JP5261443B2 - ポリマーアロイの製造方法 - Google Patents
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Description
たとえば、特許文献1には、「ポリマーアロイ」という発明の名称で、(A)熱可塑性ポリエステル95〜5重量部及び(B)ポリアミド5〜95重量部に加え、(C)として(A)と(B)の合計100重量部に対して特定のビスフェノールエーテル化合物が0.3〜10重量部となるものから構成されるポリマーアロイが開示されている。
次に、特許文献2は、「熱可塑性樹脂組成物及び成形品」という発明の名称で、(A)熱可塑性ポリエステル系樹脂、(B)ポリアミド樹脂、(C)エポキシ化ジエン系ブロック共重合体を配合してなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物、及び、その熱可塑性樹脂組成物を用いた成形品に関する技術が開示されている。
また、特許文献3においてはポリエステル系樹脂と多価アルコールとの混練についての記述はあるが、ポリエステル樹脂ならびに特にポリアミド樹脂との相溶性について関する記述やポリエステル系樹脂と多価アルコールを加熱混練して生成される樹脂組成物を相溶剤として用いる技術ではなく、ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂の双方の特徴を活かしたポリマーアロイを製造することができないという課題があった。
上記構成のポリマーアロイの製造方法は、多価アルコールを用いて分解して生成された芳香族ポリエステル樹脂及び第2のポリアミド樹脂の少なくともいずれか1種類の樹脂からなる相溶化剤が、熱可塑性ポリエステル樹脂または第1のポリアミド樹脂の末端基と脱水反応を起こし増粘をすると同時に多価アルコールによる分解により粘度の低下をおこすように作用し、その結果、増粘の抑えられたポリマーアロイを生成するように作用する。
相溶化剤の生成において、芳香族ポリエステル樹脂及び第2のポリアミド樹脂の両方の樹脂を用いることで、熱可塑性ポリエステル樹脂と第1のポリアミド樹脂の両方との接着性が向上するように作用する。
その理由について説明する。ポリエステル系相溶化剤とポリアミド系相溶化剤では、樹脂に対して相溶性がやや異なっている。特にポリアミド系相溶化剤では、ポリエステル系樹脂に対してあまり良好でないことが知られている。このため、2種類の樹脂(芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂)に、別々に多価アルコール処理したポリエステル系相溶化剤とポリアミド系相溶化剤の2種類を混練すると、特にポリアミド系樹脂の方に偏析してしまい、実質的にポリエステル系相溶化剤のみが作用しているのと同じ状態になる。しかしポリエステル系相溶化剤は特性上強度的に低いので、ポリマーアロイとしても強度の向上が不十分となる。
一方、本願発明のようにポリエステル系樹脂とポリアミド系樹脂を同時に多価アルコール処理すると、両者に反応が進行するので、ポリエステル系樹脂とポリアミド系樹脂の両方に反応性のある相溶化剤が生成されるのである。また、ポリエステル系相溶化剤の弱点の低強度がポリアミド成分によって改善され、強度的にも良好で,両樹脂に反応性を有する相溶化剤となるのである。
本発明に使用される相溶化剤は、熱可塑性ポリエステル樹脂や第1のポリアミド樹脂に比べ低粘度であるため、これらの成分に対して少量配合する時には、相溶化剤の十分な分散を達成するためには、高混練の押出機にて混練を行う必要があるが、高混練により発生する樹脂温度の著しい上昇のため熱可塑性ポリエステル樹脂、第1のポリアミド樹脂自身の特性が低下する。この問題を避けるため、相溶化剤が熱可塑性ポリエステル樹脂、第1のポリアミド樹脂に対して優れた溶解性を示す点を利用し、相溶化剤と熱可塑性ポリエステル樹脂及び第1のポリアミド樹脂を予め混合して配合されるべき相溶化剤よりも多い量として加えられる高濃度のマスターバッチを製造しておき、このマスターバッチを製造に際して用いることで、少量配合時には必要であった高混練の押出機は不要となり、通常の混練機で容易に優れた特性のポリマーアロイを製造することが可能である。従って、高混練の装置を用いる際の発熱もなく、熱可塑性ポリエステル樹脂、第1のポリアミド樹脂の特性が低下することがない。なお、マスターバッチの製造は容易であることから、予めマスターバッチを製造しておいて、それを用いてポリマーアロイを製造することに困難な点はない。
図1は本実施の形態に係るポリマーアロイの製造方法を示す概念図である。
本実施の形態に係るポリマーアロイは、多価アルコールで分解された,低粘度の芳香族ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂のうち少なくともいずれか1種類の樹脂である相溶化剤(以下、これを成分Cという場合がある)と、熱可塑性ポリエステル樹脂(以下、これを成分Aという場合がある)と、第1のポリアミド樹脂としてのポリアミド樹脂(以下、これを成分Bという場合がある)と、を加熱混合して生成されるものである。
