JP5846426B2 - 誘導加熱用高周波インバータとその制御方法 - Google Patents
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Description
1)第1スイッチと第2スイッチを直列接続し、第1スイッチ及び第2スイッチにそれぞれ並列に逆並列ダイオードを接続し、第1スイッチと第2スイッチの第1接続中点から分岐して接続された第1共振タンク回路とを備えた第1インバータユニットと、
2)第3スイッチと第4スイッチを直列接続し、第3スイッチ及び第4スイッチにそれぞれ並列に逆並列ダイオードを接続し、第3スイッチと第4スイッチの第2接続中点から分岐して接続された第2共振タンク回路とを備えた第2インバータユニットと、
3)負荷抵抗、負荷インダクタ及び力率補償用コンデンサが直列接続された加熱負荷ユニットと、を備える。
これにより、第1接続中点と第2接続中点から流れ出る電流の合成瞬時電流ベクトルを、各々の接続中点から流れ出る2つの電流に基づく位相差角で制御し、かつ、その合成ベクトルを振幅制御(実効値電流制御)して、加熱負荷ユニットに流れる出力電流を制御し、出力電力を高速かつ連続的に可変にできる。
本発明の誘導加熱用高周波インバータは、1つの誘導加熱(IH)負荷に対して、2系統のハーフブリッジ駆動回路を備え、それぞれの瞬時電流ベクトルの相互位相を制御することにより、IH負荷に与える電力を設定できるようにしたものである。
第1スイッチと第2スイッチを直列接続し、第1スイッチ及び第2スイッチにそれぞれ並列に逆並列ダイオードを接続し、第1スイッチと第2スイッチの第1接続中点から分岐して接続された第1共振タンク回路とを備えた第1インバータユニットと、
第3スイッチと第4スイッチを直列接続し、第3スイッチ及び第4スイッチにそれぞれ並列に逆並列ダイオードを接続し、第3スイッチと第4スイッチの第2接続中点から分岐して接続された第2共振タンク回路とを備えた第2インバータユニットと、
負荷抵抗、負荷インダクタ及び力率補償用コンデンサが直列接続された加熱負荷ユニットと、を備える。
これにより、第1共振タンクと第2共振タンクのそれぞれの共振コンデンサの合成瞬時電圧ベクトル、それぞれの共振コンデンサの電圧の位相差角で制御し、加熱負荷ユニットに印加される高周波電圧の振幅と位相を高速かつ連続的に可変にできる。
(1)第1インバータユニットの第1スイッチと直列に第1ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続され、第2インバータユニットの第3スイッチと直列に第2ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続される。
(2)第1インバータユニットの第2スイッチと直列に第1ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続され、第2インバータユニットの第4スイッチと直列に第2ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続される。
(3)第1インバータユニットの第1スイッチと直列に第1ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続され、第2インバータユニットの第4スイッチと直列に第2ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続される。
(4)第1インバータユニットの第2スイッチと直列に第1ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続され、第2インバータユニットの第3スイッチと直列に第2ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続される。
(5)直流電源と直列にゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続される。
これにより、スイッチ素子の切換時の過大電流を防ぐことができ、低スイッチング損失を図ることができる。
ZCS用インダクタを用いる替りに、ZVS用コンデンサを用いることにより、スイッチ素子の切換時の過大電圧を防ぐことができ、低スイッチング損失を図ることができる。
