JP5288699B2 - レーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法 - Google Patents

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Description

本発明は、レーザー彫刻印刷版表面の彫刻カスを洗浄除去する方法に関する。
フレキソ印刷やドライオフセット印刷等の印刷分野、エンボス加工分野では、レーザー光を照射して照射された部分の樹脂が除去されるレーザー彫刻法が用いられるようになってきた。また、使用される材料は従来の架橋ゴムに加えて、熱硬化性樹脂を熱硬化させて得られる樹脂硬化物や、感光性樹脂を光硬化させて得られる感光性樹脂硬化物も市場に流通するようになってきた。
レーザー彫刻法は、レーザー光を印刷原版表面に照射して凹パターンを形成し印刷版を形成する方法であるが、レーザー彫刻時に気体状のカス、液状のカス、粉末状のカスが発生し、特に粘着性の高い液状のカスが印刷版表面に残存しやすい。表面に残存する粘着性の高い液状カスを除去する各種の方法が提案されている。
特許文献1(特開2004−37866号公報)では、高圧スチームを用いて洗浄する方法の記載されている。液状カスを除去する効果が高いが、高圧のスチームを作製するために複雑な装置が必要となり、また、スチームを用いるため安全対策を充分に施す必要がある。したがって、必然的に特殊な複雑な装置が必要となる。
また、特許文献2(特開2004−144868号公報)では、炭化水素、グリコールエーテル、界面活性剤、水を含む水系洗浄液を用いて洗浄する方法が記載されている。また、水系洗浄液中でブラシを用いて物理的な洗浄方法も可能であることの記載もある。しかしながら、この方法で使用される水系洗浄液には、炭化水素やグリコールエーテル等の化合物が添加されているため、印刷版の材質によっては印刷版表面に形成された微細パターンが膨潤したり、劣化する等の問題点が指摘されている。
さらに、特許文献3(特開2006−1168号公報)には、感光性樹脂組成物を光架橋させて形成したシート状印刷原版において、水系現像液中でブラッシングする方法が記載されている。ブラシを用いて物理的に粘着性の液状カスを除去する場合、ブラシの材質、繊維の太さ、圧力等によっては、網点等の微細なパターンが欠落する問題がある。また、ブラシで使用されている繊維の太さによっては、特に網点等の微細パターン間に残留する粘着性の高い液状カスを充分に除去しきれない、あるいは除去できたとしても処理に膨大な時間を要することが大きな課題である。
このように、従来技術では簡便な方法で、しかも短時間の内に、レーザー彫刻印刷版表面に残存する粘着性の高い液状カスを効果的に除去できる方法がなく、有効な方法の開発が強く求められている。
特開2004−37866号公報 特開2004−144868号公報 特開2006−1168号公報
本発明の目的は、レーザー彫刻印刷版表面の粘着性の高い液状カスを、短時間で、且つ、簡便な方法で、洗浄除去できる方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討し、感光性樹脂硬化物を含む層を有するレーザー彫刻印刷原版表面にレーザー光を照射し、照射された部分の感光性樹脂硬化物が除去されるレーザー彫刻法で形成された凹凸パターンを有するレーザー彫刻印刷版の表面に残存する彫刻カスの洗浄方法であって、(i)レーザー彫刻印刷版表面と水系洗浄
液とを接触させる工程と、(ii)レーザー彫刻印刷版表面と多孔質有機体とを接触させ
る工程とを組み合わせることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
1.感光性樹脂硬化物を含む層を少なくとも1層有するレーザー彫刻印刷原版表面にレー
ザー光を照射し、照射された部分の感光性樹脂硬化物が除去されるレーザー彫刻法で形成
された凹凸パターンを有するレーザー彫刻印刷版の表面に残存する彫刻カスの洗浄方法で
あって、
(i)液状彫刻カスの残存するレーザー彫刻印刷版表面と水系洗浄液とを接触させる工程
と、
(ii)前記工程(i)において、液状彫刻カスの残存するレーザー彫刻印刷版表面と多
孔質有機体とを、手作業若しくは機械的に揚動させて拭く方法又は円筒状成形された多孔
質有機体を回転させながらレーザー彫刻印刷版表面に接触させる方法により、接触させる
工程と、
を含むレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法、
2.前記多孔質有機体が、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、セルロースから選択される少なくとも1種類の樹脂あるいは繊維を含有し、且つ、前記多孔質有機体の密度が0.1g/cm3以上0.8g/cm3以下である、前に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法、
3.前記多孔質有機体が、連続気泡を有する、前1又は2に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法、
4.前記水系洗浄液が、炭酸塩、過炭酸塩、クエン酸塩から選択される少なくとも1種類の化合物を含有し、前記水系洗浄液のpHが7.1以上12以下である、前項1ないしのうち何れか一項に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法、
5.前記水系洗浄液が、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基から選択される少なくとも1種類の官能基を有し、及び/又は4級アンモニウム塩構造、ピリジニウム塩構造、硫酸塩構造、硫酸エステル塩構造、リン酸塩構造から選択される少なくとも1種類の構造を有する水溶性界面活性剤を含有する、前項1ないしのうち何れか一項に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法、
6.前記炭酸塩が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウムから選択される少なくとも1種類の化合物であり、前記過炭酸塩が、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過炭酸ストロンチウム、過炭酸カルシウムから選択される少なくとも1種類の化合物である、前項に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法、
7.前記レーザー彫刻印刷原版が中空円筒状支持体上に感光性樹脂硬化物層を少なくとも1層積層した積層体であって、該感光性樹脂硬化物層が20℃において液状の感光性樹脂組成物を光硬化させたものである、前項1ないしのうち何れか一項に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法、
8.前記多孔質有機体が、円筒状成形体である、前項1ないしのうち何れか一項に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法、
9.前記円筒状成形体が、レーザー彫刻印刷版表面に接触しながら、該レーザー彫刻印刷版表面に存在する水系洗浄液を該円筒状成形体内部から吸引する工程を更に含む、前に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法、
10.前記彫刻カスが、数平均分子量500以上5000以下の有機化合物(d)を含有する、前項1ないしのうち何れか一項に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法、
11.前記有機化合物(d)が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基から選択される少なくとも1種類の官能基を有する化合物である、前項10に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法、
12.前記有機化合物(d)が、カーボネート結合、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合、アミド結合から選択される少なくとも1種類の結合、及び/又は飽和炭化水素鎖、不飽和炭化水素鎖から選択されるいずれかの分子鎖を有する、前項10又は11のいずれかに記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法、
