視しながら、アクチュエータを駆動制御する。
上記のように構成された紙幣入出金機1により、利用者による入出金動作や、係員による装填・回収動作や、利用者が取り忘れた紙幣の自動回収動作が行われる。
入金動作時において、紙幣入出金機1は、入出金口機構20に投入された紙幣を一枚ずつに分離し、紙幣判別部30において紙幣の金種及び真偽を判定する。判別できた場合は、切り替えゲート503を503aに切り替え、紙幣を一時保管庫40に一旦収納する。紙幣判別部30で判別できなかった場合や、紙幣の傾きや紙幣同士の間隔に異常がある場合には、利用者に返却する。すなわち、切り替えゲート503を503bに切り替え、異常のある紙幣を入金リジェクト紙幣として、一時保管庫40に取り込まずに、入出金口機構20に収納して利用者に返却する。
取引が確定すると、切り替えゲート502を図示502b方向に切り替え、一時保管庫40に収納された紙幣を、収納時とは逆の順に逆の方向に送出する。すなわち、まず、紙幣を紙幣判別部30に通過させ、いずれかの切り替えゲート902を切り替えることで指定の収納庫(入金庫60、リサイクル庫80、リジェクト庫90のいずれか)に収納し、入金動作を終了する。
一方、出金取引時においては、紙幣入出金機1は、利用者の指定する金額に応じて、出金庫70、リサイクル庫80の各金種毎の金庫から所定の枚数づつ紙幣を繰り出す。このように繰り出された紙幣は、紙幣判別部30で紙幣の金種を判別され、切り替えゲート503を介して入出金口機構20に収納されて利用者に支払われる。上記に説明した各実施の形態によれば、この支払いのときに、装置筐体101の筐体面101aよりも利用者側に紙幣が突出した状態とすることができる。
また、紙幣入出金機1は、装填・回収庫81とリサイクル庫80との間で、紙幣判別部30を経由して装填、回収動作を行うことができる。装填動作は、リサイクル庫80に金種毎に紙幣を個別にセットするのではなく、係員が装填・回収庫81に一括して紙幣をセットして装置内で自動的にリサイクル庫80に収納する動作である。回収動作は、リサイクル庫80が満杯になった時等に、係員が各リサイクル庫80から個別に紙幣を抜き取るのでなく、所定枚数の紙幣をリサイクル庫80から装填・回収庫81に自動的に回収収納する動作である。すなわち、回収動作は装填動作と逆のルートで紙幣が移動する。さらに、紙幣入出金機1は、入金取引時および出金取引時に利用者が入出金口機構20に紙幣を忘れた場合に、その紙幣(取り忘れ紙幣)を自動で回収する動作(取り忘れ回収動作)を実施することができる。すなわち、取り忘れ回収動作は、入出金口機構20に残された紙幣を一括して取忘回収庫61に収納する動作である。
なお、上記では、前クランプ209及び後クランプ210における搬送ベルト等をプーリで構成したが、プーリのみに限らず、ベルトを掛け回すことができる円筒のローラ形状のものであれば良い。
また、上記では現金自動取引装置を例に挙げて本発明の実施の形態を説明してきたが、いわゆるポケット式の紙葉類入出口を有し、当該入出口を介して紙葉類の投入及び放出を行う紙葉類取扱装置であれば、本発明は適用可能である。