JP5265168B2 - 溶融炉 - Google Patents

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Description

本発明は、灰を加熱溶融してスラグ化する溶融炉に関し、特に、炉壁内に埋設した水流路の短期間での腐食、損傷を防止することを可能とした溶融炉に関する。
従来より、都市ごみを始めとして不燃ごみ、焼却残渣、汚泥、埋立ごみ等の廃棄物まで幅広く処理できる装置としてガス化溶融装置が知られている。ガス化溶融装置は、廃棄物を熱分解してガス化するガス化炉と、該ガス化炉の下流側に設けられ、ガス化炉にて生成された熱分解ガスを高温燃焼し、ガス中の灰分を溶融スラグ化する溶融炉と、該溶融炉から排出される排ガスを燃焼する二次燃焼室とを備えており、廃棄物の資源化、減容化及び無害化を図るために、溶融炉からスラグを取り出して路盤材等の土木資材として再利用したり、二次燃焼室から排出される排ガスから廃熱を回収して発電を行うなどしている。
ガス化溶融装置に用いられる溶融炉では、高温の溶融スラグが炉壁を損傷させるため、炉壁を損傷から保護する必要がある。そのため、炉壁を保護するために、耐火材からなる炉壁の内部又は外側に冷却手段を設け、該冷却手段により炉壁の表面(炉の内周表面)に固相スラグを付着せしめ、固相スラグによるスラグ層を形成することにより炉壁の耐火材を溶融スラグによる侵食から保護することが考えられる。
このような技術の一例を図7及び図8に示す。図7は溶融炉の断面図であり、図8は図7におけるB部拡大図である。図示しないガス化炉で廃棄物をガス化することで生成される熱分解ガスは、溶融炉1の熱分解ガスバーナ2へ導入される。該熱分解ガスバーナ2で、熱分解ガスは燃焼空気と混合されて炉内に導入され、旋回流を形成する。溶融炉1では、熱分解ガスと燃焼空気の混合ガスが燃焼することにより炉内温度が1300〜1500℃に維持され、熱分解ガス中の灰分が溶融、スラグ化される。溶融したスラグは、溶融炉1の内壁面に付着、流下し、炉底部のスラグ出滓口6から排出される。また、溶融炉1の内壁は、水冷管5を埋設した水冷構造としており、水冷により冷却・固化したスラグのセルフコート層9を炉内壁面に形成することにより、炉壁の耐火材の侵食を防止するようにしている。さらに、溶融炉1の内壁を水冷構造とすることでスラグ出滓口6付近にスラグが固化し、スラグ出滓口6が閉塞することを防止するために、スラグ出滓口6に向けて火炎を噴出し1300℃以上の高温として、スラグ出滓口6付近に付着した固相スラグを溶融・除去するスラグカットバーナ8が設けられている。
しかしながら、図7、図8に示した技術では、炉底の下面側10では、溶融スラグの流れがないためにスラグコート層9が形成されず、しかも前記スラグカットバーナ8によって1300℃以上の高温雰囲気に曝されることとなる。このように1300℃以上の高温雰囲気に炉壁を形成する耐火材が曝されることで、耐火材が亀裂、剥離、脱落等する可能性がある。さらに、耐火材が亀裂、剥離、脱落等すると、炉壁内に設けた水冷管5が高温雰囲気に曝露され、水冷管が後述する理由により、短期間で腐食、損傷してしまうおそれがある。
通常、水冷管表面は40〜50℃程度であり、高くても70〜80℃である。従って、高温雰囲気下で溶融炉1で発生する排ガスと水冷管5が直接接触すると水冷管5表面に凝縮水が生じ、該凝縮水に排ガス中の例えば塩化水素、SOx、NOxといった酸性ガスが溶け込むことで、酸性溶液となり水冷管5を腐食、損傷させる。
