以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図12は、本実施の形態による紙幣繰出機構およびこのような紙幣繰出機構を備えた紙幣処理装置を示す図である。このうち、図1は、本実施の形態による貨幣処理システムの構成を示す斜視図であり、図2は、図1に示す貨幣処理システムにおける紙幣処理装置の内部構成を示す構成図である。また、図3および図4は、図2に示す紙幣処理装置の紙幣入金口に設けられた紙幣繰出機構の構成を示す側面図であり、図5は、図3等に示す紙幣繰出機構を上方から見たときの構成を示す上面図であり、図6は、図3等に示す紙幣繰出機構を紙幣処理装置の筐体の手前側から見たときの構成を示す前面図である。また、図7は、図3等に示す紙幣繰出機構における、載置部に載置された紙幣を繰出ベルト側に向かって押圧する押圧板、および紙幣の誤挿入を防止するための誤挿入防止板の構成を示す斜視図であり、図8乃至図10は、図3等に示す紙幣繰出機構における繰出ベルト、押圧板および誤挿入防止板の構成を示す側面図である。また、図11は、図2に示す紙幣処理装置の紙幣出金口の構成を示す側面図である。また、図12は、図1に示す貨幣処理システムにおける制御系の構成を示す機能ブロック図である。
まず、図1を用いて本実施の形態による貨幣処理システム10の全体構成について説明する。図1に示すように、本実施の形態による貨幣処理システム10は略直方体形状の筐体12を有しており、当該貨幣処理システム10において紙幣処理装置20および硬貨処理装置80が並列に配設されている。より詳細には、本実施の形態による貨幣処理システム10を正面側から見て左側に紙幣処理装置20が配置されているとともに右側に硬貨処理装置80が配置されている。ここで、紙幣処理装置20は、紙幣の入出金処理等を行う紙幣入出金装置であり、硬貨処理装置80は、硬貨の入出金処理等を行う硬貨入出金装置である。
図1に示すように、紙幣処理装置20の前面には上方から順に紙幣入金口22および紙幣出金口24が設けられている。また、紙幣処理装置20の前面において紙幣出金口24の下方には紙幣収納カセット30が貨幣処理システム10の筐体12に対して着脱自在に設置されている。このような紙幣収納カセット30は紙幣処理装置20の高さ方向における中間位置に配置されている。また、紙幣処理装置20の前面において紙幣収納カセット30の更に下方には出金リジェクト部34が設けられている。
また、図1に示すように、硬貨処理装置80の前面上部には硬貨入金口82が設けられており、この硬貨処理装置80の前面中段には硬貨出金ボックス84が貨幣処理システム10の筐体12に対して着脱自在に設置されている。ここで、紙幣処理装置20の筐体の外部から内部に紙幣を投入するための紙幣入金口22と、硬貨処理装置80の筐体の外部から内部に硬貨を投入するための硬貨入金口82とが、貨幣処理システム10の高さ方向における略同一位置に配置されている。
また、図1に示すように、貨幣処理システム10の上面前方の両端部にはそれぞれ第1の占有ボタン14および第2の占有ボタン16が設けられている。銀行等の金融機関において、図1に示す貨幣処理システム10が窓口の2人のテラーの間に配置され、2人のテラーにより貨幣処理システム10の双頭運用が行われる場合には、各テラーは対応する占有ボタン14、16を押下することにより、貨幣処理システム10の占有を行うことができるようになる。
次に、本実施の形態の貨幣処理システム10における紙幣処理装置20の構成について図2を用いて説明する。図2は、図1に示す貨幣処理システム10における紙幣処理装置20の内部構成を示す構成図である。図2に示すように、紙幣処理装置20の紙幣入金口22には搬送部26が接続されており、紙幣入金口22に投入された紙幣は図示しない繰出機構によって搬送部26に1枚ずつ繰り出され、当該搬送部26により紙幣が1枚ずつ搬送されるようになっている。また、搬送部26には識別部28が設けられており、当該搬送部26により搬送される紙幣は識別部28によりその金種、真偽、正損、表裏等の識別が行われるようになっている。
