JP5307175B2 - ポリクロロプレンラテックス及びその製造方法、並びに水系接着剤 - Google Patents

ポリクロロプレンラテックス及びその製造方法、並びに水系接着剤 Download PDF

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Description

本発明は、ポリクロロプレンラテックス及びその製造方法、並びにこのポリクロロプレンラテックスを使用した水系接着剤に関する。より詳しくは、乳化重合法で製造されるポリクロロプレンラテックスの品質改良技術に関する。
ポリビニルアルコールを乳化剤に用いたポリクロロプレンラテックス(PVA乳化型ポリクロロプレンラテックス)は、粘着付与樹脂エマルジョンや増粘剤などの各種配合剤との相溶性に優れ、配合設計の自由度が高く、各種被着体に塗布した後のタック性に優れるという特徴がある。PVA乳化型ポリクロロプレンラテックスは、このような特徴を活かして、合板などの木材同士や、発泡断熱材とコンクリートなどとを接着するための水系接着剤に利用されている。
ところが、これらの水系接着剤は、乾燥した時に、接着剤層の表面にポリビニルアルコールがブリードすることがあり、湿度が高い場所や水に濡れやすい場所で使用すると、接着不良を起こす可能性がある。このため、ポリクロロプレンラテックスを用いた水系接着剤では、様々な方法で、耐水接着力の改良が検討されている。
水系接着剤における従来の耐水接着力の改良技術は、(1)ポリクロロプレンラテックスにポリビニルアルコール以外の添加剤を含有させる方法(例えば、特許文献1〜3参照)、(2)ポリクロロプレンの構造を改良する方法(例えば、特許文献4参照)、(3)ポリビニルアルコールの構造を改良する方法(例えば、特許文献5,6参照)に大別することができる。
これらの改良技術のうち、(1)の例としては、特許文献1に記載されているように、特定構造のノニオン系乳化剤の存在下において、0〜20℃の温度範囲で、クロロプレンを乳化重合する方法が提案されている。この方法では、初期接着力、常態接着力、耐水接着力に優れた水系接着剤用のポリクロロプレンラテックスを得ることができる。
また、特許文献2には、ポリビニルアルコール存在下で、クロロプレンと特定量のエチレン性不飽和カルボン酸を乳化共重合した後、pH調整剤(弱酸塩)とラジカル捕捉剤とを加える方法が提案されている。この特許文献2に記載の製造方法では、ポリクロロプレンラテックス組成物の耐水接着力向上に加えて、貯蔵安定性を良好にすることを目的としている。更に、特許文献3に記載の接着剤組成物では、ポリクロロプレンラテックスに、チオウレア化合物を配合することにより、耐水接着力向上を図っている。
(2)の改良技術の例としては、特許文献4に記載のポリクロロプレンラテックス組成物の製造方法のように、ポリビニルアルコール及びノニオン系乳化剤が特定量存在する条件下で、クロロプレンとエチレン性不飽和カルボン酸とを乳化共重合する方法がある。この方法では、ゲル含有量10〜70質量%、pHが6〜9のポリクロロプレンラテックスが得られる。
(3)の改良技術の例としては、特許文献5に記載のポリクロロプレン系ラテックスの製造方法のように、分子内にエチレン単位を1〜15モル%含有するポリビニルアルコールを乳化剤として使用する方法がある。また、特許文献6には、1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するポリビニルアルコールを乳化剤として使用するポリクロロプレンラテックスの製造方法も提案されている。これら特許文献5,6に記載の方法では、耐水接着力に加えて、コンタクト性や耐熱クリープ性などの接着性能の向上も図っている。
特開2006−160804号公報 特開2002−53703号公報(特許第4342706号) 特開2000−256511号公報(特許第4244253号) 特開2007−63370号公報 特開2001−139611号公報 特開2004−346183号公報
しかしながら、前述した改良技術によって、PVA乳化型ポリクロロプレンラテックスを用いた水系接着剤の耐水接着力は向上しているが、未だ十分とは言えない。具体的には、靴のゴム部材の接着や、ウェットスーツ生地の発泡ゴムと布の接着など、高い耐水接着力が要求される分野においては、更なる改良が求められている。
そこで、本発明は、耐水性に優れ、高い耐水接着力が要求される水系接着剤に好適なポリビニルアルコール乳化型ポリクロロプレンラテックス及びその製造方法、並びに水系接着剤を提供することを主目的とする。
本発明者は、前述した問題を解決すべく鋭意検討を行った結果、乳化剤として使用するポリビニルアルコールを、分子内に炭素−炭素二重結合を有するものにすると、ポリクロロプレンラテックスの耐水性が著しく向上することを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明に係るポリクロロプレンラテックスは、分子内に炭素−炭素二重結合とカルボニル基とを有し、鹸化度が65〜95mol%、0.2質量%水溶液又は水メタノール混合溶液における20℃での波長280nmの吸光度が0.1〜3.0であり、かつJIS K 6726に規定される方法で測定した粘度が3〜10mPa・sであるポリビニルアルコールの存在下で、クロロプレン単独又はクロロプレンと他の単量体とを乳化重合して得たものである。
