本発明は、プロジェクタ等の画像投射装置に用いられる照明光学系に関する。
画像投射装置では、光源からの照明光によって液晶パネル等の画像表示素子を照明する照明光学系を有し、画像表示素子で変調された光を投射光学系を介してスクリーン上に拡大投射する。
従来の画像投射装置では、画像表示素子に向かう照明光のうち該画像表示素子に対する入射角度が大きい成分をカットしたり画像表示素子に入射させたりすることで、投射画像のコントラストを可変としている。
例えば、特許文献1には、開口サイズが可変である開口絞りを有する照明光学系が開示されている。この可変開口絞りは、2枚のフライアイレンズのうち光源から遠い側のフライアイレンズ(第2のフライアイレンズ)の近傍に配置され、4枚の遮光板を移動させることによって第2のフライアイレンズへの照明光の入射領域を変化させる。これにより、照明光学系のFナンバーを変化させて投射画像のコントラストを変化させる。
特開2005−017500号公報
しかしながら、特許文献1にて開示された可変開口絞りを用いてコントラストを変更可能とする方法では、コントラストを大きく上げる際に照明光のうちかなり多くの部分をカットする必要がある。この結果、投射画像のコントラストは上がるが、輝度が大きく低下する。
本発明は、投射画像の輝度を大きく低下させることなく、コントラストを可変とすることができる照明光学系及びこれを用いた画像投射装置を提供する。
本発明の一側面としての照明光学系は、光源からの光束を、照明光学系を介して画像表示素子に導き、該画像表示素子からの光束を被投射面に投射する画像投射装置の前記照明光学系であって、前記光源からの光束を複数の光束に分割し、該複数の光束に複数の光源像を形成させる光束分割手段と、前記光束分割手段からの複数の光束を前記画像表示素子上において重畳させる集光手段と、前記集光手段よりも光源側に配置され、前記光束を圧縮する光束制御光学系を有し、前記光束制御光学系は、2つ以上の光学素子を含み、該2つ以上の光学素子のうち少なくとも2つの光学素子を光軸方向に移動させることで前記光束の圧縮率を変更することを特徴とする。
また、本発明の他の側面としての照明光学系は、光源からの光束を、照明光学系を介して画像表示素子に導き、該画像表示素子からの光束を被投射面に投射する画像投射装置の前記照明光学系であって、前記光源からの光束が入射するロッドインテグレータと、前記ロッドインテグレータからの光束を前記画像表示素子上に集光する集光手段と、前記集光手段よりも光源側に配置され、前記光束を圧縮する光束制御光学系を有し、前記光束制御光学系は、2つ以上の光学素子を含み、該2つ以上の光学素子のうち少なくとも2つの光学素子を光軸方向に移動させることで前記光束の圧縮率を変更することを特徴とする。
なお、上記照明光学系を含む画像投射装置も本発明の他の一側面を構成する。
本発明では、照明光学系における光束の圧縮率を変化させることで投射画像のコントラストを可変とする。これにより、コントラストを高くしても、照明光束が大きくカットされることはないので、投射画像の輝度の低下を少なくすることができる。したがって、投射画像のコントラストが可変でありながらも、明るく、かつ高いコントラストを有する画像をも投射可能な画像投射装置を実現することができる。
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
図21の(A),(B)には、後述する本発明の各実施例である照明光学系が用いられる液晶プロジェクタ(画像投射装置)の光学構成を示している。なお、(A)と(B)は該光学構成を互いに異なる方向から見た図である。
同図において、41は連続スペクトルで無偏光光(非偏光光)の白色光を発光する放電発光管(以下、単に発光管という)である。42は発光管41からの光を所定の方向に集光する放物面を有するリフレクタである。発光管41とリフレクタ42により光源ランプ1が構成される。リフレクタ42から射出する光束の大部分は、平行光束である。
100は各実施例の照明光学系であり、光源ランプ1からの照明光束を、後述する色分解合成光学系を介して、後述する画像表示素子に導く。照明光学系100の具体的な構成については後述する。照明光学系100は、光源ランプ1からの無偏光光を特定の偏光方向を有する直線偏光(ここでは、S偏光)に変換する偏光変換素子を含む。この偏光変換素子については、後述する。