また、搬送部26には紙幣出金口24、五千円紙幣用集積部32、出金リジェクト部34、千円紙幣用集積部36、一万円紙幣用集積部38がそれぞれ接続されており、搬送部26からこれらの紙幣出金口24、五千円紙幣用集積部32、出金リジェクト部34、千円紙幣用集積部36、一万円紙幣用集積部38の各々に紙幣を送って集積させることができるようになっている。なお、五千円紙幣用集積部32は紙幣収納カセット30内に設けられており、紙幣処理装置20の前面から紙幣収納カセット30を引き出すと、操作者は五千円紙幣用集積部32内にアクセスすることができるようになる。また、この五千円紙幣用集積部32には、五千円紙幣だけではなく二千円紙幣も集積させることができるようになっている。また、本実施の形態では、五千円紙幣用集積部32、千円紙幣用集積部36および一万円紙幣用集積部38の各々の設置箇所は図2に示すような場所に限定されることはなく、これらの集積部32、36、38に集積されるべき紙幣の金種を他の金種に変更することも可能である。
本実施の形態の紙幣処理装置20では、図2に示すように、紙幣処理装置20の奥行き方向における、紙幣処理装置20の筐体から着脱自在となっている紙幣収納カセット30よりも奥側に、搬送部26におけるループ形状の搬送路26aが配設されており、このループ形状の搬送路26aに識別部28が設けられている。
また、図2では図示していないが、五千円紙幣用集積部32、千円紙幣用集積部36および一万円紙幣用集積部38の上方にはそれぞれ一時保留部が各集積部32、36、38に対応して設けられており、搬送部26から各一時保留部に紙幣が搬送されてこれらの一時保留部で紙幣が一時的に保留され、その後入金確定の指令が紙幣処理装置20に与えられることにより各一時保留部から対応する集積部32、36、38に紙幣が送られるようになっている。なお、各一時保留部に紙幣が一時的に保留された後、入金確定の指令ではなく返却の指令が紙幣処理装置20に与えられると、各一時保留部から搬送部26を経て紙幣出金口24に紙幣が戻されるようになっている。
また、五千円紙幣用集積部32、千円紙幣用集積部36および一万円紙幣用集積部38にはそれぞれ繰出機構(図示せず)が設けられており、これらの五千円紙幣用集積部32、千円紙幣用集積部36および一万円紙幣用集積部38に集積された紙幣を当該繰出機構により搬送部26に1枚ずつ繰り出すことができるようになっている。また、紙幣処理装置20の前面における出金リジェクト部34の設置箇所には扉が設けられており、権限を有する操作者が鍵等によりこの扉を開くことにより出金リジェクト部34の内部にアクセスすることができるようになっている。
本実施の形態の紙幣処理装置20では、紙幣入金口22に投入された紙幣は、後述する紙幣繰出機構40により、その長手方向と平行な方向に沿って搬送部26に1枚ずつ繰り出されるようになっている。また、搬送部26は、紙幣の長手方向と平行な方向に沿って当該紙幣を1枚ずつ搬送するようになっている。このことにより、紙幣処理装置20の幅の大きさをより一層小さくすることができる。なお、紙幣繰出機構40による紙幣の繰出方向や搬送部26による紙幣の搬送方向はこのような態様に限定されることはなく、紙幣繰出機構40が、紙幣の短手方向と平行な方向に沿って当該紙幣を搬送部26に1枚ずつ繰り出したり、搬送部26が、紙幣の短手方向と平行な方向に沿って当該紙幣を1枚ずつ搬送したりするようになっていてもよい。
次に、本実施の形態による貨幣処理システム10の制御系の構成について図12を用いて説明する。図12に示すように、貨幣処理システム10には、当該貨幣処理システム10の各構成部材を制御するための本体制御部90が設けられている。また、本体制御部90には、紙幣処理装置20の各構成部材を制御するための紙幣制御部91および硬貨処理装置80の各構成部材を制御するための硬貨制御部92がそれぞれ通信可能に接続されている。ここで、紙幣制御部91には、搬送部26、識別部28、集積部32、36、38、出金リジェクト部34、紙幣繰出機構40がそれぞれ通信可能に接続されており、当該紙幣制御部91は搬送部26、識別部28、集積部32、36、38、出金リジェクト部34、紙幣繰出機構40等の各構成部材を制御するようになっている。また、硬貨制御部92には、硬貨入金口82に投入された硬貨を硬貨処理装置80の筐体内に1枚ずつ繰り出すための硬貨繰出機構83等の、硬貨処理装置80各処理部が通信可能に接続されており、当該硬貨制御部92は硬貨処理装置80の各構成部材を制御するようになっている。