本発明においては、分子内に炭素−炭素二重結合を有する反応性のポリビニルアルコールを乳化剤として重合したものであるため、ポリビニルアルコールとポリクロロプレンとの間に共有結合が形成される。その結果、ポリクロロプレンラテックスの乾燥被膜における耐水性が向上する。
このポリクロロプレンラテックスは、主成分として含有されるクロロプレン重合体を、クロロプレンとカルボキシル基含有ビニル単量体との共重合体とすることができる。
本発明に係るポリクロロプレンラテックスの製造方法は、分子内に炭素−炭素二重結合とカルボニル基とを有し、鹸化度が65〜95mol%、0.2質量%水溶液又は水メタノール混合溶液における20℃での波長280nmの吸光度が0.1〜3.0であり、かつJIS K 6726に規定される方法で測定した粘度が3〜10mPa・sのポリビニルアルコールの存在下で、クロロプレン単独又はクロロプレンと他の単量体とを乳化重合する。
この製造方法では、クロロプレンとカルボキシル基含有ビニル単量体とを乳化重合してもよい。
本発明に係る水系接着剤は、前述したポリクロロプレンラテックスを含有するものである。
この接着剤は、分子内に炭素−炭素二重結合を有するポリビニルアルコールの存在下で乳化重合した耐水性に優れたポリクロロプレンラテックスを使用しているため、耐水接着性が向上する。
本発明によれば、乳化剤として、炭素−炭素二重結合を有するポリビニルアルコールを使用しているため、耐水性が向上し、水系接着剤としたときに優れた耐水接着性が得られるポリクロロプレンラテックスが得られる。
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態に係るポリクロロプレンラテックスについて説明する。本実施形態のポリクロロプレンラテックスは、クロロプレン重合体を、ポリビニルアルコール(以下、PVAともいう。)を介して乳化させたラテックス(エマルジョン)である。ここで、「クロロプレン重合体」には、2−クロロ−1,3−ブタジエン(以下、クロロプレンという。)の単独重合体だけでなく、クロロプレンと他の単量体との共重合体も含む。
本実施形態のPVA乳化型ポリクロロプレンラテックスは、PVAを乳化剤に用いて、クロロプレン単独又はクロロプレンと他の単量体とを、水中で、ラジカル乳化重合することにより製造される。
[単量体]
クロロプレンと共重合可能な単量体としては、例えば、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、硫黄、メタクリル酸及びそのエステル類、アクリル酸及びそのエステル類が挙げられ、必要に応じて2種類以上用いても良い。
本実施形態のPVA乳化型ポリクロロプレンラテックスに含まれるクロロプレン重合体は、クロロプレンとカルボキシル基含有ビニル単量体の共重合体であることが好ましい。カルボキシル基含有ビニル単量体を共重合させると、接着剤に酸化亜鉛や酸化マグネシウムといった金属酸化物を配合した時に、2価金属イオンとカルボキシル基の架橋が起こり、耐熱性や耐溶剤性といった接着性能を向上させることができるからである。
なお、カルボキシル基含有ビニル単量体としては、メタクリル酸が最も好ましく、その仕込み量は、単量体の合計100質量部のうち、カルボキシル基含有ビニル単量体が0.01〜5質量部が好ましい。これにより、接着剤としたときの接着性能をより向上させることができる。
[PVA]
本実施形態のポリクロロプレンラテックスは、ビニルエステル単量体の単独重合体又はビニルエステル単量体と他の単量体との共重合体を鹸化して得た重合体で、かつ、主鎖に炭素−炭素二重結合を有するPVAを、乳化剤として使用している。このように、主鎖に炭素−炭素二重結合を有するPVAを、乳化剤に使用すると、PVAとポリクロロプレンとの間に共有結合が形成され、ポリクロロプレンラテックスの乾燥皮膜の耐水性を向上させることができる。
また、乳化剤として使用するPVAは、下記化学式(1)に示すように、分子内に、炭素−炭素二重結合に加えて、カルボニル基を有することが望ましい。なお、下記化学式(1)に示すnは1〜3の整数である。
Figure 0005307175
PVAが上記化学式(1)の構造を有することは、PVAの水溶液の紫外線スペクトルを測定することにより確認することができる。例えば、−CO−CH=CH−の構造については波長215nmの吸光度を、−CO−(CH=CH)−の構造については波長280nmの吸光度を、−CO−(CH=CH)−の構造については波長320nmの吸光度を、それぞれ評価すればよい。
そして、本実施形態のポリクロロプレンラテックスで使用するPVAは、0.2質量%水溶液又は水メタノール混合溶液について、光路長1cmの石英セルを使用して測定した20℃における波長280nmの吸光度が、0.1〜3.0であることが好ましい。なお、波長280nmの吸光度が0.1未満の場合、PVAの乳化剤としての性質が不十分となり、ポリクロロプレンラテックスの貯蔵安定性が低下することがある。
