A.第1の実施例:
A1.装置構成:
図1は、本発明の紙葉類取扱装置の一実施例としての現金自動取引装置の概略構成を示す説明図である。現金自動取引装置500は、現金(紙幣)の預け入れや引き出しや振込み等の取引を行うための装置である。
現金自動取引装置500は、筐体101の内部に、紙幣入出金機10と、金庫筐体106と、カード/明細票処理機構102とを備えている。また、現金自動取引装置500は、筐体前面に、カードスロット103と、顧客操作部105と、入出金口21とを備えている。
紙幣入出金機10は、紙幣の受け入れや排出を実行する。紙幣入出金機10は、下部に紙幣を収納する機構(図示省略)を備えており、この紙幣収納機構は金庫筐体106内部に配置されている。金庫筐体106は、厚い金属板(例えば、50ミリメートル程度の厚みの鉄板)で形成されている。カード/明細票処理機構102は、カードスロット103と連通しており、挿入された利用者のキャッシュカードを処理し、また、取引明細書を印字して排出する。カードスロット103は、利用者のキャッシュカードの受入/排出を実行する。顧客操作部105は、タッチパネル式のディスプレイを備え、取引のための各種メニューを表示する。入出金口21は、利用者が紙幣を投入する際、及び利用者に対して紙幣を排出する際に用いられる。
図2は、図1に示す紙幣入出金機10の詳細構成を示す説明図である。紙幣入出金機10は、上部搬送機構10aと、下部搬送機構10bとを備えている。上部搬送機構10aは、入出金機構20と、紙幣判別部30と、一時保管庫40と、取り忘れ回収庫61と、偽券回収庫62と、装填/回収庫63と、6つの切替ゲート50a〜50fと、紙幣搬送路(矢印で示す)とを備えている。
入出金機構20は、図1に示す入出金口21を介して挿入される紙幣を現金自動取引装置500内部に受け入れ、また、利用者に対して入出金口21を介して紙幣を排出する。紙幣判別部30は、紙幣の金種及び真偽を判断する。一時保管庫40は、挿入された紙幣及び排出する紙幣を、取引が成立するまでの間において一時的に保管する。取り忘れ回収庫61は、入金時又は出金時に利用者が取り忘れた紙幣を収納する。偽券回収庫62は、紙幣判別部30において偽券と判別された紙幣を収納する。装填/回収庫63は、後述するリサイクル庫81,82に補充する紙幣や、リサイクル庫81,82から回収した紙幣を収納する。6つの切替ゲート50a〜50fは、紙幣の搬送ルートを切り替える。
下部搬送機構10bは、上部搬送機構10aの下方において、金庫筐体106に囲まれて配置されている。下部搬送機構10bは、入金庫60と、2つの出金庫71,72と、2つのリサイクル庫81,82と、リジェクト庫83と、5つの切替ゲート50g〜50kと、紙幣搬送路(矢印で示す)とを備えている。
入金庫60は、入金時に取引が成立した紙幣を収納する。2つの出金庫71,72は、出金用の紙幣を収納する。2つのリサイクル庫81,82は、入金庫及び出金庫を兼用する。リジェクト庫83は、出金に不適切な紙幣(例えば、破れや折れのある紙幣)を収納する。5つの切替ゲート50g〜50kは、上述した6つの切替ゲート50a〜50fと同様に、紙幣の搬送ルートを切り替える。
上述した上部搬送機構10a内の紙幣搬送路及び下部搬送機構10b内の紙幣搬送路は、いずれも、紙幣を保持するためのベルト(図示省略)と、ベルトを駆動させるためのローラー(図示省略)と、ローラーを駆動するためのモーター(図示省略)と、ベルトを支持するプーリーとから構成されている。なお、各ローラーごとに駆動用モーターを設ける構成とすることもできる。また、1つのモーターにより複数のローラーを駆動する構成とすることもできる。
上部搬送機構10a内の紙幣搬送路と、下部搬送機構10bの紙幣搬送路とは、金庫筐体106の上面に設けられたスリットSLを介して互いに連通しており、紙幣は、上部搬送機構10aと下部搬送機構10bとの間を双方向に搬送され得る。なお、下部搬送機構10bが金庫筐体106によって囲まれ、上部搬送機構10aと下部搬送機構10bとがスリットSLにおいてのみ連通しているのは、入金庫60等の多量の紙幣を収納する部分を強固に保護して、セキュリティを高めるためである。
上述した上部搬送機構10a及び下部搬送機構10bを構成する各構成要素は、制御回路300と電気的に接続されている。
図3は、制御回路300の構成を示す説明図である。制御回路300は、メモリ312とCPU(Central Processing Unit)313とを備えている。メモリ312は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)からなる。CPU313は、メモリ312に記憶されている制御用プログラムを実行することにより、主制御部320と、入金庫制御部321と、リジェクト庫制御部322と、出金庫制御部323と、リサイクル庫制御部324と、紙幣搬送路制御部325と、切替ゲート制御部326と、操作制御部327と、入出金制御部328と、判別制御部329と、一時保管庫制御部330と、取り忘れ回収庫制御部331と、偽券回収庫制御部332と、装填/回収庫制御部333として機能する。
主制御部320は、現金自動取引装置500全体の制御を実行する。入金庫制御部321は、入金庫60における紙幣の保管及び排出を制御する。リジェクト庫制御部322は、リジェクト庫83における紙幣の保管及び排出を制御する。出金庫制御部323は、2つの出金庫71,72における紙幣の保管及び排出を制御する。リサイクル庫制御部324は、2つのリサイクル庫81,82における紙幣の保管及び排出を制御する。紙幣搬送路制御部325は、紙幣搬送路を構成するモータ(図示省略)を制御する。切替ゲート制御部326は、11個の切替ゲート50a〜50kを制御する。操作制御部327は、顧客操作部105を制御する。入出金制御部328は、入出金機構20を制御する。判別制御部329は、紙幣判別部30を制御する。一時保管庫制御部330は、一時保管庫40における紙幣の保管及び排出を制御する。回収庫制御部331は、回収庫61における紙幣の保管及び排出を制御する。偽券回収庫制御部332は、偽券回収庫62における紙幣の保管及び排出を制御する。装填/回収庫制御部333は、装填/回収庫63における紙幣の保管及び排出を制御する。
図4は、入出金機構20の詳細構成を示す説明図である。入出金機構20は、シャッター201と、前側押板203と、後側押板202と、前側クランプ機構403と、後側クランプ機構402と、仕切板600と、底板208と、異物受箱602と、ストッパー214と、4つのアクチュエータA1〜A3,A6と、3つのセンサーS1〜S3と、ピックローラーr1と、分離ローラーr2と、ゲートローラーr3と、スタックローラーr4とを備えている。入出金機構20は、重力方向(鉛直方向)に対して傾斜して配置されている。
シャッター201は、現金自動取引装置500内への雨や埃や異物等の侵入を抑制する。このシャッター201は、入出金口21に沿って配置されており、紙幣の挿入方向(以下「入金方向」と呼ぶ)及び紙幣の排出方向(以下「出金方向」と呼ぶ)と垂直な方向にスライド可能に構成されている。
前側押板203は、入出金口21から挿入される紙幣(図示省略)と略平行となるように配置された板状部材である。前側押板203は、図4において実線及び破線で示すように、上端部(入出金口21に近い側の端)を軸として、円弧を描くように移動可能に構成されている。前側押板203の配置位置として、実線で示す後側押板202に比較的近い位置(以下「入金位置」と呼ぶ)と、破線で示す後側押板202から比較的遠い位置(以下「取り込み位置」と呼ぶ)とが予め設定されている。この前側押板203の移動は、図示しないアクチュエータによって行われる。なお、「前側」とは、利用者から見たときの手前側を意味する。
後側押板202は、前側押板203と同様な板状部材であり、前側押板203と略平行となるように配置されている。後側押板202は、図4において実線及び破線で示すように、入金方向と垂直な方向(シャッター201と平行な方向)にスライド可能に構成されている。後側押板202の配置位置として、実線で示す前側押板203に比較的近い位置(以下「入金位置」と呼ぶ)と、破線で示す前側押板203から比較的遠い位置(以下「取り込み位置」と呼ぶ)とが予め設定されている。この後側押板202のスライドは、図示しないアクチュエータによって行われる。前側押板203及び後側押板202は、挿入された紙幣に対して適度な押圧力を加えることができる。なお、「後側」とは、利用者から見たときの後ろ側を意味する。
