JP5266710B2 - 硬質皮膜被覆工具 - Google Patents

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Description

本発明は、切削工具上に硬質皮膜が被覆された硬質皮膜被覆工具に関する。
従来、超硬合金、サーメットまたは高速度工具鋼を基材とする切削工具において、その耐摩耗性を向上させることを目的に、TiNやTiCN、TiAlN等の硬質皮膜をコーティングすることが行われていた。特にTiとAlの複合窒化皮膜(以下、TiAlNとする)が優れた耐摩耗性を示すことから、Tiの窒化物や炭化物、炭窒化物などからなる皮膜に代わって、TiAlNからなる皮膜は、高速切削や焼入れ鋼などの高硬度材切削用の切削工具に適用されてきた。
しかし、TiAlNだけでは高速切削時に発生する1000℃近い高温に耐えうることが難しいため、皮膜の変質などの問題が生じていた。そこで、窒化物形成元素を追加したTiAlM(CN)の組成を有する皮膜が新たに開発された(Mは窒化物形成元素)。
例えば、特許文献1では、TiAlM(CN)(Mは、Nb、Ta、HfおよびCr)からなる硬質皮膜の結晶構造が、切削工具の耐摩耗性向上に寄与していることが開示されている。また、特許文献2では、TiAl含有硬質複合皮膜のX線回折における(111)結晶面のピーク高さに対する(200)結晶面のピーク高さの比が1以上の複合硬質皮膜部材が耐摩耗性を発揮する旨が開示されている。
特開2004−99966号公報 特開平11−131215号公報
しかし、特許文献1に記載されているTiAlM(CN)は、岩塩構造型結晶であることから、その結晶方位により切削特性が大きく変化する。そのため、TiAlM(CN)からなる硬質皮膜を切削工具に適用させた場合、膜の密着性や耐摩耗性に影響を及ぼすが、その結晶方位による切削特性の変化については何ら開示されていない。
また、特許文献2に記載のTiAl含有硬質複合皮膜について、Alの比率が0.5以上となる硬質複合皮膜の実施例は何ら開示されていない。さらに、実施例に記載された試料は、X線回折における(111)結晶面のピーク高さに対する(200)結晶面のピーク高さの比が20未満のものが大部分である。これは、ピーク高さの比が20以上の複合硬質皮膜部材は、結晶構造の軟質化を招き、膜の密着性劣化などを誘引するため、問題となっていた。
本発明の課題は、前述した問題点に鑑みて、膜の密着性と耐摩耗性を有した硬質皮膜被覆工具を提供することである。
本発明者は、AlTiCrCN(Al比率:0.5以上)からなる硬質皮膜において、硬質皮膜表面のX線回折を行った結果、(111)結晶面のピーク高さに対する(200)結晶面のピーク高さの比(配向比)が一定範囲にあり、かつ膜硬さが1764HV以上2438HV以下にある硬質皮膜が優れた工具寿命を示すことを知得した。
この知得により、本発明においては、超硬合金、サーメットまたは高速度工具鋼を基材とする切削工具の基材上に、アークイオンプレーティング法を用いて、バイアス電圧を40V〜80Vに印加して、TiC(1−e)からなり、Nの原子比eが0.5≦e≦1である第1の硬質皮膜を被覆する。その上に(AlTiCr)(C1−d)からなり、Al、Ti、Crそれぞれの原子比a、b、cが、0.5≦a≦0.75、0.2≦b≦0.45、0.02≦c≦0.2、a+b+c=1を満たし、かつNの原子比dが0.5≦d≦1となるようにした第2の硬質皮膜を被覆する。また、第2の硬質皮膜表面のX線回折を行った時に(200)結晶面の ピーク高さをh(200)とし、(111)結晶面のピーク高さをh(111)とすると、1≦h(200)/h(111)≦10を満たし、かつ膜硬さが1764HV以上2438HV以下となる硬質皮膜を被覆した工具を用いることにより、切削工具としての耐摩耗性および硬質皮膜との密着性が向上した。以下、第1の硬質皮膜および第2の硬質皮膜の構成元素、原子比率、膜厚、X線回折特性(配向比)について説明する。
