以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、「(共)重合」とは、単独重合および共重合を意味する。
本発明においては、成分として、オレフィン系樹脂(A)、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルから選ばれた少なくとも1種の重合体ブロック及び親水基を有する重合体ブロックを含むブロック共重合体(B)、芳香族ビニル化合物から主として成る重合体ブロックと共役ジエン化合物から主として成る重合体ブロックとを含有するブロック共重合体およびその水素添加物から選ばれた少なくとも1種のエラストマ−(C)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(D)を使用する。
<オレフィン系樹脂(A)>
本発明で使用する成分(A)は、炭素数が通常2〜10のオレフィン類の少なくとも1種から成るオレフィン系樹脂であり、後述する成分(C)を除く(共)重合体である。オレフィン系樹脂(A)の形成に使用するオレフィン類の例としては、エチレン、及び、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、3−メチルヘキセン−1等のα―オレフィンの他、更にノルボルネン等の環状オレフィン等が挙げられる。これらは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。これらの中では、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1及びノルボルネンが好ましい。他の単量体としては、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、1,9−デカジエン等の非共役ジエン等が挙げられる。
オレフィン系樹脂(A)としては、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体などのプロピレン単位を主として含む重合体が好ましい。また、ポリエチレン、エチレン−ノルボルネン共重合体も好ましい。特に、プロピレン、プロピレン・エチレン共重合体などのプロピレン単位を主として含む重合体が好ましい。これらは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。特に好ましい組み合わせは、ポリエチレンとエチレン−ノルボルネン共重合体の組み合わせである。なお、上記の各共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体などがあり、何れも使用できるが、表面外観性からランダム共重合体が特に好ましい。また、ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等の何れのものも使用できる。
オレフィン系樹脂(A)の製造法としては、例えば、高圧重合法、低圧重合法、メタロセン触媒重合法などがある。オレフィン系樹脂(A)は、重合触媒を脱触媒したもの、酸無水物、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基、オキサゾリン基、エステル基などで変性したものであってもよい。本発明の熱可塑性重合体組成物と他材を使用して多層シート、多層フィルムにする場合、本発明の熱可塑性重合体組成物と他材との接着性を上げるために上記の官能基変性のオレフィン系樹脂を使用するのが好ましい場合がある。
オレフィン系樹脂(A)の結晶性の有無は問わないが、室温下、X線回折による結晶化度が10%以上であるものを少なくとも1種使用することが好ましい。また、オレフィン系樹脂(A)のJISK7121に準拠して測定した融点が40℃以上であるものを少なくとも1種使用することが好ましい。
オレフィン系樹脂(A)としてポリプロピレン系樹脂を使用する場合、そのJISK7210:1999(230℃、荷重2.16kg)に準拠して測定したメルトフローレートは、通常0.01〜500g/10分、好ましくは0.05〜100g/10分であり、ポリエチレン系樹脂を使用する場合、そのJISK6922−2(190℃、荷重2.16kg)に準拠して測定したメルトフローレートは、通常0.01〜500g/10分、好ましくは0.05〜100g/10分である。
なお、オレフィン系樹脂(A)には、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤などの各種添加剤を配合することも出来る。
オレフィン系樹脂(A)の使用量は、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の合計100質量%中、5〜87質量%、好ましくは10〜80質量%、更に好ましくは10〜75質量%、特に好ましくは10〜70質量%である。その使用量が5質量%未満では制電性および耐磨耗性が劣り、87質量%を超えると制電性および耐磨耗性が劣る。
<ブロック共重合体(B)>
本発明で使用する成分(B)は、ポリオレフィン、ポリアミド及びポリエステルから選ばれた少なくとも1種の重合体ブロック(B1)及び親水基を有する重合体ブロック(B2)を含むブロック共重合体である。そして、ジブロックでもよいし、トリブロック以上のマルチブロックでもよい。
[重合体ブロック(B1)]
(ポリオレフィン)
上記の重合体ブロック(B1)のポリオレフィンとは、オレフィン類の(共)重合体である。ここで使用されるオレフィン類の例としては、エチレン、及び、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、3−メチルヘキセン−1等のα−オレフィンの他、更にノルボルネン等の環状オレフィン等が挙げられる。これらは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。これらの中では、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、ノルボルネンが好ましい。また、他の単量体として、4−メチル−1、4−ヘキサジエン、5−メチル1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、1,9−デカジエン等の非共役ジエンを使用することも出来る。オレフィン重合体ブロック(B−a)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量は、通常800〜20,000、好ましくは1,000〜10,000、更に好ましくは1,2000〜6,000である。