13.前記有機化合物(d)が、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールから選択される少なくとも1種類の化合物を含有する、前項10ないし12のうち何れか一項に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法、
14.前記レーザー彫刻法で使用されるレーザーの発振波長が、150nm以上20μm以下である、前項1ないし13のうち何れか一項に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法、
15.前記工程(i)の前、及び/又は工程(ii)の後に、(v)レーザー彫刻印刷版表面又は10mm以下の表面近傍の温度が50℃以上150℃以下の温度条件において、織布又は不織布を該レーザー彫刻印刷版表面と接触させる工程を更に含む、前項1ないし14のうち何れか一項に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法、
を提供する。
さらに、本発明は、前項1ないし15のうち何れか一項に記載の洗浄方法によって洗浄されたレーザー彫刻印刷版を提供する。
本発明によれば、レーザー彫刻印刷版表面の粘着性の高い液状カスを、短時間で、かつ、簡便な方法で、容易に洗浄除去できる。
以下、さらに詳細に本発明の好ましい実施態様を説明する。
本発明で用いるレーザー彫刻印刷原版は、感光性樹脂組成物を光硬化させて得られる感光性樹脂硬化物層を印刷版層として少なくとも1層有し、該レーザー彫刻印刷原版表面にレーザー光を照射するレーザー彫刻法により表面に凹凸パターンを形成した後、表面に残存する彫刻カスを洗浄する工程を経ることによりレーザー彫刻印刷版を得ることができる。用いるレーザー彫刻印刷原版は、シート状に成形されたものであっても円筒状に成形されたものであっても構わない。本発明は、レーザー彫刻印刷版表面に残存する彫刻カスの洗浄方法であって、(i)レーザー彫刻印刷版表面と水系洗浄液とを接触
させる工程、および(ii)レーザー彫刻印刷版表面と多孔質有機体とを接触させる工程
を含む。
本発明で用いる水系洗浄液として、水のみでも構わないが、水溶性界面活性剤を有する水溶液が好ましい。水溶性界面活性剤としては、分子内に親水性部と疎水性部を有する両親媒性化合物であって、水に溶解する化合物であれば特に限定するものではない。陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤など容易に入手可能な界面活性剤を挙げることができる。これらの中でも特に、界面活性剤の親水性部として、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基から選択される少なくとも1種類の官能基、及び/又は4級アンモニウム塩構造、硫酸塩構造、リン酸塩構造から選択される少なくとも1種類の構造を挙げることができる。その中でも、4級アンモニウム塩構造、ピリジニウム塩構造、硫酸塩構造、硫酸エステル塩構造、リン酸塩構造を有するイオン性化合物が、レーザー彫刻印刷版表面に残存する粘着性の高い液状カスを除去する観点からその効果が高い。界面活性剤の疎水性部としては、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、フッ素原子で置換された炭化水素基、有機珪素基などを挙げることができる。また、疎水性部は、単鎖型、多鎖型、環状型を挙げることができる。好ましい界面活性剤の具体例としては、炭素数12から18のカルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩を挙げることができる。特に好ましい界面活性剤として、ドデシル硫酸ナトリウム、ヘキサデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の化合物を挙げることができる。
また、本発明に用いる水系洗浄液は、炭酸塩、過炭酸塩、クエン酸塩から選択される少なくとも1種類の化合物を含有していることが好ましい。これらの化合物を含有することにより水系洗浄液のpHの値は、7.1から12の範囲となり、レーザー彫刻印刷版表面に残存する粘着性の高い液状カスの除去に効果がある。また、過炭酸塩は炭酸ガスを発生し、微小な気泡が彫刻カスの除去を促進する効果があると推定される。炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウムから選択される少なくとも1種類の化合物であることが好ましい。また、過炭酸塩として、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過炭酸カルシウム、過炭酸ストロンチウムから選択される少なくとも1種類の化合物であることが好ましい。更に、クエン酸塩として、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸ストロンチウムから選択される少なくとも1種類の化合物であることが好ましい。
本発明におけるレーザー彫刻印刷版表面と水系洗浄液とを接触させる方法は、以下の方法に限定されないが、レーザー彫刻印刷版を水系洗浄液中に浸漬する方法、レーザー彫刻印刷版表面に水系洗浄液を、スプレーノズル等を用いて噴霧する方法等を挙げることができる。この際、シート状のレーザー彫刻印刷版を円筒状ドラムに巻き付けて系洗浄液と接触させることもでき、また、円筒状のレーザー彫刻印刷版の両端部を前記ドラムに固定し、周方向に回転させながら水系洗浄液と接触させることも可能である。
また、本発明では、水系洗浄液を、超音波振動子を用いて振動させながら、レーザー彫刻印刷版と水系洗浄液とを接触させることもできる。超音波振動子は、水系洗浄液中に浸漬した状態で使用することもできるが、水系洗浄液を、超音波振動子を通過させレーザー彫刻印刷版表面に噴霧させることも可能である。超音波振動子の振動周波数は、10kHz以上20MHz以下であることが好ましく、より好ましくは、10kHz以上5MHz以下、さらに好ましくは20kHz以上3MHz以下である。この振動周波数範囲であれば、レーザー彫刻印刷版表面の網点等の微細パターン間に残存した彫刻カスも浮き上がらせ除去することができる。
さらに、本発明では、水系洗浄液中に微小気泡を噴出させることもできる。噴出させる気体は、空気、窒素、酸素、オゾン、アルゴン、二酸化炭素等を挙げることができる。微小気泡の大きさは、0.5μm以上100μm以下であることが好ましく、より好ましくは、1μm以上50μm以下、さらに好ましくは1μm以上30μm以下である。気泡の大きさを測定する方法としては、洗浄槽側面に設置した窓から内部の状況を高速度カメラ等の撮像装置を用いて撮影し測長する方法を挙げることができる。微小気泡の大きさが、上記範囲であれば、レーザー彫刻印刷版表面の網点等の微細パターン間に残存した彫刻カスも浮き上がらせ除去することができる。微小気泡を発生させる方法として、水系洗浄液に衝撃波を加える方法、キャビテーション等を利用した圧壊法、過飽和析出法、気体を洗浄液が共存する状態で乱流を発生させる方法、微細孔から気体を噴出させる方法、化学反応によって気体を発生させる方法等を挙げることができる。圧壊法は、ベンチュリー管等を用いて大きな気泡を一瞬にして微小気泡にする方法であり、非常に小さな気泡を形成できる。乱流を発生させる方法として、エジェクター型乱流発生器、インジェクター型乱流発生器、旋回流を用いた乱流発生器を用いる方法がある。これらの方法を種々組み合わせた微細気泡発生装置を入手することが可能である。
本発明に用いる水系洗浄液は、温度を10℃以上90℃以下でレーザー彫刻印刷版表面と接触させる。より好ましくは、40℃以上80℃以下、さらに好ましくは、50℃以上80℃以下である。この温度範囲であれば、水系洗浄液中に界面活性剤が存在していても液が均一の状態を保持することができ、レーザー彫刻印刷版表面の網点等の微細パターン間に残存した彫刻カス除去する効果がある。
