JP5278661B2 - 電子写真感光体および電子写真装置 - Google Patents
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しかしながら、高速プロセスで用いると、繰り返し使用後の感光体の電位特性が劣化し、得られる画像にカブリ、黒スジ及び濃度ムラなどが生じてしまう。高速プロセスに用いた場合は、光応答性も十分でなければ感光層中に電荷が残り、次工程の電子写真プロセスで、カブリ、黒スジ及び濃度ムラなどの原因となる。このため、電荷移動剤としては、高い電荷輸送能力を持つことが必要であり、また、電荷発生剤と電荷輸送剤との組合せが重要である。
例えば、電荷発生材料としてヒドロキシガリウムフタロシアニンを用い、これと、電荷輸送材料に特定の構造式を有するアリールアミン誘導体を組み合せて用いることが知られている。これにより感度、繰り返し使用時の安定性が改善されるとされている(例えば、特許文献1参照)。しかし、近年の装置小型化、高速化に伴う感光体の小径化、周速の早いプロセスなどにおいて要求される特性(高帯電性、高感度、低残留電位、繰り返し使用時の電位安定性等)は一層厳しくなっており、従来技術での対応は難しい。
なお、フタロシアニン系顔料の電荷発生剤を用いないものの例としては、例えば、キャリア発生物質[セレンとその合金、硫化カドミウム等の無機顔料、あるいはアゾ系顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン誘導体、アンスアンスロン系誘導体等の有機顔料]と、特定の構造式を有する二種類のキャリア輸送物質[特定の構造式を有するトリフェニルアミン誘導体(スチリル置換フェニル基含有)と特定の構造式を有するヒドラゾン化合物の二種類を用いる]を組み合せて用いることが知られている。これにより帯電電位、残留電位が改善されるとされている(例えば、特許文献3参照)。しかし、近年の要求特性に対応するのは難しい。
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、電子写真装置(複写機、プリンター装置等)の小型化及び高速化に伴う、感光体の小径化、並びに周速の早いプロセスに対応でき、且つ、長波長域でも高応答性で、繰り返し使用においても電気特性の劣化がなく、しかも安定性が高い電子写真感光体と、これを用いた電子写真装置を提供することを目的とする。
感光層を設けてなる電子写真感光体であって、
前記電荷発生剤はCuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニンであり、前記電荷移動剤は下記一般式(Ic)又は(Id)で表される化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体により解決される。
なお以降、「一般式(I)で表される化合物(後述)」を「特定の構造を有するトリアリールアミン誘導体]と表現することがある。
。
本発明の電子写真装置によれば、本発明の感光体が有する長波長域の良好な感度、高応答性、高速繰り返し使用における電位の再現性、安定性などが発揮されて、感光体の小径化、高速プロセスの実現が可能となり、さまざま使用環境(高温高湿から低温低湿まで)においても高品質の画像が得られる。
前記電荷発生剤はCuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニンであり、前記電荷移動剤は下記一般式(I)で表される化合物を含有することを特徴とするものである。
感光層にヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤あるいは、ベンゾトリアゾール紫外線吸収剤を含有することができる。
ここで、前記一般式(I)で表される化合物が、下記式(Ia)〜(Id)で表されるものが好ましく用いられる。
なお、帯電手段としては、例えば、感光体に接触するように配置され、電圧が印加される帯電部材を有するものであってもよい。電子写真装置においては、帯電、露光、現像、転写、除電を行い(除電はない場合も含む)、再び帯電を行う一連の画像形成プロセスが実行される。
本発明の電子写真感光体は、例えば、導電性支持体上に、少なくとも電荷発生剤を含む電荷発生層が形成され、その上に少なくとも電荷移動剤を含む電荷移動層が形成される機能分離型(積層型)の構成からなる感光層にも適用されるものである。この場合、電荷発生層と電荷移動層とにより感光層が形成される。
電荷発生層の形成方法としては各種の方法を使用することができるが、例えば、本発明におけるヒドロキシガリウムフタロシアニン(電荷発生剤)をバインダー樹脂(結着樹脂)と共に、適当な溶媒に分散もしくは溶解して調製した塗布液を用いて、所定の下地となる導電性支持体上に塗布し、必要に応じて乾燥させて形成することができる。