ステップS1では、低粘度である芳香族ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂のうち少なくとも1種類の樹脂をラボプラストミル、2軸押出機、バンバリーミキサー及びベッセルなどの混練装置に投入する工程である。また、その後に多価アルコールを添加するのがステップS2である。そして、加熱混合すること(ステップS3)でステップS1で投入された芳香族ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂のうち少なくとも1種類を分解することで、相溶化剤を生成することができる。これらのステップS1からステップS3までが相溶化剤生成工程となる。
なお、ステップS1乃至S3において、芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂の両方の樹脂を投入しつつ、しかも両方の樹脂を一括同時に,多価アルコールを用いて分解してもよい。両方の樹脂を用いることで、熱可塑性ポリエステル樹脂(成分A)とポリアミド樹脂(成分B)の両方との接着性が向上するように作用するからである。
ステップS4は、相溶化剤ができた後に、相溶化剤に対して、熱可塑性ポリエステル樹脂と、ポリアミド樹脂を投入する工程である。これらの配合については後述する。
ステップS5では、相溶化剤、熱可塑性ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂を加熱混合する工程である。なお、図1においては、相溶化剤を生成した後に、熱可塑性ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂を投入するように記載されているが、これは相溶化剤が生成された後にそこへ熱可塑性ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂を投入する意味の他、相溶化剤を別に生成しておき、熱可塑性ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂を投入した後に、相溶化剤を投入したり、熱可塑性ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂と相溶化剤を同時に投入して加熱混合することも含む概念である。
加熱混合した後に、冷却してポリマーアロイを得る。これらのステップS4乃至S6が、ポリマーアロイ生成工程である。
また、本願特許請求の範囲及び明細書においては、相溶化剤に含まれるポリアミド樹脂を第2のポリアミド樹脂(成分Cの一部)とし、相溶化剤と混合してポリマーアロイを製造するために加えられるポリアミド樹脂を第2のポリアミド樹脂と区別して第1のポリアミド樹脂(成分B)ということにする。
実際の詳細な製造方法の配合材料、温度条件及び配合条件については、以下の実施の形態あるいは実施例で説明する。
本発明の実施の形態における熱可塑性ポリエステル樹脂(成分A)とは、エステル結合を主たる結合単位として有する重合体であって、具体的にはテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、α,β−ビス(4−カルボキシフェノキシ)エタン、アジピン酸セバチン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、シスロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸などのジカルボン酸類またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、キシリレングリコール、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、両末端が水酸基である脂肪族ポリエステルオリゴマーなどのグリコール類またはそのエステル形成性誘導体とを構成成分とする熱可塑性ポリエステル樹脂である。
本実施の形態に用いることができるポリアミドは、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとカルボン酸をモノマーとして重合されたものである。モノマーの具体例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3、5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどのジアミンと、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンニ酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ジグリコール酸などのジカルボン酸との組み合わせたものがある。