前側クランプ機構403は、紙幣搬送用のベルト(クランプベルト)と、このクランプベルトを駆動するプーリーと、ベルトを支持するプーリー(例えば、図4のプーリーp3)とを備えている。クランプベルトは、紙幣を取り込む方向と紙幣を排出する方向とのいずれの方向にも駆動する。図4において実線及び破線に示すように、前側クランプ機構403の一部は、プーリーp3を軸として、円弧を描くように移動可能に構成されている。前側クランプ機構403の配置位置として、後側クランプ機構402に比較的近い実線で示す位置(以下「入金位置」と呼ぶ)と、後側クランプ機構402から比較的遠い破線で示す位置(以下「退避位置」と呼ぶ)と、図示しない放出位置とが予め設定されている。この前側クランプ機構403の移動は、アクチュエータA6によって行われる。なお、前側クランプ機構403の詳細構成については後述する。
後側クランプ機構402は、図4において実線及び破線で示すように、入金方向と垂直な方向にスライド可能に構成されている。後側クランプ機構402の配置位置として、前側クランプ機構403と接する位置(図示省略、以下「挟持位置」と呼ぶ)と、前側クランプ機構403に比較的近い実線で示す位置(以下「放出位置」と呼ぶ)と、前側クランプ機構403から比較的遠い破線で示す位置(以下「退避位置」と呼ぶ)とが予め設定されている。なお、後側クランプ機構402の詳細構成については後述する。
前述の前側クランプ機構403及び後側クランプ機構402からなる一対のクランプ機構は、紙幣留置領域Ra内において、紙幣を挟持して入金方向又は出金方向に搬送することができる。
ここで、一対のクランプ機構402,403は、互いに近づく方向又は互いに離れる方向にそれぞれ移動する。同様に、一対の押板202,203とは、互いに近づく方向又は互いに離れる方向に移動する。このような動作により、一対のクランプ機構402,403は、一対の押板202,203の内側(前側押板203と後側押板202との間)と、外側(前側押板203と後側押板202とを挟みこむ位置)との間における任意の位置に配置され得る。なお、図4に示すように、一対のクランプ機構402,403と、一対の押板202,203とは、重なって配置され得る。このとき、前側クランプ機構403及び後側クランプ機構402は、それぞれ対応する押板に設けられた切り欠き(図示省略)に収まる。
仕切板600は、前側押板203と後側押板202との間において、これら押板202,203と平行に配置された板状部材である。仕切板600は、前側押板203と後側押板202との間をスライド可能に構成されている。この仕切板600のスライドは、図示しないアクチュエータによって行われる。底板208は、スリットを有する板状部材であり、入出金口21から挿入される紙幣を介して入出金口21の反対側に配置されている。前述の一対の押板202,203と、一対のクランプ機構402,403と、底板208と、図示しない横板とにより、紙幣留置領域Raが形成される。この紙幣留置領域Raは、入出金口21から投入された紙幣又は入出金口21から排出する紙幣を一時的に留め置く領域である。
異物受箱602は、入出金口21から紙幣留置領域Raに入り込み、底板208のスリットを通って落下する異物を集積する。ストッパー214は、入出金口21を介して投入される紙幣を受け止める。このストッパー214は、シャッター201と平行にスライド可能であり、紙幣留置領域Raに露出する位置(以下「入金位置」と呼ぶ)と、紙幣留置領域Raに露出しない位置(以下「退避位置」と呼ぶ)との間を移動可能に構成されている。なお、初期状態において、ストッパー214は、図4に示す入金位置に配置されている。ここで、ストッパー214の配置位置は、入出金口21からストッパー214までの距離が、挿入される紙幣の高さ方向(入金方向)の長さよりも短くなるような位置に設定されている。
アクチュエータA1は、前側クランプ機構403を構成するプーリーを駆動して、ベルトを駆動する。アクチュエータA2は、ストッパー214をスライドさせる。アクチュエータA3は、シャッター201をスライドさせる。アクチュエータA6は、前側クランプ機構403の一部を移動させる。
3つのセンサーS1〜S3は、入金方向と垂直な方向に沿って並んで配置されている。これらのセンサーS1〜S3のうち、センサーS1は入出金口21に最も近く、センサーS3は、入出金口21から最も離れており、センサーS2は2つのセンサーS1,S3の間に配置されている。これらのセンサーS1〜S3は、いずれも、一対の光源及び受光部を有する光学センサーである。これらのセンサーS1〜S3において、それぞれ光が遮られたか否かを検出することにより、紙幣留置領域Raにおける紙幣の有無を検知することができる。
ピックローラーr1は、紙幣留置領域Raに集積された紙幣を1枚ずつピックする。分離ローラーr2は、ピックローラーr1によりピックされた紙幣を紙幣搬送路内に繰り出す。ゲートローラーr3は、分離ローラーr2と重なるように配置されており、複数の紙幣を重ねて送り出すことを抑制する。スタックローラーr4は、紙幣搬送路を介して搬送されてきた紙幣を紙幣留置領域Ra内に搬入する。
図5は、後側クランプ機構402の詳細構成を示す説明図である。後側クランプ機構402は、ガイドプレート415と、支持板部材417と、スライドプレート420と、駆動シャフト430と、6つのプーリー421〜426と、2つのクランプベルト411,412と、を備えている。なお、図5では、説明の便宜上、後側クランプ機構402以外の構成要素(2枚のフレーム603,604と、第1の駆動プーリー450と、駆動ベルト460と、第2の駆動プーリー451と2つのアクチュエータA4,A5)も併せて記載している。
ガイドプレート415は、2枚のフレーム603,604の間において、これらフレーム603,604と垂直となるように配置されている。なお、ガイドプレート415の両端は、2つのフレーム603,604と平行な屈曲部を有している。ガイドプレート415の中央にはコの字形に屈曲した支持板部材417が接合されており、この支持板部材417は、4つのプーリー421,422,424,425を支持する。スライドプレート420は、ガイドプレート415の端に設けられた屈曲部と平行となるように配置されている板状部材である。
駆動シャフト430は、ガイドプレート415と平行に配置された円柱形部材である。この駆動シャフト430は、2枚のフレーム603,604と、スライドプレート420と、ガイドプレート415の両端の屈曲部と、2つのプーリー421,424と、を貫通して配置されている。駆動シャフト430の一端は、スライドプレート420を介してフレーム604の有するスリット(図示省略)から突出して配置され、他端はフレーム603の有するスリット605から突出して配置されている。
プーリー421とプーリー422とは、入金方向と垂直な方向に沿って並んで配置されている。また、プーリー422とプーリー423とは、入金方向に沿って並んで配置されている。クランプベルト411は、これらの3つのプーリー421〜423に架け渡されている。プーリー424は、駆動シャフト430に沿ってプーリー421から所定の距離だけ離れて配置されている。プーリー424とプーリー425とは、入金方向と垂直な方向に沿って並んで配置されている。また、プーリー425とプーリー426とは、入金方向に沿って並んで配置されている。クランプベルト412は、これらの3つのプーリー424〜426に架け渡されている。なお、プーリー422及びプーリー425は、図4におけるプーリーp2に相当する。
2つのプーリー421,424は、駆動シャフト430のうち、2枚のフレーム603,604の間の中央部分に取り付けられているため、2つのクランプベルト411,412は、挿入される紙幣Caの幅方向における中央部分に位置することとなる。
プーリー423は、プーリー422を軸として、円弧を描くように移動(揺動)可能に構成されている。具体的には、紙幣留置領域Raに紙幣が存在しない場合、プーリー423は、図示しないバネによって対向する前側クランプ機構403に近づく方向に付勢されている。一方、紙幣が挿入される場合或いは紙幣が排出される場合には、プーリー423は、紙幣の厚みに応じて前側クランプ機構403から遠ざかる方向に移動する。このとき、プーリー423は、紙幣に対して押圧力を加える。プーリー426は、上述したプーリー423と同様な構成であるので説明を省略する。
