JP4192278B2 - 低鉄損無方向性電磁鋼板及びその製造方法 - Google Patents
低鉄損無方向性電磁鋼板及びその製造方法 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、モーターや大型発電機等の鉄心材料に使用して好適な、低鉄損の無方向性電磁鋼板を、その有利な製造方法とともに提案しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
無方向性電磁鋼板は、モーターや大型発電機の鉄心材料として使用されている。近年、省エネルギーの観点より、電気機器の効率向上に対する要求が強まり、鉄心材料についてもより一層の鉄損低減が望まれるようになってきている。
鉄損は、渦電流損及びヒステリシス損に大別でき、無方向性電磁鋼板の低鉄損化の手段としては、渦電流損の低減のために鋼板の電気抵抗を高めること、ヒステリシス損の低減のために結晶粒径の適正化や鋼中の不純物成分、介在物の制御(低減)等を行うことが良く知られるところである。
【0003】
鋼板の電気抵抗を高めて渦電流損を低減するためのより具体的な手法として、Si、Al等の合金元素を鋼中に添加する方法が良く知られている。しかし、かかる方法を適用して工業的に生産する際には、冷延性との兼ね合いで添加可能な上限量が必然的に決まり、かかる上限にまでSi、Alを添加している昨今では、この方法により現在以上の優れた鉄損特性を得ることは実際上無理である。
【0004】
一方、ヒステリシス損を低減する手段のうち、結晶粒径を適正化する方法において目標とされる最適粒径は、鋼中成分及び介在物などで若干変化するものの、およそ150 〜200 μm ということが良く知られている。この点、合金量に応じた多くの改善手段が提案され、既にかかる粒径の範囲に制御されている現在では、結晶粒径の最適化による一層の鉄損低減は望めない。
【0005】
また、鋼中の不純物元素量を低減することによる鉄損低減方法は、特開昭59−74258 号公報に開示され、確かに鉄損低減に効果的ではあるが、不純物元素量の低減すなわち高純度化は、製銑及び製鋼技術に依存するものであり、工業的生産で実施可能な高純度化が現在の製銑及び製鋼技術によってほぼ極限に達していることから、かかる方法によってさらに鉄損を低減することは、製銑、製鋼技術の進歩を待たなければならない。
【0006】
さらに、鋼中の介在物及び析出物個数の低減による鉄損低減方法は、特開昭59−74256 号,同60−152628号及び特開平3-104844号各公報に開示されている。しかし、これらの技術に従って鋼中の介在物及び析出物の個数を低減させることは、結局のところ上記従来技術と同様に高純度化技術に依存しており、それゆえ、かかる方法によってさらに鉄損を改善することは、やはり製銑、製鋼技術の進歩を待たなければならない。
【0007】
そこで、鋼中介在物の量を単に低減するのではなく、介在物の組成、形態及び量に着目し、これらをコントロールすることによって鉄損を低コストで低減することも試みられるようになった。例えば、特開昭55-8409 号公報には、脱硫フラックスにCa系フラックスを用い、硫化物系の介在物を球状で粗大なCaとの複合硫化物すること、つまり結晶粒の成長に無害で鉄損特性に悪影響を及ぼさない介在物にすることによって低鉄損を得る方法が開示されている。しかしこの方法では、介在物の粒度分布が鉄損に対してどのような影響を及ぼしているのかが明確ではないため、さらなる低損低減の要求に応えようとするためには、十分な制御であるとは言えなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記の問題を有利に解決するもので、鋼中介在物の組成や粒度分布と鉄損との関係についての研究に基づき、鋼中介在物の組成及び寸法分布を特定の範囲にすることにより、さらなる鉄損低減の要求に対して十分に応えることのできる低鉄損無方向性電磁鋼板を、その有利な製造方法とともに提案することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明は、