また、波長280nmの吸光度が3.0を超えると、PVA自体の色調が濃褐色となるため、それを使用して製造したPVA乳化型ポリクロロプレンラテックスが着色してしまい、接着剤として使用すると、塗工部分の美観を損ねてしまう可能性がある。更に、工業的に製造しやすい観点から、特に好ましい吸光度の範囲は、0.3〜1.5である。
上記化学式(1)の構造を有するPVAは、ビニルエステル単量体を、アルデヒド化合物又はケトン化合物からなる連鎖移動剤の存在下でラジカル重合した後、鹸化し、更に必要に応じて加熱処理することによって得られる。
その際使用するビニルエステル単量体としては、特に限定するものではないが、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル及びバーサティック酸ビニルなどが挙げられる。また、これらの中でも特に、重合時の安定性に優れる酢酸ビニルを使用することが望ましい。
また、PVAの製造時には、必要に応じて、前述した各ビニルエステル単量体と他の単量体とを共重合してもよい。ビニルエステル単量体と共重合する他の単量体は、特に限定するものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンなどのオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フタル酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和酸類、又はその塩類、アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩又はその4級塩などのアクリルアミド類、メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩又はその4級塩などのメタクリルアミド類、炭素数1〜18のアルキル鎖長を有するアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニルアミド類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類、トリメトキシビニルシランなどのビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコールなどのアリル化合物、ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物及び酢酸イソプロペニルなどが挙げられる。
なお、ビニルエステル単量体と共重合する他の単量体の使用量は、特に限定するものではないが、単量体全量に対して1.0×10−3mol%以上で、かつ2.0×10mol%未満であることが好ましい。
ビニルエステル単量体の重合方法は、特に限定するものではなく、公知のラジカル重合方法を採用することができる。一般には、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコールなどのアルコールを溶媒とする溶液重合により製造されるが、バルク重合や乳化重合や懸濁重合などで製造してもよい。また、バルク重合又は溶液重合を行う場合には、連続重合でもよいし、バッチ重合でもよい。更に、単量体は一括して仕込んでもよいし、分割して仕込んでもよく、あるいは連続的又は断続的に添加してもよい。
ラジカル重合において使用する重合開始剤は、特に限定するものではないが、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルパレロニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルパレロニトリル)などのアゾ化合物、アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテートなどの過酸化物、ジイソプピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネートなどのパーカーボネート化合物、t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオデカネートなどのパーエステル化合物、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシバレロニトリルなどの公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。
連鎖移動剤のアルデヒド化合物としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、アクロレイン(ビニルアルデヒド)、ベンズアルデヒドが挙げられ、ケトン化合物としては、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。この中では、アセトルデヒドが、PVAの分子内の炭素−炭素二重結合量を制御しやすい理由から最も好ましい。連鎖移動剤の使用量は、単量体合計100質量部に対して、0.1〜3.0質量部が好ましい。また、連鎖移動剤は、初期に一括添加しても、重合反応中に分割又は継続的に添加しても良い。