2枚のフレーム603,604は、いずれも平面形状が長方形の薄板部材である。図5に示すように、フレーム603は、長手方向に沿ったスリット605を備えている。なお、フレーム604もフレーム603と同じ位置にスリットを有しているが、図示の便宜上省略している。また、フレーム604の上半分も図示の便宜上省略している。これらの2枚のフレーム603,604は、互いに平行となるように配置されている。これら2枚のフレーム603,604間の距離は、挿入される紙幣の幅方向の長さよりも若干長い。
フレーム604には、第1の駆動プーリー450及び第2の駆動プーリー451が取り付けられ、駆動ベルト460は、これら2つの駆動プーリー450,451に架け渡されている。アクチュエータA4は、後側クランプ機構402及び2つのフレーム603,604とは独立して配置されている。アクチュエータA5は、フレーム603の外側に配置されており、スリット605を介してガイドプレート415に接続されている。
第1の駆動プーリー450は、アクチュエータA4と接続されており、アクチュエータA4によって駆動される。このとき、アクチュエータA4は、第1の駆動プーリー450をいずれの方向にも回転させることができる。駆動ベルト460は、第1の駆動プーリー450の駆動に従って駆動する。第2の駆動プーリー451は、フレーム604側の駆動シャフト430の先端に接合されている。また、第2の駆動プーリー451は、駆動ベルト460に巻きつけられており、駆動ベルト460の駆動に従って回転駆動する。
2つのクランプベルト411,412の駆動について説明する。駆動シャフト430は、第2の駆動プーリー451の回転に従い回転駆動する。すると、駆動シャフト430に取り付けられた2つのプーリー421,424は、駆動シャフト430の回転に従って互いに同期して駆動する。これら2つのプーリー421,424の駆動に従い、2つのクランプベルト411,412は駆動する。このとき、2つのクランプベルト411,412は、第1の駆動プーリー450の駆動方向に応じて、挿入される紙幣を受け入れる方向(以下、単に「受入方向」と呼ぶ)と、紙幣を排出する方向(以下、単に「排出方向」と呼ぶ)とのいずれの方向にも駆動することができる。
後側クランプ機構402のスライド動作について説明する。アクチュエータA5は、ガイドプレート415をスリット605に沿って入金方向と垂直となる方向にスライドさせる。このとき、ガイドプレート415のスライドに伴って駆動シャフト430及び支持板部材417もスライドする。支持板部材417のスライドに伴い、6つのプーリー421〜426や2つのクランプベルト411,412もスライドする。また、駆動シャフト430のスライドに伴い、駆動シャフト430の先端に接合された第2の駆動プーリー451もスライドする。ここで、第2の駆動プーリー451は、駆動ベルト460に巻きついた状態でスライド可能に構成されているので、駆動シャフト430がスライドして任意の位置に配置された場合であっても、アクチュエータA4の駆動力は、第2の駆動プーリー451を介して駆動シャフト430に伝わる。
図6は、前側クランプ機構403の詳細構成を示す説明図である。前側クランプ機構403は、ガイドプレート715と、支持板部材714と、第1の駆動シャフト770と、第2の駆動シャフト771と、第3の駆動シャフト733と、10個のプーリー722〜725,730,731,750〜753と、2つのクランプベルト727,728と、第1の駆動ベルト760と、第2の駆動ベルト762と、第3の駆動ベルト732とを備えている。なお、図6では、説明の便宜上、前側クランプ機構403以外の構成要素(2枚のフレーム703,704と、2つのアクチュエータA1,A6)も併せて記載している。
ガイドプレート715は、2枚のフレーム703,704の間において、これらフレーム703,704と垂直となるように配置されている。なお、ガイドプレート715の両端は、2枚のフレーム703,704と平行な屈曲部を有している。ガイドプレート715の中央にはコの字形に屈曲した支持板部材714が接合されており、この支持板部材714は、4つのプーリー722〜725を支持する。なお、2つのプーリー723,725は、それぞれ図示しない支持部材により支持板部材714と接続されている。ガイドプレート715の2つの屈曲部の先端は、第1の駆動シャフト770により支持されている。
第1の駆動シャフト770は、ガイドプレート715と平行に配置された円柱形部材である。この第1の駆動シャフト770は、2つのプーリー751,753を貫通して配置され、2枚のフレーム703,704によって支持されている。第1の駆動シャフト770は、長手方向の中心軸を軸として回転可能に構成されている。なお、2つのプーリー751,753は、図4に示すプーリーp3に相当する。第2の駆動シャフト771は、ガイドプレート715と平行に配置された円柱形部材である。第2の駆動シャフト771は、ガイドプレート715の屈曲部と、支持板部材714と、プーリー730とを貫通して配置されている。第2の駆動シャフト771の一端はプーリー752と接続され、他端はフレーム703の有するスリット705から突出して配置されている。このスリット705から突出して配置された第2の駆動シャフト771の端には、アクチュエータA6が接続されている。第3の駆動シャフト733は、支持板部材714の先端部分により回転可能に支持されている。第3の駆動シャフト733は、中間位置においてプーリー731を貫通し、また、一端付近においてプーリー722を、他端付近においてプーリー724を、それぞれ貫通している。
プーリー722とプーリー723とは、入金方向及び出金方向と略平行な方向に沿って並んで配置されている。クランプベルト727は、これらのプーリー722,723に架け渡されている。同様に、プーリー724とプーリー725とは、入金方向及び出金方向と略平行な方向に沿って並んで配置されている。クランプベルト728は、これらのプーリー724,725に架け渡されている。2つのクランプベルト727,728は、2枚のフレーム703,704の間の中間付近に配置されているため、挿入される紙幣Cbの幅方向における中央部分に位置することとなる。第3の駆動ベルト732は、2つのプーリー731,730に架け渡されている。
第1の駆動ベルト760は、2つのプーリー750,751に架け渡されている。プーリー750にはアクチュエータA1が接続され、アクチュエータA1は、プーリー750を駆動する。第2の駆動ベルト762は、2つのプーリー752,753に架け渡されている。
プーリー723は、プーリー722を軸として、円弧を描くように移動(揺動)可能に構成されている。具体的には、紙幣留置領域Raに紙幣が存在しない場合、プーリー723は、図示しないバネによって対向する後側クランプ機構402に近づく方向に付勢されている。一方、紙幣が挿入される場合或いは紙幣が排出される場合には、プーリー723は、紙幣の厚みに応じて後側クランプ機構402から遠ざかる方向に移動する。このとき、プーリー723は、紙幣に対して押圧力を加える。プーリー725は、上述したプーリー723と同様な構成であるので説明を省略する。
2枚のフレーム703,704は、いずれも平面形状が長方形の薄板部材である。フレーム703は、円弧状のスリット705を備えている。なお、図示の便宜上、フレーム704の上半分を省略している。これらの2枚のフレーム703,704は、互いに平行となるように配置されている。2枚のフレーム703,704間の距離は、挿入される紙幣Cbの幅方向の長さよりも若干長い。
2つのクランプベルト727,728の駆動について説明する。アクチュエータA1によりプーリー750が駆動されると、第1の駆動ベルト760を介してプーリー751が回転する。プーリー751の回転に従い第1の駆動シャフト770が回転するので、第1の駆動シャフト770に取り付けられたプーリー753も同期して回転し、第2の駆動ベルト762が駆動する。第2の駆動ベルト762の駆動力は、プーリー752と第2の駆動シャフト771とプーリー730とに伝達され、第3の駆動ベルト732は駆動する。第3の駆動ベルト732の駆動に従ってプーリー731を介して第3の駆動シャフト733が回転するので、2つのプーリー722,724は互いに同期して回転する。これら2つのプーリー722,724の駆動に従い、2つのクランプベルト727,728は駆動する。このとき、2つのクランプベルト727,728は、プーリー750の駆動方向に応じて、受入方向及び排出方向のいずれの方向にも駆動することができる。