第1の硬質皮膜は、第2の硬質皮膜の下地層としてTiC(1−e)(0.5≦e≦1)からなる皮膜として基材上に被覆され、その上に被覆する第2の硬質皮膜との密着性を改善する。特に基材が超硬合金以外のサーメットや高速度工具鋼などの材料である場合、AlTiCr(CN)からなる硬質皮膜は基材との密着性が低いため、下地層としてTiCNからなる硬質皮膜を被覆することは、基材との密着性を向上させる点で有効である。また、Nの原子比を0.5以上1以下に制限することで硬質皮膜全体の軟質化を防ぐこともできる。
第2の硬質皮膜は、第1の硬質皮膜の上に被覆された(AlTiCr)(C1−d)の組成からなる皮膜である。また、Al、TiおよびCrの原子比率a、bおよびcは、0.5≦a≦0.75、0.2≦b≦0.45、0.02≦c≦0.2、0.5≦d≦1、a+b+c=1の関係を満たす。
Alの原子比率を制限する理由は、Alの原子比率aが0.75を超えると結晶構造が変化するため、皮膜の耐摩耗性が損なわれるためである。また、Alの原子比率aが0.5を下回ると皮膜の耐食性が低下し、サビ発生などの問題が生じるためである。Tiの原子比率を制限する理由は、Tiの原子比率bが0.45を超えると皮膜の硬度および耐熱性が低下し、実用上問題が生じるためである。また、Tiの原子比率aが0.2を下回るとAlや第三元素Crの原子比が高くなり、結晶構造が六方晶ウルツ鉱型に変化することで皮膜の軟質化を招くためである。Crの原子比率cを制限する理由は、Crの原子比率cが0.2を超えると、岩塩構造型結晶であるTiAlCrN膜への置換効果が飽和するためである。また、Crの原子比率cが0.02を下回ると、皮膜の硬度および耐熱性向上への寄与率が減少するためである。
また、第2の硬質皮膜表面のX線回折を行った時に(200)結晶面のピーク高さをh(200)とし、(111)結晶面のピーク高さをh(111)とすると、1≦h(200)/h(111)≦10の関係を満たすこととした(以下、h(200)/h(111)を配向比とする)。ここで、ピーク高さとは、X線回折データのベースラインからピークトップまでの大きさをいう。さらに、膜硬さを1764HV以上2438HV以下とした。
配向比の下限を1以上とする理由は、(111)結晶面の配向が(200)結晶面よりも大きくなる、すなわち配向比が1未満となると、結晶歪みが増大し、硬質皮膜の靭性が低下するためである。また、配向比の上限を10以下とする理由は、(200)結晶面の配向が過大になると、上記と同様に結晶歪みの増大に加えて、結晶構造の軟質化も招き、硬質皮膜の靭性低下を起こすためである。
なお、Al、TiおよびCrの原子比a、bおよびcについては、0.55≦a≦0.7、0.25≦b≦0.4、0.03≦c≦0.15とすることが好ましく、0.6≦a≦0.65、0.3≦b≦0.35、0.05≦c≦0.1とすることがより好ましい。配向比の範囲については、結晶歪み防止の点から2以上8以下とすることが好ましく、3以上7以下とすることがより好ましい。
請求項2の発明においては、第1の硬質皮膜の膜厚が0.05μm以上0.5μm以下であり、かつ第2の硬質皮膜の膜厚が0.5μm以上10μm以下である硬質皮膜被覆工具を用いることにより、基材と硬質皮膜の間、および硬質皮膜間で安定した密着力を得ることができた。
第1の硬質皮膜の膜厚の下限が0.05μm以上であること、および第2の硬質皮膜の膜厚の下限が0.5μm以上である理由は、それらの厚さよりも小さくなると基材や下地層との密着力が不足するためである。また、第1の硬質皮膜の膜厚の上限が0.5μm以下であること、および第2の硬質皮膜の膜厚の上限が10μm以下である理由は、それ以上の厚さになると膜厚方向の密着性が不安定になるためである。
なお、第1の硬質皮膜の膜厚は0.1μm以上0.5μm以下、第2の硬質皮膜の膜厚は1μm以上9μm以下とすることが好ましい。また、第1の硬質皮膜の膜厚は0.2μm以上0.4μm以下、第2の硬質皮膜の膜厚は1.5μm以上8.5μm以下とすることがより好ましい。