また、本体制御部90には、操作表示部94、記憶部96、通信インターフェース部98等がそれぞれ通信可能に接続されている。操作表示部94は、例えば貨幣処理システム10の筐体12の上面に設けられたタッチパネル等からなり、紙幣処理装置20や硬貨処理装置80における紙幣や硬貨の処理状況や在高に係る情報が操作表示部94に表示されるようになっている。また、操作者は操作表示部94により本体制御部90に対して様々な情報を入力することができるようになっている。また、記憶部96には、紙幣処理装置20や硬貨処理装置80における紙幣や硬貨の処理状況や在高に係る情報が記憶されるようになっている。また、通信インターフェース部98は、貨幣処理システム10とは別に設けられた上位端末等の外部装置に対して信号の送受信を行うことができるようになっている。
次に、図2に示す紙幣処理装置20における紙幣入金口22の構成の詳細について図3乃至図10を用いて説明する。なお、図3乃至図10において、紙幣入金口22に投入された紙幣を参照符号Pで示している。
上述したように、紙幣入金口22には、紙幣処理装置20の筐体の外部から内部に紙幣を1枚ずつ繰り出すための紙幣繰出機構40が設けられている。ここで、図3に示すように、紙幣繰出機構40は、繰り出されるべき紙幣が載置される載置部48と、載置部48に載置された紙幣を紙幣処理装置20の筐体の内部に繰り出す繰出部としての繰出ベルト42と、繰出ベルト42により繰り出された紙幣を1枚ずつに分離する分離部としての逆転ローラ44とを有している。ここで、載置部48は、紙幣が束状態で投入される紙幣投入口41の底面46から上方に突出するよう設けられた左右一対の突起形状のものからなる。このような載置部48の構成の詳細については後述する。
図3等に示すように、繰出ベルト42は無端状の循環ベルトからなり、当該繰出ベルト42は複数のプーリ42aに張架されている。また、複数のプーリ42aのうちある一つのプーリ42aには駆動モータ43(図12参照)が接続されており、当該駆動モータ43によりこの駆動モータ43に接続されたプーリ42aが回転駆動されることによって繰出ベルト42は図3における矢印方向に循環移動するようになっている。このような繰出ベルト42により、載置部48に積層状態で載置された複数の紙幣のうち最下層に位置する紙幣が当該繰出ベルト42との間で働く摩擦力により図3における右方向に繰り出されるようになる。
繰出ベルト42により繰り出された紙幣を1枚ずつに分離する分離部としての逆転ローラ44は、繰出ベルト42による紙幣の繰出方向とは逆方向(すなわち、図3における時計回りの方向)に回転するようになっている。このような逆転ローラ44が設けられていることにより、載置部48に積層状態で載置された複数の紙幣のうち2枚以上の紙幣が繰出ベルト42により同時に繰り出されてしまった場合でも、1枚の紙幣しか繰出ベルト42と逆転ローラ44との間を通過することができないため、繰出ベルト42により繰り出された紙幣を1枚ずつに分離することができるようになる。
図5および図6に示すように、載置部48は、紙幣繰出機構40により繰り出されるべき紙幣の幅方向に沿って並ぶよう左右一対設けられている。また、左右一対の載置部48の各々は、紙幣が束状態で投入される紙幣投入口41の底面46から上方に突出するよう設けられたものからなり、各載置部48は紙幣繰出機構40を側方から見たときに頂点が上を向くような三角形形状となっている(図3および図4参照)。ここで、図3や図4に示すように、各載置部48は、紙幣繰出機構40により繰り出されるべき紙幣が載置されたときに紙幣の繰出方向における当該紙幣の後端縁の近傍の箇所に接するようになっている。これらの事項により、各載置部48の三角形形状の頂点部分が、当該各載置部48に載置された紙幣の下方の面の一部分に接するようになる。また、図5および図6に示すように、左右一対の載置部48の各々は、紙幣繰出機構40により繰り出されるべき紙幣が載置されたときに当該紙幣の両端縁の近傍の箇所に接するようになっている。