電荷移動層の形成方法としては各種の方法を使用することができるが、通常、前記一般式(I)で表される化合物をバインダー樹脂(結着樹脂)と共に、適当な溶媒に分散もしくは溶解して調製した塗布液を用いて、下地となる電荷発生層上に塗布し、乾燥させて形成することができる。
本発明の電子写真感光体は、機能分離型(積層型)の構成とすることもできるが、感光層が電荷発生剤と電荷移動剤を同時に含む単層型の電子写真感光体にも適用することができる。
図6は、本発明に係る電子写真感光体の構成例を示す断面図であり、導電性支持体1上に少なくとも電荷発生剤を含む電荷発生層5と、少なくとも電荷移動剤を含む電荷移動層7とが、順次積層された構成(積層型)をとっている。なお、電荷発生層5と電荷移動層7とにより感光層3が形成される。
また、図6において電荷発生層5と電荷移動層7を逆順(上下逆)に積層させた逆積層型の感光層とする構成についても適用することができる。
図7は、本発明に係る電子写真感光体の別の構成例を示す断面図であり、導電性支持体1上に、少なくとも電荷発生剤と電荷移動剤を同時に含む感光層3(単層型)が設けられている。
図8は、本発明に係る電子写真感光体の他の構成例を示す断面図であり、導電性支持体1上に、少なくとも電荷発生剤を含む電荷発生層5と、少なくとも電荷移動剤を含む電荷移動層7とが、順次積層され(積層型)さらに電荷移動層7上に表面保護層9が設けられてなる。
図9は、本発明に係る電子写真感光体のさらに他の構成例を示す断面図であり、導電性支持体1上に、少なくとも電荷発生剤と電荷移動剤を同時に含む感光層3が設けられ(単層型)、さらに感光層3表面に表面保護層9が設けられてなる。
なお、上記図6〜図9構成において、導電性支持体1と感光層3の間に下引き層などの中間層を設けても構わない。
さらに、基体にガラスを用いる場合、その表面に酸化錫、酸化インジウム、ヨウ化アルミニウムで被覆し、導電性を持たせてもよい。
それらは単体で用いてもよいが、2種以上混合して使用することも可能である。分子量の異なった樹脂を混合して用いることにより、例えば、硬度や耐摩耗性を改善できて好ましい。
なお、感光層が機能分離型(積層型)の構成、すなわち、電荷発生層と電荷移動層とからなる場合には、前記結着樹脂はいずれの層にも適用できる。
特に上記中でも、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、あるいはハロゲン化炭化水素系溶媒が好ましく、これらは単独、あるいは2種以上の混合溶媒として用いることができる。
前記一般式(I)で表される化合物の中でも、特に前記式(Ia)〜(Id)で表される化合物がヒドロキシガリウムフタロシアニンとの相性がよく好ましいが、これらに限定されるものではない。
また、低分子化合物として、トリニトロフルオレノン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、キノン、ジフェノキノン、ナフトキノン、アントラキノンおよびこれらの誘導体、アントラセン、ピレン、フェナントレン等の多環芳香族化合物、インドール、カルバゾール、イミダゾール等の含窒素複素環化合物、フルオレノン、フルオレン、オキサジアゾール、オキサゾール、ピラゾリン、ヒドラゾン、トリフェニルメタン、トリフェニルアミン、エナミン、スチルベン等を使用することができる。
また、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸等の高分子化合物にLiイオン等の金属イオンをドープした高分子固体電解質等も用いることができる。
さらに、テトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタンで代表される電子供与性化合物と電子受容性化合物で形成された有機電荷移動錯体等も用いることができ、これらを1種だけ添加するか、または2種以上の化合物を混合して添加し、所望の感光体特性を得ることができる。
本発明の電子写真感光体が搭載される電子写真装置としては、通常、帯電方式はブラシ、ローラーなどの接触式、スコロトロン、コロトロン等の非接触式の、いずれの方式でもよく、正負いずれの帯電電荷でもよい。露光方式は、LED、LD等いずれでもよい。現像方式は、2成分、1成分、磁性/非磁性いずれでもよい。転写方式もローラー、ベルト等いずれでもよい。
図4は、本発明に係る電子写真装置を説明するための概略構成図である。
11は感光体を示し、感光体11と接触して帯電部材12(帯電手段)が設けられている。帯電部材12には、電源13から電圧が供給されるようになっている。感光体の周囲には、露光装置14(露光手段)、現像装置15(現像手段)、転写装置16(転写手段)、クリーニング装置17および除電器18が設けられている。なお、19は定着装置(定着手段)である。
