例えば車両(自動車)用変速装置としてトロイダル型無段変速機を使用する事が、多くの刊行物に記載され、且つ、一部で実施されて周知である。又、変速比の変動幅を大きくすべく、トロイダル型無段変速機と差動ユニット(例えば歯車式の差動ユニットである遊星歯車式変速機)とを組み合わせた無段変速装置も、例えば特許文献1〜3等に記載される等により従来から広く知られている。このうちの特許文献1には、トロイダル型無段変速機のみで動力を伝達するモード(例えば、第一のモード、低速モード)と、差動ユニットである遊星歯車式変速機により主動力を伝達し、上記トロイダル型無段変速機により変速比の調節を行う、所謂パワースプリット状態を実現するモード(例えば、第二のモード、高速モード)とを備えた無段変速装置が記載されている。又、上記特許文献2〜3には、入力軸を一方向に回転させたまま、出力軸の回転状態を停止させる、所謂ギヤードニュートラル(GN)状態を挟んで、この出力軸の回転状態を正転、逆転に切り換えられるモード(例えば、第一のモード、低速モード)を備えた無段変速装置が記載されている。
図22〜23は、上記特許文献3に記載された、ギヤードニュートラル状態を実現できるモードを備えた無段変速装置を示している。このうちの図22は無段変速装置のブロック図を、図23は、この無段変速装置を制御する油圧回路を、それぞれ示している。エンジン1の出力は、ダンパ2を介して、入力軸3に入力される。この入力軸3に伝達された動力は、直接又はトロイダル型無段変速機4を介して、差動ユニットである遊星歯車式変速機5に伝達される。そして、この遊星歯車式変速機5の構成部材の差動成分が、クラッチ装置6、即ち、それぞれが特許請求の範囲に記載した第一、第二各クラッチに相当する、図23の低速用、高速用各クラッチ7、8を介して、出力軸9に取り出される。又、上記トロイダル型無段変速機4は、入力側、出力側各ディスク10、11と、複数個のパワーローラ12と、それぞれが支持部材に相当する複数個のトラニオン(図示省略)と、アクチュエータ13(図23)と、押圧装置14と、変速比制御ユニット15とを備える。
このうちの入力側、出力側各ディスク10、11は、互いに同心に、且つ相対回転自在に配置されている。又、上記各パワーローラ12は、互いに対向する上記入力側、出力側各ディスク10、11の内側面同士の間に挟持されて、これら入力側、出力側各ディスク10、11同士の間で動力(力、トルク)を伝達する。又、上記各トラニオンは、上記各パワーローラ12を回転自在に支持している。又、上記アクチュエータ13は、油圧式のもので、上記各パワーローラ12を支持した上記各トラニオンを、それぞれの両端部に設けた枢軸の軸方向に変位させて、上記入力側ディスク10と出力側ディスク11との間の変速比を変える。又、上記押圧装置14は、油圧の導入に伴ってこの油圧に比例した押圧力を発生させる油圧式のものであり、上記入力側ディスク10と上記出力側ディスク11とを互いに近付く方向に押圧する。又、上記変速比制御ユニット15は、上記入力側ディスク10と出力側ディスク11との間の変速比を所望値にする為に、上記アクチュエータ13の変位方向及び変位量を制御する。
図示の例の場合、上記変速比制御ユニット15は、制御器(ECU)16と、この制御器16からの制御信号に基づいて切り換えられる、ステッピングモータ17と、ライン圧制御用電磁開閉弁18と、変速比補正用電磁弁19と、シフト用電磁弁20と、これら各部材17〜20により作動状態を切り換えられる制御弁装置21とにより構成している。尚、この制御弁装置21は、変速比制御弁22と、差圧シリンダ23と、補正用制御弁24a、24bと、高速クラッチ用、低速クラッチ用各切換弁25、26(図23)とを合わせたものである。このうちの変速比制御弁22は、上記アクチュエータ13への油圧の給排を制御するものである。又、上記差圧シリンダ23は、前記トロイダル型無段変速機4を通過する力(通過トルク)に応じて、このトロイダル型無段変速機4の変速比を補正すべく、上記変速比制御弁22の切換状態を調節する為のものである。又、上記補正用制御弁24a、24bは、上記差圧シリンダ23への圧油の給排を制御するものである。更に、上記高速クラッチ用、低速クラッチ用各切換弁25、26は、前記低速用、高速用各クラッチ7、8への圧油の導入状態を切り換えるものである。
又、前記ダンパ2部分から取り出した動力により駆動されるオイルポンプ27(図23の27a、27b)から吐出した圧油は、上記制御弁装置21並びに上記押圧装置14に送り込まれる。即ち、油溜28(図23)から吸引されて上記オイルポンプ27a、27bにより吐出された圧油は、押圧力調整弁29及び低圧側調整弁30(図23)により所定圧に調整される。このうちの押圧力調整弁29は、前記アクチュエータ13にピストンを挟んで設けた1対の油圧室31a、31b同士の間に存在する油圧の差(差圧)に応じた油圧、並びに、前記制御器16からの指令により制御される前記ライン圧制御用電磁開閉弁18の開閉に基づく油圧の導入に基づき、開弁圧を調節される。そして、この様な開弁圧の調節に基づき、上記押圧装置14が発生する押圧力を、運転状況に応じた最適な値に規制する。
又、上記押圧力調整弁29により調整された圧油は、手動油圧切換弁32、並びに、減圧弁33、前記高速クラッチ用切換弁25又は低速クラッチ用切換弁26を介して、前記低速用クラッチ7又は高速用クラッチ8の油圧室内に送り込まれる。又、これら低速用、高速用各クラッチ7、8のうちの低速用クラッチ7は、減速比を大きくする{変速比無限大(ギヤードニュートラル状態)を含む}低速モード(特許請求の範囲に記載した「第一のモード」に相当する)を実現する際に接続されると共に、減速比を小さくする高速モード(特許請求の範囲に記載した「第二のモード」に相当する)を実現する際に接続を断たれる。これに対して、上記高速用クラッチ8は、上記低速モードを実現する際に接続を断たれると共に上記高速モードを実現する際に接続される。又、これら低速用、高速用各クラッチ7、8への圧油の給排状態は、前記シフト用電磁弁20の切り換えに応じて切り換えられる。
図24は、トロイダル型無段変速機4の変速比(増速比)と無段変速装置全体としての速度比(増速比)との関係の1例を示している。例えば、上記低速用クラッチ7が接続され、上記高速用クラッチ8の接続が断たれた低速モードでは、実線αで示す様に、トロイダル型無段変速機4の変速比を、ギヤードニュートラル状態を実現できる値(GN値)から減速する程、無段変速装置全体としての速度比を停止状態(速度比0の状態)から前進方向(+:正転方向)に増速させられる。又、同じくGN値から増速する程、同じく停止状態から後退方向(−:逆転方向)に増速させられる。一方、上記高速用クラッチ8が接続され、上記低速用クラッチ7の接続が断たれた高速モードでは、実線βで示す様に、上記トロイダル型無段変速機4の変速比を増速する程、上記無段変速装置全体としての速度比を(前進方向に)増速させられる。
尚、一般的には、「変速比」は減速比であり、「速度比」は増速比であり、「変速比」の逆数が「速度比」となる(「速度比」=1/「変速比」)。但し、本明細書並びに特許請求の範囲では、トロイダル型無段変速機に関する入力側と出力側との間の比に就いて「変速比」の言葉を用い、無段変速装置全体に関する入力側と出力側との間の比に就いて「速度比」の言葉を用いている。この理由は、トロイダル型無段変速機の比なのか、無段変速装置全体としての比なのかを明確にし易くする為である。従って、本明細書並びに特許請求の範囲では、「変速比」が減速比に、「速度比」が増速比に、必ずしも対応するものではない。
上述した様な無段変速装置を組み込んだ車両では、アクセルペダルの操作(アクセル開度)や車両の走行速度(車速)から得られる、その時点での車両の走行状態(運転状況)に基づいて、制御器16により、上記無段変速装置の最適な速度比(目標速度比)を求める。そして、この目標速度比を実現すべく、上記制御器16の制御信号に基づいてステッピングモータ17を駆動し、変速比制御弁22を切り換える事により、トロイダル型無段変速機4の変速比を、上記目標速度比に対応する目標変速比に調節する。又、これと共に、必要に応じて(無段変速装置の目標速度比に応じて)シフト用電磁弁20を切り換える事により、上記低速用、高速用各クラッチ7、8の断接状態を切り換え、必要な走行モード(低速モード或いは高速モード)を選択する。これらにより、上記無段変速装置の速度比を、その時点での車両の走行状態に応じた最適な値(目標速度比)に調節する。
ところで、トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とをクラッチ装置を介して組み合わせて成り、低速モードと高速モードとを有する無段変速装置の場合、上述した様なギヤードニュートラル状態を実現できるものにしても、前記特許文献1に記載されたパワースプリット状態を実現できるものにしても、低速モードと高速モードとの間のモード切換は、次の様に行われる。即ち、このモード切換は、その時点での走行状態(に対応する目標速度比)に応じて調節される無段変速装置の速度比が、上記低速モードと高速モードとの両方のモードで実現できる値{図24で低速モードを表す実線αと高速モードを表す実線βとの交点イに対応する値(増速比で0.4程度)}に調節された状態で行われる。この場合に、トロイダル型無段変速機4から見れば、上記モード切換は、その時点での走行状態(に対応する目標変速比)に応じて調節されるこのトロイダル型無段変速機4の変速比が、上記交点イに対応する値であるモード切換ポイント{回転同期点、増速比で0.4程度(最大減速状態)}に調節された状態で行われる。