C:0.01mass%(以下、単に%で示す)以下、
Si:2.5 〜5.0%、
Mn:0.1 〜1.5%及び
P: 0.005 〜 0.15 %
を含み、かつS、N及びOをそれぞれ
S:0.0030%以下、
N:0.0030%以下及び
O:0.0020%以下
に抑制して、残部はFe及び不可避的不純物からなる鋼であって、
該鋼中の硫化物のうち、Zr硫化物、Mn硫化物若しくは(Zr,Mn)複合硫化物又はこれらの硫化物とAlの窒化物若しくは酸化物とが合体したものが、合計で全硫化物の80 vol%以上であり、しかも該硫化物の粒径1μm 未満のものが全硫化物の20 vol%以下であることを特徴とする無方向性電磁鋼板。
【0010】
この発明の無方向性電磁鋼板においては、上記した成分組成範囲になる鋼ばかりでなく、次の成分組成になる鋼であってもよい。
C:0.01%以下、
Si:2.5 〜5.0 %、
Mn:0.1 〜1.5 %、
P: 0.005 〜 0.15 %及び
Al:0.20 〜2.0 %
を含み、かつS、N及びOをそれぞれ
S:0.0030%以下、
N:0.0030%以下及び
O:0.0020 %以下
に抑制して、残部はFe及び不可避的不純物からなる鋼。
【0013】
また、この発明は、Caを含む脱硫フラックスとREMとを、Ca系脱硫フラックスが多い割合の下に併用し、該脱硫フラックス投入後の脱ガス時間をコントロールして硫化物を十分に浮上分離させる脱硫処理を行って、
C:0.01mass%以下、
Si:2.5 〜5.0 mass%、
Mn:0.1 〜1.5 mass%及び
P: 0.005 〜 0.15mass %
を含み、かつS、N及びOをそれぞれ
S:0.0030mass%以下、
N:0.0030mass%以下及び
O:0.0020%以下
に抑制して、残部は不可避的不純物成分を除き実質的にFeの組成からなる鋼を溶製し、常法に従いスラブとした後、
このスラブを1150℃以下に加熱して熱間圧延に供し、
その後は1回又は中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を行い、次いで仕上焼鈍を施して、該鋼中の硫化物のうち、Zr硫化物、Mn硫化物若しくは(Zr,Mn)複合硫化物又はこれらの硫化物とAlの窒化物若しくは酸化物とが合体したものを、合計で全硫化物の80 vol%以上にし、しかも該硫化物の粒径1μm 未満のものを全硫化物の20 vol%以下にすることを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法である。
【0014】
この発明の無方向性電磁鋼板の製造方法においては、溶製する鋼が上記成分組成範囲になる鋼ばかりでなく、次の成分組成範囲になる鋼でもよい。
C:0.01%以下、
Si:2.5 〜5.0 %、
Mn:0.1 〜1.5 %、
P: 0.005 〜 0.15 %及び
Al:0.20 〜2.0 %
を含み、かつS、N及びOをそれぞれ
S:0.0030%以下、
N:0.0030%以下及び
O:0.0020 %以下
に抑制して、残部はFe及び不可避的不純物からなる鋼。
【0017】
【作用】
まず、この発明の解明経緯について説明する。
発明者らは、積極的に鋼中の介在物及び析出物(以下、総称して介在物という)の大きさ、及び大きさごとの全介在物に対する体積分率を制御して低鉄損の無方向性電磁鋼板を得るという観点から、Sを0.003 %以下、N:0.0030%以下及びO:0.0020%以下に抑制した鋼につき、4μm 以下の鋼中介在物の全鋼中介在物に対する体積分率を60%以下、1μm 未満の鋼中介在物の全鋼中介在物に対する体積分率を15%以下の範囲にする、低鉄損無方向性電磁鋼板について開発し、先に特許出願を行った。
【0018】
かかる技術を基に、より一層の低鉄損を達成するために研究を進め、鉄損特性は鋼中の介在物の組成によっても変化するのではないかという考えに立って、以下のような実験を行った。
【0019】