図5は、イレーズレス型の電子写真装置であって、図4の電子写真装置における除電器18が設けられていない以外は同一の構造を有している。
なお上記感光体11は、CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニンを電荷発生剤として含有すると共に、特定の構造を有するトリアリールアミン誘導体を電荷移動剤として含有し、少なくとも電荷発生剤を含む電荷発生層と、少なくとも電荷移動剤を含む電荷移動層とが、積層された積層型感光層構成か、若しくは電荷発生剤と電荷移動剤を同時に含む感光層構成からなる。
なお、以下、実施例1、2、5とあるのは、参考例1、2、5とする。
[ヒドロキシガリウムフタロシアニンの合成]
1,3−ジイミノイソインドリン30部および三塩化ガリウム9.1部をキノリン230部中に添加し、200℃において3時間反応させた後、生成物を濾別した。次いで、アセトン、メタノールで洗浄し、湿ケーキを乾燥してクロロガリウムフタロシアニン結晶28部を得た。 次に、上記クロロガリウムフタロシアニン結晶3部を濃硫酸60部に0℃にて溶解後、この溶液を5℃の蒸留水450部中に滴下して結晶を析出させた。蒸留水、希アンモニア水等で洗浄後、乾燥してヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶2.5部を得た。 更に、上記ヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶0.5部をジメチルホルムアミド15部および直径1mmのガラスビーズ30部と共に24時間ミリングした後、結晶を分離した。次いで、メタノールで洗浄後、乾燥して、目的のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶を得た。
得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶のX線回折スペクトルを測定したところ、Cu−Kα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θが7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に強い回折ピークを有していた。測定結果を図1に示す。
<X線回折スペクトル測定条件>
X線管球:Cu
電圧:50kV
電流:30mA
走査速度:2°/分
走査範囲:3°〜40°
時定数:2秒
直径24mmの無切削アルミニウムからなる円筒ドラム(導電性支持体)上に、アルキド樹脂(ベッコライトM−6401−50大日本インキ化学工業社製)とアミノ樹脂(スーパーベッカミンG−821−60大日本インキ化学工業社製)を65:35の割合で混合し、さらに前記混合樹脂と酸化チタン(CR−EL石原産業社製)を1:3の割合とし、メチルエチルケトンに溶解して調製した塗布液を塗布し、1.5μmの膜厚で下引層を形成した。
上記下引層/電荷発生層を順次形成した基体(導電性支持体)を該電荷移動層用塗工液に浸漬塗工し、120℃で60分乾燥して膜厚25.0μmの電荷移動層を形成し、電子写真感光体を作製した。
実施例1で用いた電荷移動剤に代えて、前記式(Ib)で表される電荷移動剤を用いた他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
実施例1で用いた電荷移動剤に代えて、前記式(Ic)で表される電荷移動剤を用いた他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
実施例1で用いた電荷移動剤に代えて、前記式(Id)で表される電荷移動剤を用いた他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
電荷発生層は実施例1と同様としたまま、電荷移動層用塗工液を下記のように代えて電荷移動層を形成した他は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
バインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂(Z400三菱瓦斯化学製)と、電荷移動剤として式〔Ia〕で表される化合物と、フェノール系酸化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、アミン系酸化防止剤としてN−フェニル−1−ナフチルアミン、硫黄系酸化防止剤としてジステアリル−3−3−チオジプロピオネート(スミライザーTPS、住友化学製)紫外線吸収剤として2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin−P、geigy製)とを、重量比1.0:1.0:0.05:0.05:0.01:0.05で用意し、テトラヒドロフランに溶解して電荷移動層用塗工液を調製した。
