以下、図面を参照して、本発明を、カード状記録媒体またはカード状印刷媒体(以下、単にカードという。)に文字や画像を印刷記録する機能と、カードの磁気ストライプ部に磁気的な記録処理を行う機能とを有するサーマルプリンタ(以下、プリンタ装置という。)に適用した実施の形態について説明する。
(構成)
<システム構成>
図11に示すように、本実施形態のプリンタ装置1は、図示を省略したインターフェースを介して、上位装置100(例えば、パーソナルコンピュータ等のホストコンピュータ)に接続され、上位装置100からプリンタ装置1に印刷記録データや磁気記録データ等を送信して、記録動作等を指示することが可能である。なお、後述するように、プリンタ装置1は、オペパネ部(操作表示部)5を有しており(図11、図1参照)、上位装置100からの記録動作指示の他、オペパネ部5からの記録動作指示も可能である。
上位装置100には、一般に、原稿に記録された画像を読み取るスキャナ等の画像入力装置101、上位装置100に命令やデータを入力するためのキーボードやマウス等の入力装置102、上位装置100によって生成されたデータ等の表示を行なう液晶ディスプレイ等のモニタ103が接続されている。
<外観構成>
図1に示すように、本実施形態のプリンタ装置1は、装置筐体としてのケーシング2の一側に配置され、記録処理前のブランクな複数のカードを積層状に収納可能(約100枚程度)であってケーシング2に対して着脱自在に取り付けられるカード供給部10と、同じくケーシング2の一側でカード供給部10の下方に配置され、記録処理後のカードを傾斜状に収容可能(約30枚程度)であってケーシング2に対して着脱自在に取り付けられるカード収容部20と、同じくケーシング2の一側でカード供給部10に隣接する位置に、プリンタ装置1のエラー状態を含む動作状態を表示する表示部4を有し、印刷処理や磁気記録処理の各種設定を行うためのオペパネ部5が設けられている。なお、オペパネ部5は、ダイヤル6を回転させることによりこれに同期して回転可能に設けられている。
カード収容部20の一部には、収容オーバーとなった記録処理後のカードを装置外部へ放出可能な開口部として形成されたカード放出口21が設けられている。また、プリンタ装置1の一面には、後述する印刷記録に使用されるインクリボンRを内装したカートリッジ52を着脱する際に装置内部にアクセスするための開閉カバー7が設けられており、開閉カバー7はケーシング2の一部を構成している。
そして、カード供給部10ないしカード収容部20に対向して、ケーシング2の他側には、第2の記録部としての磁気エンコーダユニット80がその一部をケーシング2から突出する形で配置されている。
<内部構成>
次に、図2および図3に基づきプリンタ装置1の内部の各構成要素について説明する。なお、図2はカード供給部10から供給された記録処理前のブランクなカードCが第1の記録部としての印刷部50に向けて搬送されている状態を示し、後述するカードクリーニング機構30のクリーニング部材としてのクリーニングローラ31が搬送中のカードCの表面に当接してその印画される面を清浄にしている状態を示している。
また、図3は印刷部50ないし磁気エンコーダユニット80により記録処理されたカードCがカード収容部20に向けて排出される際の状態を示している。このとき、搬送ローラ41、42は、後述する移動機構60により略水平状のカード搬送路を形成する第1の位置から傾斜状のカード搬送路を形成する第2の位置へと移動してカードCをカード排出口23に向けて搬送可能な状態を維持する。
カード供給部10は、プリンタ装置1の一側に着脱自在に設けられ、その内部に記録処理前の複数のブランクなカードを積層状に収納可能としており、機体(プリンタ装置1)側に設けられ、図示を省略するモータにより回転駆動する供給ローラ11が最下位(最下層)のカードを装置内部へと繰り出す際にカードCの一枚のみの通過を許容するために、供給コロ12と板状部材からなる分離ゲート13とを有している。供給されるカードCは供給コロ12と分離ゲート13との間を通過して、カード供給部10に連接するようにケーシング2の一側に設けられたカード供給口14へと導かれる。なお、詳述すると、分離ゲート13の下端部には図示しない可撓性のパッドが設けられており、例えば、厚さの異なる薄いカードを供給する場合であっても、一枚ずつの分離を可能としている。
一方、カード収容部20は、プリンタ装置1(ケーシング2)の一側であって、カード供給部10の下方に着脱自在に設けられて記録処理後のカードCを傾斜状に収容可能としている。カード収容部20には、その内部の底面が傾斜状に形成された収容トレイ24が設けられており、ケーシング2の一側でカード供給口14の下方に開口を有して配置されたカード排出口23から排出される記録済のカードCが排出ローラ15により収容トレイ24上に順次排出されて収容される(図3参照)。
排出ローラ15はプリンタ装置1側に固設されており、上述した供給ローラ11を回転駆動する図示を省略するモータによって回転駆動されるが、供給ローラ11がブランクなカードCを供給するために回転する方向を正転駆動とした場合、図示を省略するモータの逆転駆動により排出されるカードCを収容トレイ24上に排出するように回転駆動される。つまり、図示を省略するモータの正逆転駆動により供給ローラ11および排出ローラ15が回転されるが、供給ローラ11には図示しないワンウェイクラッチが設けられているため、カード供給方向にのみ回転することができる(ワンウェイクラッチの作用により、カード供給方向と逆方向には回転駆動は伝達されない)。一方、排出ローラ15は、図示を省略するモータの正逆転駆動により両方向に回転駆動される。本形態では、記録処理前のブランクなカードCの供給動作と記録処理後のカードCの排出動作とが同時に行われることがなく、排出ローラ15がカードCの排出のための回転とその逆の方向に回転することであっても支障はない。
カード供給口14から供給されたカードCは、後述する搬送駆動モータ70から伝達される駆動力を有して回転する搬送ローラ41、42、43へと順次引き継がれて略水平状のカード搬送路P1に沿って搬送される。なお、搬送ローラ42、43はそれぞれ駆動ローラと従動ローラとを有するローラ対で構成されている(以下、特に異なる説明がない限り、ローラ対の従動ローラについての説明を省略し、駆動ローラについてのみ説明する。)。
搬送ローラ41の対向側には、追って説明するカードクリーニング機構30の一部を構成するクリーニングローラ31が搬送ローラ41に対峙するようにカード搬送路P1に対して進退可能に設けられている。このクリーニングローラ31が搬送されるカードCに当接するようにカード搬送路P1上に進出しているとき(図2に示す状態)、駆動力を有する搬送ローラ41との間でカードCを挟持して回転することで、印刷部50により印刷記録される印画面からゴミや埃等の異物を除去して清浄にすることができる。
また、クリーニングローラ31がその動作位置であるカード搬送路P1上に進出したとき、クリーニングローラ31は、クリーニングローラ31に隣接した位置でカード搬送路P1から離間した所定の位置に配置されるクリーナとしてコロ状クリーナ32と面接触するように位置付けられる。コロ状クリーナ32は、クリーニングローラの外径(ローラ径)より小さい外径(ローラ径)を有しており、印刷部50の一部として構成されるインク媒体としてのインクリボンRを内装するカートリッジ52の所定部位に着脱自在に取り付けられる支持部材53に固着して回転可能に設けられている。
本形態では、クリーニングローラ31は表面が粘着性を有するゴム材料などの回転自在のローラ状部材からなり、また、コロ状クリーナ32は、樹脂製の回転自在のコロ状部材にスポンジ層を有する粘着性テープが巻装されており、この粘着性テープはクリーニングローラ31の表面の粘着性より高い粘着性を有しているため、カードCから除去されクリーニングローラ31の表面に付着したゴミや埃等の異物は両者の面接触によりコロ状クリーナ32の表面を形成する粘着性テープへと移行、引き渡されることになる。
搬送ローラ43のカード搬送方向下流側には、クリーニングローラ31によって清浄にされたカードCの表面に、所期の文字ないし画像を印刷記録する印刷部50が設けられている。