前側クランプ機構403全体の移動動作について説明する。アクチュエータA6は、第2の駆動シャフト771をスリット705に沿って円弧を描くように移動させる。これに伴い、ガイドプレート715及び支持板部材714が第1の駆動シャフト770を軸として円弧を描くように移動する。したがって、前側クランプ機構403全体として、円弧を描くように移動することとなる。このとき、前側クランプ機構403がいずれの位置に配置されている場合でも、アクチュエータA1による駆動力は上述した経路で2つのクランプベルト727,728に伝わる。したがって、これらクランプベルト727,728は、前側クランプ機構403がいずれの位置に配置されていても、挿入される(又は排出する)紙幣Cbを搬送することができる。
前述の一対のクランプ機構402,403は、請求項における一対の搬送部に相当する。また、2つのアクチュエータA5,A6は請求項における移動機構に、駆動シャフト430は請求項における伝達部に、センサーS1〜S3及び入出金制御部328は請求項における検知部に、入出金制御部328は請求項における判定部及び移動量測定部に、それぞれ相当する。
A2.入金時における入出金機構20の動作:
以下、入出金機構20が紙幣を受け入れる例として、入金時の入出金機構20の動作について説明する。利用者が顧客操作部105(図1)において入金取引メニューを選択すると、入出金機構20において紙幣受け入れ処理が開始される。なお、紙幣受け入れ処理の実行前において、一対の押板202,203はいずれも取り込み位置に配置され、一対のクランプ機構402,403はいずれも退避位置に配置されている。
図7は、入出金機構20において実行される紙幣受け入れ処理の手順を示すフローチャートである。まず、入出金制御部328(図3)は、図示しないアクチュエータを制御して、一対の押板202,203(図4)をそれぞれ入金位置に移動させる(ステップS105)。入出金制御部328は、アクチュエータA6(図4)を制御して前側クランプ機構403を入金位置に移動させると共に、アクチュエータA5(図5)を制御して後側クランプ機構402を挟持位置に移動させる(ステップS110)。このとき、一対のクランプ機構402,403(クランプベルト)は、下端のプーリー部分で互いに当接する。
入出金制御部328は、アクチュエータA2(図4)を制御して、ストッパー214を退避位置に移動させる(ステップS115)。次に、入出金制御部328は、アクチュエータA3(図4)を制御して、シャッター201を開く(ステップS120)。
シャッター201が開くと、利用者は、入出金口21(図1)に紙幣を挿入することができる。入出金制御部328は、紙幣が挿入されたか否かをセンサーS1の出力に基づき判断し、紙幣が挿入されるまで待機する(ステップS125)。紙幣が挿入されると、センサーS1において光が遮断され、受光部の出力が変化する。したがって、入出金制御部328は、このときの受光部の出力値の変化により紙幣の挿入の有無を判断できる。
紙幣が挿入されたと判定すると、入出金制御部328は、アクチュエータA4(図5)を制御して、クランプベルト411,412を受入方向に駆動する(ステップS130)。
図8は、ステップS130を実行した後における入出金機構20の構成を示す第1の説明図である。図8では、図示の便宜上、スタックローラーr4等の一部要素を省略している。図8に示すように、一対の押板202,203及び前側クランプ機構403が入金位置に、後側クランプ機構402が挟持位置に、それぞれ配置されている状態において、一対のクランプ機構402,403は、一対の押板202,203の間に位置している。このとき、一対のクランプ機構402,403は、互いに下方に位置するプーリー(例えば、図5に示すプーリー423,426)の位置において接触してV字形に配置されると共に、それぞれのベルト(例えば、図5に示すクランプベルト411,412)は、受入方向に駆動している。したがって、利用者は、入出金口21に紙幣C1を挿入してすぐに、紙幣が突き当たる感覚と、紙幣が引っ張り込まれる感覚とを得ることができる。このとき、利用者が手から紙幣を離すと、紙幣は自動的に現金自動取引装置500に取り込まれる。したがって、利用者は、入出金口21から紙幣留置領域Raの内部に手や指を挿入することなく、紙幣を投入することができる。
図9は、ステップS130を実行した後における入出金機構20の構成を示す第2の説明図である。図9では、図示の便宜上、シャッター201や、前側クランプ機構403におけるフレーム703,704等の一部要素を省略している。多くの紙幣を投入する場合、紙幣束の厚みが大きく、また、利用者が紙幣束の中央を持つケースが多いので、図9に示すように挿入される紙幣束の両端が広がる。ここで、前側クランプ機構403の2本のクランプベルトは前側押板203よりも紙幣C1側に突出しており、後側クランプ機構402の2本のクランプベルトは後側押板202よりも紙幣C1側に突出している。また、前側クランプ機構403の2本のクランプベルト及び後側クランプ機構402の2本のクランプベルトは、紙幣C1の幅方向における中央部分を挟持する。したがって、紙幣束の両端は、前側押板203と後側押板202とで挟まれた比較的広い空間に位置することとなり、紙幣束の両端が広がった場合であっても利用者は紙幣を投入し易い。
前述のステップS130の後、入出金制御部328は、紙幣留置領域Raへの紙幣投入が完了したか否かを、2つのセンサーS1,S3の出力に基づき判断し、紙幣の投入が完了するまで待機する(ステップS135)。紙幣の投入が完了した場合、センサーS1において光は遮断されず、センサーS3において光は遮断される。したがって、入出金制御部328は、これらセンサーS1,S3の出力に基づき紙幣の投入完了を検知することができる。なお、センサーS1のみを用いて、光が遮断された状態から遮断されない状態に変化したことを検知して紙幣の投入完了を判定することもできる。また、センサーS3のみを用いて、光が遮断されない状態から遮断された状態に変化したことを検知して紙幣の投入完了を判定することもできる。
紙幣の投入が完了したと判定すると(ステップS135:YES)、入出金制御部328は、アクチュエータA4(図5)を制御して、クランプベルト411,412の駆動を停止させる(ステップS140)。
入出金制御部328は、アクチュエータA3(図4)を制御して、シャッター201を閉める(ステップS145)。入出金制御部328は、アクチュエータA6を制御して前側クランプ機構403を退避位置に移動させると共に、アクチュエータA5(図5)を制御して後側クランプ機構402を退避位置に移動させる(ステップS150)。入出金制御部328は、図示しないアクチュエータを制御して、一対の押板202,203(図4)をそれぞれ取り込み位置に移動させる(ステップS155)。なお、後側押板202を、取り込み位置に移動させず、入金位置のままとすることもできる。
このとき、投入された紙幣は紙幣留置領域Raにおいて底板208に接して立った状態で集積される。したがって、紙幣束が傾いて挿入された場合であっても、紙幣留置領域Ra内に集積された際に、紙幣の傾きは解消される。また、紙幣の間に硬貨等の異物が紛れ込んでいた場合であっても、異物は紙幣留置領域Ra内において重力に従って下方に落下し、底板208のスリットを通って異物受箱602に集積されることとなる。
入出金制御部328は、ピックローラーr1を駆動して、紙幣留置領域Ra内に集積された紙幣をピックして、分離ローラーr2とゲートローラーr3との間を通って紙幣搬送路へと紙幣を繰り出す(ステップS160)。
前述のステップS160を実行する際に、前側クランプ機構403は前側押板203よりも外側(前側押板203を介して紙幣とは反対側)に退避している。したがって、紙幣留置領域Ra内に集積された紙幣C1は、重力に従って前側押板203に面して配置されることとなる。このとき、紙幣C1は、凹凸のない面において支持される。それゆえ、紙幣C1の折れや、図9に示すような紙幣C1の撓みが生じた状態で、紙幣C1が分離ローラーr2とゲートローラーr3との間を搬送されることを抑制でき、紙幣ジャムの発生を抑制できる。
A3.出金時における入出金機構20の動作:
以下、出金や入金取消しなどの入出金機構20が紙幣を放出する一例として、出金時における入出金機構20の動作について説明する。利用者が顧客操作部105(図1)において金額を指定して出金(払出)メニューを選択すると、指定された金額の紙幣が2つの出金庫71,72又は2つのリサイクル庫81,82から排出され、紙幣搬送路を通って入出金機構20に搬送される。また、入出金機構20において紙幣排出処理が開始される。
