以下、本発明を説明する。なお、本明細書において、「(共)重合」とは単独重合および共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とはアクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
本発明においては、必須成分として脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及び特定のブロック共重合体(B)を使用し、任意成分として特定のスチレン系樹脂(C)を使用する。
<脂肪族ポリエステル系樹脂(A)>
本発明で使用する脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は、繰り返し単位として、脂肪族ジオール及び/又は脂環式ジオールから形成される単位と脂肪族ジカルボン酸(その誘導体を含む)及び/又は脂環式ジカルボン酸(その誘導体を含む)から形成される単位とを有する。
上記のジオールは以下の一般式(1)で表すことが出来る。
一般式(1)中、R1は、2価の脂肪族炭化水素基を表す。R1の炭素数しては、通常2〜11、好ましくは2〜6である。R1はシクロアルキレン基を包含し、また、分岐鎖を有していてもよい。R1は、好ましくは「−(CH2)n−」であり、ここで、nは2〜11の整数、好ましくは2〜6の整数を示す。
上記のジオールの具体例としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,6−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらの中では、得られる脂肪族ポリエステルの物性の面から、1,4−ブタンジオールが好ましい。上記のジオールは2種以上を併用してもよい。
上記のジカルボン酸は以下の一般式(2)で表すことが出来る。
一般式(2)中、R2は直接結合または2価の脂肪族炭化水素基を表す。R2の炭素数は、通常2〜11、好ましくは2〜6である。R2はシクロアルキレン基を包含し、また、分岐鎖を有していてもよい。R2は、好ましくは「−(CH2)m−」であり、ここで、mは0又は1〜11の整数、好ましくは0又は1〜6の整数を示す。
ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、スバリン酸、ドデカン二酸などが挙げられ、その誘導体としては、これらの低級アルキルエステル及び酸無水物が挙げられる。誘導体としては、2個のカルボキシル基の双方が例えばエステル基などに変換されている化合物が好ましい。これらの中では、得られる脂肪族ポリエステルの物性の面から、コハク酸またはアジピン酸が好ましく、特にコハク酸が好ましい。上記のジカルボン酸は2種以上を併用してもよい。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)には、2官能脂肪族オキシカルボン酸および3官能性脂肪族オキシカルボン酸を共重合することが出来る。
2官能脂肪族オキシカルボン酸としては、分子中に1個の水酸基と1個のカルボン酸基を有するものであれば、特に制限されないが、以下の一般式(3)で表される脂肪族オキシカルボン酸が好適である。
一般式(3)中、R3は2価の脂肪族炭化水素基を表す。R3の炭素数は、通常1〜11、好ましくは1〜16である。R3はシクロアルキレン基を包含し、また、分岐鎖を有していてもよい。
2官能脂肪族オキシカルボン酸は、好ましくは、1っの炭素原子に水酸基とカルボキシル基を持つ化合物であり、特に、以下の一般式(4)で表される化合物を使用すると重合速度が増大するので好ましい。
一般式(4)中、zは0又は1以上の整数、好ましくは0又は1〜10、更に好ましくは0又は1〜5である。
2官能脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸、これらの混合物などが挙げられる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体、ラセミ体の何れでもよく、形状としては、固体、液体、水溶液の何れであってもよい。特に、使用時の重合速度の増大が顕著であり且つ入手が容易である、乳酸またはグリコール酸およびこれらの水溶液が好ましい。乳酸やグリコール酸は、50%、70%、90%の水溶液が一般に市販されており、入手が容易である。
3官能脂肪族オキシカルボン酸としては、水酸基とカルボキシル基の両方を合わせて3個有する化合物、すなわち、(a)分子中にカルボキシル基2個と水酸基1個を有する化合物、(b)分子中にカルボキシル基1個と水酸基2個を有する化合物がある。市場からの入手性が容易であり且つ低コストである点から、上記の(a)が好ましい。また、比較的低分子量のものが好ましく、具体的にはリンゴ酸が好適である。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は、前記の成分を使用し、ポリエステル生成条件下に反応させて得ることが出来る。ここで、ポリエステル生成条件とは、(a)単純な脱水反応によるエステル結合生成、(b)他の縮合である脱アルコール(即ちエステル交換)、(c)酸無水物を使用した場合は付加を生じさせる条件を意味する。脱水または脱アルコール促進のために共沸剤の使用してもよく、減圧条件を採用してもよい。更に、触媒を使用してもよい。
ジオール成分の使用割合は、ジカルボン成分(誘導体を含む)に対して実質的に等モルであるが、実際の製造過程においてはエステル化反応中に留出することがあることから、ジカルボン成分に対して通常1〜20モル%過剰に使用する。2官能脂肪族オキシカルボン酸の使用量は、ジカルボン成分100モルに対し、通常60モル以下、好ましくは0.04〜20モル、更に好ましくは3〜10モルである。斯かる使用量により、より高分子量の脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を得ることが出来る。2官能脂肪族オキシカルボン酸の使用量は、ジカルボン成分100モルに対し、通常5モル以下、好ましくは1モル以下である。使用量が5モルを超えると反応中ゲル化の危険性が大きくなる。
2官能脂肪族オキシカルボン酸の添加時期は、ポリエステル生成反応以前であれば特に限定されないが、(a)予め脂肪族オキシカルボン酸溶液に触媒を溶解させた状態で原料仕込時またはエステル化反応中に添加する方法、または(b)原料仕込時に触媒を添加すると同時に添加する方法が好ましい。
エステル化反応に使用される触媒としては、ゲルマニウム、チタン、アンチモン、スズ、マグネシウム、カルシウム、亜鉛などの反応系に可溶の金属化合物が挙げられる。これらの中では、ゲルマニウム化合物が好ましく、その具体例としては、テトラアルコキシゲルマニウム等の有機ゲルマニウム化合物、酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物が挙げられる。価格や入手の容易性から、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム又はテトラブチキシゲルマニウムが特に好ましい。
触媒の使用量は、使用するモノマー量の合計量に対し、通常0.001〜3重量%、好ましくは0.005〜1.5重量%である。触媒の添加時期は、ポリエステル生成以前であれば特に制限されないが、原料仕込み時に添加してもよく、減圧開始時に添加してもよい。原料仕込み時に2官能脂肪族オキシカルボン酸と同時に添加するか、または2官能性脂肪族オキシカルボン酸およびその水溶液に触媒を溶解して添加するのが特に好ましい。
エステル化反応の温度、時間、圧力などの条件は、目的物である脂肪族ポリエステルが得られる条件でれば特に限定されないが、反応温度は、通常150〜260℃、好ましくは180〜230℃、反応時間は、通常1時間以上、好ましくは2〜15時間、反応圧力は、通常10mmHg以下、好ましくは2mmHg以下である。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の数平均分子量(Mn)は、本発明の目的である耐衝撃性の面から、通常1〜20万、好ましくは3〜20万である。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、Mw/Mnは、通常3以上、好ましくは4以上である。
