JP5304405B2 - シールド線端末の止水構造 - Google Patents

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本発明はシールド線端末の止水構造に関し、詳しくは、自動車の被水領域に配索されるシールド線端末でコネクタ等と接続するために、シールド線端末でシールド層とシースとが剥離し、露出させたコア線端末にコネクタ接続用の端子を接続する場合に、シールド端末からのシールド線への浸水を防止するものである。
従来、この種のシールド電線の端末止水構造として、実開平5−53161号が提供されている。該端末止水構造は、図5(A)(B)に示すように、シールド線100の端末側でシールド層とシースとを皮剥し、皮剥点から露出したコア線101にペースト状の止水剤102を充填して絶縁樹脂シート103で囲み、コア線101の先端側および皮剥位置の外周からの浸水を防止している。
また、特開2008−67545号公報では、皮剥点からコア線と共に露出したドレン線に非防水熱収縮チューブを被せた状態で、該ドレン線およびコア線の外周にホットメルトからなる止水剤を充填し、防水熱収縮チューブを被せている。
前記のように、従来のシールド線の端末止水構造では、ペースト状の止水剤を露出して引き出したコア線の外周に充填すると共に、皮剥点からシールド線内部およびシース外周面に止水剤を充填し、該止水剤充填部の外周を絶縁樹脂シートやチューブで覆っている。さらに、絶縁樹脂シートの場合は粘着テープをハープラップ巻きしている。
実開平5−53161号公報 特開2008−67545号公報
前記のように、従来の止水構造で用いる止水剤はシリコーン等のペースト状であり、該ペースト状の止水剤をコア線の隙間に流動して充填した後に硬化させている。
このように、ペースト状の止水剤を塗布して硬化させる場合、止水剤の流動性が低いと隙間なく充填させにくくなる一方、流動性が高いと作業時に止水剤の液垂れが生じる問題がある。
特に、止水剤を用いた場合、硬化すると屈曲性が悪くなる。シールド線ではシールド層およびシースの剥離長さはできるだけ短くしてシールド性能が損なわれないようにする必要がある。剥離寸法を短くして前記止水剤を用いて止水すると、剥離位置のコア線が硬化した止水剤で屈曲性が悪くなるため、該コア線端末に接続した端子をコネクタへ挿入する作業性が悪化する問題がある。
さらに、止水剤が硬化するまでに約8時間程かかり、次工程へ行く時間が遅くなり、生産性が悪い問題がある。
かつ、硬化した止水剤は、シールド線を配線する箇所の雰囲気温度が急減に変化したサーマルショック時に、硬化した止水剤とシースの伸縮率との相違で、シース外周面との間に亀裂が発生する恐れもあり、この点で、止水剤を用いない止水構造が要望されている。
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、止水剤を用いることなく、シールド線端末の止水構造を提供することを課題としている。
前記課題を解決するため、本発明は、シールド線の端末側でシールド層とシースとを皮剥ぎしてコア線を露出して引き出しているシールド線端末の止水構造であって、
前記シールド層とシースの皮剥点から露出して引き出した各コア線をそれぞれ密着して貫通孔に通したゴム栓を、前記皮剥点のシース端面に取り付け、
前記皮剥点を挟んで前記ゴム栓の外周面から前記シースの外周面に延在するシールド線用の弾性材からなるグロメットを取り付け、
前記引き出されたコア線の先端側からの浸水を前記ゴム栓で止水すると共に、前記皮剥点の外周からの浸水を前記グロメットで止水していることを特徴とするシールド線端末の止水構造を提供している。
前記のように、本発明では、ゴム栓とシールド線用のグロメットとを用いて、シールド線端末での止水を実現している。
前記ゴム栓に設けた各貫通孔に皮剥点から引き出したコア線を密着して貫通させることにより、コア線先端側からの浸水を阻止している。該ゴム栓にグロメットを密着させて嵌合し、このグロメットを皮剥点を越えてシールド線のシース外周面へと延在させ、該シース外周面に密着させていることで、皮剥部分の外周からの浸水を防止している。
前記グロメットはゴムまたはエラストマーで成形しており、その一端側のゴム栓嵌合部には、前記ゴム栓の外周面に設けた凸部と嵌合する凹部を内周面に設け、かつ、該一端側に連続するシース嵌合部は環状の山部と谷部を長さ方向に交互に連続した屈曲性を有する蛇腹部とし、該蛇腹部の先端は前記シースの外周面に密着する小径筒部としていることが好ましい。
また、コア線の数と対応したゴム栓に設けた各貫通孔は各コア線の外径よりも小さい内径として、貫通孔を押し広げてコア線を貫通させることで、確実に止水している。
