JP5289072B2 - リチウムイオン二次電池およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、全固体型リチウムイオン二次電池およびその製造方法に関する。
従来リチウムイオン二次電池における電解質としては、一般に非水系の電解液をセパレータと称される微多孔膜に含浸させた電解質が使用されていたが、漏液や発火のおそれがあるため、近年このような液体が中心の電解質に代わり、電解質に無機の固体電解質を用いた全固体電池が提案されている。全固体電池は、電解液など可燃性の有機溶剤を用いないため、液漏れや発火のおそれがないため、安全性に優れている。しかし、全固体電池の場合、正極、電解質、負極のすべてが固体であるため、それぞれの接触界面がとり難く、界面抵抗が高くなってしまうという問題がある。この場合、電極―電解質界面でのリチウムイオン伝導性が充分に高くないため、いまだ実用に供されていない。
このような全固体電池を効率的に製造する方法として、固体電解質、正極および負極を特定の組成の粉体を主成分として含有するスラリーからそれぞれグリーンシートを作成し、これら固体電解質グリーンシート、正極用グリーンシートおよび負極用グリーンシートの3者を積層することによりリチウムイオン二次電池用積層体を得ることが考えられる。
この場合問題となることは、固体電解質、正極、負極を形成する材料はそれぞれ異なる材料を使用するため、最適な焼結温度が相互に異なり、固体電解質、正極、負極の各グリーンシートを積層した状態で単一の温度で一括焼成すると、出来上がった電池において反りやひび割れ等の不具合を生じたり、固体電解質、正極、負極のそれぞれの最良の特性が充分に発揮できない等の問題が生じる。そこで固体電解質、正極、負極の3者に共通の最適焼結温度を得るために、それぞれの材質を調整しなければならず、このため電池として容量、出力等が制約されることになる。
本発明は、上記全固体電池を実現する際の問題点にかんがみなされたものであって、能率的な方法で良好なイオン伝導度を有する全固体型リチウムイオン二次電池を製造することができる製造方法を提供しようとするものである。
上記本発明の目的を達成するため、本発明者は、研究と実験を重ねた結果、固体電解質、正極、負極をその焼成温度が高い材料のものから順に焼成を行い、焼成を完了した部材を順次組み合わせていくことにより、固体電解質、正極、負極がそれぞれ最適の温度で焼成され、これらを組み立てた電池は最高のイオン伝導度を有することができることを見出し、本発明に到達した。
上記目的を達成する本発明は次の構成を有するものである。
構成1
リチウムイオン伝導性を有する無機粉体もしくは熱処理することでリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体またはその両方が含まれるグリーンシートを熱処理することで得られる薄板状固体電解質の少なくとも一方の主面に活物質を含む電極グリーンシートを積層し、前記固体電解質の熱処理温度より低い温度で熱処理することを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
構成2
リチウムイオン伝導性を有する無機粉体もしくは熱処理することでリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体またはその両方が含まれるグリーンシートを熱処理する温度を一次熱処理温度とし、薄板状固体電解質の一方の主面に積層された電極活物質を含むグリーンシートを熱処理する温度を二次熱処理温度、もう片面に設けられた電極活物質を含むグリーンシートを熱処理する温度を三次熱処理温度とした場合、一次熱処理温度より二次熱処理温度のほうが低く、三次熱処理温度は二次熱処理温度と同じかそれよりも低いことを特徴とする構成2のリチウムイオン二次電池の製造方法。
構成3
一次熱処理温度は1200℃以下であることを特徴とする構成1または2のリチウムイオン二次電池の製造方法。
構成4
二次熱処理温度および三次熱処理温度は一次熱処理温度より50℃以上低いことを特徴とする構成1〜3のいずれかのリチウムイオン二次電池の製造方法。
構成5
薄板状固体電解質の体積はグリーンシート時の50容積%以上であることを特徴とする構成1〜4のいずれかのリチウムイオン二次電池の製造方法。
構成6
薄板状固体電解質の厚みは500μm以下であることを特徴とする構成1〜5のいずれかのリチウムイオン二次電池の製造方法。
構成7
リチウムイオン伝導性を有する無機粉体もしくは熱処理することでリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体の平均粒径は3μm以下であり、最大粒径は15μm以下であることを特徴とする構成1〜6のいずれかのリチウムイオン二次電池の製造方法。
構成8
リチウムイオン伝導性を有する無機粉体のイオン伝導度、もしくは熱処理することでリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体の熱処理後のイオン伝導度は25℃において1×10−4S・cm−1以上であることを特徴とする構成1〜7のいずれかに記載のリチウム
イオン二次電池の製造方法。
構成9
リチウムイオン伝導性を有する無機粉体もしくは熱処理することでリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体が含まれるグリーンシートの熱処理後のイオン伝導度は25℃において5×10−5S・cm−1以上であることを特徴とする構成9のリチウムイオン電池の