本発明においては、本発明の目的の1っである制電性をより向上させる観点から、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を構成するジオール成分およびジカルボン成分(誘導体を含む)の少なくとも何れかが植物由来であることが好ましく、両原料とも植物由来であるとが更に好ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)には、本発明の効果を損なわない限り、他の共重合成分を導入することが出来る。他の共重合成分としては、ヒドロキシ安息香酸などの芳香族オキシカルボン酸;ビスフェノールA等の芳香族ジオール類;テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;3官能以上の脂肪族ポリオール、脂肪族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸;4官能以上のオキシカルボン酸などが挙げられる。これらの成分の使用割合は、使用するモノマー量の合計量に対し、通常50モル%以下、好ましくは20モル%以下である。
<ブロック共重合体(B)>
本発明で使用するブロック共重合体(B)は、ポリアミド、ポリエステル及びポリオレフィンから選ばれた少なくとも1種のブロック(B1)と親水性ポリマーブロック(B2)とを有する。
ポリアミドとしては、(a)ジアミン成分とジカルボン酸成分から導かれるポリアミド、(b)ラクタム類の開環重合によるポリアミド、(c)アミノカルボン酸から導かれるポリアミド、これらの共重合ポリアミド、これらの混合ポリアミドの何れでもよい。
上記(a)におけるジアミン成分としては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2,3,4もしくは2,4,4−トリメチレンヘキサメチレンジアミン、1,3−もしくは1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノヘキシル)メタン、フェニルジアミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン等の脂肪族、脂環族または芳香族のジアミンが挙げられ、ジカルボン酸成分としては、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの脂肪族、脂環族または芳香族のジカルボン酸が挙げられる。上記(b)のラクタム類としては、カプロラクタム、ラウリルラクタム等が挙げられる。また、上記(c)のアミノカルボン酸としては、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナン酸、アミノウンデカン酸、1,2−アミノドデカン酸などが挙げられる。
ポリエステルとしては、(1)炭素数4〜20のジカルボン酸成分及びまたはそのエステル形成誘導体と(2)ジオール成分から得られる重合体、2官能オキシカルボン酸化合物から得られる重合体、カプロラクトン化合物から得られる重合体、上記(1)、(2)、2官能オキシカルボン酸化合物、カプロラクトン化合物から選ばれた化合物から成る共重合体などがあり、共重合体としては、上記(1)、(2)、2官能オキシカルボン酸化合物から成る共重合体が好ましい。ここで、炭素数とは、カルボキシル基の炭素数及びカルボキシル基の炭素に直結する鎖や環を構成する炭素数の総数をいう。
炭素数4〜20のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、α、ω−ドデカンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、オクタデセニルジカルボン酸などの炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの炭素数8〜20の脂環族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸などの炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸;5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などのスルホン酸基が芳香環に結合した炭素数8〜12の置換芳香族ジカルボン酸;上記ジカルボン酸のメチルエステル等のエステル形成誘導体等がある。これらは2種以上を併用してもよい。これらの中では、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、コハク酸およびこれらのエステル形成誘導体が好ましい。
ジオール成分としては、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の原料成分として説明したものが全て使用できるが、特に、エチレングリコール又は1,4−ブタンジオールが好ましい。また、カプロラクトン等のラクトン化合物、および、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の原料成分として記載した2官能脂肪族オキシカルボン酸および2官能オキシカルボン酸も使用できる。本発明で使用するポリエステルとしては、(a)前記ジカルボン酸およびそのエステル形成誘導体と前記ジオールから成るポリエステル、(b)前記ジカルボン酸およびそのエステル形成誘導体、前記ジオールおよび前記2官能オキシカルボン酸から成るポリエステルが好ましい。
ポリオレフィンはオレフィン類の(共)重合体を意味する。オレフィン類としては、エチレンの他に、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、3−メチルヘキセン−1等のα−オレフィン、ノルボルネン等の環状オレフィン等がある。これらの中では、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1又はノルボルネンがこのましい。また、重合体成分の一部として、4−メチル−1、4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、1,9−デカジエン等の非共役ジエンを使用することも出来る。ポリオレフィンのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量は、通常800〜20,000、好ましくは1,000〜10,000、更に好ましくは1,200〜6,000である
ポリオレフィンは、重合法、熱減成法などによって得ることが出来る。重合法の場合、触媒の存在下でオレフィンを(共)重合させるが、触媒としては、例えば、ラジカル触媒、金属酸化物触媒、チーグラー触媒、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒などが使用される。一方、高分子量のポリオレフィンの熱減成法による低分子量ポリオレフィンは、例えば特開平3−62804号公報記載の方法に従って容易に得ることが出来る。ブロック共重合体(B)を得る場合、ポリオレフィンの分子末端を変性する必要があるが、この分子末端の変性のし易さから、熱減成法で得られるポリオレフィンが好適である。
熱減成法で得られるポリオレフィンは、通常、分子両末端が変性可能なポリオレフィン、片末端が変性可能なポリオレフィン及び変性可能な末端基を持たないポリオレフィンの混合物であるが、両末端が変性可能なポリオレフィンが主成分であるものが好ましい。
熱減成法で得られるポリオレフィン中の二重結合の量は、制電性の観点から、炭素数1,000当たり、通常1〜40個、好ましくは2〜30個、更に好ましくは4〜20個である。1分子当たりの二重結合の平均数は、繰り返し構造の形成性の観点および制電性の観点から、通常1.1〜5、好ましくは1.3〜3、更に好ましくは1.8〜2.2である。熱減成法においては、Mnが800〜6,000の範囲で、1分子当たりの平均末端二重結合数が1.5〜2個の低分子量ポリオレフィンが容易に得られる[例えば、村田勝英、牧野忠彦、日本化学学会誌、192頁(1975)参照]。
ポリオレフィンに官能基を付与する方法としては、熱減成法により得られる分子末端に炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィンに、官能基を有する炭素−炭素不飽和化合物を付加させる方法である。
ブロック共重合体(B)における、ブロック(B1)と親水性ポリマーブロック(B2)との結合は、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合などから選ばれた少なくとも1種の結合である。このため、ブロックの(B1)分子末端は、以下に述べるブロック(B2)の分子両末端官能基と反応性を有する官能基で変性されている必要がある。これらの官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、酸無水物基、オキサゾリン基、エポキシ基などがある。
