本発明の実施形態においては、坂道での停車中にある程度のブレーキ液圧を保持する液圧保持制御を実行することにより、運転者のブレーキペダルからアクセルペダルへの踏み替え時の車両のずり下がりを防止するブレーキ制御装置が提供される。ブレーキ制御装置は、停車時のマスタシリンダ圧を記憶しておき、その後の運転者によるブレーキペダルの操作によりマスタシリンダ圧が、記憶した停車時のマスタシリンダ圧よりも所定値以上大きくなることを開始条件として、液圧保持制御を実行する。
液圧保持制御では、停車状態を維持するために停車位置の路面状態、たとえば傾斜角にもとづいて最低目標液圧を設定し、ブレーキペダルの操作量に応じて設定した操作目標液圧が最低目標液圧を下回る場合には、目標液圧が最低目標液圧に保持される。ブレーキ制御装置は、運転者がアクセルペダルを操作したことを含む終了条件が成立した場合に液圧保持制御を終了する。なお終了条件は、運転者がブレーキペダルの操作を解除してから所定時間が経過したことを含んでもよい。
図1は、本発明の実施形態に係るブレーキ制御装置20を示す系統図である。同図に示されるブレーキ制御装置20は、車両用の電子制御式ブレーキシステム(ECB)を構成しており、車両に設けられた4つの車輪に付与される制動力を制御する。本実施形態に係るブレーキ制御装置20は、例えば、走行駆動源として電動モータと内燃機関とを備えるハイブリッド車両に搭載される。このようなハイブリッド車両においては、車両の運動エネルギを電気エネルギに回生することによって車両を制動する回生制動と、ブレーキ制御装置20による液圧制動とのそれぞれを車両の制動に用いることができる。本実施形態における車両は、これらの回生制動と液圧制動とを併用して所望の制動力を発生させるブレーキ回生協調制御を実行することができる。
ブレーキ制御装置20は、図1に示されるように、各車輪に対応して設けられたディスクブレーキユニット21FR,21FL、21RRおよび21RLと、マスタシリンダユニット27と、動力液圧源30と、液圧アクチュエータ40とを含む。
ディスクブレーキユニット21FR,21FL、21RRおよび21RLは、車両の右前輪、左前輪、右後輪、および左後輪のそれぞれに制動力を付与する。本実施形態におけるマニュアル液圧源としてのマスタシリンダユニット27は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル24の運転者による操作量に応じて加圧された作動液(以下、「ブレーキフルード」ともいう)をディスクブレーキユニット21FR〜21RLに対して送出する。動力液圧源30は、動力の供給により加圧された作動流体としてのブレーキフルードを、運転者によるブレーキペダル24の操作から独立してディスクブレーキユニット21FR〜21RLに対して送出することが可能である。液圧アクチュエータ40は、動力液圧源30またはマスタシリンダユニット27から供給されたブレーキフルードの液圧を適宜調整してディスクブレーキユニット21FR〜21RLに送出する。これにより、液圧制動による各車輪に対する制動力が調整される。
ディスクブレーキユニット21FR〜21RL、マスタシリンダユニット27、動力液圧源30、および液圧アクチュエータ40のそれぞれについて以下で更に詳しく説明する。各ディスクブレーキユニット21FR〜21RLは、それぞれブレーキディスク22とブレーキキャリパに内蔵されたホイールシリンダ23FR〜23RLを含む。そして、各ホイールシリンダ23FR〜23RLは、それぞれ異なる流体通路を介して液圧アクチュエータ40に接続されている。なお以下では適宜、ホイールシリンダ23FR〜23RLを総称して「ホイールシリンダ23」という。
ディスクブレーキユニット21FR〜21RLにおいては、ホイールシリンダ23に液圧アクチュエータ40からブレーキフルードが供給されると、車輪と共に回転するブレーキディスク22に摩擦部材としてのブレーキパッドが押し付けられる。これにより、各車輪に制動力が付与される。なお、本実施形態においてはディスクブレーキユニット21FR〜21RLを用いているが、例えばドラムブレーキ等のホイールシリンダ23を含む他の制動力付与機構を用いてもよい。
マスタシリンダユニット27は、本実施形態では液圧ブースタ付きマスタシリンダであり、液圧ブースタ31、マスタシリンダ32、レギュレータ33、およびリザーバ34を含む。なおマスタシリンダ32およびレギュレータ33は、それぞれマスタシリンダユニット27における第1室、第2室を構成し、したがってマスタシリンダ32を第1マスタシリンダ、レギュレータ33を第2マスタシリンダと呼んでもよい。液圧ブースタ31は、ブレーキペダル24に連結されており、ブレーキペダル24に加えられたペダル踏力を増幅してマスタシリンダ32に伝達する。動力液圧源30からレギュレータ33を介して液圧ブースタ31にブレーキフルードが供給されることにより、ペダル踏力は増幅される。そして、マスタシリンダ32は、ペダル踏力に対して所定の倍力比を有するマスタシリンダ圧を発生する。なおレギュレータ33にはスプール弁が設けられており、動力液圧源30から供給されるブレーキフルードは、スプール弁を介してレギュレータ33に流入する。
