JP5292819B2 - 表面保護用ポリオレフインフイルムの製造方法 - Google Patents
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Description
本発明フイルムは、基層(以下、A層)と自己粘着層(以下、B層)の少なくとも2層を含んでいるが、その機能を損なわない範囲で第三の樹脂層が含まれていてもよい。また、A層および/又はB層は、本発明の目的に反しない限り、それぞれ複層構成になっていてもよい。以下にA層、B層について詳細に説明する。
前述の通り、A層は本発明フイルムの機械的な特性を付与する基層としての機能を有する。このため、適度な剛性、優れた寸法安定性が求められる二軸延伸ポリプロピレン樹脂フイルムを含んでいることが重要である。この二軸延伸ポリプロピレン樹脂フイルムに含まれるポリプロピレン樹脂としては、メルトマスフローレートが1〜20g/10分、融点が163〜169℃が好ましく用いられるが、特に好ましくは、メルトマスフローレートが2〜10g/10分、融点が164〜168℃、質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で定義される分子量分布(Mw/Mn)が7以上、特に好ましくは8〜15である分子量分布を有するポリプロピレン樹脂であることが好ましい。このようなポリプロピレン樹脂は、適宜触媒を選択することによって得られるが、融点制御のためには触媒に加えて電子供与体の選定と添加量が制御要因として挙げられ、分子量分布を広げるためには、複数のリアクターを用いて製造することが挙げられる。
log(MS)>−0.56・log(MFR)+0.74
(ただし、MS:230℃で測定した溶融張力(cN)、MFR:メルトフローレート(g/10分))を満たすことである。すなわち、架橋構造の影響により、同一のMFRのポリプロピレン樹脂に比較して、溶融張力が上昇する。
B層は粘着性を有し、自己粘着性を有するポリオレフイン樹脂を含む。このようなポリオレフィン樹脂としては、低分子量成分が少ないことが好ましく、この観点から分子量分布が狭いことが好ましい。具体的には、Mw/Mnは4以下であることが好ましく、特に2〜3.5であることが好ましい。また、融点が60〜120℃のポリエチレン系樹脂、または、低結晶性ポリプロピレン樹脂の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
本発明フイルムは、上述の特徴を有する少なくともA層とB層とを含むが、その100℃の長手方向の熱収縮率は0〜2.5%であることが好ましく、更に好ましくは0〜2.0%、特に好ましくは0〜1.5%である。ここで長手方向とは、フイルムをロール状に巻き取った際の巻方向をいう。長手方向の熱収縮率が2.5%を超えると製品ロールが巻締まることでA層表面の形状が深くB層側に転写し、被着体に貼り合わせる際に空気を噛み込む等の問題を生じることがある。
以下、本発明フイルムの製造方法について一例を説明する。
JIS B−0601(1982)により、株式会社小坂研究所製「非接触三次元微細形状測定器(ET−30HK)」及び「三次元粗さ分析装置(MODEL SPA−11)」を用いて測定した。測定数は3とし、その平均値を用いた。
横倍率:200倍
縦倍率:20,000倍
カットオフ:0.25mm
幅方向送り速度:0.1mm/秒
長さ方向送りピッチ:10μm
長さ方向送り数:20回
(2)融点(Tm)、溶融結晶化ピーク(Tmc)(℃)
セイコー社製RDC220示差走査熱量計を用いて、以下の条件で5回の測定を行い、その内の最大値と最小値の2点を除いた残り3点の平均値をTm、Tmcとした。
検体として4±1mgを測定用のアルミパンに封入する。
以下の(a)→(b)→(c)のステップでフィルムを溶融・再結晶・再溶融させる。
(b)再結晶化 :280℃で5分保持後に20℃/分で 30℃まで冷却
(c)再溶融(2nd Run):30℃→280℃(昇温速度20℃/分)
この際に、2nd Runで観測される融解に伴う吸熱ピーク温度をTmとし、該ピーク値が複数ある場合は最もピーク面積が大きいピークをTmとして採用する。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて単分散ポリスチレン基準により求めた。
質量平均分子量:Mw=Σ(Ni・Mi2)/Σ(Ni・Mi)
分子量分布: Mw/Mn
なお、測定条件は次のようにした(< >内はメーカーを示す)。
検出器:示差屈折率検出器 RI 感度 32×、20% <Waters>
カラム:Shodex HT−806M(2)<昭和電工>
溶媒: 1,2,4−トリクロロベンゼン(BHT 0.1w/v%添加)<Ardrich>