また、共振タンクとは、具体的には共振インダクタと共振コンデンサが直列接続されたものである。
(1)並列に接続された逆並列ダイオードが導通中に第2スイッチがオフされた後あるいは同時に第1スイッチがオンされるステップ。
(2)並列に接続された逆並列ダイオードが導通中に第3スイッチがオフされた後あるいは同時に第4スイッチがオンされるステップ。
(3)並列に接続された逆並列ダイオードが導通中に第1スイッチがオフされた後あるいは同時に第2スイッチがオンされるステップ。
(4)並列に接続された逆並列ダイオードが導通中に第4スイッチがオフされた後あるいは同時に第3スイッチがオンされるステップ。
また、本発明の誘導加熱用高周波インバータによれば、インバータユニットの半導体スイッチを順次オン動作することにより、半導体スイッチのゲートトリガ周波数以上の周波数の誘導加熱負荷電流を供給でき、広範囲な負荷変動に対してソフトスイッチング動作が行えるといった効果を有する。
なお、以下の説明において、ゼロ電圧/ゼロ電流状態に置けるスイッチングは、便宜上、実施例1にあるゼロカレントスイッチング(ZCS)先行形のスイッチング(以下「ZCZVS」という)と、実施例2にあるゼロボルテージスイッチング(ZVS)先行形のスイッチング(以下「ZVZCS」という)に分けて定義する。
図1に実施例1の誘導加熱用高周波インバータの回路構成図を示す。図1において、回路全体としては高周波インバータを示し、第1インバータユニットU1と第2インバータユニットU2と加熱負荷ユニットを有する。2つのインバータユニットは共に、それぞれIGBTから成る半導体スイッチが直列接続され、かつ、半導体スイッチは、それぞれ並列に逆並列ダイオードが接続されている。
また、第1スイッチ(S1)に直列に、ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタ(LS1)が設けられている。ZCS用インダクタ(LS1)により、第1スイッチ(S1)の切換時の過大電流を防ぐことができ、低スイッチング損失を図ることができる。
また、第3スイッチ(S3)に直列に、ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタ(LS2)が設けられている。ZCS用インダクタ(LS2)により、第3スイッチ(S3)の切換時の過大電流を防ぐことができ、低スイッチング損失を図ることができる。
図1に示す回路構成において、接続中点aと接続中点bから流れ出るiL1,iL2の合成瞬時電流ベクトルを位相差角制御し、かつ、振幅制御することにより、接続中点cから加熱負荷ユニットに流れ出る合成ベクトルioを高速制御する。これにより、誘導加熱(IH)負荷に流す高周波電流の瞬時電流ベクトルの大きさを制御し、出力電力を連続的に可変できる。
図2に実施例1の誘導加熱用高周波インバータの理論動作波形を示す。実施例1の誘導加熱用高周波インバータの動作は以下の12の動作モードから成る。実施例1の誘導加熱用高周波インバータは、図2に示すように、時間の経過に従って、第1インバータユニットU1及び第2インバータユニットU2の第1スイッチ(S1)〜第4スイッチ(S4)をそれぞれのゲートトリガ信号によってオン・オフ制御することによって、t0〜t12の区間において、1サイクル分の高周波電力変換動作を行い、この高周波電力変換サイクルを繰り返すことによって高周波電力変換を行う。
以下、t0〜t12の各区間(tn〜tn+1;n=0〜11)における実施例1の誘導加熱用高周波インバータの12の動作モードについて説明する。
図2の区間t0〜t1における動作モードを説明する。前回のサイクルの区間t11〜t12において、第1インバータユニットU1の第1スイッチ(S1)はオンに切り換えられ、第2インバータユニットU2の第3スイッチ(S3)がオン状態で、第4スイッチ(S4)がオフ状態である。第1インバータユニットU1の逆並列ダイオード(D2)が導通状態である。
上記の状態で、第1インバータユニットU1の第2スイッチ(S2)が逆並列ダイオード(D2)の導通中にオフに切り替えられると、区間t0〜t1の動作モードに移行する。