図10は、入出金機構20において実行される紙幣排出処理の手順を示すフローチャートである。まず、入出金制御部328(図3)は、図示しないアクチュエータを制御して、一対の押板202,203(図4)をそれぞれ取り込み位置に移動させる(ステップS205)。入出金制御部328は、前側クランプ機構403及び後側クランプ機構402を退避位置に移動させる(ステップS210)。
入出金制御部328は、ストッパー214を退避位置に移動させ(ステップS215)、また、スタックローラーr4を駆動して紙幣搬送路から送られてきた紙幣を紙幣留置領域Raに集積する(ステップS220)。紙幣が集積されると、入出金制御部328は、一対のクランプ機構402,403を放出位置に移動させる(ステップS225)。このとき、紙幣束の厚みが大きい場合には、一対のクランプ機構402,403は、放出位置に至る前に紙幣束に突き当たって停止する。なお、入出金制御部328は、紙幣留置領域Raにおける紙幣の集積を、例えば、センサーS3やセンサーS2を用いて検出することができる。
次に、入出金制御部328は、シャッター201を開き(ステップS230)、クランプベルト411,412を排出方向に駆動する(ステップS235)。このとき、入出金制御部328は、紙幣の排出が完了したか否かをセンサーS3の出力に基づき判断し(ステップS240)、排出が完了するまでクランプベルトを駆動する。紙幣の排出が完了した状態とは、紙幣の一部が入出金口21から露出した状態を意味する。このとき、センサーS3において光が遮断されなくなるので、入出金制御部328は、この状態を検知することにより、紙幣の排出が完了したことを判定できる。
図11は、ステップS235を実行した直後おける入出金機構20の構成を示す説明図である。前側クランプ機構403及び後側クランプ機構402は、それぞれ図11に示す放出位置に配置されている。この放出位置では、前側クランプ機構403は、前側押板203よりも内側(紙幣C2側)に突出し、また、後側クランプ機構402は、後側押板202よりも内側に突出して、紙幣留置領域Raに集積された紙幣C2を挟持している。そして、紙幣C2の一部が入出金口21から露出するまで、前側クランプ機構403及び後側クランプ機構402の搬送用のクランプベルトが排出方向に駆動されるので、利用者は、紙幣留置領域Raに手や指を挿入することなく、紙幣を取り出すことが可能となる。
次に、入出金制御部328は、一対のクランプ機構402,403のクランプベルトを停止する(図10ステップS245)。入出金制御部328は、利用者によって紙幣が抜き取られたか否かをセンサーS1の出力に基づき判断し(ステップS250)、抜き取りが完了するまで待機する。紙幣が抜き取られた場合、センサーS1において光は遮られなくなるので受光部の出力が変化する。したがって、入出金制御部328は、このときの受光部の出力変化により紙幣の抜き取り完了を検知できる。入出金制御部328は、紙幣の抜き取りが完了したと判断すると、シャッター201を閉める(ステップS255)。
以上説明したように、第1の実施例の現金自動取引装置500では、入金時において、一対のクランプ機構402,403は、互いに近づく方向に移動して一対の押板202,203の間に位置し、挿入される紙幣を挟持して内部へと搬送するので、利用者は紙幣留置領域Raに手や指を挿入せずに紙幣を投入することができる。また、出金時においても、一対のクランプ機構402,403は、互いに近づく方向に移動して一対の押板202,203の外側に位置し、紙幣を保持して紙幣の一部が入出金口21に露出する位置まで搬送するので、利用者は紙幣留置領域Raに手や指を挿入せずに紙幣を取り出すことができる。
また、挿入された紙幣を紙幣搬送路に繰り出す際に、前側クランプ機構403は前側押板203よりも外側(前側押板203を介して紙幣とは反対側)に退避している。したがって、紙幣は前側押板203にのみ接し、紙幣束の撓みや折れは生じない。したがって、紙幣束が紙幣留置領域Raから紙幣搬送路に繰り出される際における紙幣ジャムの発生を抑制できる。また、一対のクランプ機構402,403と、一対の押板202,203とは、重なって配置され得るので、紙幣留置領域Raの深さ(入金/出金方向の長さ)を短くすることができ、入出金機構20を小型化できる。
また、入金時において、クランプ機構402,403のクランプベルトは、互いに下端のプーリー位置において接触してV字形に配置されるので、利用者に紙幣が突き当たる感覚を与えることができる。したがって、利用者は、紙幣の挿入時において安心して紙幣を手放すことができる。また、挿入される紙幣束がクランプ機構402,403のクランプベルト間で突き当たるので、少なくとも挿入方向に対する紙幣の傾きを解消でき、紙幣束を揃えて紙幣留置領域Ra内に集積することができる。また、この一対のクランプ機構402,403のV字形配置により、入出金口21に近い位置では2つのクランプ機構402,403間は比較的広くなる。したがって、多くの紙幣を挿入する場合において、利用者は容易に紙幣束を入出金口21に挿入することができる。また、一対のクランプ機構402,403のクランプベルトは、いずれも紙幣の幅方向における中央部分を挟持し、紙幣の両端には一対の押板202,203により挟まれた広い空間が生じるので、紙幣束の厚みが大きく紙幣束の両端が広がった場合でも、利用者は容易に紙幣束を挿入できる。
B.第2の実施例:
図12は、第2の実施例における紙幣受け入れ処理の手順を示す第1のフローチャートであり、図13は、第2の実施例における紙幣受け入れ処理の手順を示す第2のフローチャートである。
第2の実施例の現金自動取引装置は、紙幣受け入れ処理において、ステップS110に代えて、ステップS110aを実行する点と、ステップS115を省略する点と、ステップS125に代えてステップS125aを実行する点と、ステップS126,S128を追加して実行する点とにおいて、現金自動取引装置500(図1)と異なり、他の構成は第1の実施例と同じである。
第2の実施例の現金自動取引装置では、紙幣が入出金口21から挿入される際に、一対のクランプ機構402,403を接触して配置せず、また、紙幣留置領域Ra内にストッパー214を露出するように構成されている。
前述のステップS105を実行した後、入出金制御部328は、第1の実施例と異なり、一対のクランプ機構402,403のうち、前側クランプ機構403のみを入金位置に移動させる(ステップS110a)。したがって、後側クランプ機構402は、退避位置に配置されたままとなるため、一対のクランプ機構402,403は互いに接触せず、これら一対のクランプ機構402,403の間は比較的広くなる。次に、入出金制御部328は、シャッター201を開く(ステップS120)。
このとき、ストッパー214は、入金位置のままであるので、第1の実施例とは異なり、一対のクランプ機構402,403の間に配置されることとなる。ストッパー214の配置位置は、入出金口21からストッパー214までの距離が、挿入される紙幣の高さ方向(短手方向)の長さよりも短くなるような位置に設定されている。したがって、利用者は、手や指を紙幣留置領域Ra内に挿入せずに紙幣をストッパー214に突き当てることができる。また、紙幣挿入時において、前側クランプ機構403と後側クランプ機構402との間は広いので、利用者は容易に入出金口21に紙幣束を挿入することができる。
入出金制御部328は、紙幣がストッパー214に達したか否かをセンサーS2の出力により判定し、紙幣がストッパー214に達するまで待機する(ステップS125a)。紙幣がストッパー214に達するとセンサーS2の光は遮られるので、入出金制御部328は、このときの受光部の出力変化により、紙幣がストッパー214に達したか否かを判定できる。紙幣がストッパー214に達したと判定すると、入出金制御部328は、後側クランプ機構402を挟持位置に移動させる(ステップS126)。
図14は、第2の実施例において、ステップS126を実行した後の入出金機構の構成を示す説明図である。図14では、図示の便宜上、スタックローラーr4等の一部要素を省略している。図14に示すように、紙幣束C3の底は、ストッパー214に突き当たっている。したがって、挿入方向に対する紙幣束C3のずれは解消されている。なお、紙幣束C3の下端は、前側クランプ機構403と後側クランプ機構402とで挟持されている。
次に、入出金制御部328は、ストッパー214を退避位置に移動させる(図12ステップS128)。このとき、紙幣束C3は一対のクランプ機構402,403により挟持されているので、紙幣束C3は底板208に向かって落下しない。その後、入出金制御部328は、第1の実施例において説明したステップS130からステップS160を実行する(図13)。