流速: 1.0ml/min
温度: 135℃
試料: 溶解条件 165±5℃×10分(攪拌)
濃度 0.20w/v%
濾過 メンブレンフィルター孔径0.45μm<昭和電工>
注入量:200μl
分子量校正:単分散ポリスチレン(東ソー)を検体と同一条件で測定して得られた分子量と保持時間との関係を用い、ポリプロピレンの分子量とした。ポリスチレン基準の相対値である
データ処理:(株)東レリサーチセンター製GPCデータ処理システムによった。
フィルムの断面を透過型電子顕微鏡(TEM)にて以下の条件で写真撮影し、フィルムを構成する各層の厚み構成比率(全厚みに対する割合)を測定した。表面粗さや層界面の変動により凹凸がある場合は、中心線(既述(1)項の中心線平均粗さの定義に基づく)を設定し、該中心線からの厚みを測定する。各層の厚み(μm)は次項に基づき測定された該フイルムの全厚み(μm)を乗じて求める。
観察倍率:1,000倍
加速電圧:100kV
(5)フィルム厚み
JIS C−2330(2001)の7.4.1.1.により、平均フィルム厚さを求めた。フィルム厚みは1枚で測定し、10点の平均値とした。
JIS K−7210(1999)に準じて測定した。
ロール状フイルムから切り出されたフイルムの場合は、フイルムの巻方向を長手方向、その直角方向を幅方向とする。また、シート状のフイルム等で方向が判別できない場合は、アッベの屈折率計等を用いて、A層の配向性を測定し、主配向軸を幅方向、その直角方向を長手方向とする。
A.評価方法
サンプルフイルムを幅1,200mm、長さ1,000mのロール状に巻き取り、室温にて3日間エージングする。次いで、巻き返し装置を用いて当該ロールを巻き返した際の搬送状態を評価し「巻出し性」とした。同時に該巻き返し装置のフイルム搬送工程に東レ(株)製“トレシー”を巻き付けた固定バーを設置して、非粘着面側を擦過して、キズの発生状況を評価し「耐擦過性」とした。
(a)巻出し性
ランク1:搬送時、巻き取りロール共にシワが発生する。
ランク1:フイルム擦過キズが多発し、“トレシー”に付着物が確認された。
ランク1:エア噛みの発生個数が6個/100cm2以上
ランク2:エア噛みの発生個数が0.5個/100cm2以上6個/100cm2未満
ランク3:エア噛みの発生個数が0.5個/100cm2未満
以下、実施例、比較例に基づいて、本発明について説明する。
A層用樹脂として、サンアロマー製ポリプロピレン樹脂PL500A(Mw/Mn=6、融点=164℃)100質量部と高溶融張力ポリプロピレン樹脂HMS PF−814 10質量部をチップブレンドした樹脂(以下樹脂PP1)を準備し、押出機[a]より250℃で溶融押出し、60℃の冷却ドラム上にエアー圧で密着させ冷却固化させた。次いで、該シートを加熱ロールにて順次加熱し140℃に予熱した後に、周束差を設けた1対のロール間で長手方向に4.6倍延伸し、直ちに30℃の金属ロールで冷却し、一軸延伸フイルムを得た。
A層をAc層/As層の2層構成とすべく、Ac層用樹脂として前出のPL500Aのみの構成(樹脂PP2)、As層用樹脂としてPL500A 100質量部と高溶融張力ポリプロピレン樹脂HMS PF814 20質量部をチップブレンドした樹脂(PPs1)を準備し、2台の押出機[a]、[a’]を用いて、2層合流Tダイより樹脂PPs1/PP2からなる積層シートとして溶融押出しした。次いで該シートを実施例1と同様にして冷却、1軸延伸して、全厚み150μmの一軸延伸フイルムを得た。次いで、実施例1と同様に押出ラミネート装置を用いて、B層用樹脂としてエチレンメチルメタアクリレート共重合体 住友化学(株)製“アクリフト”WH303(MFR=7g/10分)(以下E2)を該一軸延伸フイルム上にラミネート並びに横方向に延伸し、A層(As層/Ac層)/B層からなる積層フイルムを得た。こうして得られたフイルムの特性は表1、2に示す通りであり、実用特性として優れていた。
実施例2において、Ac層の厚みが10μmとなるように押出機[a]の押出量を調整すると共にA層(As/Ac層)のキャストシートを得て、B層の厚みが30μmとなるように押出機[b]の押出量を調整すると共にB層のキャストシートを得た以外は、実施例2と同様にして積層シートを得た。こうして得られたフイルムの厚みは42μmであり、A層/B層のそれぞれの厚みは12μm/30μmであった。得られたフイルムの特性を表1、2に示すが、巻出し性、耐擦過性、貼合せ性いずれも優れていた。
Ac層用樹脂としてサンアロマー製ポリプロピレン樹脂HA722J(Mw/Mn=9、融点=167℃)(樹脂PP3)、As層用樹脂として以下の3種の樹脂を準備した。
PPs3:HA722J 100質量部 + HMS PF814 20質量部