例えば、低速モードで走行中であれば、その時点での走行状態(に対応する目標変速比)に応じて上記トロイダル型無段変速機4の変速比が減速し(無段変速装置の速度比が増速し)、モード切換ポイント(例えば増速比で0.4程度)に達すると、前記制御器16の制御信号に基づいて前記シフト用電磁弁20が切り換えられる。そして、それまで接続を断たれていた高速用クラッチ7が接続されると共に、それまで接続されていた低速用クラッチ8の接続が断たれ、低速モードから高速モードに切り換わる。一方、高速モードで走行中であれば、その時点での走行状態(に対応する目標変速比)に応じて上記トロイダル型無段変速機4の変速比が減速し(無段変速装置の速度比が減速し)、上記モード切換ポイントに達すると、上記制御器16の制御信号に基づいて前記シフト用電磁弁20が切り換えられる。そして、それまで接続を断たれていた上記低速用クラッチ8が接続されると共に、それまで接続されていた上記高速用クラッチ7の接続が断たれ、高速モードから低速モードに切り換わる。
上述の様な低速モードと高速モードとの間のモード切換を行う場合、このモード切換を滑らか(円滑)に行う事が、乗り心地性能(乗り心地の良さ)等を確保する面で重要になる。この様なモード切換を滑らかに行う技術として、例えば特許文献4には、モード切換時に、それまで接続されていたクラッチとそれまで接続を断たれていたクラッチとの両方のクラッチを同時に接続させてから、それまで接続されていたクラッチの接続を断つ技術が記載されている。この様な技術を採用すれば、例えば加速中のモード切換時に高速用、低速用各クラッチの接続が同時に断たれる事による、エンジンの回転速度の急上昇(吹け上がり)や、この急上昇後の高速用クラッチの接続に伴う変速ショック(トルク抜け感、押し出し感)を防止して、運転者を初めとする乗員に違和感を与える事を防止できる。
又、特許文献5には、トロイダル型無段変速機を通過して遊星歯車式変速機に入力される動力の回転速度と、このトロイダル型無段変速機を通過せずにこの遊星歯車式変速機に入力される動力の回転速度とを一致させた状態で、モード切換を行う事により、このモード切換時のクラッチの接続を滑らかに行う技術が記載されている。又、特許文献6には、モード切換時のトロイダル型無段変速機の変速比の変化量(トルクシフト量)を見込んで、クラッチの断接のタイミングを補正(調節)する事により、モード切換の前後で無段変速装置全体の速度比を一致させる技術が記載されている。又、特許文献7には、モード切換中にトロイダル型無段変速機を通過するトルクに基づく変速比調節機能を停止する事により、モード切換を円滑に行わせる技術が記載されている。又、特許文献8には、モード切換時に、低速用、高速用両クラッチが同時に接続された事を、パワーローラを支持する支持部材(トラニオン)を枢軸の軸方向に変位させる油圧式のアクチュエータに設けた、1対の油圧室同士の間の差圧に基づいて推定する技術が記載されている。又、特許文献9には、低速用、高速用両クラッチが同時に接続された状態で、トロイダル型無段変速機の変速比をトルクシフト分補正してから、次に接続を断つべきクラッチの接続を断つ技術が記載されている。又、特許文献10には、低速用、高速用両クラッチを同時に接続する時間を、運転状況に応じて調節する技術が記載されている。
ところで、モード切換時にクラッチ装置を構成する低速用、高速用各クラッチは、その時点の状態、例えば油温やこれら各クラッチを構成する摩擦材の温度特性等に応じて、接続を開始してから接続し切るまでに或る程度の時間を要する(油圧応答遅れを生じる)。上述した特許文献5〜10に記載された技術の場合には、何れも、この様なモード切換時の油圧応答遅れを低減させる事は意図していない。この為、モード切換を円滑に行わせるべく、両クラッチが同時に接続する時間を確実につくりだそうとすると、そのままでは、上記応答遅れ分、モード切換に要する時間が長くなる。この様な場合、例えば加速中であれば、この加速が途切れ、即ち、増速側への変速が遅れ、エンジンの回転速度は上昇しても、運転者の意図する加速を十分に得られなくなる(加速性能が低下する)と言った不都合を生じる可能性がある。特に、キックダウン操作時に、上述の様な応答遅れに伴う加速の途切れが生じる事は、運転者に違和感を与える等、好ましくない。尚、特許文献11には、モード切換を開始するトロイダル型無段変速機の変速比の値を、設計上の値である目標変速比よりも増速側にずらす技術が記載されている。この様な技術を採用すれば、応答遅れを見込んでモード切換を開始する変速比を増速側にする事により、上述の様な加速の途切れを低減できる可能性がある。但し、この場合には、モード切換を開始する変速比を運転状況等に応じて微妙に調節する必要があり、その分、制御が複雑になる可能性がある。
又、特許文献12には、高速モードで走行中の故障時に、低速用クラッチが接続される事を禁止する為のクラッチ締結禁止弁を備えた構造が記載されている。又、特許文献13には、ベルト式の無段変速装置に関し、トルクコンバータ(流体継手)のダンパクラッチのクラッチ圧を、エンジントルクの大きさに応じて調節する技術が記載されている。但し、これら特許文献12〜13に記載された技術に関しても、上述した特許文献5〜11に記載された技術と同様に、モード切換に要する時間の短縮を図る事はできない。
又、特許文献14には、トロイダル型無段変速装置を組み込んだ無段変速装置に関し、予め設定した複数段(5段)のうちの何れかの変速段に、運転者の操作に基づいて変速可能とした手動変速機能を備え、この複数の変速段のうちの第2段(第2速)に対応する速度比を、モード切換を行う速度比に一致させる技術が記載されている。更に、特許文献15には、この様なモード切換を行う変速段(第2段、第2速)に操作された状態で、低速用クラッチ(動力循環モードクラッチ)と高速用クラッチ(直結モードクラッチ)とを同時に接続させると共に、これら両クラッチの締結圧を、締結に必要な最小限の圧力に調節する技術が記載されている。但し、この様な構造の場合は、モード切換を行う変速段(第2弾)で運転されている状態で、トロイダル型無段変速機の変速比をモード切換ポイントに厳密に調節する事ができれば問題ないが、このトロイダル型無段変速機の変速比が変動する傾向になる事に基づいて、伝達効率が低下する可能性がある。
即ち、上記トロイダル型無段変速機の変速比は、入力側、出力側各ディスクの回転速度の検出誤差や、トルクシフト(トルク伝達に伴う弾性変形に起因する変速比の変動)等に基づいて、微妙にその値が変動する事が避けられない。一方、上述の様にモード切換を行う変速段の状態で(第2段で運転中に)、上述の様に両クラッチを同時に接続すると、上記トロイダル型無段変速機の変速比が変動する傾向になっても、これら両クラッチの接続に基づいてこのトロイダル型無段変速機の変速比が強制的にモード切換ポイントのまま維持される。この為、このトロイダル型無段変速機の変速比の変動が許容されなくなり、このトロイダル型無段変速機が弾性変形する等、伝達効率の低下に繋がる可能性がある。又、著しい場合には、このトロイダル型無段変速機や低速用、高速用各クラッチの損傷に繋がる可能性もある。上記特許文献15に記載された構造の場合には、上記両クラッチの締結圧を、締結に必要な最小限の圧力に調節するとしているが、これら両クラッチにより動力の伝達を行える状態としている(動力の伝達を行える締結圧としている)以上、上述の様な変速比の変動を許容できず、伝達効率の低下は免れない。
又、トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とをクラッチ装置を介して組み合わせて成り、低速モードと高速モードとを有する無段変速装置の場合、低速モード又は高速モードで運転中は、低速用、高速用各クラッチのうちの何れか一方のクラッチの接続が断たれる。この様な接続が断たれるクラッチの引き摺りトルク(ドラッグロス)の低減を図る為には、接続が断たれた状態での、このクラッチを構成するクラッチ板同士の隙間、例えば湿式多板式クラッチであれば、互いに対向するセパレータプレート(クラッチプレート)とコアプレート(プレッシャプレート)との隙間を大きくする事が好ましい。但し、単に隙間を大きくするだけでは、無段変速装置全体としての軸方向寸法が徒に嵩み、車両への搭載性が低下する。逆に言えば、限られた設置空間内に無段変速装置を組み込む場合に、そのままでは上記隙間を十分に確保できず、上述の様な引き摺りトルク(ドラックロス)が増大し、伝達効率の低下を招く可能性がある。
[参考例の第1例]
図1〜5は、本発明に関する参考例の第1例を示している。尚、本参考例の特徴は、モード切換を滑らか、且つ、迅速に行える構造を、簡素な構成で実現すべく、低速用、高速用各クラッチ7、8への圧油の導入状態等を工夫した点にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図22〜23に示した従来構造と同様であるから、重複する説明を省略若しくは簡略にし、以下、本参考例の特徴部分を中心に説明する。尚、本参考例の場合は、無段変速装置全体としての速度比(増速比)とトロイダル型無段変速機4の変速比(増速比)との関係を、例えば前述の図24に示す様に設定している。この様な設定は、例えば遊星歯車式変速機5等の減速比や伝達歯車の歯数比等を規制する事により行える。
