JP5264659B2 - 光線路特性測定方法及び装置 - Google Patents

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Description

本発明は、レイリー散乱などによって生じる光ファイバ等の光線路内の反射率分布、損失分布等の特性を測定する測定方法及び装置に関する。
従来の光ファイバ等の光線路内の散乱の強度と位置を測定する方法として、C−OTDR(Coherent - Optical Time Domain Reflectometry:コヒーレント光時間領域反射率測定法)という方法がある(非特許文献1参照)。この方法では、パルス化した光を試験光として被測定光ファイバに入射して当該被測定光ファイバ内で散乱された光を抽出し、試験光の一部である参照光と合波してコヒーレント検波をする。このとき、参照光と散乱光のビート信号が受信される時間から、その散乱光の光ファイバ内で散乱された位置を特定する。
この場合、距離分解能Δzは、入射する試験光パルスの幅wに依存し、Δz = V・w/2(V:光ファイバ中の光速 2×108 [m/s])で与えられる。一例として、w = 1[ns]であれば、10[cm]となる。
OTDRでは、パルス幅で決まる距離分解能で測定するために、それに相当する時間分解能で測定しなければならない。前述のw = 1[ns]の例では、1/w = 1[GHz]のサンプリング周波数で測定しなければならず、距離分解能を上げようとすると、それに比例して、受信するフォトディテクタの帯域とサンプリング周波数が大きくなってしまう。このため、現在一般的な受光系の帯域やサンプリング周波数が1[GHz]程度であるので、距離分解能は1[ns]パルスの10[cm]が限界となる。
"Development of a coherent OTDR instrument," J. P. King, D. F. Smith, K. Richards, P. Timson, R. E. Epworth, and S. Wright, Journal of Lightwave Technology, vol. LT-5, No.4, pp.616-624, April, 1987
以上述べたように、従来のOTDR等の光線路特性測定方法では、距離分解能を上げようとすると、それに比例して、受信系の帯域が拡大し、その分サンプリング周波数を大きくなってしまうため、もはや距離分解能の向上は望めない状況にある。
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたもので、パルス幅によって決まる受信系の帯域拡大を抑え、狭帯域な受信系であっても損失分布等の特性の高分解能測定を実現する光線路特性測定方法及び装置を提供することを目的とする。
本発明に係る光線路特性測定方法は以下のような態様の構成とする。
(1)光伝送路に入射されたレーザ光を2分岐し、該2分岐したレーザ光をそれぞれパルス変調し、パルス変調された一方のパルス光を試験光として被測定光線路に入射し、パルス変調された他方のパルス光を参照光として前記被測定光線路からの後方散乱光に合波し、該合波した光信号をコヒーレント検波し、該検波された信号を用いてサンプリングよるOTDR波形を求める態様とする。
(2)(1)の構成において、前記参照光のパルスの周期を、光パルスが前記被測定光線路を往復する時間の整数分の1からずれるように設定する態様とする。
また、本発明に係る光線路特性測定装置は以下のような態様の構成とする。
(3)光伝送路に入射されたレーザ光を2分岐する分岐手段と、
前記分岐手段で2分岐されたレーザ光をそれぞれパルス変調するパルス変調手段と、
前記パルス変調された一方のパルス光を試験光として被測定光線路に入射し、パルス変調された他方のパルス光を参照光として前記被測定光線路からの後方散乱光に合波する合波手段と、
前記合波した光信号をコヒーレント検波する検波手段と、
前記検波手段で検波された信号を用いてサンプリングよるOTDR波形を求める波形算出手段と
を備える態様とする。
(4)(3)の構成において、前記参照光のパルスの周期を、光パルスが前記被測定光線路を往復する時間の整数分の1からずれるように設定する態様とする。
すなわち、本発明では、時間によって例えばレイリー散乱光が被測定光線路内で散乱された位置を特定して、レイリー散乱光分布の特性を測定する方法及び装置であって、前記被測定光線路からのレイリー散乱光の帯域を前記参照光のパルス列の周波数に落とし、その参照光パルス列の周期を、前記被測定光線路の往復にかかる周期に相当する周波数の整数倍にならないように離調して、前記レイリー散乱光と参照光パルスが合波されるタイミングを、前記試験光のパルスごとにずらしながら測定を繰り返す態様とする。
これにより、狭い帯域の受光系で広帯域の散乱光分布等の特性を測定することが可能となる。
以上のように、本発明の測定方法によれば、パルス幅によって決まる受信系の帯域拡大を抑え、狭帯域な受信系であっても損失分布等の特性の高分解能測定を実現する光線路特性測定方法及び装置を提供することができる。
