JP5267739B2 - コネクティングロッドの破断方法 - Google Patents

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Description

本発明は、クランクシャフトが挿入される大端穴が形成された大端部を有して一体成形されたコネクティングロッドを、その大端部においてロッド部とキャップ部とに破断する方法に関するものである。
エンジンのクランクシャフトとピストンとを連結するコネクティングロッドは、その一端がピストンピンを軸支する小端穴の形成された小端部とされ、その他端がクランクシャフトのジャーナル部を軸支する大端穴の形成された大端部とされている。こうしたコネクティングロッドは一般に、鍛造により一体成形した上で、コネクティングロッドをその大端部にてロッド部とキャップ部とに破断して製造されている。
従来、こうしたコネクティングロッドの破断は、特許文献1〜3に見られるように、大端穴の内周に破断促進用の楔形状の溝(ノッチ)を形成して行われる。そして図11に示すように、2分割形成された割り型50,51をコネクティングロッド52の大端穴53に入れ、それら割り型50,51の間に楔54を打ち込んで両割り型50,51を離間させることで、大端穴53の内周に形成されたノッチ55を起点に破断を生じさせるようにしている。
特開2005−106271号公報 特開2006−150472号公報 特開2005−014094号公報
なお、破断箇所となる大端部56の両側には、破断により分割されたコネクティングロッド52のロッド部とキャップ部とを締結するためのボルト穴57が形成されている。そのため、図12に示すようにノッチ55を起点とする破断転移は、ボルト穴57の周囲を時計回りに回り込む方向と、その周囲を反時計回りに回り込む方向との2つの方向で個別に伝播するようになる。こうした場合、両方向の破断伝播の合流箇所Fにおいて、各方向の破断転移の位置がずれることがあり、このときの破断線Gの形成態様を図13に示すように破断面段差Hが形成されてしまうことがある。そしてこうした破断面段差Hがコネクティングロッド52の歩留りを悪化させる要因となっていた。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、破断面段差を生じることなく破断を行うことのできるコネクティングロッドの破断方法を提供することにある。
一体成形されたコネクティングロッドを、大端穴の形成された大端部においてロッド部とキャップ部とに破断する方法としての本発明は、上記課題を解決するため、大端部の両側に形成されて、ロッド部とキャップ部とを締結するボルトが挿入されるボルト穴の内周に、その内周を周回するノッチを形成し、そのノッチを起点として放射状に破断転移を伝播させてコネクティングロッドの破断を行うようにしている。
上記方法では、ボルト穴の内周に形成されたノッチを起点として、その内周から放射状に破断転移が進展する。そのため、破断伝播の合流箇所が存在しないようになる。したがって、上記破断方法によれば、破断面段差を生じることなく、コネクティングロッドの破断を行うことができる。
こうしたコネクティングロッドの破断は、例えばノッチを形成する工程、割り型をボルト穴に挿入する工程、その割り型に荷重を掛けてノッチを径方向に押圧することで、コネクティングロッドをロッド部とキャップ部とに破断する工程を通じて行うことができる。なお、この場合には、環形状に形成されるとともに、ノッチに挿入される楔状の凸部が外周に形成された割り型を用いることができる。またそうした割り型を2つに分割するとともに、同割り型を構成する2つのパーツの間に楔を打ち込んで両パーツの間隔を広げることで、コネクティングロッドを破断するようにすれば、コネクティングロッドを容易かつ的確に行うことが可能となる。
なお、コネクティングロッドの破断は、大端部の両側で個別に行われるため、両者の破断に時間差が生じることがある。そしてその時間差によっては、座屈が発生することがある。そこで、キャップガイドによって、前記大端部の両側を保持した状態でコネクティングロッドの破断を行えば、そうした座屈を回避することが可能となる。