製造方法。
構成10
該リチウムイオン伝導性を有する無機粉体はLi1+x+z(Ge1−yTi2−xSi3−z12(但し、0≦x≦0.8、0≦y≦1.0、0≦z≦0.6、M=Al、Gaから選ばれる一つ以上)の結晶を含有することを特徴とする構成1〜9いずれかのリチウムイオン二次電池の製造方法。
構成11
該熱処理することでリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体は
酸化物基準のmol%で、
LiO 10〜25%、および
Alおよび/またはGa 0.5〜15%、および
TiOおよび/またはGeO 25〜50%、および
SiO 0〜15%、および
26〜40%
の各成分を含有する構成1〜10のいずれかのリチウム二次電池の製造方法。
固体電解質、正極、負極をそれぞれリチウムイオン二次電池として最適の材料で作成すると、正極および負極の適正焼成温度は通常固体電解質の適正焼成温度よりも低いので、本発明によれば、リチウムイオン伝導性を有する無機粉体もしくは熱処理することでリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体またはその両方が含まれるグリーンシートを熱処理することで得られる薄板状固体電解質の両面に活物質を含む電極グリーンシートを設け、前記固体電解質の熱処理温度より低い温度で再熱処理することにより形成することにより、固体電解質、正極、負極がそれぞれ適正焼成温度で焼成されることになり、優れたイオン伝導度を有するリチウムイオン二次電池を得ることができる。
また本発明によれば、固体電解質の一次熱処理温度を1200℃以下とすることにより、固体電解質グリーンシートは熱処理後にイオン伝導度が10−5S・cm−1である固体電解質を形成することができる。
前記一時熱処理温度が1200℃以上を超えると、固体電解質グリーンシートに含まれるリチウムイオン伝導性を有する無機粉体もしくは熱処理することでリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体またはその両方が溶融してしまうため、前記一時熱処理温度はより好ましくは1150℃以下、最も好ましくは1100℃以下である。
下限については、リチウムイオン伝導性を有する無機粉体同士の焼結温度および熱処理することでリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体のリチウムイオン伝導性発現温度の観点から、600℃以上が好ましく、650℃以上がより好ましく、700℃以上が最も好ましい。
また本発明によれば、二次熱処理温度および三次熱処理温度は一次熱処理温度より50℃以上低くすることにより、正極及び負極をそれぞれリチウムイオン二次電池として適したイオン伝導度その他の物性を有する材料で形成することが可能となる。このために、二次熱処理温度および三次熱処理温度は一次熱処理温度より100℃以上低くすることがより好ましく、150℃以上低くすることが最も好ましい。
また、本発明によれば、薄板状固体電解質の体積をグリーンシート時の50容積%以上とすることにより、焼成時の収縮による変形を抑制しつつ緻密化を図ることができる。このためには薄板状固体電解質の体積をグリーンシート時の55容積%以上とすることがより好ましく、60容積%以上とすることが最も好ましい。
また本発明によれば、薄板状固体電解質の厚みを500μm以下とすることにより、リチウムイオンの移動距離が短いため高出力の電池が得られ、また単位体積当りの電極面積が広く確保できるため高容量の電池が得られる。
前記の効果を得るためにはより好ましくは400μm以下であり、最も好ましくは300μm以下である。
また本発明によれば、リチウムイオン伝導性を有する無機粉体もしくは熱処理することでリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体の平均粒径を3μm以下、最大粒径を15μm以下とすることにより、緻密で空孔が少なくかつイオン伝導度が高い固体電解質を得ることができる。
以下本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明のリチウムイオン二次電池は、リチウムイオン伝導性を有する無機粉体もしくは熱処理することでリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体またはその両方が含まれるグリーンシートを熱処理することで得られる薄板状固体電解質の両面に活物質を含む電極グリーンシートを設け、前記固体電解質の熱処理温度より低い温度で再熱処理することにより形成される。
リチウムイオン伝導性を有する無機粉体もしくは熱処理することでリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体またはその両方が含まれるグリーンシートを熱処理する温度を一次熱処理温度、薄板状固体電解質の片面に設けられた正極活物質を含むグリーンシートを再熱処理する温度を二次熱処理温度、もう片面に設けられた負極活物質を含むグリーンシート再熱処理する温度を三次熱処理温度とした場合、一次熱処理温度より二次熱処理温度のほうが低く、三次熱処理温度は二次熱処理温度と同じかそれよりも低い。
薄板状固体電解質はリチウムイオン伝導性を有する無機粉体または熱処理することによりリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体またはその両方が含まれるグリーンシートを焼成することにより得られる。
