JP5267513B2 - 溶鋼の高速脱硫脱窒方法 - Google Patents

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Description

本発明は、RH式真空脱ガス装置を用いた単一処理により、溶鋼中のS濃度およびN濃度を十分に低減することが可能な溶鋼の高速脱硫脱窒方法に関する。
従来より、鋼中の硫黄(以下、「S」ともいう。)および窒素(以下、「N」ともいう。)は、非金属介在物を形成して各種欠陥を引き起こすこと、鋼材の強度を低下させること等の理由から、多くの鋼種においてS濃度およびN濃度の低減が求められている。
鋼中のS濃度の低減(脱硫)は、溶銑段階および溶鋼段階で行われる。溶鋼段階での脱硫方法としては、CaOを含む脱硫剤を溶鋼に吹き込む方法や、減圧下でCaOを含む脱硫剤を溶鋼表面に吹き付ける方法等が挙げられる。脱硫反応は、溶鋼の酸素(以下、「O」ともいう。)濃度を低減するほど、脱硫剤の脱硫能が向上するのに伴って促進される。
鋼中のN濃度の低減(脱窒)は、主に溶鋼段階で行われる。脱窒方法としては、減圧雰囲気下に溶鋼を曝すことで雰囲気と平衡する鋼中のN濃度を低減し、脱窒反応を起こさせる処理が挙げられる。脱窒反応は、鋼中のS濃度およびO濃度を低減するほど、溶鋼と気相との界面における化学反応速度が向上するのに伴って促進される。
脱硫脱窒速度を増大させる技術として、特許文献1に記載された技術がある。特許文献1には、RH処理において溶鋼に希土類元素(以下、「REM」ともいう。)を添加し、この溶鋼にCaOを主体とする脱硫剤を吹き付けて、極低窒素鋼または極低硫極低酸素極低窒素鋼を溶製する条件について開示されている。
特開2009−144221号公報
特許文献1にはREMを添加した後にCaO系脱硫剤を吹き付ける方法が示されている。この方法ではREM濃度および脱硫剤量を任意に設定することが可能であり、REM濃度と脱硫剤量との組み合わせも幅広く選択できる。したがって、特許文献1に従えば、様々な処理前条件ならびに鋼種に対応した処理が施せるという利点がある。
一方、限定された鋼種を製造する場合や処理前条件の分布幅が狭い場合は上記の利点は不要であり、むしろREM添加とCaO系脱硫剤上吹きに分けて操作することで処理時間が若干延長される。つまり、限定された鋼種を製造する場合や処理前条件の分布幅が狭い場合はREM添加とCaO系脱硫剤上吹きを別個に行う必要はなく、同時に行える方が良い場合もある。
そこで、本発明者は限定された鋼種を製造する場合や処理前条件の分布幅が狭い場合における処理簡便化を検討した。
REM添加とCaO系脱硫剤上吹きを同時に行う方法としては、特許文献1の段落[0060]に記載されているようにCaO系脱硫剤上吹き中にREMを添加する方法と予めREMを混合したCaO系脱硫剤を上吹きする方法とが考えられる。
このうち、前者の方法は添加用REM収容器を必要とするため、後者の方がより簡便化できる。そのため、特許文献1記載の技術を限定された条件で簡便に利用するには、予めREMを混合したCaO系脱硫剤を上吹きする方法が適当と言える。ただし、REMとCaOを混合して溶鋼に添加する場合、以下の課題があった。
CaOは安定した酸化物であるが、REMは強い還元力を有していること、減圧下での使用のためCaOがCa(g)と溶鋼中Oに分解しやすいこと、からREMとCaOを混合して溶鋼に添加すると、添加部での溶鋼中REM濃度が非常に高くなるため、CaOを添加部で分解してしまう場合がある。
この結果、本来の脱硫剤であるCaOが減少し、同時に脱酸元素であるREMも減少してしまうため、特許文献1に記載されているような反応促進機構が発現しない。そのため、CaOに対しREMが過剰であれば十分な精錬効果が得られない。逆にREM不足でも精錬効果が得られないことは言うまでもない。
以上のことから、REMとCaOの混合同時添加を行う場合、両者の混合比には適正な範囲が存在し、適正範囲外では精錬効果が小さくなるか全く得られない場合があることがわかる。
ところで、この現象は定性的に予測することは容易であるが、前述したように現象が溶鋼全体ではなく添加部のみで発生することから、熱力学などの計算により定量的に予測することは容易ではない。
