JP6673107B2 - フッ素原子を含む有機基が導入された基材の製造方法 - Google Patents
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Description
一方、ハロゲン原子を有するオレフィンをオレフィンメタセシスに利用することは実用的ではない。中でも、テトラフルオロエチレンやヘキサフルオロプロピレンは、工業的に入手容易で事業化の観点から有用な化合物であるが、極めて電子不足なオレフィンであるだけでなく、その取扱いの難しさ等のため、オレフィンメタセシスに利用した報告はこれまでなかった。
<1>オレフィンメタセシス反応活性を有する金属−カルベン錯体化合物の存在下、オレフィンメタセシス反応により含フッ素有機基を基材に導入する工程、および、架橋反応させる工程を有する基材の製造方法。
<2>前記含フッ素有機基がフッ素原子および反応性炭素−炭素二重結合を有する<1>に記載の製造方法。
<3>前記架橋反応において、反応性炭素−炭素二重結合を有する架橋剤を用いる<1>または<2>に記載の製造方法。
<4>前記架橋反応が反応性炭素−炭素二重結合を用いた架橋反応である<1>〜<3>のいずれか一項に記載の製造方法。
<5>前記基材がガラスまたは樹脂である<1>〜<4>のいずれか一項に記載の製造方法。
なお本明細書において、「式(X)で表される化合物」のことを、単に「化合物(X)」と称する場合がある。
また、本明細書において、ペルハロゲン化アルキル基とは、アルキル基の水素原子が全てハロゲン原子で置換された基を意味する。ペルハロゲン化アルコキシ基、ペルハロゲン化アリール基及びペルハロゲン化アリールオキシ基についても同様である。
(ペル)ハロゲン化アルキル基とは、ハロゲン化アルキル基とペルハロゲン化アルキル基とを合わせた総称で用いる。すなわち該基は1個以上のハロゲン原子を有するアルキル基である。(ペル)ハロゲン化アルコキシ基、(ペル)ハロゲン化アリール基、及び(ペル)ハロゲン化アリールオキシ基についても同様である。
(ペル)フルオロアルキル基とは、フルオロアルキル基とペルフルオロアルキル基とを合わせた総称で用いる。すなわち該基は1個以上のフッ素原子を有するアルキル基である。(ペル)フルオロアルコキシ基、(ペル)フルオロアリール基、(ペル)フルオロアリールオキシ基についても同様である。
アリール基とは、芳香族化合物において芳香環を形成する炭素原子の内いずれか1つの炭素原子に結合した1つの水素原子を取り去った残基に相当する一価の基を意味し、炭素環化合物から誘導されるアリール基と、ヘテロ環化合物から誘導されるヘテロアリール基とを合わせた総称で用いる。
炭化水素基の炭素数とは、ある炭化水素基全体に含まれる炭素原子の総数を意味し、該基が置換基を有さない場合は炭化水素基骨格を形成する炭素原子の数を、該基が置換基を有する場合は炭化水素基骨格を形成する炭素原子の数に置換基中の炭素原子の数を加えた総数を表す。有機基の炭素数についても同様である。
ヘテロ原子とは、炭素原子と水素原子以外の原子を意味し、好ましくは、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、ケイ素原子、及びハロゲン原子からなる群から選ばれる1種以上の原子である。
基(i)〜(vi)とは以下を表す。
基(i):水素原子。
基(ii):ハロゲン原子。
基(iii):炭素数1〜20の一価炭化水素基。
基(iv):ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価有機基。
基(v):炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数5〜20のアリール基、炭素数5〜20のアリールオキシ基、炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルキル基、炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルコキシ基、炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリール基、及び炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリールオキシ基からなる群から選ばれる有機基。
基(vi):さらに酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む前記基(v)。ただし、前記基(vi)は、前記基(v)である場合を除く。
反応性炭素−炭素二重結合とは、オレフィンとして各種反応しうる炭素−炭素二重結合を意味し、芳香族性の二重結合は含まない。該二重結合としては、ビニル基、ビニルオキシ基、アリル基、アリルオキシ基、アクリロイル基等が例示でき、ビニル基、アリル基、ビニルオキシ基が反応性が高く好ましい。
式中SiY3は、トリクロロシリル基等の加水分解性シリル基を示す。Rfはフッ素原子を含む有機基である。Zは2価の有機基を示す。k、l、m、n、は1以上の整数である。
また例えば、架橋反応を先に行い同時に反応性炭素−炭素二重結合を導入する。その後導入された反応性炭素−炭素二重結合部分を、特定の金属触媒存在下で含フッ素オレフィン化合物とメタセシス反応させることにより、フッ素原子を含む有機基が導入された基材を得ることができる。