薄板状固体電解質は、内部に気孔が存在するとその部分はイオン伝導経路が存在しないため、固体電解質自体のイオン伝導度が低くなってしまう。電池として使用した場合、伝導度が高い方がリチウムイオンの移動速度が速くなるため高出力の電池が得られる。そこで、固体電解質中の気孔率は低い方が好ましく、20vol%以下であることが好ましい。気孔率を20vol%以下とするには、固体電解質はグリーンシートから作製されることが好適である。
ここで、グリーンシートとは、焼成前のガラスや無機酸化物等のセラミックスの主に粉体に有機バインダー、可塑剤、溶剤等を混合し、薄板状に成形した未焼成体を意味することができる。この成形は、ドクターブレードやカレンダ法、スピンコートやディップコーティングなどの塗布法、インクジェット、バブルジェット(登録商標)、オフセットなどの印刷法、ダイコーター法、スプレー法等により行うことができ、混合スラリーから薄板状のグリーンシートを作ることができる。一般的には前記混合スラリーを離型処理を施したPET等のフィルム上に成形し、乾燥後に剥離することにより作製するが、積層する相手
のセラミックス等の上にスラリーを直接成形しても良く、この方法によって作製された層もグリーンシートの概念に含んでもよい。この焼成前のグリーンシートは柔軟であり、任意の形状に切断することや、積層することも可能である。
また、本発明によれば、グリーンシートは、均一な厚みに形成することにより、焼成時、均一にグリーンシートが加熱されるため、焼結も材料中で均一に進み、その結果として緻密で気孔率が20vol%以下と非常に少ないシート状の固体電解質を得ることができる。そこで、焼成前のグリーンシートの厚みの変化は、焼成前のグリーンシートの厚みの分布の平均値に対して+10%から−10%の範囲であると好ましい。さらに、原料を十分混合することにより、グリーンシートの組成を均一にし、焼成前にロールプレスや一軸、等方加圧などにより加圧し、緻密化しておくことにより、焼成後も緻密で気孔率の少ない固体電解質を得ることができ、これによってイオン伝導度が高く、高出力の固体電解質を得ることができる。そこで原料の混合は、例えばボールミルで少なくとも1時間以上行なうことが望ましい。
本発明の好ましい実施態様であるシート状の固体電解質は、電池として使用した場合、薄い方がリチウムイオンの移動距離が短いため高出力の電池が得られ、また単位体積当りの電極面積が広く確保できるため高容量の電池が得られる。そこで、固体電解質として用いる電解質層の厚みは500μm以下が好ましく、400μm以下がより好ましく、300μm以下が最も好ましい。
リチウムイオン二次電池の充放電時におけるリチウムイオンの移動性は、電解質のリチウムイオン伝導度およびリチウムイオン輸率に依存する。したがって、本発明の固体電解質にはリチウムイオン伝導性の高い物質を用いることが好ましい。
リチウムイオン伝導性の粉体または熱処理することでリチウムイオン伝導性を発現する粉体の熱処理後のイオン伝導度は、1×10−4S・cm−1以上であることが好ましく、5×10−4S・cm−1以上であることがより好ましく、1×10−3S・cm−1以上であることが最も好ましい。
本発明において使用するリチウムイオン伝導性の無機粉体は、リチウムイオン伝導性の結晶(セラミックまたはガラスセラミックス)粉体またはこれらの混合物の粉体を含有する無機物質の粉体である。また熱処理することによりリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体は熱処理によりガラスセラミックスとなるガラス粉体である。
ここで、リチウムイオン伝導性とはリチウムイオン伝導度が25℃において1×10−8S・cm-1以上の値を示すことを言う。
熱処理することでリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体は酸化物基準のmol%で、LiO 10〜25%、およびAlおよび/またはGa 0.5〜15%、およびTiOおよび/またはGeO 25〜50%、およびSiO 0〜15%、およびP 26〜40%の各成分を含有することが好ましい。
リチウムイオン伝導性を有する無機粉体もしくは熱処理することでリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体の平均粒径を3μm以下、最大粒径を15μm以下とすることが好ましい。これによって、緻密で空孔が少なくしたがってイオン伝導度が高い固体電解質を得ることができる。
前記の効果を得るためには、リチウムイオン伝導性を有する無機粉体もしくは熱処理することでリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体の平均粒径はより好ましくは2μm以下、最も好ましくは1μm以下である。
同様に前記の効果を得るためには、リチウムイオン伝導性を有する無機粉体もしくは熱処理することでリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体の最大粒径は10μm以下、最も好ましくは5μm以下である。
前記最大粒径、および平均粒径はベックマン・コールター社の粒度分布測定装置LS100Qまたはサブミクロン粒子アナライザーN5によって測定した値を用いることができる。前記平均粒径はレーザー回折法によって測定した時のD50(累積50%径)の値であり、前記の測定装置は被測定物の粒子径によって使い分けをする。被測定物の最大粒径が3μm未満の場合はサブミクロン粒子アナライザーN5を用いて測定する。被測定物の最小粒子径が0.4μm以上の場合は粒度分布測定装置LS100Qを用いて測定する。
