JP5292888B2 - 硫黄原子を含有する新規なノルボルネン化合物およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、硫黄原子を含有する新規なノルボルネン化合物およびその製造方法に関する。
近年、電子材料、光学材料の分野では、各種性能を向上させるべく、種々の新規材料が検討されている。特に、ノルボルネン化合物については、電子材料、光学材料等の分野で優れた特性が期待できるため、盛んに研究開発が行われている。また、ノルボルネンなどの脂環構造を有するモノマーを原料とするポリマーは透明性、耐熱性、寸法安定性などの物理的、化学的特性に優れていることが知られている。そして、一般式(3):
Figure 0005292888
で表される酸素原子を含有するノルボルネン化合物を単独でまたは他のノルボルネン化合物と混合し、遷移金属触媒を用いた開環メタセシス重合などにより重合して得られた重合物を、レンズ、光導波路の材料とすることが提案されている(非特許文献1および特許文献1参照)。また、一般式(3)で表される酸素原子を含有するノルボルネン化合物とp−メトキシベンゾフェノンとをルテニウム触媒を用いて縮合することにより、縮合物を得る方法が提案されている(非特許文献2)。当該ノルボルネン化合物は、一般式(4):
Figure 0005292888
(X=OMs)で表される化合物を二量化させることにより製造する方法、X=OMsまたはOTsで表される化合物をX=OHで表される化合物とカップリングさせる方法が提案されているが(非特許文献1〜3参照)、いずれの方法においても、収率が低いという問題があった。
また、化合物中に硫黄原子を導入することで、酸素原子を含有するノルボルネン化合物を用いたポリマーに比べ高い屈折率を付与することが期待される(例えば、非特許文献4参照)。
J.Org.Chem.69、3319−3329(2004) Acta Polymer.47、391−398(1996) J.Chemical and Engineering Data 9(2)、240(1964) 「透明ポリマーの屈折率制御」、日本化学会編、学会出版センター、IV−15、179(1998) 特開2006−330119号公報
本発明は、硫黄原子を含有する新規なノルボルネン化合物を提供することおよび当該新規なノルボルネン化合物を安価かつ高収率で製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、かかる目的を解決すべく鋭意検討を行ったところ、特定の構造を有するノルボルネン化合物と硫化試剤を反応させることにより、新規な硫黄原子を含有するノルボルネン化合物を、簡便かつ高収率で製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、一般式(1):
Figure 0005292888
で表される硫黄原子を含有する新規なノルボルネン化合物;一般式(2):
Figure 0005292888
(式中、Xは、塩素、臭素、ヨウ素、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。)
で表される化合物を、硫化試剤の存在下で反応させることを特徴とする、一般式(1):
Figure 0005292888
で表される硫黄原子を含有するノルボルネン化合物の製造方法に関する。
本発明の新規な硫黄原子を含有するノルボルネン化合物は、重合性官能基を複数有しているため、硬化性樹脂の原料として好ましく使用できる。また硫黄原子を含有するため高い屈折率を有し、特に光学用途に好ましく使用できる。さらに、当該新規な硫黄原子を含有するノルボルネン化合物は、従来の電子材料、光学材料、成形品、複合材料、接着剤、塗料等の様々な用途に応用することができ、極めて有用である。
本発明の新規な硫黄原子を含有するノルボルネン化合物は、一般式(1):
Figure 0005292888
で表される。当該化合物は、例えば、一般式(2):
Figure 0005292888
(式中、Xは、塩素、臭素、ヨウ素、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。)で表される化合物を、硫化試剤の存在下で反応させることにより得られる。
一般式(1)で表される化合物は、例えば、シクロペンタジエンと所望の置換基Xを有するアリル化合物とをディールスアルダー反応させたり、市販の一般式(2)で表される化合物(X=OH)をスルホン酸エステル類へ誘導したりするなど、公知の方法に従って調製することができるが、市販のものをそのまま用いてもよい。なお、一般式(1)で表される化合物としては、Xが塩素、臭素またはヨウ素のものが好ましく、特に臭素のものが好ましい。
硫化試剤としては、特に限定されず公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化リチウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムなどの硫化アルカリ金属類、硫化水素カリウム、硫化水素ナトリウムなどの硫化水素塩、3−メルカプトプロピオン酸など対称なチオエーテル構造を構築できる化合物などが挙げられる。