47はランプ1からの光軸を、ほぼ90度(より詳しくは88度)折り曲げるための反射ミラーである。
58は青(B:例えば430〜495nm)と赤(R:例えば590〜650nm)の波長領域の光を反射し、緑(G:例えば505〜580nm)の波長領域の光を透過するダイクロイックミラーである。59は透明基板に偏光素子を貼り付けたG用の入射側偏光板であり、P偏光光のみを透過する。60は多層膜により構成された偏光分離面においてP偏光光を透過し、S偏光光を反射する第1偏光ビームスプリッタである。
61R,61G,61Bはそれぞれ、入射した光を反射するとともに画像変調する画像表示素子(画像形成素子又は空間光変調素子)としての赤用反射型液晶パネル、緑用反射型液晶パネル及び青用反射型液晶パネルである。62R,62G,62Bはそれぞれ、赤用1/4波長板、緑用1/4波長板及び青用1/4波長板である。
64aはR光の色純度を高めるためにオレンジ光を光源ランプ1に戻すトリミングフィルタである。64bは透明基板に偏光素子を貼り付けたRB用入射側偏光板であり、P偏光のみを透過する。
65はR光の偏光方向を90度変換し、B光の偏光方向は変換しない色選択性位相差板である。66は偏光分離面においてP偏光を透過し、S偏光を反射する第2偏光ビームスプリッタである。
68BはB用射出側偏光板(偏光素子)であり、B光のうちS偏光成分のみを整流する。68GはG光のうちS偏光成分のみを透過させるG用出側偏光板である。69はR光及びB光を透過し、G光を反射するダイクロイックプリズムである。
以上のダイクロイックミラー58〜ダイクロイックプリズム69により、色分解合成光学系が構成される。
本実施例において、照明光学系100に含まれる偏光変換素子は、無偏光光のうちP偏光成分をS偏光成分に変換し、S偏光成分をそのまま通過することで、S偏光を射出する。ここでいうP偏光とS偏光は、偏光変換素子における光の偏光方向を基準として述べている。一方、ダイクロイックミラー58に入射する光は、第1及び第2偏光ビームスプリッタ60,66での偏光方向を基準として考え、P偏光光であるとする。すなわち、本実施例では、偏光変換素子から射出された光をS偏光とするが、同じS偏光がダイクロイックミラー58に入射する場合はP偏光として定義する。
次に、光学的な作用について説明する。ここでは、白表示状態での光学的作用について説明する。
発光管41から発した光はリフレクタ42により所定の方向に集光される。リフレクタ42は放物面形状の凹面鏡を有し、放物面の焦点位置からの光は該放物面の対称軸に平行な光束となる。但し、発光管41からの光源は理想的な点光源ではなく、有限の大きさを有しているので、集光する光束には放物面の対称軸に平行でない光の成分も多く含まれている。これらの光束は、照明光学系100及び反射ミラー47を介してダイクロイックミラー58に入射する。ダイクロイックミラー58に入射する光は、照明光学系100に含まれる偏光変換素子(これについては後述する)によってS偏光とされている。
以下、ダイクロイックミラー58を透過したG光の光路について説明する。
ダイクロイックミラー58を透過したG光は、入射側偏光板59に入射する。G光はダイクロイックミラー58によって分解された後もP偏光(偏光変換素子を基準とする場合はS偏光)となっている。そして、G光は入射側偏光板59から射出した後、第1偏光ビームスプリッタ60に対してP偏光として入射し、その偏光分離面を透過してG用反射型液晶パネル61Gへと至る。
ここで、該プロジェクタのインターフェース25には、パーソナルコンピュータ、DVDプレーヤ、テレビチューナ等の画像供給装置80が接続されている。制御基板11は、インターフェース25を介して画像供給装置80から入力された画像情報に基づいて、反射型液晶パネル61R,61G,61Bを駆動し、これらに各色用の原画を形成させる。これにより、各反射型液晶パネルに入射した光は、反射されるとともに原画に応じて変調(画像変調)される。画像供給装置80とプロジェクタとにより画像表示システムが構成される。