本発明の第1の実施の形態の破断対象となるコネクティングロッドの平面断面構造を示す断面図。 (a)は、同実施の形態におけるノッチの形成態様を示す断面図であり、(b)は、同図(a)の部分Bの拡大図であって、図2(c)は、同図(b)の部分Cの拡大図である。 同実施の形態における別の態様でのノッチの形成態様を示す断面図。 同実施の形態に採用される割り型の(a)平面構造、及び(b)側部断面構造を併せ示す図。 (a)は、同実施の形態における割り型のボルト穴への挿入態様を示す断面図であり、(b)は同図(a)の部分Dの拡大図である。 同実施の形態におけるコネクティングロッドの破断態様を示す断面図。 同実施の形態での破断転移の伝播態様を示す断面図。 コネクティングロッドの破断に際しての座屈の発生態様を示す図。 本発明の第2の実施の形態でのコネクティングロッドの破断態様を示す断面図。 割り型及び楔の構成を変更した第1の実施の形態の変形例についてそのコネクティングロッドの破断態様を示す断面図。 (a)は、従来のコネクティングロッドの破断態様を示す断面図であり、(b)は、同図(a)の部分Eの拡大図である。 従来のコネクティングロッドの破断方法での破断転移の伝播態様を示す断面図。 破断面段差が生じたコネクティングロッドの大端部の側部断面構造を示す断面図。
(第1の実施の形態)
以下、本発明のコネクティングロッドの破断方法を具体化した第1の実施の形態を、図1〜図8を参照して詳細に説明する。なお、図1に示すように、破断の対象となるコネクティングロッド1は、ピストンピンを軸支する小端穴2の形成された小端部3がその一端に形成され、クランクシャフトのジャーナル部を軸支する大端穴4の形成された大端部5がその他端に形成されたものとして、鍛造により一体成形されている。また大端部5の両側には、破断により分割されたコネクティングロッド1のキャップ部とロッド部とを締結するためのボルトが挿入されるボルト穴6がそれぞれ形成されている。
コネクティングロッド1は、こうした鍛造による一体成形物を大端部5においてキャップ部とロッド部とに破断することで製造されている。本実施の形態では、次の工程1〜3を通じて、コネクティングロッド1の破断を行っている。
・工程1:大端部5の両側のボルト穴6の内周に、その内周を周回するノッチを形成する工程。
・工程2:割り型をボルト穴6に挿入する工程。
・工程3:割り型に荷重を掛けてノッチを径方向に押圧することで、コネクティングロッド1をロッド部とキャップ部とに破断する工程。
工程1におけるノッチの形成は、例えば図2(a)に示す態様で行うことができる。すなわち、シングルポイントタップ7をボルト穴6に挿入し、その刃先がボルト穴6の内周を周回するようにシングルポイントタップ7を回転させることで、ボルト穴6の内周を周回するノッチ16を形成することができる。なお、図2(b)は、図2(a)の部分Bの拡大図を、図2(c)は、図2(b)の部分Cの拡大図をそれぞれ示している。
またノッチ16の形成は、レーザー加工によっても行うことができる。この場合のノッチ16の形成は、図3に示す態様で行われる。すなわち、回転軸8の先端に取り付けられたミラー9をボルト穴6に挿入し、レーザーヘッド10からボルト穴6内にレーザー光の光路を曲げてボルト穴6の内周にレーザー光が照射されるようにする。そして、回転軸8とともにミラー9を回転させ、ボルト穴6の内周を周回するようにレーザー光を当てることで、ボルト穴6の内周を周回するノッチ16を形成することができる。
次の工程2においては、図4に示すような割り型11がボルト穴6に挿入される。同図4(a),(b)に示すように割り型11は、環形状に形成されるとともに、ノッチ16に挿入される楔状の凸部12が外周に形成されるように形成されている。この割り型11は、2つのパーツ11a,11bに分割形成されている。
こうした割り型11は、図5(a),(b)に示す態様でボルト穴6内に設置される。すなわち、割り型11は、ボルト穴6の図中下方の開口から挿入した支持柱13に載せた状態でボルト穴6内に挿入される。なお、次の工程3にあたっては、コネクティングロッド1にその長手方向の引っ張り力がプリテンションとして印加される。