上記のポリオレフィンは、重合法、熱減成法などによって得ることが出来る。重合法の場合、触媒の存在下でオレフィンを(共)重合させるが、触媒としては、例えば、ラジカル触媒、金属酸化物触媒、チーグラー触媒、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒などが使用される。一方、高分子量のポリオレフィンの熱減成法による低分子量ポリオレフィンは、例えば、特開平3−62804号公報記載の方法に従って容易に得ることが出来る。ブロック共重合体(B)を得る場合、ポリオレフィンの分子末端を変性する必要があるが、この分子末端の変性のし易さから、熱減成法で得られるポリオレフィンが好適である。
熱減成法で得られるポリオレフィンは、通常、分子末端が変性可能なポリオレフィン、片末端が変性可能なポリオレフィン及び変性可能な末端基を持たないポリオレフィンの混合物であるが、両末端が変性可能なポリオレフィンが主成分であることが好ましい。
熱減成法で得られるポリオレフィン中の二重結合量は、制電性の観点から、炭素数1,000当たり、通常1〜40個、好ましくは2〜30個、更に好ましくは4〜20個である。1分子当たりの二重結合の平均数は、繰り返し構造の形成性の観点および制電性の観点から、通常1.1〜5、好ましくは1.3〜3、更に好ましくは1.8〜2.2である。熱減成法においては、Mnが800〜6,000の範囲で、1分子当たりの平均末端二重結合数が1.5〜2個の低分子量ポリオレフィンが容易に得られる〔例えば、村田勝英、牧野忠彦、日本化学会誌、192頁(1975)参照〕。
ポリオレフィンに官能基を付与する方法としては、熱減成法により得られる分子末端に炭素―炭素二重結合を有するポリオレフィンに官能基を有する炭素−炭素不飽和化合物を付加させる方法が好ましい。
(ポリアミド)
上記の重合体ブロック(B1)のポリアミドとしては、(a)ジアミン成分とジカルボン酸成分から導かれるポリアミド、(b)ラクタム類の開環重合によるポリアミド、(c)アミノカルボン酸から導かれるポリアミド、これらの共重合ポリアミド、これらの混合ポリアミドの何れでもよい。
上記(a)におけるジアミン成分としては,エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2,3,4もしくは2,4,4−トリメチレンヘキサメチレンジアミン、1,3−もしくは1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノヘキシル)メタン、フェニルジアミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン等の脂肪族、脂環族または芳香族のジアミン等が挙げられ、ジカルボン酸成分としては、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの脂肪族、脂環族または芳香族のジカルボン酸が挙げられる。上記(b)のラクタム類としては、カプロラクタム、ラウリルラクタム等が挙げられる。また、上記(c)のアミノカルボン酸としては、ω−アミノカプロン酸、ω―アミノエナン酸、アミノウンデカン酸、1,2−アミノドデカン酸などが挙げられる。
(ポリエステル)
上記の重合体ブロック(B1)のポリエステルとしては、(1)炭素数4〜20のジカルボン酸成分および/またはそのエステル形成誘導体とジオール成分から得られる重合体、(2)2官能オキシカルボン酸化合物から得られる重合体、(3)カプロラクトン化合物から得られる重合体などが挙げられるが、上記(1)の重合体の製造の際に共重合成分として2官能オキシカルボン酸化合物を使用して得られる共重合体が好ましい。ここで、炭素数とは、カルボキシル基の炭素数およびカルボキシル基の炭素数に直結する鎖や環を構成する炭素数の総数をいう。
炭素数4〜20のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、α、ω−ドデカンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、オクタデセニルジカルボン酸などの炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの炭素数8〜20の脂環族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸などの炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸;5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などのスルホン酸基が芳香環に結合した炭素数8〜12の置換芳香族ジカルボン酸; 上記ジカルボン酸のメチルエステル等のエステル形成誘導体などがある。これらは2種以上を組合せて使用することが出来る。これらの中では、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、コハク酸およびこれらのエステル形成誘導体が好ましい。
ジオール成分は以下の一般式(1)で表わされる。
上記式(1)中、R1は、2価の脂肪族炭化水素基を表わす。R1の炭素数としては、通常2〜11、好ましくは2〜6である。R1はシクロアルキレン基を包含し、また、分岐鎖を含有していてもよい。R1は、好ましくは「−(CH2)n−」であり、ここで、nは通常2〜11の整数、好ましくは2〜6の整数である。