本発明における基材は特に限定されない。具体的にはガラス、樹脂(天然又は合成)、金属、セラミック、半導体(シリコン、ゲルマニウム等)、繊維(織物、不織布等)、毛皮、皮革、木材、陶磁器、石材、建築部材、又はこれらの複合基材等が挙げられ、任意の適切な材料で構成される。光学レンズ、ディスプレイ、光記録媒体における基材の表面材料としては、ガラス基材又は樹脂基材が好ましい。
樹脂基材の材料としては、アクリル樹脂又はポリカーボネート樹脂が好ましい。中でも表面にヒドロキシル基を有するものが反応性炭素−炭素二重結合を導入しやすいことから好ましい。
本発明においては、基材表面に反応性炭素−炭素二重結合を導入することが好ましい。基材表面に反応性炭素−炭素二重結合を導入するには、公知の方法を用いることができる。例えば、基材がガラスである場合には、シランカップリング剤等が好ましく用いられる。また、基材が樹脂である場合には多官能アクリレート又は多官能メタクリレート(以下、アクリレートおよびメタクリレートを合わせて、「(メタ)アクリレート」とも言う。)等が好ましく用いられ、基材が金である場合にはチオール化合物等が好ましく用いられる。
基材表面に反応性炭素−炭素二重結合を導入する際の反応条件も公知の条件で行えばよく、特に制限されない。
本明細書において、式中A11〜A13はそれぞれ独立して、前記基(i)、基(ii)、基(iii)、及び基(iv)からなる群から選ばれる基である。中でも、A11〜A13がいずれも水素原子であることが好ましい。A11〜A13のうちの任意の2個は、水素原子またはハロゲン原子がひとつ取れた二価の基として互いに結合し、環を形成してもよい。
本発明においては、オレフィンメタセシス反応(以下、単にメタセシス反応ともいう。)を行った後に架橋反応を行ってもよく、架橋反応を行った後にメタセシス反応を行ってもよい。耐久性に優れることからメタセシス反応を行った後に架橋反応を行うことが好ましい。該メタセシス反応としては、クロスメタセシス反応、開環クロスメタセシス反応、開環メタセシス重合反応、鎖状ジエンメタセシス重合反応等が挙げられる。
基材に反応性炭素−炭素二重結合が導入された後、金属触媒の存在下、前記反応性炭素−炭素二重結合と含フッ素オレフィン化合物とをメタセシス反応させることにより、フッ素原子を含む有機基が導入された基材となる。該有機基はフッ素原子および反応性炭素−炭素二重結合を有する。
下記スキーム(f)にクロスメタセシス反応の反応機構の例を表すが、金属触媒に由来する中間体(Metal I)及び中間体(Metal II)を反応機構の一部として含むと考えられる。
[L]は配位子であり、Mはルテニウム、モリブデン又はタングステンである。
RFはフッ素原子、炭素数1〜12の(ペル)フルオロアルキル基、炭素数1〜12の(ペル)フルオロアルコキシ基、エーテル性酸素原子を含む炭素数1〜200の(ペル)フルオロアルキル基、及びエーテル性酸素原子を含む炭素数1〜200の(ペル)フルオロアルコキシ基からなる群から選ばれる基である。
X11〜X13はそれぞれ独立して、前記基(i)、基(ii)、基(v)及び基(vi)からなる群から選ばれる基である。RF、X11、X12及びX13のうちの任意の2個は、水素原子またはハロゲン原子がひとつ取れた二価の基として互いに結合し、環を形成してもよい。
化合物(11)におけるA1及びA2はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の一価炭化水素基、又は、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価有機基である。A1及びA2は、A1及びA2のそれぞれから水素原子またはハロゲン原子がひとつ取れた2価の基として、互いに結合して環を形成してもよい。
金属−カルベン錯体化合物(10)として、上記スキーム(g)では化合物(11)を例に示したが、金属と二重結合を形成している炭素原子に結合する2つの基は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の一価炭化水素基、又は、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価有機基であればよく、これらは水素原子またはハロゲン原子がひとつ取れた二価の基として互いに結合して環を形成してもよい。
化合物(10)は本発明に係る製造方法において触媒としての役割を果たすが、試薬として投入するもの及び反応中で生成するもの(触媒活性種)の両方を意味する。ここで、化合物(10)は反応条件下、配位子のいくつかが解離することで触媒活性を示すようになるものと、配位子の解離なしで触媒活性を示すものが知られているが、本発明ではいずれでもよく限定されない。また一般に、オレフィンメタセシスは触媒へのオレフィンの配位と解離を繰り返しながら進行するため、反応中、触媒上にオレフィン以外の配位子がいくつ配位しているかは必ずしも明確でない。したがって本明細書中、[L]は配位子の数や種類を特定するものではない。
なお、上記ルテニウム−カルベン錯体は、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。さらに必要に応じてシリカゲルやアルミナ、ポリマー等の担体に担持して用いてもよい。