このような構成の左右一対の載置部48が紙幣繰出機構40に設けられていることにより、操作者によって紙幣入金口22に紙幣の束が投入される際に、この紙幣の束に硬貨やクリップ等の異物が挟まれていた場合において、載置部48に積層状態で載置された複数の紙幣が1枚ずつ繰出ベルト42により紙幣処理装置20の筐体の内部に順次繰り出される際に、紙幣の間に挟まれていた異物は載置部48が設けられていない箇所に落下するようになり、異物を取り除かなくても繰出ベルト42による紙幣の繰出動作を続行することができるようになる。具体的には、紙幣の間に挟まれていた異物は、紙幣投入口41の底面46や、この紙幣投入口41の底面46に設けられた後述する凹部47(図6参照)に集積されるようになる。
本実施の形態では、左右一対の載置部48は、少なくとも硬貨の直径よりも大きな距離だけ隔てて設けられている。このことにより、操作者によって紙幣入金口22に投入された紙幣の束に硬貨が挟まれていた場合でも、載置部48に載置された紙幣が繰出ベルト42により順次繰り出される際にこの硬貨を一対の載置部48の間の領域に落とすことができるようになる。また、本実施の形態では、図6に示すように、紙幣投入口41の底面46において左右一対の載置部48の間の箇所には凹部47が形成されており、一対の載置部48の間の領域に落ちた硬貨等の異物をこの凹部47に収容させることができるようになっている。このような凹部47は、載置部48に載置された紙幣から落下した異物を受けるための異物受け部として機能するようになっている。
また、本実施の形態では、図3に示すように、載置部48は、当該載置部48に載置された紙幣の先端縁の近傍の箇所を、循環ベルトからなる繰出ベルト42に接近または当接させるよう当該紙幣の後端縁の近傍の箇所を先端縁よりも上方に持ち上げるような形状となっている。このことにより、繰出ベルト42に接触する紙幣の先端縁の近傍の面積を大きくすることができるため、載置部48の設置を省略して紙幣投入口41の底面46に紙幣を直接載置する場合と比較して、繰出ベルト42による繰出力(送出力)を最下層の紙幣に効率良く与えることができるようになり、静電気を帯びた紙幣の束や湿った紙幣の束が紙幣投入口41に投入されて載置部48に載置された場合でも、当該紙幣を繰出ベルト42によって確実に紙幣処理装置20の筐体の内部に繰り出すことができるようになる。
また、本実施の形態では、紙幣投入口41の底面46や凹部47には、載置部48に載置された紙幣から落下した異物を検知するための磁気センサ等の異物検知部49(図12参照)が設けられている。このような異物検知部49が設けられていることにより、載置部48に載置された紙幣が繰出ベルト42により順次繰り出される際に、紙幣の間に挟まれていた異物が当該紙幣から落下して紙幣投入口41の底面46や凹部47に集積されたときにこの異物を検知することができるようになる。
また、本実施の形態では、載置部48に載置された紙幣から落下した異物が異物検知部49により検知されると、このことが操作表示部94に表示されるようになっている。操作者は、操作表示部94に表示された異物に係る情報を目で確認することにより、紙幣投入口41の底面46や凹部47から異物を取り除くことができるようになる。このように、操作表示部94は、異物検知部49により異物が検知されたときにこのことを報知するための報知部として機能するようになる。なお、載置部48に載置された紙幣から落下した異物が異物検知部49により検知されたときに、このことが操作表示部94に表示される代わりに、あるいはこのことが操作表示部94に表示されることに加えて、音声等により操作者に対して聴覚的に報知が行われるようになっていてもよい。