上記のジオールの具体例としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,6−シキロヘキサンジメタノール等が挙げられ、特に、エチレングリコール又は1,4−ブタンジオールが好ましい。また、カプロラクトン等のラクトン化合物の他、乳酸、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸などの2官能脂肪族オキシカルボン酸化合物などを適宜組み合わせて使用することが出来る。
上記の重合体ブロック(B1)のポリエステルとしては、(a)前記ジカルボン酸およびそのエステル形成誘導体と前記ジオールから成るポリエステル、(b)前記ジカルボン酸およびそのエステル形成誘導体、前記ジオールおよび前記2官能オキシカルボン酸から成るポリエステルが好ましい。
上記の重合体ブロック(B1)の成分であるポリアミド、ポリエステル及びポリオレフィンは、2種以上を組み合わせて使用することも出来る。ポリアミドとポリエステルを使用した場合は特に耐衝撃性に優れ、ポリオレフィンを使用した場合は特に制電性および耐磨耗性に優れる。
ブロック共重合体(B)における重合体ブロック(B1)と後述の親水基を有する重合体ブロック(B2)との結合は、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合などから選ばれた少なくとも1種である。このため、重合体ブロック(B1)の分子末端は、親水基を有する重合体ブロック(B2)の分子両末端官能基との反応性を有する官能基で変性されている必要がある。これらの官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、酸無水物基、オキサゾリン基,エポキシ基などがある。
[親水基を有する重合体ブロック(B2)]
親水基を有する重合体ブロック(B2)の親水性ポリマーとしては、ポリエーテル、ポリエーテル含有親水性ポリマー、アニオン性ポリマー等が挙げられる。
ポリエーテルとしては、ポリエーテルジオール、ポリエーテルジアミン及びこれらの変性物が挙げられる。ポリエーテル含有親水性ポリマーとしては、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルアミドイミド、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステル、ポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルアミド、ポリエーテルジオール又はポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルウレタンが挙げられる。アニオン性ポリマーとしては、スルホニル基を有するジカルボン酸と上記ポリエーテルとを必須成分単位とし、かつ、一分子内に通常2〜80個、好ましくは3〜60個のスルホニル基を有するアニオン性ポリマーが挙げられる。斯かるアニオン性ポリマーは、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。親水基を重合体ブロック(B2)の特に好ましい成分はポリエーテルである。
ポリエーテルのうちポリエーテルジオールとしては、次の一般式(I)や(II)で表されるもの等が挙げられる。
一般式(I)中、E1は二価の水酸基含有化合物から水酸基を除いた残基、A1は炭素数2〜4のアルキレン基、nおよびn´は前記二価の水酸基含有化合物の水酸基1個当たりのアルキレンオキサイド付加数を表す。n個の(OA1)とn´個の(A1O)とは同一であっても異なっていてもよく、また、これらが2種以上のオキシアルキレン基で構成される場合の結合形式はブロック若しくはランダム又はこれらの組み合わせの何れでもよい。nおよびn´は、通常1〜300、好ましくは2〜250、更に好ましくは10〜100の整数である。また、nとn´は、同一であっても異なっていてもよい。
上記二価の水酸基含有化合物としては、一分子中にアルコール性またはフェノール性の水酸基を2個含む化合物、すなわち、ジヒドロキシ化合物が挙げられ、具体的には、二価アルコール(例えば炭素数2〜12の脂肪族、脂環式または芳香族二価アルコール)、炭素数6〜18の二価フェノール及び第3級アミノ基含有ジオール等が挙げられる。
脂肪族二価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。脂環式二価アルコールとしては、例えば、1,2−及び1,3−シクロペンタンジオール、1,2−、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、芳香族二価アルコールとしては、例えば、キシレンジオール等が挙げられる。二価フェノールとしては、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、ウルシオール等の単環二価フェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4、4´−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシジフェニルエーテル等のビスフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ビナフトール等の縮合多環二価フェノール等が挙げられる。
一般式(II)中、E2は、一般式(I)で記載した二価の水酸基含有化合物から水酸基を除いた残基、A2は、少なくとも一部が一般式(III):−CHR−CHR´―〔式中、R、R´の一方は、一般式(IV):−CH2O(A3O)XR"で表される基、他方はHである。一般式(IV)中、xは1〜10の整数、R"はHまたは炭素数1〜10の、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基またはアシル記、A3は炭素数2〜4のアルキレン基である。〕で表される置換アルキレン基であり、残りは炭素数2〜4のアルキレン基であってもよい。m個の(OA2)とm´個の(A2O)とは同一であっても異なっていてもよい。mおよびm´は、通常1〜300、好ましくは2〜250、更に好ましくは10〜100の整数である。また、mとm´とは、同一でも異なっていてもよい。