製鋼工程における脱硫フラックス添加方法に工夫を凝らし、REM +Ca系脱硫フラックスにつきREM 割合を変化させた2種の脱硫フラックス(条件A:REM 添加量多い、条件B:Ca系フラックス多い)を用いて脱硫した溶鋼(いずれの溶鋼もC:0.005 %、Si:3.5 %、Mn:0.3 %であり、S:0.0030%以下、N:0.0030%以下、O:0.0020%以下と同一レベル)を用意し、常法に従いスラブにした後、このスラブを1130℃に加熱して熱間圧延を施して板厚2.0 mmとした。次いで1030℃で30 s焼鈍を行い、酸洗後、冷間圧延により最終板厚0.5 mmとしてから、1000℃で1分の仕上焼鈍を行った。
【0020】
かくして得られた無方向性電磁鋼板は、平均結晶粒径がいずれも170 μm であり、介在物の個数密度も一定であった。これらの無方向性電磁鋼板の磁気特性について調べた結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
表1から、全体の介在の個数密度及び寸法分布の差はないにもかかわらず、条件Bにより脱硫を行った場合のほうが、条件Aによる脱硫よりも著しく鉄損が低いことが判明した。脱硫条件の相違によって介在物中の硫化物の分布及び組成に差が生じたと考えられるので、得られた鋼板の介在物について硫化物の分布を電子顕微鏡で調べ、その組成を詳細に分析してみた。その結果を図1に示す。
【0023】
鋼板中に存在した硫化物は、
タイプ1:Alの酸化物又は窒化物にZrの硫化物、Mnの硫化物若しくは(Zr,Mn)の複合硫化物が合体したもの及びZr及び/又はMnの硫化物、
タイプ2:Alの酸化物又は窒化物に(Ca,Zr,Mn)の複合硫化物が合体したもの、
タイプ3:Alの酸化物又は窒化物に(REM ,Zr,Mn)の複合硫化物が合体したもの
であった。
【0024】
図1から、良い鉄損値を示した条件Bは、硫化物のなかでもタイプ1のものを主介在物として多量に含んでいることが判明した。その後の実験により、タイプ1の硫化物を80 vol%以上含む場合に、優れた鉄損特性が得られることが分かった。なお、かような場合には、タイプ2、タイプ3の硫化物で1μm 未満の粒度のものは存在しなかった。
【0025】
次に、タイプ1の硫化物を80 vol%以上含む鋼につきその粒度分布が鉄損に及ぼす影響を調べるために、前述の実験と同一成分になる鋼について、脱硫フラックス条件、製造条件を変化させて介在物の分布を変化させた種々の無方向性電磁鋼板を製造して鉄損を調査した。その結果を表2に示す。
【0026】
【表2】
【0027】
表2から、タイプ1の硫化物を主成分(80 vol%以上)とする鋼において、1μm 以下の体積割合を全硫化物の20 vol%以下にすることが、優れた鉄損特性を得るのに有効であることがわかった。
【0028】
以上のような実験結果が得られる理由については明らかではないが、条件Bにより脱硫を行った場合には、粒径が4μm 以上といったREM 系の粗大硫化物の介在物が著しく減少したことにより鉄損特性が向上し、同時に鉄損特性は、微細な硫化物の影響がより支配的となって、その微細な硫化物の介在物組成や分布が特定範囲に変化したことにより、さらなる鉄損低減が図られたものと考えられる。
【0029】
この発明は、以上のような知見に基づき、積極的に鋼中の硫化物系介在物の大きさ及びサイズごとの体積分率を制御することにより、鉄損の低い無方向性電磁鋼板を得るものであり、従来技術のような不純物成分量や介在物量を低減して清浄な鋼板にすることによる鉄損低減手段と比べて、清浄化のためのエネルギーを費やすことなしに、一層低い鉄損を安定して得られることが明らかとなった。
【0030】
次にこの発明における鋼中硫化物の種類とそのサイズを限定した理由について説明する。
鋼中の硫化物のうち、Zr硫化物、Mn硫化物若しくは(Zr,Mn)複合硫化物又はこれらの硫化物とAlの窒化物若しくは酸化物とが合体したもの(以下、Zr,Mn系硫化物と総称する)は、合計で全硫化物の80 vol%以上とする。これは、前述の如くZr,Mn系硫化物を主たる硫化物とすることによって、それ以外のREM 系及びCa系の硫化物といった粗大な硫化物を低減することができるからである。かかるZr,Mn系硫化物が80 vol%以上あれば、磁気特性上は問題がない。なお、Zrは、れんが等からの混入等によって不可避に溶鋼中に含まれる成分である。