まず、成分C−1について説明する。本願明細書内における多価アルコールでの分解前芳香族ポリエステル樹脂(以下、分解前芳香族ポリエステル樹脂ということがある)は、芳香環を重合体の連鎖単位に有するポリエステル樹脂で、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、ジオール又はそのエステル形成性誘導体とを主成分として、これらの縮合反応により得られる重合体又は共重合体である。したがって前記熱可塑性ポリエステル樹脂のうちで芳香環を重合体の連鎖単位に有したものであれば、成分Aと同一であっても、異なっていてもよい。
特に、分解前芳香族ポリエステル樹脂には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのいわゆるホモポリエステル樹脂、ならびに酸成分にテレフタル酸とイソフタル酸を用いた共重合ポリエステル樹脂が好ましい。共重合樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレートなどである。これらの共重合ポリエステル樹脂は、低い温度でアルコールによる分解が進行するので着色などが少なく好ましい。
このような多価アルコールを用いて分解された芳香族ポリエステル樹脂は分岐構造によって結晶化しにくい構造となる。ポリエチレンテレフタレートの場合、示差走査熱量計測定(昇温速度5℃/分)を行うと、40〜70℃の温度範囲に大きなガラス転移温度ピーク、120〜160℃の温度範囲に結晶化ピーク及び180〜210℃の温度範囲に融点ピークが認められ、結晶化度が低く、非晶領域を多く含む低結晶性構造になっていることがわかる。
したがって、接着剤として用いる場合には、急速加熱することにより融点まで加熱しなくても接着することが可能であり、接着操作時の温度や酸化による変色や劣化を抑えることができる。
多価アルコールによるアルコール分解を行わない場合は、芳香族ポリエステル樹脂を、テレフタル酸などのジカルボン酸とエチレングリコールなどのジオールと少量のグリセリンなどの多価アルコールとの共重合により調整し、3価以上の多価アルコールを含有させるとよい。しかし、アルコール分解法により製造する方が、コスト面で有利であり、さらにはリサイクル材料を有効に活用できる点からも推奨される。
より好ましくは、芳香族基を含有したモノマー(たとえばテレフタル酸、イソフタル酸、メタキシリレンジアミンなど)の含有率が10重量%以下のポリアミド樹脂(以下、脂肪族ポリアミド樹脂と言う)であり、ポリアミド6樹脂、ポリアミド66樹脂、共重合ポリアミド6/66樹脂、ポリアミド6/10、ポリアミド12などが挙げられる。これらの脂肪族ポリアミド樹脂は、高い耐熱性、高い靱性を有し、同時に入手のしやすい点で好ましい。
その代表的なものとしては、例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/66共重合体、ポリアミド610が挙げられる。その中でも、好ましい脂肪族ポリアミド樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/66共重合体が挙げられ、これらを複数種併用してもよい。アミド基比率は1/3に近いほど耐熱性が高くなり好ましいが、同時に樹脂のコストも高くなるため、1/3以下であることが好ましい。また、アミド基比率を1/12以上とすることにより、接着性を維持することができる。
また、本実施の形態に好適な分解前ポリアミド樹脂はある範囲内の重合度、すなわち粘度数は、汎用に入手可能なポリアミド樹脂の粘度数であるものが好ましい。好ましい粘度数は、JIS K6933に準拠して96%硫酸中濃度1%、温度23℃でポリアミド樹脂ペレットに対して測定した値で80〜300ml/gの範囲、より好ましくは100〜200ml/gである。粘度数が80ml/gより低いと得られた製品の分子量が小さいため、機械的強度が低下する。また粘度数が300ml/gより高いと分解に時間を要し、流動性が低下した製品しか得ることができず、好ましくない。
また、多価アルコールには、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのグリコール類や、トリメチロールプロパン、グリセリンなどのトリオール類や、ペンタエリスリトールなどの四官能アルコール類や、ソルビトール、シュークロースなどの多糖類や、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式アルコールや、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどの高分子量アルコールを用いることができる。中でも、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの3ないし4価のアルコールが好ましく、特に、グリセリンは沸点が高いのでハンドリングが容易であり好ましい。また、配合する割合は、芳香族ポリエステル樹脂100重量部に対して、多価アルコールを2〜15重量部添加するとよく、さらには5〜10重量部が好適である。またポリアミド樹脂の場合は、ポリアミド樹脂100重量部に対して、多価アルコールを2〜30重量部添加するとよく、さらには5〜25重量部が好適である。なお、多価アルコールの添加量が少ないと、反応性が低下する。逆に、添加量が多すぎると、反応性が過激になり、増粘する。