マスタシリンダ32とレギュレータ33との上部には、ブレーキフルードを貯留するリザーバ34が配置されている。マスタシリンダ32は、ブレーキペダル24の踏み込みが解除されているときにリザーバ34と連通する。一方、レギュレータ33は、リザーバ34と、スプール弁を介して動力液圧源30のアキュムレータ35との双方と連通可能であり、リザーバ34を低圧源とすると共に、アキュムレータ35を高圧源とし、マスタシリンダ圧とほぼ等しい液圧を発生する。レギュレータ33における液圧を以下では適宜、「レギュレータ圧」という。なお、「レギュレータ圧」とは、本実施形態において説明の都合上の呼び名であり、上記したようにレギュレータ33を第2マスタシリンダと呼ぶ場合には、「レギュレータ圧」を、「マスタシリンダ圧」または「第2マスタシリンダ圧」と呼んでもよい。
動力液圧源30は、アキュムレータ35およびポンプ36を含む。アキュムレータ35は、ポンプ36により昇圧されたブレーキフルードの圧力エネルギを窒素等の封入ガスの圧力エネルギ、例えば14〜22MPa程度に変換して蓄えるものである。ポンプ36は、駆動源としてモータ36aを有し、その吸込口がリザーバ34に接続される一方、その吐出口がアキュムレータ35に接続される。ポンプ36により、アキュムレータ圧は維持されるべき設定範囲に保たれる。ブレーキECU70は、アキュムレータ圧センサ72の測定値に基づいて、アキュムレータ圧が設定範囲の下限を下回った場合にポンプ36をオンとしてアキュムレータ圧を加圧し、アキュムレータ圧が設定範囲の上限を超えた場合にポンプ36をオフとして加圧を終了する。
また、アキュムレータ35は、マスタシリンダユニット27に設けられたリリーフバルブ35aにも接続されている。アキュムレータ35におけるブレーキフルードの圧力が異常に高まって例えば25MPa程度になると、リリーフバルブ35aが開弁し、高圧のブレーキフルードはリザーバ34へと戻される。
上述のように、ブレーキ制御装置20は、ホイールシリンダ23に対するブレーキフルードの供給源として、マスタシリンダ32、レギュレータ33およびアキュムレータ35を有している。そして、マスタシリンダ32にはマスタ配管37が、レギュレータ33にはレギュレータ配管38が、アキュムレータ35にはアキュムレータ配管39が接続されている。これらのマスタ配管37、レギュレータ配管38およびアキュムレータ配管39は、それぞれ液圧アクチュエータ40に接続される。
液圧アクチュエータ40は、複数の流路が形成されるアクチュエータブロックと、複数の電磁制御弁を含む。アクチュエータブロックに形成された流路には、個別流路41、42,43および44と、主流路45とが含まれる。個別流路41〜44は、それぞれ主流路45から分岐されて、対応するディスクブレーキユニット21FR、21FL,21RR,21RLのホイールシリンダ23FR、23FL,23RR,23RLに接続されている。これにより、各ホイールシリンダ23は主流路45と連通可能となる。
また、個別流路41,42,43および44の中途には、ABS保持弁51,52,53および54が設けられている。各ABS保持弁51〜54は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。開状態とされた各ABS保持弁51〜54は、ブレーキフルードを双方向に流通させることができる。つまり、主流路45からホイールシリンダ23へとブレーキフルードを流すことができるとともに、逆にホイールシリンダ23から主流路45へもブレーキフルードを流すことができる。ソレノイドに通電されて各ABS保持弁51〜54が閉弁されると、個別流路41〜44におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
更に、ホイールシリンダ23は、個別流路41〜44にそれぞれ接続された減圧用流路46,47,48および49を介してリザーバ流路55に接続されている。減圧用流路46,47,48および49の中途には、ABS減圧弁56,57,58および59が設けられている。各ABS減圧弁56〜59は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。各ABS減圧弁56〜59が閉状態であるときには、減圧用流路46〜49におけるブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されて各ABS減圧弁56〜59が開弁されると、減圧用流路46〜49におけるブレーキフルードの流通が許容され、ブレーキフルードがホイールシリンダ23から減圧用流路46〜49およびリザーバ流路55を介してリザーバ34へと還流する。なお、リザーバ流路55は、リザーバ配管77を介してマスタシリンダユニット27のリザーバ34に接続されている。
主流路45は、中途に分離弁60を有する。この分離弁60により、主流路45は、個別流路41および42と接続される第1流路45aと、個別流路43および44と接続される第2流路45bとに区分けされている。第1流路45aは、個別流路41および42を介して前輪用のホイールシリンダ23FRおよび23FLに接続され、第2流路45bは、個別流路43および44を介して後輪用のホイールシリンダ23RRおよび23RLに接続される。