また、固相スラグによるスラグ層を形成することにより炉壁の耐火材を溶融スラグによる侵食から保護する技術として、例えば特許文献1に、炉壁内に所定の炉壁温度を保つ吸熱装置を具備し、該吸熱装置による吸熱量を所定の範囲に保つことで、炉壁表面に形成された固相スラグの厚さを均一に制御し、該固相スラグによって炉壁の耐火材を溶融スラグによる侵食から保護することができる溶融炉が開示されており、吸熱装置としては炉壁内に埋設した水冷管が例示されている。
実公平7−29381号公報
しかしながら、特許文献1に開示された溶融炉では、炉底部には水冷管が埋設されていないため、炉底部にはスラグのセルフコート層が形成されず、炉底部における耐火材の溶融スラグによる侵食からの保護が充分とはいえない。また、スラグカットバーナを設けていないため、スラグ出滓口近傍でスラグが固化した場合に除去することが困難であり、仮にスラグカットバーナを設けた場合は、図7、図8に一例を示した技術と同様炉底部の下面側で耐火材が亀裂、剥離、脱落等する可能性がある。
従って、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、出滓口近傍でスラグが固化して出滓口を閉塞することなく、さらにスラグのセルフコート層が出来ない又は出来難い箇所であり、高温の排ガスに直接曝露される範囲に位置する耐火材からなる炉壁内部の水冷管の短期間での腐食、損傷を防止することができる溶融炉を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため本発明においては、炉内に導入された灰を、可燃性ガスの旋回流により加熱溶融し、炉底に設けた出滓口より排出する灰溶融炉であって、該灰溶融炉の炉壁に水管若しくはジャケットよりなる金属製水流路を内設して、炉内壁側に溶融スラグ層を形成する灰溶融炉において、前記出滓口下方に火炎バーナを配し、出滓口及びその周囲の炉底の下面側の耐火壁を加熱して、スラグの固着による前記出滓口の閉塞を防止するとともに、前記金属製水流路を、炉底の出滓口周囲まで延在して、炉底よりの吸熱を図り、炉底表面へのスラグ層の形成を促し、更に、前記水流路の炉底の下面側に面する部位に、肉盛溶接若しくは溶射によって形成される耐熱保護層を設けたことを特徴とする。
本発明によれば、前記出滓口下方に火炎バーナを配し、出滓口及びその周囲の炉底の下面側の耐火壁を加熱することで、出滓口付近に付着した固相スラグを溶融・除去することができるため、出滓口を閉塞することを防止することができる。また、金属製水流路を、炉底の出滓口周囲まで延在して、炉底よりの吸熱を図り、炉底表面へのスラグ層の形成を促すことで、該スラグ層により炉底表面の保護が可能となる。更に、前記水流路の炉底の下面側に面する部位に、肉盛溶接若しくは溶射によって形成される耐熱保護層を設けることで、溶融炉の炉底の下面側を形成する耐火材が損傷し、水流路の炉底の下面側が直接高温雰囲気に晒されることがあっても、前記耐熱保護層によって水流路が保護されるため、水流路の短期間での腐食、損傷を防止することができる。
さらに、前記保護層形成範囲が、前記火炎バーナの熱伝播により、耐火材が損傷する惧れのある1100℃以上の範囲であることを特徴とする。
これにより、火炎バーナの熱伝播によっても耐火材が損傷する惧れのある範囲の水流路の短期間での腐食、損傷を防止することができるとともに、火炎バーナの熱伝播によって耐火材が損傷する惧れのある温度未満の範囲にまで保護層を形成しないため、保護層形成にかかるコストを最小限に抑えることができる。
さらに、炉底周囲より下方に向け延在される熱遮蔽壁を備え、前記火炎バーナを、前記熱遮蔽壁に取り付けるとともに、前記保護層形成範囲が、前記熱遮蔽壁の垂直上方延長空間内であることを特徴とする。