親水性ポリマーブロック(B2)の親水性ポリマーとしては、ポリエーテル、ポリエーテル含有親水性ポリマー、アニオン性ポリマー等が挙げられる。
ポリエーテルとしては、ポリエーテルジオール、ポリエーテルジアミン、これらの変性物が挙がられる。ポリエーテル含有親水性ポリマーとしては、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステルアミドイミド、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステル、ポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルアミド、ポリエーテルジオール又はポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルウレタンが挙げられる。アニオン性ポリマーとしては、スルホニル基を有するジカルボン酸と上記ポリエーテルとを必須成分単位とし且つスルホニル基を有するアニオン性ポリマーが挙げられる。1分子中のスルホニル基の数は、通常2〜80個、好ましくは3〜60個である。これらのポリマーは、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。親水性ポリマーブロック(B2)の親水性ポリマーとしてはポリエーテルが好ましい。
ポリエーテルのうちのポリエーテルジオールとしては、次の一般式(5)、(6)表されるもの等が挙げられる。
一般式(5)中、E1は二価の水酸基含有化合物から水酸基を除いた残基、A1は炭素数2〜4のアルキレン基、nおよびn′は前記二価の水酸基含有化合物の水酸基1個当たりのアルキレンオキサイド付加数を表す。n個の(OA1)とn′個の(A1O)とは、同一であっても異なっていてもよく、また、これらが2種以上のオキシアルキレン基で構成される場合の結合形式はブロック若しくはランダム又はこれらの組み合わせの何れでもよい。nおよびn′は、通常1〜300、好ましくは2〜250、更に好ましくは10〜100の整数である。また、nとn′は、同一であっても異なっていてもよい。
上記の二価の水酸基含有化合物としては、一分子中にアルコール性またはフェノール性の水酸基を2個含む化合物、すなわち、ジヒドロキシ化合物が挙げられ、具体的には、二価アルコール(例えば炭素数2〜12の脂肪族、脂環式または芳香族の二価アルコール)、炭素数6〜18の二価フェノール、第3級アミノ基含有ジオール等が挙げられる。
脂肪族二価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6―ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,12―ドデカンジオール等が挙げられる。脂環式二価アルコールとしては、例えば、1,2―及び1,3―シクロペンタンジオール、1,2―、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、芳香族二価アルコールとしては、例えば、キシレンジオール等が挙げられる。
二価フェノールとしては、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、ウルシオール等の単環二価フェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4、4′―ジヒドロキシジフェニルー2,2−ブタン、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシジフェニルエーテル等のビスフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ビナフトール等の縮合多環二価フェノール等が挙げられる。
一般式(6)中、E2は、一般式(5)で記載した二価の水酸基含有化合物から水酸基を除いた残基、A2は、少なくとも一部が次の一般式(7)で表される置換アルキレン基であり、残りは炭素数2〜4のアルキレン基であってもよい。
ただし、一般式(7)中、R、R′の一方は、一般式(8)で表される基、他方はHである。
一般式(8)中、xは1〜10の整数、R″はHまたは炭素数1〜10の、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基またはアシル基、A3は炭素数2〜4のアルキレン基である。
一般式(6)中、m個の(OA2)とm′個の(A2O)とは同一であっても異なっていてもよい。mおよびm′の整数は、通常1〜300、好ましくは2〜250、更に好ましくは10〜100である。また、mとm′とは、同一でも異なっていてもよい。
前記の一般式(5)で示されるポリエーテルジオールは、二価の水酸基含有化合物にアルキレンオキサイドを付加反応させることにより製造することが出来る。アルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキサイド、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2―ブチレンオキサイド、1,4−ブチレンオキサイド、2,3―ブチレンオキサイド、1,3−ブチレンオキサイドが使用される。2種以上のアルキレンオキサイドを併用する際の結合形式は、ランダム及び/又はブロックの何れでもよい。特に、エチレンオキサイド単独、エチレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドとの併用によるブロック及び/又はランダム付加が好ましい。アルキレンオキサイドの付加数は、前記二価の水酸基含有化合物の水酸基1個当たり、通常1〜300、好ましくは2〜250、更に好ましくは10〜100である。
前記の一般式(6)で示されるポリエーテルジオールの好ましい製造方法としては下記の(i)、(i i)の方法が挙げられる。
(i)上記二価の水酸基含有化合物を出発物質として、次の一般式(9)で表されるグリシジルエーテルを重合するか、または、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドと共重合する方法。
一般式(9)中、A4は炭素数2〜4のアルキレン基、pは1〜10の整数、R1は、H又は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基もしくはアシル基である。
(i i)上記二価の水酸基含有化合物を出発物質として、側鎖にクロロメチル基を有するポリエーテルを経由する方法。具体的には、(a)エピクロルヒドリン、または、(b)エピクロルヒドリンとアルキレンオキサイドを付加共重合し、側鎖にクロロメチル基を有するポリエーテルを得た後、当該ポリエーテルと炭素数2〜4のポリアルキレングリコールとR1X(R1は上記したもの、Xは、Cl、Br又はI)をアルカリ存在下で反応させるか、または、当該ポリエーテルと炭素数2〜4のポリアルキレングリコールモノカルビルエーテルをアルカリ存在下で反応させる方法である。ここで使用される炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとしては、前記したものが全て使用できる。
また、ブロック共重合体(B)は、上記ブロック(B1)と親水性ポリマーブロック(B2)を構成するポリマーを公知の方法で重合することによって得ることがでる。例えば、夫々ブロック(B1)とブロック(B2)を構成する各ポリマーを減圧下200〜250℃で重合反応させる。
上記の重合反応に際し、公知の重合触媒を使用することが出来、その具体例としては、モノブチルスズオキサイド等のスズ系触媒;三酸化アンチモン、二酸化アンチモン等のアンチモン系触媒;テトラブチルチタネート等のチタン系触媒;ジルコニウム水酸化物、酸化ジルコニウム、酢酸ジルコニル等のジルコニウム系触媒;IIB族有機酸塩触媒などが挙げられる。
ブロック共重合体(B)におけるブロック(B1)/親水性ポリマーブロック(B2)の比率は、通常10〜90/10〜90質量%、好ましくは20〜80/20〜80質量%、更に好ましくは、30〜70/30〜70質量%である。ブロック(B1)の形成にポリオレフィン使用したブロック共重合体(B)としては、例えば、特開2001−278985号公報、特開2003−48990号公報に記載の方法などによっても製造することが出来、更に、三洋化成工業社製の「ペレスタット300シリーズ」の「300」、「303」、または、「200シリーズ」の「230」(商品名)として入手できる。