以上の構成を有する第2の実施例の現金自動取引装置は、第1の実施例の現金自動取引装置500と同様な効果を奏する。また、紙幣を挿入する際に、後側クランプ機構402は退避位置に配置されているので、前側クランプ機構403と後側クランプ機構402との間は比較的広くなる。したがって、比較的厚い紙幣束であっても、利用者は容易に入出金口21に挿入することができる。
C.第3の実施例:
図15は、第3の実施例における紙幣受け入れ処理の手順を示す第1のフローチャートであり、図16は、第3の実施例における紙幣受け入れ処理の手順を示す第2のフローチャートである。図17は、第3の実施例における紙幣排出処理の手順を示す第1のフローチャートであり、図18は、第3の実施例における紙幣排出処理の手順を示す第2のフローチャートである。
第3の実施例の現金自動取引装置は、紙幣受け入れ処理において、ステップS305〜S325を追加して実行する点と、紙幣排出処理において、ステップS405〜S470を追加して実行する点とにおいて、現金自動取引装置500(図1)と異なり、他の構成は第1の実施例と同じである。
第3の実施例の現金自動取引装置では、紙幣束の搬送時の状態(紙幣束の厚みや紙幣束の滞留の有無)を検知して、一対のクランプ機構402,403によって紙幣を挟持して搬送可能であるか否かを判定し、搬送不可能な場合には、一対のクランプ機構402,403から紙幣を開放して、紙幣留置領域Ra内に留め置くように構成されている。
まず、紙幣受け入れ処理について説明する。ステップS105〜S130(図15)の処理は、第1の実施例(図7)と同じであるので説明を省略する。なお、後述のステップS135を実行する時点において、入出金口21から挿入された紙幣(紙幣束)は、一対のクランプ機構402,403により挟持されている。
ステップS130を実行した後、入出金制御部328は、第1の実施例と同様に、紙幣留置領域Raへの紙幣投入が完了したか否かを、2つのセンサーS1,S3の出力に基づき判断する(ステップS135)。このとき、入出金制御部328は、第1の実施例とは異なり、所定期間内に紙幣投入が完了するか否かを判定する。そして、所定期間内に紙幣投入が完了した場合には、入出金制御部328は、上述したステップS140〜S160を実行する。なお、この所定期間は、挿入を検知してから、紙幣束が底板208付近まで正常に搬送されるまでの期間であり、予め実験により測定して設定することができる。
一方、前述のステップS135において、所定期間内に紙幣投入が完了しない場合には、入出金制御部328は、一対のクランプ機構402,403のクランプベルトの駆動を停止させる(図16、ステップS305)。所定期間内に紙幣投入が完了しない場合としては、例えば、挿入する紙幣束の厚みが大きく、入出金口21において紙幣束が滞留したために、センサーS1において光が遮断される場合が想定される。また、例えば、利用者がセンサーS1の検出ラインまで手や指を挿入してしまい、センサーS1において光が遮断される場合が想定される。
入出金制御部328は、一対のクランプ機構402,403を互いに遠ざかる方向に移動させる(ステップS310)。このとき、予め定めた量だけ2つのクランプ機構402,403をそれぞれ移動させる。なお、2つのクランプ機構402,403を、予め定めた位置まで移動させることもできる。また、一対のクランプ機構402,403のいずれか一方のみを、他方から離れる方向に移動させることもできる。このステップS310を実行すると、紙幣束は一対のクランプ機構402,403から開放され、紙幣留置領域Ra内を底板208に向かって落下する。
入出金制御部328は、センサーS1の出力に基づき入出金口21付近に障害物があるか否かを判定する(ステップS315)。前述のステップS310により紙幣束は紙幣留置領域Raの下方に収容されるため、入出金口21付近に他の障害物が無い場合には、センサーS1において光は遮断されなくなる。一方、入出金口21付近に障害物がある場合には、センサーS1において光は遮断される。障害物としては、例えば、利用者の手や指や、一対のクランプ機構402,403から開放されずに入出金口21付近に滞留する紙幣束などが想定される。
入出金口21付近に障害物があると判定した場合に、入出金制御部328は、クランプ機構402,403を退避位置に移動させる(ステップS320)。操作制御部327(図3)は、顧客操作部105のディスプレイ(図示省略)に、障害物除去を促すメッセージを表示する(ステップS325)。ステップS325を実行後、前述のステップS315に戻って、入出金制御部328は障害物の有無を判定する。前述のステップS315で検知した障害物が利用者の手や指であれば、メッセージを見た利用者は手や指を入出金口21から引き出すことができる。
前述のステップS315において障害物がないと判定すると、入出金制御部328は、上述したステップS145〜ステップS160(図15)を実行する。なお、入出金口21付近に滞留する紙幣束が除去された場合には、紙幣留置領域Ra内に紙幣束は集積されず、ステップS160(図15)において装置内部に紙幣が繰り出されない。この場合、利用者は、再度、顧客操作部105において入金取引メニューを選択して入金を行うことができる。
次に、紙幣排出処理について説明する。ステップS205〜S225(図17)までの処理は、第1の実施例(図10)と同じであるので説明を省略する。なお、後述のステップS405を実行する時点において、紙幣留置領域Raに集積された紙幣(紙幣束)は、一対のクランプ機構402,403により挟持されている。
ステップS225を実行した後、入出金制御部328は、一対のクランプ機構402,403により挟持された紙幣束の厚みを検知し、紙幣束の厚みが正常であるか否かを判定する(ステップS405)。紙幣束の厚みは、例えば、後側クランプ機構402の移動距離によって検知することができる。具体的には、以下のようにして実現できる。予め、前側クランプ機構403のスライド量と紙幣束の厚みとの関係を実験により求めてマップとしてメモリ312(図3)に記憶しておく。入出金制御部328は、前述のステップS225において、前側クランプ機構403を移動させる際にスライド量を計測し、計測したスライド量に基づき、前述のマップを参照して紙幣束の厚みを計測する。そして、予めスライド量にしきい値を設けておき、入出金制御部328は、計測したスライド量がしきい値よりも少ない場合に、紙幣束の厚みは異常であると判断することができる。
前述のステップS405において、紙幣束の厚みが正常であると判定した場合、入出金制御部328は、一対のクランプ機構402,403のクランプベルトを排出方向に所定量だけ駆動して停止させる(ステップS410)。この所定の駆動量とは、正常状態(紙幣のジャムが発生していない状態)において紙幣束を搬送した場合に、紙幣束の先端(シャッター201に近い側の端)が、シャッター201の直下であってセンサーS1の検知ラインよりも高い位置(シャッター201寄りの位置)に配置されるような量である。なお、かかる駆動量は、予め実験により求めておくことができる。
入出金制御部328は、センサーS1の出力に基づき、紙幣束がシャッター201直下まで搬送されたか否かを判定する(ステップS415)。
図19は、ステップS415において、クランプベルトを所定量だけ駆動した後の紙幣束の配置状態を模式的に示す説明図である。図19において、上段は紙幣束C4がシャッター201直下まで正常に搬送されたケースを示し、下段は紙幣束C4が正常に搬送されなかったケースを示す。
紙幣束C4がシャッター201直下まで正常に搬送された場合、図19上段に示すように、紙幣束C4の先端はセンサーS1の検知ラインよりも上方に位置している。したがって、センサーS1において光が遮られるので、入出金制御部328は、センサーS1の出力に基づき、紙幣束がシャッター201直下まで搬送されたと判定することができる。一方、シャッター201直下まで正常に搬送されない場合、図19の下段に示すように、紙幣束C4の先端はセンサーS1の検知ラインよりも下方に位置している。したがって、センサーS1では光が遮られないので、入出金制御部328は、センサーS1の出力に基づき、紙幣束がシャッター201直下まで搬送されないと判定することができる。換言すると、入出金制御部328は、ステップS410,S415を実行することにより、紙幣束を正常に搬送可能か否かを判定する。