前記のようにグロメットをゴムまたはエラストマーからなる弾性材とし、かつ、蛇腹部を設けているため、該グロメットをシールド線に外嵌しても屈曲性を阻害しない。
また、シールド線の皮剥点から引き出したコア線を短いゴム栓に通し、該ゴム栓をグロメットで外嵌しているだけであるため、皮剥点から引き出したコア線の屈曲性も阻害せず、コア線端末の端子をコネクタに挿入することが容易にできる。
前記グロメットのゴム栓嵌合部の長さはゴム栓の長さと同等とし、該ゴム栓嵌合部の長さに対して前記シース嵌合部の長さを2〜4倍とし、前記ゴム栓嵌合部の長さは露出したコア線の長さの1/4〜1/3としていることが好ましい。
具体的には、例えば、シールド線は端末から約80mmの位置を皮剥点として、約80mmの寸法でコア線を露出させて引き出し、前記ゴム栓の長さは約15〜20mmとして、一端面を皮剥点に当接している。コア線の引き出し側となる他端面に前記グロメットの先端を位置合わせしてグロメットを取り付け、該グロメットの長さを50〜60mmとし、前記蛇腹部をシースの外周面に被せている。
前記のように、シールド線の端末の皮剥部分の止水はゴム栓とグロメットで行い、従来用いている止水剤は本発明では用いることを必須としていない。
なお、皮剥端面に止水剤を塗布してもよい。
前記のように、本発明では、皮剥点から露出して引き出した各コア線をゴム栓の貫通孔に通して、コア線の引き出し側からの浸水をゴム栓で防止している。かつ、該ゴム栓の外周面に密着させてグロメットを取り付け、該グロメットを皮剥点を越えてシールド線のシース外周面へと延在させて取り付けていることにより、皮剥点の外周面からの浸水も確実に防止している。
このように、止水剤を用いることなく、ゴム栓とグロメットとで止水しているため、止水剤を用いた場合に発生するコア線およびシールド線の屈曲性が低下することはない。よって、皮剥点から引き出すコア線の寸法を短くすることができ、シールド線端末側でのシールド性能の低下を防止できる。
さらに、止水剤の塗布作業が不要となるため、止水作業が容易となると共に、止水剤の硬化時間待ちによる作業時間の遅れもなく、生産性を高めることができる。
本発明の実施形態を示し、(A)は一部断面側面図、(B)は(A)のB−B線断面図である。 ゴム栓を示し、(A)は斜視図、(B)は断面図である。 グロメットの断面図である。 (A)(B)(C)は取付手順を示す図面である。 (A)(B)は従来例を示す図面である。
以下、本発明の実施形態を図1乃至図4を参照して説明する。
本発明のシールド線は自動車のエンジンルーム等の被水領域に設置する電気接続箱(図示せず)にコネクタ接続している。
シールド線1は汎用されているシールド線であり、3本のコア線2(2A〜2C)の外周をシールド層3で囲み、該シールド層3の外周を絶縁樹脂被覆層からなるシース4で被覆している。前記シールド層3は金属線の編組チューブあるいは金属箔テープを巻き付けて形成している。
前記シールド線1はコネクタと接続する端末側では、端末から80mmの位置を皮剥点Pとし、端末から皮剥点Pまでのシールド層3とシース4を剥離し、コア線2を露出して引き出している。
前記皮剥点の止水を図るため、ゴム栓5と、ゴム成形品からなるシールド線用のグロメット6を用いている。ゴム栓5はシールド線1の皮剥点Pの端面に一端面5aを押し付けて密着させ、ゴム栓5に設けた3個の貫通孔5bに夫々コア線2を密着させて貫通し、他端面5cより引き出している。
グロメット6は円筒状で、一端開口6aをゴム栓5の他端面5cに一致させて外嵌し、皮剥点Pを越えて延在させ、シールド線1のシース4の外周面に嵌合している。
ゴム栓5およびグロメット6はEPDMあるいはシリコーン樹脂で成形しているが、弾性材であれば素材は限定されない。
図2に示すゴム栓5は長さを15〜20mmとし、外径はシールド線1の外径と同等としている。該ゴム栓5には前記した3個の貫通孔5bを設け、各貫通孔5bの内径はコア線2の外径より若干小さくして、貫通孔5bを押し広げてコア線2を通す設定としている。該ゴム栓5の外周面には、環状の凸部5dを長さ方向に間隔をあけて設けて、ゴム栓5の外周面に凹凸を設けている。
図3に示すグロメット6は、長さを50〜60mmとし、長さ方向の中央部は環状の山部6cと谷部6dを長さ方向に交互に設けた蛇腹部6eとし、長さ方向の両側は前記谷部6dの径よりも更に小さくした円筒部6f、6gとしている。
一方側の円筒部6fの長さは前記ゴム栓5の長さと同等とし、ゴム栓嵌合部6Aとしている。残りの蛇腹部6eと他方側の円筒部6gをシース嵌合部6Bとしている。