熱遮蔽壁を設け、火炎バーナを熱遮蔽壁に取り付けることで、火炎バーナによる熱が熱遮蔽壁外に伝播しないため、保護層を熱遮蔽壁の垂直上方延長空間内に取り付けることで、火炎バーナの熱伝播によって耐火材が損傷する惧れのある範囲の水流路の短期間での腐食、損傷を防止することができる。なお、前記保護層は前記熱遮蔽壁外壁の垂直上方延長空間内に取り付けてもよいが、熱遮蔽壁内壁の垂直上方延長空間内に取り付ければ充分である。また、熱遮蔽壁は前記スラグ出滓口から排出されたスラグの流路を兼ねることができる。
さらに、前記水流路は、耐火材に向けて延在する支持部材を備え、該支持部材に前記保護層が形成されていることを特徴とする。
耐火材に向けて延在する支持部材を設けることで、耐火材の脱落を防止することができ、さらに支持部材に保護層を形成することで耐火材が損傷した場合においても支持部材の短期間での腐食、損傷を防止することができる。
さらに、前記火炎バーナ又は加熱溶融による熱伝播によって耐火材が損傷する惧れがある1100℃以上の範囲であり、前記水流路の出滓口側に面する部位に、肉盛溶接若しくは溶射によって形成される耐熱保護層を設けたことを特徴とする。
即ち、出滓口近傍の水流路であり、出滓口に面する部位は水流路上部にも耐熱保護層を設けるということである。
出滓口部分は、全面にスラグ流路を形成しないために、スラグのセルフコーティング層が安定して形成されにくい。そのために、出滓口を形成する耐火材が損傷し、水流路の炉底の下面側が直接高温雰囲気に晒されることがあっても、前記耐熱保護層によって水流路が保護されるため、水流路の短期間での腐食、損傷を防止することができる。
さらに、前記出滓口周囲の炉底部上面側に堰を設けるとともに、該堰内に水管若しくはジャケットよりなる金属製水流路を内設し、前記堰内の水流路の堰外方に面する部位に、肉盛溶接若しくは溶射によって形成される耐熱保護層を設けたことを特徴とする。
堰部分は、出滓口部分と同様に全面にスラグ流路を形成しないために、スラグのセルフコーティング層が安定して形成されにくいが、耐熱保護層を設けることで水流路の短期間での腐食、損傷を防止することができる。
さらに、前記肉盛溶接又は溶射によって形成される保護層は、ニッケル基合金を用いて形成されることを特徴とする。耐食性の高いニッケル基合金を用いて保護層を形成することで、溶融炉の壁面を形成する耐火材が損傷し、水流路の炉底の下面側が直接高温雰囲気に晒されることがあった場合の保護層による水流路を保護できる期間の長期化が可能となる。
以上記載のごとく本発明によれば、出滓口近傍でスラグが固化して出滓口を閉塞することなく、さらにスラグのセルフコート層が出来ない又は出来難い箇所であり、高温の排ガスに直接曝露される範囲に位置する耐火材からなる炉壁内部の水冷管の短期間での腐食、損傷を防止することができる。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は、本実施例1に係る溶融炉を示す側断面図、図2は図1におけるA部拡大図である。また図3は炉壁3の部分断面図であり、図4は炉壁3の別の例の部分断面図であり、図5は図2と別の例の図1におけるA部拡大図である。
図1〜図5を用いて、本実施例1に関する溶融炉の構成について説明する。
溶融炉1は、略円筒状の炉壁3と、炉壁3下部に設けられたスラグを排出するスラグ出滓口6と、を有し、炉壁上部にはガス排出口が設けられている。スラグ出滓口6は炉底の中央付近に設けられ、炉底はスラグ出滓口6に向けて下向きに傾斜されている。また、炉壁3には一又は複数の熱分解ガスバーナ2が取り付けられている。
炉壁3は、図3に示したように水冷管5を埋設した水冷構造としており、炉内壁側から順にCr含有耐火キャスタブル31、水冷管5、断熱キャスタブル32、ケーシング33で構成されている。尚、水冷管5間を平面状フィン51で連結した水冷壁構造としている。さらに水冷管5に耐火キャスタブル31、断熱キャスタブル32を支持するためのアンカー34が設けられている。