分離弁60は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。分離弁60が閉状態であるときには、主流路45におけるブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されて分離弁60が開弁されると、第1流路45aと第2流路45bとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
また、液圧アクチュエータ40においては、主流路45に連通するマスタ流路61およびレギュレータ流路62が形成されている。より詳細には、マスタ流路61は、主流路45の第1流路45aに接続されており、レギュレータ流路62は、主流路45の第2流路45bに接続されている。また、マスタ流路61は、マスタシリンダ32と連通するマスタ配管37に接続される。レギュレータ流路62は、レギュレータ33と連通するレギュレータ配管38に接続される。
マスタ流路61は、中途にマスタカット弁64を有する。マスタカット弁64は、マスタシリンダ32から各ホイールシリンダ23へのブレーキフルードの供給経路上に設けられている。マスタカット弁64は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により閉弁状態が保証され、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。開状態とされたマスタカット弁64は、マスタシリンダ32と主流路45の第1流路45aとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに規定の制御電流が通電されてマスタカット弁64が閉弁されると、マスタ流路61におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
また、マスタ流路61には、マスタカット弁64よりも上流側において、シミュレータカット弁68を介してストロークシミュレータ69が接続されている。すなわち、シミュレータカット弁68は、マスタシリンダ32とストロークシミュレータ69とを接続する流路に設けられている。シミュレータカット弁68は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により開弁状態が保証され、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。シミュレータカット弁68が閉状態であるときには、マスタ流路61とストロークシミュレータ69との間のブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されてシミュレータカット弁68が開弁されると、マスタシリンダ32とストロークシミュレータ69との間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
ストロークシミュレータ69は、複数のピストンやスプリングを含むものであり、シミュレータカット弁68の開放時に運転者によるブレーキペダル24の踏力に応じた反力を創出する。ストロークシミュレータ69としては、運転者によるブレーキ操作のフィーリングを向上させるために、多段のバネ特性を有するものが採用されると好ましい。
レギュレータ流路62は、中途にレギュレータカット弁65を有する。レギュレータカット弁65は、レギュレータ33から各ホイールシリンダ23へのブレーキフルードの供給経路上に設けられている。レギュレータカット弁65も、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により閉弁状態が保証され、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。開状態とされたレギュレータカット弁65は、レギュレータ33と主流路45の第2流路45bとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに通電されてレギュレータカット弁65が閉弁されると、レギュレータ流路62におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
液圧アクチュエータ40には、マスタ流路61およびレギュレータ流路62に加えて、アキュムレータ流路63も形成されている。アキュムレータ流路63の一端は、主流路45の第2流路45bに接続され、他端は、アキュムレータ35と連通するアキュムレータ配管39に接続される。
アキュムレータ流路63は、中途に増圧リニア制御弁66を有する。また、アキュムレータ流路63および主流路45の第2流路45bは、減圧リニア制御弁67を介してリザーバ流路55に接続されている。増圧リニア制御弁66と減圧リニア制御弁67とは、それぞれリニアソレノイドおよびスプリングを有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、それぞれのソレノイドに供給される電流に比例して弁の開度が調整される。