区間t0〜t1の動作モードでは、図3の電流経路図に示すように、電源(Vin)−第1スイッチ(S1)−直列共振回路(L1−C1)−IH負荷で閉ループ回路を形成し、電流iL1が流れる電流ループができる。また、第2インバータユニットU2の逆並列ダイオード(D3)が導通状態であり、直列共振回路(L2−C2)−逆並列ダイオード(D3)−第1スイッチ(S1)−直列共振回路(L1−C1)で閉ループ回路を形成し、電流iL2が流れる電流ループができ、回路内を循環する。ここで、第1スイッチ(S1)及び第3スイッチ(S3)の両端電圧は、図4のV1,V3に示すように共に0(V)になり、接続中点aと接続中点bは共にVin(v)となる。
このモードの場合、IH負荷に流れる電流ioは下記式1のようになる。
io=iL1−iL2 ・・・(式1)
モード1の状態から、第3スイッチ(S3)を逆並列ダイオード(D3)の導通中にオフに切り替えることで、第2インバータユニットU2の状態が変化する。すなわち、第3スイッチ(S3)をオフすることにより、第3スイッチング素子(Q3)がZCZVSターンオフする。ここで、逆並列ダイオード(D3)のリカバリ―電流は、ZCS促進インダクタLS2の効果により小さい。また、同様に、第2インバータユニットU2のZCS促進インダクタLS2によって、第4スイッチング素子(Q4)がZCSターンオンする(図5,図6を参照)。
ここで、第1スイッチ(S1)の両端電圧は0(V)のままであるが、第3スイッチ(S3)の両端電圧はVin(V)となる。
第1インバータユニットU1では、区間t0〜t1の動作モードと同様、電源(Vin)−第1スイッチ(S1)−直列共振回路(L1−C1)−IH負荷で形成される閉ループ回路で電流iL1が流れる。この電流iL1は直列共振回路(L1−C1)によって時間の経過と共に電流量が減ってくる。
また、第2インバータユニットU2では、第3スイッチ(S3)がオフされたことによって、直列共振回路(L2−C2)−第4スイッチ(S4)−IH負荷で形成される閉ループ回路で電流iL2が循環するようになる(図7,図8を参照)。
このモードの場合、IH負荷に流れる電流ioは下記式2のようになる。
io=iL1−iL2 ・・・(式2)
第1インバータユニットU1において、図10に示すように、電流iL1がゼロクロスして反転すると、逆並列ダイオード(D1)が導通する。すなわち、図9に示すように、直列共振回路(L1−C1)−逆並列ダイオード(D1)−電源(Vin)−IH負荷で形成される閉ループ回路で、電流iL1が反転して電源(Vin)に逆流(回生)する方向に流れるようになる。
第2インバータユニットU2では、区間t3〜t4の動作モードと同様、直列共振回路(L2−C2)−第4スイッチ(S4)−IH負荷で形成される閉ループ回路で電流iL2が循環する。
このモードの場合、IH負荷に流れる電流ioは下記式3のようになる。
io=−(iL1+iL2) ・・・(式3)
第1インバータユニットU1では、区間t4〜t5の動作モードと同様、逆並列ダイオード(D1)が導通中で、直列共振回路(L1−C1)−逆並列ダイオード(D1)−電源(Vin)−IH負荷で形成される閉ループ回路で電流iL1が流れる。
第2インバータユニットU2では、図12に示すように、電流iL2がゼロクロスして反転すると、逆並列ダイオード(D4)が導通する。すわなち、図11に示すように、直列共振回路(L2−C2)−IH負荷−逆並列ダイオード(D4)で形成される閉ループ回路で電流iL2が循環する。
このモードの場合、IH負荷に流れる電流ioは下記式4のようになる。
io=−iL1+iL2 ・・・(式4)
モード5の状態から、第1スイッチ(S1)を逆並列ダイオード(D1)の導通中にオフに切り替えることで、第1インバータユニットU1の状態が変化する。すなわち、第1スイッチ(S1)をオフすることにより、第1スイッチング素子(Q1)がZCZVSターンオフする。ここで、逆並列ダイオード(D1)のリカバリ―電流はZCS促進インダクタLS1の効果により小さい。また、同様に、第1インバータユニットU1のZCS促進インダクタLS1によって、第2スイッチング素子(Q2)がZCSターンオンする(図13,図14を参照)。
第1インバータユニットU1では、直列共振回路(L1−C1)−第2スイッチ(S2)−IH負荷で形成される閉ループ回路で電流iL1が循環するようになる(図15,図16を参照)。
第2インバータユニットU2では、区間t5〜t6の動作モードと同様、直列共振回路(L2−C2)−IH負荷−逆並列ダイオード(D4)で形成される閉ループ回路で電流iL2が循環する。
このモードの場合、IH負荷に流れる電流ioは下記式5のようになる。