本発明では、レーザー彫刻印刷版表面と多孔質有機体とを接触させる工程を含む。本発明で用いる用語「多孔質有機体」とは、表面及び/又は内部に空隙を有するプラスチック系材料、ゴム系材料、繊維系材料をいう。プラスチック系材料、ゴム系材料としては、スポンジ等の発泡材料を挙げることができる。また、繊維系材料としては、織布や不織布等を積層したもの、ロール状に成形したものを挙げることができる。多孔質有機体表面及び/又は内部に水系洗浄液を包含させることが好ましく、該多孔質有機体中に含まれる空隙は連続気泡であることが好ましい。レーザー彫刻印刷版表面の微細パターン間に残存する彫刻カスを多孔質有機体表面及び/又は内部に吸収して除去することが可能となる。
本発明で用いる多孔質有機体が、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、セルロースから選択される少なくとも1種類の樹脂又は繊維を含有し、且つ、前記多孔質有機体の密度が0.1g/cm3以上0.8g/cm3以下であることが好ましい。多孔質有機体は、シート状成形体、ブロック状成形体、円筒状成形体であっても構わない。上記のような樹脂材料を用いた場合、発泡処理等で多孔質化することが可能である。また、繊維材料を用いる場合は、織布又は不織布を単独で用いる方法、積層体として用いる方法、又は円筒状成形体に成形して用いる方法を挙げることができる。上記の材料を用いることにより、レーザー彫刻印刷版表面と接触させた際に、印刷版表面に存在する微細パターンを欠落させることなく、表面に残存する彫刻カスを除去することができる。多孔質有機体の密度のより好ましい範囲は、0.3g/cm3以上0.8g/cm3以下、さらに好ましくは、0.3g/cm3以上0.6g/cm3以下である。密度が上記範囲であれば、機械的な物性を確保することが可能である。また、多孔質有機体の硬度は、ASKER−C硬度で0度以上60度以下であることが好ましく、より好ましくは0度以上30度以下、さらに好ましくは0度以上20度以下である。この硬度範囲であれば、レーザー彫刻印刷版表面の微細パターンとも十分に接触することが可能となるので、該微細パターン間に残存する粘着性の高い液状彫刻カスを除去することができる。
レーザー彫刻印刷版表面と多孔質有機体とを接触させる方法は、以下の方法に限定されないが、多孔質有機体に水系洗浄液を含浸させて手作業あるいは機械的に揚動させて拭く方法、円筒状成形された多孔質有機体を回転させながらレーザー彫刻印刷版表面に接触させる方法等を挙げることができる。大型のレーザー彫刻印刷版又は円筒状レーザー彫刻印刷版を処理する場合には、円筒状に成形された多孔質有機体を用いることが好ましい。
また、円筒状に成形された多孔質有機体とレーザー彫刻印刷版表面が接触する際に、レーザー彫刻印刷版表面に付着した水系洗浄液を、円筒状成形体内部から吸引することもできる。レーザー彫刻印刷版表面の彫刻カスの除去を促進する効果がある。円筒状成形体内部に吸引した水系洗浄液は、循環させて再度利用することも可能である。
本発明のレーザー彫刻印刷原版は、感光性樹脂組成物(a)に高エネルギー線を照射して硬化させて得られる感光性樹脂硬化物を有する。感光性樹脂組成物(a)を硬化させるのに用いる高エネルギー線として、紫外線領域や可視光線領域に発光波長を有する光、電子線、X線、分子線等を挙げることができる。
以下、本発明のレーザー彫刻印刷原版で用いる感光性樹脂組成物(a)について以下に記載する。本発明で用いる感光性樹脂組成物(a)は、数平均分子量が1000以上50万以下の樹脂(b)、数平均分子量1000未満の重合性反応基を有する有機化合物(c)を含むことが好ましい。
本発明で用いる感光性樹脂組成物(a)は、20℃において液状であっても固体状であっても構わないが、成形性の容易さから20℃において液状であることが特に好ましい。本発明で用いる感光性樹脂組成物に含まれる樹脂(b)は、20℃において液状であっても固体状であっても構わないが、成型加工性の観点から20℃で液状樹脂であることが好ましい。本発明で用いる用語「液状樹脂」とは、容易に流動変形し、かつ、冷却により変形された形状に固化できるという性質を有する高分子体を意味し、外力を加えたときに、その外力に応じて瞬時に変形し、かつ外、力を除いたときには、短時間に元の形状を回復する性質を有するエラストマーに対応する用語である。樹脂(b)が20℃において液状樹脂である場合には、感光性樹脂組成物も20℃において液状となり、シート状又は円筒状に成形する際に、良好な厚み精度や寸法精度を得ることができる。液状感光性樹脂を用いる場合、感光性樹脂組成物(a)の粘度は、好ましくは、20℃において10Pa・s以上10kPa・s以下であり、さらに好ましくは、50Pa・s以上5kPa・s以下である。粘度が10Pa・s以上であれば、作製される印刷基材の機械的強度が十分であり、円筒状に成形する際であっても形状を保持し易く、加工し易い。粘度が10kPa・s以下であれば、高温にしなくとも変形し易く、加工が容易である。シート状又は円筒状の印刷基材に成形し易く、プロセスも簡便である。特に厚み精度の高い印刷基材を得るためには、該感光性樹脂組成物が重力により液ダレ等の現象を起こさないように、粘度を100Pa・s以上、より好ましくは200Pa・s以上、さらに好ましくは500Pa・s以上の比較的粘度の高い感光性樹脂組成物であることが望ましい。
本発明で用いる感光性樹脂組成物に含まれる樹脂(b)の数平均分子量は、1000以上50万以下、より好ましくは5000以20万以下、さらに好ましくは1万以上10万以下である。樹脂(b)の数平均分子量は1000以上であれば、印刷基材として用いる場合、繰り返しの使用にも耐えられる。また、樹脂(b)の数平均分子量の上限は、50万以下が好ましい。50万以下であれば、感光性樹脂組成物(a)の粘度が過度に上昇することもなく、シート状又は円筒状に成形する際に加熱押し出し等の複雑な加工方法は必要ない。本発明で用いる用語「数平均分子量」とは、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定し、分子量既知のポリスチレンで検量し換算した値である。
本発明で用いる感光性樹脂組成物に含まれる樹脂(b)は、分子内に重合性不飽和基を有していても構わない。特に好ましいものとして1分子あたり平均で0.7以上の重合性不飽和基を有するポリマーを挙げることができる。1分子あたり平均で0.7以上であれば、感光性樹脂組成物より得られる印刷原版の機械強度に優れ、レーザー彫刻時にレリーフ形状が崩れ難くなる。さらにその耐久性も良好で、繰り返しの使用にも耐えられるのものとなり好ましい。印刷原版の機械強度を考慮すると、樹脂(b)の重合性不飽和基は1分子あたり0.7以上が好ましく、1を越える量が更に好ましい。樹脂(b)の重合性不飽和基の存在比率については、高分解能核磁気共鳴スペクトル法(NMR法)を用いて定量化することができる。ここで言う「分子内」とは、高分子主鎖の末端、高分子側鎖の末端や高分子主鎖中や側鎖中に直接、重合性不飽和基が付いている場合なども含まれる。本発明の重合性不飽和基とは、ラジカル又は付加重合反応に関与する重合性不飽和基と定義する。ラジカル重合反応に関与する重合性不飽和基の好ましい例としては、ビニル基、アセチレン基、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。付加重合反応に関与する重合性不飽和基の好ましい例としては、シンナモイル基、チオール基、アジド基、開環付加反応するエポキシ基、オキセタン基、環状エステル基、ジオキシラン基、スピロオルトカーボネート基、スピロオルトエステル基、ビシクロオルトエステル基、環状イミノエーテル基等が挙げられる。
本発明で用いる感光性樹脂組成物に含まれる樹脂(b)の分子内に重合性不飽和基を導入する方法としては、例えば直接、重合性の不飽和基をその分子末端に導入したものを用いてもよいが、別法として、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ケトン基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、環状カーボネート基、エステル基などの反応性基を複数有する数千程度の分子量の上記成分の反応性基と結合しうる基を複数有する結合剤(例えば、水酸基やアミノ基の場合のポリイソシアネートなど)を反応させ、分子量の調節、及び末端の結合性基への変換を行った後、この末端結合性基と反応する基と重合性不飽和基を有する有機化合物と反応させて末端に重合性不飽和基を導入する方法などの方法が好適に挙げられる。