本発明においては、超硬合金、サーメットまたは高速度工具鋼を基材とする切削工具の基材上に、アークイオンプレーティング法を用いて、バイアス電圧を40V〜80Vに印加して、TiC(1−e)からなり、Nの原子比eが0.5≦e≦1である第1の硬質皮膜を被覆し、その上に(AlTiCr)(C1−d)からなり、Al、Ti、Crそれぞれの原子比a、b、cが、0.5≦a≦0.75、0.2≦b≦0.45、0.02≦c≦0.2、a+b+c=1を満たし、かつNの原子比dが0.5≦d≦1となるようにした岩塩構造型結晶である第2の硬質皮膜を被覆しており、第2の硬質皮膜表面から銅ターゲットを用いて X線回折を行い、(200)結晶面のピーク高さをh(200)とし、(111)結晶面のピーク高さをh(111)としたときに、1≦h(200)/h(111)≦10を満たし、かつ膜硬さが1764HV以上2438HV以下となる硬質皮膜被覆工具を用い、切削工具の耐摩耗性および硬質皮膜との密着性を向上させたので、作業の効率化が進み、段取り替え等の工数が大幅に削減できた。また、使用時間当たりの工具の摩耗量も低減したことから、トータルコストの削減にもつながった。
また、請求項2の発明においては、第1の硬質皮膜の膜厚が0.05μm以上0.5μm以下であり、かつ第2の硬質皮膜の膜厚が0.5μm以上10μm以下である硬質皮膜被覆工具を用いることにより、基材と硬質皮膜の間、および硬質皮膜間で安定した密着力を得ることができたので、耐熱性(耐酸化性)が向上し、高速化・効能率化に適用できる切削工具を提供することができた。
本発明の実施の形態の一例を、図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る第1および第2の硬質皮膜を成膜するために用いたアークイオンプレーティング装置の外観図を示す。このアークイオンプレーティング装置は、図示しない真空排気ポンプにつながる真空排気穴4を介して真空に排気される真空容器1と、この容器1の中にそれぞれ設けられた、被処理物である基材9を保持する装着用治具である回転式装着用治具8、回転式装着用治具8に保持された基材9の1側に向かって真空容器1の内側のアーク式蒸発源6に取り付けた陰極を構成するターゲット10、アーク式蒸発源6に取り付けられた陰極を構成するターゲット10と陽極を構成する真空容器1との間に接続された基材9を挟むように基材9の他側に向けて真空容器1の他内側である上内側に取り付けられた圧力勾配型プラズマ電子銃2、および真空容器1内に配置したアノード16に対して圧力勾配型プラズマ電子銃2に負のバイアス電圧を印加する圧力勾配型プラズマ電子銃2用の直流電源15、を有する。3は反応ガス導入口、14は不活性ガス導入口である。
第1および第2の硬質皮膜の生成過程は、イオンボンバード工程と成膜工程に分けられる。まず、イオンボンバード工程について説明する。図1に示した不活性ガス導入口14から真空容器1内に充填された不活性ガスであるArは、圧力勾配型プラズマ電子銃2によるグロー放電と圧力勾配型プラズマ電子銃2の周囲に取り付けられた磁石5によって、イオン化したアルゴン原子となり、プラズマ領域7が形成される。それらのアルゴン原子は、基材9が印加されると電気的に引き寄せられて基材9表面に衝突し、このとき基材9表面がエッチング作用により物理的に除去される。その結果、成膜時において、基材9と第1および第2の硬質皮膜との密着性を飛躍的に向上させる。
次に成膜工程について説明する。アーク式蒸発源6には陰極物質であるターゲット10を取り付ける。例えば、ターゲットにTiAlの合金を用いて、反応ガスがN2の場合には、TiAlNの皮膜が形成される。アーク電源13によりターゲット表面にアーク放電を生じさせると、アーク放電のホットスポット11が形成されて、蒸気飛散して基板9へ向かう。そこに反応ガス導入口3から反応ガスを導入し、回転式装着用治具8と基材9にバイアス電源12を印加することで蒸着物質と反応ガスがイオン化した状態で引き寄せられて、基材9の表面に第1および第2の硬質皮膜が形成される。