本形態においては、印刷部50は熱転写プリンタ(サーマルプリンタ)の構成が採用されており、カード搬送路P1上の印刷位置に設けられたプラテンローラ44に対して進退可能に設けられたサーマルヘッド51を有している。サーマルヘッド51の先端部には、複数の発熱素子51aが配設されている(図14参照、なお、図示では、複数の発熱素子51aを模式的に表している。)。プラテンローラ44とサーマルヘッド51との間には、インク層Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)等の複数色と保護層Oがパネル状で面順次に繰り返されたインクリボンRが介在している(図15(a)も参照)。このインクリボンRは、上述したようにカートリッジ52に内装されている。
カード搬送路P1に沿って移動するカードCに文字あるいは画像などの情報を熱転写記録する際には、インクリボンRは、リボン供給リール(リボン供給スプール)54から供給され、サーマルヘッド51の先端部(発熱素子51a)に略全面を当接させながら搬送され、インクリボンRを巻き取るリボン巻取リール(リボン巻取スプール)55に巻取られる。リボン供給リール54およびリボン巻取リール55は、不図示のモータにより回転駆動される。このとき、カードCの表面にインクリボンRを介在させてサーマルヘッド51を押圧しながらサーマルヘッド51の発熱素子51aを選択的に作動させることで、カードCに所期の文字、画像が印刷される。インクリボンRの搬送経路には、複数のガイドシャフトと、所定のインク層(本形態ではインク層Y)の頭出しを行うためにインク層Bk(ブラック)を検出する発光素子58、受光素子59からなる透過型センサが配設されている。
また、サーマルヘッド51のカード搬送方向上流側(搬送ローラ43側)には、カード搬送路P1に沿って搬送されるカードCの搬送方向先端および後端を検出する発光素子48、受光素子49からなるカード端部検出手段としての透過型センサ(以下、第1カード検出センサという。)が配設されている(図14も参照)。
印刷部50の下方には、上記した一連の搬送ローラ41、42、43、およびプラテンローラ44を正逆転方向に回転駆動する正逆転駆動可能なステッピングモータからなる搬送駆動モータ70が配設されている。搬送駆動モータ70による回転駆動力は、搬送駆動モータ70の回転軸に設けられたプーリ71がベルト72によりプーリ73へと伝達され、プーリ73に一端が巻装されたベルト74によりプラテンローラ44の回転軸に設けられたプーリ75を介してプラテンローラ44に駆動が伝達される。なお、プーリ73は2段プーリで構成されており、それぞれの段差部分にベルト72およびベルト74が架け渡されている。
プラテンローラ44の回転軸上、搬送ローラ41、42、43の回転軸上、並びに、それぞれのローラの間には図示を省略する複数のギヤが噛合状態で配設されており、プラテンローラ44に伝達された回転駆動力は、これら複数のギヤを介して各搬送ローラ41、42、43へと伝達される。
また、プラテンローラ44のカード搬送方向下流側(リボン巻取リール55側)には、カードCを搬送する機能を有し、印刷部50によりカードCに印刷記録を行なうときにカードCを挟持するニップローラ45がカード搬送路P1に沿って設けられており、このニップローラ45のさらにカード搬送方向下流側には、カードCを搬送するための送りローラ46が同じくカード搬送路P1に沿って設けられている。ニップローラ45および送りローラ46の略中央には、カード搬送路P1に沿って搬送されるカードCの搬送方向先端を検出する発光素子56、受光素子57からなる透過型センサ(以下、第2カード検出センサという。)が配設されている。
これらのニップローラ45および送りローラ46の回転軸にも図示を省略するギヤがそれぞれ設けられており、また、プラテンローラ44とニップローラ45、ニップローラ45と送りローラ45との間にも図示を省略する複数のギヤが設けられており、これら複数の図示しないギヤが相互に噛合うことにより、搬送駆動モータ70からの回転駆動力は、上述したプーリ、ベルトおよび図示しない複数のギヤを含む駆動力伝達機構を介して、プラテンローラ44の回転軸に設けられたギヤから分岐されてニップローラ45および送りローラ46にも伝達されていくことになる。なお、ニップローラ45および送りローラ46は、磁気エンコーダユニット80が、カードCの印画面の裏面に設けられた磁気ストライプ部に磁気記録処理をするときは、カードCを停止状態で挟持するように構成されている。
<磁気エンコーダユニット>
印刷部50のカード搬送方向下流側には、送りローラ46に隣接して磁気エンコーダユニット80が設けられている。この磁気エンコーダユニット80には、ニップローラ45および送りローラ46によって挟持状態で停止保持されたカードCの磁気ストライプ部に磁気記録処理するために、カード搬送路P1に沿って走査するように往復移動する(自走する)磁気ヘッド81が設けられている。
磁気エンコーダユニット80の一部には、カード搬送路P1に沿って搬送されるカードCを装置外へ排出可能な開口部として形成されたカード搬出口82が設けられている。つまり、このカード搬出口82は、カード供給口14に対向し、ケーシング2の他側であって、カード搬送路P1の延長線上に設けられている。
磁気エンコーダユニット80の内部には、カードCをカード搬出口82に向けて搬送するとともに、カード搬出口82からカードCを搬出可能な搬出ローラ47が配設されている。磁気エンコーダユニット80には、この搬出ローラ47を回転駆動する駆動源は備えないが、搬出ローラ47と送りローラ46との間に図示しない複数のギヤを設けて連結することにより、送りローラ46に伝達された回転駆動力が搬出ローラ47へと伝わる。
従って、プリンタ装置1は、カード供給部10から連なる略水平状のカード搬送路p1に沿って、カード供給口14、印刷部50および磁気エンコーダユニット80が設けられた構成を有している。
また、図示から明らかなように、磁気エンコーダユニット80は、その一部が機体内部に差し込まれるようなユニット形状を有しており、搬送駆動モータ70は、印刷部50の下方で、かつ、磁気エンコーダユニット80と、以下に説明する、搬送ローラ41、42を第1の位置と第2の位置とに移動させる移動機構60(図8ないし図10参照)との間に配設されている。
次に、図4〜図7を参照して、磁気エンコーダユニット80の構成についてさらに詳述する。カード搬送路P1の一部であって、プラテンローラ44の下流側には、サーマルヘッド51、プラテンローラ44を有して構成された印刷部50を通過したカードCをカード供給口14側に向けて逆搬送(スイッチバック搬送)するためのスイッチバックパスP2が形成されている(図4参照)。スイッチバックパスP2のカード搬送面の両側端には、搬送されるカードCをカード搬送路P1に沿って円滑にガイドするために、断面が略コ字状の固定側端ガイド87と断面が略逆コ字状の可動側端ガイド88とが対峙するように配設されている。
固定側端ガイド87は、カードCの先端側を受け入れ側のニップローラ45と送りローラ46とのニップ点へ導くためのガイドである。このガイドを欠落すると、搬送されるカードCの先端がニップローラ45と送りローラ46とのニップ点以外の部分に当接し円滑な搬送が困難となる。一方、可動調整側端ガイド88は、固定側端ガイド87とともに搬送されるカードCの他側端をガイドするものである。この可動調整側端ガイド88は、カードC幅のサイズに応じガイド幅を調整するために移動可能で、図示を省略したバネにより常時固定側端ガイド87側に付勢されている。
磁気エンコーダユニット80は、磁気ヘッド81を往復動させるためのヘッド駆動機構を備えている。ヘッド駆動機構は、ヘッドキャリッジ84、キャリッジガイド85、タイミングベルト86で構成されている。ヘッドキャリッジ84は、磁気ヘッド81を搭載しキャリッジガイド85に移動自在にガイド支持され、磁気エンコーダ領域a1(図4参照)を往復駆動する。この駆動力は、タイミングベルト86を介して図示しないエンコーダ付き直流モータにより駆動量が監視された状態で供給される。キャリッジガイド85は、ヘッドキャリッジ84をカードCの磁気ストライプ部に沿って平行にガイドする左右一対のシャフトで構成されている。ヘッドキャリッジ84には、磁気ヘッド81(の位置)を検出するためキャリッジガイド85を支持する支持フレームに取り付けられた透過型のヘッド検出センサ83によって検出される遮蔽板84aが一体成形により設けられている。
また、磁気エンコーダユニット80は、カード搬送路P1のカード搬送面に対して下方に位置する退避位置と、カードCの磁気ストライプ部への書き込みないし読み取りを行うための動作位置との間で磁気ヘッド81を進退させるヘッド進退機構を備えている。