なお、芳香族ポリエステル樹脂またはポリアミド樹脂の多価アルコールによる分解後の固有粘度または粘度数は、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂の種類及びアルコールでの分解前の固有粘度、粘度数と、多価アルコールの種類及び添加量、分解時の温度によって変化する。
相溶化剤としては、成分C−1の芳香族ポリエステル樹脂タイプが、成分Aおよび成分Bの両者に対し相溶性があり好ましいが、成分C−1の芳香族ポリエステル樹脂タイプと成分C−2ポリアミド樹脂タイプの併用がさらに相溶性が向上する。特に分解前芳香族ポリエステル樹脂と分解前ポリアミド樹脂を一括同時に多価アルコールにより分解し、生成された一括処理タイプがさらに好ましい。
本実施の形態の組成物には以上の各成分の他に、本実施の形態の効果を損なうことがない範囲内において下記の如き充填剤、補強剤、添加剤などを添加することができる。かかる充填剤としては、ガラス繊維,炭素繊維,チタン酸カリウム,アスベスト,炭化ケイ素、セラミック繊維,金属繊維,窒化ケイ素などの無機系繊維状充填剤、硫酸バリウム,硫酸カルシウム,ベントナイト,セリサイト,ゼオライト,マイカ,雲母,タルク,フェライト,硅酸カルシウム,炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム,ドロマイト,三酸化アンチモン,酸化亜鉛,酸化チタン,酸化マグネシウム,酸化鉄,二硫化モリブテン,黒鉛,石膏,ガラスパウダー,ガラスバルーン,石英,石英ガラスなどの無機系粉粒体または板状もしくはフレーク状充填剤、アラミド繊維などの有機系充填剤などを挙げることができる。さらに、少量の離型剤、カップリング剤、着色剤、滑剤、耐熱安定剤、耐候性安定剤、発泡剤、難燃剤、三酸化アンチモンなどの難燃助剤などを適宜添加してもよい。
また、そのほか、本実施の形態の配合成分のうち相溶化剤の高濃度マスターバッチを作成しておいて、成分Cの配合に利用する方法も好ましい。成分Cは低粘度であるので、成分Aや成分Bなどと同時に押出機に投入混練すると安定した混練に支障が発生する恐れがあるが、この点の解消に効果的である。成分Cは、ポリエステルやポリアミドと高濃度に溶解するので、高濃度マスターバッチの製造法として、相溶化剤、ポリエステルまたはポリアミドの融点まで、成分Cの相溶化剤をベッセル内で撹拌加熱し熔解し、そこにポリエステルやポリアミドを投入し、温度を保持して、溶解させることにより均一融液になった後、ベッセルから取り出し冷却することにより得ることができる。マスターバッチを利用した方法は、成分Cの相溶化剤としての安定した溶解能力を受け、良好な混合・分散状態をとり、さらにその分散構造が安定化・固定化することがある。
したがって、本実施の形態に係るポリマーアロイは、射出成形、押出成形、吹込成形、圧縮成形など通常の熱可塑性樹脂に対して用いられる成形に供することにより優れた物性の成形品を得ることができ、各種自動車部品、機械部品、電気・電子部品、一般雑貨などとして有用である。
例えば、各種建築物や航空機・自動車の内装用部品、スイッチ、コネクター、プリント基板、コイルボビン、ハウジングケースなどの電気・電子部品、ベアリング、ギヤー、軸受けリベット、ナットなどの一般機械部品、OA機器部品・カメラ部品・時計部品などの精密部品、またテニスラケット、スキー、ゴルフクラブ、釣竿などのレジャー・スポーツ用具、日用雑貨、塗料、絶縁剤などに使用することができる。
続いて、本実施の形態に係るポリマーアロイとその製造方法に関する実施例について説明する。
まず、使用した各成分について説明する。
熱可塑性ポリエステル樹脂(成分A):ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)であり、三菱エンジニアリングプラスチックス社製 ノバデュラン5008 固有粘度0.85dl/g。
ポリアミド樹脂(成分B):ナイロン6樹脂(PA6)であり、宇部興産社製 UBEナイロン 1011FB 粘度数130ml/g。
第1の原料として、シート成型工場から排出された共重合ポリエステル樹脂のパージ塊を用いた。この共重合ポリエステル樹脂は、固有粘度が0.61dl/gの、テレフタル酸とイソフタル酸のモル比率が93/7である共重合ポリエステル樹脂(PET/Iと略記することがある)であり、また、樹脂劣化黒点が散見された。
そして、粉砕した共重合ポリエステル樹脂18.8kgに、多価アルコールとしてのグリセリン1.2kgを2軸押出機に投入した。
2軸押出機において、ホッパー下以外のシリンダー温度を320℃、回転数を250rpmとして、共重合ポリエステル樹脂とグリセリンを混練した。なお、共重合ポリエステル樹脂及びグリセリンは連続的に供給され、2軸押出機内部での平均の混練時間は5分である。