io=−iL1+iL2 ・・・(式5)
モード7の状態から、第4スイッチ(S4)を逆並列ダイオード(D4)の導通中にオフに切り替えることで、第2インバータユニットU2の状態が変化する。すなわち、第4スイッチ(S4)をオフすることにより、第4スイッチング素子(Q4)がZCZVSターンオフする。ここで、逆並列ダイオード(D4)のリカバリ―電流はZCS促進インダクタLS2の効果により小さい。また、第2インバータユニットU2のZCS促進インダクタLS2によって、第3スイッチング素子(Q3)がZCSターンオンする(図17,図18を参照)。
第1インバータユニットU1では、区間t7〜t8の動作モードと同様、直列共振回路(L1−C1)−第2スイッチ(S2)−IH負荷で形成される閉ループ回路で電流iL1が循環する。
第2インバータユニットU2では、第3スイッチング素子(Q3)がZCSターンオンしたことから、電源(Vin)−第3スイッチ(S3)−直列共振回路(L2−C2)−IH負荷で形成される閉ループ回路で電流iL2が流れ、電源(Vin)が電力を供給する状態となる(図19,図20を参照)。
このモードの場合、IH負荷に流れる電流ioは下記式6のようになる。
io=−iL1+iL2 ・・・(式6)
第1インバータユニットU1において、図22に示すように、電流iL1がゼロクロスして反転すると、逆並列ダイオード(D2)が導通する。すなわち、図21に示すように、直列共振回路(L1−C1)−IH負荷−逆並列ダイオード(D2)で形成される閉ループ回路で、電流iL1が反転して循環するようになる。
第2インバータユニットU2では、区間t8〜t9の動作モードと同様、電源(Vin)−第3スイッチ(S3)−直列共振回路(L2−C2)−IH負荷で形成される閉ループ回路で電流iL2が流れ、電源(Vin)が電力を供給する状態を保つ。
このモードの場合、IH負荷に流れる電流ioは下記式7のようになる。
io=iL1+iL2 ・・・(式7)
第1インバータユニットU1では、区間t9〜t10の動作モードと同様、直列共振回路(L1−C1)−IH負荷−逆並列ダイオード(D2)で形成される閉ループ回路で、電流iL1が反転して循環する。
第2インバータユニットU2では、図24に示すように、電流iL2がゼロクロスして反転すると、逆並列ダイオード(D3)が導通する。すわなち、図23に示すように、直列共振回路(L2−C2)−逆並列ダイオード(D3)−電源(Vin)−IH負荷で形成される閉ループ回路で電流iL2が循環し、電源(Vin)へ回生される。
このモードの場合、IH負荷に流れる電流ioは下記式8のようになる。
io=iL1−iL2 ・・・(式8)
モード11の状態から、第2スイッチ(S2)を逆並列ダイオード(D2)の導通中にオフに切り替えることで、第1インバータユニットU1の状態が変化する。すなわち、第2スイッチ(S2)をオフすることにより、第2スイッチング素子(Q2)がZCZVSターンオフする。ここで、逆並列ダイオード(D2)のリカバリ―電流はZCS促進インダクタLS1の効果により小さい。
また、第1インバータユニットU1のZCS促進インダクタLS1によって、第1スイッチング素子(Q1)がZCSターンオンする(図25,図26を参照)。
次に、実施例1の誘導加熱用高周波インバータと特性について説明する。以下では、動作周波数fsを100(kHz)としている。
まず、図28に重負荷から軽負荷に対する出力電圧波形および出力電流波形を示す。図28(a)は出力電圧波形を示しており、(b)は出力電流波形を示している。図28に示すように、出力電圧および出力電流の振幅は、重負荷(出力電力P0=1.9(kW))では大きく、軽負荷(出力電力P0=11(W))では小さくなっていることから、誘導加熱用高周波インバータが出力制御を行っていることが分かる。
すなわち、実施例1の誘導加熱用高周波インバータを用いることにより、重負荷から軽負荷まで広い電力制御が行えることが理解できる。
図32(1)は、上述の実施例1と同じ回路であり、第1スイッチ(S1)に直列にZCS用インダクタ(LS1)、第2スイッチ(S2)に直列にZCS用インダクタ(LS2)が設けられたインダクタ配置パターンである。図32(2)は、第2スイッチ(S2)に直列にZCS用インダクタ(LS1)、第4スイッチ(S4)に直列にZCS用インダクタ(LS2)が設けられたインダクタ配置パターンである。図32(3)は、第1スイッチ(S1)に直列にZCS用インダクタ(LS1)、第4スイッチ(S4)に直列にZCS用インダクタ(LS2)が設けられたインダクタ配置パターンである。図32(4)は、第2スイッチ(S2)に直列にZCS用インダクタ(LS1)、第3スイッチ(S3)に直列にZCS用インダクタ(LS2)が設けられたインダクタ配置パターンである。図32(5)は、電源にZCS用インダクタ(LS)が直列に設けられたインダクタ配置パターンである。