ブロック(B1)の形成にポリアミドを使用したブロック共重合体(B)の場合、ポリアミドの数平均分子量は、通常500〜20,000、好ましくは500〜10,000、更に好ましくは500〜5,000である。ポリアミドブロック含有(B)ブロック共重合体(B)の分子量は、特に限定されないが、還元粘度(ηsp/C)(ギ酸溶液中、0.5g/100ml、25℃で測定)として、通常1.0〜3.0、好ましくは1.2〜2.5である。ポリアミドブロック含有(B)ブロック共重合体(B)として、特に好ましいものは、ポリアミドとポリ(アルキレンオキシド)グリコールブロックとがエステル結合で結合されたポリエーテルエステルアミドであり、三洋化成工業社製の「ペレスタットNC6321」、「M−140」、「6500」(商品名)として入手できる。
ポリエステルブロック含有(B)ブロック共重合体(B)の分子量は、特に限定されないが、還元粘度(ηsp/C)(フェノール/テトラクロロエタン=40/60質量比の混合溶媒中、濃度1.0dl/100ml、35℃で測定)として、通常0.3〜2.5、好ましくは0.5〜2.5である。ポリエステルブロック含有(B)ブロック共重合体(B)は、例えば、竹本油脂社製の「TEP004」、「TEP010」、「TEP008」(商品名)として入手できる。
前述の各種のブロック共重合体(B)は2種以上を併用してもよい。特に好ましいブロック共重合体(B)はポリエステルブロック含有(B)ブロック共重合体である。
<スチレン系樹脂(C)>
本発明で使用するスチレン系樹脂(C)は、ゴム質重合体(C1)の存在下または非存在下に芳香族ビニル化合物または芳香族ビニル化合物と芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体(C2)を重合して得られる。耐衝撃性の面から、ゴム質重合体(C1)の存在下にグラフト(共)重合した重合体を少なくとも1種含むものが好ましい。
ゴム質重合体(C1)の含有量は、スチレン系樹脂(C)を基準として(100質量%として)、通常3〜80質量%、好ましくは5〜70質量%、更に好ましくは10〜60質量%である。
ゴム質重合体(C1)としては、特に限定されないが、ポリブタジエン、ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・ブテン−1共重合体、エチレン・ブテン−1・非共役ジエン共重合体、アクリルゴム、シリコーンゴム、シリコーン・アクリル系IPNゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体、スチレン−イソプレン系ブロック共重合体、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体の水素添加物、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体の水素添加物などが挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。これらの中では、ポリブタジエン、ブタジエン・スチレン共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、アクリルゴム、シリコーンゴム、天然ゴムが好ましい。
ゴム質重合体(C1)のゲル含率は、特に限定されないが、乳化重合でゴム質重合体(C1)を得る場合、通常98質量%以下、好ましくは40〜98質量%である。この範囲において、特に、耐衝撃性に優れた成形品を与える熱可塑性樹脂組成物を得ることが出来る。ゲル含率は、ゴム質重合体(C1)の製造時に、分子量調節剤の種類および量、重合時間、重合温度、重合転化率等を適宜設定することにより調整される。また、上記ゲル含率は、以下に示す方法により求めることが出来る。
すなわち、ゴム質重合体1gをトルエン100mlに投入し、室温で48時間静置した後、100メッシュの金網(質量をW1グラムとする)で濾過したトルエン不溶分と金網を80℃で6時間真空乾燥して秤量し(質量W2グラムとする)、以下の式(I)により算出する。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α―メチルスチレン、ヒドロキシスチレン等が挙げられ、これらは2種以上を併用することが出来る。また、これらの中では、スチレン又はα―メチルスチレンが好ましい。
芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体としては、ビニルシアン化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、および、その他の各種官能基含有不飽和化合物などが挙げられる。
本発明の好ましい態様においては、芳香族ビニル化合物を必須単量体成分とし、これに必要に応じ、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物およびマレイミド化合物からなる群より選ばれる1種または2種以上が単量体成分として併用され、更に必要に応じ、その他の各種官能基含有不飽和化合物の少なくとも1種が単量体成分として併用される。その他の各種官能基含有不飽和化合物としては、不飽和酸化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、水酸基含有不飽和化合物、オキサドリン基含有不飽和化合物、酸無水物基含有不飽和化合物、置換または非置換のアミノ基含有不飽和化合物などが挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。
シアン化ビニル合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、これらは2種以上を併用することが出来る。シアン化ビニル化合物を使用すると耐薬品性が付与される。シアン化ビニル化合物の使用量は、全単量体成分中の割合として、通常1〜60質量%、好ましくは5〜50質量%である。
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等が挙げられ、これらは2種以上を併用することが出来る。(メタ)アクリル酸エステル化合物を使用すると表面硬度が向上する。(メタ)アクリル酸エステル化合物の使用量は、全単量体成分中の割合として、通常1〜80質量%、好ましくは5〜80質量%である。
マレイミド化合物としては、マレイミド、N―フェニルマレイミド、N―シクロヘキシルマレイミド等が挙げられ、これらは2種以上を併用することが出来る。また、マレイミド単位を導入するために、無水マレイン酸を共重合させ、後イミド化してもよい。マレイミド化合物を使用すると耐熱性が付与される。マレイミド化合物の使用量は、全単量体成分中の割合として、通常1〜60質量%、好ましくは5〜50質量%である。
不飽和酸化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸などが挙げられ、これらは2種以上を併用することが出来る。エポキシ基含有不飽和化合物としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられ、これらは2種以上を併用することが出来る。
水酸基含有不飽和化合物としては、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、N―(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド等が挙げられ、これらは2種以上を併用することが出来る。
オキサゾリン基含有不飽和化合物としては、ビニルオキサゾリン等が挙げられ、これらは2種以上を併用することが出来る。酸無水物基含有不飽和化合物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などが挙げられ、これらは2種以上を併用することが出来る。
置換または非置換のアミノ基含有不飽和化合物としては、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、N―ビニルジエチルアミン、N―アセチルビニルアミン、アクリルアミン、メタクリルアミン、N―メチルアクリルアミン、アクリルアミド、N―メチルアクリルアミド、p―アミノスチレン等が挙げられ、これらは2種以上を併用することが出来る。
その他の各種官能基含有不飽和化合物を使用した場合、スチレン系樹脂と他のポリマーとをブレンドした際、両者の相溶性を向上させることが出来る。斯かる効果を達成するために好ましい単量体は、エポキシ基含有不飽和化合、不飽和酸化合物および水酸基含有不飽和化合物である。その他の各種官能基含有不飽和化合物の使用量は、スチレン系樹脂(C)中に使用される当該官能基含有不飽和化合物の合計量として、スチレン系樹脂(C)に対し、通常0.1〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%である。