本参考例の場合は、前述の図22〜23に示した従来構造の様な、押圧装置14に導入する油圧を調整する為の押圧力調整弁29に、アクチュエータ13を構成する1対の油圧室31a、31b同士の間の油圧の差(差圧)を直接導入すると言った構成は、採用していない。即ち、本参考例の場合は、上記各油圧室31a、31bに設けた1対の油圧センサ34a、34b(図1の34)の検出信号を、制御器16に入力している。そして、これら各油圧センサ34a、34bにより検出される上記差圧{この差圧に対応する、トロイダル型無段変速機4を通過するトルク(通過トルク)}と、後述する他のセンサ36〜40等により検出される他の状態量(変速比や油温、アクセル開度、車速等)とに基づいて、ライン圧制御用電磁開閉弁18の開閉状態を切り換える。そして、この開閉状態の切換に基づき、上記押圧力調整弁29の開弁圧を調節し、プライマリーライン35、延いては、上記押圧装置14が発生する押圧力を、運転状況に応じた最適な値に規制する様にしている。
又、本参考例の場合には、上記制御器16に、上記油圧センサ34(34a、34b)の検出信号の他、入力側、出力側各回転センサ36、37並びに出力軸回転センサ38の検出信号と、油温センサ39の検出信号と、アクセルセンサ40並びにブレーキスイッチ41、パーキングブレーキスイッチ42、ポジションスイッチ43の検出信号とを入力している。そして、この様な制御器16に、少なくとも、上記出力軸回転センサ38(又は運転席の速度メータ用の速度センサ)の出力信号から検出される車両の走行速度(車速)と、上記アクセルセンサ40の出力信号から検出されるアクセル開度とから得られる、その時点での車両の走行状態に基づいて、無段変速装置の目標速度比(その時点での走行状態に応じた最適な速度比)に対応する、トロイダル型無段変速機4の目標変速比を求めると共に、このトロイダル型無段変速機4の変速比(延いては無段変速装置の速度比)を、この目標変速比(目標速度比)に調節する機能(自動変速機能)を持たせている。
尚、上記車速並びにアクセル開度(走行状態を表す状態量)と目標速度比(目標変速比)との関係は、上記制御器16のメモリに予めマップ(後述する図4に示す様な変速マップ)や計算式として記憶させておく。そして、この様なマップ(MAP)や計算式を用いて、その時点での状態量(車速、アクセル開度)に応じた目標速度比(目標変速比)に調節する。又、この様なトロイダル型無段変速機4の変速比(延いては無段変速装置全体としての速度比)の調節は、上記制御器16からの制御信号により、ステッピングモータ17を駆動し、前記アクチュエータ13への油圧の給排を切り換えると共に、後述する低速クラッチ用、高速クラッチ用各電磁弁44、45の開閉に基づき前記低速用、高速用両クラッチ7、8の断接状態(高速、低速各モード)を切り換える事により行う。
尚、本参考例の場合は、上記トロイダル型無段変速機4の目標変速比を、上記制御器16に予め記憶させた、図4に示す様な変速マップに基づいて求める。この変速マップ(Shift MAP)は、車両の走行速度(横軸)と、最適な減速力又は駆動力を得る為に必要な無段変速装置の速度比に対応する上記目標変速比(縦軸)との相関関係を、アクセル開度毎に表したものである。又、このアクセル開度毎にそれぞれ表された、上記車両の走行速度と上記目標変速比との相関関係に対応する各線は、それぞれモード切換ポイントを挟んで低速側(図4の左側)が「低速モード用変速マップ」に、同じく高速側(図4の右側)が「高速モード用変速マップ」に、それぞれ相当する。この様な本参考例の場合は、上記低速用クラッチ7が接続されると共に、上記高速用クラッチ8の接続を断たれた低速モード状態では、上記低速モード用変速マップを用いて、その時点でのアクセル開度と車両の走行速度とに対応する上記目標変速比を求め、上記トロイダル型無段変速機4の変速比をその目標変速比に調節する。一方、上記高速用クラッチ8が接続されると共に、上記低速用クラッチ7の接続を断たれた高速モード状態では、上記高速モード用変速マップを用いて、その時点でのアクセル開度と車両の走行速度とに対応する上記目標変速比を求め、上記トロイダル型無段変速機4の変速比をその目標変速比に調節する。
尚、上述の様な変速マップに基づいて求められる目標変速比は、前記油圧センサ34(34a、34b)や油温センサ39等により検出される、その時点での差圧(通過トルク)や油温等に応じて補正(微調整)する事ができる。この様に差圧(通過トルク)や油温等に応じて目標変速比を補正すれば、その時点の運転状況により合致した変速比(延いては速度比)の調節(変速制御)を行える。又、前述の図22〜23に示した従来構造の場合には、変速比補正用電磁弁19を設け、この変速比補正用電磁弁19により差圧シリンダ23(を構成するロッド)を変位させ、変速比制御弁22(図22〜23参照)の流路を切り換える事により、例えば車両の停止時並びに発進時等の、ギヤードニュートラル状態乃至はその近傍の状態で必要とされる変速比の補正(微調整)を行っていた。これに対して、本参考例の場合には、この様な補正を行う為の変速比補正用電磁弁19や差圧シリンダ23、補正用制御弁24a、24b(図22〜23参照)を設けていない。但し、本参考例の場合には、上述の様な、車両の停止時や発進時等の、ギヤードニュートラル状態乃至はその近傍の状態で必要とされる変速比の補正(微調整)を、前記ステッピングモータ17で行える様にしている。即ち、必要な変速比の補正量(油温等に基づく補正も含む)を制御器16で算出すると共に、この算出された補正量に応じて上記目標変速比を補正し、この補正した目標変速比に調節すべく、上記ステッピングモータ17を駆動する様にしている。
又、前述の図22〜23に示した従来構造の場合は、低速用、高速用各クラッチ7、8の接続状態の切り換え(低速モードと高速モードとの切り換え)を、1個のシフト用電磁弁20(図22〜23)により行っていたのに対して、本参考例の場合には、低速クラッチ用、高速クラッチ用各電磁弁44、45(2個の電磁弁44、45)により行う。即ち、これら低速クラッチ用、高速クラッチ用各電磁弁44、45を、ソレノイドへの通電に基づいてスプールをそれぞれ変位させるものとし、このスプールの変位に基づき、上記低速用、高速用各クラッチ7、8の油圧室内への圧油の導入状態を調節し、これら低速用、高速用各クラッチ7、8の断接状態を切り換える様にしている。尚、上記低速クラッチ用、高速クラッチ用各電磁弁44、45の開度(duty[%]:単位時間当たりの開いている時間の割合)と、当該クラッチの締結圧(クラッチ圧)とは、例えば図5に示す関係を有する。
この様な本参考例の場合は、低速モードと高速モードとの間のモード切換を、次の様に行う。即ち、低速モード(低速用クラッチ7のみが接続された状態)で走行中、この低速モードから高速モードにモード切換を行う場合は、先ず、それまで接続を断たれていた高速用クラッチ8を接続してから、それまで接続されていた低速用クラッチ7の接続を断つ。一方、高速モード(高速用クラッチ8のみが接続された状態)で走行中、この高速モードから低速モードにモード切換を行う場合は、先ず、それまで接続を断たれていた低速用クラッチ7を接続してから、それまで接続されていた高速用クラッチ8の接続を断つ。この様に、それまで接続を断たれていた一方のクラッチ(高速用クラッチ8、又は、低速用クラッチ7)を接続してから、同じくそれまで接続されていた他方のクラッチ(低速用クラッチ7、又は、高速用クラッチ8)の接続を断つ機能を持たせる事により、モード切換時にこれら両クラッチ7、8が同時に接続されている時間を設定している。
更に、本参考例の場合には、この様なモード切換時に接続される一方のクラッチ7、8、即ち、低速モードから高速モードにモード切換を行う場合には高速用クラッチ8を、或は、高速モードから低速モードにモード切換を行う場合には低速用クラッチ7を、上述の様なモード切換を開始する以前(一方のクラッチ7、8を完全に接続させる為の本接続を開始する以前)に、その時点での運転状況(車両状態、走行状態)に応じて、仮接続させる機能を、前記制御器16に持たせている。尚、この仮接続とは、上記一方のクラッチ7、8を、そのクラッチ板同士の隙間がなくなる方向に変位させ、これらクラッチ板同士の間で実質的に動力の伝達が行われず、且つ、引き摺りトルクを許容できる締結圧で接続(仮接続)させる事を言う。より具体的には、上記一方のクラッチ7、8の油圧室46、47に、そのクラッチ板同士(例えばセパレータプレート及びコアプレート)をその隙間がなくなるまで変位(ストローク)させられるが、これらクラッチ板同士の間で動力の伝達が行われない程度の油圧を送り込む(与圧する、プリチャージする)事を言う。例えば、前述の図5に示す様な、低速クラッチ用、高速クラッチ用各電磁弁44、45により低速用、高速用各クラッチ7、8の接続を行う場合には、これら各電磁弁44、45の開度を14%にし、上記締結圧が130KPa程度となる様にする。尚、この様に低速クラッチ用、高速クラッチ用各電磁弁44、45の開度を14%にする理由は後述する。
本参考例の場合は、トロイダル型無段変速機4の変速比(例えば、入力側、出力側各ディスク10、11の回転速度から求められる実変速比)に応じて、上記仮接続を行う様にしている。即ち、本参考例の場合は、前述の図4に示す様に、上記モード切換を、上記トロイダル型無段変速機4の変速比が増速比で0.46(モード切換ポイント、回転同期点、最大減速状態)で行う様にすると共に、このモード切換ポイントよりも手前の変速状態、即ち、増速比で0.6以下の状態で、上記仮接続(プリチャージ制御、与圧制御)を行う様にしている。この様な仮接続を行う為に、前記制御器16が備える機能(プリチャージ制御機能、与圧制御機能)に就いて、図3のフローチャートを参照しつつ説明する。尚、このフローチャートに示した作業は、例えばイグニッションスイッチがONされてからOFFされるまでの間、繰り返し(自動的に)行われる。