一般式(2)で表される化合物と硫化試剤の使用量は特に限定されないが、通常は、一般式(2)で表される化合物100モル部に対して、硫化試剤を20〜75モル部程度用いればよい。
当該反応は、各成分を必要に応じて溶媒の存在下、加熱することにより行う。具体的には、通常、一般式(2)で表される化合物、硫化試剤を混合して、50〜100℃程度に加熱すればよい。反応に使用できる溶媒としては、一般式(2)で表される化合物、硫化試剤を溶解し、かつこれらに対し不活性なものであれば特に限定されず公知のものを使用できる。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類、水などが挙げられる。なお、溶媒として水を使用する場合には、反応を加速するために、4級アンモニウム塩などの相間移動触媒の添加が好ましい。また、反応は、窒素やアルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが、副反応を抑制することができるため好ましい。
得られた反応物は、公知の方法で精製することで、本発明の一般式(1)で表される化合物が得られる。精製方法としては、例えば、抽出、蒸留、再結晶、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどが挙げられる。
以下に、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが本発明はこれらの実施例のみに何ら限定されるものではない。また新規な硫黄原子を含有するノルボルネン化合物のスペクトル、分子量の測定には次の装置を使用した。
NMR:VARIAN社製 GEMINI−300
IR:Nicolet社製 FT−IR Avatar360
ガスクロマトグラフィー(GC):GC―17A(島津製作所製)
融点測定器:Mettler製 FP82 Hot Stage
実施例1
攪拌子、冷却管、温度計、窒素バルーンを備えた丸底フラスコ(500mL)に窒素雰囲気下、25℃にて一般式(2)で表される化合物(Xが=Br)[50.0g(267mmol) エンド/エキソ組成比=79/21 GC分析より算出した]、硫化ナトリウム[10.5g(134mmol) (株)高純度化学研究所製]、エタノール(100mL 和光純薬製:試薬特級)を導入し、攪拌を開始した。油浴にて30分間かけて82℃まで昇温し、窒素雰囲気下、緩やかに還流しながら12時間攪拌を続けた。水浴にて20℃まで冷却した後、反応混合物にトルエンを加え、水洗した。得られた有機層を60℃、2kPaで減圧濃縮することにより、35gの油状物質を得た。これを減圧蒸留(主留分:134〜136℃/150Pa)することにより、29.6gの(1)を無色透明な樹脂状の固体として得た。収率90.0%、GC純度99.2%であった。
この無色透明な樹脂状の固体はH−NMR、13C−NMR、IR、により同定し、目的の化合物(1)であることを確認した。
H−NMR(300MHz CDCl):δ=0.60(m,1.6H)、1.16〜1.30(m,2.1H)、1.30〜1.40(m,1.6H)、1.40〜1.46(m,2.6H)、1.54〜1.66(m,0.6H)、1.86〜1.98(m,1.6H)、2.18〜2.34(m,5.2H)、2.55〜2.61(m,0.9H)、2.70(br s,0.4H)、2.76〜2.84(m,2.0H)、2.90(br s,1.6H)、5.95(m,1.6H)、6.05(dd,J=5.5Hz,2.5Hz,0.4H)、6.11(dd,J=5.5Hz,2.5Hz,0.4H)、6.16(dd,J=5.9Hz,3.0Hz,1.6H)。
13C−NMR(75.5Hz CDCl):δ=32.72,32.74,33.3,37.62,37.65,38.78,38.82,38.87,39.2,42.0,42.7,45.1,45.42,45.47,46.1,49.6,132.1,136.59,136.63,137.6。
IR(neat):2964,2865,1446,1331,1257,905,832,717cm−1
融点:37.0〜43.5℃
本発明の化合物は、透明性、耐熱性、耐水性にすぐれるために、電子材料、光学材料、成形品、複合材料、接着剤、塗料等の様々な用途に応用することができる。特に、分子中に脂環構造と硫黄原子を有することから、高屈折率の光学材料としても有望である。また、本発明の化合物は、分子中に2つの二重結合を有するため、架橋性モノマー(クロスリンカー)としても使用することができる。

Claims (2)

  1. 一般式(1):
    Figure 0005292888
    で表される硫黄原子を含有する新規なノルボルネン化合物。
  2. 一般式(2):
    Figure 0005292888
    (式中、Xは、塩素、臭素、ヨウ素、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。)
    で表される化合物を、硫化試剤の存在下で反応させることを特徴とする、一般式(1):
    Figure 0005292888
    で表される硫黄原子を含有するノルボルネン化合物の製造方法。
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