図6を用いて、水冷管に構成について説明する。図6に水冷管5のみを取り出した概略図を示した。図6(A)及び(B)は溶融炉の側部の円筒部に位置する壁部内の水冷管の概略図の例である。図6(A)の例では、円筒部では螺旋状に水冷管を巻いており、図6(B)の例では円筒部で水冷管が壁内で往復しながら下方から上方へ水冷管内を水が流通するように構成されている。前記円筒部に位置する水冷管は、前記図6(A)、(B)に示した構成だけでなく、他の構成でもよく、また例えば図6(A)に示した構成の水冷管を上下方向に複数層設ける等、複数の構成を組み合わせてもよい。水冷管の外径、水冷管間の距離等は限定されるものではないが、本実施例においては円筒部に位置する水冷管は外径を48.6mm、水冷管間は約70mmとしている。水冷管と水冷管の間が広すぎると、冷却効果の小さい部分にはスラグのセルフコート層が出来難く、侵食されて、炉壁に穴があいてしまう可能性があるためで、従って水冷管間は70mm以上間隔をあけることは好ましくない。また、図6(C)は溶融炉底部に位置する壁部内の水冷管の概略図であり、該炉底部では渦巻き状に内側から外側に向かって水冷管を巻いている。炉底部に位置する水冷管は、本実施例においては外径を27.2mm、水冷管間は約20mmとしている。炉底部は、前記円筒部と比較すると、炉壁が侵食されやすい状況にあるため、スラグのセルフコート層をより形成しやすくするため円筒部よりも水冷管間の距離を短くしている。
なお、炉壁3は、図3、図6に示した水冷管5及びフィン51に替えて、図4に示したように水冷ジャケット50を用いた水冷構造としてもよい。
また、炉底周囲より下方に向けて延在する熱遮蔽壁4が設けられており、該熱遮蔽壁4には前記スラグ出滓口6及びその周囲の炉底の下面側を1300℃以上の高温で加熱することができるガスバーナが設けられている。尚、熱遮蔽壁4内にできる空間はスラグ出滓口6から排出されたスラグの流路として利用される。
更に、本発明に特徴的な構成として、図2に示すように炉底部の下面側に面し、熱遮蔽壁4の内壁4aの垂直上方延長空間内の範囲に位置する水冷管5の下側面及びアンカー34の全面に、肉盛溶接によって形成される保護層である肉盛形成物7を設けるとともに、出滓口に最も近い水冷管は上部の出滓口に対する面にも肉盛形成物7を設けている。また、出滓口周囲の炉底部上面側には堰35が設けられており、該堰35も炉壁3と同様に水冷管5を埋設した水冷構造としている。さらに前記堰35内に位置する水冷管5の堰外方に向いた面及びアンカーの全面にも肉盛溶接によって形成される保護層である肉盛形成物7を設けている。
また、前記のように炉壁3を水冷間5及びフィン51に替えて水冷ジャケット50を用いた水冷構造とした場合も同様であり、図5に示すように炉底部の下面側に面し、熱遮断壁4の垂直上方延長空間内の範囲に位置する水冷ジャケット50の下面側及びアンカー34の全面に、肉盛溶接によって形成される保護層である肉盛形成物を設ける。
尚、水冷管、水冷ジャケット何れの例においても、肉盛形成物7に替えて溶射によって形成される保護層である溶射形成物を設けてもよい。また、肉盛形成物7又は溶射形成物は、熱遮蔽壁4の外壁4aの垂直上方延長空間内の範囲に位置する水冷管5又は水冷ジャケット50の下側面及びアンカー34の全面にまで範囲を広げて設けてもよい。
肉盛形成物7又は溶射形成物には、耐食性の高い合金を用いることが好ましく、特にニッケル基合金を用いるとよい。