前述した図1の装置を用いて種々の硬質皮膜を高速度工具鋼製のホブ上に成膜し、成膜後の高速度工具鋼製ホブを用いて行った切削試験結果について説明する。第1および第2の硬質皮膜は、その構成元素となる種々の合金ターゲットに対して、アーク電流150〜190A、制御圧力0.8〜3.0Pa、基板に印加するバイアス電圧40〜120V、基板温度400〜500℃の範囲で設定して、図1に示す基材9上に第1の硬質皮膜、第2の硬質皮膜の順序で成膜した。
基材9には日本工業規格(JIS)のB0174に規定されるホブ(高速度工具鋼製)を適用し、そのすくい面および逃げ面には、本発明に係る硬質皮膜3条件(TiN+Al60Ti35CrN(試料1)、TiN+Al65Ti25Cr10N(試料2)、TiN+Al75Ti20CrN(試料3))および比較例となる硬質皮膜3条件(TiN+Al45Ti50CrN(試料4)、TiN+Ti50Al50N(試料5)、Al70Cr30N(試料6:第1の硬質皮膜なし))の計6条件を各々成膜した。各成膜条件による成膜後、それらのホブを用いてホブ盤上で切削試験を行い、その切削長を測定した。切削条件は以下の通りである。
・工具:高速工具鋼製ホブ
モジュール:2.45、圧力角:15.5°、外径:95mm、条数:3、
溝数:12、進み角:4°50′
・使用機械:株式会社カシフジ社製ホブ盤KA220
・切削方法:クライム切削
・被削材:SCR420H(φ166.6mm×高さ50mm、ブリネル硬さ180HB)
・切削速度:200m/min
・送り:2.2mm/rev
・潤滑:ドライカット
表1は、本発明に係る硬質皮膜(3条件)および比較例となる硬質皮膜(3条件)を、ホブのすくい面および逃げ面に被覆したホブを用いて行った切削試験の切削長さを示す。表1中の切削長とは、ホブの摩耗幅(VB)が0.2mm以上になった時の切削長、もしくは異常摩耗発生時までの切削長をいう。
Figure 0005266710
表1の結果より、本発明に係る硬質皮膜(TiN+Al60Ti35CrN(試料1)、TiN+Al65Ti25Cr10N(試料2)、TiN+Al75Ti20CrN(試料3)を被覆したホブは、それぞれ310m、260mおよび220mの切削長を示した。一方、本発明外の組成であるAl45Ti50CrNの硬質皮膜を被覆したホブ(試料4)やTiAlNやAlCrNからなる従来の硬質皮膜を被覆したホブ(試料5および6)は、155m〜206mの切削長を示すに留まった。特に試料1の硬質皮膜(TiN+Al60Ti35CrN)を被覆したホブは310mの切削長を示し、3種類の比較例のホブに対して1.5〜2倍の切削長であった。以上より、本発明に係る硬質皮膜を被覆したホブは、本発明外の組成である硬質皮膜を被覆したホブおよび従来の硬質皮膜を被覆したホブに比べて耐摩耗性が向上した。
次に、本発明に係る3種類の硬質皮膜(TiN+Al60Ti35CrN、TiN+Al65Ti25Cr10N、TiN+Al75Ti20CrN、)について、それらの結晶方位と切削試験における切削長との関係を調査した。具体的には、第2の硬質皮膜の被覆条件であるアーク電流、制御圧力、基板に印加するバイアス電圧、基板温度の目安となる炉内温度を様々な条件で調節し、日本工業規格(JIS)のG0203に相当する高速度工具鋼製の刃具試験片上に、本発明に係る3条件の硬質皮膜を各々被覆させて、実施例1と同様の切削試験を行い、刃具試験片による切削長とX線回折による結晶方位との関係を調査した。
表2、表3および表4は、本発明に係る硬質皮膜がTiN+Al60Ti35CrN(表2)、TiN+Al65Ti25Cr10N(表3)、TiN+Al75Ti20CrN(表4)、の各場合において、それら硬質皮膜を被覆した刃具試験片を用いて切削試験を行った切削長と第2の硬質皮膜表面をX線回折した時の配向比および各種成膜条件を示す。ここで配向比h(200)/h(111)とは、第2の硬質皮膜表面から銅ターゲットを用いてX線回折したときの(200)結晶面のピーク高さ(h(200))と、(111)結晶面のピーク高さ(h(111))との比をいう。切削長については、実施例1と同様に刃具試験片の摩耗幅(VB)が0.2mm以上になるか、もしくは異常摩耗発生時までの切削長とする。また、本発明外の硬質皮膜(TiN+Ti50Al50N)を被覆した刃具試験片(試料10)を用いた場合の切削長、配向比および成膜条件も表2〜4に示す。
