JP5304354B2 - エキシマランプ - Google Patents

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Description

この発明は、クリプトンガス、ヨウ素ガスおよびキセノンガスを含む放電ガスを放電媒体として使用することにより300〜380nmの波長域の紫外光を効率良く放射するエキシマランプに関する。
液晶ディスプレイの製造工程においては、液晶の画素を構成する際に液晶にモノマーを混入させ、液晶分子を傾斜させた状態でモノマーを重合させることによって液晶分子の傾斜方向を固定させる技術(PSA:Polymer Sustained Alignment)が用いられている。PSAについて開示する特許文献1によれば、モノマーを重合させるための光源として、液晶に与えるダメージが少ないこと、モノマーの感度、液晶用ガラスの透過率等を考慮して、モノマーに対して例えば波長300−380nmの紫外光を照射することが好ましいとされている(特許文献1の段落0237)。
モノマーを重合させるために必要とされる波長300−380nmの紫外光を放射する紫外線光源としては種々のものが知られているが、現状ではPSA用途に最適な光源については検討が重ねられている段階である。例えば、水銀を放電媒体として波長365nmの紫外光を主として放射する水銀ランプ、金属ハロゲン化物を放電媒体とするメタルハライドランプ等がPSA用途の光源の候補とされている。
しかしながら、水銀ランプは、複数の水銀ランプを搭載して紫外線照射装置を構成しようとした場合に紫外線照射装置が大型化するといった問題があり、また、水銀を放電媒体とするために環境への負荷が大きいといったデメリットがある。メタルハライドランプは投入電力に比して放射される紫外線の出力が低いというエネルギー効率の面で問題があり、また、ハロゲン化金属を放電媒体とするために環境への悪影響を無視できない。
エキシマランプは、複数のエキシマランプを搭載して紫外線照射装置を構成しようとした場合に紫外線照射装置を比較的小型化することができると共に、投入電力に比して放射される紫外線の出力が高いためにエネルギー効率に優れ、しかも、キセノンガス、クリプトンガス等の希ガスを放電媒体として使用するので環境への負荷が小さい、という実用的な面でメリットが大きいため、PSA用の光源として有望視されている。
エキシマランプは、従来より主として液晶基板等の被処理物の表面に対して真空紫外線を照射することによって被処理物の表面改質をするための光源として使用されているが、PSA用途においてモノマーを重合させるために必要とされる波長300−380nmの波長域の紫外光の出力が不十分であった。
特開2003−149647号
以上から本発明は、PSA用途に最適な光源を提供するために、モノマーを重合させるために必要となる波長300−380nmの波長域の紫外光を効率良く放射するエキシマランプを提供することを目的とする。
請求項1記載のエキシマランプは、クリプトンガス、ヨウ素ガスおよびキセノンガスを含む放電ガスが封入された放電容器と、前記放電容器の内部に形成された放電空間を挟んで対向するように配置された一対の電極とを備え、キセノンガスの分圧を、クリプトンガスの分圧、ヨウ素ガスの分圧およびキセノンガスの分圧の合計で割ることによって得られる前記キセノンガスの濃度が0.05〜2.0%である、というものである。
請求項記載のエキシマランプは、請求項記載のエキシマランプにおいて前記キセノンガスの濃度が0.2〜2.0%である、というものである。
請求項記載のエキシマランプは、請求項1記載のエキシマランプにおいて前記放電ガスの全圧が40〜133kPaである、というものである。

請求項1の発明のエキシマランプによれば、クリプトンガス、ヨウ素ガスおよびキセノンガスを含む放電ガスを放電媒体として封入し、キセノンガスの分圧を、クリプトンガスの分圧、ヨウ素ガスの分圧およびキセノンガスの分圧の合計で割ることによって得られるキセノンガスの濃度が0.05〜2.0% に規定されているため、PSA用途においてモノマーを重合させるために必要とされる3 00〜380nmの波長域の紫外光の出力を向上させることができる。






請求項の発明のエキシマランプによれば、請求項1のエキシマランプにおいて、前記キセノンガスの濃度が0.2〜2.0%に規定されているため、PSA用途においてモノマーを重合させるために必要とされる300〜380nmの波長域の紫外光の出力を更に向上させることができる。
請求項の発明のエキシマランプによれば、請求項1記載のエキシマランプにおいて、放電ガスの全圧が40〜133kPaとされているため、PSA用途においてモノマーを重合させるために必要とされる300〜380nmの波長域の紫外光の出力を向上させることができる。