G用反射型液晶パネル61Gにおいては、G光が画像変調されて反射される。画像変調されたG光のうちP偏光成分は、再び第1偏光ビームスプリッタ60の偏光分離面を透過して光源側に戻され、投射光から除去される。一方、画像変調されたG光のうちS偏光成分は、第1偏光ビームスプリッタ60の偏光分離面で反射され、投射光としてダイクロイックプリズム69に向かう。
このとき、すべての偏光成分をP偏光に変換した状態(黒を表示した状態)において、第1偏光ビームスプリッタ60とG用反射型液晶パネル61Gとの間に設けられた1/4波長板62Gの遅相軸を所定の方向に調整する。これにより、第1偏光ビームスプリッタ60とG用反射型液晶パネル61Gで発生する偏光状態の乱れの影響を小さく抑えることができる。
第1偏光ビームスプリッタ60から射出したG光は、ダイクロイックプリズム69に対してS偏光として入射し、該ダイクロイックプリズム69のダイクロイック膜面で反射して投射レンズ5へと至る。
一方、ダイクロイックミラー58で反射したR光とB光は、トリミングフィルタ64aに入射する。R光とB光はダイクロイックミラー58によって分解された後もP偏光となっている。そして、R光とB光は、トリミングフィルタ64aでオレンジ光成分がカットされた後、入射側偏光板64bを透過し、色選択性位相差板65に入射する。
色選択性位相差板65は、R光の偏光方向のみを90度回転させる作用を有し、これによりR光はS偏光として、B光はP偏光として第2偏光ビームスプリッタ66に入射する。
S偏光として第2偏光ビームスプリッタ66に入射したR光は、該第2偏光ビームスプリッタ66の偏光分離面で反射され、R用反射型液晶パネル61Rへと至る。また、P偏光として第2偏光ビームスプリッタ66に入射したB光は、該第2偏光ビームスプリッタ66の偏光分離面を透過してB用反射型液晶パネル61Bへと至る。
R用反射型液晶パネル61Rに入射したR光は、画像変調されて反射される。画像変調されたR光のうちS偏光成分は、再び第2偏光ビームスプリッタ66の偏光分離面で反射されて光源側に戻され、投射光から除去される。一方、画像変調されたR光のうちP偏光成分は、第2偏光ビームスプリッタ66の偏光分離面を透過して、投射光としてダイクロイックプリズム69に向かう。
また、B用反射型液晶パネル61Bに入射したB光は、画像変調されて反射される。画像変調されたB光のうちP偏光成分は、再び第2偏光ビームスプリッタ66の偏光分離面を透過して光源側に戻され、投射光から除去される。一方、画像変調されたB光のうちS偏光成分は、第2偏光ビームスプリッタ66の偏光分離面で反射して、投射光としてダイクロイックプリズム69に向かう。
このとき、第2偏光ビームスプリッタ66とR用,B用反射型液晶パネル61R,61Bとの間に設けられた1/4波長板62R,62Bの遅相軸を調整することにより、G光の場合と同じように、R,B光それぞれの黒表示状態での調整を行うことができる。
こうして1つの光束に合成されて第2偏光ビームスプリッタ66から射出したR光とB光は、射出側偏光板68Bで検光されてダイクロイックプリズム69に入射する。また、R光はP偏光のまま射出側偏光板68Bを透過して、ダイクロイックプリズム69に入射する。
射出側偏光板68Bで検光されることにより、B光は、該B光が第2偏光ビームスプリッタ66、B用反射型液晶パネル61B及び1/4波長板62Bを通ることによって生じた無効な成分がカットされた光となる。
そして、ダイクロイックプリズム69に入射したR光とB光は、ダイクロイック膜面を透過して、該ダイクロイック膜面にて反射したG光と合成されて投射レンズ5に至る。
そして、合成されたR,G,B光は、投射レンズ5によってスクリーンなどの被投射面に拡大投射される。
図1には、本発明の実施例1である照明光学系100のXZ断面を示す。図中の101は光源であり、図21中の発光管41に相当する。102は放物面リフレクタであり、図21中のリフレクタ42に相当する。
103,104,105はそれぞれ光学素子としての第1のレンズ、第2のレンズ、第3のレンズであり、これら第1〜第3のレンズ103〜105により光束制御光学系が構成される。