続く工程3においては、図6に示すように、キャップガイド15により大端部5の両側を支持した状態で、支持柱13とは逆側の開口から、楔状の先端を有する略円柱形状の楔14を挿入する。そして、楔可動押圧部17により楔14の基端を図中下方に押すことで、その楔14の先端を割り型11の2つのパーツ11a,11bの間に打ち込み、割り型11の両パーツ11a,11bの間隔を広げることでコネクティングロッド1をその大端部5において破断させる。
なお、楔14を確実に真っ直ぐに打ち込みたい場合には、楔14の外周にガイドを設置し、そのガイドによって楔14の外周を保持した状態でその打ち込みを行うようにすると良い。
図7に示すように、このときの破断転移は、ボルト穴6内周のノッチ16を起点とし、ボルト穴6の内周から放射状に伝播する。そのため、このときの破断に際しては、破断伝播の合流箇所が存在しないようになる。
以上説明した本実施の形態によれば、次の効果を奏することができる。
(1)本実施の形態では、大端部5の両側に形成されて、ロッド部とキャップ部とを締結するボルトが挿入されるボルト穴6の内周に、その内周を周回するノッチ16を形成し、そのノッチ16を起点として放射状に破断転移を伝播させてコネクティングロッド1の破断を行うようにしている。こうした本実施の形態の破断方法では、ボルト穴6の内周に形成されたノッチ16を起点として、その内周から放射状に破断転移が進展するため、破断伝播の合流箇所が存在しないようになる。したがって、本実施の形態の破断方法によれば、破断面段差を生じることなく、コネクティングロッド1の破断を行うことができる。
(2)本実施の形態では、ノッチ16を形成する工程、割り型11をボルト穴6に挿入する工程、その割り型11に荷重を掛けてノッチ16を径方向に押圧することで、コネクティングロッド1をロッド部とキャップ部とに破断する工程を通じてコネクティングロッド1の破断を行うようにしている。またコネクティングロッド1の破断に際しては、環形状に形成されるとともに、ノッチ16に挿入される楔状の凸部12が外周に形成されるとともに、2つのパーツ11a,11bに分割された割り型11を用いている。そして割り型11を構成する2つのパーツ11a,11bの間に楔14を打ち込んで両パーツ11a,11bの間隔を広げることで、コネクティングロッド1を破断するようにしている。そのため、ボルト穴6の内周に形成されたノッチ16を起点として、その内周から放射状に破断転移を進展させることをより確実に行うことができる。
(3)なお、コネクティングロッド1の破断は、大端部5の両側においてそれぞれ個別に行われる。ここで、両側の破断に時間差が生じると、図8に示すように、先に破断した箇所が開いてしまい、座屈が発生することがある。その点、本実施の形態では、キャップガイド15により大端部5の両側を保持した状態でコネクティングロッドの破断を行っているため、そうした座屈の回避が可能である。
(第2の実施の形態)
続いて、本発明のコネクティングロッドの破断方法を具体化した第2の実施の形態を、図9を併せ参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態にあって、上記実施の形態と共通する構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
本実施の形態でも、第1の実施の形態と同様に、ボルト穴6の内周に、その内周を周回するノッチ16を形成するようにしている。そして本実施の形態では、図9に示す態様でコネクティングロッド1の破断を行うようにしている。
すなわち、本実施の形態では、コネクティングロッド1の破断に際して、大端穴4に、2つの半円形状のパーツ20a,20bによって構成された割り型20を入れるようにしている。そして、ガイド21によりコネクティングロッド1の大端部5を押さえるとともに、長手方向の引っ張り力をプリテンションとして与えた状態で、割り型20の2つのパーツ20a,20bの間に楔22を打ち込み、それら2つのパーツ20a,20bの間隔を広げることで、コネクティングロッド1の破断を行うようにしている。