また、図3等に示すように、紙幣入金口22には、載置部48された紙幣の束を上方から繰出ベルト42に向かって押圧する押圧板52、および紙幣投入口41への紙幣の誤挿入を防止するための誤挿入防止板56がそれぞれ繰出ベルト42の上方に設けられている。これらの押圧板52および誤挿入防止板56の構成の詳細について図7乃至図10を用いて説明する。なお、図7は、図3等に示す紙幣繰出機構40における押圧板52および誤挿入防止板56の構成を示す斜視図であり、図8乃至図10は、図3等に示す紙幣繰出機構40における繰出ベルト42、押圧板52および誤挿入防止板56の構成を示す側面図である。より詳細には、図8は、載置部48に載置された紙幣が全て繰出ベルト42により繰り出された後の状態を示す図であり、図9は、載置部48に複数の紙幣が積層状態で載置されたときの状態を示す図であり、図10は、押圧板52および誤挿入防止板56が上方の退避位置に退避しているときの状態を示す図である。
図7に示すように、押圧板52の基端部は軸54により回転自在に支持されており、当該押圧板52の先端部により、載置部48に載置された紙幣の束が繰出ベルト42に向かって下方に押圧されるようになっている。より詳細には、押圧板52の基端部における軸54の周囲には図示しないねじりバネ等の付勢手段が設けられており、当該付勢手段により押圧板52は軸54を中心として図3および図4における時計回りの方向に回転する力が常に付勢されるようになっている。また、押圧板52はビス52aにより軸54に取り付けられており、押圧板52および軸54は一体的に回転するようになっている。また、軸54の端部近傍には、後述する押圧ピン66により下方から押し上げられる被押圧板55がビス55aにより取り付けられている。また、誤挿入防止板56の基端部は軸58により回転自在に支持されており、当該誤挿入防止板56の先端部が図8に示すように繰出ベルト42に接近した位置に移動すると、操作者による紙幣投入口41への紙幣の誤挿入が防止されるようになる。より詳細には、誤挿入防止板56の基端部における軸58の周囲には図示しないねじりバネ等の付勢手段が設けられており、当該付勢手段により誤挿入防止板56は軸58を中心として図3および図4における反時計回りの方向に回転する力が常に付勢されるようになっている。また、誤挿入防止板56の両側部には当該誤挿入防止板56の両側縁からそれぞれ外側に突出する左右一対の突出部材56aが設けられており、押圧板52が軸54を中心として上方に押し上げられると、当該押圧板52により各突出部材56aが下面側から押し上げられるようになっている。
また、図7に示すように、押圧板52および誤挿入防止板56を一体的に上方に押し上げる駆動機構としてソレノイド60が設けられており、このソレノイド60は当該ソレノイド60に接続された第1のリンク部材61を進退させることができるようになっている。また、第1のリンク部材61には第2のリンク部材62が接続されている。具体的には、第2のリンク部材62は第1のリンク部材61に対して軸62aを中心として回転自在となるよう当該第1のリンク部材61に接続されている。また、第2のリンク部材62にはローラ64が回転自在に設けられており、当該ローラ64は押圧板52の上面に載せられるようになっている。また、第2のリンク部材62には押圧ピン66が設けられており、当該押圧ピン66により被押圧板55が下方から押し上げられるようになっている。より詳細には、ソレノイド60により第1のリンク部材61が当該ソレノイド60側に引かれると、ローラ64を中心として第2のリンク部材62が図7における時計回りの方向に回転し、この第2のリンク部材562に取り付けられた押圧ピン66が上方に移動することにより当該押圧ピン66によって被押圧板55が押し上げられる。このことにより、軸54を中心として押圧板52および軸54が一体的に回転し、当該押圧板52の先端部分が上方に押し上げられるようになる。また、上述したように、押圧板52の先端部分が軸54を中心として上方に押し上げられると、当該押圧板52により各突出部材56aが下面側から押し上げられるようになり、誤挿入防止板56は軸58を中心として回転する。このことにより、誤挿入防止板56の先端部分が上方に押し上げられるようになる。