特にガラス、セラミックス等の硬い被印刷基材上に材料を塗布する場合には、樹脂(b)として、一部、ガラス転移温度が20℃以下の液状樹脂、さらに好ましくはガラス転移温度0℃以下の液状樹脂を用いることが好ましい。このような液状樹脂として、例えばポリエチレン、ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポイソプレン等の炭化水素類、アジペート、ポリカプロラクトン等のポリエステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテル類、脂肪族ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン類、(メタ)アクリル酸及び/又はその誘導体の重合体及びこれらの混合物やコポリマー類が挙げられる。その含有量は、樹脂(b)全体に対して30wt%以上含有することが好ましい。特に電子材料又は光学材料に含有される溶剤に対する耐性の観点から、ポリカーボネート骨格、ポリエステル骨格、脂肪族炭化水素骨格から選択される少なくとも1種類の分子骨格を有し、かつウレタン結合、アミド結合、イミド結合から選択される少なくとも1種類の結合を有する化合物を含有することが好ましい。
本発明で用いる感光性樹脂組成物に含まれる有機化合物(c)は、数平均分子量が1000未満、分子内に重合性反応基を有する化合物であることが好ましい。重合性反応基は、ラジカル重合反応、付加重合反応、開環付加重合反応に寄与する官能基である。ラジカル重合反応に関与する重合性反応基の好ましい例としては、ビニル基、アセチレン基、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。付加重合反応に関与する重合性反応基の好ましい例としては、シンナモイル基、チオール基、アジド基、開環付加反応するエポキシ基、オキセタン基、環状エステル基、ジオキシラン基、スピロオルトカーボネート基、スピロオルトエステル基、ビシクロオルトエステル基、環状イミノエーテル基等が挙げられる。樹脂(b)との希釈のし易さを考慮すると数平均分子量は1000以下が好ましい。有機化合物(c)は、例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン等のオレフィン類、アセチレン類、(メタ)アクリル酸及びその誘導体、ハロオレフィン類、アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体、アリルアルコール、アリルイソシアネート等のアリル化合物、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその誘導体、酢酸ビニル類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、シアネートエステル類等が挙げられるが、その種類の豊富さ、価格等の観点から(メタ)アクリル酸及びその誘導体が好ましい例である。
有機化合物(c)の分子構造として、シクロアルキル骨格、ビシクロアルキル骨格、シクロアルケン骨格、ビシクロアルケン骨格などの脂環族炭化水素骨格、ベンジル基、フェニル基、フェノキシ基、ナフチル基、ピレニル基等を有する芳香族炭化水素骨格、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、テトラヒドロフルフリル基、グリシジル基等を有する分子構造、アルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールやトリメチロールプロパン等の多価アルコールのエステル化合物などが挙げられる。
本発明において、これら重合性反応基を有する有機化合物(c)は、その目的に応じて1種又は2種以上のものを選択できる。印刷基材として電子材料又は光学材料を塗布する場合、該電子材料又は光学材料に含まれる溶剤に対する膨潤を押さえるために用いる有機化合物として長鎖脂肪族、脂環族又は芳香族の誘導体を少なくとも1種類以上有することが好ましい。
本発明の有機化合物(c)の数平均分子量(Mn)の測定方法について説明する。有機化合物(c)が溶解する溶剤に溶かし、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC法)で分析し、分子量既知の標準ポリスチレンに対して換算して数平均分子量(Mn)を算出する。分子量分布の広い化合物については、この方法で求める。分子量分布に関する尺度として、数平均分子量(Mn)と、Mnと同時に算出される重量平均分子量(Mw)の比、すなわち多分散度(Mw/Mn)を用いる。多分散度が1.1以上である場合、分子量分布が広いとして、GPC法で求められる数平均分子量を採用する。また、多分散度が1.1未満のものは分子量分布が極めて狭いため、分子構造解析が可能であり、核磁気共鳴スペクトル法(NMR法)又は質量分析法を用いて算出した分子量を数平均分子量とする。
本発明に用いる感光性樹脂組成物より得られる印刷基材の機械強度を高めるためには、有機化合物(c)として、脂環族炭化水素骨格又は芳香族炭化水素骨格を有する化合物を少なくとも1種類以上有することが好ましく、この場合、有機化合物(c)の全体量の20wt%以上であることが好ましく、さらに好ましくは50wt%以上である。
本発明に用いる感光性樹脂組成物(a)を光、すなわち紫外線若しくは可視光線、又は電子線の照射により硬化させる方法が好ましい。紫外線又は可視光線を用いて光硬化させる場合には、光重合開始剤を添加することができる。光重合開始剤は一般に使用されているものから選択でき、例えば高分子学会編「高分子データ・ハンドブック−基礎編」1986年培風館発行、に例示されているラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合の光重合開始剤などが使用できる。ラジカル重合反応を誘起させる光重合開始剤としては、水素引き抜き型光重合開始剤と崩壊形光重合開始剤が、特に効果的な光重合開始剤として用いられる。
本発明で用いる水素引き抜き型光重合開始剤は、特に限定されるものではないが、芳香族ケトンを用いることが好ましい。芳香族ケトンは、光励起により効率よく励起三重項状態になり、この励起三重項状態は周囲の媒体から水素を引き抜いてラジカルを生成する化学反応機構が提案されている。生成したラジカルが光架橋反応に関与するものと考えられる。本発明で用いる水素引き抜き型光重合開始剤として、励起三重項状態を経て周囲の媒体から水素を引き抜いてラジカルを生成する化合物であればどのような構造でも構わない。芳香族ケトンとして、ベンゾフェノン類、ミヘラーケトン類、キサンテン類、チオキサントン類、アントラキノン類を挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を用いることが好ましい。ベンゾフェノン類とは、ベンゾフェノン及びその誘導体を指し、具体的には、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−テトラメトキシベンゾフェノン等である。ミヘラーケトン類とは、ミヘラーケトン及びその誘導体を指す。キサンテン類とは,キサンテン、及びアルキル基、フェニル基、ハロゲン基で置換された誘導体をいう。チオキサントン類とは、チオキサントン、及びアルキル基、フェニル基、ハロゲン基で置換された誘導体を指し、エチルチオキサントン、メチルチオキサントン、クロロチオキサントン等を挙げることができる。アントラキノン類とは、アントラキノン、及びアルキル基、フェニル基、ハロゲン基等で置換された誘導体を指す。水素引き抜き型光重合開始剤の添加量は、感光性樹脂組成物全体量の0.1wt%以上10wt%以下が好ましく、より好ましくは0.5wt%以上5wt%以下である。添加量がこの範囲であれば、液状感光性樹脂組成物を大気中で硬化させた場合、硬化物表面の硬化性は十分確保でき、また、耐光性を確保することができる。