なお、上記モリブデン−カルベン錯体又はタングステン−カルベン錯体は、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。さらに必要に応じてシリカゲルやアルミナ、ポリマー等の担体に担持して用いてもよい。
反応性炭素−炭素二重結合を含む有機基が導入された基材表面において、オレフィンメタセシス反応活性を有する金属−カルベン錯体化合物(10)の存在下、前記反応性炭素−炭素二重結合を含フッ素オレフィン化合物とメタセシス反応させることにより、フッ素原子を含む有機基が導入された基材を製造することができる。すなわち本発明においては、基材の有する反応性炭素−炭素二重結合を用い、含フッ素オレフィン化合物を反応させることにより、基材に含フッ素有機基を導入する。本発明において、含フッ素オレフィン化合物は、フッ素原子を有するオレフィン化合物であれば特に制限は無い。含フッ素オレフィン化合物中の反応性炭素−炭素二重結合の数は1以上であれば制限されず、1〜3個が好ましい。また、含フッ素オレフィン化合物は鎖状オレフィンであっても環状オレフィンであってもよい。また内部オレフィン及び末端オレフィンのいずれも用いることができる。
すなわち化合物(21)におけるX11〜X13はそれぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;炭素数1〜12のアルキル基;炭素数1〜12のアルコキシ基;炭素数5〜20のアリール基;炭素数5〜20のアリールオキシ基;炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルキル基;炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルコキシ基;炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリール基;及び炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリールオキシ基;からなる群から選ばれる基であり、前記アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、(ペル)ハロゲン化アルキル基、(ペル)ハロゲン化アルコキシ基、(ペル)ハロゲン化アリール基、及び(ペル)ハロゲン化アリールオキシ基からなる群から選ばれる基は、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含んでもよい。
基(vii):炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する基(v)。
より好ましくはX11が水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルキル基、炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルキル基、炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルコキシ基、炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルコキシ基、炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリール基、炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリール基、炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリールオキシ基、又は炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリールオキシ基;X12が水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルキル基、炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルキル基、炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルコキシ基、炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルコキシ基、炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリール基、炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリール基、炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリールオキシ基、又は炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリールオキシ基;X13が水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数5〜20のアリール基、炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数5〜20のアリール基、炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルキル基、炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルキル基、炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルコキシ基、炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルコキシ基、炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリール基、炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリール基、炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリールオキシ基、又は炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリールオキシ基の組み合わせである。
化合物(21)としては、RFとして炭素数1〜12の(ペル)フルオロアルキル基、炭素数1〜12の(ペル)フルオロアルコキシ基、エーテル性酸素原子を含む炭素数1〜200の(ペル)フルオロアルキル基、及びエーテル性酸素原子を含む炭素数1〜200の(ペル)フルオロアルコキシ基からなる群から選ばれる基を有する1,1−ジヒドロオレフィン(特に1,1,2−トリヒドロオレフィン)が反応性が高い(基材への導入が容易である)ことから好ましい。
本発明において架橋反応は、基材が有する官能基と架橋剤が有する官能基とを反応させて化学結合を形成するものである。本発明においては、メタセシス反応と架橋反応とは、どちらを先に行ってもよい。架橋反応としては例えば、2個の反応性炭素−炭素二重結合を用いて光照射や加熱を行って反応させる[2+2]型環化反応、複数の反応性炭素−炭素二重結合をラジカル的に反応させるラジカル反応、水酸基とイソシアネート基とを反応させるウレタン化反応、アミノ基とイソシアネート基とを反応させるウレア化反応、カルボン酸と水酸基とを反応させるエステル化反応、水酸基とエポキシ基とを反応させるエポキシ開環反応等が挙げられる。
架橋反応を行った後にメタセシス反応を行う場合には、ウレタン化反応、ウレア化反応、エステル化反応、またはエポキシ開環反応による架橋反応が好ましい。
架橋剤としては、反応性炭素−炭素二重結合のみを反応性官能基として有する化合物であっても、反応性炭素−炭素二重結合以外の反応性官能基と反応性炭素−炭素二重結合とを有する化合物であってもよい。
反応性炭素−炭素二重結合以外の反応性官能基と反応性炭素−炭素二重結合とを有する化合物としては、2,4−ビス(メチレン)−1,5−ペンタンジオール、2,4−ビス(メチレン)−1,3,5−ペンタントリオール等が挙げられる。
反応開始剤は分解温度が高いtert−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシドが反応温度の調節の点で好ましい。
本発明は基材にメタセシス反応によりフッ素原子を含む有機基を導入する工程、および、架橋反応させる工程を有する基材の製造方法に関する。
活性エネルギー線源としては、紫外線照射装置(キセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、紫外線LED等)、電子線照射装置、X線照射装置、高周波発生装置等が使用できる。硬化反応を完結させる目的で、活性エネルギー線の照射後に加熱してもよい。加熱温度は、50〜120℃が好ましい。
同様に、反応性炭素−炭素二重結合を導入する反応後、表面層中の化合物であって他の化合物や基材と化学結合していない化合物は、必要に応じて除去してもよい。具体的な方法としては、たとえば、表面層に溶媒をかけ流す方法や、溶媒をしみ込ませた布でふき取る方法が挙げられる。
目的物収率向上の点で、原料となる化合物(21)は脱気及び脱水されたものを用いることが好ましい。脱気操作について、特に制限はないが、凍結脱気等を行うことがある。脱水操作について、特に制限はないが、通常モレキュラーシーブ等と接触させる。原料となる化合物(21)について、前記脱気及び脱水操作は通常金属−カルベン錯体と接触させる前に行う。
また原料となる化合物(21)は微量の不純物(例えばフッ化水素等)を含むことがあるので、目的物収率向上の点で精製してもよい。精製方法については特に制限はない。例えば文献(Armarego,W.L.F.et al.,Purification of Laboratory Chemicals(Sixth Edition),2009,Elsevier)記載の方法に従って行うことができる。
原料となるC=C基材表面の反応性炭素−炭素二重結合部分(以下、「基材表面のオレフィン部分」と称することがある。)と化合物(21)とのモル比に特に限定はないが、通常C=C基材表面のオレフィン部分1モルに対して、化合物(21)を0.01〜100モル程度用い、好ましくは0.1〜10モル程度用いる。
試薬として投入する場合、市販の金属−カルベン錯体をそのまま用いてもよく、あるいは市販試薬から公知の方法で合成した市販されていない金属−カルベン錯体を用いてもよい。
系内で発生させる場合、公知の方法で前駆体となる金属錯体から調製した金属−カルベン錯体を本発明に用いることができる。