106は光束分割手段としての第1のフライアイレンズ(レンズアレイ)であり、複数のレンズセルが2次元方向に配列されて構成されている。この第1のフライアイレンズ106は、光源からの光束を複数の光束に分割(光束分割)すると共に、後述する第2のフライアイレンズ107や偏光変換素子108の近くに光源像(二次光源像)を形成する。107は第2のフライアイレンズ(レンズアレイ)であり、複数のレンズセルが2次元方向に配列されて構成されている。
108は偏光変換素子である。109は集光手段としてのコンデンサーレンズである。前述した第1〜第3のレンズ103〜105は、コンデンサーレンズ109よりも光源側に配置されている。110は液晶パネル(画像表示素子)であり、図21中の反射型液晶パネル61R,61G,61Bに相当する。O1は照明光学系100の光軸を示す。
図2には、偏光変換素子108の構造(XZ断面)を示している。偏光変換素子108は、複数の偏光分離面31と、複数の反射面32と、複数の1/2波長板33と、複数の遮光板34と、複数の第1透光性部材35と、複数の第2透光性部材36とを有する。
第1透光性部材35及び第2透光性部材36は、偏光分離面31と反射面32との間に交互に配置されている。遮光板34は、第1の透光性部材35の入射面に貼り付けられている。1/2波長板33は、第2の透光性部材36の射出面に貼り付けられている。
光源101からの光束であって第1のフライアイレンズ106により分割され、第2のフライアイレンズ107を通過した複数の光束は、第1のフライアイレンズ106のレンズセル列に対応した列の第2透光性部材36に入射する。図2には、該複数の光束のうち1つの光束R31を示している。
第2透光性部材36に入射した光束R31は、偏光分離面31に入射し、これを透過するP偏光成分R32とここで反射されるS偏光成分R33とに分割される。偏光分離面31で反射されたS偏光成分R33は、さらに反射面32で反射されて、射出面から射出する。一方、偏光分離面31を透過したP偏光成分R32は、1/2波長板33により偏光方向を90°回転させられてS偏光成分となり、射出面から射出する。こうして、光源101からの無偏光光が同じ偏光方向を有するS偏光に変換される。すなわち、偏光変換素子108からは、S偏光としての複数の光束が射出される。
光束制御光学系の第1のレンズ103は、正のパワー(焦点距離の逆数であり、屈折力ともいう)を有し、第2のレンズ104及び第3のレンズ105はともに負のパワーを有する。これにより、光束制御光学系は、平行光束としての入射光束を、その光束幅よりも小さな光束幅を有する平行光束としての射出光束に変換する、つまりは圧縮するアフォーカル光学系を構成する。
第2のレンズ104及び第3のレンズ105は、射出光束の光束幅を変化させるために、すなわち入射光束に対する射出光束の圧縮率を変化させるために光軸O1が延びる方向(以下、単に光軸方向という)に移動する(光軸方向位置が変化する)。第1のレンズ103は、固定されている(光軸方向位置が変化しない)。
放物面リフレクタ102によって光軸O1に平行な光束に変換された光源101からの光束(平行光束)は、光束制御光学系に入射する。前述したように光束制御光学系は、光源側から順に、正、負、負のパワーを有するレンズ103〜105により構成されているため、光束制御光学系に入射した平行光束は、その光束幅が圧縮された平行光束として射出される。
光束制御光学系から射出された平行光束は、第1のフライアイレンズ106に含まれる複数のレンズセルによって複数の光束に分割される。また、第1のフライアイレンズ106は、その複数のレンズセルが有する正のパワーによって、該複数の光束に、第2のフライアイレンズ107と偏光変換素子108の近傍にて複数の二次光源像を形成させる。
ここで、第2のレンズ104及び第3のレンズ105が光軸方向に移動しても(光軸方向位置が変化しても)、複数の二次光源像が形成される光軸方向位置(及び光軸直交面内での位置)は変化しない。このことは、後述する他の実施例でも同じである。
複数の二次光源像を形成した複数の光束は、偏光変換素子108を経てS偏光に変換された後、コンデンサーレンズ109に入射する。コンデンサーレンズ109は、複数の光束を液晶パネル10の受光面上(すなわち、画像表示素子上)で重畳させ、均一な照明エリアを形成する。