図32(6)は、第1スイッチ(S1)に直列にZCS用インダクタ(LS1)、第2スイッチ(S2)に直列にZCS用インダクタ(LS2)が設けられ、また第2スイッチ(S2)に直列にZCS用インダクタ(LS1)、第4スイッチ(S4)に直列にZCS用インダクタ(LS2)が設けられたインダクタ配置パターンである。図32(6)の場合、図32(1)〜(5)で用いるインダクタの1/2の小容量のインダクタを用いる。
以下詳細に説明する。図33の第1インバータユニットU1において、共振インダクタL1とコンデンサCS1による部分共振(スイッチ状態の遷移時の生じる共振現象)を利用して、スイッチング素子Q1,Q2のZVSを実現する。例として、第1スイッチ(S1)がオン状態、かつ、第2スイッチ(S2)がオフ状態から、ある時刻に第1スイッチ(S1)のゲートをオフすると、上記の部分共振により電源電圧Vinまで充電されていた第2スイッチング素子(Q2)の端子電圧、すなわち、コンデンサCS1の電圧VQ2は緩やかに(共振状)に下降し始める。これと同時にゲートをオフした第1スイッチング素子(Q1)の端子電圧VQ1は、次式のようになる。
VQ1=VIN−VQ2
一方、コンデンサCS1が完全に放電されその電圧VQ2がゼロに達すると、第2スイッチ(S2)に逆並列のダイオード(D2)が順バイアス状態となり、負荷電流の一部である電流が流れ始めることになる。その間に、第2スイッチ(S2)のゲートをトリガすれば、第2スイッチング素子(Q2)は、そのアクティブの第2スイッチ部(S2)に電流が流れず、また電圧もかかっていない(ダイオードの順方向電圧は、シリコンベースで約0.7ボルトである。このため、電源電圧VINに比べて十分小さい場合は無視できる)状態でのターンオンであるため、ゼロ電圧・ゼロ電流のソフトスイッチングであるZVZCSターンオン動作が実現する。
なお、同様に、スイッチング素子Q3,Q4に対しては、コンデンサCS2が同様に、ZVS動作を可能とする。
また、そのターンオフは、進み位相電流のためスイッチがオン状態でも自然に電流が反転し、逆並列ダイオードに電流が流れる区間が生まれる。その間にスイッチのゲート信号を取り除く(オフ)すると、スイッチには電流が流れておらず、かつ、ダイオードの順方向電圧が無視できるとすると、スイッチはゼロ電流、かつ、ゼロ電圧のソフトスイッチング動作となる。すなわち、ZCZVSターンオフとなる。
図34に、実施例3の誘導加熱用高周波インバータの回路構成図を示す。実施例3の誘導加熱用高周波インバータは、瞬時電圧ベクトル制御ZCS高周波インバータである。
実施例3の誘導加熱用高周波インバータは、実施例1と同様に、第1インバータユニットU1と第2インバータユニットU2と加熱負荷ユニットを有する。2つのインバータユニットは共に、それぞれIGBTから成る半導体スイッチが直列接続され、かつ、半導体スイッチは、それぞれ並列に逆並列ダイオードが接続されている。
実施例3では、実施例1と比べて加熱負荷ユニットの配置が異なっている。
図34に示すように、第1インバータユニットU1は、第1スイッチ(S1)と第2スイッチ(S2)が直列接続され、第1スイッチ(S1)に並列に逆並列ダイオード(D1)に接続され第1スイッチング素子(Q1)が構成され、第2スイッチ(S2)に並列に逆並列ダイオード(D2)が接続され第2スイッチング素子(Q2)が構成されている。そして、第1スイッチング素子(Q1)と第2スイッチング素子(Q2)の接続中点aには、共振インダクタ(L1)と共振コンデンサ(C1)が直列接続された第1共振タンク回路が分岐して接続されている。
また、第1スイッチ(S1)に直列に、ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタ(LS)が設けられている。
また、第3スイッチ(S3)に直列に、ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタ(LS)が設けられている。