本発明のエキシマランプの構成の概略を示す管軸方向の断面図である。 図1に示すA−A線断面図である。 実験1の結果を示すグラフである。 実験2の結果を示すグラフである。 実験3の結果を示すグラフである。
図1は、本発明のエキシマランプの構成の概略を示す斜視図である。図2は図1に示すA−A線断面図である。エキシマランプ10は、例えば石英ガラスなどの誘電体材料によって図2に示すように断面が方形状となるように構成された放電容器1を備える。放電容器1の内部には、クリプトンガス、ヨウ素ガスおよびキセノンガスを主として含む放電ガスが封入されている。
放電容器1は、放電容器の長手方向の両端近傍の内部に封止部材2を配置して放電容器1と封止部材2とを溶着することによって、放電ガスが外部に漏れ出ることのないように気密に封止される。また、放電容器1の上下の壁面3、4のそれぞれの外表面には、メッシュ状の一対の電極5、6が、放電容器1の内部に形成された放電空間Sおよび放電容器1を構成する誘電体材料を挟んで対向するように設けられている。電極5、6は、所定のメッシュ状パターンが形成されるように例えば蒸着などによって形成されている。
さらに、放電容器1の内部には、例えばSiOを主成分として含む紫外線反射膜7が光出射方向側の壁面3と反対側の壁面4に形成されており、放電空間S内で発生した紫外線が紫外線反射膜7によって光出射方向に反射されて光出射方向側に位置する壁面3から出射するようになっている。
このような構成のエキシマランプは、一対の電極5、6間に例えば1〜120kHzの正弦波の高周波を供給することにより、放電空間Sに面する内壁面に無数のひげのような無声放電が発生して、このような無声放電によってあたかも放電空間Sの全体が均等に放電しているかのような状態となる。
このような放電により、放電容器に封入されたヨウ素Iの正イオンIおよび陰イオンIは下記[化1]で示すように、放電ガスに含まれるヨウ素以外のクリプトンの原子又は分子Mと反応することによってヨウ素のエキシマーI を形成すると共に、ヨウ素のエキシマーI は下記[化2]で示すように、電離する反応を繰り返す。
[化1]
+ I + M → I + M
[化2]
→ I + I
上記の[化1]で示すようにして放電空間に形成されたヨウ素のエキシマーI は、ピーク波長が342nmのヨウ素分子発光を放射する。ヨウ素のエキシマーI を形成する基になるヨウ素イオンIおよびIは、準安定励起原子のエネルギーによりヨウ素が電離されるぺニング効果と呼ばれる反応が発生することによって生成する。
このぺニング効果は、クリプトンの準安定励起原子のエネルギーがヨウ素原子の電離エネルギーよりもわずかに高いことによって発生する。参考までに、準安定励起原子のエネルギーは、クリプトンが9.9〜10.5eVであり、ヨウ素原子の電離エネルギーは10.4eVである。したがって、クリプトンガスとヨウ素ガスとを含む放電ガスを放電容器に封入すれば、放電空間においてヨウ素イオンIおよびIがより多く生成され、多数のヨウ素のエキシマーI が形成される。
また、放電容器に封入されたキセノンXeとヨウ素Iは、下記[化3]で示すように会合することによりキセノンXeとヨウ素Iの化合物のエキシマーXeIを形成すると共に、キセノンXeとヨウ素Iの化合物のエキシマーXeIは下記[化4]で示すように分離する反応を繰り返す。
[化3]
2Xe + I → 2XeI
[化4]
2XeI → 2Xe + I
上記の[化3]で示すようにして形成されたキセノンXeとヨウ素Iの化合物のエキシマーXeIは、ピーク波長が320nm付近にある紫外光を放射する。
すなわち、放電空間Sには、ヨウ素のエキシマーI から放射されるピーク波長が342nm付近にある紫外光、キセノンXeとヨウ素Iの化合物のエキシマーXeIから放射されるピーク波長が320nm付近にある紫外光が同時に発せられる。
なお、上記したようなヨウ素のエキシマーI 、キセノンXeとヨウ素Iの化合物のエキシマーXeIを形成するためには、1〜120kHzの正弦波の高周波をエキシマランプに印加してパルス的な電流にて点灯駆動させることが好ましい。正弦波の周波数が高すぎると、エキシマ放電が形成されないいわゆる休止期間が短くなることにより、ヨウ素のエキシマーI およびキセノンXeとヨウ素Iの化合物のエキシマーXeIを形成する時間的な余裕がなくなって、ピーク波長がそれぞれ342nm、320nm付近にある紫外光の発光強度が低下すると考えられる。一方、正弦波の周波数が低すぎると、単位時間当たりの発光回数が少なくなるので、ピーク波長がそれぞれ342nm、320nm付近にある紫外光の発光強度が低下すると考えられる。
