JP5264352B2 - 誘導加熱方法 - Google Patents

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本発明は誘導加熱方法、および誘導加熱装置に関する技術の分野に属する。
本願出願人は、近接配置された複数の誘導加熱コイルに電力を供給することによって生ずる相互誘導の影響を回避または抑制して、各誘導加熱コイルに投入する電力を任意に調整することができる誘導加熱装置を開発し、これを提案している(例えば特許文献1参照)。
特開2006−278150号公報
特許文献1に開示している誘導加熱装置によれば、相互誘導の影響を回避することで、近接配置された複数の誘導加熱コイルの各々に任意の電力を投入することができるため、従来に比べ、加熱対象とする被誘導加熱部材の加熱温度制御を高精度に行うことができる。
このように、被誘導加熱部材の温度制御に関して有効な特性を得られる誘導加熱装置において次に課題となるのが、装置の小型化、製造コストの削減であることは必然的な事項である。
誘導加熱装置を構成する上での必須要素は、誘導加熱源となる誘導加熱コイルと、当該誘導加熱コイルに電力を供給するための電力制御ユニットである。ここで、誘導加熱コイルに関しては、対象とする装置の規模や形態によって種々変更が加えられるため、その構成を簡略化したり、製造コストを削減することは困難である。よって、構成の簡略化、それに伴うコスト削減を図るためには、電力制御ユニットの構成に頼ることとなる。このような観点から、最も一般的な手段としては、誘導加熱コイルに対する投入電力の制御を、逆変換部であるインバータに一元化する方法である。つまり、所定の周波数で運転されているインバータからの出力電圧にパルス幅変調制御(PWM制御)を施すことで、出力電力を調整するというものである。しかしこの場合、電圧のデューティ比が小さくなった場合、すなわち誘導加熱コイルに対する出力電力が小さくなった場合、電流波形が歪むこととなり、電流波形におけるゼロクロスの検出が困難となる。こうした場合、ゼロクロスの位相差に基づいて同期制御を行うことができなくなり、相互誘導の影響を回避した運転そのものが不安定になってしまう可能性が生ずる。
そこで本発明では、このような課題を解決し、電流波形が歪み、断続的となる電流波形を連続的なものへと回帰させるように誘導加熱装置を運転する誘導加熱方法、およびコンパクトで低価格化を図ることができ、かつ相互誘導の影響を回避した良好な運転状態を保つことのできる誘導加熱装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明に係る誘導加熱方法は、近接して配置された複数の誘導加熱コイルのそれぞれに接続された電圧幅制御インバータの出力電流が断続した場合に、前記インバータの運転周波数を向上させることを特徴とする。
また、上記のような誘導加熱方法では、前記出力電流が断続した場合に、出力電流における電圧のデューティ比を上げることを特徴とするものであっても良い。このような方法であっても、出力電流を連続的にすることができる。
また、上記のような特徴を有する誘導加熱方法では、前記インバータの出力電流が断続的となるデューティ比を予め定め、前記予め定めたデューティ比以上のデューティ比を保つようにすると良い。このような方法によれば、出力電流が断続的となる虞が無い。
また、上記のような特徴を有する誘導加熱方法では、前記複数の誘導加熱コイルに接続された複数の前記インバータの出力電流のゼロクロスを同期させるようにすることが望ましい。このような方法を採用することによれば、近接して配置された誘導加熱コイルによる相互誘導の影響を回避してインバータを運転することが可能となる。
また、上記のような特徴を有する誘導加熱方法では、前記インバータを直列共振型インバータとすると良い。
また、上記目的を達成するための本発明にかかる誘導加熱装置は、近接して配置された複数の誘導加熱コイルと、前記複数の誘導加熱コイルのそれぞれに接続された直列共振型インバータとを有し、電流同期制御を行う誘導加熱装置であって、前記インバータには、当該インバータからの出力電流の周波数と電圧のパルス幅の制御を行うための信号を出力する電力・位相調整手段が接続され、前記電力・位相調整手段には、前記インバータからの出力電力の高出力時と低出力時の境界値が予め設定されていて、前記出力電力が低出力時の範囲内にある場合に、前記インバータから出力される電流電圧の周波数を前記出力電力が高出力時の範囲内にある場合よりも高くする切換信号を前記電力・位相調整手段へ出力する電力検出手段が接続されていることを特徴とする。