図37はスイッチング素子(Q1〜Q4)の波形図(Φ =18[deg],P=2.5[kW])、図38はスイッチング素子(Q1〜Q4)の波形図(Φ =90[deg], P=1.2[kW])、図39はスイッチング素子(Q1〜Q4)の波形図(Φ =162[deg], P=56[W])を示している。
図40に、実施例3の誘導加熱用高周波インバータの各位相差角における出力電圧波形および出力電流波形を示す。ここで、図40(1)が出力電圧波形であり、図40(2)が出力電流波形である。また、図41に共振キャパシタ間電圧波形を、図42に共振インダクタ間電流波形を示す。
実施例4の誘導加熱用高周波インバータは、実施例2と同様に、第1インバータユニットU1と第2インバータユニットU2と加熱負荷ユニットを有する。2つのインバータユニットは共に、それぞれIGBTから成る半導体スイッチが直列接続され、かつ、半導体スイッチは、それぞれ並列に逆並列ダイオードが接続されている。
実施例4では、実施例2と比べて加熱負荷ユニットの配置が異なっている。
図43に示すように、第1インバータユニットU1は、第1スイッチ(S1)と第2スイッチ(S2)が直列接続され、第1スイッチ(S1)に並列に逆並列ダイオード(D1)に接続され第1スイッチング素子(Q1)が構成され、第2スイッチ(S2)に並列に逆並列ダイオード(D2)が接続され第2スイッチング素子(Q2)が構成されている。そして、第1スイッチング素子(Q1)と第2スイッチング素子(Q2)の接続中点aには、共振インダクタ(L1)と共振コンデンサ(C1)が直列接続された第1共振タンク回路が分岐して接続されている。
また、第2スイッチ(S2)に並列に、ゼロボルテージスイッチング(ZVS)用コンデンサ(CS)が設けられている。
また、第4スイッチ(S4)に並列に、ゼロボルテージスイッチング(ZVS)用コンデンサ(CS)が設けられている。
図46はスイッチング素子(Q1〜Q4)の波形図(Φ =18[deg],P=2.4[kW])、図47はスイッチング素子(Q1〜Q4)の波形図(Φ =90[deg], P=1.2[kW])、図48はスイッチング素子(Q1〜Q4)の波形図(Φ =162[deg], P=56[W])を示している。
図49に、実施例4の誘導加熱用高周波インバータの各位相差角における出力電圧波形および出力電流波形を示す。ここで、図49(1)が出力電圧波形であり、図49(2)が出力電流波形である。また、図50に共振キャパシタ間電圧波形を、図51に共振インダクタ間電流波形を示す。
S1〜S4 スイッチ
D1〜D4 逆並列ダイオード
L1,L2 共振インダクタ
C1,C2 共振コンデンサ
C0 力率補償用コンデンサ
LS,LS1,LS2 ZCS用インダクタ
CS,CS1,CS2 ZVS用共振ロスレススナバコンデンサ
Claims (11)
- 第1スイッチと第2スイッチを直列接続し、第1スイッチ及び第2スイッチにそれぞれ並列に逆並列ダイオードを接続し、第1スイッチと第2スイッチの第1接続中点から分岐して接続された第1共振タンク回路とを備えた第1インバータユニットと、
第3スイッチと第4スイッチを直列接続し、第3スイッチ及び第4スイッチにそれぞれ並列に逆並列ダイオードを接続し、第3スイッチと第4スイッチの第2接続中点から分岐して接続された第2共振タンク回路とを備えた第2インバータユニットと、
負荷抵抗、負荷インダクタ及び力率補償用コンデンサが直列接続された加熱負荷ユニットと、
を備え、
上記の第1インバータユニットと第2インバータユニットを互いに並列に接続して直流電源に並列接続すると共に、第1共振タンク及び第2共振タンクを介して第1接続中点と第2接続中点を接続し、
第1共振タンクと第2共振タンクの第3接続中点と、上記の直流電源の負極側との間に、上記の加熱負荷ユニットを接続し、
第1接続中点から流れ出る第1電流と第2接続中点から流れ出る第2電流の合成瞬時電流ベクトルを、第1電流と第2電流に基づく位相差角で制御し、加熱負荷ユニットに流れる出力電流を制御し、出力電力を高速かつ連続的に可変し得る、
ことを特徴とする誘導加熱用高周波インバータ。 - 第1スイッチと第2スイッチを直列接続し、第1スイッチ及び第2スイッチにそれぞれ並列に逆並列ダイオードを接続し、第1スイッチと第2スイッチの第1接続中点から分岐して接続された第1共振タンク回路とを備えた第1インバータユニットと、