全ビニル単量体中の芳香族ビニル化合物以外の単量体の使用量は、全ビニル単量体を基準として(100質量%とし)、通常80質量%以下、好ましくは60質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
ビニル単量体の好ましい組み合わせは、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/メタクリル酸メチル、スチレン/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル、スチレン/アクリロニトリル/グリシジルメタクリレート、スチレン/アクリロニトリル/2−ヒドロキシエチルメタクリレート、スチレン/アクリロニトリル/(メタ)アクリル酸、スチレン/N―フェニルマレイミド、スチレン/メタクリル酸メチル/シクロヘキシルマレイミド等であり、特に好ましい組み合わせは、スチレン/アクリロニトリル=65/45〜90/10(質量比)、スチレン/メタクリル酸メチル=80/20〜20/80(質量比)、スチレン/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル=スチレン量20〜80質量%、アクリロニトリル及びメタクリル酸メチルの合計量20〜80質量%である。
スチレン系樹脂(C)は、公知の重合法、例えば、乳化重合、塊状重合、溶液重合、懸濁重合およびこれらを組み合わせた重合法で製造することが出来る。これらのうち、ゴム質重合体(C1)の存在下にビニル系単量体を(共)重合する好ましい方法は、乳化重合および溶液重合である。一方、ゴム質重合体の非存在下にビニル系単量体を(共)重合する好ましい方法は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合および乳化重合である。
乳化重合で製造する場合、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などが使用されるるが、これらは公知のものを使用できる。
重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、p―メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、tert―ブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸カリウム、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。また、重合開始助剤として、各種還元剤、含糖ピロリン酸鉄処方、スルホキシレート処方などのレドックス系を使用することが好ましい。
連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n―ドデシルメルカプタン、t―ドデシルメルカプタン、n―ヘキシルメルカプタン、ターピノーレン類などが挙げられる。乳化剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩、ラウリル酸カリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カリウム、パルミチン酸カリウム等の高級脂肪酸塩、ロジン酸カリウム等のロジン酸塩などが挙げられる。
なお、乳化重合において、ゴム質重合体およびビニル系単量体の使用方法は、ゴム質重合体の全量の存在下にビニル系単量体を一括添加して重合してもよく、分割もしくは連続添加して重合してもよい。また、ゴム質重合体の一部を重合途中で添加してもよい。
乳化重合の後、得られたラテックスは、通常、凝固剤により凝固させ、水洗、乾燥することにより、スチレン系樹脂(C)の粉末を得る。この際、乳化重合で得た2種以上のスチレン系樹脂(C)のラテックスを適宜ブレンドした後、凝固してもよい。凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等の無機塩、または硫酸、塩酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸などの酸を使用することが出来る。凝固剤として酸を使用した場合は、凝固後、アルカリ性水溶液で中和処理をすることが好ましい。中和処理に使用するアルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
溶液重合によりスチレン系樹脂(C)を製造する場合に使用することの出来る溶剤は、通常のラジカル重合で使用される不活性重合溶媒であり、例えば、エチルベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、N―メチルピロリドン等が挙げられる。
重合温度は、通常80〜140℃、好ましくは85〜120℃の範囲である。重合に際し、重合開始剤を使用してもよいし、重合開始剤を使用せずに、熱重合で重合してもよい。重合開始剤としては、ケトンパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物などが好適に使用される。また、連鎖移動剤を使用する場合、例えば、メルカプタン類、ターピノレン類、α―メチルスチレンダイマー等を使用することが出来る。また、塊状重合、懸濁重合で製造する場合、溶液重合において説明した重合開始剤、連鎖移動剤などを使用することが出来る。上記の各重合法によって得たスチレン系樹脂(C)中に残存する単量体の量は、通常10,000ppm以下、好ましくは5,000ppm以下である。
また、ゴム質重合体の存在下にビニル系単量体を重合して得られるスチレン系樹脂(C)には、通常、ビニル系単量体がゴム質重合体にグラフト共重合した共重合体とゴム質重合体にグラフトしていない未グラフト成分が含まれる。スチレン系樹脂(C)のグラフト率は、通常20〜200質量%、好ましくは30〜150質量%、更に好ましくは40〜120質量%であり、グラフト率は、以下の式(I I)により求めることが出来る。
式(I I)中、Tはスチレン系樹脂(C)1gをアセトン20mlに投入し、振とう機により2時間振とうした後、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Sはスチレン系樹脂(C)1gに含まれるゴム質重合体の質量(g)である。
また、スチレン系樹脂(C)のアセトン可溶分の極限粘度〔η〕(溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)は、通常0.2〜1.2dl/g、好ましくは0.2〜1.0dl/g、更に好ましくは0.3〜0.8dl/gである。更に、スチレン系樹脂(C)中に分散するグラフト化ゴム質重合体粒子の平均粒径は、通常500〜30,000Å、好ましくは1,000〜20,000Å、更に好ましくは1,500〜8,000Åのである。平均粒径は電子顕微鏡を使用する公知の方法で測定することが出来る。
<熱可塑性重合体組成物>
本発明の熱可塑性重合体組成物は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)50〜97質量%とブロック共重合体(B)3〜50質量%(成分(A)と成分(B)の合計を100質量%とする)とから成る。脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の割合は、好ましくは60〜95質量%、更に好ましくは65〜95質量%、特に好ましくは70〜94質量%である。脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の割合が50質量%未満の場合は耐衝撃性が劣り、97質量%を超える場合は制電性が劣る。
本発明の熱可塑性重合体組成物にスチレン系樹脂(C)を使用する場合、その割合は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)とブロック共重合体(B)の合計100質量部に対する割合として、通常5〜260質量部、好ましくは5〜190質量部、更に好ましくは10〜150質量部、特に好ましくは15〜120質量部である。スチレン系樹脂(C)の割合が5質量部未満の場合は、耐衝撃性を向上させる効果が得られず、260質量部を超える場合は磨耗性が劣る。