上記一般式(I)で示されるポリエーテルジオールは、二価の水酸基含有化合物にアルキレンオキサイドを付加反応することにより製造することが出来る。アルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキサイド、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,4−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、1,3−ブチレンオキサイド、これらの2種以上の組合せが挙げられる。2種以上のアルキレンオキサイドを使用する際の結合形式は、ランダム及び/又はブロックの何れでもよい。アルキレンオキサイドとしては、好ましくは、エチレンオキサイド単独およびエチレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドとの併用によるブロック及び/又はランダム付加である。アルキレンオキサイドの付加数は、前記二価の水酸基含有化合物の水酸基1個当たり、通常1〜300、好ましくは2〜250、更に好ましくは10〜100である。
上記一般式(II)で示されるポリエーテルジオールの好ましい製造方法としては次の(i)、(ii)の方法などが挙げられる。
(i)上記二価の水酸基含有化合物を出発物質として、一般式(V)で表されるグリシジルエーテルを重合、または炭素数2〜4のアルキレンオキサイドと共重合する方法。
一般式(V)中、A4は炭素数2〜4のアルキレン基、pは1〜10の整数、R1は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基またはアシル基である。
(ii)上記二価の水酸基含有化合物を出発物質として、側鎖にクロロメチル基を有するポリエーテルを経由する方法。具体的には、エピクロルヒドリン又はエピクロルヒドリンとアルキレンオキサイドを付加共重合し、側鎖にクロロメチル基を有するポリエーテルを得た後、当該ポリエーテルと炭素数2〜4のポリアルキレングリコールとR1X(R1は上記したものと同義であり、Xは、Cl、Br又はIを表す)をアルカリ存在下で反応させるか、または、当該ポリエーテルと炭素数2〜4のポリアルキレングリコールモノカルビルエーテルをアルカリ存在下で反応させる。ここで使用される炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとしては、前記したものが全て使用できる。
また、本発明の好ましい成分(B)は、前記のポリオレフィン重合体ブロック(B1)と親水基を有する重合体ブロック(B2)を公知の方法で重合することによって得ることが出来る。例えば、ブロック(B1)とブロック(B2)の各成分を減圧下200〜250℃で重合反応を行うことにより製造することが出来る。また、重合反応に際し公知の重合触媒を使用することが出来る。触媒としては、モノブチルスズオキサイド等のスズ系触媒、三酸化アンチモン、二酸化アンチモン等のアンチモン系触媒、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒、ジルコニウム水酸化物、酸化ジルコニウム、酢酸ジルコニル等のジルコニウム系触媒、IIB族有機酸塩触媒から選ばれる1種または2種以上の組み合わせである。
成分(B)には、制電性を向上させる目的からナトリウム及び/又はカリウム含有化合物(B3)を含ませることが出来る。これらの化合物は、成分(B)の重合時、重合後、またはこれを組み合わせた方法で含有させることが出来るが、好ましくは、重合時にこれらの化合物を存在させ含有させる方法である。
成分(B3)としては、ナトリウムやカリウムの有機酸、スルホン酸、無機酸の塩、ハロゲン化物などが挙げられる。具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム等のハロゲン化物;過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等の無機酸塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等の有機酸塩;オクチルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、テトラデシルスルホン酸、ステアリルスルホン酸、テトラコシルスルホン酸、2−エチルヘキシルスルホン酸などの、アルキル基の炭素数8〜24のアルキルスルホン酸のナトリウム塩やカリウム塩;フェニルスルホン酸、ナフチルスルホン酸などの芳香族スルホン酸のナトリウム塩やカリウム塩;オクチルフェニルスルホン酸、ドデシルフェニルスルホン酸、ジブチルフェニルスルホン酸、ジノニルフェニルスルホン酸などの、アルキル基の炭素数6〜18のアルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩やカリウム塩;ジメチルナフチルスルホン酸、ジイソプロピルナフチルスルホン酸、ジブチルナフチルスルホン酸などの、アルキル基の炭素数2〜18のアルキルナフタレンスルホン酸などのアルキル基の炭素数2〜18のアルキルナフタレンスルホン酸のナトリム塩やカリウム塩;トリフルオロメタンスルホン酸などのフッ化スルホン酸などのナトリウム塩やカリウム塩などが挙げられる。これらは2種以上を併用することも出来る。特に好ましい成分(B3)は、スルホン酸のナトリウム塩またはスルホン酸のカリウム塩である。成分(B3)の含有量は、成分(B)に対し、ナトリム及び/又はカリウムとして、通常0〜50,000ppm、好ましくは0〜10,000ppm、更に好ましくは0〜1,000ppm、特に好ましくは0〜500ppmである。ナトリウムやカリウムの含有量が多いと、成形品からイオンとして溶出し、用途によっては金属腐食などの好ましくない結果となる場合がある。