また、上記のような特徴を有する誘導加熱装置では、前記電力・位相調整手段は、前記高出力時における前記出力電流の周波数を共振回路の固有共振周波数とするように設定すると良い。このような設定で運転を行うことによれば、高出力運転時の力率が良好となり、ランニングコストを下げることができる。
また、上記のような特徴を有する誘導加熱装置の電力を制御する方法としては、近接して配置された複数の誘導加熱コイルに対する電力の調整、電流波形の位相の調整を前記複数の誘導加熱コイルのそれぞれに接続された直列共振型のインバータで行い、電流同期制御を可能とする誘導加熱装置における電力制御方法であって、前記インバータからの出力電圧のパルス幅の調整により出力電力の調整を行うと共に、前記インバータからの出力電力の範囲を高出力時と低出力時に分断した境界値を定め、前記出力電力が低出力時の範囲内にある場合の前記インバータから出力される電流電圧の周波数を前記高出力時の範囲内における電流電圧の周波数よりも高くするという方法が望ましい。
また、上記のような誘導加熱装置の制御方法では、前記高出力時における前記出力電流の周波数を共振回路の固有共振周波数とすると良い。このような制御を行うことで、高出力時における力率が良好となる。このため、誘導加熱装置運転時のランニングコストを下げることができる。
さらに、上記のような誘導加熱装置の制御方法では、前記出力電力が前記低出力時の範囲内である場合に、前記出力電流の周波数を段階的に高くするようにしても良い。このような制御を行うことによれば、出力電流の周波数向上に伴う力率の低下を最小限に抑えることが可能となる。
上記のような特徴を有する誘導加熱装置によれば、出力電流の波形が歪み、断続的となった場合であっても、電流波形を連続的なものへと回帰させることが可能となる。
また、上記のような特徴を有する誘導加熱装置によれば、電力制御、周波数制御をコンパクトで低価格な誘導加熱装置とすることができる。また、低出力運転時においても、相互誘導の影響を回避した良好な運転状態を保つことができる。
以下、本発明の誘導加熱装置、および誘導加熱装置の電力制御方法について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
まず、図1を参照して本発明に係る誘導加熱装置10の構成について説明する。本実施形態に係る誘導加熱装置10は、近接して配置された複数(本実施形態では、構成を簡単化するために2つ)の誘導加熱コイル12(12a,12b)と、誘導加熱コイル12に電力を供給するための電力制御ユニット14とより成る。
誘導加熱コイル12としては、その形状、構成については特に限定するものでは無いが、一般的な形態として、半径の異なる円形にしてこれを同心円上に配置する形態や、ソレノイド型として連続配置する形態などを挙げることができる。また、こうした形態の誘導加熱コイル12では、コイル構成部材(例えば銅)を中空構造とし、内部に冷媒(例えば水)を挿通可能とされていることも多い。
電力制御ユニット14は、各誘導加熱コイル12a,12bに接続されたインバータ16a,16bと、当該インバータ16(16a,16b)に接続されたコンバータ18、及び電源手段20を主な要素として構成されており、インバータ16には、電力・位相調整手段22が接続されている。
前記インバータ16は、詳細を後述するコンバータ18から入力された直流電流を交流電流に変換して出力する逆変換手段である。本実施形態では電圧制御型の直列共振型のインバータであり、例えば単相のフルブリッジインバータやハーフブリッジインバータなどであれば良い。本実施形態に係るインバータ16は、詳細を後述する電力・位相調整手段22に詳細を後述する電力指示信号が入力されることにより、出力電圧のパルス幅を調整し、1波長中におけるデューティ比を変化させるパルス幅変調制御(PWM制御)用の信号を受け、誘導加熱コイル12に供給する電力の調整を行う。また、当該インバータ16は、電力・位相調整手段22に詳細を後述する位相差検出信号が入力されることにより、出力電流の周波数を瞬時的に変調させる信号を受け、電流周波数(電流波形)の位相制御を行う。このような制御により、近接配置された誘導加熱コイル12a,12b間における相互誘導の影響を回避した運転(電流同期制御)が可能となる。さらにインバータ16は、電力・位相調整手段22に詳細を後述する周波数変調信号が入力されることにより、運転時における電流電圧の発振周波数の切換運転が成される。