崩壊型光重合開始剤とは、光吸収後に分子内で開裂反応が発生し活性なラジカルが生成する化合物を指し、特に限定するものではない。具体的には、ベンゾインアルキルエーテル類、2,2−ジアルコキシ−2−フェニルアセトフェノン類、アセトフェノン類、アシルオキシムエステル類、アゾ化合物類、有機イソウ化合物類、ジケトン類等を挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を用いることが好ましい。ベンゾインアルキルエーテル類として、ベンゾインイソプロピルエーテル、べンゾインイソブチルエーテル、「感光性高分子」(講談社、1977年出版、頁228)に記載の化合物等を挙げることができる。2,2−ジアルコキシ−2−フェニルアセトフェノン類として、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン等を挙げることができる。アセトフェノン類としては、アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン等を挙げることができる。アシルオキシムエステル類としては、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム等を挙げることができる。アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾニウム化合物、テトラゼン化合物等を挙げることができる。有機イオウ化合物としては、芳香族チオール、モノ及びジスルフィド、チウラムスルフィド、ジチオカルバメート、S−アシルジチオカルバメート、チオスルホネート、スルホキシド、スルフェネート、ジチオカルボネート等を挙げることができる。ジケトン類として、ベンジル、メチルベンゾイルホルメート等を挙げることができる。崩壊型光重合開始剤の添加量は、感光性樹脂組成物全体量の0.1wt%以上10wt%以下が好ましく、より好ましくは0.3wt%以上3wt%以下である。添加量がこの範囲であれば、感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合、硬化物内部の硬化性は十分に確保できる。
特に酸素濃度が5vol%以上である雰囲気において光硬化させたいラジカル重合系の感光性樹脂組成物の場合、光重合開始剤として、水素引き抜き型光重合開始剤と崩壊型光重合開始剤との組み合わせ、あるいは同一分子内に水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位と崩壊型光重合開始剤として機能する部位を両方有する光重合開始剤を使用することが好ましい。酸素を5vol%以上含有する雰囲気においては、酸素による硬化阻害のため特に表面近傍の硬化が不十分となる問題があった。そのため、硬化阻害を防止するために、不活性ガス雰囲気、水中の雰囲気、あるいは感光性樹脂組成物の表面を光透過性フィルムで被覆し、酸素を遮断するなどの特別な工夫が必要であり、露光するための装置においても特別な機構を取り付ける必要があった。特に円筒状の感光性樹脂硬化物層を形成する際には、極めて複雑な機構が必要となる。
本発明で用いる樹脂(b)又は有機化合物(c)が、分子鎖中に存在する酸素原子又は窒素原子に対して、α位に存在する水素原子を有する化合物、チオールのような硫黄原子に直接結合している水素原子を有する化合物を、感光性樹脂組成物全体量の少なくとも20wt%以上含有することが好ましい。より好ましくは40wt%以上である。前記酸素原子の由来原子団としては、アルコール、エーテル、エステル、カーボネート等を挙げることができ、また、前記窒素原子の由来原子団としてはウレタン、ウレア、アミド等を挙げることができる。詳しい反応メカニズムは明確ではないが、樹脂(b)又は有機化合物(c)の分子中に存在する前記α位水素や硫黄原子に直接結合している水素を、水素引き抜き型光重合開始剤の励起三重項状態が効率良く引き抜く反応によりラジカル種が発生し、生成したラジカル種が架橋反応に寄与するためと考えられる。水素引き抜き型光重合開始剤は200nm〜300nmの波長領域に強い光吸収を示す化合物が多く、これらの光は感光性樹脂組成物を含む層内部で急速に減衰するため、特に表面での効率が高いものと推定される。
その他、本発明に用いる感光性樹脂組成物には、用途や目的に応じて重合禁止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、滑剤、界面活性剤、可塑剤、香料などを添加することができる。また、本発明に用いる感光性樹脂組成物には、無機微粒子又は無機有機複合微粒子を添加することができる。
本発明に用いる感光性樹脂組成物(a)を、シート状又は円筒状に成形する方法は、既存の樹脂の成形方法を用いて、感光性樹脂硬化物を含む層とすることができる。例えば、ドクターブレードと塗布法、ダイ押し出し法、スプレー塗布法、グラビアコート法、ロールコート法等を挙げることができる。また、塗布した感光性樹脂組成物層をロールによりカレンダー加工して厚みを合わせる方法等を採ることができる。その際、感光性樹脂組成物の性能を低下させない範囲で加熱しながら成形を行なうことも可能である。感光性樹脂組成物を塗布する支持体として、シート状又は円筒状の支持体を用いることができる。シート状支持体としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリスルホン等のプラスチックフィルムや、ニッケル、アルミニウム、鉄等の金属シートを用いることができる。また、円筒状支持体としては、金属製シリンダーや、繊維強化プラスチック製の中空円筒状支持体や金属製中空円筒状支持体を用いることができる。
本発明で用いる支持体の表面に物理的、化学的処理を行うことにより、感光性樹脂組成物層あるいは接着剤層との接着性を向上させることができる。物理的処理方法としては、サンドブラスト法、微粒子を含有した液体を噴射するウエットブラスト法、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、紫外線又は真空紫外線照射法などを挙げることができる。また、化学的処理方法としては、強酸・強アルカリ処理法、酸化剤処理法、カップリング剤処理法などである。
成形された感光性樹脂組成物(a)は、光照射により硬化させ、感光性樹脂硬化物を形成する。また、成形しながら光照射により硬化させることもできる。硬化に用いられる光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、殺菌灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等が挙げることができる。感光性樹脂組成物層に照射される光は、200nmから300nmの波長の光を有することが好ましい。特に水素引き抜き型光重合開始剤は、この波長領域に強い光吸収を有するものが多いため、200nmから300nmの波長の光を有する場合、感光性樹脂硬化物層表面の硬化性を充分に確保することができる。硬化に用いる光源は、1種類でも構わないが、波長の異なる2種類以上の光源を用いて硬化させることにより、樹脂の硬化性が向上することがあるので、2種類以上の光源を用いることも差し支えない。
本発明の感光性樹脂組成物(a)を有するレーザー彫刻印刷原版をレーザー彫刻する際に用いるレーザー光源としては、発振波長が150nm以上20μm以下のレーザーを用いることが好ましい。赤外線波長領域に発振波長を有するものとして炭酸ガスレーザーを挙げることができる。近赤外線波長領域に発振波長を有するものとして、YAG、YLF、YVO4等の固体レーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー等を挙げることができる。また、可視波長領域に発振波長を有するものとしてアルゴンイオンレーザー等の気体レーザーや、固体レーザーの第二高調波を用いることができる。更に、紫外線波長領域に発振波長を有するものとして、前記固体レーザーの第三、第四、第五高調波や、ArF、XeF、KrF、F2等のエキシマレーザーを挙げることができる。レーザーの発振は、連続発振であってもパルス発振であっても構わない。近赤外線波長領域、可視波長領域、紫外線波長領域のレーザーは、出力が弱いものが多いので、パルス発振レーザーが特に好ましい。パルス発振レーザーとして、近年ではパルスの時間幅がナノ秒、ピコ秒又はフェムト秒のものが入手可能な状況にある。