被測定物の最大粒子径が3μm以上で最小粒径が0.4μm未満の場合はまずLS100Qで測定し、分布曲線のピークが2μm以上の時はLS100Qで測定して得られる値を用いる。LS100Qで測定した分布曲線のピークが2μm未満の時はN5で測定して得られる値を用いる。なお、前記平均粒子径は体積基準で表わした値である。
ここで、使用できるリチウムイオン伝導性の結晶としては、イオン伝導を阻害する結晶粒界を含まない結晶であるとイオン伝導の点で有利であり、LiN、LISICON類、La0.55Li0.35TiOなどのリチウムイオン伝導性を有するペロブスカイト構造を有する結晶や、NASICON型構造を有するLiTi12や、これら結晶を析出させたガラスセラミックスを用いることができる。好ましいリチウムイオン伝導性の結晶は、Li1+x+z(Ge1−yTi2−xSi3−z12(但し、0≦x≦0.8、0≦y≦1.0、0≦z≦0.6、M=Al、Gaから選ばれる一つ以上)である。特にNASICON型構造を有する結晶を析出させたガラスセラミックスは、イオン伝導を妨げる空孔や結晶粒界をほとんど有しないため、イオン伝導性が高くかつ化学的な安定性に優れるため、より好ましい。
固体電解質中にはこのガラスセラミックスを多く含むことにより高い伝導率が得られるため、固体電解質中に80wt%以上のリチウムイオン伝導性のガラスセラミックスを含むことが好ましい。より好ましくは85wt%以上、最も好ましくは90wt%以上である。
ここで、イオン伝導を妨げる空孔や結晶粒界とは、リチウムイオン伝導性の結晶を含む無機物質全体の伝導度を該無機物質中のリチウムイオン伝導性結晶そのものの伝導度に対し、1/10以下へ減少させる空孔や結晶粒界等のイオン伝導性阻害物質をさす。
ここで、ガラスセラミックスとは、ガラスを熱処理することによりガラス相中に結晶相を析出させて得られる材料であり、非晶質固体と結晶からなる材料をいう。また、ガラスセラミックスとは、結晶の粒子間や結晶中に空孔がほとんどなければガラス相すべてを結晶相に相転移させた材料、すなわち、材料中の結晶量(結晶化度)が100質量%のものを含む。一般にいわれるセラミックスや焼結体はその製造工程上、結晶の粒子間や結晶中の空孔や結晶粒界の存在が避けられず、ガラスセラミックスとは区別することができる。
特にイオン伝導に関しては、セラミックスの場合は空孔や結晶粒界の存在により、結晶粒子自体の伝導度よりもかなり低い値となってしまう。ガラスセラミックスは結晶化工程の制御により結晶間の伝導度の低下を抑えることができ、結晶粒子と同程度の伝導度を保つことができる。
また、ガラスセラミックス以外で、イオン伝導を妨げる空孔や結晶粒界をほとんど有しない材料として、上記結晶の単結晶が挙げられるが、製造が難しくコストが高いため、リチウムイオン伝導性のガラスセラミックスを用いるのが最も好ましい。
前記リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスとして好ましいものは、母ガラスがLiO−Al−TiO−SiO−P系の組成であり、このガラスを熱処理して結晶化させ、その際の主結晶相がLi1+x+yAlTi2−xSi3−y12(0≦x≦1、0≦y≦1)であることを特徴としたガラスセラミックスである。より好ましくは、0≦x≦0.4、0<y≦0.6、最も好ましくは0.1≦x≦0.3、0.1<y≦0.4である。
上述の系の場合、溶融ガラスをキャストして容易にガラスを得ることができ、このガラスを熱処理して得られた上記結晶相をもつガラスセラミックスは高いリチウムイオン伝導性を有する。
また、上記の組成以外にも、類似の結晶構造を有するガラスセラミックスであれば、AlをGa、TiOをGeOに一部または全部置換することも可能である。さらに、ガラスセラミックスの製造の際、その融点を下げるかまたはガラスの安定性を上げるために、イオン伝導性を下げない範囲で他の原料を微量添加することも可能である。
ガラスセラミックスの組成には、LiO以外のNaOやKOなどのアルカリ金属は、出来る限り含まないことが望ましい。これら成分がガラスセラミックス中に存在するとアルカリイオンの混合效果により、Liイオンの伝導を阻害して伝導度を下げることになる。
また、ガラスセラミックスの組成に硫黄を添加すると、リチウムイオン伝導性は少し向上するが、化学的耐久性や安定性が悪くなるため、出来る限り含有しない方が望ましい。
ガラスセラミックスの組成には、環境や人体に対して害を与える可能性のあるPb、As、Cd、Hgなどの成分もできる限り含有しないほうが望ましい。
リチウムイオン伝導性の無機粉体すなわち高いリチウムイオン伝導度と化学的安定性を有する結晶(セラミックスもしくはガラスセラミックス)の粉体または熱処理によりこのようなリチウムイオン伝導性を発現するガラス粉体またはこれらの粉体の混合物を、有機系のバインダーや必要に応じて分散剤等とともに溶剤を用いて混合し、ドクターブレード法などの簡易な作製方法により、グリーンシートを作製する。作製したグリーンシートを任意の形状に加工し、好ましくはロールプレスや一軸、等方加圧等により加圧した後焼成して有機バインダーの有機成分を除去することにより、薄板状あるいは任意の形状の全固体電解質が得られる。