重合反応温度は、特に限定するものではないが、通常30〜90℃程度の範囲で設定することができる。
一方、変性PVAを製造する際の鹸化条件も特に限定されるものではなく、前述した方法で得られた重合体を、公知の方法で鹸化すればよい。一般的には、アルカリ触媒又は酸触媒の存在下で、分子中のエステル部を加水分解することで行うことができる。このとき、重合溶媒であるアルコール中の共重合体の濃度は、特に限定されないが、10〜80質量%であることが望ましい。
その際使用されるアルカリ触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート及びカリウムメチラートなどのアルカリ金属の水酸化物や、アルコラートなどを用いることができる。また、酸触媒としては、例えば、塩酸及び硫酸などの無機酸水溶液、p−トルエンスルホン酸などの有機酸を用いることができるが、特に水酸化ナトリウムを用いることが望ましい。
更に、鹸化反応の温度も、特に限定されないが、好ましくは10〜70℃、より好ましくは30〜40℃の範囲であることが望ましい。反応時間は、特に限定されないが、30分〜3時間の範囲で行なうことが望ましい。
PVAの鹸化度は、65〜95mol%が好ましい。鹸化度が65mol%未満の場合、PVAの水に対する溶解速度が遅くなり、生産性が低下する。また鹸化度が95mol%を超える場合には、PVAの乳化性能が低下するため、安定した乳化重合がおこなえない恐れがある。なお、ここで規定する鹸化度は、JIS K 6726に規定される方法で測定した値である。
PVAは、JIS K 6726に規定される方法で測定した水溶液粘度(濃度4質量%の水溶液の20℃における粘度)が、3〜10mPa・sであることが好ましい。この水溶液粘度が3mPa・s未満の場合、水溶液が飛散しやすくなる。また、水溶液粘度が10mPa・sを超える場合、PVAの水に対する溶解速度が遅くなったり、溶解タンクの内壁への付着量が増加したりする。
なお、分子内に二重結合をもつPVAの場合、JIS K 6726で定められている方法で重合度を測定しようとすると、未鹸化の酢酸ビニル単位を完全に鹸化する前処理の段階で架橋・不溶化して、正確な重合度を求めることができないことがある。そこで、本実施形態のポリクロロプレンラテックスにおいては、重合度に代えて、JIS K 6726に規定されている水溶液粘度の好適な範囲を規定しる。具体的には、前処理で不溶化しない場合の好適な重合度範囲は、200〜1000である。
鹸化後のPVAは、必要に応じて洗浄され、加熱乾燥される。鹸化反応で副生する酢酸ナトリウムなどの無機塩の含有量が多いほど、加熱温度が高いほど、又は加熱処理時間が長いほど、炭素−炭素二重結合の形成量が増加する。したがって、連鎖移動剤量だけでなく、無機塩の洗浄条件、加熱処理条件によっても、PVAの0.2質量%水溶液の波長280nmの吸光度の調節が可能である。
本実施形態のポリクロロプレンラテックスを製造する際、PVAの仕込み量は、特に限定されるものではないが、例えば、初期仕込み単量体の合計100質量部に対して0.5〜10質量部とすることができる。PVAの仕込み量が0.5質量部未満では、乳化力が十分得られないことがあり、また、10質量部を超えると、接着剤の耐水性を低下させてしまうことがあるからである。
[その他の乳化剤]
なお、本実施形態のポリクロロプレンラテックスにおいては、貯蔵安定性を改良したり、冬期の凍結を防止したりする目的で、PVA以外の乳化剤を併用することも可能である。この場合、併用する乳化剤の種類は特に限定されず、アニオン性、ノニオン性、カチオン性のいずれを選択しても良い。
例えば、アニオン性乳化剤としては、カルボン酸型、硫酸エステル型などがあり、例えば、ロジン酸のアルカリ金属塩、炭素数が8〜20個のアルキルスルホネート、アルキルアリールサルフェート、ナフタリンスルホン酸ナトリウムとホルムアルデヒドの縮合物などが挙げられる。
ノニオン性乳化剤の具体例としては、ポリビニルアルコール又はその共重合体(例えばアクリルアミドとの共重合体)、ポリビニルーテル又はその共重合体(例えば、マレイン酸との共重合体)、ポリオキシエチレアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアシルエステルなどが挙げられる。
カチオン性乳化剤の具体例としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩などがあり、例えば、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
なお、PVA以外の乳化剤を使用する場合、その仕込み量は、単量体の合計100質量部に対して0.1〜2.0質量部とすることが好ましい。PVA以外の乳化剤の仕込み量が0.1質量部未満の場合、その添加効果が得られず、また、2.0質量部を超えると、ポリクロロプレンラテックスの乾燥皮膜の耐水性を低下させてしまうからである。