増圧リニア制御弁66は、各車輪に対応して複数設けられた各ホイールシリンダ23に対して共通の増圧制御弁として設けられている。また、減圧リニア制御弁67も同様に、各ホイールシリンダ23に対して共通の減圧制御弁として設けられている。つまり、本実施形態においては、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、動力液圧源30から送出される作動流体を各ホイールシリンダ23へ給排制御する1対の共通の制御弁として設けられている。このように増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67を各ホイールシリンダ23に対して共通化すれば、ホイールシリンダ23ごとにリニア制御弁を設けるのと比べて、コストの観点からは好ましい。
なお、ここで、増圧リニア制御弁66の出入口間の差圧は、アキュムレータ35におけるブレーキフルードの圧力と主流路45におけるブレーキフルードの圧力との差圧に対応し、減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧は、主流路45におけるブレーキフルードの圧力とリザーバ34におけるブレーキフルードの圧力との差圧に対応する。また、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67のリニアソレノイドへの供給電力に応じた電磁駆動力をF1とし、スプリングの付勢力をF2とし、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧に応じた差圧作用力をF3とすると、F1+F3=F2という関係が成立する。従って、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67のリニアソレノイドへの供給電力を連続的に制御することにより、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧を制御することができる。
ブレーキ制御装置20において、動力液圧源30および液圧アクチュエータ40は、本実施形態における制御部としてのブレーキECU70により制御される。ブレーキECU70は、CPUを含むマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に各種プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート等を備える。そして、ブレーキECU70は、上位のハイブリッドECU(図示せず)などと通信可能であり、ハイブリッドECUからの制御信号や、各種センサからの信号に基づいて動力液圧源30のポンプ36や、液圧アクチュエータ40を構成する電磁制御弁51〜54,56〜59,60,64〜68を制御する。
また、ブレーキECU70には、レギュレータ圧センサ71、アキュムレータ圧センサ72、および制御圧センサ73が接続される。レギュレータ圧センサ71は、レギュレータカット弁65の上流側でレギュレータ流路62内のブレーキフルードの圧力、すなわちレギュレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。アキュムレータ圧センサ72は、増圧リニア制御弁66の上流側でアキュムレータ流路63内のブレーキフルードの圧力、すなわちアキュムレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。制御圧センサ73は、主流路45の第1流路45a内のブレーキフルードの圧力を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。各圧力センサ71〜73の検出値は、所定時間おきにブレーキECU70に順次与えられ、ブレーキECU70の所定の記憶領域に格納保持される。
分離弁60が開状態とされて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通している場合、制御圧センサ73の出力値は、増圧リニア制御弁66の低圧側の液圧を示すと共に減圧リニア制御弁67の高圧側の液圧を示すので、この出力値を増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の制御に利用することができる。また、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67が閉鎖されていると共に、マスタカット弁64が開状態とされている場合、制御圧センサ73の出力値は、マスタシリンダ圧を示す。更に、分離弁60が開放されて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通しており、各ABS保持弁51〜54が開放される一方、各ABS減圧弁56〜59が閉鎖されている場合、制御圧センサの73の出力値は、各ホイールシリンダ23に作用する作動流体圧、すなわちホイールシリンダ圧を示す。