【0031】
さらに、上記Zr,Mn系硫化物のなかでも、1μm 未満のものの割合を全硫化物の20 vol%以下にする。これは、1μm 未満の量が20 vol%を超えると、磁気特性に悪影響を与えるからである。
【0032】
なお、かかる介在物量を測定するに当たっては、鋼板の板厚方向の断面について観察すればよい。というのは、介在物の分布が鋼板面内方向において等方的であると推測できるので、鋼板の板厚方向の断面の測定により得られた結果は、試料の平均特性を十分に代表しているものと考えられるからである。この観察には光学顕微鏡又は電子顕微鏡のどちらを用いても構わず、光学顕微鏡の場合は倍率を400 倍以下、電子顕微鏡の場合は400 倍〜1000倍で観察を行うのことが好適である。試験片の作製及び試験方法(測定面積など)はJIS G0555 に規定された、鋼の非金属介在物の顕微鏡試験方法に基づき作製(研磨きずや、錆が出ないように試料を調整)及び試験を行うが、試験方法に関しては介在物によって占められた格子点の数を数えるのではなく、介在物の個数と介在物面積を観察像より画像解析処理装置を用いて測定し、そして介在物の大きさは、画像解析処理装置を用いて得られた介在物の面積から、面積が等価となる円の直径とする。この方法を用いることにより、光学顕微鏡及び低倍率の電子顕微鏡では測定が困難である1μm 未満の介在物観察及び測定も、技術的になんら問題もなく測定できる。
【0033】
次に、この発明の無方向性電磁鋼板の成分組成範囲の限定理由について述べる。
C:0.01%以下
Cは、磁気特性の面からは有害な成分であり、極力低減するのが好ましいため、C量は0.01%以下とする。
【0034】
Si : 2.5〜5.0 %
Siは、固有抵抗を高めることによって鉄損を低減する有用な成分であるので、低鉄損化のためには2.5 %以上が必要であり、一方その量が5.0 %を超えると冷延性が阻害されるので、上限を5.0 %とする。
【0035】
Mn : 0.1〜1.5 %
Mnは、スラブ加熱時の固溶S量低減に効果があり、また、Sに起因した熱間脆性を抑制するのに有用なために添加される成分であるが、0.1 %未満ではその添加効果に乏しく、一方1.5 %を超えると磁気特性の劣化を招くので、Mn量は0.1 〜1.5 %の範囲に限定する。
【0036】
この発明の効果を得るためには、不純物成分の量を低減することが必要で、特にS,N及びOをそれぞれ0.0030%以下、0.0030%及び0.0020%以下の範囲に抑制することが必要である。これらの量を超えると、硫化物の組成及び粒度分布制御による磁気特性向上は小さい。
【0037】
Sは、不純分成分のなかでも特に低減することが重要な成分である。すなわち、S及びNは、粗大介在物の核となる硫化物及び窒化物を形成するが、特にSはその傾向が強く、0.0030%を超える含有量では、介在物制御による鉄損の低減効果が阻害されてしまう。したがって、S量は、0.0030%以下とする。
【0038】
Nは、Sと同様に、粗大介在物の核となる窒化物を形成し、また、微細な介在物としても鋼中に存在する。それゆえ0.0030%を超えるNを含んでいると、鉄損の劣化を招くので、N量は、0.0030%以下とする必要がある。
【0039】
Oは、その含有量の低減が鉄損改善に直接結びつくことは広く知られている事実である。0.0020%を超えるO量では、鉄損が劣化するので、0.0020%以下とする必要がある。
【0040】
Al:0.20 〜2.0 %
Alは、鋼の脱酸やAl系の析出物の低減に寄与する他、Siと同様に固有抵抗を高めて鉄損を向上させる上でも有用な成分であるために含有させることができるが、その含有量が2.0 %を超えると冷延性の劣化を招くので、2.0 %以下の範囲とする。また、固有抵抗を高め、鉄損を向上させるためには、0.20%以上を含有させる。
【0041】
P:0.005 〜0.15%