[クロロプレンの重合条件]
クロロプレン単量体の重合条件は、特に限定されるものではなく、重合温度、重合開始剤、連鎖移動剤、重合停止剤、重合率などを任意に選択することで、分子量、分子量分布、ゲル含有量、分子末端構造、結晶化速度を制御することが可能である。
その際使用する連鎖移動剤の種類は、特に限定されるものではなく、通常クロロプレンの乳化重合に使用されるものが使用できるが、例えばn−ドデシルメルカプタンやtert−ドデシルメルカプタンなどの長鎖アルキルメルカプタン類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドやジエチルキサントゲンジスルフィドなどのジアルキルキサントゲンジスルフィド類、ヨードホルムなどの公知の連鎖移動剤を使用することができる。
また、重合停止剤(重合禁止剤)は特に限定するものではなく、例えば、2,6−ターシャリーブチル−4−メチルフェノール、フェノチアジン、ヒドロキシアミンなどが使用できる。
一方、クロロプレン単量体を乳化重合する時の重合温度は、特に限定されるものではないが、重合反応を円滑におこなうために、5〜50℃とすることが好ましい。開始剤は、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩、第3−ブチルヒドロパーオキサイドなどの有機過酸化物などであり、特に限定されるものではない。
また、最終重合率も、特に限定するものではないが、70〜100%で任意に調節することができる。更に、未反応単量体の除去(脱モノマー)は、減圧加熱などの公知の方法によって行えばよい。
本実施形態のポリクロロプレンラテックスの主成分であるクロロプレン(共)重合体は、トルエン不溶分が20〜99%であることが好ましい。この範囲であれば、初期接着力と常態接着力のバランス優れた接着剤を作ることができる。
以上詳述したように、本実施形態のポリクロロプレンラテックスは、乳化剤として、主鎖に炭素−炭素二重結合を有するPVAを使用しているため、耐水性が向上し、水系接着剤としたときに優れた耐水接着性が得られる。特に、上記化学式(1)に示すように、分子内に炭素−炭素二重結合とカルボキシル基とを有するPVAを使用することにより、ポリクロロプレンラテックスの乾燥皮膜の耐水性を、大幅に向上させることができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る水系接着剤について説明する。本実施形態の水系接着剤は、前述した第1の実施形態に係るポリクロロプレンラテックスを含有するものである。
本実施形態の水系接着剤では、用途及び要求性能に応じて、ポリクロロプレンラテックスに加えて、金属酸化物、粘着付与樹脂、増粘剤、加硫促進剤、充填剤(補強剤)、顔料、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防黴剤、防腐剤、抗菌剤、可塑剤、pH調節剤、消泡剤、防錆剤、ポリクロロプレン以外のポリマーラテックスなどを、配合することができる。また、硬化剤を組み合わせて、2液型接着剤とすることも可能である。
金属酸化物の具体的な例としては、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化マグネシウムなどが挙げられる。この金属酸化物は、ラテックスの粘度が高い場合には、粉末状態のまま添加することができるが、乳化剤を用いて水中に乳化/分散させてエマルジョンとしてから配合することが好ましい。
粘着付与樹脂の具体例としては、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジン樹脂、重合ロジン樹脂、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、C留分系石油樹脂、C留分系石油樹脂、C/C留分系石油樹脂、DCPD系石油樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂などが挙げられる。
また、粘着付与樹脂の添加方法は、特に限定されるものではないが、接着剤中に均一に配合させるために、エマルジョンとしてから添加することが好ましい。この粘着付与樹脂エマルジョンの製造方法としては、例えば、トルエンなどの有機溶剤に溶解ものを、乳化剤を用いて水中に乳化/分散させた後、有機溶剤を加熱減圧しながら除去する方法、及び微粒子に粉砕して乳化/分散させる方法などがある。なお、より微粒子のエマルジョンが作製できる前者の方法が好ましい。
増粘剤の具体例としては、ポリアクリル酸系、ポリアクリルアミド系、HEUR系(ポリエチレンオキシドの両末端を疎水基でエンドキャップしたポリマー)などの有機系増粘剤、ヘクトライトやモンモリロナイトなどシリケート化合物のような無機系増粘剤が挙げられる。これらのうち、HEUR系が、少ない添加量で大きな増粘効果が得られ、配合後の粘度安定性が優れているため、好適である。