さらに、水流路の配置は図2及び図5に断面図を示した水冷管又は水冷ジャケットの2形態に限定されるものではなく、炉底表面へスラグのセルフコート層ができる配置であれば、どのような配置形態であってもよい。
次に、以上のように構成された溶融炉1の動作について説明する。
図示しないガス化炉で廃棄物をガス化することで生成され、灰分を含んだ熱分解ガスは、溶融炉1の熱分解ガスバーナ2へ導入される。そして、該熱分解ガスバーナ2で、熱分解ガスは燃焼空気とともに溶融炉1内に供給される。溶融炉1内に供給された熱分解ガスは、熱分解ガスバーナ2より溶融炉1内のガス旋回流により形成される仮想円の接線方向に噴出されることにより溶融炉1内で旋回流を形成しながら燃焼する。溶融炉1内では、熱分解ガスと燃焼空気の混合ガスが燃焼することにより炉内温度が1300〜1500℃に維持され、熱分解ガス中の灰分が溶融、スラグ化される。灰分がスラグ化して生成された溶融スラグは、前記溶融炉1内の旋回流の遠心力により溶融炉1の内壁面に略均一に付着し、一部は前記水冷管5の水冷により冷却・固化されてスラグのセルフコート層を形成し、炉壁を溶融スラグによる侵食から保護する。一方、残部は溶融スラグとして重力により炉内壁を流下し、堰35を経て炉底部のスラグ出滓口6から排出される。
また、炉底の傾斜部を構成する炉壁にも水冷管5が内設されているため、流下している溶融スラグの一部が水冷管5の水冷により冷却・固化されて炉底表面にもスラグコート層が形成される。炉底の傾斜部を構成する炉壁にも水冷管5を内設しているため、水冷管5による水冷で、スラグ出滓口6近傍でスラグが固着して出滓口6が閉塞する可能性があるが、必要に応じてスラグカットバーナ8によりスラグ出滓口6及びその周囲の炉底の下面側を1300℃以上に加熱することで出滓口6の閉塞を防止している。
また、炉底の下面側は、前記溶融スラグの流れがないため、スラグのセルフコート層が形成されない。従って、前記スラグカットバーナ8によって、スラグ出滓口6及びその周囲の炉底の下面側を1300℃以上に加熱することで、炉底の下面側の耐火材が亀裂、剥離、脱落等する可能性がある。しかし、炉底部の下面側に面し、熱遮蔽壁4の内壁4aの垂直上方延長空間内の範囲に位置する水冷管5の下側面及びアンカー34の全面に、肉盛溶接によって形成される保護層である肉盛形成物7を設けているため、耐火材が亀裂、剥離、脱落等した場合であっても、水冷管5及びアンカー34は肉盛形成物7で保護されているため、1300℃以上の高温と水冷管5又はアンカー34が直接接することはなく、水冷管5及びアンカー34の短期間での腐食、損傷を防ぐことができる。
また、堰35及び出滓口6部分は、全面にスラグ流路を形成しないために、スラグのセルフコーティング層が安定して形成されにくい。さらに堰35は溶融炉1内であり、出滓口6は前記スラグカットバーナによって加熱されるため、表面の耐火材が亀裂、剥離、脱落等する可能性があるが、炉底の下面側と同様に肉盛形成物7を設けているため、水冷管5及びアンカー34の短期間での腐食、損傷を防ぐことができる。
なお、熱遮断壁4の垂直上方延長空間外の範囲については、耐火材にスラグカットバーナ8による熱が伝播しないため、水冷管5の下側面及びアンカー34の全面に、肉盛形成物7を設ける必要はない。
また、溶融炉1内壁側は、1300〜1500℃という高温雰囲気下ではあるが、前述の通りスラグのセルフコート層を形成し、耐火材を保護しているため、肉盛形成物7を設ける必要はない。
前述の図1〜図3で説明した本実施例における溶融炉と、図7で説明した従来技術における溶融炉を3ヶ月間運転し、その結果を比較した。
1、炉内壁部
本実施例、従来技術とも水冷管の腐食、損傷なし。
2、熱遮断壁の垂直上方延長空間内の炉底下側面
本実施例においては、水冷管の腐食、損傷なし。