本発明のレーザー彫刻印刷原版をレーザー彫刻して表面にパターンを形成した際に、特に粘着性の高い液状の彫刻カスが微細パターン間に残存しやすく、除去し難い。前記のように感光性樹脂組成物を構成する樹脂(b)や有機化合物(c)として好ましい化合物を挙げたが、これらの化合物が分解して低分子化するが、彫刻カス中に、数平均分子量500以上5000以下の有機化合物(d)を含有することが好ましい。より好ましい範囲は500以上4000以下、更に好ましくは800以上3000以下である。数平均分子量がこの範囲であれば、水系洗浄液と多孔質有機体との組み合わせにより粘着性の高い液状彫刻カスが除去され易い。特に本発明の水系洗浄液との親和性の良好さから、有機化合物(d)が水酸基、カルボキシル基、アミノ基から選択される少なくとも1種類の官能基を有する化合物、あるいはカーボネート結合、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合、アミド結合から選択される少なくとも1種類の結合及び/又は飽和炭化水素鎖、不飽和炭化水素鎖から選択されるいずれかの分子鎖を有する化合物であることが好ましい。有機化合物(d)として、最も好ましいものの具体例として、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオールから選択される少なくとも1種類の化合物を含有するものを挙げることができる。これらの化合物の同定は、レーザー彫刻印刷版表面に残存する彫刻カスを液体クロマトグラフィーやゲル浸透クロマトグラフィー等の手法を用いて分離し、分離された成分を質量分析装置や核磁気共鳴スペクトル装置を用いて分子構造を解析することが可能である。
本発明では、工程(i)の前、及び/又は工程(ii)の後に、さらに、(v)レーザ
ー彫刻印刷版表面又は10mm以下の表面近傍の温度が、50℃以上150℃以下の条件において、織布又は不織布を該レーザー彫刻印刷版表面と接触させる工程を含むことができる。より好ましい温度範囲は60℃以上120℃以下、さらに好ましくは60℃以上100℃以下である。これらの工程を加えることにより、洗浄工程の前処理又は後処理として、レーザー彫刻印刷版表面の微細パターン間に残存する粘着性の高い液状彫刻カスを効率良く除去することができる。
本発明では、レーザー彫刻される印刷版層の下部にエラストマーからなるクッション層を形成することもできる。クッション層としては、ショアA硬度が10から70度のエラストマー層であることが好ましい。ショアA硬度が10度以上である場合、適度に変形するため、印刷品質を確保することができる。また、70度以下であれば、クッション層としての役割を果たすことができる。
前記クッション層は、特に限定されず、熱可塑性エラストマー、光硬化型エラストマー、熱硬化型エラストマー等ゴム弾性を有するものであれば何でも構わない。微細孔を有する多孔質エラストマー層であってもよい。特にシート状又は円筒状印刷版への加工性の観点から、光で硬化する液状感光性樹脂組成物を用い、硬化後にエラストマー化する材料を用いることが簡便であり、より好ましい。
本発明では、レーザー彫刻印刷版表面を洗浄後、表面のタックを除去するために後露光する工程を加えても構わない。後露光工程で使用する紫外線は、波長200nm以上300nm以下の光を含むことが好ましい。後露光工程は、空気中で実施しても構わないが、水中又は不活性ガス雰囲気中であっても構わない。また、後露光工程に先立ち、表面洗浄後のレーザー彫刻印刷版表面に水素引き抜き型光重合開始剤を含有する処理液を塗布する工程を加えることもできる。
実施例
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
(1)数平均分子量の測定
樹脂(b)の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC法)を用いて、分子量既知のポリスチレンで換算して求めた。高速GPC装置(日本国、東ソー社製のHLC−8020)とポリスチレン充填カラム(商標、TSKgel GMHXL、日本国、東ソー社製)を用い,テトラヒドロフラン(THF)で展開して測定した。カラムの温度は40℃に設定した。GPC装置に注入する試料としては、樹脂濃度が1wt%のTHF溶液を調整し、注入量10μlとした。また、検出器としては、紫外吸収検出器を使用した。
(2)レーザー彫刻
レーザー彫刻は炭酸ガスレーザー彫刻機(商標:ZED−mini−1000、英国、ZED社製、米国、コヒーレント社製、出力250W炭酸ガスレーザーを搭載)を用いて行った。彫刻は、網点(80 lines per inchで面積率10%)、500μm幅の凸線による線画、及び、500μm幅の白抜き線を含むパターンを作成して実施した。彫刻深さを大きく設定すると、微細な網点部のパターンのトップ部の面積が確保できず、形状も崩れて不鮮明となるため、彫刻深さは0.55mmとした。
(3)洗浄後の網点パターンの観察
レーザー彫刻工程後、表面を洗浄して網点パターン部を走査型電子顕微鏡で観察し、表面に残存する彫刻カスの付着状況を比較した。
[実施例1]
(樹脂(b)の製造)
温度計、攪拌機を備えた1Lのセパラブルフラスコに、数平均分子量2500のポリオキシエチレン(EO)−ポリオキシプロピレン(PO)ブロック共重合体ジオール(EO/POモル比1/4)51重量部、数平均分子量3000のポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)33.9重量部、触媒としてジブチルチンスズジラウレート0.003重量部、2、6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.1重量部を入れ、攪拌混合した。系内の水分量を400ppmに調整した。次に、トリレンジイソシアネート6重量部を外温40℃で攪拌しながら滴下添加し、その後徐々に外音を上昇させ80℃において5時間反応させた。さらに、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート4重量部を添加し、2時間反応させることによって不飽和ポリウレタンを得た。このもののGPCによるポリスチレン換算数平均分子量は22500であった。
(感光性樹脂組成物の調整)
上記のように製造した不飽和ポリウレタン65重量部に対し、有機化合物(c)としてジエチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテルアクリレート13重量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテルモノメタクリレート20重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート2重量部、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.6重量部、ベンゾフェノン1重量部、添加剤として無機多孔質体C−1504(富士シシリア化学株式会社製、多孔質性微粉末シリカ、商標「サイロスフェア−C−1504」、数平均粒子径4.5μm、比表面積520m2/g、平均細孔径12nm、細孔容積1.5ml/g、灼熱減量2.5wt%、吸油量290ml/100g)、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチルー4−メチルフェノール0.05重量部を混合し、感光性樹脂組成物アを得た。
(シート状感光性樹脂硬化物の作製)
幅1m、直径318.47mmのシリンダーの長軸方向に幅10mm、厚さ50μmの両面接着テープを貼り付けた。厚さ180μmのPETフィルムを円筒状支持体であるシリンダー表面に巻きつけ、前記両面接着テープの部分にPETフィルムの両端部が来るように位置を合わせ、固定した。
調整した感光性樹脂組成物アをPETフィルム上に厚さ2.8mmのシート状に成形し、シリンダーを回転させながら、メタルハライドタンプ(アイ・グラフィックス社製、商標「M056−L21」)から出てくる光を,大気中で感光性樹脂層が露出している面から照射し、光硬化物を得た。照射したエネルギー量は、4000mJ/cm2(UV−35−APRフィルターで測定した照度を時間積分した値)であった。照射面でのランプ照度は、UVメーター(オーク製作所社製、商標「UV−M02」)を用いて測定した。UV−35−APRフィルターを使用して測定したランプ照度は、100mW/cm2、UV−25−フィルターを使用して測定したランプ照度は、14mW/cm2であった。
シリンダーを回転させながら、得られた光硬化物の表面をバイトで切削し、その後、シリンダー及びカーボランダム製グラインディングホイールを回転させながら研削し、1000番のサンドペーパーを用いて表面を研磨し、レーザー彫刻用シート状印刷原版を得た。
(シート状印刷基材の作製)