貨幣処理システム10が待機状態にあるときには、図10に示すように、ソレノイド60により第1のリンク部材61が当該ソレノイド60側に引かれることによって押圧板52の先端部分が上方に押し上げられるとともに誤挿入防止板56の先端部分が上方に押し上げられ、よって押圧板52および誤挿入防止板56が上方の退避位置に退避している。このことにより、操作者は紙幣入金口22に紙幣の束を投入することができるようになる。紙幣入金口22に投入された紙幣の束は、図3に示すように、その最下層の紙幣の先端縁の近傍の箇所が繰出ベルト42に接触するともに、当該最下層の紙幣の後端縁の近傍の箇所が載置部48に接触するようになる。その後、紙幣入金口22に投入された紙幣が繰出ベルト42により紙幣処理装置20の筐体の内部に繰り出される際に、ソレノイド60により第1のリンク部材61が当該ソレノイド60から遠ざかる側に押されるようになり、押圧ピン66によって被押圧板55が上方に押し上げられることがなくなる。このため、押圧板52に対してねじりバネ等の付勢手段により軸54を中心として図3および図4における時計回りの方向に回転する力が付勢され、また、誤挿入防止板56に対してねじりバネ等の付勢手段により軸58を中心として図3および図4における反時計回りの方向に回転する力が付勢され、このことにより押圧板52の先端部および誤挿入防止板56の先端部はそれぞれ繰出ベルト42に接近するよう下方に移動する(図9参照)。このことにより、載置部48に積層状態で載置された複数の紙幣のうち最上層の紙幣の先端縁の近傍の箇所が押圧板52により繰出ベルト42側に向かって押圧され、よって繰出ベルト42による繰出力(送出力)を大きくすることができるため紙幣の繰出動作をより確実に行うことができるようになる。
載置部48に載置された紙幣が全て繰出ベルト42により紙幣処理装置20の筐体の内部に繰り出されると、図8に示すように、押圧板52の先端部は繰出ベルト42に接触するとともに誤挿入防止板56の先端部は繰出ベルト42の近傍の箇所に位置するようになる。このことにより、操作者が紙幣入金口22に紙幣を誤挿入してしまうことが防止される。
次に、図2に示す紙幣処理装置20における紙幣出金口24の構成の詳細について図11を用いて説明する。なお、図11において、紙幣出金口24から出金されるべき紙幣を参照符号P1〜P3で示している。
図11に示すように、紙幣出金口24には、紙幣が積層状態で集積される集積繰出機構70が設けられており、搬送部26から紙幣出金口24に送られた紙幣は集積繰出機構70上に集積されるようになっている。ここで、集積繰出機構70には複数のローラ70aが設けられており、また、集積繰出機構70の上方にも当該集積繰出機構70に対向して複数のローラ74が設けられている。そして、集積繰出機構70に紙幣が積層状態で集積された後、当該集積繰出機構70や各ローラ70aが上方に移動するとともに各ローラ74が図11における反時計回りの方向に回転することにより、集積繰出機構70に集積された複数の紙幣が各ローラ74および各ローラ70aにより上下から挟まれた状態で案内されながら一括して開口24aから紙幣処理装置20の筐体の外部に排出されるようになっている。
また、紙幣出金口24における搬送部26の近傍の箇所には、図11において時計回りの方向に回転する札叩きゴム72が設けられている。そして、搬送部26から紙幣出金口24に送られた紙幣は、図11において時計回りの方向に回転する札叩きゴム72によってその後端縁が叩かれることにより、当該紙幣は図11における右方向に押されるようになる。このことにより、集積繰出機構70には、搬送部26から送られた紙幣の先端縁(すなわち、図11における右端の端縁)が揃った状態で集積されるようになる。このように、本実施の形態では、札叩きゴム72は、集積繰出機構70に集積されるべき紙幣を、当該紙幣の先端縁の位置が揃うように前方向(図11における右方向)に向かって移動させるよう叩くような位置に設けられている。