なお、センサーS1に代えて、又は、センサーS1と共に、センサーS3の出力に基づき、紙幣束がシャッター201直下まで搬送されたか否かを判定することもできる。具体的には、紙幣束が正常に搬送された場合にはセンサーS3において光は遮られず、紙幣束が正常に搬送されない場合にはセンサーS3において光は遮られる。したがって、入出金制御部328は、センサーS3の出力に基づき紙幣束がシャッター201直下まで搬送されたか否かを判定することもできる。
前述のステップS415(図17)において、紙幣束がシャッター201直下まで搬送されたと判定した場合、ステップS230〜S255(図18)を実行する。これらのステップS230〜S255は、第1の実施例(図10)と同じであるので、説明を省略する。但し、ステップS240において「紙幣の排出が完了していない」と判定した場合の処理は、第1の実施例とは異なるので、以下説明する。
ステップS240において、紙幣の排出が完了しないと判定した場合、入出金制御部328は、一対のクランプ機構402,403のクランプベルトの駆動をいずれも停止し(ステップS440)、一対のクランプ機構402,403をいずれも退避位置に移動させる(ステップS445)。次に、操作制御部327(図3)は、顧客操作部105のディスプレイ(図示省略)に、紙幣抜き取りを促すメッセージを表示する(ステップS450)。
紙幣の排出が完了しないと判定する場合としては、例えば、一対のクランプ機構402,403による搬送中に、紙幣が入出金機構20のいずれかの場所に引っ掛かった場合などが想定される。この場合、利用者は、顧客操作部105に表示されたメッセージを見て紙幣留置領域Ra内に集積されている紙幣束を取り出すことができる。このとき、一対のクランプ機構402,403は退避位置に配置されているので、紙幣留置領域Raは比較的広くなっており、利用者は紙幣留置領域Ra内に手や指を挿入し易く、紙幣束を取り出し易い。
ステップS450を実行した後に、入出金制御部328は、上述したステップS250以降の処理を実行する。
前述のステップS405(図17)において、紙幣束の厚みが正常でないと判定した場合、及び前述のステップS415(図17)において、紙幣束がシャッター201直下まで搬送されないと判定した場合には、入出金制御部328は、一対のクランプ機構402,403をいずれも退避位置に移動させる(図18ステップS460)。これにより、紙幣束は、一対のクランプ機構402,403から開放される。多くの紙幣を一対のクランプ機構402,403により搬送しようと、一部の紙幣が脱落して搬送されなかったり、紙幣が紙幣留置領域Ra内のいずれかに突き当たって折れや曲がりが生じるおそれがある。そこで、紙幣束の厚みが大きい場合には、紙幣束を一対のクランプ機構402,403から開放し、一対のクランプ機構402,403による搬送を行わないように構成されている。また、ステップS460によって、一対のクランプ機構402,403が一対の押板202,203の外側に退避するので、紙幣留置領域Raは比較的広い空間となる。
次に、入出金制御部328は、シャッター201を開き(ステップS465)、操作制御部327(図3)は、顧客操作部105のディスプレイ(図示省略)に、紙幣抜き取りを促すメッセージを表示する(ステップS470)。前述のように、紙幣留置領域Raは比較的広くなっているので、利用者は、紙幣留置領域Raから容易に紙幣束を取り出すことができる。また、紙幣が紙幣留置領域Ra内のいずれかの位置に引っ掛かった場合でも、利用者は、かかる紙幣を容易に取り除くことができる。
ステップS470を実行した後に、入出金制御部328は、上述したステップS250以降の処理を実行する。
以上の構成を有する第3の実施例の現金自動取引装置は、第1の実施例の現金自動取引装置500と同様な効果を奏する。また、入金時において、所定期間内に紙幣投入が完了しない場合には、一対のクランプ機構402,403により挟持されていた紙幣を開放するので、挿入しようとする紙幣束が厚いなどの理由により入出金口21付近に紙幣が滞留したような場合であっても、紙幣留置領域Ra内に紙幣を集積することができる。また、出金時において、排出する紙幣束の厚みが大きい場合には、一対のクランプ機構402,403による紙幣の搬送をやめ、紙幣留置領域Ra内に留め置くので、一対のクランプ機構402,403による搬送に起因する紙幣の折れ等を抑制できる。さらに、このとき、一対のクランプ機構402,403を、一対の押板202,203の外側に配置するので、紙幣留置領域Raを比較的広い空間とすることができ、利用者が紙幣類を紙幣留置領域Raから取り出し易くできる。
D.変形例:
なお、上記各実施例における構成要素の中の、独立クレームでクレームされた要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
D1.変形例1:
上述した各実施例では、一対のクランプ機構402,403と、一対の押板202,203とは、重なって配置され得たが(図4参照)、これに代えて、一対のクランプ機構402,403と、一対の押板202,203とが重なることがないように構成することもできる。
図20は、変形例1における入出金機構を模式的に示す説明図である。図20において、上段は紙幣を挿入する際の入出金機構を示し、下段は挿入された紙幣を紙幣搬送路に繰り出す際の入出金機構を示す。変形例1における入出金機構は、一対のクランプ機構402,403と、一対の押板202,203とが重ならないように構成されている点において、第1の実施例の入出金機構20と異なり、他の構成は同じである。なお、図20では、3つのセンサーS1〜S3やピックローラーr1などの入出金機構の一部構成要素については、説明の便宜上省略している。
一対のクランプ機構402,403は、一対の押板202,203よりも上方(入出金口21に近い側)に配置されている。したがって、一対のクランプ機構402,403は、一対の押板202,203と重なることはない。ここで、第1の実施例と同様に、紙幣挿入時(図7ステップS125等)において、一対のクランプ機構402,403はV字形に配置されている。また、一対のクランプ機構402,403は、入出金口21から見て一対の押板202,203の内側に配置されている。したがって、一対のクランプ機構402,403は、紙幣挿入時に挿入される紙幣束C5を挟持することができる。
紙幣を繰り出す際(図7ステップS160)には、一対のクランプ機構402,403は、紙幣挿入時に比べて互いに離れる方向に移動している。このとき、一対のクランプ機構402,403は、入出金口21から見て一対の押板202,203の外側に配置されている。紙幣束C5は、一対の押板202,203の間に配置されており、上述したステップS160が実行されて、分離ローラーr2とゲートローラーr3との間から、紙幣搬送路へと繰り出される。
このような構成の入出金機構を備える現金自動取引装置は、第1の実施例の現金自動取引装置500と同様な効果を奏することができる。すなわち、一般には、一対の搬送部を、入出口から見た一対の板状部材の内側と外側との間における任意の位置に配置する構成を、本発明の紙葉類取扱装置に採用することができる。
D2.変形例2:
上述した第3の実施例では、正常に搬送可能であるか否かを判断する際の根拠は、紙幣束の厚み及び紙幣束の滞留の有無であったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、紙幣の傾きや、紙幣の幅方向の位置ずれに基づき、正常に搬送可能であるか否かを判断することもできる。
図21(A)は、変形例2の第1の実施形態における現金自動取引装置のセンサー配置状態を模式的に示す説明図である。変形例2の第1の実施形態における現金自動取引装置は、上述の3つのセンサーS1〜S3に加えて、6つのセンサーS1a〜S3fを備えている点において現金自動取引装置と異なり、他の構成は第1の実施例と同じである。
変形例2の第1の実施形態では、前述のセンサーS1〜S3の列と平行して、センサーS1a,S2b,S3cの列と、センサーS1d,S2e,S3fの列とが配置されている。なお、センサーS1a,S2b,S3cの列と、センサーS1d,S2e,S3fの列と間の距離は、紙幣の幅よりも短い。2つのセンサーS1a,S1dは、入金/出金方向と垂直な方向(水平方向)においてセンサーS1を挟んで並んで配置されている。同様に、2つのセンサーS2b,S2eは水平方向においてセンサーS2を、2つのセンサーS3c,S3fは水平方向においてセンサーS3を、それぞれ挟んで並んで配置されている。