さらに、ブレーキECU70に接続されるセンサには、ブレーキペダル24に設けられたストロークセンサ25も含まれる。ストロークセンサ25は、ブレーキペダル24の操作量としてのペダルストロークを検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。ストロークセンサ25の出力値も、所定時間おきにブレーキECU70に順次与えられ、ブレーキECU70の所定の記憶領域に格納保持される。
上述のように構成されたブレーキ制御装置20は、ブレーキ回生協調制御を実行することができる。ブレーキ制御装置20は制動要求を受けて制動を開始する。制動要求は、例えば運転者がブレーキペダル24を操作した場合など、車両に制動力を付与すべきときに生起される。制動要求を受けてブレーキECU70は要求制動力を演算し、要求制動力から回生による制動力を減じることによりブレーキ制御装置20により発生させるべき制動力である要求液圧制動力を算出する。ここで、回生による制動力の実効値は、ハイブリッドECUからブレーキ制御装置20に供給される。そして、ブレーキECU70は、算出した要求液圧制動力に基づいて各ホイールシリンダ23FR〜23RLの目標液圧を算出する。ブレーキECU70は、ホイールシリンダ圧が目標液圧となるように、フィードバック制御則により増圧リニア制御弁66や減圧リニア制御弁67に供給する制御電流の値を決定する。
なお、本実施形態に係るブレーキ制御装置20は、回生制動力を利用せずに液圧制動力だけで要求制動力をまかなう場合にも、当然ホイールシリンダ圧制御系統により制動力を制御することができる。ブレーキ回生協調制御を実行しているか否かにかかわらず、ホイールシリンダ圧制御系統により制動力を制御する制御モードを以下では適宜「リニア制御モード」と称する。あるいは、ブレーキバイワイヤによる制御と呼ぶ場合もある。
その結果、ブレーキ制御装置20においては、ブレーキフルードが動力液圧源30から増圧リニア制御弁66を介して各ホイールシリンダ23に供給され、車輪に制動力が付与される。また、各ホイールシリンダ23からブレーキフルードが減圧リニア制御弁67を介して必要に応じて排出され、車輪に付与される制動力が調整される。本実施形態においては、動力液圧源30、増圧リニア制御弁66及び減圧リニア制御弁67等を含んでホイールシリンダ圧制御系統が構成されている。ホイールシリンダ圧制御系統によりいわゆるブレーキバイワイヤ方式の制動力制御が行われる。ホイールシリンダ圧制御系統は、マスタシリンダユニット27からホイールシリンダ23へのブレーキフルードの供給経路に並列に設けられている。なお、本実施形態に係るブレーキ制御装置20は、回生制動力を利用せずに液圧制動力だけで要求制動力をまかなう場合にも、当然ホイールシリンダ圧制御系統により制動力を制御することができる。
ブレーキバイワイヤ方式の制動力制御を行う場合には、ブレーキECU70は、レギュレータカット弁65を閉状態とし、レギュレータ33から送出されるブレーキフルードがホイールシリンダ23へ供給されないようにする。更にブレーキECU70は、マスタカット弁64を閉状態とするとともにシミュレータカット弁68を開状態とする。これは、運転者によるブレーキペダル24の操作に伴ってマスタシリンダ32から送出されるブレーキフルードがホイールシリンダ23ではなくストロークシミュレータ69へと供給されるようにするためである。ブレーキ回生協調制御中は、レギュレータカット弁65及びマスタカット弁64の上下流間には、回生制動力の大きさに対応する差圧が作用する。またブレーキECU70は、分離弁60を開状態とする。これにより各ホイールシリンダ圧が共通の液圧に制御される。
図2は、本発明の実施形態に係る停車中のずり下がり防止のための液圧保持制御における基本制御を説明するための図である。この液圧保持制御は、リニア制御モードで実行されてよい。図2(a)はレギュレータ圧と時間の関係を示す。図2(a)において、縦軸はレギュレータ圧を示し、横軸は時間を示す。レギュレータ圧は、運転者によるブレーキペダル24の操作量に応じて変化する。
図2(b)は、アクセルペダルの操作量と時間の関係を示す。図2(b)において、縦軸はアクセルペダルの操作量を示し、横軸は時間を示す。図2(c)は、液圧保持制御の制御フラグと時間の関係を示す。縦軸の制御フラグONは、液圧保持制御が実行されていることを示し、縦軸の制御フラグOFFは、液圧保持制御が実行されていないことを示す。液圧保持制御は、停車後のブレーキペダル24の踏み増し操作により、レギュレータ圧が停車時のレギュレータ圧よりも所定値以上大きくなったことを契機として実行される。
図2(d)は、ホイールシリンダ23の目標液圧と時間の関係を示す。図2(d)において、縦軸は目標液圧を示し、横軸は時間を示す。車両ずり下がりを防止するための液圧保持制御においては、ホイールシリンダの目標液圧が、少なくとも最低目標液圧Pa(図2(d)で一点鎖線で示す)を維持するように制御される。そのためブレーキECU70は、ブレーキペダル24の操作量にもとづいて設定される操作目標液圧(図2(d)で破線で示す)と最低目標液圧Paとのうち高い方を目標液圧(図2(d)で実線で示す)として、たとえばリニア制御モードでホイールシリンダ圧を制御する。なお、図示の都合上、実線は、破線および一点鎖線にそれぞれ重ならないように示されているが、実際には、時間t0から時間t4までは破線に重なり、時間t4から時間t6までは一点鎖線に重なることになる。