特に、本発明は、レイリー散乱光分布測定において、細いパルスによる高分解能測定を狭帯域な受光系で測定できるものとして応用が可能である。パルス幅が細くなることによる測定系の広帯域化が防げることにより、より距離分解能が高精度な測定としても応用が可能である。
本発明に係る光ファイバ特性測定方法を利用した測定装置の一実施形態を示すブロック図。 上記実施形態で測定される周期的な散乱光分布波形を示す模式図。 上記実施形態において、周波数をずらしたサンプリングによる、サンプリング点のずれを示す模式図。 上記実施形態において、1周期波形の境界でのサンプリング点と時間分解能を示す模式図。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明に係る光ファイバ特性測定方法を利用した測定装置の一実施形態を示すブロック図である。図1において、レーザ光発生器1の後段に光カプラ4−1を接続して、光伝送路に入射されたレーザ光を2分岐する。両分岐線路において、外部の周期パルス発生器2−1、2−2の出力信号を入力させたEA変調器、又は、LN変調器などの強度変調器3−1、3−2を用いてパルス化を行う。2つのパルス光のうち、一方の光を被測定光ファイバ7へ入射する試験光として、他方のパルス光を参照光とする。
被測定光ファイバ7に入射され、散乱されてその端部から出射されたパルス光は、光カプラ4−2で取り出され、光カプラ4−3によって参照光パルスと合波されてコヒーレント検波される。この検波光は、バランスフォトディテクターなどの受光器5で受光された後、AD変換器6を用いてサンプリングされ、これによってOTDR波形が求められる。
上記構成において、以下、図2乃至図4を参照してその処理動作について説明する。
上記被測定光ファイバ7中にて、試験光はパルス1個分(以下、試験パルス)だけ入射される必要がある。この場合、被測定光ファイバ7の長さがLのとき、試験パルスの往復を考慮すると、被測定光ファイバ7に入射するパルス列の周期は、2L/Vで与えられる。このときのレイリー散乱光の様子を図2に示す。すなわち、一般的なOTDR測定で受信されるファイバ損失に相当する傾きを持ったレイリー散乱光分布が、2L/Vの周期で繰り返し出力されることになる。
従来のOTDR測定では、この2L/Vの周期の波形をパルス幅wで決まる距離分解能で測定するためには、パルス幅で決まる時間間隔以上の速さでサンプリングする必要がある。つまり、サンプリング周波数F = 1/wが必要となる。
ここで、この波形を光でサンプリングすることで、帯域を狭めながら高分解能で測定することを考える。上記のように、参照光を強度変調器3−2でパルス列に変調する。このようにすると、受光器5で受信される信号は、参照光パルス列の周波数でサンプリングされた波形となる。
上記の参照光パルス列の周波数を、被測定光ファイバ7の往復に係る周波数V/2Lの整数倍にならないようずれを与えた周波数とする。このとき、図2に示す各周期2L/Vの波形において、光サンプリングされる点はずれていくことになる。そこで、複数の波形を測定することで、被測定光ファイバ7の長さと周波数のずれによって決まる間隔で被測定光ファイバ7の中の全ての点の散乱光が測定できることになる。この様子を図3に示す。この図では、サンプリングパルスの周期を少しずらしているが、被測定光ファイバ7に入射する試験パルスの周期を2L/Vからずらしても同じである。
但し、この測定方法でも、従来のOTDRと同じように、平均化で信号対雑音比を上げる必要がある。すなわち、コヒーレント検波において、レイリー散乱の揺らぎや偏波、位相差の揺らぎが存在するためであり、これらは従来のOTDRと同じように平均化処理で小さくすることができる。
上記の測定方法では、散乱光を参照光のパルス光と合波するため、受光器5で受光するときの光の帯域は、参照光パルス列の周波数に下がる。AD変換器5でサンプリングする周波数もこの参照光パルス列と等しいため、受信系全ての帯域が狭まることになる。しかしながら、図3に示すAの波形とBの波形では、サンプリングするタイミング(サンプリング点)が異なるため、これら複数のサンプリング点がそれぞれ異なる波形を重ねることで、サンプリング間隔が非常に小さい波形を得ることができる。これにより高分解能と狭帯域測定が両立できることになる。
さらに詳細に説明する。被測定光ファイバの長さをL、参照光パルス列の周波数をF-Δfとする。Fは、試験光パルス1個が被測定光ファイバを往復した時の波形(以後、1周期波形という)の中でのサンプリング点の数に対応し、Δfは1周期波形ごとのサンプリング点のずれに対応する。受光器5の後のAD変換器6でのサンプリングは、この参照光パルス列と厳密に同期をとって行われ、そのサンプリング点の間隔は、1/(F-Δf) [秒]となる。このとき、1周期波形の中でのサンプリング数Nは、
Figure 0005264659
で与えられる。ここで、下向き鍵括弧の対は、その中の値以下の整数を表す。また、n番目のサンプリング点の時刻は、n/(F-Δf) [秒]で与えられるが、この点が1周期波形上で表わす時刻tnは、
Figure 0005264659
で与えられる。ここで、mod(a,b)は、aをbで割った余りである。そして、この点が表す被測定光ファイバ7上の位置znは、
Figure 0005264659