第3スイッチと第4スイッチを直列接続し、第3スイッチ及び第4スイッチにそれぞれ並列に逆並列ダイオードを接続し、第3スイッチと第4スイッチの第2接続中点から分岐して接続された第2共振タンク回路とを備えた第2インバータユニットと、
負荷抵抗、負荷インダクタ及び力率補償用コンデンサが直列接続された加熱負荷ユニットと、
を備え、
上記の第1インバータユニットと第2インバータユニットを互いに並列に接続して直流電源に並列接続すると共に、第1共振タンク及び第2共振タンクを介して第1接続中点と第2接続中点を接続し、
第1共振タンクと第2共振タンクの第3接続中点と直流電源の負極側を接続し、
第1共振タンクおよび第2共振タンク共に、共振インダクタと共振コンデンサが直列に接続されたもので、第3接続中点側にそれぞれの共振コンデンサが配置され、
第1共振タンクおよび第2共振タンクの共振インダクタと共振コンデンサの接続中点どうしの間に、上記の加熱負荷ユニットを接続し、
第1共振タンクと第2共振タンクのそれぞれの共振コンデンサの電圧の合成瞬時電圧ベクトルを、それぞれの共振コンデンサの電圧の位相差角で制御し、加熱負荷ユニットに印加される高周波電圧の振幅と位相を高速かつ連続的に可変し得る、
ことを特徴とする誘導加熱用高周波インバータ。 - 下記(1)〜(5)のいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導加熱用高周波インバータ。
(1)第1インバータユニットの第1スイッチと直列に第1ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続され、第2インバータユニットの第3スイッチと直列に第2ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続される。
(2)第1インバータユニットの第2スイッチと直列に第1ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続され、第2インバータユニットの第4スイッチと直列に第2ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続される。
(3)第1インバータユニットの第1スイッチと直列に第1ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続され、第2インバータユニットの第4スイッチと直列に第2ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続される。
(4)第1インバータユニットの第2スイッチと直列に第1ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続され、第2インバータユニットの第3スイッチと直列に第2ゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続される。
(5)直流電源と直列にゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが接続される。
- 同容量の4つのゼロカレントスイッチング(ZCS)用インダクタが、
それぞれ、第1インバータユニットの第1スイッチと直列に接続され、第2インバータユニットの第3スイッチと直列に接続され、第1インバータユニットの第2スイッチと直列に接続され、第2インバータユニットの第4スイッチと直列に接続された、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導加熱用高周波インバータ。
- 上記の第1インバータユニットの第2スイッチと並列に第1ゼロボルテージスイッチング(ZVS)用共振ロスレススナバコンデンサが接続され、
上記の第2インバータユニットの第4スイッチと並列に第2ゼロボルテージスイッチング(ZVS)用共振ロスレススナバコンデンサが接続された
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導加熱用高周波インバータ。
- 2つの半導体スイッチとそれぞれの半導体スイッチに並列に逆並列ダイオードを接続し、半導体スイッチ間の接続中点から分岐して接続された共振タンクを備えた1組のインバータユニットと、
誘導加熱負荷及び力率改善機能を有する加熱負荷ユニットと、