このような構成において、例えば、紙幣受け入れ処理のステップS135(図15)において、3つのセンサーS3,S3c,S3fの出力に基づき、挿入された紙幣の傾きも考慮して紙幣の投入完了を判断することができる。具体的には、例えば、紙幣束C6のように、傾きがなく正常な姿勢で紙幣束が挟持されているケースでは、センサーS3に加えて、2つのセンサーS3c,S3fにおいても光が遮られる。一方、紙幣束C7のように、傾きがある異常な姿勢で紙幣束が挟持されているケースでは、センサーS3において光は遮られるが、センサーS3cにおいて光は遮られていない。したがって、3つのセンサーS3,S3c,S3fのいずれにおいても光が遮られた場合に紙幣投入完了と判断し、いずれかのセンサーにおいて光が遮られない場合に紙幣投入は完了していないと判断することができる。
なお、3つのセンサーS1,S1a,S1d(又はS2,S2b,S2e)のいずれのセンサーにおいても光が遮られない場合に紙幣投入が完了したと判断し、いずれかのセンサーにおいて光が遮られた場合に紙幣投入は完了していないと判断することもできる。また、ステップS135に限らず、例えば、紙幣排出処理のステップS405(図17)において紙幣束の厚みが正常であると判定した後に、さらに、上述した紙幣の傾きを判断して、紙幣が傾いている(異常姿勢である)と判断した場合にステップS460以降の処理を行うこともできる。
図21(B)は、変形例2の第2の実施形態における現金自動取引装置のセンサー配置状態を模式的に示す説明図である。変形例2の第2の実施形態における現金自動取引装置は、センサーS1a,S2b,S3cの列と、センサーS1d,S2e,S3fの列と間の距離が紙幣の幅よりも長い点において、上述した変形例2の第1の実施形態(図21(A))と異なる。
このような構成において、例えば、紙幣受け入れ処理のステップS135(図15)において、3つのセンサーS3,S3c,S3fの出力に基づき、挿入された紙幣の幅方向の位置ずれも考慮して紙幣の投入完了を判断することができる。具体的には、例えば、紙幣C8のように、正常な位置で紙幣束が挟持されているケースでは、3つのセンサーS3,S3c,S3fのうち、センサーS3のみにおいて光が遮られる。一方、紙幣束C9のように、正常な位置から紙幣の幅方向にずれて挟持されているケースでは、センサーS3に加えて、センサーS3cにおいても光が遮られている。したがって、センサーS3のみにおいて光が遮られた場合に紙幣投入完了と判断し、センサーS3c又はセンサーS3lにおいて光が遮られた場合に紙幣投入は完了していないと判断と判断することができる。
すなわち、一般には、紙幣の搬送時の状態に関する任意の情報である搬送関連情報を検知可能な検知部を、本発明の紙葉類取扱装置に採用することができる。
D3.変形例3:
上述した第1の実施例では、紙幣挿入を検知した場合に(図7ステップS125:YES)、一対のクランプ機構402,403のクランプベルトを駆動していたが(ステップS130)、これに代えて、紙幣挿入を検知した後、所定の期間だけ待機した後に一対のクランプ機構402,403のクランプベルトを駆動することもできる。例えば、紙幣挿入を検知した後1秒間だけ待機した後に、クランプベルトを駆動することもできる。このようにすることで、紙幣束をクランプベルトに確実に突き当てることができ、紙幣束の傾きを直してからクランプベルトを駆動させることができる。したがって、クランプベルトによる搬送時において、紙幣の傾きに起因する紙幣ジャムの発生を抑制できる。
D4.変形例4:
上述した第2の実施例では、紙幣挿入前において、後側クランプ機構402は退避位置に配置されていたが、これに代えて、後側押板202と重なる位置に配置することもできる。また、第2の実施例では、紙幣投入前において、前側クランプ機構403は入金位置に配置されていたが(ステップS110a)、これに代えて、後側クランプ機構402と同様に退避位置に配置することもできる。この場合、挿入時において紙幣が自動的に引き込まれることはないが、ストッパー214により紙幣が突き当たるので、利用者は手や指を紙幣留置領域Ra内に挿入せずに済む。
ここで、上述した各実施例の動作モードと、紙幣投入時においていずれのクランプ機構402,403も退避位置に配置し、かつ、ストッパー214を退避位置とする動作モード(以下、従来モードと呼ぶ)と、を切り替え可能に構成することもできる。この構成は、例えば、CPU320が、各モードに応じた入出金制御部として機能し得るように、予め複数の制御プログラムをメモリ312に記憶しておき、保守員が保守用端末等を用いて動作モードを切り替えることで実現できる。このようにすることで、多くの利用者が手や指を装置内部に挿入する行為を恐れる国では、第1,3の実施例のように動作させ、現金自動取引装置が普及しており、利用者が手や指を装置内部に挿入する行為を恐れない国では、従来モードで動作させるように切り替えることができる。それゆえ、いずれの国においても本発明の現金自動取引装置を用いることが可能となる。
D5.変形例5:
上述した第1,3の実施例では、紙幣挿入時において、一対のクランプ機構402,403は、互いに接触していたが、これに代えて、若干の距離を置いて離して配置することもできる。具体的には、第1,3の実施例と同様に、一対のクランプ機構402,403をV字形に配置すると共に、その先端部分を若干(例えば、5ミリメートル程度)離すように配置することもできる。この構成においても、入出金口21に近い位置では、一対のクランプ機構402,403の間の距離は比較的広いので、利用者は紙幣を投入し易くでき、また、多くの紙幣を挿入する場合には、利用者は突き当て感を得ることができる。なお、この構成において、クランプ機構402,403(最下端に配置されたプーリー)を固定して、揺動しない構成とすることもできる。
また、例えば、一対のクランプ機構402,403を若干離して互いに平行に配置することもできる。この構成においても、挿入される紙幣束の厚みに応じて一対のクランプ機構402,403が移動(揺動)可能な構成とすることで、利用者に対して紙幣が引き込まれる感覚を与えることができる。
D6.変形例6:
上述した各実施例では、前側クランプ機構403の2本のクランプベルト及び後側クランプ機構402の2本のクランプベルトは、紙幣の幅方向における中央部分において紙幣を挟持していたが、これに代えて、紙幣の幅方向における両端部分において紙幣を挟持することもできる。また、2つのクランプ機構402,403において、紙幣を挟持して搬送する部分は、クランプベルトにより構成されていたが、これに代えて、一列に並んだ複数のプーリーを用いて構成することもできる。
D7.変形例7:
上述した各実施例では、後側クランプ機構402のクランプベルト411,412の駆動力を生じるアクチュエータA4は、後側クランプ機構402とは独立して構成されており、後側クランプ機構402と共に移動しない構成であったが、本発明は、これに限定されるものではない。アクチュエータA4を、後側クランプ機構402の一部として、例えばガイドプレート415に取り付けて、後側クランプ機構402と共に移動する構成とすることもできる。
D8.変形例8:
上述した各実施例では、入出金機構20は、重力方向(鉛直方向)に対して傾斜して配置されていたが、これに代えて、重力方向(鉛直方向)に沿って配置することもできる。このようにすることで、紙幣投入時において、底板208又はストッパー214に紙幣が突き当たった際に紙幣の下端部分が揃えることができ、紙幣の傾きを直し易くできる。
D9.変形例9:
上述した第3の実施例では、紙幣束の厚みが正常であるか否かを、前側クランプ機構403の移動距離によって判断していたが、これに代えて、他の任意の方法により判断することもできる。具体的には、例えば、一対のクランプ機構402,403の移動時間を測定し、かかる移動時間が所定のしきい値よりも短い場合に、紙幣束の厚みは異常であると判断することもできる。また、例えば、超音波センサーなどを用いて紙幣束の厚みを直接測定して、かかる厚みにより判断することもできる。
D10.変形例10:
上述した各実施例では、本発明の紙葉類取扱装置の一例として、現金自動取引装置への適用例について説明したが、現金自動取引装置に代えて、小切手やハガキや定期券等の任意の紙葉類を取り扱う装置に本発明を適用することができる。
D11.変形例11:
上述した実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。