先ず、上記制御器16は、ステップ1で、シフトレバーの選択位置が前進状態(Dレンジ、必要に応じてLレンジ)か否かを判定する。この判定は、シフトレバーの位置を検出する為のポジションスイッチ43の検出信号に基づいて行う。このステップ1で、上記シフトレバーの選択位置が前進状態でない{非走行状態(P、Nレンジ)又は後退状態(Rレンジ)である}と判定された場合には、(後退状態であっても、低速モードのままでモード切換は行われないので)そのまま終了すると共に、開始に戻る。一方、このステップ1で、上記シフトレバーの選択位置が前進状態であると判定された場合には、続くステップ2で、車両が走行しているか否か、例えばこの車両の走行速度が1km/h以上(現在の車速≧1km/h)であるか否かを判定する。この判定は、例えば車輪の回転速度に比例する出力軸9の回転速度を検出する為の、出力軸回転センサ38の検出信号に基づいて行う。このステップ2で、上記車両が走行していない(現在の車速<1km/h)と判定された場合には、(低速モードのまま、高速モードへの切換は行われないので)そのまま終了すると共に、開始に戻る。
一方、このステップ2で、上記車両が走行していると判定された場合には、続くステップ3に進み、現在の走行モードを判定する。具体的には、現在の走行モードが低速モードか否かを判定する。この判定は、前記低速クラッチ用、高速クラッチ用各電磁弁44、45の開閉状態(を制御する制御器16の制御信号)に基づいて行う。このステップ3で、現在の走行モードが低速モードであると判定された場合には、ステップ4に進む。このステップ4では、目標変速比に応じて調節されるトロイダル型無段変速機4のその時点での(現在の)変速比(実変速比、eCVU)が、予め設定された仮接続を行うべき値、即ち、増速比で0.6以下であるか否かを判定する。この判定は、例えば前記入力側、出力側各回転センサ36、37の検出信号に基づいて求められる実変速比(eCVU)が、増速比で0.6以下(eCVU≦0.6)であるか否かにより行う事ができる。
この様なステップ4で、上記トロイダル型無段変速機4の実変速比(eCVU)が予め設定された仮接続を行うべき値に調節されていない(eCVU>0.6)と判定された場合には、ステップ5に進み、一方のクラッチである高速用クラッチ8を接続が完全に断たれた状態にする。即ち、この高速用クラッチ8の断接状態(締結圧)を調節する為の高速クラッチ用電磁弁45の開度を0[%]とする。そして、終了に進むと共に、開始に戻る。一方、上記ステップ4で、上記実変速比が上記仮接続を行うべき値に調節されている(eCVU≦0.6)と判定された場合には、ステップ6に進み、上記一方のクラッチである高速用クラッチ8を仮接続する。即ち、この高速用クラッチ8の断接状態(締結圧)を調節する為の高速クラッチ用電磁弁45の開度を、例えば14[%]にする。そして、続くステップ7に進み、上記実変速比(eCVU)が、予め設定されたモード切換を行うべき値(モード切換ポイント、回転同期点)に調節されたか否かを判定する。この判定は、この実変速比が、最大減速状態(例えば増速比で0.46以下、eCVU≦0.46)になったか否かにより行う事ができる。
この様なステップ7で、上記トロイダル型無段変速機4の実変速比が予め設定されたモード切換を行うべき値(モード切換ポイント)に調節されていない(eCVU>0.46)と判定された場合には、終了すると共に、開始に戻る。一方、このステップ7で、モード切換を行うべき値(モード切換ポイント)に調節されている(eCVU≦0.46)と判定された場合には、低速モードから高速モードへのモード切換を許可する。即ち、ステップ8に進み、前記高速用クラッチ8を接続(本接続)すると共に、前記低速用クラッチ7の接続を断つ。尚、この様なモード切換は、前述した様に、このモード切換で接続(本接続)される一方のクラッチである高速用クラッチ8を完全に接続してから、同じくそれまで接続されていた他方のクラッチである低速用クラッチ7の接続を断つ事により、これら低速用、高速用両クラッチ7、8が同時に接続されている時間が存在する様にする。
一方、前記ステップ3で、現在の走行モードが高速モードであると判定された場合には、ステップ9に進む。このステップ9では、目標変速比に応じて調節されるトロイダル型無段変速機4の現在の変速比(実変速比、eCVU)が、予め設定された仮接続を行うべき値、即ち、増速比で0.6以下(eCVU≦0.6)であるか否かを判定する。この様なステップ9で、上記実変速比(eCVU)が予め設定された仮接続を行うべき値に調節されていない(eCVU>0.6)と判定された場合には、ステップ10に進み、一方のクラッチである低速用クラッチ7を接続が完全に断たれた状態となる様にする。即ち、この低速用クラッチ7の断接状態(締結圧)を調節する為の低速クラッチ用電磁弁44の開度を0[%]とする。そして、終了に進むと共に、開始に戻る。一方、上記ステップ9で、上記実変速比が上記仮接続を行うべき値に調節されている(eCVU≦0.6)と判定された場合には、ステップ11に進み、上記一方のクラッチである低速用クラッチ7を仮接続する。即ち、この低速用クラッチ7の断接状態(締結圧)を調節する為の低速クラッチ用電磁弁44の開度を、例えば14[%]とする。
そして、続くステップ12に進み、上記実変速比(eCVU)が、予め設定されたモード切換を行うべき値(モード切換ポイント、回転同期点)に調節されたか否かを判定する。この判定は、前述のステップ7と同様に、上記実変速比(eCVU)が、最大減速状態(例えば増速比で0.46以下、eCVU≦0.46)になったか否かにより行う。この様なステップ12で、上記トロイダル型無段変速機4の実変速比(eCVU)が予め設定されたモード切換を行うべき値(モード切換ポイント)に調節されていない(eCVU>MP)と判定された場合には、終了すると共に、開始に戻る。一方、このステップ12で、モード切換を行うべき値(モード切換ポイント)に調節されている(eCVU≦0.46)と判定された場合には、高速モードから低速モードへのモード切換を許可する。即ち、ステップ13に進み、前記低速用クラッチ7を接続(本接続)すると共に、前記高速用クラッチ8の接続を断つ。尚、このモード切換も、前述した様に、このモード切換で接続(本接続)される一方のクラッチである低速用クラッチ7を完全に接続してから、同じくそれまで接続されていた他方のクラッチである高速用クラッチ8の接続を断つ事により、これら低速用、高速用両クラッチ7、8が同時に接続されている時間が存在する様にする。
上述の様な本参考例の無段変速装置によれば、簡素な構成で、第一のモードである低速モードと第二のモードである高速モードとのモード切換を、滑らか、且つ、迅速に行える。即ち、モード切換以前から、このモード切換の際に接続される一方のクラッチ(低速用クラッチ7、又は、高速用クラッチ8)を仮接続しておく(与圧しておく、プリチャージしておく)為、このモード切換時に、この一方のクラッチ7、8を迅速に接続(本接続)できる。この為、このモード切換の際に、両方のクラッチ7、8を同時に接続する時間を確保しつつ、このモード切換に要する時間の低減を図れる。図6のグラフは、本参考例の様な仮接続を行わない場合の、低速モードから高速モードへのモード切換時の、低速用、高速用各クラッチ7、8のクラッチ圧(締結圧)の変化の状態を示している。この図6のグラフから明らかな様に、仮接続を行わない場合には、モード切換で接続される一方のクラッチである高速用クラッチ8のクラッチ圧が、略0kPaの状態(接続が完全に断たれた状態)から100kPaに達するまでに一定時間(約0.1秒程度)を要すると共に、この値から一定時間(約0.2秒)、130kPaまで緩徐に上昇してから、この高速用クラッチ8の締結圧が急激に上昇する。そこで、本参考例の場合には、上述した様に、トロイダル型無段変速機4の変速比がモード切換ポイントに達する以前から、次に接続すべきクラッチである上記高速用クラッチ8を仮接続しておく。
即ち、上記モード切換ポイントに達する以前に、前述の高速クラッチ用電磁弁45の開度を、図5に示す様に14%にする事により、上記高速用クラッチ8の締結圧(クラッチ圧)を、この締結圧が急激に上昇し始める開始圧力である、130kPaにしておく。この為、上記トロイダル型無段変速機4の変速比がモード切換ポイントに達した際に、上記高速用クラッチ8を、締結圧が130KPaの状態から接続(本接続)させられる。即ち、図6のA点の状態から、この高速用クラッチ8の接続(本接続)を行える為、この高速用クラッチ8と低速用クラッチ7とが同時に接続される状態(図6のB点の状態)になるまでに、約0.1〜0.2秒程度しか時間を要しない。要するに、モード切換を開始してから両クラッチ7、8が同時に接続された状態となるまで、仮接続をしない場合には約0.5秒程度の時間を要するのに対し、本参考例の様な仮接続をしている場合には、約0.1〜0.2秒程度の時間を要するだけで済む。