固体電解質グリーンシートの場合、有機バインダーと混合する際のリチウムイオン伝導性を有する無機物粉体またはリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体の含有量の下限値は、焼成後の空隙を低減させるため、無機物粉体、有機バインダー、可塑剤、溶剤などからなる混合スラリーの量に対して50wt%以上とすることが好ましく、55wt%以上とすることがより好ましく、60wt%以上とすることが最も好ましい。乾燥後の固体電解質グリーンシート中のリチウムイオン伝導性を有する無機物粉体またはリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体の含有量の上限値は前記と同様の理由から、97wt%であることが好ましく、94wt%であることがより好ましく、90wt%以下であることが最も好ましい。
また、リチウムイオン伝導性を有する無機物粉体またはリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体の含有量の上限値は、シート形状を維持させるため、混合スラリーの量に対して90wt%以下とすることが好ましく、85wt%以下とすることがより好ましく、80wt%以下とすることが最も好ましい。乾燥後のグリーンシート中のリチウムイオン伝導性を有する無機物粉体またはリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体の含有量の上限値は前記と同様の理由から、97wt%以下であることが好ましく、94wt%以下であることがより好ましく、90wt%以下であることが最も好ましい。
グリーンシートの成形時に用いる有機バインダーは、ドクターブレード用の成形助剤として市販されているバインダーを用いることができる。また、ドクターブレード用以外にもラバープレス、押し出し成形などに一般に用いられている成形助剤を用いることができる。具体的には、アクリル樹脂、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、ブチルメタアクリレート、ビニル系の共重合物等を用いることができる。これらのバインダーの他に、粒子の分散性を高めるための分散剤や、乾燥時の泡抜きを良好にするための界面活性剤などを適量添加すると、より好ましい。
有機バインダーの含有量の下限値は、シート形状を維持させやすくするため、活物質粉体(正極グリーンシート、負極グリーンシートの場合)無機物粉体、有機バインダー、可塑剤、溶剤などからなる混合スラリーの量に対して1wt%以上とすることが好ましく、3wt%以上とすることがより好ましく、5wt%以上とすることが最も好ましい。
前記と同様の理由から、乾燥後のグリーンシート中の有機バインダーの含有量の下限値は3wt%以上とすることが好ましく、5wt%以上とすることがより好ましく、7wt%以上とすることが最も好ましい。
また、有機バインダーの含有量の上限値は、脱脂後の空隙を低減させやすくするため、混合スラリーの量に対して50wt%以下とすることが好ましく、40wt%以下とすることがより好ましく、30wt%以下とすることが最も好ましい。
前記と同様の理由から、乾燥後のグリーンシート中の有機バインダーの含有量の上限値は40wt%以下とすることが好ましく、35wt%以下とすることがより好ましく、30wt%以下とすることが最も好ましい。
また、リチウム伝導性を阻害せず、電子伝導性を上げたければ、他の無機粉体や有機物を加えても問題はない。無機粉体として誘電性の高い絶縁性の結晶またはガラスを少量加えることにより効果が得られることがある。例えばBaTiO、SrTiO、Nb、LaTiO等が挙げられる。
有機物は、焼成時に除去されるため、成型時のスラリーの粘度調整などに使用しても問題はない。
当グリーンシートの成形には、簡易なドクターブレード、ロールコーター、ダイコーターを用いることができる。また粘性を調製すれば、混練・押し出しなどの汎用の装置を用いることができるため、様々な形状の固体電解質を効率よく安価に製造することができる。
こうして作成した固体電解質グリーンシートを1200℃以下の温度で焼成する。
焼成して得られるシート状の固体電解質は、成形したグリーンシートの形状がそのままもしくは収縮した相似形で得られるため、任意の形状への加工が容易であり、したがって薄い膜や任意の形状の固体電解質あるいはこの固体電解質を用いた全固体リチウムイオン二次電池の製造が可能になる。
また、焼成後の固体電解質は有機物を含まないため、耐熱性および化学的耐久性にすぐれ、また安全性や環境に対しても害を及ぼすことが少ない。
なお、薄板状固体電解質の体積はグリーンシート時の55容積%以上とすることが好ましい。これによって、焼成時の収縮による変形を抑制しつつ緻密化を図ることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池を作成するための薄板状固体電解質、正極、負極からなる積層体の正極グリーンシートに使用する活物質としては、
Liイオンの吸蔵、放出が可能な遷移金属化合物を用いることができ、例えば、マンガン、コバルト、ニッケル、バナジウム、ニオブ、モリブデン、チタン、鉄、リン、アルミニウム、クロムから選ばれる少なくとも1種を含む遷移金属酸化物等を使用することができる。
正極グリーンシートに含まれる活物質の含有量の下限値は、少ないと焼成後に密度が低く、また収縮が大きいため、40wt%以上であることが好ましく、50wt%以上であることがより好ましく、60wt%以上であることが最も好ましい。