本発明の熱可塑性重合体組成物には、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)ブロック共重合体(B)の相溶性を向上させる目的から、相溶化剤(G)を配合することが出来る。相用化剤(G)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体などのオレフィン系重合体の官能基変性物;芳香族ビニル化合物重合体ブロックと共役ジエン化合物重合体ブロックを有するブロック共重合体およびその水素添加物;前記水素添加物の官能基変性物;芳香族ビニル化合物重合体ブロック−共役ジエン化合物重合体ブロック−芳香族ビニル化合物重合体ブロックから成るブロック共重合体とポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタンから選べれた少なくとも1種のブロックから成るブロック共重合体;ポリスチレンブロックと更に官能基変性スチレン系樹脂などが挙げられる。官能基としては、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、酸無水物基及びオキサゾリン基などが挙げられる。官能基の導入法は、特に制限されないが、官能基含有不飽和化合物を共重合する方法、官能基含有不飽和化合物を必要に応じて付加させる方法などが好適である。相溶化剤(G)の割合は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)とブロック共重合体(B)の合計100質量部に対する割合として、通常0.5〜80質量%、好ましくは1〜50質量%、更に好ましくは2〜30質量%である。
本発明の熱可塑性重合体組成物には、制電性を向上させる目的から、アルカリ金属の塩および/またはアルカリ土類金属の塩(D)を配合することが出来る。本発明の熱可塑性重合体組成物を製造する際に配合されるが、ブロック共重合体(B)の重合前、重合時、重合後の何れの時期に配合してもよい。成分(D)含有ブロック共重合体(B)は市販品として入手することが出来る。
成分(D)のアルカリ金属としては、リチウム、ナトリム、カリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。これらの塩としては、有機酸塩、無機酸塩、ハロゲン化物などが挙げられる。
成分(D)の具体例として、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム等のアルカリ金属のハロゲン化物;過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等のアルカリ金属の無機酸塩;酢酸カリウム、ステアリン酸リチウム等のアルカリ金属の有機酸塩;オクチルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、テトラデシルスルホン酸、ステアリルスルホン酸、テトラコシルスルホン酸、2−エチルヘキシルスルホン酸などの、アルキル基の炭素数8〜24のアルキルスルホン酸のアルカリ金属塩;フェニルスルホン酸、ナフチルスルホン酸などの芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩;オクチルフェニルスルホン酸、ドデシルフェニルスルホン酸、ジブチルフェニルスルホン酸、ジノニルフェニルスルホン酸などの、アルキル基の炭素数6〜18のアルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩;ジメチルナフチルスルホン酸、ジイソプロピルナフチルスルホン酸、ジブチルナフチルスルホン酸などの、アルキル基の炭素数2〜18のアルキルナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩;フッ化スルホン酸(例えばトリフルオロメタンスルホン酸)等のアルカリ金属塩が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。成分(D)の使用割合は、ブロック共重合体(B)に対する割合として、通常0.001〜25質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。また、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属としての割合は、ブロック共重合体(B)に対し、通常100〜30000質量ppm、好ましくは150〜20000質量ppmである。
本発明の熱可塑性重合体組成物には、制電性を更に向上させる目的から、フッ素化アルキルスルホニル基を備えたアニオン部を有する塩(E)及び非イオン系界面活性剤(F)を配合することが出来る。
フッ素化アルキルスルホニル基を備えたアニオン部を有する塩(E)としては、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンリチウム等が挙げられるが、特にトリフルオロメタンスルホン酸リチウムが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
成分(E)の使用割合は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)とブロック共重合体(B)の合計100質量部に対する割合として、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜7質量部、更に好ましくは0.1〜5質量部である。また、更に、スチレン系樹脂(C)を含有する場合は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)とブロック共重合体(B)とスチレン系樹脂(C)の合計100質量部に対する割合として、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部、更に好ましくは0.1〜5質量部である。なお、成分(E)は、溶液として添加してもよい。また、他の重合体に予め高濃度で分散させたマスターバッチとして使用することも出来る。
非イオン系界面活性剤(F)としては、多価アルコールエステル、含窒素化合物(アミン化合物、アミド化合物など)等が挙げられる。
多価アルコールエステルとしては、グリセリンエステル、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、エチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル等が挙げられる。
グリセリンモノエステルとしては、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノミリステート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノオレート等が挙げられる。ポリグリセリンエステルとしては、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノミリステート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノベヘネート、ジグリセリンモノオレート等が挙げられる。
ソルビタンエステルとしては、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノべへネート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート等が挙げられる。エチレングリコールエステルとしては、モノステアリン酸エチレングリコール等が挙げられる。また、プロピレングリコールエステルとしては、モノステアリン酸プロピレングリコール等が挙げられる。
上記の中では、グリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノラウレート及びソルビタンモノステアレートが好ましい。
アミン化合物としては、ラウリルジエタノールアミン、ミリスチルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミン、ラウリルジイソプロパノールアミン、ミリスチルジイソプロパノールアミン、パルミチルジイソプロパノールアミン、ステアリルジイソプロパノールアミン、オレイルジイソプロパノールアミン、N,N−ビスヒドロキシエチルアルキルアミン(但し、アルキル基の炭素数は、通常、12〜22である。)等のジアルカノールアミン等が挙げられる。
アミド化合物としては、ラウリルジエタノールアミド、ミリスチルジエタノールアミド、パルミチルジエタノールアミド、ベヘニルジエタノールアミド、オレイルジエタノールアミド、ラウリルジイソプロパノールアミド、ミリスチルジイソプロパノールアミド、パルミチルジイソプロパノールアミド、ステアリルジイソプロパノールアミド、オレイルジイソプロパノールアミド等が挙げられる。