ヨウ素のエキシマーI は、ヨウ素イオンI、Iに衝突するクリプトンKrの原子又は分子が多いほど形成され易い。キセノンXeとヨウ素Iの化合物のエキシマーXeIは、放電ガスに含まれるヨウ素I、キセノンXeの原子又は分子が多いと形成され易い。したがって、エキシマランプに封入される放電ガスの全圧を高くした場合は、ヨウ素のエキシマーI およびキセノンXeとヨウ素Iの化合物のエキシマーXeIが形成され易くなって、ピーク波長が320nm付近および342nm付近である紫外光の発光強度が向上する。具体的には、放電ガスの全圧を40〜130kPaとすることが好ましい。
ここで、本発明のエキシマランプにおいては、キセノンXeの濃度が0.05〜2.0%に規定されている。キセノンXeの濃度は、放電ガスの全圧に対するキセノンガスの分圧で示される。すなわち、キセノンガスの濃度は、キセノンガスの分圧を、クリプトンガスの分圧、ヨウ素ガスの分圧およびキセノンガスの分圧の合計で割ることによって得られる。
このため、ヨウ素のエキシマーI から放射されるピーク波長が342nm付近にある紫外光の出力を低下させることなく、キセノンXeとヨウ素Iの化合物のエキシマーXeIから放射されるピーク波長が320nm付近にある紫外光の出力を高めることができる。したがって、PSA用途において必要とされる300−380nmの波長域の紫外光の出力が向上するため、モノマーを重合させるために必要となる光エネルギーを十分に供給することができる。
以下、本発明のエキシマランプに封入した放電ガスに含まれるキセノンガスの濃度を定めるために行った実験1ないし3について説明する。実験1ないし3では、それぞれ、以下の実施例1ないし3に示す仕様に従って作製した、図1および2に示す構成のエキシマランプを使用した。
実験1は、キセノンガスの濃度が互いに異なるよう以下の仕様で作製された複数のエキシマランプを使用した。
・放電容器は、断面が方形状の角筒形状を備え、全長200mm、幅32mm、高さ14mm、放電ギャップ10mm、ガラスの厚み2mmである。
・電極は、金をスクリーン印刷することにより形成され、全長130mm、幅32mm、厚み5μmである。
・放電ガスは、クリプトンガス、ヨウ素ガスおよびキセノンガスを含み全圧が120kPaである。
・ヨウ素ガスの濃度は0.11%で共通する。
・キセノンガスの濃度は0〜5%の範囲で互いに異なる。
・点灯周波数は70kHzである。
(実験1)
実験1は、実施例1に係る各エキシマランプをそれぞれ点灯させ、各エキシマランプについて300−350nmの波長域の紫外光の発光スペクトルの形状の変化を調べた。
図3は、放電ガスに含まれるキセノンXeの濃度を0〜5%の範囲で様々に変えたときのエキシマランプの発光スペクトルを示す。図3では、縦軸がXe濃度1%である場合の波長342nmの紫外光の発光強度を1としたときの発光強度の規格値であり、横軸が波長(nm)である。
図3に示すように、キセノンXeが放電ガスに含まれていない場合(Xe:0%)は、キセノンXeとヨウ素Iの化合物のエキシマーXeIから放射されるピーク波長が320nm付近にある紫外光の発光強度が低く、一方、キセノンXeが放電ガスに過剰に含まれる場合(Xe:5%)は、ヨウ素のエキシマーI から放射されるピーク波長が342nm付近の紫外光の発光強度が低下した。
これに対し、図3に示すように、キセノンXeの濃度が0.05〜2.0%である場合は、ヨウ素エキシマーI から放射されるピーク波長が342nm付近の紫外光の発光強度が高いものでありながら、キセノンXeとヨウ素Iの化合物のエキシマーXeIから放射されるピーク波長が320nm付近にある紫外光の発光強度を高めることができる。
特に、キセノンXeの濃度が0.2〜2.0%である場合は、キセノンXeとヨウ素Iの化合物のエキシマーXeI、ヨウ素エキシマーI からそれぞれ放射される、ピーク波長が320nm、342nm付近にある紫外光の発光強度を高めることができる。
実験2は、放電ガスに含まれるヨウ素ガスの各濃度毎に、キセノンガスの濃度が互いに異なるよう以下の仕様で作製された複数のエキシマランプを使用した。
・放電容器は、断面が方形状の角筒形状を備え、全長125mm、幅32mm、高さ14mm、放電ギャップ10mm、ガラスの厚み2mmである。
・電極は、金をスクリーン印刷することにより形成され、全長130mm、幅32mm、厚み5μmである。
・放電ガスは、クリプトンガス、ヨウ素ガスおよびキセノンガスを含み全圧が120kPaである。