成分(B)におけるブロック(B1)/ブロック(B2)の比率は、通常10〜90/10〜90質量%、好ましくは20〜80/20〜80質量%、更に好ましくは、30〜70/30〜70質量%である。成分(B)は、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ブロック(B1)の形成にポリオレフィンを使用したブロック共重合体(B)としては、例えば、特開2001−278985号公報、特開2003−48990号公報に記載の方法などによって製造することが出来、更に、三洋化成工業社製の「ペレスタット300シリーズ」の「300」、「303」、「ペレスタット200シリーズ」の「230」、「VH230」等として入手できる。
ブロック(B1)の形成にポリアミドを使用したブロック共重合体(B)の場合、ポリアミドの数平均分子量は、通常500〜30,000、好ましくは500〜20,000、更に好ましくは500〜10,000、特に好ましくは500〜5,000である。ポリアミドブロック含有ブロック共重合体(B)の分子量は、特に制限されないが、還元粘度(ηsp/C)(ギ酸溶液中、0.5g/100ml、25℃測定)として、通常1.0〜3.0、好ましくは1.2〜2.5である。ポリアミドブロック含有ブロック共重合体(B)として、特に好ましいものは、ポリアミドとポリ(アルキレンオキサイド)グリコールとがエステル結合で結合されたポリエーテルエステルアミドであり、三洋化成工業社製の「ペレスタットNC6321」、「ペレスタットMAX−N330」、「ペレスタットM−140」、「ペレスタット6500」等として入手できる。
ポリエステルブロック含有ブロック共重合体(B)の分子量は、特に制限されないが、還元粘度(ηsp/C)(フェノール/テトラクロロエタン=40/60質量比の混合溶媒中、濃度1.0g/100ml、35℃測定)として,通常0.3〜2.5、好ましくは0.5〜2.5である。ポリエステルブロック含有ブロック共重合体(B)は、例えば、竹本油脂社製の「TEP004」、「TEP010」、「TEP008」等として入手できる。
成分(B)の使用量は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)の合計100質量%中、3〜70質量%、好ましくは5〜65質量%、更に好ましくは6〜60質量%、特に好ましくは6〜55質量%であり、その使用量が3%未満では制電性が劣り、70質量%を超えると耐磨耗性および耐衝撃性が劣る。
<エラストマ−(C)>
本発明で使用する成分(C)は、芳香族ビニル化合物から主として成る重合体ブロック(C1)と共役ジエン化合物から主として成る重合体ブロック(C2)とを含有するブロック共重合(C−a)体およびその水素添加物(C−b)から成る群より選ばれる少なくとも1種の重合体である。
ここで使用される芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α―メチルスチレン、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。これらの中では、スチレン又はα―メチルスチレンが好ましく、特にスチレンが好ましい。また、共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。これらの中ではブタジエン又はイソプレンが好ましい。これらは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。更に、重合体ブロック(C2)は、2種以上の共役ジエン化合物を使用し、それらがランダム状、ブロック状、テーパー状の何れの形態で結合したブロックであってもよい。また、重合体ブロック(C2)は、芳香族ビニル化合物が漸増するテーパーブロックを1〜10個の範囲で含有していてもよく、重合体ブロック(C2)の共役ジエン化合物に由来するビニル結合含有量の異なる重合体ブロック等が適宜共重合していてもよい。
成分(C)は次の構造式(2)〜(4)で表される重合体またはその水素添加物であることが好ましい。
構造式(2)〜(4)中、Aは、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックであり、実質的に芳香族ビニル化合物から成る重合体ブロックであれば、一部共役ジエン化合物が含まれていてもよい。芳香族ビニル化合物の含有量は、通常90質量%以上、好ましくは99質量%以上である。Bは共役ジエン化合物の単独重合体または芳香族ビニル化合物などの他の単量体と共役ジエン化合物との共重合体であり、Xはカップリング剤の残基であり、Yは1〜5の整数、Zは1〜5の整数をそれぞれ表す。
成分(C)における、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物の使用割合は、芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物として、通常10〜70/30〜90質量%、好ましくは15〜50/50〜85質量%、更に好ましくは15〜45/55〜85質量%である。
芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物から成るブロック共重合体は、アニオン重合の技術分野で公知のものであり、例えば、特公昭47−28915号公報、特公昭47−3252号公報、特公昭48−2423号公報、特公昭48−20038号公報などに開示されている。また、テーパーブロックを有する重合体ブロックの製造方法については、特開昭60−81217号公報などに開示されている。
成分(C)の共役ジエン化合物に由来するビニル結合量(1,2−及び3,4−結合)含有量は、通常5〜80%の範囲であり、成分(C)の数平均分子量は、通常10,000〜1,000,000、好ましくは20,000から500,000、更に好ましくは20,000〜200,000である。これらのうち、上記(2)〜(4)で表したA部の数平均分子量は3,000〜150,000、B部の数平均分子量は5,000〜200,000であることが好ましい。