図7に示すように、ヘッド進退機構は、カードCの側端部をガイド支持するガイド凹溝87aを形成する固定側端ガイド87のカード搬送方向前後端部より磁気ヘッド81の移動軌跡側に突出形成された傾斜ガイド部87b、87c(断面構造は図12参照)と、この傾斜ガイド部87b、87cとカード搬送方向前後端部位置で係合し磁気ヘッド81を下方に退避させるヘッドキャリッジ84に形成された傾斜部84cとで構成される。なお、この傾斜部84cは磁気ヘッド81を挟み前後に設けられるとともに、磁気ヘッド81自身が傾斜ガイド部87b、87cと接触しキズが付かないように配慮されている。また、押圧板89は、逆L字状の揺動アーム体で、一方の突出アーム89aのカードCを押圧する面には両面接着剤を用いて接着されたEPDM材等のゴム体89cを設け、他方の突出アーム89bにはヘッドキャリッジ84の移動方向に平行し当接ガイド89dが形成されている。そして、ヘッドキャリッジ84側にはその当接ガイド89dを移動時に押圧する当接ガイド揺動傾斜面84bが形成され、ヘッドキャリッジ84がホーム位置からの移動に伴い当接ガイド揺動傾斜面84bが当接ガイド89dを押圧することで、押圧板89が図中矢印方向に揺動され、ゴム体89cが停止中のカードCを上方から押圧支持するようになっている。
従って、ヘッド進退機構により、カード搬送路P1のカード搬送面に対し下方に位置する退避位置と、カードCの磁気ストライプ部への書き込みないし読み取りを行うための動作位置との間での磁気ヘッド81の進退に連動して、押圧板89はカード搬送路P1(スイッチバックパスP2)のカード搬送面に対して昇降する。
磁気ヘッド81は、ニップローラ45および送りローラ46に一時的に停止状態で挟持されたカードCの磁気ストライプ部に圧接し、その状態で磁気ストライプ部の端から端の全領域内で必要な範囲を移動し情報をストライプ部に記録する。なお、磁気ヘッド81の移動を阻止しないように、固定側端ガイド87と可動調整側端ガイド88、および、ニップローラ45と送りローラ46はヘッド軌跡内から退避した位置でカードCの搬送に関与するよう配設されている。
上述したように、磁気エンコーダユニット80の一部には、カード搬送路P1に沿って搬送されるカードCを装置外へ排出可能なカード搬出口82が設けられている。搬出ローラ47は磁気ヘッド81で書き込まれた情報が書き込み不良のときは搬出ローラ47を駆動させカード搬出口82を介してカードCを装置外に排出する。また、この搬出ローラ47は上述したカード搬送系を構成する複数のローラの汚れをクリーニングするためのクリーニングカードを装置内に受け入れ(供給)、排出(搬出)するための機能を有している。
次に、図8〜図10を参照して、カードクリーニング機構30と移動機構60について詳述する。なお、図8はカード供給口14からカードCを受け入れて、クリーニングローラ31と搬送ローラ41との間でカードCを挟持する直前の状態を示し、図9は印刷部50によりカードCの印画面に多色の面順次印刷記録を行なう際に、カードCをカード供給口14側に逆搬送した状態を示し、さらに、図10は記録処理後のカードCをカード排出口23に向けて搬送する状態を示している。
<カードクリーニング機構>
カードクリーニング機構30は、クリーニングローラ31がカード搬送路P1に進出してカードCおよびコロ状クリーナ32に当接(面接触)可能とする動作位置と、カード搬送路P1から離間したホーム位置となる退避位置との間で移動自在に構成するために、ソレノイド34aと、このソレノイド34aの駆動切り替え(ON/OFF)により進退するプランジャ34bとからなるアクチュエータ34を有している。
プランジャ34bの端部には、その一端部が回転自在に取り付けられたレバー部材35が設けられ、さらにレバー部材35の他端部に係合する係合部材36等が設けられている。係合部材36は、一端側が装置内部の所定位置に固定された引っ張りバネ37にフックされており、引っ張りバネ37の付勢力により常時上方側へ付勢されている。
また、カードクリーニング機構30は、クリーニングローラ31を保持するホルダ33を有し、このホルダ33の一部に形成された凸状部位39が、上記係合部材36の一部に形成された凹状部位38に差し込まれて一体化される構成を有している。つまり、クリーニングローラ31を保持するホルダ33は、係合部材36に対して着脱自在に設けられている。さらに、カードクリーニング機構30は、印刷部50の一部として構成されるインクリボンRを内装するカートリッジ52の所定部位に着脱自在に取り付けられる支持部材53に固着して回転可能に設けられた、コロ状クリーナ32を含む構成を有している。
なお、駆動部34のソレノイド34aが駆動されると(駆動ON)、レバー部材35が係合部材36を押し下げて、クリーニングローラ31を保持するホルダ33を間接的に押圧するように押し下げることでクリーニングローラ31が上記の動作位置に位置付けられる。
<移動機構>
図8〜図10に示すように、移動機構60は、正逆転可能な駆動モータとしてのステッピングモータ61と、このステッピングモータ61の回転軸に設けられたモータギヤ62と、このモータギヤ62に噛合するギヤ部位を有するギヤ付きブラケット63等を有している。また、搬送ローラ41、42、43を軸支するローラシャフト64、65、66がギヤ付きブラケット63に保持されている。
移動機構60は、ギヤ付きブラケット63が搬送ローラ43のローラシャフト66を中心として回動可能に取り付けられているため、ステッピングモータ61の正逆転駆動によりギヤ付きブラケット63が回動することで、搬送ローラ41、42を、第1の位置(搬送ローラ41、42を略水平状のカード搬送路を形成する位置、ホーム位置、図8、図9参照)と第2の位置(搬送ローラ41、42を傾斜状のカード搬送路を形成する位置、図10参照)との間で移動可能に構成されている。
次に、プリンタ装置1の制御および電気系統について説明する。図2および図3に示すように、プリンタ装置1は、プリンタ装置1全体の動作制御を行う制御部95と、商用交流電源から各機構部および制御部等を駆動/作動可能な直流電源に変換する電源部90とを有している。
<制御部>
図11に示すように、制御部95は、プリンタ装置1の全体の制御処理を行うマイクロコンピュータ95b(以下、マイコン95bと略称する。)を備えている。マイコン95bは、中央演算処理装置として高速クロックで作動するCPU、プリンタ装置1の基本制御動作(プログラムおよびプログラムデータ)が記憶されたROM、CPUのワークエリアとして働くRAMおよびこれらを接続する内部バスで構成されている。
マイコン95bには外部バスが接続されている。外部バスには、上位装置100との通信を行うための図示を省略したインターフェース、カードCに印刷すべき印刷記録データ(印刷情報ともいう。)やカードCの磁気ストライプ部に磁気記録すべき磁気記録データ(磁気情報ともいう。)等を一時的に格納するバッファメモリ95aが接続されている。
また、外部バスには、各種センサからの信号を制御するセンサ制御部95c、各モータに駆動パルスや駆動電力を送出するモータドライバ等を制御するアクチュエータ制御部95d、サーマルヘッド51(発熱素子51a)の熱エネルギーを制御するサーマルヘッド制御部95e、オペパネ部5を制御するための操作表示制御部95f、および、磁気エンコーダユニット80が接続されている。センサ制御部95cは発光素子48、受光素子49からなる第1カード検出センサ、発光素子56、受光素子57からなる第2カード検出センサ、発光素子58、受光素子59からなる透過型センサ、環境温度を検出するサーミスタ96、リボン供給リール(リボン供給スプール)54の回転量を検出するスプール回転量検出手段としてのエンコーダ97(図13では符号121で表す)、および他の図示を省略するセンサに、アクチュエータ制御部95dはステッピングモータ61、搬送駆動モータ70および他の図示しないモータ、アクチュエータ34等に、サーマルヘッド制御部95eはサーマルヘッド51に、操作表示制御部95fはオペパネ部5にそれぞれ接続されている。
なお、本形態においては、上記した環境温度を検出するサーミスタ96は、図2および図3に示すように、プリンタ1(ケーシング2)の上記他側(リボン巻取リール55側)の機体内部に設けられており、隣接して設けられた図示しない給気ファンから給気した機体外部の温度(外気温)を検出するように構成されている。つまり、プリンタ装置1が設置される場所の環境温度を検出するように設けられている。しかし、プラテンローラ44やサーマルヘッド51(発熱素子51a)の付近、つまり、カードCの印刷位置の近傍に設けて機体内部の環境温度を検出するようにしてもよい。さらには、両方設けて使用する用途に合わせて検出した温度データを使い分けすることもできる。