・ヨウ素ガスの濃度は、それぞれ0.04%、0.11%、0.91%である。
・キセノンガスの濃度は、0.05〜5%の範囲で互いに異なる。
・点灯周波数は70kHzである。
(実験2)
実験2は、各エキシマランプを点灯駆動させて300−350nmの波長域の紫外光の積算照度を測定した。実験2では、ヨウ素の濃度がキセノンXeの最適濃度に与える影響を調べた。
図4は、ヨウ素の各濃度毎に、放電ガスに含まれるキセノンXeの濃度を0.05〜5%の範囲で様々に変えたときの300−350nmの波長域の紫外光の積算照度を示す。図4では、縦軸がI濃度0.11%かつXe濃度1%である場合の波長342nmの紫外光の発光強度を1としたときの規格値であり、横軸がキセノンXeの濃度である。縦軸の積算照度は、キセノンXeの濃度が1%である場合の300−350nmの波長域の紫外光の積算照度を1としたときの規格値である。
図4に示すように、ヨウ素Iの濃度に係らず、放電ガスに含まれるキセノンXeの濃度が5.0%である場合は300−350nmの波長域の紫外光の積算照度が低く、これに対し、放電ガスに含まれるキセノンXeの濃度が0.05〜2%の場合は300−350nmの波長域の紫外光の積算照度が高いことが確認された。
さらに、図4に示す結果より、放電ガスに含まれるキセノンXeの濃度が0.2〜2%
である場合は、ヨウ素Iの濃度に係らず、300−350nmの波長域の紫外光の積算照度が特に高いことが確認された。
実験3は、放電ガスの各全圧毎に、キセノンガスの濃度が互いに異なるよう以下の仕様で作製された複数のエキシマランプを使用した。
・放電容器は、断面が方形状の角筒形状を備え、全長125mm、幅32mm、高さ14mm、放電ギャップ10mm、ガラスの厚み2mmである。
・電極は、金をスクリーン印刷することにより形成され、全長130mm、幅32mm、厚み5μmである。
・放電ガスは、クリプトンガス、ヨウ素ガスおよびキセノンガスを含み、全圧が93、120kPaである。
・ヨウ素ガスの濃度は0.11%で共通する。
・キセノンガスの濃度は、0.01〜5%の範囲で互いに異なる。
・点灯周波数は70kHzである。
(実験3)
実験3は、各エキシマランプを点灯させて300−350nmの波長域の紫外光の積算照度を測定した。実験3では、放電ガスの全圧がキセノンXeの最適濃度に与える影響を調べた。
図5は、放電ガスの各全圧毎に、放電ガスに含まれるキセノンXeの濃度を0.05〜5%の範囲で様々に変えたときの300−350nmの波長域の紫外光の積算照度を示す。図5では、縦軸が全圧120kPa、Xe濃度1%である場合の300−350nmの波長域の紫外光の積算照度を1としたときの規格値であり、横軸がキセノンの濃度である。
図5に示すように、放電ガスの全圧に係らず、放電ガスに含まれるキセノンXeの濃度が0.01%および5%の場合は300−350nmの波長域の紫外光の積算照度が低く、これに対し、放電ガスに含まれるキセノンXeの濃度が0.05〜2%である場合は、300−350nmの波長域の紫外光の積算照度が高いことが確認された。
さらに、図5に示す結果より、放電ガスに含まれるキセノンXeの濃度が0.2〜2%
である場合は、放電ガスの全圧に係らず、300−350nmの波長域の紫外光の積算照度が特に高いことが確認された。
以上の実験の結果から、本発明のエキシマランプにおいては、放電ガスに含まれるキセノンXeの濃度を0.05〜2%の範囲内、特に好ましくは0.2〜2%の範囲内に規定することによって、ヨウ素Iの濃度および放電ガスの全圧に係らず、300−350nmの波長域の紫外光の発光強度を高めることができることが確認された。
10 エキシマランプ
1 放電容器
2 封止部材
3、4 壁面
5、6 電極
7 紫外線反射膜

Claims (3)

  1. クリプトンガス、ヨウ素ガスおよびキセノンガスを含む放電ガスが封入された放電容器と、前記放電容器の内部に形成された放電空間を挟んで対向するように配置された一対の電極とを備えるエキシマランプであって、
    キセノンガスの分圧を、クリプトンガスの分圧、ヨウ素ガスの分圧およびキセノンガスの分圧の合計で割ることによって得られる前記キセノンガスの濃度が0.05〜2.0%であることを特徴とするエキシマランプ。
  2. 前記キセノンガスの濃度が0.2〜2.0%であることを特徴とする請求項1記載のエキシマランプ。
  3. 前記放電ガスの全圧が40〜133kPaであることを特徴とする請求項1記載のエキシマランプ。
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