共役ジエン化合物のビニル結合量の調節は、N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジアゾシクロ(2,2,2)オクタミン等のアミン類、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類、チオエーテル類、ホスフィン類、ホスホアミド類、アルキルベンゼンスルホン酸塩、カリウムやナトリウムのアルコキシド等を使用して行うことが出来る。
上記の方法で重合体を得た後、カップリング剤を使用して重合体分子鎖がカップリング剤残基を介して延長または分岐された重合体も成分(C)として好適に使用することが出来る。ここで使用されるカップリング剤としては、アジピン酸ジエチル、ジビニルベンゼン、メチルジクロロシラン、四塩化珪素、ブチルトリクロロ珪素、テトラクロロ錫、ブチルトリクロロ錫、ジメチルクロロ珪素、テトラクロロゲルマニウム、1,2−ジブリモエタン、1,4−クロロメチルベンゼン、ビス(トリクロロシリル)エタン、エポキシ化アマニ油、トリレンジイソシアネート、1,2,4−ベンゼントリイソシアネート等が挙げられる。
上記のブロック共重合体のうち、耐衝撃性の観点から好ましいものは、ブロック(C2)に芳香族ビニル化合物が漸増するテーパーブロックを1〜10個の範囲で有する重合体である。また、カップリング処理されたラジアルブロックタイプも好ましい。
また、成分(C)として、共役ジエン部分の炭素―炭素二重結合を部分的にまたは完全に水素添加したものを使用することが出来る。得られた組成物の耐衝撃性および耐磨耗性の観点から、成分(C)中の水素添加率が90%未満の部分の割合は50質量%以上が好ましい。
上記の方法で得た芳香族ビニル化合物を主とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主として成る重合体ブロックから成る重合体の水素添加反応は、公知の方法で行うことが出来るし、また、公知の方法で水素添加率を調節することにより、目的の重合体を得ることが出来る。具体的な方法としては、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公昭63−5401号公報、特開平2−133406号公報、特開平1−297413号公報に開示されている方法がある。
水素未添加品としては、JSR社製の「TR2000」、「TR2500」等として、また、水素添加品としては、旭化成ケミカルズ社製のタフテック「H−1041」、「H−1053」等として入手できる。
上記のブロック共重合体(C−a)及びその水素添加物(C−b)は、他の重合体がブロック重合体および/またはグラフト重合体として化学的に結合したものであってもよい。他の重合体は、100質量%が化学的に結合している必要はなく、他の重合体の少なくとも10質量%が化学的に結合しておればよい。
上記の他の重合体としては、芳香族ポリカーボネート又はポリウレタンが好ましく、特に芳香族ポリカーボネートが好ましい。芳香族ポリカーボネートブロック共重合体混合物は、例えば、特開2001−220506号公報に記載の方法で製造することが出来る。更に、クラレ社製の「TMポリマーシリーズ」の「TM−S4L77」、「TM−H4L77」等として入手することが出来る。
成分(C)の使用量は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)の合計100質量%中、5〜85質量%、好ましくは5〜75質量%、更に好ましくは10〜70質量%、特に好ましくは15〜50質量%である。成分(C)の使用量が5質量%未満では耐衝撃性および耐磨耗性が劣り、75質量%を超えると耐磨耗性、耐衝撃性が劣る。
<熱可塑性ポリウレタンエラストマー(D)>
本発明で使用する成分(D)は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)であり、一般に、ジイソシアネートと鎖延長剤から成るハードセグメントブロックとポリオールとジイソシアネートから成るソフトセグメントブロックを繰り返し単位とするブロック共重合体である。
ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
上記のポリエステルポリオールとしては、ジカルボン酸またはそのエステル化合物もしくは酸無水物とジオールとの縮合反応で得られるポリエステルポリオール;ε−カプロラクトン等のラクトンモノマーの開環重合で得られるポリラクトンジオール等が挙げられる。そして、上記のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂環族ジカルボン酸が使用され、上記のジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等が使用される。
また、ポリカーボネートポリオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール等の多価アルコールの1種または2種以上とジエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート等とを反応させて得られるポリカーボネートポリオール等が挙げられる。また、ポリカプロラクトンポリオールとポリヘキサメチレンカーボネートとの共重合体であってもよい。
更に、ポリエステルエーテルポリオールとしては、前記の脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、または、そのエステル若しくは酸無水物と、ジエチレングリコール、プロピレンオキサイド付加物などのグリコールとの縮合反応物などが挙げられる。
更に、ポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環状エーテルをそれぞれ重合させて得られるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)の他、これらのコポリエーテル等が挙げられる。
前記した各種ポリオールの中では、耐加水分解性の点からポリエーテルポリオールが好ましい。