また、正極グリーンシートに含まれる活物質の含有量は、多すぎると可とう性が無くなり取り扱いがむずかしくなるため、97wt%であることが好ましく、94wt%であることがより好ましく、90wt%以下であることが最も好ましい。
前記の活物質の含有量を有する正極グリーンシートを得るため、また良好に塗布できるスラリーを調製するためには、正極活物質粉体、無機物粉体、有機バインダー、可塑剤、溶剤などからなる混合スラリーの量に対して正極活物質の量は10wt%以上とすることが好ましく、15wt%以上とすることがより好ましく、20wt%以上とすることが最も好ましい。
また、前記活物質の含有量の上限値は、良好に塗布できるスラリーを調製するためには、混合スラリーの量に対して90wt%以下とすることが好ましく、85wt%以下とすることがより好ましく、80wt%以下とすることが最も好ましい。
また、正極活物質の電子伝導性が低い場合、電子伝導助剤を添加することにより、電子伝導性を付与することができる。電子伝導助剤としては、微粒子や纎維状の炭素材や金属を用いることができる。用いることができる金属は、チタンやニッケル、クロム、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属や白金、金、ロジウムなどの貴金属を用いることができる。
また、このリチウム二次電池用積層体において、その負極グリーンシートに使用する活物質としては、アルミニウム、シリコン、スズなどLiイオンの吸蔵、放出が可能な合金、チタンやバナジウム、クロム、ニオブ、シリコンなどの金属酸化物、の材料を使用することができる。
負極グリーンシートに含まれる活物質の含有量の下限値は、少ないと焼成後に密度が低く、また収縮が大きいため、40wt%以上であることが好ましく、50wt%以上であることがより好ましく、60wt%以上であることが最も好ましい。
また、負極グリーンシートに含まれる活物質の含有量の上限値は、多すぎると可とう性が無くなり取り扱いがむずかしくなるため、97wt%であることが好ましく、94wt%であることがより好ましく、90wt%以下であることが最も好ましい。
前記の活物質の含有量を有する負極グリーンシートを得るため、また良好に塗布できるスラリーを調製するためには、負極活物質粉体、無機物粉体、有機バインダー、可塑剤、溶剤などからなる混合スラリーの量に対して負極活物質の量は下限値を10wt%以上とすることが好ましく、15wt%以上とすることがより好ましく、20wt%以上とすることが最も好ましい。また、前記活物質の含有量の上限値は、バインダーや溶剤を用いてスラリー化する必要があるため、混合スラリーの量に対して90wt%以下とすることが好ましく、80wt%以下とすることがより好ましく、75wt%以下とすることが最も好ましい。
また、負極活物質の電子伝導性が低い場合、電子伝導助剤を添加することにより、電子伝導性を付与することができる。電子伝導助剤としては、微粒子や纎維状の炭素材や金属を用いることができる。用いることができる金属は、チタンやニッケル、クロム、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属や白金、金、ロジウムなどの貴金属を用いることができる。
正極グリーンシート及び負極グリーンシートには、リチウムイオン伝導性無機物粉体を添加するとイオン伝導が付与され好ましい。具体的には、前記リチウムイオン伝導性のガラスセラミックスを含むことができる。また、固体電解質グリーンシートに含まれるイオン伝導性無機物と同じものを添加するとより好ましい。このように同じ材料を含むと電解質と電極材に含まれるイオン移動機構が共通することができ、電解質―電極間のイオン移動がスムーズに行え得る。従って、より高出力・高容量の電池が提供できる。
正極グリーンシートの場合、有機バインダーと混合する際のリチウムイオン伝導性無機物粉体の含有量の下限値は、イオン伝導性を付与させる必要があるため、正極活物質粉体、無機物粉体、有機バインダー、可塑剤、溶剤などからなる混合スラリーの量に対して1wt%以上とすることが好ましく、3wt%以上とすることがより好ましく、5wt%以上とすることが最も好ましい。
乾燥後の正極グリーンシート中のリチウムイオン伝導性無機物粉体の含有量の下限値は前記と同様の理由から、3wt%以上とすることが好ましく、5wt%以上とすることがより好ましく、10wt%以上とすることが最も好ましい。
また、リチウムイオン伝導性無機物粉体の含有量の上限値は、多くなりすぎると含まれる活物質の量が少なく電池容量が低下してしまうため、混合スラリーの量に対して50wt%以下とすることが好ましく、40wt%以下とすることがより好ましく、30wt%以下とすることが最も好ましい。
乾燥後の正極グリーンシート中のリチウムイオン伝導性無機物粉体の含有量の上限値は前記と同様の理由から、70wt%以下とすることが好ましく、60wt%以下とすることがより好ましく、50wt%以下とすることが最も好ましい。
負極グリーンシートの場合、有機バインダーと混合する際のリチウムイオン伝導性無機物粉体の含有量の下限値は、イオン伝導性を付与させる必要があるため、負極活物質粉体、無機物粉体、有機バインダー、可塑剤、溶剤などからなる混合スラリーの量に対して1wt%以上とすることが好ましく、3wt%以上とすることがより好ましく、5wt%以上とすることが最も好ましい。
乾燥後の負極グリーンシート中のリチウムイオン伝導性無機物粉体の含有量の下限値は前記と同様の理由から、3wt%以上とすることが好ましく、5wt%以上とすることがより好ましく、10wt%以上とすることが最も好ましい。