さらに、試行錯誤的に混合比を変化させて脱硫脱窒などの精錬効果を測定することで、適正範囲を知見できる可能性もあるが、試行錯誤的に得られる知見は普遍性が不十分であることから、異なる精錬装置では効果が得られない場合が多い。特に今回のように添加部という部分的な現象を取り扱う場合は注意が必要である。
そこで、実験的に信頼性と普遍性の高い適性混合比を得る必要があるが、単なる精錬効果の評価のみでは普遍性に疑問が残る。そのため、普遍性を担保できる測定も必要となる。
本発明は、上記課題を鑑み、簡単簡便な方法により短時間で極低窒素極低硫鋼を得るのに必要な減圧下REM混合CaO上吹き精錬法の適正条件を提供することにある。
上述した適正混合比を明確化すべく、本発明者は以下に述べる方法で測定を行った。
15kgまたは1500kgの溶鋼を1873Kまで加熱し、Ar雰囲気下で圧力を130〜1300Paとした。その後、溶鋼中Al濃度を0.1%、S濃度を0.002%、N濃度を0.004%、O濃度を0.0010〜0.0015%に成分を調整し、溶鋼の直上に設置した脱硫剤を吹き付けるためのランスから、キャリアー用ガスとして15kg溶鋼実験ではArガスを10NL/minで、1500kg溶鋼実験ではArガスを500NL/minで流出させ、脱硫剤を吹き付けた。脱硫剤はREMとCaOの混合物とし、質量での混合比を種々変更した。脱硫剤の吹き付け量(溶鋼1tonあたり)は2kg/ton〜12kg/tonとし、脱硫剤供給速度(溶鋼1tonあたり)は0.5kg/ton/minとした。また、REMとしてNdを用いた。
なお、溶鋼量を15kgと1500kgと大きく変化させて測定を行ったのは、異なる精錬装置でも安定した効果が得られる普遍性の高いデータであることを確認するためである。
上述の脱硫剤にNdを混合し、この混合比を変化させることで評価を行った。次に、適正混合比の評価方法を説明する。
NdなどのREMとCaO系脱硫剤を併用することで脱硫や脱窒が促進されることは既に特許文献1に記載の通りであり、本発明でも同様の機構により脱硫や脱窒の効果が得られる。
しかし、REMとCaO系脱硫剤を混合して上吹きする本発明では前述した添加部でのREMとCaOとの反応による精錬効果の不安定化が予測される。この不安定化はCaOとの反応の結果生じるREM濃度の不安定さに起因するため、REM濃度の安定性を評価すればよい。そこで、本実験では添加したNdの歩留りを用いて評価を行うこととした。
図1は、実験結果であり、NdとCaOとの混合比とNd歩留りとの関係を示す図である。同図に示すように、Nd混合比が大きくなるとNd歩留りが高くなる傾向がある。しかし、詳細を見ると混合比が0.02未満では歩留りが低く、かつ、歩留りの分布が広い。このことから、混合比が0.02未満ではREM濃度が低位で不安定化するため、脱硫や脱窒などの精錬効果が期待できないことが解る。
一方、混合比が0.3を超えて高いと、歩留りは65.3%から95.5%となり、高い歩留りを示す場合と低い歩留りを示す場合がある。これは、添加部でNdとCaOとの反応量の差に起因すると考えられるが、混合比が0.3を超えて高いと高い精錬効果が得られる場合がある一方で、低い精錬効果が生じる場合もあることになり、工業規模での生産技術として用いるのは困難である。
しかし、混合比が0.02以上0.3以下の場合は歩留りが非常に安定しており、かつ、溶鋼15kg実験でも1500kg実験でも同等の結果が得られている。このことから、安定した精錬効果が得られると同時に異なる精錬装置でも安定した精錬効果を与える混合比であることが解る。
図2は、精錬効果の一例を示す図であり、脱硫剤の吹き付け量を10kg/tonとした1500kg溶鋼実験でのNdとCaOとの混合比と脱硫率、脱窒率との関係を示す図である。脱硫率は(脱硫剤吹き付け前S濃度−脱硫剤吹き付け後S濃度)/脱硫剤吹き付け前S濃度×100、脱窒率は(脱硫剤吹き付け前N濃度−脱硫剤吹き付け後N濃度)/脱硫剤吹き付け前N濃度×100として算出した。同図から、混合比が0.02以上0.3以下では安定した脱硫率と脱窒率が得られているが、0.02未満あるいは0.3を超えて高い条件では得られる精錬効果が安定していない。