この為、モード切換の際に、両方のクラッチ7、8を同時に接続する時間を確保しつつ、このモード切換に要する時間の低減を図れる。従って、変速ショックの防止を図りつつ、加速の途切れ等を防止でき、滑らかなモード切換を迅速に行える。しかも、前述の特許文献11に記載された構造の様な、モード切換を開始する変速比を微妙に調節する等の制御を必要としない為、このモード切換の制御が複雑になる事も防止できる(簡素に構成できる)。又、本参考例の場合には、トロイダル型無段変速機4の変速比に応じて仮接続を行っている為、この変速比がモード切換を行うべき変速比(モード切換ポイント)に達する以前に、このモード切換で接続される一方のクラッチ7、8を確実に仮接続させておく事ができる。
[参考例の第2例]
図7〜8は、本発明に関する参考例の第2例を示している。上述した様に、参考例の第1例の場合は、トロイダル型無段変速機4の変速比に応じて、仮接続(与圧、プリチャージ)を行うか否かの判定を行う(例えば図3のステップ4、9参照)。これに対して、本参考例の場合には、図7のステップ4、9に示す様に、その時点での(現在の)車速とアクセル開度とに応じて、モード切換で接続される一方のクラッチ(低速用クラッチ7、高速用クラッチ8)の仮接続を行うか否か(与圧制御を行うべき範囲内であるか否か)の判定を行う。即ち、本参考例の場合には、ステップ4、9で、その時点での車速とアクセル開度との関係が、図8に斜線で示す範囲内の状態であると判定される場合に、ステップ6、11に進み、上記一方のクラッチ7、8の仮接続(与圧制御、プリチャージ制御)を行う。これに対して、上記ステップ4、9で、その時点での車速とアクセル開度との関係が、上記図8の斜線で示した範囲外の状態であると判定された場合には、ステップ5、10に進み、上記一方のクラッチ7、8の接続を完全に断つ様にしている。
尚、上記図8で実線Xは、低速モードから高速モードにモード切換を行う場合の、このモード切換を行うべき車速とアクセル開度との関係を、同じく実線Yは、高速モードから低速モードにモード切換を行う場合の、このモード切換を行うべき車速とアクセル開度との関係を、それぞれ示している。本参考例の場合には、この様なモード切換を行うべき車速とアクセル開度との関係を表す実線X、Yの近傍の状態(図8で斜線で示す範囲内の状態)で、上記一方のクラッチ7、8を仮接続する。尚、この様な仮接続を行うか否かを判定する為の、図8に示す様なアクセル開度と車速との関係は、予め制御器16のメモリに、マップ(MAP)や式等として記憶させておく。
その他の部分の構成及び作用は、上述した参考例の第1例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
[参考例の第3例]
図9は、本発明に関する参考例の第3例を示している。前述した参考例の第1例の場合は、トロイダル型無段変速機4(図1参照)の変速比がモード切換ポイント近傍(増速比で0.6以下)の状態で、仮接続(与圧、プリチャージ)を行う様にしている(例えば図3のステップ4、9参照)。又、これと共に、仮接続の締結圧(クラッチ圧)の値を一定、即ち、130kPa{低速用、高速用各クラッチ用電磁弁44、45(図1、2参照)のduty開度を14%}にしている(例えば図3のステップ6、10参照)。これに対して、本参考例の場合には、その時点での(現在の)運転状況(を表す状態量であるトロイダル型無段変速機4の変速比)に応じて、仮接続の締結圧の大きさ(に対応する低速用、高速用各クラッチ用電磁弁44、45のduty開度)を調節する様にしている。
即ち、本参考例の場合には、図9のステップ4、9に示す様に、その時点でのトロイダル型無段変速機4の変速比が、モード切換ポイント(増速比で0.46)から大きく離れた値でも、例えば増速比で1.8以下の状態である場合に、続くステップ6、11に進み、仮接続を行う様にしている。そして、このステップ6、11で、下記の表1〜2に示す様に、その時点での変速比に応じた締結圧(に対応する低速用、高速用各クラッチ用電磁弁44、45の開度)で、仮接続を行う様にしている。尚、下記の表1は、低速モードで運転中の、高速用クラッチ8(図2参照)のクラッチ圧に対応する、高速クラッチ用電磁弁45の開度(duty%)を示している。この様な表1は、ステップ6で用いる。又、下記の表2は、高速モードで運転中の、低速用クラッチ7(図2参照)の締結圧に対応する、低速クラッチ用電磁弁44の開度を示している。この様な表2は、ステップ11で用いる。
本参考例の場合には、上記変速比が、増速比で1.8から0.46(モード切換ポイント)までの状態で、仮接続を行うと共に、この仮接続の締結圧(に対応する開度)を、この0.46に近付く程大きくしている。又、上記低速クラッチ用、高速クラッチ用各電磁弁44、45の開度と上記低速用、高速用各クラッチ7、8の締結圧(クラッチ圧)は、例えば、前述の図5に示す関係を有する。尚、上記表1〜2に示す様な、トロイダル型無段変速機4の変速比と最適な締結圧(に対応する開度)との相関関係は、制御器16(図1参照)のメモリに、マップ(MAP)や式等として記憶させておく。
上述の様に、運転状況に応じて仮接続の締結圧(に対応する開度)を調節する本参考例の場合には、その時点でのトロイダル型無段変速機4の変速比がモード切換ポイントから離れた状態でも、小さな締結圧で仮接続させておく事ができる。この為、急な操作時にも(変速比がモード切換ポイントに向けて急に変位しても)、次に接続されるクラッチである一方のクラッチの接続(本接続)を迅速に行える(モード切換に要する時間を確実に短縮できる)。尚、本参考例の場合は、上記表1〜2に応じて仮接続を行う場合に、低速クラッチ用、高速クラッチ用各電磁弁44、45の開度を12%以下の状態とする。この状態では、上記図5に示す様に、締結圧(クラッチ圧)は略0のままとなる。この様な、低速クラッチ用、高速クラッチ用各電磁弁44、45の開度は0ではないのに、締結圧が0である状態は、低速用、高速用各クラッチ7、8を構成するクラッチ板同士が互いに近付く方向に変位しているが(例えば、クラッチ板同士が当接しているが)、締結圧としては現れていない(殆ど0に等しい)状態と言える。言い換えれば、上記低速クラッチ用電磁弁44又は高速クラッチ用各電磁弁45が作動(ソレノイドが微振動)し、極く僅かの圧油が低速用クラッチ7の油圧室46内又は高速用クラッチ8の油圧室47(図2参照)内に導入されているが、締結圧としては現れていない(殆ど0に等しい)状態と言える。この様に締結圧としては現れていない状態でも、上記低速クラッチ用電磁弁44又は高速クラッチ用各電磁弁45は作動(ソレノイドが微振動)している為、これら各電磁弁44、45の動き出しが遅れる事を防止でき、次に接続されるクラッチである一方のクラッチ7、8の接続(本接続)をより迅速に行える(モード切換に要する時間をより確実に短縮できる)。
その他の部分の構成及び作用は、前述した参考例の第1例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
[参考例の第4例]
図10は、本発明に関する参考例の第4例を示している。上述した様に、参考例の第3例の場合には、その時点での(現在の)トロイダル型無段変速機4の変速比に応じて、モード切換で接続される一方のクラッチの仮接続の締結圧(与圧、プリチャージ)の大きさを調節する。これに対して、本参考例の場合には、その時点でのアクセル開度と車速とに応じて、モード切換で接続される一方のクラッチの仮接続の大きさを調節する。具体的には、低速モードで運転中の場合は、ステップ4で、下記の表3に基づいて、その時点でのアクセル開度と車速とに対応する締結圧(に対応する高速クラッチ用電磁弁45の開度)を求める。そして、続くステップ6で、求めた締結圧(に対応する開度)で仮接続を行う。尚、本参考例の場合は、ステップ5を省略する事もできる。
一方、高速モードで運転中の場合は、ステップ9で、下記の表4に基づいて、その時点でのアクセル開度と車速とに対応する締結圧(に対応する低速クラッチ用電磁弁44の開度)を求める。そして、続くステップ11で、求めた締結圧(に対応する開度)で仮接続を行う。尚、本参考例の場合は、ステップ10を省略する事もできる。
その他の部分の構成及び作用は、前述した
参考例の第3例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
[参考例の第5例]
図11〜14は、本発明に関する参考例の第5例を示している。本参考例の場合には、所定の運転状況の場合に、次のモード切換時に接続されるクラッチである一方のクラッチを仮接続(与圧、プリチャージ)せずに完全に断つ(締結圧を0にする、開度を0%にする)機能を、制御器16(図1参照)に持たせている。即ち、前述の参考例の第2例の場合には、その時点での(現在の)運転状況が、図8に斜線で示した範囲内の状態である場合に、上記一方のクラッチを仮接続する。但し、例えばこの図8の斜線で示した範囲内の状態である場合でも、その時点での運転状況によってはモード切換が行われない(モード切換が行われる運転状況となるまでに時間を要する)と考えられる状態がある。そこで、本参考例の場合には、この様な運転状況の場合には、仮接続を行わない様にする。即ち、本参考例の場合には、その時点での(現在の)車速とアクセル開度との関係が、図14で実線Jと実線Kとに挟まれた斜線で示す範囲内の状態でも、同図に斜格子L、Mで示す範囲内の状態の場合には、モード切換が行われない(モード切換が行われる運転状況となるまでに時間を要する)と判定し、この範囲では仮接続を行わない様にする。
この為に、
本参考例の場合には、図11に示す様に、ステップ3で低速モードと判定され、ステップ4−1に進むと、その時点での車速(SPEED[Km/h])が所定の値(SPD_LH[Km/h])以上である(SPEED≧SPD_LH)か否かを、下記の表5に基づいて判定する。