また、リチウムイオン伝導性無機物粉体の含有量の上限値は、多くなりすぎると含まれる活物質の量が少なく電池容量が低下してしまうため、シート形状を維持させるため、混合スラリーの量に対して50wt%以下とすることが好ましく、40wt%以下とすることがより好ましく、30wt%以下とすることが最も好ましい。
乾燥後の負極グリーンシート中のリチウムイオン伝導性無機物粉体の含有量の上限値は前記と同様の理由から、70wt%以下とすることが好ましく、60wt%以下とすることがより好ましく、50wt%以下とすることが最も好ましい。
正極グリーンシートおよび負極グリーンシートは薄板状固体電解質グリーンシートの作成と同様にして作成することができる。
こうして作成した正極グリーンシートをすでに焼成してある固体電解質の片面にアセトン等の接着剤を噴霧した後貼り付けて乾燥させた後固体電解質の焼成温度(1200℃以下)よりも50℃以上低い温度で焼成する。この温度は正極グリーンシートが正極として完成した場合積層体の変形を生じることなく電池として最適の性能を発揮できる温度である。
正極の焼成が終了した後、固体電解質上正極と反対面に負極グリーンシートを正極グリーンシートと同様にして貼り付け、正極グリーンシートの焼成温度と同一またはこれより低い温度で焼成する。
こうして作成した薄板状固体電解質、正極、負極からなる積層体の正極側にアルミペーストを塗布して乾燥・焼成する等公知の方法により正極集電体を形成し、負極側に銅ペーストを塗布して乾燥・焼成する等公知の方法により負極集電体を形成し、正極側に正極リード、負極側に負極リードをそれぞれ接続してリチウムイオン二次電池を作成する。
固体電解質の作製
原料としてHPO、Al(PO、LiCO、SiO、TiOを使用し、これらを酸化物換算のモル%でPを33.8%、Alを7.6%、LiOを14.5%、TiOを41.3%、SiOを2.8%といった組成になるように秤量して均一に混合した後に、白金ポットに入れ、電気炉中1450℃でガラス融液を撹拌しながら3時間加熱熔解した。その後、ガラス融液を流水中に滴下させることにより、フレーク状のガラスを得た。得られたガラスフレークをジェットミルで粉砕し、平均粒径1.9μmのガラス微粒子を得た。更にエタノールによる湿式ボールミルを用いて微粉砕し、そのスラリーを更にスプレードライで乾燥させることで平均粒径0.3μmのガラス微粒子を得た。このガラス微粒子と水に分散させたアクリル樹脂に分散剤を添加してボールミルにて48h攪拌してスラリーを調製した。このときのスラリーに含まれるガラス微粒子は65.5質量%で、アクリル樹脂は13.5質量%とした。ドクターブレード法にて離型処理を施したPETフィルム上に厚み35μmにて成形、80℃にて一次乾燥させ、更に95度で二次乾燥を行いグリーンシートを得た。このグリーンシートを、50mm角に切り出し、3枚重ねて積層されたものを一次熱処理温度として1020℃で30min熱処理した。得られた処理物はX線回折法で確認したところ、主結晶相にLi1+x+yAlTi2−xSi3−y12(0≦x≦0.4、0<y≦0.6)であることが確認され、インピーダンス測定を行いイオン伝導度を求めたところ、3.1×10−4Scm-1であり、薄板状の固体電解質が得られたことが確認された。
固体電解質上に正極を形成
前記フレーク状のガラスを1000℃で5h熱処理し、主結晶相がLi1+x+yAlTi2−xSi3−y12(0≦x≦0.4、0<y≦0.6)で、イオン伝導度が6.8×10−4Scm-1のフレーク状固体電解質を得た。得られたフレーク状固体電
解質をジェットミルと湿式ボールミルを用いて、平均粒径0.2μmの粉末状固体電解質を得た。得られた粉末状固体電解質と市販の平均5μmのLiCoO2を、重量比で粉末状固体電解質: LiCoO2=1:8となるようにボールミルで混合した。ここで得られた複合体と水に分散させたアクリル樹脂に分散剤を添加してボールミルにて48h攪拌してスラリーを調製した。このときのスラリーに含まれる複合体は63.4質量%で、アクリル樹脂は12.3質量%とした。ドクターブレード法にて前記薄板状の固体電解質上に厚み95μmにて成形、80℃にて一次乾燥させ、更に95℃で二次乾燥を行い、二次熱処理温度として800℃で熱処理した。これにより薄板状の固体電解質上に正極が形成された。
正極が形成された固体電解質に負極を形成
市販の平均7.5μmのLi4/3Ti5/3O4を、湿式ボールミルを用いて平均1.4μmまで粉砕し、前記粉末状固体電解質と重量比で粉末状固体電解質:Li4/3Ti5/3O4=1:5となるようにボールミルで混合した。ここで得られた複合体と水に分散させたアクリル樹脂に分散剤を添加してボールミルにて48h攪拌してスラリーを調製した。このときのスラリーに含まれる複合体は60.8質量%で、アクリル樹脂は14.8質量%とした。ドクターブレード法にて前記薄板状の固体電解質上に厚み90μmにて成形、80℃にて一次乾燥させ、更に95℃で二次乾燥を行い、三次熱処理温度として650℃で熱処理した。これにより薄板状の固体電解質上に負極が形成された。
全固体リチウムイオン二次電池の作製
上記で作製した積層体の正極側に、アルミペーストを塗布後、乾燥・焼成することで、正極集電体を作製した。負極側には銅ペーストを塗布し、乾燥・焼成させた。更に、正極側にアルミニウム箔を正極リードとして接続し、負極側に胴箔を負極リードとして接続し、内側を絶縁コートしたアルミ製のラミネートフィルムに封入し、リチウムイオン電池を作製した。作製した電池は、平均電圧2.5Vで放電し、充放電可能な電池であった。