また、電源部90は、制御部95、サーマルヘッド51、オペパネ部5および磁気エンコーダユニット80に作動/駆動電源を供給している(図11参照)。
次に、図13に基づき、リボン供給リール(リボン供給スプール)54側のスプール本体110に係合するプリンタ装置1の係合部について説明する。図13はリボン供給リール54の係合部112と装置本体側の係合部材(係合凸部122)との係合状態を示したものである。図2および図3に示したリボン供給リール54およびリボン巻取リール55はそれぞれスプール本体110にインクリボンRが捲回された(保持された)ものであり、リボン供給リール54には未使用のインクリボンRの捲回されており、リボン巻取リール55には既使用の(サーマルヘッド51による熱転写後の)インクリボンRが捲回される。
スプール本体110は、両側にフランジ113、114を有しインクリボンRを保持する筒状のリボン保持部118と、フランジ113に隣接して一側端部に設けられた係合部112と、フランジ114に隣接して係合部112の反対側に設けられリボン保持部118の筒状部より縮径された軸部119とを有している。
フランジ113、114はスプール本体110の軸方向でインクリボンRのリボン保持部118への捲回を位置規制するため、スプール本体110が回転しても、リボン保持部118から未使用のリンクリボンRが位置ズレすることなく供給され(リボン供給リール54の場合)、巻き取り側のリボン保持部には既使用のリンクリボンRが適正に捲回される(リボン巻取リール55の場合)。なお、軸部119はカートリッジ52に形成された円形状の切り欠き(不図示)に回転可能に支持されている。
係合部112は、端部方向へ突出する台形状の6個の凸部を有している。換言すれば、係合部112には、凸部側面に直線状に形成され所定の傾斜角度を有する傾斜面と、隣接する凸部の傾斜面間を連接する底部とで形成された溝が形成されている。
図13に示すように、リボン供給リール54の係合部112に対する装置本体側の係合部は複数の部材で構成されている。すなわち、装置フレーム(ケーシング2)に支持軸125が固定されており、支持軸125は円盤状で外縁部にギアを有する係合部材を回転可能に軸支している。係合部材の、係合部112と係合する側には、係合部112の凸部(溝部)とは形状の異なる、2つの係合凸部122が対向するように(係合部材の回転方向に対して180°の位相差ができるように)突設されている。また、支持軸125にはバネ124が巻き掛けられており、このバネ124により係合部材(係合凸部122)はスライド可能に係合部側に付勢される。
カートリッジ52をカートリッジ装着部に装着する際に、スプール本体110の係合部112の凸部の先端と装置本体側の係合部材に設けられた係合凸部122の先端とが当接して(ぶつかって)スムーズに挿入されない場合がある。係合部材は支持軸125の軸方向に対してスライド可能に設けられているため、係合部112の凸部の先端と係合凸部122の先端とがぶつかったときには、係合凸部122が一旦装置フレーム側(スプール本体110の反対側)に退避する。その後、係合部材またはスプール本体110が回転すると、係合凸部122が係合部112の凸部間の溝に入り込み、バネ124によってスプール本体110側に付勢され、係合凸部122と係合部112の凸部(間の溝)とは2点で点接触する。
図13に示すように、係合部材のギアにはギア121Cが噛合しており、ギア121Cには同軸上にスリット(不図示)が形成された回転板121Aが固着している。また、回転板121Aを挟む位置には、発光素子と受光素子とからなる透過一体型のセンサ121Bが配置されている。従って、回転板121Aとセンサ121Bが、インクリボンRを供給するリボン供給リール(リボン供給スプール)54の回転量を検出するスプール回転量検出手段としてのエンコーダ121を構成している。
上記の構成から成るエンコーダ121は、本形態においては、インクリボンRの張力の変化を間接的に検出するリボン張力変化検出手段として構成されている。つまり、カードCへの印刷記録処理に伴って、インクリボンRはリボン供給リール(リボン供給スプール)54側からリボン巻取リール(リボン巻取スプール)55へと搬送されることになるが、これに準じて、リボン供給リール(リボン供給スプール)54のリボン径は大径から小径へと移行し、また、リボン巻取リール(リボン巻取スプール)55のリボン径は小径から大径へと変化していくことになる。
この場合、本形態では図示を省略する駆動源によりリボン巻取リール(リボン巻取スプール)55側でインクリボンRの巻取駆動を行なうが、リボン巻取リール(リボン巻取スプール)55のリボン径が小径から大径へと変化するに従って、搬送されるインクリボンRの張力(テンション)は、大から小へと移行していく。つまり、インクリボンRの巻き始めほど搬送されるインクリボンRの張力(テンション)は大きく、インクリボンRの巻き終わりほど張力(テンション)は小さくなっていく。なお、本形態においては、リボン供給リール(リボン供給スプール)54の回転中心となるスプール軸(支持軸125)には図示を省略するトルクリミッタが設けられており、リボン供給リール(リボン供給スプール)側でのバックテンションが発生する。ここで、リボン供給リール(リボン供給スプール)54のリボン径が大径から小径へと変化するに従って、搬送されるインクリボンRに与えるバックテンションは逆に小から大へと移行していく。同様に、インクリボンRの送り出しの初期段階ほど搬送されるインクリボンRに与えるバックテンションは小さく、インクリボンRを消費するに従ってバックテンションは大きくなっていく。
上記したように、リボン巻取リール(リボン巻取スプール)55側を基準とした場合、リボンの巻き径が小径から大径へと変化するに従って、上記リボン供給リール(リボン供給スプール)側でのバックテンションとの関係から、搬送されるカードCに影響を与えるインクリボンRの張力は結果として大から小へと移行していくことになる。
これは、インクリボンRの巻取駆動軸に駆動を与える図示しない駆動モータの回転トルクは一定に設定されているものの、リボン巻取リール(リボン巻取スプール)55の巻き径の増加に伴って、上記したインクリボンRの張力(テンション)は相対的に減少してしまうことが確認されている。
結果として、サーマルヘッド51によりカードCに印刷される文字や画像の印刷サイズは、インクリボンRの巻き始めほど搬送されるカードCの副走査方向(送り方向)に伸びやすい傾向にあり、リボン巻取リール(リボン巻取スプール)55の巻き径の増加に伴って(印刷処理が進むにつれて)、カードCに印刷される文字や画像の印刷サイズはカードCの副走査方向(送り方向)に縮みやすい傾向にある。
従って、カードCに対して全面印刷を施す場合において、上記したような印刷サイズのばらつきが生じるため、サーマルヘッド51がカードCの端部(搬送方向に対して後端部)を外れた状態、つまり、サーマルヘッド51がインクリボンRを介した状態でカードCに当接しない状態で印刷のための出力を継続することで、加熱によりインクリボンRが破断してしまうことがあるため、この不具合を解消するための手当てが必要である。
なお、同様な事象(不具合)は、環境温度によっても生じることが確認されている。つまり、一般的に、環境温度が高くなればプラテンローラ44の外径が大きく変化し、環境温度が低くなればプラテンローラ44の外径が小さく変化する傾向にある。プラテンローラ44の駆動源としてステッピングモータを採用した場合、プラテンローラ44の外径寸法が大きく変化すれば、所定の回転角当りのカードCの送り量が大きくなるため、結果として、環境温度が高いほど、サーマルヘッド51によりカードCに印刷される文字や画像の印刷サイズは搬送されるカードCの副走査方向(送り方向)に伸びる傾向にあり、また、逆に、環境温度が低く変化すれば、プラテンローラの外径寸法の減少に起因して、カードCに印刷される文字や画像の印刷サイズは搬送されるカードCの副走査方向(送り方向)に縮む傾向にある。
以下に、これらの問題を解消するためのサーマルヘッド51(発熱素子51a)の通電制御について、図14および図15を参照して説明する。図14は、カードCへの印刷中において、カードCの搬送方向に対してカードCの後端部が発光素子48および受光素子49からなるカード端部検出部材としての透過センサによって検出されたタイミングを示しており、カード長86mmに対して、図中符号Lで示す距離(印刷未処理の部分)は設計上25mmとなっている。このことから、カード長86mmから上記Lで示す距離25mmを差し引いた、サーマルヘッド51の発光素子51aよりカード搬送方向下流側に位置する、カード上への印刷済みである距離は設計上61mmとなる。