上記の中では、アミン化合物が好ましく、ラウリルジエタノールアミン及びステアリルジエタノールアミンが特に好ましい。
非イオン系界面活性剤(F)の使用割合は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)とブロック共重合体(B)の合計100質量部に対する割合として、通常0.05〜20質量部、好ましくは0.1〜15質量部、更に好ましくは0.3〜7質量部、特に好ましくは0.3〜5質量部である。また、更に、スチレン系樹脂(C)を含有する場合は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)とブロック共重合体(B)とスチレン系樹脂(C)の合計100質量部に対する割合として、通常0.05〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.3〜5質量部である。
本発明の熱可塑性重合体組成物には、公知の耐候(光)剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、シリコーンオイル、可塑剤、摺動剤、着色剤、染料、発泡剤、加工助剤(超高分子量アクリル系重合体、超高分子量スチレン系重合体)、難燃剤、結晶核剤などを適宜配合するこが出来る。
また、本発明の熱可塑性重合体組成物には、公知の無機または有機の充填材を配合することがで出来る。充填材としては、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラス繊維のミルドファイバー、ガラスビーズ、中空ガラスビーズ、炭素繊維、炭素繊維のミルドファイバー、銀、銅、黄銅、鉄、カーボンブラック、錫コート酸化チタン、錫コートシリカ、ニッケルコート炭素繊維、タルク、炭酸カルシウム、炭酸カルシウムウイスカー、ワラストナイト、マイカ、カオリン、モンモリロナイト、ヘクトライト、酸化亜鉛ウイスカー、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、板状アルミナ、板状シリカ、有機処理されたスメクタイト、アラミド繊維、フェノール繊維、ポリエステル繊維などが挙げられる。これらは2種以上を併用することが出来る。
上記の充填材は、分散性を向上させる目的から、公知のカップリング剤、表面処理剤、集束剤などで処理して使用してもよい。カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などがある。充填材の使用割合は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)とブロック共重合体(B)の合計100質量部に対する割合として、通常1〜200質量部である。
本発明の熱可塑性重合体組成物には、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、熱可塑性ポリエステル樹脂(液晶ポリエステル等)、ポリカーボネート、PMMA、メタクリル酸メチル・マレイミド化合物共重合体、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、フェノキシ樹脂などを適宜配合することがでる。
本発明の熱可塑性重合体組成物は、上記の各成分を、各種の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、連続ニーダー、ロール等により溶融混練することにより製造される。混練処理に際し、各成分は、一括添加しても分割添加してもよい。
本発明の熱可塑性重合体組成物は、射出成形、プレス成形、カランダー成形、Tダイ押出成形、インフレーション成形、ラミネーション成形、真空成形、異形押出成形などの公知の成形法により樹脂成形品とされる。樹脂成形品としては、射出成形品、シート成形品(多層シートを含む)、フィルム成形品(多層フィルムを含む)、異形押出成形品、真空成形品などがある。
上記の様にして得られた樹脂成形品は、リレーケース、ウエハーケース、レチクルケース、マスクケース、ソフトケース等のケース類;液晶トレイ、チップトレイ、メモリトレイ、CCDトレイ、ICトレイ等のトレイ類;ICキャリアー等のキャリアー類;偏光フィルムの保護シート、偏光フィルム切断時の保護シート、液晶を使用した表示装置・プラズマディスプレイ等の保護フィルム;半導体関連の保護フィルム、クリーンルーム内の保護フィルム等のフィルム類;プラスチックダンボール;自動販売機内部部材などの分野に使用することが出来る。特に、本発明の熱可塑性重合体組成物は、制電性、制電性の持続性、耐衝撃性および磨耗性に優れていることから、高度な性能が要求される、車両分野、電気・電子分野、OA・家電分野、サニタリー分野などの各種部品として好適に適用できる。
以下、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、「部」及び「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
<評価方法>
(1)ゴム質重合体のゲル含率:前記の方法に従った。
(2)ゴム質重合体ラテックスの平均粒子径:
スチレン系樹脂(C)の製造に使用するゴム質重合体ラテックスの平均粒子径は、光散乱法で測定した。測定機は大塚電子社製「LPA―3100型」を使用し、70回積算でミュムラント法で測定した。なお、スチレン系樹脂(C)中の分散グラフト化ゴム質重合体粒子の粒子径は、ラテックス粒子径と略同じであることを電子顕微鏡で確認した。
(3)スチレン系樹脂(C)のグラフト率:前記の方法に従った。
(4)スチレン系樹脂(C)のアセトン可溶分の極限粘度〔η〕:前記の方法に従った。
(5)制電性;
2.1mm厚み、100mm径の円板状成形品を使用し、23℃、50%RH条件下に24時間放置後の表面抵抗率(Ω/□)を測定した。測定は、三菱化学社製「ハイレスタ−UPMCP−HT450」を使用し、印加電圧500Vで行った。
(6)制電性の持続性:
上記(5)の成形品を蒸留水中に10日間浸漬した後、23℃×50%RHの恒温恒湿槽に30日間放置した後の表面抵抗率(Ω/□)を測定し、持続性の有無を見た。
(7)耐衝撃性:
ISO179に準拠し、同ISO規格に規定の成形品を使用し、シャルピー衝撃強さ(KJ/m2)を測定した。
(8)磨耗性:
JISK7204に準拠し、同JIS規格に規定の成形品を使用し、テーバー磨耗量(mg)を測定した。錘500g、磨耗輪CS17、1000回の条件で測定した。
<熱可塑性重合体組成物の成分>
(1)脂肪族ポリエステル系樹脂(A):
三菱化学社製の「GSPlaAZ91T」:コハク酸/1,4−ブタンジオールを主体とする脂肪族ポリエステルを使用した。
(2)ブロック共重合体(B1):
三洋化成工業社製「ペレスタットM−140」(商品名):ポリアミド−ポリエチレングリコールブロック共重合体(ナトリウム化合物含有品、ナトリウム含有量1120ppm)を使用した。
(3)ブロック共重合体(B2):
竹本油脂社製「TEP004」(商品名):ポリエステル−ポリエチレングリコールブロック共重合体(ナトリウム化合物含有品、ナトリウム含有量12350ppm)を使用した。
(4)ブロック共重合体(B3):
三洋化成工業社製「ペレスタット303」(商品名):ポリプロピレン−ポリエチレングリコールブロック共重合体(ナトリウム化合物含有品、ナトリウム含有量4540ppm)を使用した。
製造例1:
次の方法により、ブロック共重合体(B4)として、ナトリム化合物非含有ポリアミド−ポリエチレングリコールブロック共重合体を製造した。
ステンレス製オートクレーブに、ε−カプロラクタム105部、アジピン酸17.1部、酸化防止剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガノックス1010」(商品名)0.3部および水6部を仕込み、窒素置換後、220℃で加圧密閉下4時間過熱攪拌し、両末端にカルボキシル基を有するポリアミドオリゴマーを117部を得た。次いで、数平均分子量1,500のポリオキシエチレングリコール175部および酢酸ジルコニル0.5部を加え、245℃、1mmHg以下の減圧下で5時間重合した。このポリマーをベルト上にストランド状で取り出し、ペレタイズすることによりて、還元粘度(ηsp/C)2.1のポリアミド−ポリエチレングリコールブロック共重合体を得た。
製造例2:
次の方法により、ブロック共重合体(B5)として、ナトリム化合物非含有ポリエステル−ポリエチレングリコールブロック共重合体を製造した。