本実施の形態では、搬送部26から紙幣出金口24に送られた紙幣の長手方向(すなわち、図11における左右方向)における集積繰出機構70の長さaは、紙幣処理装置20により処理される紙幣のうち最もサイズが大きい紙幣(具体的には、例えば一万円紙幣)の長手方向の長さよりも所定の大きさ(例えば、2mm)だけ大きくなっている。また、集積繰出機構70に紙幣が集積される集積方向(すなわち、図11における上下方向)における集積繰出機構70の長さbは、紙幣処理装置20により処理される紙幣のうち最もサイズが大きい紙幣(具体的には、例えば一万円紙幣)の100枚分の厚みよりも、紙幣の集積空間としての所定の高さ(例えば、18mm)だけ大きくなっている。
また、本実施の形態では、紙幣処理装置20から複数の金種の紙幣が出金される際に、サイズの大きな紙幣から順に搬送部26から紙幣出金口24に送られるようになっている。具体的には、紙幣処理装置20において出金処理が行われる際に千円紙幣、五千円紙幣および一万円紙幣が搬送部26から紙幣出金口24に送られる場合には、最初にサイズが最も大きい一万円紙幣(図11において参照符号P1で表示)が集積繰出機構70上に積層状態で載置され、次に、千円紙幣よりもサイズが大きい五千円紙幣(図11において参照符号P2で表示)が集積繰出機構70上に積層状態で載置され、最後にサイズが最も小さい千円紙幣(図11において参照符号P3で表示)が集積繰出機構70上に積層状態で載置される。また、搬送部26から紙幣出金口24に送られる紙幣は、図11において時計回りの方向に回転する札叩きゴム72によりその後端縁が叩かれることにより、集積繰出機構70には、搬送部26から送られた紙幣の先端縁が揃った状態で集積されるようになる。ここで、集積繰出機構70において、集積される紙幣の位置が高くなるほど、札叩きゴム72により前方へ送り出される力が大きくなるため、サイズが大きな紙幣を先に集積繰出機構70に集積させ、サイズの小さな紙幣を後で集積繰出機構70に集積させることで、集積繰出機構70上において複数の金種の紙幣における長手方向の長さの差異を吸収して各金種の先端縁を確実に揃えることができるようになる。このようにして、集積繰出機構70に集積された複数の紙幣が一括して開口24aから紙幣処理装置20の筐体の外部に排出される際に、各金種の紙幣の先端縁が揃った状態で開口24aから排出されるため、操作者は紙幣出金口24の開口24aから紙幣の束を取りやすくなる。
以上のような構成からなる本実施の形態の紙幣繰出機構40およびこのような紙幣繰出機構40を備えた紙幣処理装置20によれば、繰り出されるべき紙幣が積層状態で載置される載置部48は、繰り出されるべき紙幣が載置されたときに当該紙幣の下方の面の一部分に接するよう構成されている。このことにより、紙幣処理装置20の筐体の外部から内部に繰り出されるべき紙幣が載置部48に積層状態で載置されたときに当該紙幣の間に挟まれていた硬貨やクリップ等の異物は載置部48が設けられていない箇所に落下するようになり、このため異物を取り除かなくても紙幣の繰出動作を続行することができるため処理時間を短縮することができる。
また、本実施の形態の紙幣繰出機構40においては、上述したように、載置部48は、繰り出されるべき紙幣が載置されたときに繰出ベルト42による紙幣の繰出方向における当該紙幣の後端縁の近傍の箇所に接するよう構成されている。また、載置部48は、繰り出されるべき紙幣が載置されたときに当該紙幣の幅方向における一部分に接するよう構成されている。より詳細には、載置部48は、繰り出されるべき紙幣が載置されたときに当該紙幣の幅方向における両端縁の近傍の箇所にそれぞれ接するよう少なくとも2つ設けられている。この場合に、少なくとも2つの載置部48は、少なくとも硬貨の直径よりも大きな距離だけ隔てて設けられている。また、載置部48は、紙幣が投入される紙幣投入口41の底面46から上方に突出するよう構成されている。
また、本実施の形態の紙幣繰出機構40においては、上述したように、載置部48の下方には、当該載置部48に載置された紙幣から落下した異物を受けるための異物受け部として凹部47が設けられている。