カードCの全面に亘って印刷を行う場合、解像度を300DPIとしたとき、設計上の数値として、カード長86mmに対応したサーマルヘッド51(発熱素子51a)による印刷ライン数は1,016ラインであり、上記したカードCの後端部を検出した時点では、印刷済みラインは61mmに対応して721ラインであり、印刷未処理のライン数は25mmに対応して295ラインとなるが、上述したように、インクリボンRの張力(テンション)の変化、および/または、環境温度に起因して印刷される印刷サイズが伸縮してしまうため、実際には、設計上規定する印刷未処理のライン数295ラインが298(295ラインより大きい)ラインであったり292ライン(295ラインより小さい)であったりする場合がある。
このような実際の印刷未処理のライン数は、カード端部検出手段としての発光素子48および受光素子49からなる透過センサからの検出信号がセンサ制御部95Cを介して判断部としてのマイコン95bに入力されたとき(図14に示すカードCの後端部が検出されたとき)、判断部としてのマイコン95bによって判断される。そして、判断部としてのマイコン95bは、上記した設計目論見値と実際の値との誤差を解消するために、カードCに対する副走査方向における印刷ラインの増減を調整するための補正値を算出する。本形態においては、マイコン95bは上記補正値を算出する補正値算出手段としても機能する。
上記した補正値を算出するためには、上記したように、その要因(原因)となるインクリボンRの張力の変化を検出したり、環境温度を検出する必要がある。先ず、インクリボンRの張力の変化を検出するリボン張力変化検出段として、本形態においては、リボン供給リール(リボン供給スプール)の回転量を検出するスプール回転量検出手段としてのエンコーダ121(図13参照、図11では符号97で示す。)を利用して、間接的にインクリボンRの張力の変化を検出、判断している。
図15(A)に示すように、インクリボンRのブラック(Bk)パネルはその長さが98mmで一定値である。これを、図2に示す発光素子58、受光素子59からなる透過型センサにより遮光状態として検出するが、図15(B)の符号aで示す時点(パルスの立ち上がり時点)で遮光状態の検出開始となり、同様に符号bで示す時点(パルスの立下り時点)で遮光状態の検出終了となる。そして、図15(C)で示すように、エンコーダ121(図13参照、図11では符号97で示す。)により、上記した透過型センサにより遮光状態を検出している間(検出ON)におけるリボン供給リール(リボン供給スプール)の回転量に関わるクロック数(図中X参照)を検出する。なお、図中Xで示すクロック数は、リボン供給リール(リボン供給スプール)54のリボン径が大径から小径へと変化するに従って増加していく。
上記した、インクリボンRのブラック(Bk)パネルの長さ98mm(一定値)に基づくリボン供給リール(リボン供給スプール)の回転量に関わるクロック数の検出は、図15(A)に示すBkパネルがインクリボンRに面順次で配置されている度に行なわれ、その都度、最新の検出データとしてセンサ制御部95cを介してマイコン95b内のRAMに書き換えられる。そして、図14に示すように、カードCの搬送方向に対して後端部がカード端部検出手段としての発光素子48および受光素子49からなる透過センサによって検出されたタイミングをトリガとして、判断部としてのマイコン95bは、以下に記載する補正値に基づきカードCに対する副走査方向における印刷ラインの増減を調整するようにサーマルヘッド制御部95eに命令を与えてサーマルヘッド51(発熱素子51a)への通電を制御する。
カードCへの印刷過程において、発光素子48および受光素子49からなる透過センサによりカードCの後端部が検出されると、判断部としてのマイコン95b(CPU)は、以下の表1に示すように、ROM内に格納されている環境温度データとリボン供給リール(リボン供給スプール)54の回転量に関わるクロック数とから、補正値算出手段として機能して補正値を算出する。さらに詳細には、表1における環境温度データの依存度(表中、縦軸の温度データに隣接して表す縦軸方向の「Adj」欄参照、印刷ライン数で表記)と、リボン供給リール(リボン供給スプール)54の回転量に関わるクロック数の依存度(表中、横軸のクロック数データの下方に表す縦軸方向の「Adj」欄参照、印刷ライン数で表記)と、から割り当てられた補正値(両者の交点で表す)を算出する。
表1では、これらの補正値をマトリックス状の補正テーブルで表しているが、本形態においては、環境温度データおよびこれに関する依存度データと、リボン供給リール(リボン供給スプール)54の回転量に関わるクロック数とこれに関する依存度データとを夫々独立した構成で有しており、マイコン95b(CPU)により演算化するようにしている。勿論、表で示すような補正テーブルを予め用意しておき、所期の補正値として読み出す構成を採用してもよい。
以下に実際の数値で説明する。なお、表1における数値の基準は、印刷サイズの伸張(伸)が最も生じやすい環境である、高温(即ち、プラテンローラ44の外径寸法が大きい)および搬送されるカードCに影響を与えるインクリボンRの張力(テンション)が最も大きい(リボン供給スプール側の巻き径が大きく、その回転量に伴うクロック数が小さい)場合を条件として設定している。つまり、表中、温度が45℃で、供給クロック数が430以下の条件を基準としている。
本形態においては、図14に示すカードCの後端検出時に上記基準条件で、図14の符号Lで示す印刷未処理領域における印刷処理が可能な印刷ライン数を292ラインと設定している。ここで、上記した印刷未処理距離L(25mm)に対応する295ラインとの差異が3ライン分生じているが、これは上記の基準条件で印刷されたサイズが設計目論見値より3ライン分伸びが生じていることを示す。
例えば、サーミスタ96が環境温度として21℃を検出し、エンコーダ97(図13では符号121で示す)が供給クロック数として600を検出した場合、環境温度21℃に相当する依存度は1.4であり、供給クロック数として600に相当する依存度は0.8であることから、マイコン95b(CPU)がそれらの依存度データを加算し、補正量として2.2を算出する。この場合、前述した基準条件での印刷サイズに対して2.2ライン分縮んでいるものとして、上記基準条件下での印刷未処理領域における印刷処理が可能な印刷ライン数292に、上記補正値として2.2ラインを加算することで印刷未処理領域における印刷処理ライン数として294.2ラインとなる。
しかしながら、サーマルヘッド51(発熱素子51a)による印刷ラインは整数値であることから、実際の処理としては、1未満の数値を切り捨てた2(ライン)として補正値を算出し、これを上記した印刷ライン数292に加算した294(ライン)が印刷未処理領域における印刷処理ライン数となる。
なお、本形態においては、1未満の数値を切り捨て処理したが、繰上げ、または四捨五入などの処理を行うことでもよい。さらに、上記の基準条件を厳しい条件下で設定したが、逆となるような異なる条件で設定した場合は、上記した補正値として減算処理を行うことでもよい。さらに、本形態においては、環境温度の検出データと、インクリボンRの張力の変化の検出の一例としてのリボン供給リール(リボン供給スプール)54の回転量に関わるクロック数とに応じて上記した補正量を算出したが、いずれか一方に応じて補正量を算出する構成でもよい。
以上の補正処理を行うことにより、インクリボンRの破断を招く等の不具合を防止して、カードCに対して全面印刷を行うことが可能となる。なお、本形態においては、インクリボンRの張力の変化を検出する手法として、リボン供給リール(リボン供給スプール)54の回転量に関わるクロック数を例示して説明したが、これに限定されず、リボン巻取リール(リボン巻取スプール)55の回転量に関わるクロック数を検出してもよく、インクリボンRの外径寸法を直接検出することでもよく、さらには、リボン供給リール(リボン供給スプール)54から送り出されるリボンの消費量をカウントして、その積算数からインクリボンRの張力の変化を検出する手法を採用してもよい。或いは、揺動可能なコロ状の部材をインクリボンRに当接させておき、その揺動位置を複数のセンサで検出してインクリボンの張力(テンション)を直接的に検出する手法を採用してもよい。