即ち、上記ステップ4−1では、上記表5に基づいて、その時点での車速(SPEED)が、同じくその時点でのアクセル開度(ACCEL[%])に対応する、所定の値(SPD_LH)以上である(SPEED≧SPD_LH)か否かを判定する。そして、このステップ4−1で、その時点での車速が所定の値よりも小さい(SPEED<SPD_LH)と判定された場合、即ち、図14で実線Jよりも左側の状態(斜線の範囲から外れた状態)であると判定された場合には、ステップ5に進み、一方のクラッチである高速用クラッチ8(図2参照)を接続が完全に断たれた状態にする。一方、上記ステップ4−1で、その時点での車速が所定の値以上である(SPEED≧SPD_LH)と判定された場合には、ステップ4−2に進み、その時点での車速とアクセル開度とから、仮接続を行う必要があるか否かの判定(与圧制御不要領域であるか否かの判定)を行う。
具体的には、図12に示す様に、先ず、ステップ4−2−1で、アクセル開度が10[%]以下である(アクセルペダルの踏み込み量が少ない乃至は完全に開放されている)か否かを判定する。このステップ4−2−1で、アクセル開度が10[%]以下ではない(ACCEL>10%)と判定された場合には、ステップ4−2−2に進み、与圧制御が必要(仮接続を行う必要がある)と判定し、終了に進むと共に、図11のステップ4−2からステップ6に進む。要するに、現在のアクセル開度と車速との関係が、上記図14で斜線で示す範囲内の状態である為、仮接続を行うべく上記ステップ6に進む。一方、上記ステップ4−2−1で、アクセル開度が10[%]以下である(ACCEL≦10%)と判定された場合には、続くステップ4−2−3に進み、その時点での車速(SPEED)が第一の閾値(NOT_LH)よりも小さい(SPEED<NOT_LH)か否かを判定する。尚、この第一の閾値(NOT_LH)は、例えば20[Km/h]とする事ができる。又、この第一の閾値(NOT_LH)はチューニング値であり、例えばエンジン1(図1参照)の特性やその時点でのアクセル開度、モード切換を行う車速等を勘案して、所望の性能を得られる様に(例えば図14の斜格子Lで示す部分の状態で与圧制御不要と判定できる様に)調整する。
何れにしても、上記ステップ4−2−3で、その時点での車速(SPEED)が、上記第一の閾値(NOT_LH)以上である(SPEED≧NOT_LH)と判定された場合には、上記ステップ4−2−2に進み、与圧制御が必要(仮接続を行う必要がある)と判定し、終了に進むと共に、図11のステップ4−2からステップ6に進む。要するに、現在のアクセル開度と車速との関係が、上記図14で斜線で示す範囲内の状態である為、仮接続を行うべく上記ステップ6に進む。一方、上記ステップ4−2−3で、その時点での車速(SPEED)が、上記第一の閾値(NOT_LH)よりも小さい(SPEED<NOT_LH)と判定された場合には、ステップ4−2−4に進み、与圧制御が不要(仮接続を行う必要がない)と判定し、終了に進むと共に、図11のステップ4−2からステップ5に進む。要するに、現在のアクセル開度と車速との関係が、上記図14で左下の斜格子Lで示す範囲内の状態である為、一方のクラッチである高速用クラッチ8を接続が完全に断たれた状態(高速クラッチ用電磁弁45の開度を0%)にする。
一方、前記ステップ3で高速モードと判定され、ステップ9−1に進むと、その時点での車速(SPEED[Km/h])が所定の値(SPD_HL[Km/h])以下である(SPEED≦SPD_HL)か否かを、下記の表6に基づいて判定する。
即ち、上記ステップ9−1で、上記表6に基づいて、その時点での車速(SPEED)が、同じくその時点でのアクセル開度(ACCEL[%])に対応する、所定の値(SPD_HL)以下である(SPEED≦SPD_HL)か否かを判定する。そして、このステップ9−1で、その時点での車速が所定の値よりも大きい(SPEED>SPD_HL)と判定された場合、即ち、図14で実線Kよりも右側の状態(斜線の範囲から外れた状態)であると判定された場合には、ステップ10に進み、一方のクラッチである低速用クラッチ7を接続が完全に断たれた状態にする。一方、上記ステップ9−1で、その時点での車速が所定の値以下である(SPEED≦SPD_HL)と判定された場合には、ステップ9−2に進み、その時点での車速とアクセル開度とから、仮接続を行う必要があるか否かの判定(与圧制御不要領域であるか否かの判定)を行う。
具体的には、図13に示す様に、先ず、ステップ9−2−1で、アクセル開度が70[%]以上である(アクセルペダルが大きく踏み込まれている)か否かを判定する。このステップ9−2−1で、アクセル開度が70[%]以上ではない(ACCEL<70%)と判定された場合には、ステップ9−2−2に進み、与圧制御が必要(仮接続を行う必要がある)と判定し、終了に進むと共に、図11のステップ9−2からステップ11に進む。要するに、現在のアクセル開度と車速との関係が、上記図14で斜線で示す範囲内の状態である為、仮接続を行うべく上記ステップ11に進む。一方、上記ステップ9−2−1で、アクセル開度が70[%]以上である(ACCEL≧70%)と判定された場合には、続くステップ9−2−3に進み、その時点での車速(SPEED)が第二の閾値(NOT_HL)よりも大きい(SPEED>NOT_HL)か否かを判定する。尚、この第二の閾値(NOT_HL)は、例えば80[Km/h]とする事ができる。又、この第二の閾値(NOT_HL)もチューニング値であり、例えばエンジン1の特性やその時点でのアクセル開度、モード切換を行う車速等を勘案して、所望の性能を得られる様に(例えば図14の斜格子Mで示す部分の状態で与圧制御不要と判定できる様に)調整する。
何れにしても、上記ステップ9−2−3で、その時点での車速(SPEED)が、上記第二の閾値(NOT_HL)以下である(SPEED≦NOT_HL)と判定された場合には、上記ステップ9−2−2に進み、与圧制御が必要(仮接続を行う必要がある)と判定し、終了に進むと共に、図11のステップ9−2からステップ11に進む。要するに、現在のアクセル開度と車速との関係が、上記図14で斜線で示す範囲内の状態である為、仮接続を行うべく上記ステップ11に進む。一方、上記ステップ9−2−3で、その時点での車速(SPEED)が、上記第二の閾値(NOT_HL)よりも大きい(SPEED>NOT_HL)と判定された場合には、ステップ9−2−4に進み、与圧制御が不要(仮接続を行う必要がない)と判定し、終了に進むと共に、図11のステップ9−2からステップ10に進む。要するに、現在のアクセル開度と車速との関係が、上記図14で右上の斜格子Mで示す範囲内の状態である為、一方のクラッチである低速用クラッチ7を接続が完全に断たれた状態(低速クラッチ用電磁弁44の開度を0%)にする。
この様な本参考例の場合には、所定の運転状況、即ち、モード切換が行われないと考えられる運転状況(図14に斜格子L、Mで示す範囲内の状態)の場合には、一方のクラッチ7、8を仮接続せずに完全に断つ(クラッチ用電磁弁44、45の開度を0%にする)為、この一方のクラッチ7、8が無駄に仮接続する状態となる事を防止できる。
その他の部分の構成及び作用は、前述した参考例の第3例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
[
参考例の第6例]
図15
は、本発明に関する参考例の第5例を示している。前述した
参考例の第5例では、図11に示す様に、ステップ4−1及び9−1で、その時点での(現在の)車速に基づいて、続くステップ4−2又は9−2に進むか否かの判定を行う。これに対して、
本参考例の場合には、図15のステップ4−1及び9−1に示す様に、その時点でのトロイダル型無段変速機の変速比に基づいて、続くステップ4−2又は9−2に進むか否かの判定を行う。即ち、
本参考例のステップ4−1では、下記の表7に基づいて、その時点でのトロイダル型無段変速機4の変速比(eCVU)が、同じくその時点でのアクセル開度(ACCEL[%])に対応する、所定の値(eCVU_LH)以下である(eCVU≦eCVU_LH)か否かを判定する。そして、所定の値以下である(eCVU≦eCVU_LH)と判定された場合に、ステップ4−2に進み、その時点での車速(SPEED)とアクセル開度(ACCEL)とから、仮接続を行う必要があるか否かの判定(与圧制御不要領域であるか否かの判定)を行う。
又、
本参考例のステップ9−1では、下記の表8に基づいて、その時点でのトロイダル型無段変速機4の変速比(eCVU)が、同じくその時点でのアクセル開度(ACCEL[%])に対応する、所定の値(eCVU_HL)以下である(eCVU≦eCVU_HL)か否かを判定する。そして、所定の値以下である(eCVU≦eCVU_HL)と判定された場合に、ステップ9−2に進み、その時点での車速(SPEED)とアクセル開度(ACCEL)とから、仮接続を行う必要があるか否かの判定(与圧制御不要領域であるか否かの判定)を行う。
その他の部分の構成及び作用は、上述した
参考例の第5例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
[参考例の第7例]