Pは、鉄損の改善に有効であるため、含有させるが、P量が0.005 %に満たないとその効果に乏しく、一方0.15%を超えると冷延性が著しく劣化するので、0.005 〜0.15%の範囲に限定した。
【0042】
この発明の対象となる無方向性けい素鋼板は、概ね通常の製造方法に従って製造するが、その際、鋼中の介在物の組成及びその大きさ毎の体積分率制御に留意することが肝要である。
すなわち、基本的には常法に従い、溶鋼を連続鋳造法もしくは造塊−分塊圧延によってスラブとし、次いで熱間圧延を行い、その後は1回又は中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を行い、次いで仕上焼鈍を施して製品鋼板を得るわけであるが、この発明における硫化物の組成及び大きさの分布を満足させるためには、成分調整、脱硫、脱ガス等の鋼の溶製工程及び熱間圧延工程によって鋼中介在物の大きさ及び体積分率を制御するのが好適である。
【0043】
まず、溶製工程においては、S,N及びOをそれぞれ0.0030%以下、0.0030%及び0.0020%以下の範囲に抑制することが、製品板における1μm 未満の硫化物系介在物の全硫化物に対する体積割合を20%以下とするため、また粗大析出物の核となる硫化物、窒化物量を低減するためなどに必要である。そのためには、適切な脱硫、脱窒、脱酸処理を施す必要がある。
【0044】
なかでも脱硫方法が重要である。この脱硫には、Ca 等を含む脱硫フラックスと REM (希土類元素;例えば Ce を約 50 %含むもの)とを併用することができるが、REM 系の介在物は粗大化し易いため、併用の場合でもCa系の脱硫フラックスが多いような割合で使用することが好ましい。ここで使用される脱硫フラックスは、石灰(CaO )、螢石(CaF2)、ソーダ灰(Na2CO3)、か(苛)性ソーダ(NaOH)、か性カリ(KOH )等、通常使用される公知の種類のものの単独あるいは複合したものがある。
【0045】
また、脱ガス処理も脱硫、脱窒、脱酸処理のために有効である。加えて、Zn,Mn系硫化物の全硫化物に対する割合を80 vol%以上にするために、粗大なCa系等の硫化物を十分に浮上分離して、鋼中に存在させないようにすることが重要であり、そのためには脱硫フラックス投入後の時間コントロール等を行うことが有効である。
【0046】
また、製品板における1μm 未満の硫化物系介在物の占める体積分率を全硫化物の20%以下にするためには、スラブの加熱温度を1150℃以下にすることが重要である。なぜなら、スラブ加熱温度を1150℃以下とすると、熱間圧延時において1μm を下回る程の析出物の再固溶−微細析出が共に抑制され、鉄損の劣化要因である微細介在物が低減されるからである。
【0047】
なお、熱間圧延後のコイルの巻取温度は、通常実施される範囲であれば、特に規制されるものではないが、望ましくは600 ℃以上とする。これは、熱間圧延時に析出した1μm 未満の析出物(介在物)を効果的に粗大化して、弊害が比較的に少ない1〜4μm の介在物とすることができるからである。
【0048】
さらに、工程中、他の要件については何ら規制するものではなく、例えばスラブを熱間圧延にするに当たっては、一旦冷却してから加熱し、熱間圧延を行う方法でもよく、また、連続鋳造あるいは分塊圧延後に降温することなく熱間圧延を行うホットダイレクトローリング法(HDR)あるいは再加熱−熱間圧延を行うホットチャージローリング(HCR)法でもよい。上記製造工程において、熱延板焼鈍を行うことは、一向に差し支えない。冷間圧延は常法に従い、1回法又は中間焼鈍を挟む2回法のいずれも行うことができる。冷延後は最終仕上焼鈍を経て、製品とする。
【0049】
【実施例】
転炉吹錬により表3に示す種々の成分組成に調整した溶鋼をそれぞれ連続鋳造によりスラブとした。なお、上記の溶製に当たっては、脱硫、脱酸及び脱ガス処理を強化した操業を行った。この脱硫処理は、REM +脱硫フラックスの併用にて、表3に示すようにそのREM 添加割合を種々に変化させた各種条件で行って、鋼中介在物の組成を変化させた。REM 合金の粒径は、ほぼ3〜5mmであった。また、脱ガスは、RHにて20〜40分間行った。