本発明はこの知見に基づいてなされたものであり、その要旨は下記の(1)および(2)に示す溶鋼の簡便な脱硫脱窒法である。
(1)RH式真空脱ガス装置の真空槽内に設置した上吹きランスから、質量%で、Al濃度:0.005〜1.0%、S濃度:0.003%以下、O濃度:0.003%以下、およびN濃度:0.005%以下である溶鋼に脱硫剤を吹き付けて脱硫脱窒するに際し、前記脱硫剤として、希土類元素(REM)とCaOとの質量混合比(REM)/(CaO)が下記(1)式を満足するように予め混合したものを、溶鋼1tonあたり0.2〜1.5kg/minの吹き付け速度で使用することを特徴とする溶鋼の高速脱硫脱窒方法。
0.02≦(REM)/(CaO)≦0.3 …(1)
(2)前記脱硫剤として、混合するREMの粒径とCaOの粒径との比(REM粒径/CaO粒径)を10以下とすることを特徴とする前記(1)に記載の溶鋼の高速脱硫脱窒方法。
本発明において、「希土類元素」とは、Ce、La、Nd等をいう。
以下の説明では、鋼、脱硫剤およびスラグの成分組成についての「質量%」を、単に「%」と表記する。
本発明の溶鋼の高速脱硫脱窒方法によれば、RH式真空脱ガス装置を用いた単一処理で簡便かつ短時間で極低硫極低窒素鋼が得られる。
NdとCaOとの混合比とNd歩留りとの関係を示す図である。 NdとCaOとの混合比と脱硫率、脱窒率との関係を示す図である。
1.本発明の高速脱硫脱窒方法
本発明の溶鋼の高速脱硫脱窒方法を、転炉とRH式真空脱ガス装置(以下、「RH」ともいう。)を用いて実施する場合を例として説明する。ただし、転炉処理終了後からRH処理までの間に大気圧下で不活性ガス吹き込み等による取鍋精錬装置を用いて、溶鋼に予備処理を施してもよい。
溶鋼について転炉処理を終了した後、溶鋼を取鍋に出鋼し、溶鋼を収容した取鍋をRHへ移動し、真空処理を実施する。RH処理は、真空処理、脱硫剤吹き付け処理および環流処理を含む一連の処理である。
脱硫剤吹き付けを開始するまでに溶鋼の組成を、Al濃度を0.005〜1.0%、S濃度を0.003%以下、O濃度を0.003%以下、N濃度を0.005%以下に調整しておく必要がある。これらの成分の濃度の規定理由は以下の通りである。
Al濃度を0.005〜1.0%と規定するのは、AlはOとの親和力が強く、溶鋼中のAl濃度が0.005%以下では脱酸反応が不安定となることによってO濃度が高くなり、一方、1.0%を超えて高いとAl脱酸が非常に強くなるため効果が飽和するためである。
S濃度を0.003%以下と規定するのは、溶鋼中のS濃度が0.003%を超えて高いと、用いる脱硫剤の量が増加し、結果的にスラグ量が増加してしまうためである。O濃度を0.003%以下と規定するのは、溶鋼中のO濃度が0.003%を超えて高いと、溶鋼中OとREMとの反応が顕在化し、REM歩留りが不安定化する場合があるためである。N濃度を0.005%以下と規定するのは、本発明の目的が簡便かつ短時間で極低硫極低窒素鋼を得ることに照らし、転炉などで精錬された通常の溶鋼を発明実施の対象としていることを明確にするためである。
RH真空槽内において、設置した上吹きランスから、REMとCaOを混合した脱硫剤を溶鋼表面に吹き付ける。その際、RH真空槽内の真空度は70Pa〜13000Paとすることが望ましい。RH真空槽内の真空度が70Pa以下では脱硫剤吹き付けによるスプラッシュが激しくなる。一方、13000Pa以上では真空槽内での脱窒速度が低下する。脱硫剤を溶鋼表面に吹き付ける際のRH真空槽内の真空度は、130Pa〜6500Paがより望ましい。
脱硫剤を吹き付ける際、キャリアーガスにArガスを用い、流量を2〜10Nm3/minとすることが望ましい。これは、キャリアーガスの流量が2Nm3/min以下では脱硫剤の搬送が不安定となり、10Nm3/min以上ではスプラッシュの発生が顕著となるためである。