加硫促進剤としては、チオウレア系、ジチオカルバミン酸塩、キサントゲン酸塩などが挙げられる。チオウレア系化合物の具体例としては、エチレンチオ尿素、ジブチルチオ尿素、ジラウリルチオ尿素、N,N‘−ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素(TMU)、N,N’−ジエチルチオ尿素(EUR)などが挙げられる。
ジチオカルバミン酸塩の例としては、ジメチルカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルチオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅(II)、ジメチルジチオカルバミン酸鉄(III)、ジメチルジチオカルバミン酸テルル(IV)などが挙げられる。キサントゲン酸塩の例としては、ブチルキサントゲン酸亜鉛、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、エチルキサントゲン酸ガリウム(III)などが挙げられる。
一方、硬化剤を使用する2液型接着剤とする場合には、硬化剤として、水分散型イソシアネート化合物を使用することが望ましい。水分散型イソシアネート化合物は、そのイソシアネート基がラテックス中の水分やPVAの水酸基などと反応するため、接着剤の耐水性を更に向上させることができる。
ここで、水分散型イソシアネート化合物とは、脂肪族及び/又は脂環族ジイソシアネートから得られ、分子内にビュウレット、イソシアヌレート、ウレタン、ウレトジオン、アロファネートなどの構造を有するポリイソシアネートポリマーに親水基を導入したものである。即ち、水中に添加・撹拌すると、水中で微粒子として分散することが可能な自己乳化型イソシアネート化合物である。
ここで、脂肪族及び/又は脂環族イソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、重合MDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)(IPC)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHPI)、トリジンジイソシアネート(TODI)などが挙げられる。これらの中でも、HDI、MDI、IPDI、水添XDIは、工業的に入手しやすく良好である。
また、親水基は、エチレンオキサドの繰り返し単位を有する乳化剤を、前述した脂肪族及び/又は脂環族ジイソシアネートから得られる重合物の分子鎖の一部と、反応させることにより導入される。エチレンオキサイドの繰り返し単位を有する乳化剤としては、水に対する分散性を考慮すれば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルが特に好ましい。
硬化剤としての効果は、原料化合物よりもむしろ、JIS K−7301で規定される方法によって算出したイソシアネート基含有率によって左右される。良好な接着力を得るためには、使用するイソシアネート化合物のイソシアネート基含有率が、17〜25質量%であることが好ましい。
更に、水分散型イソシアネート化合物を硬化剤として使用して2液型接着剤とする場合、主剤中のポリクロロプレンラテックスが固形分で100質量部に対して、硬化剤中の水分散型イソシアネート化合物が固形分で0.5〜15質量部となるように混合することが好ましい。水分散型イソシアネート化合物が0.5質量部未満では、接着力が不足し、また、15質量部よりも多く添加すると、主剤と硬化剤を混合した後のポットライフ(使用可能時間)が短くなる虞がある。
以上詳述したように、本実施形態の水系接着剤では、分子内に炭素−炭素二重結合を有するPVAを乳化剤として製造されたポリクロロプレンラテックスを使用しているため、耐水接着力に優れる。
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。本実施例においては、分子内に炭素−炭素二重結合を有するPVA−(A)〜(E)と、分子内に炭素−炭素二重結合を有しない汎用のPVA−(F)〜(I)とを製造した。そして、これら実施例及び比較例の各PVAを乳化剤として使用して、ポリクロロプレンの乳化重合を行い、得られたPVA乳化型ポリクロロプレンラテックスに、粘着付与樹脂などを配合して接着剤を作製して、その接着力を評価した。
<PVA−(A)の製造>
還流冷却管を取り付けた反応器に、酢酸ビニル:3500g及び酢酸:1.8gを仕込み、反応器内を窒素で置換した後、更に、アセトアルデヒド:154gを仕込み、混合溶液の沸点まで昇温した。還流が始まったら、アゾビスイソブチロニトリルの0.5質量%メタノール溶液:50gを、6時間かけて滴下して、重合率70%に達した時点で重合を停止した。
引き続き、メタノール蒸気を吹き込みながら反応器を加熱して、未反応の酢酸ビニルを除去した。次に、得られた重合体のメタノール溶液に、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を混合し、反応温度35℃で、鹸化反応を進行させた。そして、固化した鹸化反応液をメタノール中で湿式粉砕した後、スラリーを濾過し、90℃のギアオーブンで2時間乾燥して、PVA−(A)を作製した。