電荷発生層を形成した基体を該電荷移動層用塗工液に浸漬塗工し、120℃で60分乾燥し、25.0μmの電荷移動層を形成し、電子写真感光体を作製した。
実施例1で用いた電荷移動剤に代えて、下記式(A)で表される電荷移動剤を用いた他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
実施例1で用いた電荷移動剤に代えて、下記式(B)で表される電荷移動剤を用いた他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
実施例1で用いた電荷発生剤に代えて、図2のX線回折スペクトルを示すY型オキシチタニウムフタロシアニンを用いた他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
実施例1で用いられた電荷発生剤に代えて、図3のX線回折スペクトルを示すβ型オキシチタニウムフタロシアニンを用いた他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
<静電特性>
電子写真感光体評価装置(山梨電子工業社製)を用い、実施例および比較例によって作製された電子写真感光体についてそれぞれ、帯電、露光、現像、転写を1サイクルとして、1サイクル目の電位を初期とし、さらに1万サイクル後の表面電位(V0)、残留電位(VL)、露光量0.6μJ/cm2の静電特性を測定し、変化量を求めることにより評価した。評価結果を下記表1に示す。
これに対し、比較例1〜4、すなわち、本願発明における電荷発生剤と、本願発明ではない他の電荷移動剤とを組み合わせた場合、1万サイクル後の残留電位が大きく変化し、感光体特性として満足できるものではなかった。さらに、本願発明ではない他の電荷発生剤と、本願発明における電荷移動剤とを組み合わせた場合、1万サイクル後の残留電位が大きく変化し、感光体特性として満足できるものでなかった。
電子写真感光体評価装置(山梨電子工業製)を用い、実施例および比較例によって作製された電子写真感光体それぞれに対し、半減露光量の5倍の光量を照射し、露光から現像器に到達するまでの時間を変化させた時の現像器位置での電子写真感光体の表面電位を光応答性(−V)として評価した。評価結果を下記表2に示す。
これに対し比較例1〜4では、到達時間が短くなると表面電位は著しく高くなり、感光体特性として満足できるものではなかった。
本願発明によれば、接触帯電に対する耐絶縁破壊性に優れ、残留電位の上昇がない良好な感光体を提供できるものである。すなわち、本願発明の電子写真感光体は、長波長域でも高応答性で、繰り返し使用においても電気特性の劣化がなく、感光体の小径化や高速プロセスに対応できる。これによって、複写機、プリンター装置等の電子写真装置の小型化や高速化への対応ができる。
3 感光層
5 電荷発生層
7 電荷移動層
9 表面保護層
11 感光体
12 帯電部材
13 電源
14 露光装置
15 現像装置
16 転写装置
17 クリーニング装置
18 除電器
19 定着装置
Claims (9)
- 前記感光層が、導電性支持体上に少なくとも電荷発生剤を含む電荷発生層と、少なくとも電荷移動剤を含む電荷移動層を、順次または逆順に積層した積層型であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- 前記感光層が、電荷発生剤と電荷移動剤を同時に含む単層型であることを特徴とする請求項項1に記載の電子写真感光体。
- 前記感光層中に結着樹脂を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 前記感光層にヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 前記感光層にアミン系酸化防止剤を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 前記感光層に硫黄系酸化防止剤を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 前記感光層にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 少なくとも感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段および定着手段を具備してなる画像形成装置において、前記感光体が請求項1乃至8のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする電子写真装置。
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