ここで、光束制御光学系における光束の圧縮率αを以下のように定義する。
α=B/A
ただし、Aは光束制御光学系への入射光束の光束幅(光束径)であり、Bは光束制御光学系からの射出光束の光束幅(光束径)である。
図3には、α=0.85の場合での照明光学系100のXZ断面を示す。図4には、α=0.75の場合での照明光学系100のXZ断面を示す。さらに、図5には、α=0.65での場合の照明光学系100のXZ断面を示す。これらの図から分かるように、第2のレンズ104及び第3のレンズ105を光軸方向に移動させることにより、圧縮率αが変化する。
なお、図3〜図5に示す状態へと変化して圧縮率が大きくなる(αの数値としては小さくなる)につれて、第2のレンズ104は光源側に凸の軌跡で移動し、第3のレンズ105は液晶パネル側に単調に移動する。
液晶パネル110に入射する光束の入射角度が小さいほど、投射画像のコントラストは高くなる。このため、コンデンサーレンズ109の焦点距離が一定であれば、コンデンサーレンズ109に入射する光束径が小さくなるほど、液晶パネル110に入射する入射角度が小さくなり、投射画像のコントラストは高くなる。つまり、光束制御光学系における光束の圧縮率を大きくするほど、コントラストを高くすることができる。
このように、本実施例では、投射画像のコントラストを変化させるために、光束制御光学系での光束の圧縮率を変更する。このため、コントラストを上げたとき、コントラストの高い投射画像の中心部に光を集めることができる。したがって、コントラストのアップ率に対する投射画像の輝度の低下を少なくすることができる。
本実施例では、光束制御光学系を3つのレンズ103〜105により構成し、第1〜第3のレンズ103〜105に正、負、負のパワーを付与した場合について説明した。ただし、光束制御光学系は、2つ以上の光学素子によって構成することが可能である。2つ以上(例えば、4つ)の光学素子のうち少なくとも1つの正のパワーを有する光学素子と少なくとも1つの負のパワーを有する光学素子(すなわち、少なくとも2つの光学素子)がそれぞれ光軸方向に移動すればよい。
また、本実施例では、放物面リフレクタ102と第1のレンズ103を用いる場合について説明したが、これらに代えて、楕円リフレクタを用いても(楕円リフレクタで光束を圧縮しても)よい。
図6及び図7にはそれぞれ、本発明の実施例2である照明光学系100のXZ断面及びYZ断面を示す。
図中の151は光源であり、図21中の発光管41に相当する。152は放物面リフレクタであり、図21中のリフレクタ42に相当する。
153,154はそれぞれ光学素子としての第1のレンズ及び第2のレンズである。第1及び第2のレンズ153,154と後述する第1のフライアイレンズによって第1の光束制御光学系が構成される。また、第1及び第2のレンズ153,154と後述する第2のフライアイレンズによって第2の光束制御光学系が構成される。
155は第1のフライアイレンズ(レンズアレイ、光学素子)であり、複数のレンズセルが2次元方向に配列されて構成されている。156は第2のフライアイレンズ(レンズアレイ、光学素子)であり、複数のレンズセルが2次元方向に配列されて構成されている。第1及び第2のフライアイレンズ155,156は、光束分割手段を構成するとともに、前述したように、第1及び第2の光束制御光学系の一部を構成する。
157は偏光変換素子であり、実施例1の偏光変換素子108と同様の構造を有する。158は集光手段としてのコンデンサーレンズである。前述した第1及び第2のレンズ153,154は、コンデンサーレンズ158よりも光源側に配置されている。
159は液晶パネル(画像表示素子)であり、図21中の反射型液晶パネル61R,61G,61Bに相当する。O2は照明光学系100の光軸を示す。
第1のフライアイレンズ155は、図8に示すように、各レンズセルの頂点がX方向外側に偏心している。このため、第1のフライアイレンズ155は、図6に示すXZ断面において、全体として負のパワーを発生するシリンダーレンズ効果を有する。
また、第2のフライアイレンズ156は、図9に示すように、各レンズセルの頂点がY方向外側に偏心している。このため、第2のフライアイレンズ156は、図7に示すYZ断面において、全体として負のパワーを発生するシリンダーレンズ効果を有する。