Figure 0005266710
Figure 0005266710
Figure 0005266710
表2、表3および表4の結果より、配向比 h(200)/h(111)が1未満もしくは10より大きい場合は、刃具試験片の切削長がいずれも10m以下となり、本発明外の硬質皮膜(試料10)の結果である10mを下回る結果となった。これは、上述したように配向比が1未満となると、結晶歪みが増大し、硬質皮膜の靭性が低下するためであり、配向比が10を越えると、(200)結晶面の配向が過大になり、結晶歪みの増大に加えて、結晶構造の軟質化も招き、硬質皮膜の靭性低下を起こすためである。
一方、配向比 h(200)/h(111)が1以上10以下の範囲にあり、かつ膜硬さが1764HV以上2438HV以下の範囲にある刃具試験片の切削長は、いずれも10m以上であった。特に硬質皮膜がTiN+Al60Ti35CrNの場合(表2)、その配向比が、1.5、2、4.1、4.3、6.1および6.2と1以上10以下の範囲にある時は、その切削長が19.6m、20.0m、34.0m、35.0mおよび40.0mとなり、いずれも20m以上であった。
このことから、高速度工具鋼等を基材とする切削工具の基材上に、アークイオンプレーティング法を用いて、バイアス電圧を40V〜80Vに印加して、TiC(1−e)からなり、Nの原子比eが0.5≦e≦1である第1の硬質皮膜を被覆し、その上に(AlTiCr)(C1−d)からなり、0.5≦a≦0.75、0.2≦b≦0.45、0.02≦c≦0.20、a+b+c=1を満たし、0.5≦d≦1となるようにした第2の硬質皮膜を被覆しており、第2の硬質皮膜表面のX線回折を行うと、その配向比 h(200)/h(111)が1以上10以下を満たし、かつ膜硬さが1764HV以上2438HV以下となる硬質皮膜被覆工具を用いることにより、膜の密着性と耐摩耗性を改善した切削工具を提供することができた。
なお、本発明に係る実施例は、アークイオンプレーティング法を用いて成膜処理を行っているが、溶解法やスパッタ法を用いて成膜処理を行っても、同様の効果が得られることは言うまでもない。
本発明に係る第1の硬質皮膜および第2の硬質皮膜を成膜するために用いるアークイオンプレーティング装置の外観図を示す。
符号の説明
9 基材

Claims (2)

  1. 超硬合金、サーメットまたは高速度工具鋼を基材とする切削工具の基材上に、アークイオンプレーティング法を用いて、バイアス電圧を40V〜80Vに印加して、TiC(1−e)からなり、Nの原子比eが0.5≦e≦1である第1の硬質皮膜を被覆し、その上に(AlTiCr)(C1−d)からなり、Al、Ti、Crそれぞれの原子比a、b、cが、0.5≦a≦0.75、0.2≦b≦0.45、0.02≦c≦0.2、a+b+c=1を満たし、かつNの原子比dが0.5≦d≦1となるようにした第2の硬質皮膜を被覆しており、前記第2の硬質皮膜表面のX線回折を行った時に(200)結晶面のピーク高さをh(200)とし、(111)結晶面のピーク高さをh(111)とすると、1≦h(200)/h(111)≦10を満たし、かつ膜硬さが1764HV以上2438HV以下であることを特徴とする硬質皮膜被覆工具。
  2. 前記第1の硬質皮膜の膜厚が、0.05μm以上0.5μm以下であり、かつ前記第2の硬質皮膜の膜厚が、0.5μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の硬質皮膜被覆工具。
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