最低目標液圧Paは、車両のずり下がりが発生しない値に設定され、停車位置の路面の傾斜角に応じて設定されてよい。本実施形態においてブレーキECU70は、操作目標液圧をレギュレータ圧と同期するように設定するが、たとえば、操作目標液圧は、レギュレータ圧とストロークセンサ25の検知量の双方を用いて設定されてよい。
図2(a)において、走行中の車両において運転者によりブレーキペダル24が踏み込み操作されると、操作量に応じてレギュレータ圧がP1まで上昇し、時間t1で、車両が停止する。ブレーキECU70は、車両停止時のレギュレータ圧P1を記憶する。なお、この例ではブレーキペダル24が踏み込まれて、レギュレータ圧がP1に維持されたときに車両が停止しているが、レギュレータ圧の上昇中に車両が停止してもよい。
停車後、運転者によりブレーキペダル24が踏み増し操作され、レギュレータ圧が再び上昇する。ブレーキECU70は、レギュレータ圧を監視し、所定の演算周期で、レギュレータ圧センサ71で検知されたレギュレータ圧と、記憶したレギュレータ圧P1との差分を計算する。時間t2で、差分(レギュレータ圧P2−レギュレータ圧P1)が所定値以上の値になると、液圧保持制御の開始条件が成立し、液圧保持制御フラグをオフからオンに変更して(図2(c)参照)、液圧保持制御を実行する(図2(d)参照)。
ブレーキペダル24の踏み増し操作は、液圧保持制御を実行するための契機であり、運転者は、液圧保持制御の実行を希望するときに、この踏み増し操作を行う。運転者は、踏み増し操作を行って液圧保持制御の実行指令を生成すると、元のストローク位置までブレーキペダル24を戻す。これにより操作目標液圧は、踏み増し操作以前のPbに設定される。なおブレーキペダル24の戻し位置は、元の位置でなくてもよく、また戻さなくてもよい。液圧保持制御の実行中は、車両のずり下がりを防止するために、ホイールシリンダ23の液圧が、少なくとも最低目標液圧Paに維持される。
時間t3で、運転者のペダル踏力が緩められ、踏み込み操作量が減少し始める。時間t5で、ブレーキペダル24の踏み込み操作量がゼロになると、レギュレータ圧がゼロまで減少する。このとき、図2(d)を参照して、破線で示すホイールシリンダの操作目標液圧は、時間t3からt5までの間に、Pbからゼロまで減少することになり、図示の例では、時間t4で、操作目標液圧が最低目標液圧Paを下回る。したがって液圧保持制御下においては、時間t4以降、ブレーキECU70が、目標液圧を最低目標液圧Paに設定する。これにより、車両のずり下がりが抑制される。その後、時間t6で、アクセルペダルが操作されると、液圧保持制御の終了条件が成立し、液圧保持制御が終了して、目標液圧が、操作目標液圧(この場合はゼロ)に切り替えられる。なお、ブレーキペダル24の踏み込み操作量がゼロになってから所定時間(たとえば2秒)経過することが、液圧保持制御の終了条件として設定されていてもよく、この場合は、時間t5の2秒以内にアクセルペダル操作がなければ、アクセルペダル操作を待たずに液圧保持制御は終了する。以上が、液圧保持制御における基本制御である。
ところで、ブレーキペダル24を高踏力で操作して停車すると、レギュレータ33内の圧力が急激に上昇する。これによりレギュレータ33に設けられたスプール弁は常時開弁した状態となり、レギュレータ33と動力液圧源30との連通状態が維持されるようになる。
既述したように、ブレーキECU70は、アキュムレータ圧を設定範囲に維持するようにポンプ36を駆動制御する機能を有しており、アキュムレータ圧が設定範囲の下限を下回ると、ポンプ36を駆動して蓄圧を開始する。このとき、スプール弁が開弁状態にあって、レギュレータ33と動力液圧源30との連通状態が維持されていると、アキュムレータ圧の上昇とともに、レギュレータ圧も上昇する。
図2(a)において、時間t1で、車両が急制動により停止した場合を想定する。このときブレーキECU70は停車時のレギュレータ圧P1を記憶する。高踏力でブレーキペダル24が踏み込まれたことにより、スプール弁は開弁状態となり、このタイミングでポンプ36が駆動されると、アキュムレータ圧とレギュレータ圧は等しく上昇する。その結果、レギュレータ圧がP2を超えると、上記したようにブレーキECU70は、液圧保持制御フラグをオフからオンに変更し、液圧保持制御を実行する。このように、上記した液圧保持制御の基本制御にしたがうと、ブレーキペダル24の踏み増し操作が行われていないにもかかわらず、ブレーキECU70は、停車時からレギュレータ圧が所定値以上上昇したことで、液圧保持制御の開始条件が成立したことを判定し、運転者の意図に反して、液圧保持制御が実行される。
そこで本実施形態のブレーキ制御装置20は、運転者によるブレーキペダル24の操作に関係なくレギュレータ圧が上昇した場合には、液圧保持制御を実行しないように動作する。