得られたシート状印刷原版を炭酸ガスレーザー彫刻機のシリンダー表面上に固定し、該印刷原版表面にレーザー彫刻によりパターンが形成された印刷版を得た。印刷版表面には粉末状の彫刻カスと網点部には粘着性のある彫刻カスが観察された。印刷版表面に残存していた彫刻カスを採取し、テトラヒドロフランに溶解する成分をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分析した結果、数平均分子量が約2700のポリマー成分が検出された。GPCチャートのピーク付近の成分を分取し、核磁気共鳴スペクトル法(NMR)を用いて分析したところ、樹脂(b)の原料として用いたポリオキシエチレン(EO)−ポリオキシプロピレン(PO)ブロック共重合体ジオール(EO/POモル比1/4)とポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)の混合物とほぼ同じ化学シフトにピークを有するNMRスペクトルを得た。
(彫刻カスの除去評価)
炭酸ナトリウムを0.5wt%、過炭酸ナトリウム0.5wt%、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5wt%を含む水溶液を液温30℃で調整し、水系洗浄液とした。得られた水系洗浄液のpHは11であった。多孔質有機体として発泡ポリウレタン製スポンジ(密度:0.3g/cm3)に、調整した水系洗浄液を含ませ、前記印刷版表面をこするように接触させ彫刻カスを拭き取った。その後、水で表面を洗浄後、乾燥させた。得られた印刷版表面の網点パターン部を走査型電子顕微鏡で観察した結果、表面に残存していた彫刻カスがきれいに除去できていることを確認した。彫刻カスの除去に要した時間は約10分以内であった。網点パターン部の状況を撮影した電子顕微鏡写真を写真1に示した。
[実施例2]
実施例1と同じ方法で得られたシート状印刷版を用いて、表面に残存する彫刻カスの除去評価を実施した。実施例1の発泡ポリウレタンの代わりに、不織布製の布を用いる以外は実施例1と同様にして印刷版表面を洗浄した。得られた印刷版表面の網点パターン部を、走査型電子顕微鏡を用いて観察した結果、実施例1と同程度にきれいに洗浄できていることが確認された。
[実施例3]
実施例1と同様の方法でシート状印刷版を作製した。シート状印刷版を繊維強化プラスチック製スリーブ表面に両面接着テープを用いて貼り付け、シート状印刷版表面が、実施例1で用いた水系洗浄液に浸しながら前記スリーブを回転させ、印刷版表面と発泡ポリウレタン製スポンジロールとが接触するように配置し、該スポンジロールも回転させながら印刷版表面の洗浄を10分間実施した。この際、スポンジロールにも水系洗浄液が浸透していた。洗浄後、水洗いしてから印刷版を乾燥させ、スリーブからシート状印刷版を剥がし表面の網点パターン部を、電子顕微鏡を用いて観察した。その結果、実施例1と同程度にきれいに洗浄できていることが確認された。
[実施例4]
水系洗浄液として温度60℃の水を用い、洗浄時間を30分とする以外は、実施例3と同様にして彫刻カスの除去評価を実施した。電子顕微鏡を用いて表面の網点パターン部を観察したところ、実施例3と同程度に彫刻カスが除去できていることがわかった。
[実施例5]
(樹脂(b)の製造)
温度計、攪拌機を備えた1Lのセパラブルフラスコに、旭化成ケミカルズ株式会社製ポリカーボネートジオールである、商標「PCDL L4672」(数平均分子量1990、OH価56.4)100重量部とトリレンジイソシアネート6.9重量部を加え80℃に加温下3時間反応させたのち、2−メタクリロイルオキシイソシアネート3.3重量部を添加し、更に3時間反応させて不飽和ポリウレタンを得た。このもののGPCによるポリスチレン換算数平均分子量は約10000であった。
(感光性樹脂組成物の調整)
上記のように製造した不飽和ポリウレタン100重量部に対し、有機化合物(c)としてベンジルメタクリレート25重量部、シクロメタクリレート19重量部、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート6重量部、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.6重量部、ベンゾフェノン1重量部、添加剤として無機多孔質体C−1504(富士シシリア化学株式会社製、多孔質性微粉末シリカ、商標「サイロスフェア−C−1504」、数平均粒子径4.5μm、比表面積520m2/g、平均細孔径12nm、細孔容積1.5ml/g、灼熱減量2.5wt%、吸油量290ml/100g)5重量部、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチルー4−メチルフェノール0.05重量部を混合し、感光性樹脂組成物イを得た。
(シート状印刷基材の作製)
感光性樹脂組成物イを用いる以外は、実施例1と同様にしてシート状印刷原版を作製し、その後、レーザー彫刻法を用いて表面にパターンを形成したシート状印刷版を得た。印刷版表面には粉末状の彫刻カスと網点部には粘着性のある彫刻カスが観察された。印刷版表面に残存していた彫刻カスを採取し、テトラヒドロフランに溶解する成分をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分析した結果、数平均分子量が約2000のポリマー成分が検出された。GPCチャートのピーク付近の成分を分取し、核磁気共鳴スペクトル法(NMR)を用いて分析したところ、樹脂(b)の原料として用いたポリカーボネートジオールとほぼ同じ化学シフトにピークを有するNMRスペクトルを得た。
(彫刻カスの除去評価)
炭酸ナトリウムを0.5wt%、過炭酸ナトリウム0.5wt%、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5wt%を含む水溶液を液温30℃で調整し、水系洗浄液とした。得られた水系洗浄液のpHは11であった。多孔質有機体として発泡ポリウレタン製スポンジ(密度:0.3g/cm3)に、調整した水系洗浄液を含ませ、前記印刷版表面をこするように接触させ彫刻カスを拭き取った。その後、水で表面を洗浄後、乾燥させた。得られた印刷版表面の網点パターン部を走査型電子顕微鏡で観察した結果、表面に残存していた彫刻カスが10分以内の時間できれいに除去できていることを確認した。
[参考例1]
実施例5と同様の方法により、レーザー彫刻法を用いて表面にパターンが形成されたシート状印刷版を作製した。更に、実施例1と同じ組成の水系洗浄液を調整し、作製したシート状印刷版を調整した水系洗浄液中に浸漬し、出力1200W、周波数28kHzの超音波振動子を挿入し、実施例1と同じ発泡ポリウレタン製スポンジを印刷版表面に接触させる方法で彫刻カスの洗浄評価を実施した。その結果、印刷版表面の網点パターン間に残存していた粘着性の高い彫刻カスが除去できていないことが観察された。実施例5に比較して若干短時間で彫刻カスを除去することができた。
[参考例2]
実施例5と同様の方法により、レーザー彫刻法を用いて表面にパターンが形成されたシート状印刷版を作製した。更に、実施例1と同じ組成の水系洗浄液を調整し、作製したシート状印刷版を調整した水系洗浄液中に浸漬し、微細気泡発生装置を用いて前記水系洗浄液中に微細気泡を導入した。また、実施例1と同じ発泡ポリウレタン製スポンジを印刷版表面に接触させる方法で彫刻カスの洗浄評価を実施した。微細気泡を導入することにより水系洗浄液は、白濁した状態となった。微細気泡は、加圧溶解ポンプ(ニクニ社製、商標「バブルジェネレーター」)を用いて発生させた。微細気泡の径は、高速度デジタルビデオカメラ(フォトロン社製、商標「FASTCAM−1024PCI」)に拡大レンズを付けて測定した結果、約50μmであった。洗浄評価の結果、印刷版表面の網点パターン間に残存していた粘着性の高い彫刻カスが除去できていないことが観察された。実施例5に比較して若干短時間で彫刻カスを除去することができた。
[実施例6]
実施例5と同様の方法により、レーザー彫刻法を用いて表面にパターンが形成されたシート状印刷版を作製した。更に、実施例1と同じ組成の水系洗浄液を調整し、作製したシート状印刷版を調整した水系洗浄液中に浸漬し、発泡ポリウレタン製スポンジロールをシート状印刷版表面に接触させた。前記スポンジロールは、直径が約1mmの孔を均等に空けた鋼管に発泡ポリウレタン製のスポンジを巻きつけて作製した。また、鋼管の片側開口部は塞ぎ、もう一方の開港部をポンプで吸引できる構造とした。また、印刷版表面と接触する幅約10mmの開口部を有する金属製容器中に、該スポンジロールを格納した。洗浄評価中は、該スポンジロールを毎分1回転の速度でゆっくりと回転させながら、200μm程度スポンジが変形するように押し込んだ状態で印刷版表面に該スポンジロールを接触させ、スポンジロールの鋼管の片側開口部に接続させたポンプを用いて吸引し、水系洗浄液をスポンジ中を通過させるように印刷版表面から吸引した。その結果、実施例5よりも短時間で網点パターン部に残存していた粘着性の高い彫刻カスを除去することができた。