従来技術においては、水冷管が露出し、腐食損傷が見られた。
炉内壁部は1300℃以上の高温雰囲気下ではあるが、本実施例、従来技術ともスラグのセルフコート層によって保護されるため水冷管の損傷は見られなかった。
熱遮断壁の垂直上方延長空間内の炉底下側面については、従来技術ではスラグカットバーナによって1300℃以上に熱せられて水冷管が露出し、腐食損傷が見られたが、本実施例においては肉盛形成物によって保護されるため水冷管の腐食損傷は見られなかった。
出滓口近傍でスラグが固化して出滓口を閉塞することなく、さらにスラグのセルフコート層が出来ない又は出来難い箇所であり、高温の排ガスに直接曝露される範囲に位置する耐火材からなる炉壁内部の水冷管の短期間での腐食、損傷を防止する溶融炉として用いることができる。
実施例1に係る溶融炉を示す側断面図である。 図1におけるA部拡大図である。 炉壁の部分断面図である。 炉壁の別の例の部分断面図である。 別の例の図1におけるA部拡大図である。 水冷管5のみを取り出した概略図である。 従来技術に係る溶融炉の断面図である。 図7におけるB部拡大図である。
符号の説明
1 溶融炉
2 熱分解ガスバーナ
3 炉壁
4 熱遮蔽壁
5 水冷管
6 スラグ出滓口
7 肉盛形成物
8 スラグカットバーナ(火炎バーナ)
9 スラグセルフコート層
10 炉底の下面側
31 耐火キャスタブル
32 断熱キャスタブル
50 水冷ジャケット

Claims (7)

  1. 炉内に導入された灰を、可燃性ガスの旋回流により加熱溶融し、炉底に設けた出滓口より排出する灰溶融炉であって、該灰溶融炉の炉壁に水管若しくはジャケットよりなる金属製水流路を内設して、炉内壁側に固相スラグ層を形成する灰溶融炉において、
    前記出滓口下方に火炎バーナを配し、出滓口及びその周囲の炉底の下面側の耐火壁を加熱して、スラグの固着による前記出滓口の閉塞を防止するとともに、
    前記金属製水流路を、炉底の出滓口周囲まで延在して、炉底よりの吸熱を図り、炉底表面への固相スラグ層の形成を促し、
    更に、前記水流路の炉底の前記下面側に面する部位に、肉盛溶接若しくは溶射によって形成される耐熱保護層を設けたことを特徴とする灰溶融炉。
  2. 前記保護層形成範囲が、前記火炎バーナの熱伝播により、耐火材が損傷する惧れのある1100℃以上の範囲であることを特徴とする請求項1記載の灰溶融炉。
  3. 炉底周囲より下方に向け延在される熱遮蔽壁を備え、
    前記火炎バーナを、前記熱遮蔽壁に取り付けるとともに、
    前記保護層形成範囲が、前記熱遮蔽壁の垂直上方延長空間内であることを特徴とする請求項1記載の灰溶融炉。
  4. 前記水流路は、耐火材に向けて延在する支持部材を備え、
    該支持部材に前記保護層が形成されていることを特徴とする請求項1記載の灰溶融炉。
  5. 前記火炎バーナ又は加熱溶融による熱伝播によって耐火材が損傷する惧れがある1100℃以上の範囲であり、前記水流路の出滓口側に面する部位に、肉盛溶接若しくは溶射によって形成される耐熱保護層を設けたことを特徴とする請求項1記載の灰溶融炉。
  6. 前記出滓口周囲の炉底部上面側に堰を設けるとともに、該堰内に水管若しくはジャケットよりなる金属製水流路を内設し、
    前記堰内の水流路の堰外方に面する部位に、肉盛溶接若しくは溶射によって形成される耐熱保護層を設けたことを特徴とする請求項1記載の灰溶融炉。
  7. 前記肉盛溶接又は溶射によって形成される保護層は、ニッケル基合金を用いて形成されることを特徴とする請求項1〜6何れかに記載の灰溶融炉。
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