〔実施例2〕
正極の作製
実施例1で得られたLiCoO2を含むスラリーを離型処理を施したPETフィルム上にキャストし、80℃にて一次乾燥させ、更に95℃で二次乾燥を行い正極グリーンシートを得た。ここで得られた正極グリーンシートを2枚重ね、CIP(冷間等方加圧装置)を用いて196.1MPaで積層した。得られた正極グリーンシート積層体は、比重が1枚の正極グリーンシートの1.4倍であった。
負極の作製
実施例1で得られたLi4/3Ti5/3O4を含むスラリーを離型処理を施したPETフィルム上にキャストし、80℃にて一次乾燥させ、更に95℃で二次乾燥を行い負極グリーンシートを得た。ここで得られた負極グリーンシートを2枚重ね、CIP(冷間等方加圧装置)を用いて196.1MPaで積層し、負極グリーンシート積層体を得た。得られた負極グリーンシート積層体は、比重が1枚の正極グリーンシートの1.3倍であった。
全固体リチウムイオン二次電池の作製
実施例1で得られた薄板上固体電解質の片面にアセトンを噴霧し、前記正極グリーンシート積層体を接着させて40℃にて一次乾燥させ、更に60℃で二次乾燥を行い、二次熱処理温度として800℃で熱処理した。これにより固体電解質上に正極が形成された。次に、固体電解質の正極形成反対面にアセトンを噴霧し、前記負極グリーンシート積層体を接着させて40℃にて一次乾燥させ、更に60℃で二次乾燥を行い、三次熱処理温度として650℃で熱処理した。これにより固体電解質上に負極が形成された。ここで正極側に、アルミペーストを塗布後、乾燥・焼成することで、正極集電体を作製した。負極側には銅ペーストを塗布し、乾燥・焼成させた。更に、正極側にアルミニウム箔を正極リードとして接続し、負極側に胴箔を負極リードとして接続し、内側を絶縁コートしたアルミ製のラミネートフィルムに封入し、リチウムイオン電池を作製した。作製した電池は、平均電圧2.5Vで放電し、充放電可能な電池であった。

Claims (6)

  1. リチウムイオン伝導性を有する無機粉体及び熱処理することでリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体が含まれるグリーンシートを熱処理する温度を一次熱処理温度とし、この一次熱処理で得られる薄板状固体電解質の一方の主面に積層された、前記リチウムイオン伝導性を有する無機粉体及び電極活物質を含むグリーンシートを熱処理する温度を二次熱処理温度としこの二次熱処理で得られる前記薄板状固体電解質上に電極が形成された固体電解質のもう片面に設けられた、前記リチウムイオン伝導性を有する無機粉体及び別の電極活物質を含むグリーンシートを熱処理する温度を三次熱処理温度とした場合、一次熱処理温度より二次熱処理温度のほうが低く、三次熱処理温度は二次熱処理温度と同じかそれよりも低いことを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
  2. 前記一次熱処理温度は1200℃以下であり、
    前記二次熱処理温度および前記三次熱処理温度は前記一次熱処理温度より50℃以上低く、
    前記薄板状固体電解質の体積はグリーンシート時の50容積%以上であり、
    前記薄板状固体電解質の厚みは500μm以下であり、
    前記リチウムイオン伝導性を有する無機粉体もしくは熱処理することでリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体の平均粒径は3μm以下であり、最大粒径は15μm以下であることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
  3. リチウムイオン伝導性を有する無機粉体のイオン伝導度、もしくは熱処理することでリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体の熱処理後のイオン伝導度は25℃において1×10−4S・cm−1以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
  4. リチウムイオン伝導性を有する無機粉体もしくは熱処理することでリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体が含まれるグリーンシートの熱処理後のイオン伝導度は25℃において5×10−5S・cm−1以上であることを特徴とする請求項記載のリチウムイオン電池の製造方法。
  5. 該リチウムイオン伝導性を有する無機粉体はLi1+x+z(Ge1−yTi2−xSi3−z12(但し、0≦x≦0.8、0≦y≦1.0、0≦z≦0.6、M=Al、Gaから選ばれる一つ以上)の結晶を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
  6. 該熱処理することでリチウムイオン伝導性を発現する無機粉体は
    酸化物基準のmol%で、
    LiO 10〜25%、および
    Alおよび/またはGa 0.5〜15%、および
    TiOおよび/またはGeO 25〜50%、および
    SiO 0〜15%、および
    26〜40%
    の各成分を含有する請求項1〜のいずれかに記載のリチウム二次電池の製造方法。
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