ステンレス製オートクレーブに、テレフタル酸ジメチル83部、エチレングリコール50.5部、酸化防止剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガノックス1010」(商品名)0.3部、エステル交換触媒としてテトラブチルチタネート0.2部を添加し、窒素置換後、攪拌しながら常圧下で200℃に昇温し、副生するメタノールを留去しながら1時間反応を行った。次いで、ポリオキシエチレングリコール(数平均分子量4,000)50.5部を添加し、更に2時間反応を行った後、更に240℃まで昇温度し1時間エステル交換反応を行ってエステル化物を得た。次いで、反応系内を1時間かけて1mmHg以下まで減圧にした後、更に3時間縮合反応を行い、ナトリム化合物非含有のポリエステル−ポリエチレングリコールブロック共重合体を得た。このものの還元粘度(ηsp/C)は、2.1であった。
製造例3:
次の方法により、ブロック共重合体(B6)として、ナトリム化合物非含有ポリプロピレン−ポリエチレングリコールブロック共重合体を製造した。
ステンレス製オートクレーブに、高分子量ポリプロピレンの熱減成法で得られた低分子量ポリプロピレン(Mn2,500)80部を仕込んだ後、160℃で溶融し、無水マレイン酸7部および12−アミノドデカン酸14部を加え、窒素ガス通気下、攪拌しながら160℃で1時間反応させた。その後、200℃で20時間反応を行い、ポリオレフィンブロックを得た。このものの酸価は32.1、Mnは2,800であった。次いで、前記のポリオレフィンブロック64部、ポリオキシエチレングリコール(Mn2,000)36部、酸化防止剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガノックス1010」(商品名)0.3部および酢酸ジルコニル0.5部を添加し、230℃、1mmHg以下の減圧下の条件で4時間重合させ、ナトリム化合物非含有ポリプロピレン−ポリエチレングリコールブロック共重合体を得た。
製造例4:
次の方法により、ゴム強化スチレン系樹脂(C11)を製造した。すなわち、攪拌機を備えたガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水75部、ロジン酸カリウム0.5部、tert−ドデシルメルカプタン0.1部、ポリブタジエンラテックス(平均粒子径;3500Å、ゲル含率;85%)40部(固形分)、スチレン15部、アクリロニトリル5部を加え、攪拌しながら昇温した。内温が45℃に達した時点で、ピロリン酸ナトリウム0.2部、硫酸第一鉄7水和物0.01部、ブドウ糖0.2部をイオン交換水20部に溶解した溶液を加えた。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を加えて重合を開始した。1時間重合させた後、更に、イオン交換水50部、ロジン酸カリウム0.7部、スチレン30部、アクリロニトリル10部、tert−ドデシルメルカプタン0.05部およびクメンハイドロパーオキサイド0.01部を3時間かけて連続的に添加し、更に1時間重合を継続させた後、2,2´−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)0.2部を添加して重合を完結させた。反応生成物のラテックスを硫酸水溶液で凝固し、水洗した後、水酸化カリウム水溶液で洗浄・中和し、更に、水洗した後、乾燥し、ゴム強化スチレン系樹脂(C11)を得た.この樹脂のグラフト率は68%、アセトン可溶分の極限粘度[η]は、0.45dl/gであった。
製造例5:
次の方法により、スチレン系樹脂(C12)を製造した。すなわち、リボン翼を備えたジャケット付き重合反応容器を2基連結し、窒素置換した後、1基目の反応容器にスチレン75部、アクリロニトリル25部、トルエン20部を連続的に添加した。分子量調節剤としてtert−ドデシルメルカプタン0.12部およびトルエン5部の溶液、重合開始剤として1、1′−アゾビス(シクロヘキサンー1−カーボニトリル)0.1部およびトルエン5部の溶液を連続的に供給した。1基目の重合温度は、110℃にコントロールし、平均滞留時間2.0時間、重合転化率57%であった。得られた重合体溶液は、1基目の反応容器の外部に設けたポンプにより、スチレン、アクリロニトリル、トルエン、分子量調節剤および重合開始剤の供給量と同量を連続的に取り出し2基目の反応容器に供給した。2基目の反応容器の重合は温度130℃で行い、重合転化率は75%であった。2基目の反応容器で得られた共重合体溶液は、2軸3段ベント付き押出機を使用し、直接未反応単量体と溶剤を脱揮し、極限粘度〔η〕0.48のスチレン系樹脂(C12)を得た。
製造例6:
次の方法により、水酸基変性スチレン系樹脂(C13)を製造した。すなわち、製造例5において、「スチレン75部、アクリロニトリル25部」の代わりに、「スチレン68部、アクリロニトリル22部および2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部」を使用した以外は、製造例5と同一の条件で製造し、極限粘度〔η〕0.42の水酸基変性スチレン系樹脂(C13)を得た。
製造例7:
次の方法により、カルボン酸基変性スチレン系樹脂(C14)を製造した。すなわち、製造例6において、「2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部」の代わりに、「メタクリル酸10部」を使用した以外は、製造例6と同一の条件で製造し、極限粘度〔η〕0.44のカルボン酸基変性スチレン系樹脂(C14)を得た。
製造例8:
次の方法により、エポキシ基変性スチレン系樹脂(C15)を製造した。すなわち、製造例6において、「2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部」の代わりに、「グリシジルメタクリレート10部」を使用した以外は、製造例6と同一の条件で製造し、極限粘度〔η〕0.42のエポキシ基変性スチレン系樹脂(C15)を得た。
<その他の成分>
(1)フッ素化アルキルスルホニル基を備えたアニオン部を有する塩(E):
三光化学工業社製「サンコノールAQ−50T」(商品名)を使用した。リチウム塩化合物の含有量50%である。
(2)非イオン系界面活性剤(F):
花王社製「エレクトロストリッパーTS−5」(商品名)を使用した。
(3)スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(G1):
旭化成ケミカルズ社製「タフテックH−1041」(商品名)を使用した。
(4)無水マレイン酸変性ポリプロピレン(G2):
三洋化成工業社製「ユーメックス1001」(商品名)を使用した。無水マレイン酸付加量は約5%である。
参考例1〜9、実施例1〜11及び比較例1〜7:
表1〜3に記載の配合割合で、ヘンシエルミキサーにより混合した後、二軸押出機(シリンダー設定温度210℃)を使用して溶融混練し、ペレット化した。得られたペレットを十分に乾燥した後、射出成形(シリンダー設定度200℃)により、制電性、制電持続
性、磨耗性および耐衝撃性評価用試験片を得た。評価結果を表4及び表5に示した。
表1〜5に記載された結果から、以下のことが明らかである。
(1)参考例1〜9並びに比較例1及び2は、主として、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)とブロック共重合体(B)から成る熱可塑性重合体組成物に関する例である。これらの参考例は、制電性、制電性の持続性、耐衝撃性に優れる。これに対し、比較例1は、成分(A)の使用量が本発明で規定する範囲より少ない例であり、耐衝撃性が劣る。比較例2は、成分(A)の使用量が本発明で規定する範囲より多い例であり、制電性および耐衝撃性が劣る。
(2)実施例1〜11並びに比較例3〜7は、主として、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)とブロック共重合体(B)とスチレン系樹脂(C)とから成る熱可塑性重合体組成物に関する例である。これらの実施例は、制電性、制電性の持続性、耐衝撃性、磨耗性に優れる。これに対し、比較例3は、成分(A)の使用量が本発明で規定する範囲より多く、成分(B)及び成分(C)の使用量が本発明で規定する範囲より少ない例であり、制電性、耐衝撃性が劣る。
比較例4は、成分(A)の使用量が本発明で規定する範囲より少なく、成分(C)の使用量が本発明で規定する範囲より多い例であり、磨耗性が劣る。比較例5は、成分(B)の使用量が本発明で規定する範囲より少ない例であり、制電性が劣る。比較例6は、成分(B)の使用量が本発明で規定する範囲より多い例であり、耐衝撃性および磨耗性が劣る。比較例7は、成分(C)の使用量が本発明で規定する範囲より多い例であり、磨耗性が劣る。