また、本実施の形態の紙幣繰出機構40においては、上述したように、載置部48に載置された紙幣から落下した異物を検知するための磁気センサ等の異物検知部49が設けられている。具体的には、このような異物検知部49は、紙幣投入口41の底面46や凹部47に設けられている。また、異物検知部49により異物が検知されたときにこのことを報知するための報知部として、操作表示部94が設けられている。
また、本実施の形態の紙幣繰出機構40においては、上述したように、載置部48は、当該載置部48に載置された紙幣の先端縁の近傍の箇所を前記繰出ベルト42に接近または当接させるよう当該紙幣の後端縁の近傍の箇所を持ち上げるよう構成されている。この場合には、繰出ベルト42に接触する紙幣の先端縁の近傍の面積を大きくすることができるため、繰出ベルト42による繰出力(送出力)を最下層の紙幣に効率良く与えることができるようになり、静電気を帯びた紙幣の束や湿った紙幣の束が紙幣投入口41に投入されて載置部48に載置された場合でも、当該紙幣を繰出ベルト42によって確実に紙幣処理装置20の筐体の内部に繰り出すことができるようになる。
なお、本実施の形態による紙幣処理装置20やこのような紙幣処理装置20に設けられた紙幣繰出機構40は、上述したような態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
例えば、紙幣処理装置20の紙幣入金口22において、紙幣が投入される紙幣投入口41の底面46には、当該底面46から異物を下方に落下させるシュートが設けられており、このシュートの下端部の近傍に、異物受け皿等の異物受け部を配設してもよい。この場合、異物受け皿等の異物受け部を、紙幣処理装置20の筐体の内部から外部に取り外し自在に設置してもよい。この場合には、載置部48に載置された紙幣から落下した異物はシュートを介して異物受け皿等の異物受け部に送られるようになり、この異物受け部を紙幣処理装置20の筐体の内部から外部に取り外すことにより、異物を簡単に除去することができるようになる。また、この場合には、載置部48に載置された紙幣から落下した異物を検知するための磁気センサ等の異物検知部49を、シュートの下端部の近傍に設けられた異物受け皿等の異物受け部に設けてもよい。
また、別の変形例に係る紙幣処理装置20において、紙幣入金口22に投入された紙幣が繰出ベルト42により紙幣処理装置20の筐体の内部に全て繰り出された後、繰出ベルト42は紙幣の繰出方向とは逆方向(すなわち、図3や図4における矢印で示す方向とは逆の方向)に回転するようになっていてもよい。この場合には、紙幣処理装置20の紙幣入金口22に投入された紙幣が紙幣処理装置20の筐体の内部に全て繰り出された後、繰出ベルト42上に硬貨やクリップ等の異物が残留してしまった場合でも、繰出ベルト42上の異物を紙幣投入口41の底面46や凹部47に送ることができるため、紙幣入金口22から当該異物を取り除くことができるようになる。
また、更に別の変形例に係る紙幣処理装置20において、紙幣入金口22に投入された紙幣が繰出ベルト42により紙幣処理装置20の筐体の内部に繰り出されている最中に、紙幣処理装置20において紙幣の詰まり(ジャム)等のエラーが発生したときに、繰出ベルト42は紙幣の繰出方向とは逆方向に回転するようになっていてもよい。この場合には、紙幣処理装置20において紙幣の詰まり(ジャム)等のエラーが発生したときに、繰出ベルト42上に硬貨やクリップ等の異物が残留してしまった場合でも、繰出ベルト42上の異物を紙幣投入口41の底面46や凹部47に送ることができるため、紙幣入金口22から当該異物を取り除くことができるようになる。
また、本発明による紙葉類繰出機構や紙葉類処理装置は、紙幣の繰り出しを行う紙幣繰出機構40や紙幣の処理を行う紙幣処理装置20に限定されることはない。本発明による紙葉類繰出機構や紙葉類処理装置として、紙幣以外の紙葉類(例えば、商品券や小切手等)の繰り出しを行うものや、紙幣以外の紙葉類の処理を行うものが用いられてもよい。