[比較例1]
実施例1と同様の方法により、レーザー彫刻法を用いて表面にパターンが形成されたシート状印刷版を作製した。更に、実施例1と同じ組成の水系洗浄液を調整し、作製したシート状印刷版を調整した水系洗浄液中に浸漬し、出力1200W、周波数28kHzの超音波振動子を挿入し、彫刻カスの洗浄評価を実施した。その結果、印刷版表面の網点パターン間に残存していた粘着性の高い彫刻カスが除去できていないことが観察された。写真2に電子顕微鏡写真を示す。
[比較例2]
実施例1と同様の方法により、レーザー彫刻法を用いて表面にパターンが形成されたシート状印刷版を作製した。更に、実施例1と同じ組成の水系洗浄液を調整し、作製したシート状印刷版を、温度60℃に加熱した水系洗浄液中に浸漬し、出力1200W、周波数28kHzの超音波振動子を挿入し、彫刻カスの洗浄評価を実施した。その結果、印刷版表面の網点パターン間に残存していた粘着性の高い彫刻カスが除去できていないことが観察された。
実施例1における洗浄評価後の印刷版表面の網点パターン部の電子顕微鏡写真を示す。 比較例1における洗浄評価後の印刷版表面の網点パターン部の電子顕微鏡写真を示す。
本発明は、レーザー彫刻印刷版表面の粘着性の高い液状カスを簡便な方法で短時間で洗浄除去できる方法として好適である。

Claims (16)

  1. 感光性樹脂硬化物を含む層を少なくとも1層有するレーザー彫刻印刷原版表面にレーザー
    光を照射し、照射された部分の感光性樹脂硬化物が除去されるレーザー彫刻法で形成され
    た凹凸パターンを有するレーザー彫刻印刷版の表面に残存する彫刻カスの洗浄方法であっ
    て、
    (i)液状彫刻カスの残存するレーザー彫刻印刷版表面と水系洗浄液とを接触させる工程
    と、
    (ii)前記工程(i)において、液状彫刻カスの残存するレーザー彫刻印刷版表面と多
    孔質有機体とを、手作業若しくは機械的に揚動させて拭く方法又は円筒状成形された多孔
    質有機体を回転させながらレーザー彫刻印刷版表面に接触させる方法により、接触させる
    工程と、
    を含むレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法。
  2. 前記多孔質有機体が、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ
    イミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、セルロースから選択される少なくとも1
    種類の樹脂あるいは繊維を含有し、且つ、前記多孔質有機体の密度が0.1g/cm3
    上0.8g/cm3以下である、請求項に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法。
  3. 前記多孔質有機体が、連続気泡を有する、請求項1又は2に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法。
  4. 前記水系洗浄液が、炭酸塩、過炭酸塩、クエン酸塩から選択される少なくとも1種類の化
    合物を含有し、前記水系洗浄液のpHが7.1以上12以下である、請求項1ないしのうち何れか一項に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法。
  5. 前記水系洗浄液が、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基から選択される少
    なくとも1種類の官能基を有し、及び/又は4級アンモニウム塩構造、ピリジニウム塩構
    造、硫酸塩構造、硫酸エステル塩構造、リン酸塩構造から選択される少なくとも1種類の
    構造を有する水溶性界面活性剤を含有する、請求項1ないしのうち何れか一項に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法。
  6. 前記炭酸塩が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウムか
    ら選択される少なくとも1種類の化合物であり、前記過炭酸塩が、過炭酸ナトリウム、過
    炭酸カリウム、過炭酸ストロンチウム、過炭酸カルシウムから選択される少なくとも1種
    類の化合物である、請求項に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法。
  7. 前記レーザー彫刻印刷原版が中空円筒状支持体上に感光性樹脂硬化物層を少なくとも1層
    積層した積層体であって、該感光性樹脂硬化物層が20℃において液状の感光性樹脂組成
    物を光硬化させたものである、請求項1ないしのうち何れか一項に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法。
  8. 前記多孔質有機体が、円筒状成形体である、請求項1ないしのうち何れか一項に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法。
  9. 前記円筒状成形体が、レーザー彫刻印刷版表面に接触しながら、該レーザー彫刻印刷版表
    面に存在する水系洗浄液を該円筒状成形体内部から吸引する工程を更に含む、請求項に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法。
  10. 前記彫刻カスが、数平均分子量500以上5000以下の有機化合物(d)を含有する、
    請求項1ないしのうち何れか一項に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法。
  11. 前記有機化合物(d)が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基から選択される少なくとも
    1種類の官能基を有する化合物である、請求項10に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法。
  12. 前記有機化合物(d)が、カーボネート結合、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結
    合、アミド結合から選択される少なくとも1種類の結合、及び/又は飽和炭化水素鎖、不
    飽和炭化水素鎖から選択されるいずれかの分子鎖を有する、請求項10又は11のいずれかに記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法。
  13. 前記有機化合物(d)が、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリ
    エーテルポリオールから選択される少なくとも1種類の化合物を含有する、請求項10ないし12のうち何れか一項に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法。
  14. 前記レーザー彫刻法で使用されるレーザーの発振波長が、150nm以上20μm以下で
    ある、請求項1ないし13のうち何れか一項に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法。
  15. 前記工程(i)の前、及び/又は工程(ii)の後に、(v)レーザー彫刻印刷版表面
    又は10mm以下の表面近傍の温度が50℃以上150℃以下の温度条件において、織布
    又は不織布を該レーザー彫刻印刷版表面と接触させる工程を更に含む、請求項1ないし14のうち何れか一項に記載のレーザー彫刻印刷版表面の洗浄方法。
  16. 請求項1ないし15のうち何れか一項に記載の洗浄方法によって洗浄されたレーザー彫刻印刷版。
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