図3は、本実施形態の液圧保持制御を実行するブレーキ制御装置20の構成を示す。ブレーキ制御装置20は、制御部として機能するブレーキECU70を備え、ブレーキECU70は、マスタ圧記憶処理部100および実行部120を備える。
マスタ圧記憶処理部100は、液圧保持制御の開始条件を判定するための基準となるマスタ圧の記憶処理を実行し、マスタ圧取得部102、記憶値設定部104、マスタ圧記憶部106、マスタ圧更新部108および記憶値リセット部110を備える。マスタ圧取得部102は、レギュレータ圧センサ71からレギュレータ圧を取得する。記憶値設定部104は、マスタ圧記憶部106に記憶させる値を設定する。なお、以下では、マスタ圧記憶部106に記憶したレギュレータ圧を、「マスタ圧記憶値」とも呼ぶ。マスタ圧更新部108は、マスタ圧記憶値の更新処理を行い、記憶値リセット部110は、マスタ圧記憶値のリセット処理を行う。
実行部120は、液圧保持制御を実行し、開始条件判定部122、液圧制御部124および終了条件判定部126を備える。開始条件判定部122は、液圧保持制御の開始条件の成立の有無を判定する。本実施形態において開始条件は、マスタ圧取得部102で所定の周期で取得されるレギュレータ圧が、マスタ圧記憶部106に記憶されたレギュレータ圧(マスタ圧記憶値)よりも所定値以上大きいことに設定される。終了条件判定部126は、液圧保持制御の終了条件の成立の有無を判定する。本実施形態において終了条件は、アクセルペダルが操作されること、またはブレーキペダル24の踏み込みが解除されてから所定時間経過したことに設定される。液圧制御部124は、開始条件が成立するとGセンサ82の検知値から路面の傾斜角を取得し、最低目標液圧を設定して液圧保持制御を実行し、終了条件が成立すると液圧保持制御を終了する。
図4は、本実施形態の液圧保持制御を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、所定の周期で実行される。マスタ圧記憶処理部100は、液圧保持制御フラグがオンであるか判定する(S10)。液圧保持制御フラグオンは、液圧保持制御が実行されていることを示し、液圧保持制御フラグオフは、液圧保持制御が実行されていないことを示す。液圧保持制御フラグがオンの場合(S10のY)、液圧保持制御は実行中であり、引き続き液圧制御部124が、液圧保持制御を実行する(S18)。
液圧保持制御フラグがオフの場合(S10のN)、マスタ圧記憶処理部100は、マスタ圧記憶処理を実行する(S12)。図5に関して後述するが、マスタ圧記憶処理においては、マスタ圧記憶部106が車両停止時のレギュレータ圧を記憶し、またマスタ圧更新部108が、記憶したレギュレータ圧(マスタ圧記憶値)を更新し、また記憶値リセット部110がマスタ圧記憶値をリセットするなどの処理が行われる。
開始条件判定部122は、液圧保持制御の開始条件が成立したか判定する(S14)。開始条件が成立していなければ(S14のN)、液圧保持制御フラグはオフに維持されて、本フローが終了する。一方、開始条件が成立すると(S14のY)、開始条件判定部122は、液圧保持制御フラグをオンに設定し(S16)、液圧制御部124が、液圧保持制御を開始する(S18)。終了条件判定部126は、液圧保持制御の終了条件が成立したか判定する(S20)。終了条件が成立していなければ(S20のN)、液圧保持制御フラグはオンに維持されて、本フローが終了する。一方、終了条件が成立すると(S20のY)、終了条件判定部126は、液圧保持制御フラグをオフに設定し(S22)、液圧制御部124が液圧保持制御を終了して、本フローが終了する。以上の処理は所定の周期で実行される。
図5は、図4のS12のマスタ圧記憶処理を示すフローチャートである。マスタ圧取得部102が、車輪速センサ80の検知値から、車両が停止しているか判定する(S40)。マスタ圧取得部102は、全ての車輪に設けられた車輪速センサ80の検知値がゼロを示す場合に、車両が停止していることを判定する(S40のY)。このときマスタ圧取得部102は、レギュレータ圧センサ71で検知されるレギュレータ圧を取得する。記憶値設定部104は、マスタ圧記憶部106にレギュレータ圧が記憶されているか判定する(S42)。マスタ圧記憶部106がレギュレータ圧を記憶していなければ(S42のN)、記憶値設定部104が、マスタ圧記憶値を設定する。このとき記憶値設定部104は、マスタ圧記憶値を、以下に示すように、マスタ圧取得部102で取得されたレギュレータ圧、または所定の記憶下限値(たとえば3MPa)のいずれか大きい方に設定する。
マスタ圧記憶値=MAX(レギュレータ圧、記憶下限値)
マスタ圧記憶部106は、記憶値設定部104により設定されたマスタ圧記憶値を記憶する(S44)。
マスタ圧記憶値が記憶された場合(S44)、また、マスタ圧記憶値が既に記憶されている場合(S42のY)、マスタ圧更新部108は、マスタ圧記憶値の更新条件が成立しているか判定する(S46)。マスタ圧記憶値の更新条件が成立しなければ(S46のN)、マスタ圧記憶処理が終了する。マスタ圧記憶値の更新条件が成立すると(S46のY)、マスタ圧更新部108は、マスタ圧記憶値を更新する(S48)。このときマスタ圧更新部108は、上記した記憶値設定部104と同様に、マスタ圧記憶値を、マスタ圧取得部102で取得されたレギュレータ圧、または所定の記憶下限値のいずれか大きい方に更新する。マスタ圧記憶部106は、マスタ圧更新部108により更新されたマスタ圧記憶値を記憶する。