<PVA−(B)の製造>
還流冷却管を取り付けた反応器に、酢酸ビニル:3000g、メタノール:220g及び酢酸:1.5gを仕込み、反応器内を窒素で置換した後、更に、アセトアルデヒド:65.9gを仕込み、混合溶液の沸点まで昇温した。還流が始まったら、アゾビスイソブチロニトリルの0.5質量%メタノール溶液:60gを、5時間かけて滴下して、重合率71%に達した時点で重合を停止した。
引き続き、メタノール蒸気を吹き込みながら反応器を加熱して、未反応の酢酸ビニルを除去した。次に、得られた重合体のメタノール溶液に、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を混合し、反応温度35℃で、鹸化反応を進行させた。そして、固化した鹸化反応液をメタノール中で湿式粉砕した後、スラリーを濾過し、80℃のギアオーブンで1時間乾燥して、PVA−(B)を作製した。
<PVA−(C)の製造>
前述した方法で作製したPVA−(B)を、更に、125℃のギアオーブンで5時間加熱処理して、PVA−(C)を作製した。
<PVA−(D)の製造>
還流冷却管を取り付けた反応器に、酢酸ビニル:3000g、メタノール:220g及び酢酸:1.5gを仕込み、反応器内を窒素で置換した後、更に、アセトアルデヒド:65.9gを仕込み、混合溶液の沸点まで昇温した。還流が始まったら、アゾビスイソブチロニトリルの0.5質量%メタノール溶液:60gを、6時間かけて滴下して、重合率51%に達した時点で重合を停止した。
引き続き、メタノール蒸気を吹き込みながら反応器を加熱して、未反応の酢酸ビニルを除去した。次に、得られた重合体のメタノール溶液に、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を混合し、反応温度35℃で、鹸化反応を進行させた。そして、固化した鹸化反応液をメタノール中で湿式粉砕した後、スラリーを濾過し、90℃のギアオーブンで1時間乾燥して、PVA−(D)を作製した。
<PVA−(E)の製造>
還流冷却管を取り付けた反応器に、酢酸ビニル:3000g、メタノール:120g及び酢酸:1.5gを仕込み、反応器内を窒素で置換した後、更に、アセトアルデヒド:21.5gを仕込み、混合溶液の沸点まで昇温した。還流が始まったら、アゾビスイソブチロニトリルの0.5質量%メタノール溶液:30gを、4時間かけて滴下して、重合率41%に達した時点で重合を停止した。
引き続き、メタノール蒸気を吹き込みながら反応器を加熱して、未反応の酢酸ビニルを除去した。次に、得られた重合体のメタノール溶液に、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を混合し、反応温度35℃で、鹸化反応を進行させた。そして、固化した鹸化反応液をメタノール中で湿式粉砕した後、スラリーを濾過し、90℃のギアオーブンで1時間乾燥して、PVA−(E)を作製した。
<PVA−(F)〜(I)の製造>
重合反応缶に、酢酸ビニル:120g、メタノール:560g、アゾビスイソブチロニトリルの1質量%メタノール溶液:1.6gを仕込み、缶内を窒素で置換した後加熱して、沸点まで昇温した。次に、酢酸メチル:1720g、メタノール:607g、アゾビスイソブチロニトリルの1質量%メタノール溶液:406gを、14時間かけて連続添加した。そして、連続添加終了から1時間後に、酢酸ビニルの重合率が99%に達したことを確認して、重合反応を停止した。
引き続き、常法により未反応の酢酸ビニルを除去し、得られた重合体を、水酸化ナトリウムを使用して常法により鹸化した後、90℃で90分間ギアオーブン内にて乾燥した。その際、水酸化ナトリウム量、鹸化反応の温度及び時間を調節して、鹸化度が異なるPVA−(F)〜(I)を作製した。これらPVA−(F)〜(I)は、分子内に炭素−炭素二重結合を有しない従来のPVAである。
<PVAの特性分析>
前述した方法で製造された変性ポリビニルアルコール(PVA−(A)〜(I))について、以下に示す方法で、(a)鹸化度、(b)酢酸ナトリウム含量、(c)重合度、(d)水溶液粘度、(e)波長280nm及び波長320nmにおける吸光度を測定した。
(a)鹸化度:JIS K6726に準拠して測定した。
(b)酢酸ナトリウム含量:JIS K6726に準拠して測定した。
(c)重合度:JIS K6726に準拠して測定した。
(d)水溶液粘度:JIS K6726に準拠して測定した。
(e)吸光度:濃度0.2質量%のPVA水溶液を、光路長10mmの石英セルに入れて、紫外可視分光光度計UV−1650PC(株式会社島津製作所製)を用いて、温度20℃における紫外スペクトルを測定し、波長280nm及び波長320nmにおける吸光度を調べた。
<ポリクロロプレンラテックスの製造>
次に、前述したPVA−(A)〜(I)を使用して、実施例1〜5及び比較例1〜4のポリクロロプレンラテックスを製造した。具体的には、内容積3リットルの反応器を用いて、窒素気流下、60℃の温度条件下で、水:86質量部に、PVA:3.2質量部を溶解させた。このポリビニルアルコール水溶液を室温まで冷却した後、その中にクロロプレン単量体:97質量部、メタクリル酸:3質量部、オクチルメルカプタン:0.3質量部を加えた。これを40℃に保ちながら、過硫酸カリウムを開始剤として用いて重合を行った。