【0050】
これらのスラブは、表3に示す所定の温度に加熱後、熱間圧延により板厚2.0 mmの熱延板としたのち、560 ℃でコイルに巻き取った。次いで、この熱延板を酸洗後、1040℃で30秒の連続焼鈍をしてから、1回の冷間圧延により最終板厚0.5 mmとし、しかる後に1050℃で30秒の仕上焼鈍を施して製品とした。
【0051】
【表3】
【0052】
かくして得られた無方向性電磁鋼板について、介在物のサイズ別体積分率を測定するとともに、鉄損の測定を行った。なお、介在物のサイズ別体積分率の測定は光学顕微鏡により、また鉄損は25cmエプスタイン法により行った。
鋼中の介在物サイズ別体積分率、鉄損の測定結果を表4にまとめて示す。
【0053】
【表4】
【0054】
表4から明らかなように、この発明に適合する成分組成及び製造条件で製造された鋼板の硫化物介在物サイズ別体積分率は、この発明の発明の限定範囲内にあり、鉄損(W15/50)も低い値を示している。
【0055】
【発明の効果】
この発明の無方向性電磁鋼板は、成分組成を限定するとともに硫化物系の介在物のサイズ別体積分率を特定することによって、低鉄損化を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】各種硫化物の全硫化物に対する粒度別の体積分率を溶製条件別に示す図である。
Claims (4)
- C:0.01mass%以下、
Si:2.5 〜5.0 mass%、
Mn:0.1 〜1.5 mass%及び
P: 0.005 〜 0.15mass %
を含み、かつS、N及びOをそれぞれ
S:0.0030mass%以下、
N:0.0030mass%以下及び
O:0.0020mass%以下
に抑制して、残部はFe及び不可避的不純物からなる鋼であって、
該鋼中の硫化物のうち、Zr硫化物、Mn硫化物若しくは(Zr,Mn)複合硫化物又はこれらの硫化物とAlの窒化物若しくは酸化物とが合体したものが、合計で全硫化物の80 vol%以上であり、しかも該硫化物の粒径1μm 未満のものが全硫化物の20 vol%以下であることを特徴とする無方向性電磁鋼板。 - 請求項1において、鋼がさらに
Al:0.20 〜2.0 mass%
を含む組成からなるものであることを特徴とする無方向性電磁鋼板。 - Caを含む脱硫フラックスとREMとを、Ca系脱硫フラックスが多い割合の下に併用し、該脱硫フラックス投入後の脱ガス時間をコントロールして硫化物を十分に浮上分離させる脱硫処理を行って、
C:0.01mass%以下、
Si:2.5 〜5.0 mass%、
Mn:0.1 〜1.5 mass%及び
P: 0.005 〜 0.15mass %
を含み、かつS、N及びOをそれぞれ
S:0.0030mass%以下、
N:0.0030mass%以下及び
O:0.0020 mass%以下
に抑制して、残部はFe 及び不可避的不純物からなる鋼を溶製し、常法に従いスラブとした後、
このスラブを1150℃以下に加熱して熱間圧延に供し、
その後は1回又は中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を行い、次いで仕上焼鈍を施して、該鋼中の硫化物のうち、Zr硫化物、Mn硫化物若しくは(Zr,Mn)複合硫化物又はこれらの硫化物とAlの窒化物若しくは酸化物とが合体したものを、合計で全硫化物の80 vol%以上にし、しかも該硫化物の粒径1μm 未満のものを全硫化物の20 vol%以下にすることを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。 - 請求項3において、鋼がさらに
Al:0.20 〜2.0 mass%
を含む組成からなるものであることを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
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