吹き付ける脱硫剤の量(溶鋼1tonあたり)は、REMに属する金属の合計重量とCaOの重量との合計で4〜12kg/tonが望ましい。脱硫剤の量が4kg/tonより少ないと脱硫剤吹き付け前のS濃度が高い場合にCaOの不足で脱硫が不十分となる可能性があり、12kg/tonを超えて多いとスラグ量が増加し、RH操業が困難になる場合がある。
脱硫剤の吹き付け速度(溶鋼1tonあたり)は、0.2〜1.5kg/ton/minが望ましい。これは、脱硫剤の吹き付け速度が0.2kg/ton/min未満では処理時間が長時間化し、1.5kg/ton/minを超えて速いとスプラッシュの発生が顕著となるためである。
また、脱硫剤中のREMとCaOの質量混合比((REM)/(CaO))は、下記(1)式を満足することが必須である。
0.02≦(REM)/(CaO)≦0.3 …(1)
ただし、(REM)/(CaO)は、下記(2)式の範囲内であることが望ましい。前記図1をより詳細に検討すると、(REM)/(CaO)が0.02以上0.3以下の場合、高いREM歩留りが得られているが、この範囲内でさらに比較検討を行うと、0.10を超えて大きくなると若干歩留りが低下している。このため、(2)式を満足することで、精錬効果をさらに安定化させることができる。
0.02≦(REM)/(CaO)≦0.10 …(2)
吹き付ける脱硫剤は上記(1)式のCaOとREMとの混合比を満足させることが必要であるが、REMとCaOの他に、CaOの低融点化を目的にAl23やCaF2などを混合しても良い。また、REMの他にCa、Mg、Al、Siなどの金属もしくはこれらの合金を混合しても良い。ただし、脱硫剤中のREMとCaOの合計濃度は80%以上で任意混合成分は20%以下であることが望ましい。これは、直接脱硫脱窒に寄与するREMが希釈され、精錬効果が若干低下するためである。
また、用いるREMは金属La、金属CeといったREMの単体金属の他、単体金属の混合物もしくはミッシュメタルなどの合金でも良い。なお、混合するREMとCaOとの粒度はなるべく近い方が良く、粒径比はREM粒径/CaO粒径で10以下であることが望ましい。粒径比が10を超えて大きくなるとCaO粒個数に対し、REM粒個数が少なくなるため、これらの混合物を吹き付けた場合、時間に対するREM濃度の上昇が不連続となり、精錬効果が不安定化する場合がある。
脱硫剤を吹き付ける前のスラグ組成はCaO濃度40%以上70%以下、スラグ中FeOとMnOの合計濃度が5%以下であることが望ましい。CaO濃度が40%未満もしくは70%を超えて高い場合やスラグ中FeOとMnOとの合計濃度が5%を超えて高い場合は、脱硫剤吹き付け後に溶鋼への復硫反応が起こる場合がある。また、スラグ量は10kg/ton以上が望ましい。スラグ量が10kg/ton未満では溶鋼表面の被覆が不十分となり、大気から溶鋼への窒素侵入が起こる場合がある。
吹き付けに用いるランスノズルは先細ノズル、ラバールノズル等いかなる形態でも構わないが、ラバールノズルなどの超音速噴流が得られるノズルを用いることが望ましい。これは、溶鋼への脱硫剤到達率を高位安定させると同時に溶鋼への侵入深さを確保することで、精錬効果を安定させる効果がある。また、RH真空槽内溶鋼表面とランスノズルとの鉛直距離は1m以上3m以下が望ましい。1m未満では噴流動圧が過剰になり、スプラッシュが増加する。3mを超えて高いと超音速噴流の場合でも溶鋼表面での噴流動圧が不足し、溶鋼への侵入深さを確保できない場合がある。
脱硫剤吹き付け処理後、溶鋼温度や溶鋼中Al濃度を調整するために、真空槽内溶鋼に酸素ガス等を吹き付けても良い。ただし、吹き付ける酸素量は2Nm3/ton以下が望ましい。2Nm3/tonを超えて酸素量が多いと、スラグ中のFeOやMnOの濃度が増加し、復硫する場合がある。
2.その他の溶鋼成分
脱硫処理前の、溶鋼中の他の成分については、以下の範囲であることが望ましい。
C:0.0015%〜0.40%
C濃度は、0.0015%〜0.40%であることが望ましい。0.0015%未満では溶鋼の転炉出鋼からRHまでに行われる脱酸が不足する場合がある。
Mn:0.01%〜2.0%