ゴム栓嵌合部6Aとなる円筒部6fの内周面には、前記ゴム栓5に設けた凸部5dと嵌合する凹部6hを長さ方向に間隔をあけて設けている。該円筒部6fの内径はゴム栓5の外径よりも若干小さくして、ゴム栓5の外周面にグロメット6の円筒部6fを密着する設定としている。また円筒部6gの内径はシールド線1のシース4の外径より若干小さくして、シース4の外周面に円筒部6gを密着させる設定としている。
図4を参照して、ゴム栓5とグロメット6の取付手順を説明する。
図4(A)に示すように、シールド1の端末を皮剥点Pより先端側にかけてシールド層3とシース4を剥離して、コア線2を露出させて引き出す。
ついで、図4(B)に示すように、ゴム栓5の貫通孔5bに夫々コア線2を貫通させ、ゴム栓5を皮剥点Pまで移動させ、皮剥点Pでシールド線1のシース4、シールド層3の剥離端面に押し当てる。
ついで、図4(C)に示すように、グロメット6をコア線2の引き出し端側から被せていき、シース嵌合部6Bを皮剥点Pからシース4の外周面に被せ、ゴム栓嵌合部6Aをゴム栓5に被せる。
グロメット6は、ゴム栓嵌合部6Aが押し広げられた状態でゴム栓5の外周面と密着し、かつ、ゴム栓外周面の凸部5dとグロメットの凹部6hが凹凸嵌合し、長さ方向の移動が阻止された状態で密着する。
一方、シース嵌合部6Bでは蛇腹部6eが屈曲性を保持した状態でシース4の外周面を覆い、他端の円筒部6gがシース4の外周面に押し広げられた状態で密着する。
図1に示すように、引き出したコア線2の端末に端子Tを圧着接続し、該端子TをコネクタCに挿入係止して、シールド線1にコネクタを接続している。
このように、グロメット6は皮剥点Pを跨がってゴム栓5の外周面からシース4の外周面に密着するため、シールド線1の皮剥部分に外周から浸水が生じるのを確実に防止できる。
また、皮剥点Pから引き出したコア線2には15〜20mm程度のゴム栓5を取り付け、かつ、該ゴム栓5の外周にグロメット6の円筒部6fを外嵌しているだけであるため、皮剥点Pから引き出した端子を接続したコア線2の先端までの屈曲性を保持することができる。このように、皮剥されて露出するコア線2の屈曲性を保持できるため、コア線2の皮剥部分の長さを80mmと短くしてもコネクタへの挿入作業性が悪くならず、シールド線のシールド性能の低減も抑制することができる。
さらに、止水剤を用いていないため、止水剤が硬化するまでの時間を待つ必要がなく、次工程へ進めることができ、生産性を高めることができる。
かつ、止水剤塗布に必要な止水剤吐出機等を必要とせず、生産設備も簡単にできる利点もある。
本発明は前記実施形態に限定されず、グロメットに蛇腹部を設けずに、両側の円筒部よりも若干大きな円筒部としてもよいし、さらにはグロメットを同径で連続した円筒としてもよい。かつ、ゴム栓とグロメットとの嵌合部は凹凸嵌合に限定されない。
1 シールド線
2(2A〜2C) コア線
3 シールド層
4 シース
5 ゴム栓
5b 貫通孔
6 グロメット
6A ゴム栓嵌合部
6B シース嵌合部
P 皮剥点

Claims (4)

  1. シールド線の端末側でシールド層とシースとを皮剥ぎしてコア線を露出して引き出しているシールド線端末の止水構造であって、
    前記シールド層とシースの皮剥点から露出して引き出した各コア線をそれぞれ密着して貫通孔に通したゴム栓を、前記皮剥点のシース端面に取り付け、
    前記皮剥点を挟んで前記ゴム栓の外周面から前記シースの外周面に延在するシールド線用の弾性材からなるグロメットを取り付け、
    前記引き出されたコア線の先端側からの浸水を前記ゴム栓で止水すると共に、前記皮剥点の外周からの浸水を前記グロメットで止水しているシールド線端末の止水構造。
  2. 前記グロメットはゴムまたはエラストマーで成形しており、その一端側のゴム栓嵌合部には、前記ゴム栓の外周面に設けた凸部と嵌合する凹部を内周面に設け、かつ、該一端側に連続するシース嵌合部は環状の山部と谷部を長さ方向に交互に連続した屈曲性を有する蛇腹部とし、該蛇腹部の先端は前記シースの外周面に密着する小径筒部としている請求項1に記載のシールド線端末の止水構造。
  3. 前記グロメットのゴム栓嵌合部の長さはゴム栓の長さと同等とし、該ゴム栓嵌合部の長さに対して前記シース嵌合部の長さを2〜4倍とし、前記ゴム栓嵌合部の長さは露出したコア線の長さの1/4〜1/3としている請求項2に記載のシールド線端末の止水構造。
  4. 前記シールド線の剥離位置には止水剤を充填していない請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のシールド線端末の止水構造。
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