前記コンバータ18は、詳細を後述する電源手段20から供給される交流電流(例えば三相交流電流)を直流に変換して出力する順変換手段である。
電源手段20は、インバータ16に接続されたコンバータ18へ交流電流を供給する。なお、インバータ16とコンバータ18との間には、平滑回路17を備えることで、インバータ16に供給する直流成分の精製を成すことができる。
また、電力・位相調整手段22は、接続された温度検出手段(不図示)や、位相差検出手段24、及び電力検出手段26等から入力される信号に基づいて、インバータ16に対して種々のパターンの制御信号を出力する。
ここで、温度検出手段は、被誘導加熱部材(不図示)や被熱処理部材(不図示)の温度分布を検出するための手段である。このため温度検出手段からは、電力・位相調整手段22に対して、検出した温度に基づいて、誘導加熱コイル12に供給する電力の増減を指示する電力指示信号が入力される。例えば検出温度にムラが生じた場合には、温度の低い部分を加熱する誘導加熱コイルに供給する電力を向上させる旨の電力指示信号が、温度の高い部分を加熱する誘導加熱コイルに供給する電力を低下させる旨の電力指示信号がそれぞれ入力される。また、検出温度と目標温度との間に差がある場合には、これを埋める方向に電力を調整する旨の電力指示信号が入力される。電力・位相調整手段22は電力指示信号が入力された場合、入力された信号の種類(電力を上げるか下げるか)に応じて、出力電圧のパルス幅を変調させるパターンのON・OFF信号を出力する。
また、位相差検出手段24は、インバータ16aとインバータ16bの双方からの出力電流のゼロクロスのタイミングを検出するための手段である。このため位相差検出手段24からは、電力・位相調整手段22に対して、ゼロクロスのタイミングの差、すなわち電流位相の差が位相差検出信号として入力される。電力・位相調整手段22は、位相差検出信号が入力された場合、当該位相をゼロにするために、またはゼロに近付けるために、いずれか一方、あるいは双方のインバータ16における周波数を瞬時的に向上(または降下)させるパターンのON・OFF信号を出力する。
また、電力検出手段26は、双方のインバータ16a,16bから出力される電力を検出し、この電力が予め定めた境界値よりも大きいものであるか、または小さいものであるかを判定するための手段である。このため、電力検出手段26からは、電力・位相調整手段22に対して、出力電力が境界値を跨いだ(越えた)場合に、継続運転時の周波数を上げるまたは下げるための周波数変調信号(切換信号)が入力される。電力・位相調整手段22は、周波数変調信号が入力された場合、インバータ16から出力される電流電圧の周波数を継続的に向上(または降下)させるタイミングでON・OFF信号を出力するように、信号の出力タイミングが切換えられる。なお境界値は、任意に定めても良いが、例えば1波長中における電圧のデューティ比を減らして行くことによって生ずる電流波形の歪み(電流の断続化)に基づいて定めるようにしても良い。すなわち、電流波形に歪みが生ずる電圧のデューティ比と、このデューティ比の時に出力される電力値を予め調べておき、出力電力の値が予め調べた電力値よりも小さくなった場合には、電流波形に歪みが生ずると判断し、周波数変調信号を出力する、すなわちデューティ比を向上させる処理をとるようにすれば良い。
このような構成の誘導加熱装置10では、例えばインバータ16は、高出力時の範囲内における通常運転では、図2(a)に示すような電流波形、電圧波形を示すものとする。なお、図2において横軸は時間を示し、縦軸は強度を示すものとする。
ここで、図2(a)に示す状態は、例えば共振回路における固有共振周波数で運転されている状態とする。この場合1波長を示すλに占めるθの割合が小さいため、力率の良い運転状態ということができる。ここでθは、ゼロボルトスイッチング制御(ZVS制御)を行う電圧のゼロクロスと電流のゼロクロスとの位相差、すなわち電圧に対する電流の遅れ度合いを示している。