Mn濃度は、0.01%〜2.0%であることが望ましい。2.0%以下が望ましいのは、溶鋼中のMn濃度が高くなるほどS活量およびN活量が減少し、脱S反応および脱N反応が抑制されるからである。また、0.01%よりも高いことが望ましいのは、MnはOとの親和力が強く、溶鋼中において脱酸元素として働くため、溶鋼中のMn濃度が0.01%以下となると脱酸反応の進行が不安定となるからである。
Si:0.01〜3.0%
Si濃度は、0.01〜3.0%であることが望ましい。0.01%以上が望ましいのは、Si濃度が高くなるとS活量およびN活量が増大し、脱S反応および脱N反応が促進されるからである。また、3.0%以下が望ましいのは、溶鋼中のSi濃度が3.0%を超えて高くなると、SiによるS活量の増大効果が顕著となり、脱N反応を阻害するからである。
溶鋼250tonを転炉で脱炭した後、取鍋内へ出鋼した。出鋼中に溶鋼にAlを添加し、スラグにはCaOを添加した。これにより、溶鋼中Al濃度を0.035%とし、スラグ中CaO/Al23濃度比を1.5、スラグ中FeOとMnOの合計濃度を3%以下とした。また、その他の合金を添加し、C濃度:0.05〜0.06%、Si濃度:0.2〜0.3%、Mn濃度:0.5〜1.0%、P濃度:0.007〜0.012%、S濃度:0.0020〜0.0025%、N濃度:0.0035〜0.0045%、O濃度:0.001〜0.0027%とした。
出鋼後、取鍋をRHへ移送し、RH処理を開始した。RHでは真空槽内雰囲気圧力を133Paとして溶鋼を環流させ、直ちに脱硫剤吹き付け処理を開始した。真空槽内に設置したストレートノズルを有したランスを介して脱硫剤を1kg/ton/minの速度(溶鋼1tonあたり)で溶鋼に吹き付けた。脱硫剤の吹き付け時間は10分とした。ランス−湯面間鉛直距離は2.5m、脱硫剤のキャリアーガスはArで4Nm3/minとした。
また、用いた脱硫剤はREMを混合しないCaO、およびCeとCaOを混合した脱硫剤の二種類とし、後者はCeとCaOとの質量混合比Rを、表1に示す通り0.01〜0.5の範囲で任意に変化させて処理を行った。表1で混合比Rが0である試験番号6は、REMを混合しないCaOを脱硫剤として用いた。表1に示す試験番号1〜5は、本発明の規定を満足する本発明例であり、試験番号6〜10は、混合比Rが本発明の規定を満足しない比較例である。
Figure 0005267513
脱硫剤吹き付け前と吹き付け後の溶鋼からサンプルを採取し、溶鋼中S濃度とN濃度を定量し、前述した数式により脱硫率と脱窒率を算出した。
結果を表1に示す。本発明の規定を満足する試験番号1〜5は前記図1および2に示す小規模実験の結果と同等のCe歩留りを示し、脱硫率と脱窒率も安定している。
一方、脱硫剤にREMであるCeを混合しなかった試験番号6は脱硫と脱窒は共に低位である。また、脱硫剤にCeを混合したが混合比Rが本発明の規定を満足しない試験番号7〜10は試験番号6よりも高い脱硫率と脱窒率が得られたが、本発明例である試験番号1〜5よりも低い値となった。
以上から本発明を満足することで、粉体吹き付け処理のみで安定した脱硫率と脱窒率が得られることが解る。
本発明の溶鋼の高速脱硫脱窒方法によれば、RH式真空脱ガス装置を用いた単一処理で簡便かつ短時間で極低硫極低窒素鋼が得られる。

Claims (2)

  1. RH式真空脱ガス装置の真空槽内に設置した上吹きランスから、質量%で、Al濃度:0.005〜1.0%、S濃度:0.003%以下、O濃度:0.003%以下、およびN濃度:0.005%以下である溶鋼に脱硫剤を吹き付けて脱硫脱窒するに際し、
    前記脱硫剤として、希土類元素(REM)とCaOとの質量混合比(REM)/(CaO)が下記(1)式を満足するように予め混合したものを、溶鋼1tonあたり0.2〜1.5kg/minの吹き付け速度で使用すること
    を特徴とする溶鋼の高速脱硫脱窒方法。
    0.02≦(REM)/(CaO)≦0.3 …(1)
  2. 前記脱硫剤として、混合するREMの粒径とCaOの粒径との比(REM粒径/CaO粒径)を10以下とすること
    を特徴とする請求項1に記載の溶鋼の高速脱硫脱窒方法。
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