(動作)
次に、本実施形態のプリンタ装置1の動作について、マイコン95bのCPU(以下、単にCPUという。)を主体として説明する。
制御部95に電源が投入されると、CPUは、ROMに格納されたプログラムおよびプログラムデータを読み出し(RAMに展開し)、各機構部を作動させるための初期処理を行う。すなわち、初期処理では、外部バスを介してマイコン95bに接続され制御部95を構成するセンサ制御部95c等の各制御部95a、95c〜95f、磁気エンコーダユニット80との接続確認を行った後、各構成部が上述したホーム位置に位置しているか(図2、図8参照)をセンサ制御部95cからの信号等に基づいて判断し、各構成部がホーム位置に位置していない場合には、ホーム位置に移動させる。センサ制御部95cの信号等に基づいて、各構成要素をホーム位置への復帰動作を所定回繰り返してもホーム位置に移動しない場合には、上位装置100に報知するとともに、操作表示制御部95fを介して表示部4にその旨を表示させる。また、初期処理では、センサ制御部95cからの信号等に基づいて、カード供給部10にカードが収容されているか等も併せて判断し、収容されていないと判断したときは、同様に、上位装置100に報知するとともに、表示部4にその旨を表示し、さらに、カード供給部10にカードが収容されるまで待機する。
上述した初期処理と並行して、CPUは、装置電源投入時に、ヘッド検出センサ83による磁気ヘッド81の検出結果に応じて、上述したヘッド駆動機構を駆動させることにより、磁気ヘッド81をホーム位置に移動させるヘッドイニシャル処理を実行する。
すなわち、CPUは、装置電源投入時に、ヘッド検出センサ83が磁気ヘッド81を検知している場合(図12(A)の状態、このとき、磁気ヘッド81はヘッド待機領域a2(図4参照)内のホーム位置に位置しており、ヘッド検出センサ83は、例えば、オフないしローレベル信号を出力する。)には、アクチュエータ制御部95dを介して図示しないエンコーダ付き直流モータを駆動させヘッド駆動機構により磁気ヘッド81を、図12(A)の矢印Aで示すように上流側に移動させ、ヘッド検出センサ83が磁気ヘッド81を検知しない状態になった位置(図12(B)の状態、このとき、本例では、ヘッド検出センサ83はヘッド検出センサ83の中心からの距離d1が4mmに位置しており、ヘッド検出センサ83は、例えば、オンないしハイレベル信号を出力する。)から図12(B)の矢印Bで示すように下流側にスイッチバック(逆移動)させ、ヘッド検出センサ83が磁気ヘッド81を検出するホーム位置にセットする(図12(C)の状態)。このホーム位置は、キャリッジガイド85の端部からヘッドキャリッジ84が所定距離d2(本例では2.7mm)離間した位置、磁気ヘッド81がヘッド検出センサ83の中心から所定距離d3(本例では3mm)の位置に設定されている。
これに対し、CPUは、装置電源投入時に、ヘッド検出センサ83が磁気ヘッド81を検知していない場合(図12(D)の状態、このとき、磁気ヘッド81はヘッド待機領域a2(図4参照)内には位置しておらず、ヘッド検出センサ83は、例えば、オンないしハイレベル信号を出力する。)には、磁気ヘッド81を図12(D)の矢印Bで示す下流側に移動させヘッド検出センサ83が磁気ヘッド81を検出するホーム位置にセットする(図12(E)の状態)。このようなヘッドイニシャル処理を行う理由は、何らかの事情により(例えば、停電)、装置電源投入時に、本来、ヘッド待機領域a2内のホーム位置に位置している磁気ヘッド81がホーム位置以外に位置する場合があるからである。
一方、上位装置100にインストールされたプリンタドライバは、オペレータ(ユーザ)の指定した記録指令に基づいて、プリンタ装置1での記録動作を制御するための各種パラメータ値を決定し、その記録指令よりカードへの記録を行うための印刷記録データおよび磁気記録データを生成して、プリンタ装置1に送信する。制御部95のバッファメモリ95aには、記録制御指令となる各種パラメータ値、印刷記録データをY、M、C、Bkの色成分ごとに分解して得られた画像データないし文字データ、および、磁気記録データが格納される。なお、本形態では、上位装置100側において色成分(元データは、R、G、B)に分解し、プリンタ装置1でR、G、BからY、M、Cに変換されて画像データとして用いられ、上位装置100側で抽出されたBkデータがプリンタ装置1で同じくBkデータとして用いられて文字データに供される。
CPUは、バッファメモリ95aに格納された記録制御指令(各種パラメータ値)を取り込み、これらのパラメータ値とRAMに展開されたプログラムおよびプログラムデータとに従って、以下のように各機構部を制御する。
まず、アクチュエータ制御部95dを介してアクチュエータ34(ソレノイド34a)を駆動させ(ON状態)、クリーニングローラ31を図9に示す退避位置(ホーム位置)から図8に示す動作位置へと移動させて、カードCの受け入れ準備を行なう。このとき、移動機構60は、搬送ローラ41、42を、略水平状のカード搬送路を形成するように第1の位置(ホーム位置)に位置付けている(図2、図8に示す状態)。
次に、CPUは、アクチュエータ制御部95dを介して搬送駆動モータ70を作動させ駆動伝達機構を介してカード搬送路P1上に配設された各ローラを駆動させるとともに、アクチュエータ制御部95dを介して供給ローラ11を回転駆動する図示を省略したモータを駆動する。
これにより、カード供給部10の最下位のカードCは、供給コロ12と分離ゲート13との間およびカード供給口14を介してケーシング2内に搬入される。カードCは、クリーニングローラ31により印画面が清浄され、カード搬送路P1に沿ってカード搬出口82側に向けて搬送される(図2参照)。発光素子48、受光素子49からなる第1カード検出センサによってカードCの後端が検出されると、そのカード後端検出をトリガとして、CPUはアクチュエータ34(ソレノイド34a)の駆動を停止(OFF状態)させる。これにより、クリーニングローラ31は、レバー部材35による押圧動作から開放されて図8に示す動作位置から図9に示すホーム位置である退避位置へと移動する。
カードCは、搬送駆動モータ70の駆動力により、両端部が送りローラ46、ニップローラ45に挟持される位置まで、カード排出口82に向けてカード搬送路P1上をさらに搬送される。CPUは、発光素子56、受光素子57からなる第2カード検出センサによるカード先端検出後、搬送駆動モータ70のパルス数が所定値に到ると、搬送駆動モータ70の駆動を停止させる。これにより、カードCは、両端部を搬送ローラ47とニップローラ45とで挟持状態で停止保持され、磁気エンコーダユニット80の磁気ヘッド81による磁気ストライプ部への磁気記録データの書き込みが可能な状態となる。
CPUは、カードCへの磁気ストライプ部への情報書き込みを行うために、図示しないエンコーダ付き直流モータを駆動させヘッド駆動機構により磁気ヘッド81をホーム位置から動作位置に移動させ、ヘッド進退機構により、まず、カードCの浮き上がり(磁気エンコード領域a1での磁気ヘッド81による押圧によるカード搬送路P1からの離間)を防止するために、押圧板89でカードCの上面を押さえ、その状態でスイッチバックパスP2から下方の退避位置に位置していた磁気ヘッド81の押圧が解除され、磁気ヘッド81をカードCの磁気ストライプ部に圧接させる。次いで、CPUは、外部バスを介してバッファメモリ95aに格納されていた磁気記録データを磁気エンコーダユニット80に出力するとともに、図示しないエンコーダ付き直流モータを駆動させヘッド駆動機構により磁気ヘッド81を、カードCの磁気ストライプ部の端から端の全領域内の必要な範囲を図4の矢印Aで示す上流側に移動させて、磁気記録データを磁気ストライプ部に記録(記憶)させる。
CPUは、カードCの磁気ストライプ部への磁気記録データの書き込みが終了すると、図示しないエンコーダ付き直流モータを停止、逆転させ、磁気ヘッド81を図4の矢印Aとは逆方向の下流側に移動させてカードCの磁気ストライプ部に書き込んだ磁気記録データを読み取り、バッファメモリ95aに格納された磁気記録データと読み取った磁気記録データとが一致するかのベリファイ(正しく書き込まれたかのチェック)を行う。なお、磁気ヘッド81はベリファイの終了により、ホーム位置に復帰する。
CPUは、ベリファイ結果が書き込み不良のときは、上位装置100に報知するとともに、表示部4にその旨を表示して、搬送駆動モータ70を所定パルス数(正転)駆動することで、カードCを、カード搬出口82を介して装置外に搬出する。次いで、カード供給部10から新たなカードCの供給を受けて、上記と同様に磁気エンコーダユニット80に(新たな)カードCの磁気ストライプ部への磁気記録データの書き込みおよびベリファイを実行させる。