前記インバータユニットにおける各々の半導体スイッチのゼロカレントスイッチング(ZCS)促進手段あるいはゼロボルテージスイッチング(ZVS)促進手段と、
を備え、
1組のインバータユニットを互いに並列に接続して直流電源に並列接続すると共に、それぞれの共振タンクを介して各々の接続中点どうしを接続し、
2つの共振タンクの接続中点と直流電源の負極側との間に、加熱負荷ユニットを接続し、各々の半導体スイッチ間の接続中点から流れ出る電流の合成瞬時電流ベクトルを、各々の半導体スイッチ間の接続中点から流れ出る2つの電流に基づく位相差角で制御し、加熱負荷ユニットに流れる出力電流を制御し、出力電力を高速かつ連続的に可変し得る、
ことを特徴とする誘導加熱用高周波インバータ。 - 2つの半導体スイッチとそれぞれの半導体スイッチに並列に逆並列ダイオードを接続し、半導体スイッチ間の接続中点から分岐して接続された共振タンクを備えた1組のインバータユニットと、
誘導加熱負荷及び力率改善機能を有する加熱負荷ユニットと、
前記インバータユニットにおける各々の半導体スイッチのゼロカレントスイッチング(ZCS)促進手段あるいはゼロボルテージスイッチング(ZVS)促進手段と、
を備え、
1組のインバータユニットを互いに並列に接続して直流電源に並列接続すると共に、それぞれの共振タンクを介して各々の接続中点どうしを接続し、
2つの共振タンクの接続中点と直流電源の負極側とを接続し、
各共振タンクは共振インダクタと共振コンデンサが直列に接続されたもので、共振タンクの接続中点側にそれぞれの共振コンデンサが配置され、
共振タンクの共振インダクタと共振コンデンサの接続中点どうしの間に、上記の加熱負荷ユニットを接続し、
2つの共振タンクのそれぞれの共振コンデンサの電圧の合成瞬時電圧ベクトルを、それぞれの共振コンデンサの電圧の位相差角で制御し、加熱負荷ユニットに印加される高周波電圧の振幅と位相を高速かつ連続的に可変し得る、
ことを特徴とする誘導加熱用高周波インバータ。 - 前記ゼロカレントスイッチング(ZCS)促進手段は、
各インバータユニットにおける電源の正極側あるいは負極側の半導体スイッチと直列接続されたインダクタである、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の誘導加熱用高周波インバータ。
- 前記ゼロボルテージスイッチング(ZVS)促進手段は、
各インバータユニットにおける電源の負極側の半導体スイッチと並列接続されたコンデンサで
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の誘導加熱用高周波インバータ。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の誘導加熱用高周波インバータの制御方法であって、
(1)並列に接続された逆並列ダイオードが導通中に第2スイッチがオフされた後あるいは同時に第1スイッチがオンされるステップと、
(2)並列に接続された逆並列ダイオードが導通中に第3スイッチがオフされた後あるいは同時に第4スイッチがオンされるステップと、
(3)並列に接続された逆並列ダイオードが導通中に第1スイッチがオフされた後あるいは同時に第2スイッチがオンされるステップと、
(4)並列に接続された逆並列ダイオードが導通中に第4スイッチがオフされた後あるいは同時に第3スイッチがオンされるステップと、
を含む誘導加熱用高周波インバータの制御方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の誘導加熱用高周波インバータのスイッチのゲート制御プログラムであって、
コンピュータに、
(1)並列に接続された逆並列ダイオードが導通中に第2スイッチがオフされた後あるいは同時に第1スイッチがオンされるステップと、
(2)並列に接続された逆並列ダイオードが導通中に第3スイッチがオフされた後あるいは同時に第4スイッチがオンされるステップと、
(3)並列に接続された逆並列ダイオードが導通中に第1スイッチがオフされた後あるいは同時に第2スイッチがオンされるステップと、
(4)並列に接続された逆並列ダイオードが導通中に第4スイッチがオフされた後あるいは同時に第3スイッチがオンされるステップと、
を実行させるための制御プログラム。
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