S40において、停車中でなければ(S40のN)、記憶値リセット部110は、マスタ圧記憶値をリセットして(S50)、マスタ圧記憶処理が終了する。このリセット処理は、たとえばマスタ圧記憶値をマスタ圧記憶部106から削除することで行われてよい。
図6は、図5のS46のマスタ圧記憶値の更新条件判定処理を示すフローチャートである。マスタ圧更新部108は、マスタ圧記憶値が記憶下限値より大きいか判定する(S60)。マスタ圧記憶値が記憶下限値以下であれば(S60のN)、マスタ圧記憶値が小さく、更新する必要がないため、更新条件判定処理を終了する。
マスタ圧記憶値が記憶下限値より大きい場合(S60のY)、マスタ圧更新部108は、マスタシリンダユニット27と動力液圧源30とが連通しているか判定する(S62)。具体的にマスタ圧更新部108は、マスタシリンダユニット27におけるレギュレータ33と、動力液圧源30とが連通しているか判定する。連通している場合(S62のY)、マスタ圧更新部108は、動力液圧源30におけるポンプ36が駆動中であるか判定する(S64)。ポンプ36が駆動中であれば(S64のY)、マスタ圧更新部108は、更新条件が成立したことを判定する(S68)。
マスタ圧更新部108は、S62の第1条件と、S64の第2条件の双方の条件が成立した場合に、更新条件が成立したことを判定し(S68)、マスタ圧記憶値の更新処理を実行する(図5のS46、S48参照)。具体的にS62の第1条件は、レギュレータ圧センサ71により検知されたレギュレータ圧と、アキュムレータ圧センサ72により検知されたアキュムレータ圧との差分の絶対値が所定値(たとえば1.7MPa)以下であることに設定される。なお第1条件を判定する前提として、レギュレータ圧センサ71およびアキュムレータ圧センサ72が正常動作していることが、さらなる条件として加えられてもよい。
第1条件が成立すると、レギュレータ圧とアキュムレータ圧とが実質的に等しくなっていることで、レギュレータ33のスプール弁が開弁状態にあり、レギュレータ33と動力液圧源30とが連通状態にあることが判定される。またさらに第2条件が成立すると、ポンプ36が駆動中であることで、運転者によるブレーキペダル24の操作がなくても、レギュレータ圧がアキュムレータ圧とともに上昇することが判定される。したがってマスタ圧更新部108は、第1条件および第2条件が成立すると、レギュレータ圧が運転者の意図によらずに上昇することを認識し、マスタ圧記憶値を、マスタ圧取得部102で取得されたレギュレータ圧、または所定の記憶下限値のいずれか大きい方に更新する(図5のS48参照)。この更新処理は、所定の周期で、第1条件と第2条件の双方が成立する限り継続して実行される。そのため、マスタ圧記憶値は、ポンプ36の駆動により上昇するレギュレータ圧に随時更新されることになる。
マスタ記憶値が、マスタ圧取得部102で所定の周期で取得されるレギュレータ圧に随時更新されることで、レギュレータ圧とマスタ圧記憶値との差分が所定値以上であることを開始条件として判定する開始条件判定部122は、レギュレータ圧とマスタ圧記憶値とが等しくなるために、この開始条件が不成立であることを判定する。これにより液圧制御部124が、運転者による液圧保持制御の実行指令が生成されていないにもかかわらず、液圧保持制御を実行する事態を回避することが可能となる。このように本実施形態のマスタ圧記憶処理によると、マスタ圧記憶値を更新することによって、液圧保持制御の基本制御に修正を加えることなく、運転者の意図に反して液圧保持制御を実行する状況を容易に回避できるという利点がある。
第1条件または第2条件が成立しない場合(S62のN、S64のN)、マスタ圧更新部108は、(レギュレータ圧+0.5MPa)がマスタ圧記憶値よりも小さいか判定する(S66)。S66の条件は、停車時のレギュレータ圧(マスタ記憶値)が非常に高い場合、運転者にブレーキペダル24の踏み増し操作をさせるのは好ましくない場合もあるため、マスタ記憶値を小さくするように更新させるための判定条件である。レギュレータ圧が(マスタ記憶値−0.5MPa)よりも小さければ(S66のY)、マスタ圧更新部108は、更新条件が成立したことを判定する(S68)。一方、レギュレータ圧が(マスタ記憶値−0.5MPa)以上であれば(S66のN)、マスタ圧更新部108は、更新条件が成立していないことを判定する(S70)。以上により、更新条件判定処理が終了する。
以上のように本実施形態によれば、運転者の意図に反してレギュレータ圧が上昇する場合に、液圧保持制御の実行を回避することが可能となる。
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施の形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。