一方、磁気エンコーダユニット80のマイコンからのベリファイ結果に問題がない(カードCの磁気ストライプ部への磁気記録データの書き込み不良がない)場合には、CPUは、搬送駆動モータ70を逆転駆動させ、両端部がニップローラ45、搬送ローラ47に挟持状態で停止保持されたカードCをカード搬送路P1に沿ってカード供給口14側に逆搬送する。この逆搬送の間、カードCの後端が発光素子48、受光素子49からなる第1カード検出センサで検出されると、さらに所定パルス数、搬送駆動モータ70の逆転駆動を継続して、搬送駆動モータ70の駆動を停止させる。これにより、カードCは、搬送方向後半部が搬送ローラ42、43に挟持状態で停止保持されるとともに、搬送方向先半部が搬送ローラ41に支持された状態となる(図9参照)。
この間、CPUは、不図示のモータを駆動して、カートリッジ52のインクリボンRをリボン巻取リール55側へ巻き取り、発光素子58、受光素子59からなる透過型センサがインク層Bk(ブラック)の端部を検出した時点(受光素子59がインク層Bkによる発光素子58の発光が不透過状態から透過状態となったことを検出した時点)をトリガとして、所定ステップ数、不図示のモータをさらに駆動して、インク層Y(イエロー)の先端部がサーマルヘッド51とプラテンローラ44との位置に位置付けられるようにインクリボンRの頭出しを行う。
次いで、CPUは、搬送駆動モータ70を正転駆動させ、カードCを、カード搬送路P1上をカード搬出口82側へ向けて搬送するとともに、発光素子48、受光素子49からなる第1カード検出センサによりカードCの先端位置を確認して、印刷部50によりカードCの表面に印刷記録データによる所期の文字、画像を印刷する。すなわち、カードCの表面にインクリボンR(インク層Yの部分)を介在させてサーマルヘッド51を押圧しながら、Y色の画像データ(RGBデータからY成分が色変換された画像データ)に従ってサーマルヘッド51の加熱素子を選択的に作動させる。これにより、カードCの表面には、インクリボンRに塗着されたY(イエロー)の熱転写インク成分が直接転写される。
このとき、カードCは裏面側がプラテンローラ44に支持されるが、当初、搬送ローラ42、43で挟持搬送され、カード搬送路P1上をカード搬出口82側へ向けて搬送に従って、先端部側がニップローラ45、後端部側が搬送ローラ43で挟持搬送され、最後に、(後端部側をプラテンローラ44で裏面側を支持されながら)ニップローラ45により挟持搬送される。従って、搬送ローラ42、43およびニップローラ45は、印刷部50による印刷記録の際に、カードCを挟持し一定速度で搬送するキャプスタンローラとして機能する。CPUは、発光素子48、受光素子49からなるカード検出センサによりカードCの後端位置を確認して、さらに所定パルス数、搬送駆動モータ70の正転駆動を継続して、搬送駆動モータ70の駆動を停止させる。
次に、CPUは、搬送駆動モータ70を逆転駆動させ、カードCをカード搬送路P1に沿ってカード供給口14側に逆搬送し、カードCを、搬送方向後半部が搬送ローラ42、43に挟持状態で停止保持され、搬送方向先半部が搬送ローラ41に支持された状態となると、搬送駆動モータ70の駆動を停止させる(図9参照)。この間、CPUは、不図示のモータを駆動して、カートリッジ52のインクリボンRをリボン巻取リール55側へ若干巻き取り、インク層M(マゼンタ)の先端部がサーマルヘッド51とプラテンローラ44との位置に位置付ける。次いで、CPUは、搬送駆動モータ70を正転駆動させ、カードCを、カード搬送路P1上をカード搬出口82側へ向けて搬送するとともに、印刷部50により、インクリボンRに塗着されたM(マゼンタ)の熱転写インク成分をカードCの表面に直接転写する。以下、同様にして、CPUは、印刷部50により、カードCの表面に、インクリボンRに塗着されたC(シアン)およびBk(ブラック)の熱転写インク成分をカードCの表面に直接転写する。これにより、カードCの表面には、Y、M、C、Bkによるカラー画像が形成される。
次いで、CPUは、カードCをカード排出口23に向けて搬送する。すなわち、搬送駆動モータ70を逆転駆動させ、カードCをカード搬送路P1に沿ってカード供給口14側に逆搬送する。図8および図9に示すように、印刷部50によりカードCの印画面に多色の面順次印刷記録を行なう際に、カードCをカード供給口14側に逆搬送したとき(図9に示す状態)は、搬送ローラ41、42が略水平状のカード搬送路を形成するように位置付けられる第1の位置に維持されているが、所定の記録処理を終えたカードCがカード排出口23に向けて排出される際には、発光素子48、受光素子49からなるカード検出センサによりカード搬送路P1上を逆搬送されるカードCの後端を検出した時点、或いはカードCの後端を検出して数パルス経過した時点をトリガとして、CPUはステッピングモータ61を駆動制御して、移動機構60(ステッピングモータ61の駆動)により、搬送ローラ41、42を傾斜状のカード搬送路を形成するように位置付けられる第2の位置へと移動させる(図3、図10に示す状態)とともに、上述した供給ローラ11を回転駆動する図示を省略するモータを逆転駆動させ排出ローラ15を回転駆動させる。
これにより、カードCはカード排出口23を介してカード収容部20に収容されるか、または、(カード収容部20にカードが満杯の場合は)カード放出口21から外部へ放出される。なお、図10に示すカード排出時においても、クリーニングローラ31は図9に示す状態と同じく、カード搬送路P1から離間したホーム位置である退避位置に位置付けられている。
CPUは、カードCがカード収容部20に収容されたか、カード放出口21から放出された時点で、搬送駆動モータ70および図示を省略するモータの逆転駆動を停止させる。なお、CPUは、カードCのカード収容部20への排出動作が完了した所定のタイミングでステッピングモータ61を再度駆動(逆方向の回転駆動)して、搬送ローラ41、42を傾斜状のカード搬送路を形成するように位置付けられる第2の位置から略水平状のカード搬送路を形成するように位置付けられる第1の位置へと復帰させる。これにより、カードCへの記録処理が終了し、次のジョブがある場合は、以上の動作を繰り返す。
(効果等)
次に、本実施形態のサーマルヘッド51の通電制御方法、およびプリンタ装置(サーマルプリンタ)1の効果等について説明する。
本実施形態のサーマルヘッド51の通電制御方法では、環境温度を検出するとともに、インクリボンRの張力の変化を直接的または間接的に検出し、これら検出された環境温度及びインクリボンRの張力の変化の少なくとも一方に応じて補正値を読み出しまたは算出して、この補正値に基づきカードCに対する副走査方向における印刷ラインの増減を調整するようにサーマルヘッド51の各発熱素子51aの熱エネルギーを制御するので、インクリボンRの破断を招く等の不具合を防止して、被印刷媒体に対して全面印刷を行うことができる。さらに、カードCに対する印刷ラインの増減の調整は、搬送されるカードCの後端部が検出されたときに、カードCの未印刷領域(図14に示す符号L)に相当する印刷ライン数を判断して、この印刷ライン数に前記補正値を加えるように調整することで、カードCの端部の印刷処理が精度よく行なうことができ、尚一層、上記したような不具合を生じさせることがない。
また、本実施形態のプリンタ装置(サーマルプリンタ)1では、複数の発熱素子51aを有するサーマルヘッド51と、カードCの搬送路上の印刷位置に設けられたプラテンローラ44と、所定のインクを積層し、サーマルヘッド51の発熱によりカードCにインクが転写されるインクリボンRと、環境温度を検出するサーミスタ96と、インクリボンRの張力の変化を直接的または間接的に検出するリボン張力変化検出手段としての機能と、上記温度データと上記リボン張力変化データの少なくとも一方に基づいて補正値を算出する補正値算出手段としての機能を併せ持つマイコン95bと、マイコン95bにより算出された補正値に基づき、カードCに対する副走査方向における印刷ラインの増減を調整するようにサーマルヘッド51への熱エネルギーを制御するサーマルヘッド制御部95eと、を備えたため、見栄えの良い被印刷媒体への全面印刷を可能としながらも、印刷サイズのばらつきの発生により、サーマルヘッドが被印刷媒体の端部を外れた状態で印刷のための出力を継続して加熱によるインクリボンの破断を招くといった不具合を防止することができる。