このような運転状態において、電圧・位相調整手段22に、電力指示信号が入力され、インバータ16からの出力電力が境界値を跨ぐほどに電圧パルスの幅が小さくされた場合、図2(b)に示すように、電流波形が歪むこととなる。この場合、電流のゼロクロスを検出することが困難となり、電流のゼロクロスを検出して成される隣接するインバータ間での電流同期制御が不安定となってしまう。このため、本実施形態では、境界値を越えて出力電力が小さくなった場合には電力検出手段26が、出力電力が低出力時の範囲内にあると判断し、電力・位相調整手段22に対して周波数変調信号を出力する。周波数変調信号が入力された電力・位相調整手段22は、インバータ16における出力電流の周波数を向上させるように切替えられたタイミングのON・OFF信号をインバータ16に対して出力する。
このようにして出力電流の周波数を向上させるように制御が成されると、出力電力が低出力時の範囲内にある場合でも、電圧パルスのデューティ比が、所定値以上となる。このため、図2(c)に示すように、電流波形の歪みが無くなり、電流波形のゼロクロスの検出が可能となる。よって、出力電力が低出力時の範囲内にある場合であっても、電流同期制御が可能となる。
なおこの場合、1波長を示すλに占めるθの割合が大きくなるため、力率は低下するが、運転状態が低出力の範囲であるため、電力消費量が高騰することは無い。
上記のように、本実施形態に係る誘導加熱装置10によれば、電圧制御部としてのチョッパを持たず、インバータ16に対する駆動信号の入力タイミングの調整により電圧、周波数を一元的に調整する構成としたため、装置としての小型化を図ることができると共に、製造コストの低下を期待することができる。また、本実施形態に係る誘導加熱装置10によれば、低出力時においても、出力電流波形の歪みを抑えることができ、安定的な電流同期制御運転が可能となる。
なお、上記実施形態では、境界値を1つとし、周波数の切換タイミングは1回であるように記載したが、電流波形の歪み具合を予め調べることで、段階的に周波数の切換を行うようにしても良い。この場合、電力消費量、すなわちランニングコスト面を考慮した場合には、最も高い出力時に共振回路における固有共振周波数で運転するように設定することが望ましい。こうすることにより、最も出力が高い時に、高い力率で運転することが可能となるからである。
本発明に係る誘導加熱装置の構成を示す図である。 高出力時と低出力時における電流周波数の波形の歪みと、周波数調整による波形の回復の様子を示す図である。
符号の説明
10………誘導加熱装置、12(12a,12b)………誘導加熱コイル、14………電力制御ユニット、16(16a,16b)………インバータ、17………平滑回路、18………コンバータ、20………電源手段、22………電力・位相調整手段、24………位相差検出手段、26………電力検出手段。

Claims (5)

  1. 近接して配置された複数の誘導加熱コイルのそれぞれに接続された電圧幅制御インバータの出力電流が断続した場合に、前記インバータの運転周波数を向上させることを特徴とする誘導加熱方法。
  2. 前記出力電流が断続した場合に、出力電流における電圧のデューティ比を上げることを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱方法。
  3. 前記インバータの出力電流が断続的となるデューティ比を予め定め、
    前記予め定めたデューティ比以上のデューティ比を保つことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の誘導加熱方法。
  4. 前記複数の誘導加熱コイルに接続された複数の前記インバータの出力電流のゼロクロスを同期させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1に記載の誘導加熱方法。
  5. 前記インバータを直列共振型インバータとすることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1に記載の誘導加熱方法。
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