第1のレンズ153は正のパワーを有し、第2のレンズ154は負のパワーを有する。
XZ断面では、正のパワーを有する第1のレンズ153と、負のパワーを有する第2のレンズ154と、シリンダーレンズ効果(負のパワー)を有する第1のフライアイレンズ155とによって第1の光束制御光学系が構成される。第1の光束制御光学系は、XZ断面において、平行光束としての入射光束を、その光束幅よりも小さな光束幅を有する平行光束としての射出光束に変換する、つまりは圧縮するアフォーカル光学系である。
また、YZ断面では、正のパワーを有する第1のレンズ153と、負のパワーを有する第2のレンズ154と、シリンダーレンズ効果(正のパワー)を有する第2のフライアイレンズ156とによって第2の光束制御光学系が構成される。第2の光束制御光学系は、YZ断面において、平行光束としての入射光束を、その光束幅よりも小さな光束幅を有する平行光束としての射出光束に変換する、つまりは圧縮するアフォーカル光学系である。
第1のレンズ153及び第2のレンズ154は、射出光束の光束幅を変化させるために、すなわち入射光束に対する射出光束の圧縮率を変化させるために、光軸方向に移動する。なお、第1及び第2のフライアイレンズ156,157は固定されている。
XZ断面及びYZ断面での光束の圧縮率β,γをそれぞれ、以下のように定義する。
β=D/C
γ=F/E
ただし、Cは第1の光束制御光学系への入射光束の光束幅(光束径)であり、Dは第1の光束制御光学系からの射出光束の光束幅(光束径)である。また、Eは第2の光束制御光学系への入射光束の光束幅(光束径)であり、Fは第2の光束制御光学系からの射出光束の光束幅(光束径)である。
図10及び図11には、β=0.85,γ=0.7の場合での照明光学系100のXZ断面及びYZ断面を示す。図12及び図13には、β=0.76,γ=0.62の場合での照明光学系100のXZ断面及びYZ断面を示す。
これらの図から分かるように、第1のレンズ153及び第2のレンズ154を光軸方向に移動させることにより、圧縮率β,γが変化する。
なお、図10,11から図12,13に示す状態へと変化して圧縮率が大きくなる(β,γの数値としては小さくなる)につれて、第1及び第2のレンズ153,154はそれぞれ、光源側に単調に移動する。
また、本実施例では、以下の関係が成立している。
β/γ=一定
したがって、YZ断面において液晶パネル159に入射する光束の角度分布は、XZ断面において液晶パネル159に入射する光束の角度分布より小さくなる。このため、色分解合成光学系に、入射角度依存性を有する偏光分離面(偏光ビームスプリッタ)やダイクロイック面(ダイクロイックプリズム)が含まれる場合には、高い光利用効率を実現しつつ、投射画像のコントラストを変化させることができる。
また、本実施例では、実施例1に比べて、レンズの枚数が少ないため、照明効率のアップとコストダウンを図ることができる。
また、本実施例では、光束制御光学系を、正,負の第1及び第2のレンズ153,154と負のシリンダーレンズ効果を有するフライアイレンズ156又は157の3つの光学素子により構成した。しかし、光束制御光学系は、少なくとも2つの光軸方向に移動可能な光学素子を含む2つ以上の光学素子により構成することができる。2つ以上(例えば、4つ)の光学素子のうち、フライアイレンズを除く少なくとも1つの正のパワーを有する光学素子と少なくとも1つの負のパワーを有する光学素子(すなわち、少なくとも2つの光学素子)がそれぞれ光軸方向に移動すればよい。
図14には、本発明の実施例3である照明光学系100のXZ断面を示す。本実施例は、実施例1の照明光学系100における第1及び第2のフライアイレンズ106,107の間であって第2のフライアイレンズ107の近くに、可変開口絞り171を追加した構成を有する。可変開口絞り171以外の構成要素については、実施例1と同符号を付して説明に代える。
可変開口絞り171の構成を図15に示す。172は遮光手段としての2枚の遮光板である。2枚の遮光板172をY方向における互いに反対側に移動させることで、可変開口絞り71の開口の大きさを変化させ、圧縮された光束のうちカットする光束の量を一定量に維持する。