こうした場合にも、破断転移は、ボルト穴6の内周のノッチ16を起点とし、その内周から外側に向って放射状に伝播する。そのため、こうした本実施の形態においても、破断伝播の合流箇所は存在せず、故に破断面段差は生じないようになる。
以上説明した各実施の形態は、次のように変更して実施することもできる。
・第1の実施の形態では、キャップガイド15によって大端部5の両側を保持した状態でコネクティングロッド1の破断を行うようにしていたが、大端部5の両側で時間差を生じることなく同時に破断を行えるのであれば、キャップガイド15は省略しても良い。
・第1の実施の形態では、環形状に形成されるとともに、ノッチ16に挿入される楔状の凸部12が外周に形成された、2分割構成の割り型11を用いてコネクティングロッド1の破断を行うようにしていたが、ノッチ16を起点として放射状に破断転移を伝播させることが可能であれば、割り型11の形状や構成は適宜に変更しても良い。例えば図10に示すような割り型30及び楔31を用いても、破断面段差を生じることなく、コネクティングロッド1の破断を行うことが可能である。
・上記実施の形態では、楔の打ち込みによりコネクティングロッド1を破断していたが、コネクティングロッド1の長手方向に、引っ張り方向の衝撃荷重を与えることなど、それ以外の方法でコネクティングロッド1の破断を行うようにしても良い。その場合であれ、ボルト穴6の内周にその内周を周回するようにノッチ16を形成して、そのノッチ16を起点として放射状に破断転移を伝播させることでコネクティングロッド1の破断が行われるのであれば、破断伝播の合流箇所を無くして破断面段差が生じないようにすることができる。
1…コネクティングロッド、2…小端穴、3…小端部、4…大端穴、5…大端部、6…ボルト穴、7…シングルポイントタップ、8…回転軸、9…ミラー、10…レーザーヘッド、11…割り型(11a,11b…割り型を構成する2つのパーツ)、12…凸部、13…支持柱、14…楔、15…キャップガイド、16…ノッチ、17…楔可動押圧部、20…割り型(20a,20b…割り型を構成する2つのパーツ)、21…ガイド、22…楔、30…割り型、31…楔、50…割り型、51…割り型、52…コネクティングロッド、53…大端穴、54…楔、55…ノッチ、56…大端部、57…ボルト穴。

Claims (5)

  1. 一体成形されたコネクティングロッドを、大端穴の形成された大端部においてロッド部とキャップ部とに破断する方法であって、
    前記大端部の両側に形成されて、前記ロッド部と前記キャップ部とを締結するボルトが挿入されるボルト穴の内周に、その内周を周回するノッチを形成し、そのノッチを起点として放射状に破断転移を伝播させて前記破断を行う
    ことを特徴とするコネクティングロッドの破断方法。
  2. 前記ノッチを形成する工程と、
    割り型を前記ボルト穴に挿入する工程と、
    前記割り型に荷重を掛けて前記ノッチを径方向に押圧することで、前記コネクティングロッドを前記ロッド部と前記キャップ部とに破断する工程と、
    を備える請求項1に記載のコネクティングロッドの破断方法。
  3. 前記割り型は、環形状に形成されるとともに、前記ノッチに挿入される楔状の凸部が外周に形成されてなる
    請求項2に記載のコネクティングロッドの破断方法。
  4. 前記割り型は、2つに分割されてなり、同割り型を構成する2つのパーツの間に楔を打ち込んで両パーツの間隔を広げることで、前記コネクティングロッドを破断するように構成されてなる
    請求項3に記載のコネクティングロッドの破断方法。
  5. 前記コネクティングロッドの破断は、キャップガイドによって、前記大端部の両側を保持した状態で行われる
    請求項1〜4のいずれか1項に記載のコネクティングロッドの破断方法。
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