PPs4:HA722J 100質量部 + HMS PF814 30質量部
以下、As層樹脂を変更して、実施例2と同様に1軸延伸フイルムを得て、B層樹脂としてPE2をラミネート、横延伸を行い、A層/B層がそれぞれ13μm/12μmの積層フイルム3水準を得た(PPs2:実施例4、PPs3:実施例5、PPs4:実施例6に対応)。特性は表1、2に示すとおり優れていた。
実施例4において、Ac層の厚みが18μmとなるように押出機[a]の押出量を調整すると共にA層(As/Ac層)のキャストシートを得て、B層用樹脂として日本ポリエチレン(株)製超低密度ポリエチレン“カーネル”KF360T(E3)を用いた以外は、実施例4と同様にして、積層フイルムを得た。こうして得られたフイルムの厚みは35μmであり、A層/B層のそれぞれの厚みは20μm/15μmであった。こうして得られたフイルムは、表1,表2に示すとおり優れていた。
実施例6において、Ac層の厚みが7μmとなるように押出機[a]の押出量を調整すると共にA層(As/Ac層)のキャストシートを得る際の冷却ドラム温度を70℃とした以外は、実施例6と同様にして延伸並びにラミネートを行い、全厚み22μmの積層フイルムを得た。
実施例6において、As層用樹脂としてHA722J 100質量部と三井化学(株)製ポリブテン1樹脂“タフマー”BL4000 15質量部とをチップブレンドした樹脂(以下樹脂PPs5)を用いた以外は実施例6と同様にしてフィルムを得た。こうして得られたフイルムは、表2に示すとおり優れていた。
実施例1において、A層樹脂としてPP2を用いた以外は実施例1と同様にして、積層フイルムを得た。こうして得られたフイルムのA層表面は中心線平均粗さが0.03μmと平滑化しており、横延伸後に巻き取られたフイルムでブロッキング現象を発生させた。
実施例2において、As層用の樹脂として、エチレンプロピレンブロック共重合体(PPs6)を用いた以外は実施例2と同様にして積層フイルムを得た。中心線平均粗さが0.6と粗れており、貼り合わせ特性に問題があった。B層表面を顕微鏡観察した結果、As層表面形状転写と思われる凹凸が観察された。
実施例6において、Ac層樹脂としてエチレン0.6質量部を有するミニランダムポリプロピレン樹脂(以下PP4)を用い、横延伸後の熱固定温度を140℃とした以外は実施例6と同様にして積層フイルムを得た。こうして得られたフイルムの長手方向の熱収縮率は2.8%と大きく、フイルムを巻出した際の抵抗が大きくしわが発生し、巻出し性はランク1となった。また、貼合せ性評価においてもエア噛みが散見され、ランク2の評価となった(表1、2参照)
Claims (5)
- 中心線平均粗さRaが0.05〜0.5μmの二軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムを含む基層(A層)と、ポリオレフィン樹脂を含みかつ一軸方向に延伸されてなる自己粘着層(B層)とを含み、100℃の長手方向の熱収縮率が0〜2.5%である表面保護用ポリオレフィンフィルムの製造方法であって、基層(A層)を構成する樹脂シートを一軸延伸した後、この上に自己粘着層(B層)を構成する樹脂を溶融押出し、次いでこれらを前記一軸延伸の方向と直角の方向に延伸する表面保護用ポリオレフインフイルムの製造方法。
- 基層(A層)中の二軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムに含まれるポリプロピレン樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が7以上でありかつ融点が163〜169℃である、請求項1に記載の表面保護用ポリオレフィンフィルムの製造方法。
- 基層(A層)が、Ac層と最表面を構成するAs層との少なくとも2層から構成され、二軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムに含まれるポリプロピレン樹脂が実質的にエチレン系成分を含まず、かつ高溶融張力ポリプロピレンおよびポリブテン1の少なくともいずれかを含む、請求項1または2に記載の表面保護用ポリオレフインフイルムの製造方法。
- 自己粘着層(B層)中に含まれるポリオレフイン樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が4以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の表面保護用ポリオレフインフイルムの製造方法。
- 基層(A層)の厚みが5〜18μmである、請求項1〜4のいずれかに記載の表面保護用ポリオレフインフイルムの製造方法。
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