さらに、搬送されるカードCの搬送方向における後端部を検出する発光素子48および受光素子49からなる透過センサと、この透過センサの検出信号に基づき所定の判断を行なうマイコン95b(CPU)と、を備え、マイコン95b(CPU)は透過センサからの検出信号が入力されたときに、カードCの未印刷領域(図14に示す符号L)に相当する印刷ライン数を判断するとともに、この印刷ライン数に補正値を加算してサーマルヘッド51への熱エネルギーを付与するようにサーマルヘッド制御部95eに命令を与えるように構成したので、カードCの端部の印刷処理が精度よく行なうことができ、尚一層、上記したような不具合を生じさせることがない。
本実施形態のプリンタ装置1では、搬送されるカードCのカード搬送方向に沿って、カード供給口14、印刷部50(第1の記録部)および磁気エンコーダユニット80(第2の記録部)を順次略水平状に配設するとともに、カード供給口14とカード排出口23とが上下方向に位置付けられるようにカード排出口23をケーシング2の一側に設けられている。このため、カード搬送経路を長くすることなく、装置サイズの小型化を図ることができる。
また、本実施形態のプリンタ装置1では、カード供給口14と印刷部50との間に設けられ、カードCを搬送する搬送ローラ41、42を有し、この搬送ローラ41、42を、カードCを略水平に搬送するためのカード搬送路P1を形成する第1の位置と、印刷部50ないし磁気エンコーダユニット80により記録されたカードCをカード排出口23に向けて搬送するための第2の位置との間で移動させる移動機構60を備えている。このため、移動機構60により搬送ローラ41、42を、水平搬送路を形成する第1の位置とカードCをカード排出口23に向けて搬送するための第2の位置との間で移動させ、カード排出時に、カード供給口14と上下方向に位置付けられたカード排出口23までのカード搬送路を短くすることができ、装置サイズの小型化を図ることができる。
さらに、本実施形態のプリンタ装置1では、搬送ローラ41、42を正逆転方向に回転駆動する搬送駆動モータ70を備えており、搬送駆動モータ70を印刷部50の下方で、かつ、磁気エンコーダユニット80と移動機構60との間に配置されている。このため、複数の構成部を合理的に配置することができ、より装置サイズの小型化を図ることができる。また、本実施形態のプリンタ装置1は、磁気エンコーダユニット80内のカード搬送系と、印刷部50に対しカードCを逆搬送するスイッチバックパスP2とを共用している。このスイッチバックパスP2を共用することにより、磁気エンコーダユニット80を配設するための新たなパスが不要で、しかもスイッチバックパスP2により作られたスペースを、磁気エンコーダユニット80を配置するスペースとして利用可能で、プリンタ装置1のコンパクト化が可能である。さらに、カードCを縦送りすることで、カードCの磁気スプライプ部を端から端の全域を使って読み書きするために、カードCの両脇をガイドする側面ガイド(固定側端ガイド87、可動側端ガイド88)を切り欠くことなく配設可能で、この側面ガイドにより、カードCを円滑に搬送するとともに、磁気ヘッド81をカードCの磁気スプライプ部に沿って端から端の全域を移動させ読み書きすることができる。
また、本実施形態のプリンタ装置1では、磁気ヘッド81でカードCの情報を読み書きしないカード搬送路P1におけるカードCの搬送時に、磁気ヘッド81を搬送パスのカード搬送面に対し下方の退避位置に位置させている。このため、磁気ヘッド81によりカードCの搬送を妨げることなく円滑なカード搬送を行うことができる。
また、本実施形態のプリンタ装置1では、磁気エンコーダユニット80において、磁気ヘッド81を自走させてカードCの磁気ストライプ部に磁気的な記録処理を行っている。これにより、(磁気ヘッド81を固定して)カードCを搬送するタイプの磁気エンコーダユニットと比較して、印刷部50による印画処理と磁気エンコーダユニット80における磁気記録処理との両者の精度を高めることができるとともに、装置サイズを小型化できるが、その理由は次の通りである。
印刷部50の印画解像度は(1)300ドット/インチで行われ、磁気エンコーダユニット80によるカードCの磁気ストライプ部への磁気記録処理は、ISO規格により、1トラックおよび3トラックの場合には(2)210ビット/インチ、2トラックの場合には(3)75ビット/インチである。これら(1)〜(3)の最小公倍数(300、210、75の最小公倍数)は、21,000(パルス/インチ)となり、最小公倍数がうまくとれない結果、カードCを搬送するタイプの磁気エンコーダユニットでは、分解能と装置の小型化を両立することができなくなる(本願発明が適用されるカード記録装置に用いられるモータやギヤのサイズでは両立不能)。この条件下で搬送駆動モータ70の駆動力を伝達する駆動力伝達機構を共有とした場合、装置の小型化を図るためには、印刷精度か磁気記録精度のいずれかを無視することになり、いずれかの処理精度が低下する。このため、本実施形態のプリンタ装置1では、磁気エンコーダユニット80において自走式の磁気ヘッド81を用いて、印刷部50および磁気エンコーダユニット80の処理精度の向上(高精度を維持)を図るとともに、装置全体の小型化を図っている。
さらに、本実施形態のプリンタ装置1では、カード供給口14に対向するケーシング2の他側であって、磁気エンコーダユニット80の一部に設けられ、カードCをケーシング2の外方へ搬出可能なカード搬出口82を有している。このため、カード排出口23以外に、カード搬出口82からもカードCを搬出することができるので、ユーザの利便性を向上させることができる。しかも、カード搬出口82を介してカード搬送系を構成する複数のローラ、固定側端ガイド87や可動側端ガイド88の汚れをクリーニングするためのクリーニングカードを装置内に受け入れ(供給)、排出(搬出)することができる。
さらにまた、本実施形態のプリンタ装置1では、カード供給口14と搬送ローラ42との間に設けられ、カードCの表面を清浄するクリーニングローラ31を有しており、カードCがケーシング2内に搬入された時点で、クリーニングローラ31でカードCの表面が清浄される。このため、装置内にゴミや埃等の異物が混入することを防止することができるとともに、カードCの表面に印刷部50で印刷処理を行う場合の印刷品質を向上させることができる。
またさらに、本実施形態のプリンタ装置1では、クリーニングローラ31の表面に付着したゴミを取り除くコロ状クリーナ32が、カートリッジ52の一部に固設されている。このため、カートリッジの交換によりコロ状クリーナ32も交換できるので、使い勝手が向上する。
そして、本実施形態のプリンタ装置1では、装置電源投入時に、ヘッド検出センサ83による磁気ヘッド81の検出結果に応じて、ヘッド駆動機構を駆動させることにより、磁気ヘッド81をホーム位置に移動させるヘッドイニシャル処理を実行する。このため、例えば、停電やプリンタ装置1の電源部90への商業交流電源の不慮の切断があっても、電源再投入により磁気ヘッド81をホーム位置に復帰させることができるので、プリンタ装置1の信頼性(読み書きの確実性)を高めることができ、書き込み不良カードを低減させることができる。
なお、本実施形態では、磁気ストライプ部を有したカードや磁気エンコーダユニット80を例示したが、本発明はこれに制約されるものではない。例えば、ICカードを用い、このICカードに接触または非接触で情報を書き込むようにしてもよい。また、本実施形態では、記録不良が生じた場合のコスト低減のために、磁気エンコーダユニット80で磁気記録した後、印刷部50で印刷する例を示したが、本発明はこれに制限されるものではなく、印刷部50での印刷の後に磁気エンコーダユニット80で磁気記録するようにしてもよく、さらに、印刷部50および磁気エンコーダユニット80のいずれか一方で記録処理をするようにしてもよい。
また、本実施形態では、上位装置100とのシステム構成を例示したが、プリンタ装置1に、例えば、MO、CD、DVD等に記録されたデータを読み取る媒体読取部を備え、オペパネ部5からの記録動作指示によりプリンタ装置1を操作できるように構成してもよい。
さらに、本実施形態では、カードCの磁気ストライプ部への書き込み不良のときに、カード搬出口82から搬出する例を示したが、カードCをカード排出口23まで搬送して、カード収容部20に排出するようにしてもよく、さらに、印刷が完了したカードCをカード搬送路P1に沿って搬送しカード搬出口82から排出するようにしてもよい。