イソシアネートとしては、トリレンジオソシアネート(TDI)、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、水素添加XDI、トリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネートメチルオクタン、リジンエステルトリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等が挙げられる。これらの中では、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)又はジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI;HMDI)が好ましい。
鎖延長剤としては,低分子量ポリオールが使用され、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン等の脂肪族ポリオール、1,4−ジメチロールベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などの芳香族グリコールが挙げられる。
なお、本発明で使用される熱可塑性ポリウレタンエラストマーの硬度(ショアA硬度)は70〜99が好まし。斯かる熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ディーアイシーバイエルポリマー社製のエステル(アジペート)系として「T−1000シリーズ」の「T−1180」、「T−1185」;エステル(ラクトン)系として「T−2000シリーズ」の「T−2180」、「T−2185」;エーテル系として「T−8000シリーズ」の「T−8180」、「T−8185」、「TP−6000シリーズ」の「TP−6580A」等として入手できる。
成分(D)の使用量は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)の合計100質量%中、3〜50質量%、好ましくは3〜40質量%、更に好ましくは5〜35質量%、特に好ましくは5〜30質量%である。成分(D)の使用量が3質量%未満の場合は、耐衝撃性、耐摩耗性および制電性が劣り、50質量%を超える場合は、耐衝撃性、耐摩耗性および制電性が劣る。
<リチウム塩化合物(E)>
本発明で任意に使用される成分(E)はリチウム塩化合物である。リチウム塩化合物の使用により制電性を更に向上させることが出来る。リチウム塩化合物としては、無機・有機のリチウム化合物が挙げられる。塩化リチウム、臭化リチウム、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンリチウム等が好ましく、これらは2種以上を組み合わせて使用することも出来る。本発明の目的と達成する上で特に好ましいリチウム塩は、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムであり、三光化学工業社製の「サンコノール0862−13T」、「AQ−50T、TBX−25」等として、溶液やマスターバッチとして入手することが出来る。
リチウム塩化合物(E)は、成分(B)の重合時、重合後および本発明の熱可塑性重合体組成物製造時、またはこれを組み合わせた方法などで含有させることが出来る。好ましい方法は、本発明の熱可塑性重合体製造時に含有させる方法であり、(1)熱可塑性重合体組成物の成分を配合する際に添加する方法、(2)本発明の熱可塑性重合体組成物成分の何れかに事前に配合する方法がある。更に、前記(1)の方法では配合時に各成分と混合してもよく、溶融混練時に混練機途中から添加してもよい。前記(2)の方法では成分(D)を事前に配合したものと他成分とを配合してもよいし、また、溶融混練機に本発明で使用する特定の成分と成分(E)を混練した後、更に他成分を添加してもよい。
成分(E)の使用量は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)の合計100質量部に対し、通常0.01〜5質量部、好ましくは0.05〜3質量部、更に好ましくは0.1〜2.5質量部、特に好ましくは0.1〜2質量部である。成分(E)の使用量が0.01質量部未満では制電性を向上させる効果が得られないことがあり、また、5質量部を超えると耐摩耗性が劣る傾向にある。
本発明の熱可塑性重合体組成物には、公知の耐候(光)剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、シリコーンオイル、可塑剤、摺動剤、着色剤、染料、発泡剤、難燃剤、結晶核剤、帯電防止剤などを適宜配合することが出来る。
<充填材>
また、本発明の熱可塑性重合体組成物には、公知の無機・有機充填材を配合することが出来る。ここで使用される充填材としては、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラス繊維のミルドファイバー、ガラス粉、ガラスビーズ、中空ガラスビーズ、炭素繊維、炭素繊維のミルドファイバー、銀、銅、黄銅、鉄などの粉体や繊維状物質、カーボンブラック、錫コート酸化チタン、錫コートシリカ、ニッケルコート炭素繊維、タルク、炭酸カルシウム、炭酸カルシウムウイスカー、ワラストナイト、マイカ、カオリン、モンモリロナイト、ヘキトライト、酸化亜鉛ウイスカー、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、板状アルミナ、板状シリカ、有機処理されたスメクタイト、アラミド繊維、フェノール樹脂、ポリエステル繊維、木粉などがあり、これらは2種以上を組み合わせて使用することも出来る。更に、分散性を向上させる目的から、公知のカップリング剤、表面処理剤、集束剤などで処理した充填材を使用することが出来る。カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などがある。無機・有機充填材の使用量は、本発明の熱可塑性重合体組成物100質量部に対し、通常1〜200質量部である。