図16〜18は、本発明に関する参考例の第7例を示している。前述した各参考例では、自動変速機能により運転している状態で仮接続(与圧、プリチャージ)を行うのに対して、本参考例の場合には、手動変速機能により運転している状態で仮接続(与圧、プリチャージ)を行う。即ち、本参考例の場合には、トロイダル型無段変速機4(図1参照)の変速比、延いては無段変速装置の速度比の調節を、前述の段落[0028]〜同[0030]部分等で説明した様な、その時点での(現在の)運転状態に応じた最適な値に自動的に調節する自動変速機能により行う他、それぞれが予め設定された互いに異なる速度比である複数段{例えば4〜8段(4〜8速)}の値の何れかに、運転者の操作に基づいて調節する手動変速機能によっても行える様にしている{自動変速モード(オート変速モード)と手動変速モード(マニュアル変速モード)とを備えている}。
そして、少なくとも上記運転者の操作に基づいて選択される、上記自動変速機能(自動変速モード)と手動変速機能(手動変速モード)とのうちの何れかの機能(変速モード)に基づいて、上記変速比延いては速度比の調節を行える様にしている。この為に、本参考例の場合は、運転者が所望の変速段を選択する為(変速段を増速したり減速したりする為)のパドルシフトを設けている。そして、このパドルシフトの操作状況{増速(UP)、減速(DOWN)}を検出する為のパドルシフトスイッチ48の検出信号を、制御器16(図1参照)に入力している。又、これと共に、この検出信号に基づいて、この制御器16により、当該選択された変速段に対応する変速比延いては速度比に調節する様にしている。尚、この様なパドルシフトに代えて、シフトレバーにより変速段を選択{増速(UP)、減速(DOWN)}する様にしても良い。何れの場合にも、上記制御器16により、上記運転者の選択した変速段を検出し、この選択された変速段に対応する変速比延いては速度比に、ステッピングモータ17(図1〜2参照)の駆動に基づいて調節する。
更に、本参考例の場合は、上記変速段の何れか、具体的には第2段(第2速)の速度比を、モード切換を行う速度比に一致させている。そして、この第2段(第2速)に操作された状態で、それまで接続を断たれていた一方のクラッチ{低速モードで運転中の状態であれば高速用クラッチ8、或は、高速モードで運転中の状態であれば低速用クラッチ7(図2参照)}を仮接続する(与圧する、プリチャージする)機能を、上記制御器16に持たせている。尚、本参考例の場合も、「仮接続」は、上記一方のクラッチ7、8を、そのクラッチ板同士の隙間がなくなる方向に変位させ、これらクラッチ板同士の間で実質的に動力の伝達が行われず、且つ、引き摺りトルクを許容できる締結圧で接続(仮接続)させる事を言う。より具体的には、上記一方のクラッチ7、8の油圧室46、47(図2参照)に、そのクラッチ板同士(例えばセパレータプレート及びコアプレート)をその隙間がなくなるまで変位(ストローク)させられるが、これらクラッチ板同士の間で動力の伝達が行われない程度の油圧を送り込む(与圧する、プリチャージする)事を言う。
例えば、前述の図5に示す様な関係を有する低速クラッチ用、高速クラッチ用各電磁弁44、45(図1〜2参照)により、低速用、高速用各クラッチ7、8の接続を行う場合には、これら各電磁弁44、45の開度を例えば14%にし、上記締結圧が130KPa程度となる様にする。尚、この様に低速クラッチ用、高速クラッチ用各電磁弁44、45の開度を14%にする理由は、前述した通りである。又、上記仮接続をする場合の上記開度は、例えば14%よりも小さくする事もできる。例えば、この開度が12%以下の状態では、上記図5に示す様に、上記締結圧(クラッチ圧)は略0となるが、この様な状態でも、この開度が0%乃至はその近傍でなければ、上記低速クラッチ用電磁弁44又は上記高速クラッチ用電磁弁45は作動(ソレノイドが微振動)している為、これら各電磁弁44、45の動き出しが遅れる事を防止できる。この為、上記開度を、例えば7.5〜14%の値の何れかにする事もできるし、或は、その時点での運転状況に応じて(例えば、その時点でのアクセル開度や車速等に応じて)調節する(変化させる)事もできる。
何れにしても、本参考例の場合は、低速モードである第1段(第1速)で運転中に、上記一致させた変速段である第2段(第2速)に操作された場合に、トロイダル型無段変速機4の変速比をモード切換ポイント(回転同期点、例えば増速比で0.44)に調節すると共に、上記一方のクラッチである高速用クラッチ8を仮接続する(高速クラッチ用電磁弁45の開度を例えば14%にする)。一方、例えば高速モードである第3段(第3速)以上の変速段で運転中に、上記第2段(第2速)に操作された場合には、上記トロイダル型無段変速機4の変速比を上記モード切換ポイント(回転同期点、例えば増速比で0.44)に調節すると共に、上記一方のクラッチである低速用クラッチ7を仮接続する(低速クラッチ用電磁弁44の開度を例えば14%にする)。
上述の様な仮接続を行う為に、前記制御器16が備える機能(プリチャージ制御機能、与圧制御機能)に就いて、図16のフローチャートを参照しつつ説明する。尚、このフローチャートに示した作業は、例えばイグニッションスイッチがONされてからOFFされるまでの間、繰り返し(自動的に)行われる。
先ず、上記制御器16は、ステップ1〜2で、その時点での(現在の)運転モードが手動変速モード(マニュアル変速モード)か自動変速モードかを判定する。即ち、ステップ1では、手動変速モードと自動変速モードとを切り換える為のスイッチ(SW)がある場合に、このスイッチが何れの変速モードが選択されているかを読み込む。そして、続くステップ2に進み、その時点での変速モードが手動変速モードか否かを判定する。このステップ2では、上記スイッチにより判定する他、例えばシフトレバーが手動変速機能に基づく変速を行える位置(シフトレバーにより変速段の増速、減速が行える位置、或は、パドルシフトで変速を行う旨の選択位置)に切り換えられているか否かにより判定する事もできる。尚、パドルシフトの操作位置であれば、前記パドルシフトスイッチ48により、シフトレバーの操作位置であれば、ポジションスイッチ43(図1参照)により、それぞれ判定できる。
何れにしても、この様なステップ2で、その時点での運転モードが手動変速モードではない、即ち、自動変速モードであると判定された場合には、ステップ3に進み、自動変速モードに応じたクラッチ制御を行う。即ち、終了を介して開始に戻ると共に、前述した参考例の第1〜6例で説明した様な、変速比制御及びモード切換制御を行う。一方、上記ステップ2で、その時点での運転モードが手動変速モードであると判定された場合には、ステップ4に進む。このステップ4では、運転者の操作により要求されている変速段が何れであるかを判定する。この様な判定も、例えば上記パドルシフトスイッチ48やポジションスイッチ43により判定できる。そして、このステップ4で、第1段(第1速)が要求されていると判定された場合には、ステップ5に進み、低速用クラッチ7を接続すると共に、高速用クラッチ8の接続を断ち(開放し)、続く終了を介して開始に戻る。又、上記ステップ4で、第3段(第3速)以上の変速段が要求されていると判定された場合には、ステップ6に進み、高速用クラッチ8を接続すると共に、低速用クラッチ7の接続を断ち(開放し)、続く終了を介して開始に戻る。
一方、上記ステップ4で、第2段(第2速)が要求されていると判定された場合には、ステップ7に進み、その時点での(現在の)変速段が何れであるか否かを判定する。そして、このステップ7で、その時点での変速段が第1段(第1速)であると判定された場合には、シフトアップ変速により第2段(第2速)に変速する事が要求されていると判定できる為、ステップ8に進み、トロイダル型無段変速機4の変速比をモード切換ポイント(回転同期点)に調節する{無段変速装置の速度比を第2段(第2速)に対応する変速比に調節する}と共に、低速用クラッチ7を接続したまま、高速用クラッチ8の仮接続(与圧制御)を開始する。そして、終了を介して開始に戻る。一方、上記ステップ7で、その時点での変速段が第3段(第3速)以上であると判定された場合には、シフトダウン変速により第2段(第2速)に変速する事が要求されていると判定できる為、ステップ9に進み、トロイダル型無段変速機4の変速比をモード切換ポイント(回転同期点)に調節する{無段変速装置の速度比を第2段(第2速)に対応する変速比に調節する}と共に、高速用クラッチ8を接続したまま、低速用クラッチ7の仮接続(与圧制御)を開始する。そして、終了を介して開始に戻る。尚、上記ステップ7で、その時点での変速段が第2段(第2速)であると判定された場合には、何れかのクラッチが仮接続されている状態である為、終了を介して開始に戻る。
この様な本参考例の場合には、モード切換を滑らか、且つ、迅速に行う事と、伝達効率の低下を防止する事との両立を図れる。即ち、図17、18に示す様に、第2段(第2速)に操作された後、第3段(図17の場合)又は第1段(図18の場合)に操作される事により、モード切換が必要になった場合でも、上記第2段(第2速)の状態で一方のクラッチ(図17の場合は高速用クラッチ8、図18の場合は低速用クラッチ7)が仮接続(与圧、プリチャージ)されている為、モード切換時(第3段、又は、第1段に操作された際)に、上記一方のクラッチ7、8を迅速に接続(本接続)させられる。この為、このモード切換の際に、両方のクラッチ7、8を同時に接続する時間を確保しつつ、このモード切換に要する時間の低減を図れる。従って、変速ショックの防止を図りつつ、加速の途切れ等を防止でき、滑らかなモード切換を迅速に行える。しかも、本参考例の場合には、第2段(第2速)の状態で、上記一方のクラッチ7、8を仮接続する為、この一方のクラッチ7、8を介して動力の伝達は行われない。この為、この第2段(第2速)で運転中に、トロイダル型無段変速機4の変速比が変動する傾向になっても、この変速比の変動を許容する事ができ、前述した従来構造の様な変速比の変動が許容されない事による伝達効率の低下等を防止する事もできる。