混練が終了すると、2軸押出機の出口ノズルから、低粘度の溶融樹脂が排出された。この溶融樹脂を水に浮かべたアルミパンに取り出して冷却すると脆い無色透明の固体が得られた。得られた固体を室温で粉砕して粉体とし、(C−1)芳香族ポリエステル樹脂タイプの相溶化剤となる試料1とした。試料1の固有粘度は0.14dl/gであり、また、2軸押出機の先端に350メッシュのフィルターを設置したので樹脂劣化黒点は目視観察されなかった。この試料1をフライパン上で加熱すると、約100℃で流動性の高い液体となり、再度冷却すると80℃で固体となった。
第2の原料として、ポリブチレンテレフタレート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製ノバデュラン5010 固有粘度1.1dl/g)を用いた。
そして、グリセリン2.0kgをリービッヒ冷却管付きセパラブルフラスコにて240℃に昇温した。そこにポリブチレンテレフタレート樹脂ペレット18.0kgを投入し、無色の透明融液になるまで撹拌溶解した。 この溶融樹脂を水に浮かべたアルミパンに取り出して冷却すると脆い白褐色の固体が得られた。得られた固体を室温で粉砕して粉体とし、芳香族ポリエステル樹脂タイプ(成分C−1)の相溶化剤となる試料2とした。試料2の固有粘度は0.12dl/gであった。
多価アルコールとしてのグリセリン2.0kgをリービッヒ冷却管付きセパラブルフラスコにて240℃に昇温した。そこにペレット状ポリアミド6樹脂(宇部興産(株)製、商品名UBEナイロン 1011FB)18.0kgを、グリセリン温度が低下しないように分割投入した。褐色の透明融液になるまで撹拌溶解した。均一な液体となったので、攪拌を中止して、水に浮かべたアルミパンに取り出して冷却するとキャラメル色の固体が得られた。得られた固体を100℃で真空乾燥後、室温で粉砕して粉体とし、本発明の(C−2)ポリアミド樹脂タイプの相溶化剤となる試料3とした。試料3の粘度数は73ml/g、融点205℃であった。
また試料1を試料2に変更して同様にマスターバッチ(MB2)を製造した。次に試料1を試料3に、さらにポリアミド樹脂をPBT(ノバデュラン5010)に変更した以外同様にマスターバッチ(MB3)を製造した。
1)ノッチ付きシャルピー衝撃強度:ISO179に準じて測定した。
表1に吸水処理前/吸水処理後で示した。(単位 kJ/m2)
2)曲げ弾性率:ISO178に準じて測定した。
次式にて曲げ弾性率の変化率を計算し、表1に示した。(単位 %)
(Y0−Y20)/Y0×100
ここでY20は、吸水後の曲げ弾性率、Y0は吸水前の曲げ弾性率である
3)組成物の流動性
射出成形による機械的特性測定用試験片の作成時の最小充填圧の測定により評価した。最小充填圧が低ければ、流動性が優れていることを示す。
例えば、各種建築物や航空機・自動車の内装用部品、スイッチ、コネクター、プリント基板、コイルボビン、ハウジングケースなどの電気・電子部品、ベアリング、ギヤー、軸受けリベット、ナットなどの一般機械部品、OA機器部品・カメラ部品・時計部品などの精密部品、またテニスラケット、スキー、ゴルフクラブ、釣竿などのレジャー・スポーツ用具、日用雑貨、塗料、絶縁剤などに利用することができる。
Claims (3)
- 芳香族ポリエステル樹脂及び第2のポリアミド樹脂の少なくとも1種類の樹脂を、多価アルコールを用いて分解して相溶化剤を生成する工程と、この工程で生成された相溶化剤と、熱可塑性ポリエステル樹脂95〜5重量部と、第1のポリアミド樹脂5〜95重量部と、を加熱混練してポリマーアロイを生成する工程とを有するポリマーアロイ製造方法であって、前記相溶化剤は、前記熱可塑性ポリエステル樹脂と前記第1のポリアミド樹脂の合計100重量部に対して0.3〜15重量部の範囲であることを特徴とするポリマーアロイの製造方法。
- 前記相溶化剤を生成する工程においては、前記芳香族ポリエステル樹脂及び第2のポリアミド樹脂の両方の樹脂を用いつつ、しかも両方の樹脂を一括同時に、前記多価アルコールを用いて分解することを特徴とする請求項1記載のポリマーアロイの製造方法。
- 芳香族ポリエステル樹脂及び第2のポリアミド樹脂の少なくともいずれか1種類の樹脂から多価アルコールを用いて分解して生成された相溶化剤を、熱可塑性ポリエステル樹脂又は第1のポリアミド樹脂に25重量%〜75重量%の範囲で配合してマスターバッチを生成する工程と、この工程で生成されたマスターバッチと、熱可塑性ポリエステル樹脂と、第1のポリアミド樹脂と、を加熱混練してポリマーアロイを生成する工程とを有するポリマーアロイ製造方法であって、前記相溶化剤は、前記熱可塑性ポリエステル樹脂と前記第1のポリアミド樹脂の合計100重量部に対して0.3〜15重量部の範囲であることを特徴とするポリマーアロイの製造方法。
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