重合終了後の反応液に、20質量%ジエタノールアミン水溶液を添加し、溶液のpHを7に調整した後、減圧下で未反応の単量体を除去し、更に、減圧下で水分を蒸発させて濃縮を行って、固形分濃度が50質量%のポリクロロプレンラテックスを得た。そして、本実施例においては、PVAの種類(PVA−(A)〜(I))を変えると共に、オクチルメルカプタンの添加量を調節して、ゲル含有量も相互に異なる実施例1〜5及び比較例1〜4のポリクロロプレンラテックスを作製した。
そして、前述した方法で作製した実施例及び比較例の各ポリクロロプレンラテックスについて、以下に示す方法で、固形分濃度及びゲル含有量を測定した。
<固形分濃度>
アルミ皿だけの質量をα、ポリクロロプレンラテックス試料を2ml入れたアルミ皿の質量をβ、ラテックス試料を入れたアルミ皿を125℃で1時間乾燥させた後の質量をγとし、下記数式1により算出した。
Figure 0005307175
<ゲル含有量(トルエン不溶分)>
実施例及び比較例の各ポリクロロプレンラテックスにおけるゲル含有量(質量%)は、下記数式2により求めた。ここで、下記数式2におけるMallは、ポリクロロプレンラテックス試料を、凍結乾燥した後、秤量して求めた質量である。また、Mgelは、この凍結乾燥後の試料を、23℃で20時間、トルエンで溶解(0.6質量%に調整)した後、遠心分離機、更に200メッシュの金網を使用して分離したゲル分を、風乾後、110℃雰囲気下で1時間乾燥したものを秤量して求めた質量である。
Figure 0005307175
次に、実施例及び比較例の各ポリクロロプレンを使用して、接着試験を行った。具体的には、ポリクロロプレンラテックス:固形分換算で100質量部に対して、酸化亜鉛エマルジョン(大崎工業株式会社製 AZ−SW)を固形分換算で5質量部、テルペンフェノール樹脂エマルジョン(荒川化学工業株式会社製 タマノルE−100)を固形分換算で40質量部、水分散液にしたイソプロピルキサントゲン酸亜鉛(大内新興化学工業株式会社製 ノクセラーZIX)を固形分換算で2質量部、平均粒径:10μm、比表面積:191m/gの湿式シリカ(株式会社トクヤマ製 トクシールU)を5質量部、HEUR系増粘剤(ロームアンドハースジャパン株式会社製 RM−8W)を固形分換算で0.1質量部配合して、接着剤を作製した。
次に、2枚の帆布(糊代部のサイズ:幅25mm×長さ70mm)各々に、150g(wet)/mの接着剤を刷毛で塗布し、23℃雰囲気中で3時間乾燥させた後、その上から300g(wet)/mの接着剤を刷毛で塗布した。これを、70℃雰囲気で、5分間乾燥させた後、張り合わせてハンドローラーで圧着した。
<初期接着力>
圧着してから1日後に、引張試験機で、引張速度を200mm/分にして、180°剥離強度を測定した。
<常態接着力>
圧着してから7日後に、引張試験機で、引張速度を200mm/分にして、180°剥離強度を測定した。
<耐水性接着力>
圧着してから1日後に、純水に7日間浸した後、引張試験機で、引張速度200mm/分にして、180°剥離強度を測定した。
以上の評価結果を、下記表1にまとめて示す。
Figure 0005307175
上記表1に示すように、実施例1〜5のポリクロロプレンラテックスは、比較例1〜4のポリクロロプレンラテックスよりも、接着剤にしたときの耐水接着力が優れることが示された。

Claims (5)

  1. 分子内に炭素−炭素二重結合とカルボニル基とを有し、鹸化度が65〜95mol%、0.2質量%水溶液又は水メタノール混合溶液における20℃での波長280nmの吸光度が0.1〜3.0であり、かつJIS K 6726に規定される方法で測定した粘度が3〜10mPa・sであるポリビニルアルコールの存在下で、クロロプレン単独又はクロロプレンと他の単量体とを乳化重合して得たポリクロロプレンラテックス。
  2. 主成分として含有されるクロロプレン重合体が、クロロプレンとカルボキシル基含有ビニル単量体との共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のポリクロロプレンラテックス。
  3. 分子内に炭素−炭素二重結合とカルボニル基とを有し、鹸化度が65〜95mol%、0.2質量%水溶液又は水メタノール混合溶液における20℃での波長280nmの吸光度が0.1〜3.0であり、かつJIS K 6726に規定される方法で測定した粘度が3〜10mPa・sのポリビニルアルコールの存在下で、クロロプレン単独又はクロロプレンと他の単量体とを乳化重合するポリクロロプレンラテックスの製造方法。
  4. クロロプレンとカルボキシル基含有ビニル単量体とを乳化重合することを特徴とする請求項に記載のポリクロロプレンラテックスの製造方法。
  5. 請求項1又は2に記載のポリクロロプレンラテックスを含有する水系接着剤。
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