なお、目的物収率向上の点で、前記溶媒は脱気及び脱水されたものを用いることが好ましい。脱気操作について、特に制限はないが、凍結脱気等を行うことがある。脱水操作について、特に制限はないが、通常モレキュラーシーブ等と接触させる。前記脱気及び脱水操作は通常金属−カルベン錯体と接触させる前に行う。
C=C基材及び化合物(21)と金属−カルベン錯体を接触させる相としては、特に制限はないが、反応速度の点で、通常は液相が用いられる。原料となる化合物(21)が反応条件下で気体の場合、液相で実施するのが難しいため、気−液二相で実施することもできる。なお、液相で実施する場合には溶媒を用いることができる。このとき用いる溶媒としては、上記、金属−カルベン錯体の溶解又は懸濁に用いた溶媒と同様のものを利用することができる。なお、原料となる化合物(21)が2種以上ある場合であって、それら化合物のうち少なくとも1種が反応条件下で液体の場合、無溶媒で実施できることがある。
反応後、表面層中の化合物であって他の化合物や基材と化学結合していない化合物は、必要に応じて除去してもよい。具体的な方法としては、たとえば、表面層に溶媒をかけ流す方法や、溶媒をしみ込ませた布でふき取る方法が挙げられる。
架橋反応をさせる架橋剤として反応性炭素−炭素二重結合を有する化合物を用いることができ、当該化合物は内部オレフィン及び末端オレフィンのいずれも利用することができる。
<製造例1>
クロスメタセシスによるフッ素原子と反応性炭素−炭素二重結合とを含む有機基が導入されたガラス基材の製造
18×32mmのガラス基材を希塩酸、イオン交換水の順に洗浄して清浄なガラス基材を得た(基材A1)。次に、ビニルトリクロロシラン(38μL、0.30mmol)、重クロロホルム(0.6mL)およびジメチルアセトアミド(0.6mL)の混合溶液をスピンコート法によって基材A1に塗布した後、ホットプレート上で100℃で1分間加熱した。これをデシケータ内で乾燥させ、メタノールで表面を洗浄することで、表面に反応性炭素−炭素二重結合が導入されたガラス基材(基材B1)を得た。三角フラスコに、Hoveyda−Grubbs第二世代触媒(18.8mg、0.03mmol)、C8F17−CH2CH=CH2(35.9μL、0.12mmol)及び重クロロホルム3.2mLを計り入れ、得られた溶液に基材B1を沈めた。60℃で3時間加熱後、基材を取りだし、メタノールで洗浄することで、フッ素原子と反応性炭素−炭素二重結合とを含む有機基が導入されたガラス基材(基材C1)を得た。基材A1、B1及びC1を用いて水、n−ヘキサデカンとの接触角測定を行った結果を表1に示す。また一連の反応を以下に示す。
(1)フッ素原子と反応性炭素−炭素二重結合とを含む有機基が導入されたガラス基材の製造
ガラス基材を60×60mmの基材に変更したこと以外は製造例1と同様の手法で基材を製造した。
(基材A2)希塩酸、イオン交換水で洗浄したガラス基材
(基材B2)表面に反応性炭素−炭素二重結合を導入したガラス基材
(基材C2)フッ素原子と反応性炭素−炭素二重結合とを含む有機基が導入されたガラス基材
(2)フッ素原子と反応性炭素−炭素二重結合とを含む有機基が導入されたガラス基材上での架橋化
トルエン(1.5mL)、トリアリルイソシアヌレート(15mg、0.06mmol)、tert−ブチルヒドロペルオキシド(0.5−0.6Mデカン溶液、0.0018mmol)をバイアル瓶に量り入れ架橋用混合液を調製した。上記(1)で得た基材C2をホットプレートで150℃に加熱しながら、架橋用混合液を基材表面に塗布した。ホットプレートの設定温度を200℃とし更に1時間基材を加熱した後、メタノールで表面を洗浄してTAIC架橋ガラス基材D2を得た。本ガラス基材の表面IR分析で、トリアリルイソシアヌレート由来の1700cm−1(C=O結合)付近の吸収が認められ架橋の進行を確認した。
基材A2、B2、C2およびD2を用いて水、n−ヘキサデカンとの接触角測定を行った結果を表2に示す。また一連の反応を以下に示す。
架橋化前後の基材での鉛筆硬度試験による硬度比較
鉛筆硬度試験器(荷重750±10g、鉛筆角度45±1度)を用いて基材C2とD2の表面硬度評価を行った。基材C2、D2を用いて鉛筆硬度試験を行った結果を表3に示す
Claims (5)
- 反応性炭素−炭素二重結合が導入された基材表面において、オレフィンメタセシス反応活性を有する金属−カルベン錯体化合物の存在下、前記反応性炭素−炭素二重結合と含フッ素オレフィン化合物とのオレフィンメタセシス反応により含フッ素有機基を基材に導入する工程、および、架橋剤を用い、基材が有する官能基と架橋剤が有する官能基とを反応させて化学結合を形成することにより架橋反応させる工程を有する、含フッ素有機基および架橋構造を表面層に有する基材の製造方法。
- 前記含フッ素有機基がフッ素原子および反応性炭素−炭素二重結合を有する請求項1に記載の製造方法。
- 前記架橋反応において、反応性炭素−炭素二重結合を有する架橋剤を用いる請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記架橋反応が反応性炭素−炭素二重結合を用いた架橋反応である請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記基材がガラスまたは樹脂である請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
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