その他の部分の構成及び作用は、前述した参考例の第1〜6例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
[実施の形態の1例]
図19〜21は、本発明の実施の形態の1例を示している。尚、本例の場合は、前述の特許文献2に模式的に記載された構造を具体化すると共に、軸方向寸法の増大を抑えつつ、クラッチの引き摺りトルクの低減(ドラッグロスの低減)を図るべく、低速用、高速用各クラッチ7、8の構造を工夫した点にある。先ず、本例の無段変速装置自体の構成を簡単に説明してから、本例の特徴である、低速用、高速用各クラッチ7、8の構造を説明する。本例の無段変速装置は、トロイダル型無段変速機4と3個の遊星歯車式変速機5a、5b、5cとを備える。そして、上記トロイダル型無段変速機4を構成する出力側ディスク(内側ディスク)11と、このトロイダル型無段変速機4に隣接して設けた第一遊星歯車式変速機5aを構成する第一太陽歯車49aとを、入力軸3の周囲に設置した中空回転軸50により連結している。又、上記第一遊星歯車式変速機5aを構成する第一キャリア51を、上記入力軸3に結合固定している。そして、この第一キャリア51に互いに同軸に支持されたステップピニオン式の第一遊星歯車52a、52bのうち、一方(トロイダル型無段変速機4に近い側で、図19〜21の左方)の第一遊星歯車52aを、上記第一太陽歯車49aに噛合させている。
これに対して、他方(トロイダル型無段変速機4から離れた側で、図19〜21の右方)の第一遊星歯車52bを、伝達軸53の一端部(図19〜21の左端部)に固定した別の第一太陽歯車49bに噛合させている。又、この伝達軸53は、その中間部に、第二遊星歯車式変速機5bを構成する第二太陽歯車54を設けると共に、その他端部(図19〜21の右端部)に、第三遊星歯車式変速機5cを構成する第三太陽歯車55を設けている。又、第二遊星歯車式変速機5bを構成する第二キャリア56は無段変速装置のケーシング57に固定されている。そして、上記第二太陽歯車54の回転を、上記第二遊星歯車式変速機5bを構成するリング歯車58と共に回転する高速側出力部材59と、この高速側出力部材59と出力軸9との間に設けた高速用クラッチ8とを介して、この出力軸9に取り出し自在としている。又、上記第三遊星歯車式変速機5cを構成する第三リング歯車60は、前記入力軸3に結合固定している。そして、上記第三太陽歯車55の回転を、上記第三遊星歯車式変速機5cを構成する第三キャリア71と共に回転する低速側出力部材61と、この低速側出力部材61と上記出力軸9との間に設けた低速用クラッチ7とを介して、この出力軸9に取り出し自在としている。尚、この様な無段変速装置の基本構成は、前記特許文献2に記載されている為、これ以上の詳しい説明は省略し、以下、本例の特徴である、上記低速用、高速用各クラッチ7、8の構造を説明する。
本例の場合には、これら低速用、高速用各クラッチ7、8を、それぞれ湿式多板式の油圧クラッチとしている。このうちの低速用クラッチ7は、複数のセパレータプレート(クラッチプレート)62a、62aと、複数のコアプレート(プレッシャプレート)63a、63aと、低速側ピストン部材64と、低速側リターンスプリング65と、低速側油圧室66とを備える。又、上記高速用クラッチ8は、同じく複数のセパレータプレート(クラッチプレート)62b、62bと、複数のコアプレート(プレッシャプレート)63b、63bと、高速側ピストン部材67と、高速側リターンスプリング68と、高速側油圧室69とを備える。そして、上記低速用クラッチ7の各セパレータプレート62a、62aを、上記低速側出力部材61に、上記高速用クラッチ8の各セパレータプレート62b、62bを、上記高速側出力部材59に、軸方向の変位を可能に、且つ、回転方向の変位を不能に、それぞれ支持している。又、上記低速用、高速用両クラッチ7、8の各コアプレート63a、63bを、互いに共通する出力部材である、上記出力軸9と共に回転する出力軸側出力部材70に、軸方向の変位を可能に、且つ、回転方向の変位を不能に、それぞれ支持している。尚、上記各セパレータプレート62a、62b及び上記各コアプレート63a、63bは、上記低速用クラッチ7と上記高速用クラッチ8とで同じものとしている(同種の部品としている)。
そして、減速比を大きくする低速モードを実現する際には、上記低速用クラッチ7の低速側油圧室66に圧油を導入する事により、低速側ピストン部材64を介して各セパレータプレート62a、62a及び各コアプレート63a、63aを互いに近付く方向に押圧し(低速側ピストン部材64と低速側止め輪72とにより挟持し)、これら両プレート62a、62a同士の間で動力の伝達を可能にする。この様な低速モードの際に、上記高速用クラッチ8は、高速側リターンスプリング68により高速側ピストン部材67が、高速側油圧室69の軸方向寸法が小さくなる方向に押し戻され、この高速用クラッチ8の各セパレータプレート62b、62b及び各コアプレート63b、63bが互いに隙間を介して対向する。一方、高速モードを実現する際には、上記高速用クラッチ8の高速側油圧室69に圧油を導入する事により、高速側ピストン部材67を介して各セパレータプレート62b、62b及び各コアプレート63b、63bを互いに近付く方向に押圧し(高速側ピストン部材67の端部に設けた押圧板74と高速側止め輪73とにより挟持し)、これら両プレート62b、63b同士の間で動力の伝達を可能にする。この様な高速モードの際に、上記低速用クラッチ7は、低速側リターンスプリング65により低速側ピストン部材64が低速側油圧室66の軸方向寸法が小さくなる方向に押し戻され、この低速用クラッチ7の各セパレータプレート62a、62a及び各コアプレート63a、63aが互いに隙間を介して対向する。尚、本例の場合には、上記低速用クラッチ7の各セパレータプレート62a、62a及びコアプレート63a、63aの数を、同じく上記高速用クラッチ7の数に比べて多くしている。この理由は、ギヤードニュートラル状態を実現できる上記低速モード時の伝達トルクが、パワースプリットモードを実現できる上記高速モード時の伝達トルクに比べて大きくなる為である。
更に、本例の場合には、接続を断った状態での、上記低速用クラッチ7を構成する各セパレータプレート62a、62a及び各コアプレート63a、63a同士の軸方向に関する隙間を、同じく高速用クラッチ8を構成する各セパレータプレート62b、62b及び各コアプレート63b、63b同士の軸方向に関する隙間よりも大きくしている。即ち、運転時に占める割合が大きいモードとなる上記高速モードを実現する際に接続を断たれる上記低速用クラッチ7の上記隙間を、同じく運転時に占める割合が小さいモードとなる上記低速モードを実現する際に接続を断たれる上記高速用クラッチ8の上記隙間に比べて、大きくしている。尚、本例の場合、上記「隙間」は、1枚当たりのセパレータプレート62a、62bとコアプレート63a、63bとの隙間を言う。要するに、本例の場合には、接続を断った状態で、上記低速用クラッチ7の軸方向両端部に存在するセパレータプレート62a又はコアプレート63aを互いに軸方向に最も離れた位置まで変位させた状態での、このセパレータプレート62a又はコアプレート63aの外側面同士の間隔をStとし、この低速用クラッチ7の各セパレータプレート62a、62a及び各コアプレート63a、63aの数をMtとすると共にそれぞれの厚さをHtとし、同じく接続を断った状態で、上記高速用クラッチ8の軸方向両端部に存在するセパレータプレート62b又はコアプレート63bを互いに軸方向に最も離れた状態まで変位させた状態での、このセパレータプレート62b又はコアプレート63bの外側面同士の間隔をSkとし、この高速用クラッチ8の各セパレータプレート62b、62b及び各コアプレート63b、63bの数をMkとすると共にそれぞれの厚さをHkとした場合に、{(St−Ht・Mt)/Mt}>{(Sk−Hk・Mk)/Mk}となる様に、各部の寸法を規制している。
この様な本例の場合には、軸方向寸法の増大を抑えつつ、クラッチの引き摺りトルクの低減(ドラッグロスの低減)を図れる。即ち、運転時に占める割合の大きい高速モードでの運転中に接続を断たれる上記低速用クラッチ7の軸方向に関する隙間を大きくしている為、この高速モードで空転するこの低速用クラッチ7の引き摺りトルクの低減を図れる。しかも、運転時に占める割合の小さい低速モードでの運転中に接続を断たれる上記高速用クラッチ8の軸方向に関する隙間は、上記低速用クラッチ7の隙間よりも小さくしている為、その分、軸方向寸法の低減を図れる。この為、軸方向寸法の増大を抑えつつ、引き摺りトルクの低減を図れる。
又、本例の場合には、上述した様に各セパレータプレート62a、62b及び各コアプレート63a、63bを、上記低速用クラッチ7と上記高速用クラッチ8とで同じものとしている為、部品の共通化によるコストの低減を図れる他、共通の出力部材である前記出力側出力部材70の外径を同じにでき、この出力軸側出力部材70の形成作業の容易化も図れる。
その他の部分の構成及び作用は、前述した参考例の第1〜7例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。