で与えられる。
複数の1周期波形をサンプリングしたものを、上記のようにtとzに対応させて重ねれば、元の1周期波形を測定することができる。このとき、1周期波形の境界での様子は、図4のようになり、N+1番目のサンプリング点と1周期波形の境界の差が、この測定での時間分解能Δtとなり、
Figure 0005264659
と表わされる。ここで、被測定光ファイバ7の距離に対応するサンプリング分解能Δznは、
Figure 0005264659
と表され、パルスによる距離分解能Δzと同程度である。測定分解能は、ΔzとΔznのいずれか大きい方で制限されることになる。ここで、(1)式の下鍵括弧の中が整数の場合、下向きの鍵括弧の対が外れるため、(4)式と(5)式はそれぞれΔt = 1/(F-Δf)、Δzn = V/2(F-Δf)となり、複数の1周期波形をサンプリングしていっても、サンプリング点がずれない。つまり、通常のOTDRのサンプリングと変わらない。したがって、周波数のずれΔfは、(1)式の下向き鍵括弧の中が整数にならないように設定する必要がある。
一例として、被測定光ファイバ長が10[km]、サンプリング周波数が100[MHz]-100[Hz]のときを計算すると、N = 9999、Δt = 0.1 [ns]、Δzn = 1[cm]となる。これは、従来のOTDR測定ではパルス幅0.1[ns]であり、サンプリング周波数10[GHz]で測定することに対応する。本実施形態の方法では、参照光パルス列の周波数100[MHz]-100[Hz]の帯域で済むため、測定帯域を大幅に狭帯域化することができる。つまり、パルス幅で決まる分解能を向上させることが、受光帯域によって制限されないことになる。
以上説明したように、本発明の測定方法を用いた測定装置は、時間によって例えばレイリー散乱光が被測定光ファイバ7内で散乱された位置を特定して、レイリー散乱光分布の特性を測定する際に、被測定光ファイバ7からのレイリー散乱光の帯域を前記参照光のパルス列の周波数に落とし、その参照光パルス列の周期を、被測定光ファイバ7の往復にかかる周期に相当する周波数の整数倍にならないように離調して、レイリー散乱光と参照光パルスが合波されるタイミングを、試験光のパルスごとにずらしながら測定を繰り返すようにしているので、狭い帯域の受光系で広帯域の散乱光分布の特性を測定することができる。
特に、本発明は、レイリー散乱光分布測定において、細いパルスによる高分解能測定を狭帯域な受光系で測定できるものとして応用が可能である。パルス幅が細くなることによる測定系の広帯域化が防げることにより、より距離分解能が高精度な測定としても応用が可能である。
尚、上記実施形態では、レイリー散乱光の分布を測定する場合を例にあげて説明したが、他の散乱光の特性を測定する場合でも同様に実施可能である。また、被測定光ファイバの特性を測定する場合について説明したが、この測定は光ファイバに限定されず、光線路全般の特性の測定に利用可能である。
その他、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成を削除してもよい。さらに、異なる実施形態例に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
1…レーザ光発生器、2−1,2−2…周期パルス発生器、3−1,3−2…強度変調器、4−1,4−2,4−3…光カプラ、5…受光器、6…AD変換器、7…被測定光ファイバ。

Claims (2)

  1. 光伝送路に入射されたレーザ光を2分岐し、該2分岐したレーザ光をそれぞれパルス変調し、パルス変調された一方のパルス光を試験光として被測定光線路に入射し、パルス変調された他方のパルス光を参照光として前記被測定光線路からの後方散乱光に合波し、該合波した光信号をコヒーレント検波し、該検波された信号を用いてサンプリングよるOTDR(Optical Time Domain Reflectometry:光時間領域反射率測定)波形を求める光線路特性測定方法であって、
    前記参照光のパルスの周期を、光パルスが前記被測定光線路を往復する時間の整数分の1からずらすようにしたことを特徴とする光ファイバ特性測定方法。
  2. 光伝送路に入射されたレーザ光を2分岐する分岐手段と、
    前記分岐手段で2分岐されたレーザ光をそれぞれパルス変調するパルス変調手段と、
    前記パルス変調された一方のパルス光を試験光として被測定光線路に入射し、パルス変調された他方のパルス光を参照光として前記被測定光線路からの後方散乱光に合波する合波手段と、
    前記合波した光信号をコヒーレント検波する検波手段と、
    前記検波手段で検波された信号を用いてサンプリングよるOTDR(Optical Time Domain Reflectometry:光時間領域反射率測定)波形を求める波形算出手段と
    を具備し、
    前記パルス変調手段は、前記参照光のパルスの周期を、光パルスが前記被測定光線路を往復する時間の整数分の1からずれるように設定することを特徴とする光線路特性測定装置。
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