図15の(a)には、光束制御光学系における光束の圧縮率がα=0.85の場合での可変開口絞り171の状態を示している。図15の(b)には、α=0.75の場合での可変開口絞り171の状態を示している。図15の(c)には、α=0.65の場合での可変開口絞り171の状態を示している。
これらの図から分かるように、圧縮率αの変化に連動させて遮光板172を移動させることで、可変開口絞り171の開口の大きさを変え、カットする光束の量を増減させる。具体的には、図15の(a)〜(c)に示す状態へと変化して圧縮率が大きくなる(αの数値としては小さくなる)につれて、可変開口絞り171の開口を小さくし、カットする光束の量を一定に維持する。ここで、可変開口絞り171によってカットされる光束の量は、特許文献1にて開示された可変開口絞りでカットされる光束の量よりも少ない。このため、投射画像の輝度を大きく低下させることなく、実施例1に比べて、よりコントラストを高くすることができる。
なお、図15に示した可変開口絞り171(遮光板172)の形状は例に過ぎず、他の形状を採用してもよい。
また、可変開口絞り171を配置する位置は、図14に示した位置でなくてもよく、例えば、第3のレンズ105と第1のフライアイレンズ106との間に配置してもよい。
図16には、本発明の実施例4である照明光学系100のXZ断面を示す。本実施例は、実施例1の照明光学系100における第2のレンズ104と第3のレンズ105との間に、開口絞り191を追加した構成を有する。開口絞り191以外の構成要素については、実施例1と同符号を付して説明に代える。
開口絞り191は、光軸方向に移動可能に設けられている。開口絞り191の形状を、図17に示す。192は遮光手段である遮光板であり、その中央には、菱形の開口192aが形成されている。
図16には、光束制御光学系における光束の圧縮比がα=0.75の場合での開口絞り191の位置を示している。また、図18には、α=0.65の場合での照明光学系100のXZ断面及び開口絞り191の位置を示している。
これらの図から分かるように、圧縮率αの変化に連動させて開口絞り191を光軸方向に移動させることで、カットする光束の量を増減させる。具体的には、図16に示す状態から図18に示す状態へと変化して圧縮率が大きくなる(αの数値としては小さくなる)につれて、開口絞り191を光源側に移動させ、カットする光束の量を一定に維持する。
本実施例でも、開口絞り191によってカットされる光束の量は、特許文献1にて開示された可変開口絞りでカットされる光束の量よりも少ない。このため、投射画像の輝度を大きく低下させることなく、実施例1に比べて、よりコントラストを高くすることができる。
なお、図17に示した開口絞り191(遮光板192)の形状は例に過ぎず、他の形状を採用してもよい。
また、開口絞り191を配置する位置は、図16及び図18に示した位置でなくてもよく、例えば、第1のレンズ103と第2のレンズ104との間に配置してもよい。
図19及び図20にはそれぞれ、本発明の実施例5である照明光学系100のXZ断面を示す。
図中の201は光源であり、図21中の発光管41に相当する。202は放物面リフレクタであり、図21中のリフレクタ42に相当する。
203,204,205はそれぞれ光学素子としての第1のレンズ、第2のレンズ、第3のレンズであり、これら第1〜第3のレンズ203〜205により光束制御光学系が構成される。
206は光源からの光束が入射するロッドインテグレータであり、207は第1のフィールドレンズ、208は第2のフィールドレンズ、209は第3のフィールドレンズである。210は偏光変換素子であり、211はロッドインテグレータからの光束を液晶パネル上に集光する集光手段としてのコンデンサーレンズである。前述した第1〜第3のレンズ203〜205は、コンデンサーレンズ211よりも光源側に配置されている。212は液晶パネル(画像表示素子)であり、図21中の反射型液晶パネル61R,61G,61Bに相当する。O3は照明光学系100の光軸を示す。
第1のレンズ203は正のパワーを有し、第2のレンズ204は負のパワーを有する。また、第3のレンズ205は正のパワーを有する。
第2のレンズ204及び第3のレンズ205は、図19及び図20にそれぞれφ1,φ2(<φ1)で示すロッドインテグレータ206に入射する光束の分布角度を変化させるように光軸方向に移動する。具体的には、ロッドインテグレータ206に入射する光束の分布角度が小さくなるにつれて、第2及び第3のレンズ204,205はそれぞれ、光源側に単調に移動する。第1のレンズ203は固定されている。
このように、ロッドインテグレータ206に入射する光束の分布角度を変えることで、照明光学系100のFナンバーを変化させ、投射画像のコントラストを可変とすることができる。
なお、上述した実施例1〜4では、入射した平行光束の径(幅)を狭めて再び平行光束として射出させることを光束の圧縮と称したが、本実施例では、そのような光束の圧縮は行わない。しかしながら、第1のレンズ203に入射する光束に比べて、第3のレンズ205から射出してロッドインテグレータ206に向かう光束の径は小さくなっているので、これも本発明にいう光束の圧縮に含める。そして、ロッドインテグレータ206に入射する光束の分布角度を増減させることは、光束の圧縮率を変更することに相当する。
本実施例では、光束制御光学系を3つのレンズ203〜205により構成し、第1〜第3のレンズ203〜205に正、負、正のパワーを付与した場合について説明した。ただし、光束制御光学系は、2つ以上の光学素子によって構成することが可能である。2つ以上(例えば、4つ)の光学素子のうち少なくとも1つの正のパワーを有する光学素子と少なくとも1つの負のパワーを有する光学素子(すなわち、少なくとも2つの光学素子)がそれぞれ光軸方向に移動すればよい。
また、本実施例では、放物面リフレクタ202と第1のレンズ203を用いる場合について説明したが、これらに代えて、楕円リフレクタを用いてもよい。
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
本発明の実施例1である照明光学系の構成を示すXZ断面図。
実施例1の照明光学系に用いられている偏光変換素子の構造を示すXZ断面図。
実施例1の照明光学系のα=0.85での構成を示すXZ断面図。
実施例1の照明光学系のα=0.75での構成を示すXZ断面図。
実施例1の照明光学系のα=0.65での構成を示すXZ断面図。
本発明の実施例2である照明光学系の構成を示すXZ断面。
実施例2の照明光学系の構成を示すYZ断面。
実施例2の照明光学系に用いられる第1のフライアイレンズの斜視図。
実施例2の照明光学系に用いられる第2のフライアイレンズの斜視図。
実施例2の照明光学系のβ=0.85、γ=0.70での構成を示すXZ断面図。
実施例2の照明光学系のβ=0.85、γ=0.70での構成を示すYZ断面図。
実施例2の照明光学系のβ=0.76、γ=0.62での構成を示すXZ断面図。
実施例2の照明光学系のβ=0.76、γ=0.62での構成を示すYZ断面図。
本発明の実施例3である照明光学系の構成を示すXZ断面図。
実施例3の照明光学系に用いられる可変開口絞りの形状を示す図。
本発明の実施例4である照明光学系のα=0.75での構成を示すXZ断面図。
実施例4の照明光学系に用いられる開口絞りの形状を示す図。
実施例4の照明光学系のα=0.65での構成を示すXZ断面図。
本発明の実施例5である照明光学系(φ1)の構成を示すXZ断面図。
実施例5の照明光学系(φ2)の構成を示すXZ断面図。
実施例1〜5の照明光学系を用いた液晶プロジェクタの光学構成を示す図。
符号の説明
101,151,201 光源
102,152,202 放物面リフレクタ−
103,153,203 第1のレンズ
104,154,204 第2のレンズ
105,205 第3のレンズ
106,155 第1のフライアイレンズ
107,156 第2のフライアイレンズ
108,157,210 偏光変換素子
109,158,211 コンデンサーレンズ
110,159,212 液晶パネル
31 偏光分離面
32 反射面
33 1/2波長板
34 遮光板
35 第1透過性部材
36 第2の透過性部材
171 可変開口絞り
172,192 遮光板
191 開口絞り
206 ロッドインテグレータ