<他の重合体>
更に、本発明の熱可塑性重合体組成物には、他の重合体として、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、液晶ポリエステル、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、HIPS、PS、PMMA、メタクリル酸メチル・マレイミド化合物共重合体、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリカーボネート、エチレン・(メタ)クリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、フェノキシ樹脂などを配合することが出来る。
本発明の熱可塑性重合体組成物は、上記の各成分を、各種の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、連続ニーダー、ロール等により溶融混練することにより得ることが出来る。混練りに際し、各成分は一括添加しても分割して添加してもよい。
本発明の熱可塑性重合体組成物の成形方法としては、射出成形、プレス成形、カレンダー成形、Tダイ押出成形、中空シート押出成形、発泡シート押出成形、インフレーション成形、ラミネーション成形、真空成形、異形押出成形、これらを組み合わせた成形法などを採用することが出来る。また、成形機に混練り押出機、バンバリーミキサー等の混練り機が付帯されている場合、混練り機で本発明の熱可塑性重合体組成物を得ながら成形することも出来る。
本発明の熱可塑性重合体組成物は、シート及びフィルム用途に好適な組成物であり、多層シート及び多層フィルムの表皮材として特に好適である。これ等のシート及びフィルムとしては、単層のシート及びフィルム、他材量と多層化したシート及びフィルムであってもよく、粘着剤などを積層したシート及びフィルム、公知のガスバリア膜を形成したシート及びフィルムでもよい。上記の多層シート又は多層フィルムにおいて、表皮材は、シート又はフィルムの片面なあってもよく、また、両面にあってもよい。多層シート又は多層フィルムにおけるコア層は、発泡したものでも、中空になったものでも、更に、これら以外のものでもよい。
上記のシート及びフィルムの厚さは、通常5μm〜100mm、好ましくは10μm〜50mm、更に好ましくは30μm〜10mmである。また、上記の多層シート及び多層フィルムにおける表皮材の厚さは、通常5〜200μm、好ましくは5〜150μm、更に好ましくは10〜100μmである。
上記の多層シート又は多層フィルムにおいては、本発明の熱可塑性重合体組成物と他材との2層構造、他材が中間層である3層構造などとすることが出来る。ここで使用される他材としては、任意の重合体を使用することが出来るが、層間の接着性の観点から、本発明で使用する成分(A)、スチレン系樹脂などが好ましい。層間の接着が不十分な材料を使用する場合は、公知の接着層を形成することが出来る。また、中間層とする他材として官能基で変性された成分(A)やスチレン系樹脂を使用することも出来る。ここで使用される官能基としては、カルボン酸基、酸無水物基、水酸基、エポキシ基、オキサゾリン基、エステル基などがあり、これらの官能基での変性方法としては、例えば、成分(A)やスチレン系樹脂を酸化してカルボン酸基などを生成させる方法、前記の官能基含有不飽和化合物を共重合する方法、更に、前記の官能基含有不飽和化合物を付加させる方法などの公知の方法が使用できる。前記の官能基で変性した成分(A)やスチレン系樹脂は2種以上を組み合わせて使用することが出来る。更に、官能基で変性されていない成分(A)やスチレン系樹脂と官能基で変性した成分(A)及びスチレン系樹脂と混合して使用してもよい。また、シート及びフィルムの剛性や耐熱性を向上させる目的から、前記の無機・有機充填材を配合したものを使用することも出来る。
多層シート又は多層フィルムを得る方法として、Tダイによる共押出、インフレーションによる共押出などが挙げられる。トレイ等の成形品は、例えばシート又はフィルムの真空成形によって得ることが出来る。
両表層が本発明の熱可塑性重合体組成物であり、中間層がポリプロピレン系樹脂である多層シートを真空成形する場合、次の様なポリプロピレン系樹脂が好適に使用される。すメルトフローレート(JISK7210:1999に準拠して230℃、荷重2.16kgで測定)が3.0g/10分以下のポリプロピレン系樹脂が好ましく、メルトフローレート(JISK6922−2に準拠して190℃、2.16kg荷重で測定)が3.0g/10分以下のポリエチレンを10〜30%併用したポリプロピレン系樹脂使が更に好ましい。
両表層が本発明の熱可塑性重合体組成物であり、中間層が発泡ポリプロピレ系樹脂または発泡ポリエチレン系樹脂である多層シートにおいて、発泡ポリプロピレ系樹脂または発泡ポリエチレン系樹脂の発泡剤としては公知のもの使用することが出来る。更に、発泡型に本発明の熱可塑性重合体組成物から成るシート又はフィルムの真空成形品を入れ、発泡ビーズを使用して型内発泡させて成形品にすることが出来る。
本発明の熱可塑性重合体組成物は、従来にない優れた制電性、耐磨耗性および耐衝撃性に優れていることから、高度な性能が要求される、車両分野、電気・電子分野、OA・家電分野、サニタリー分野などの各種部品として適用できる。
すなわち、前述の様にして得られた成形品は、リレーケース、ウエハーケース、レチクルケース、マスクケース等のケース類;液晶トレイ、チップトレイ、ハードディスクトレイ、CCDトレイ、ICトレイ、有機ELトレイ、光ピックアップトレイ、LEDトレイ等のトレイ類;ICキャリアー等のキャリアー類;偏光フィルム、導光板、各種レンズ等の保護フィルム;偏光フィルム切断時の下敷きシート;仕切り板などのクリーンルーム内で使用されるシート又はフィルム類;自動販売機内部部材;液晶パネル、ハードディスク、プラズマパネル等に使用される制電バッグ;プラスチックダンボール、液晶パネル、プラズマパネル等の搬送用ソフトケース;その他の各種部品搬送用関連部材などの分野に使用することが出来る。