以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。本実施形態に係るマルチビーム光走査装置及び画像形成装置は、複数ドラム方式カラープリンタ、複数ドラム方式カラー複写機、高速レーザプリンタあるいはデジタル複写機、シングルドラム方式の単色プリンタなどに利用することができる。以下では、第1実施形態として、4ビーム又は8ビーム光走査装置が利用される複数ドラム方式カラープリンタについて説明し、第2実施形態として、2ビーム光走査装置が利用されるシングルドラム方式の単色プリンタ(単色画像形成装置)について説明する。
[第1実施形態]
まず、複数ドラム方式カラープリンタについて説明する。
図4には、第1実施形態に係る複数ドラム方式カラープリンタが示されている。なお、この種の複数ドラム方式カラープリンタでは、通常、Yすなわちイエロー、Mすなわちマゼンタ、CすなわちシアンおよびBすなわちブラック(黒)の各色成分ごとに色分解された4種類の画像データと、Y,M,CおよびBのそれぞれに対応して各色成分ごとに画像を形成するさまざまな装置が4組利用されることから、各参照符号に、Y,M,CおよびBを付加することで、色成分ごとの画像データとそれぞれに対応する装置を識別する。
図4に示されるように、カラープリンタ100は、色分解された色成分すなわちY=イエロー,M=マゼンタ,C=シアンおよびB=ブラックごとに画像を形成する第1ないし第4の画像形成部50Y,50M,50Cおよび50Bを有している。
各画像形成部50(Y,M,CおよびB)は、図5ないし図9を用いて後述するマルチビーム光走査装置1の第3の折り返しミラー37Y,37M,37Cおよび第1の折り返しミラー33Bを介して各色成分画像に対応するレーザビームL(Y,M,CおよびB)が出射される位置に対応して、光走査装置1の下方に、50Y,50M,50Cおよび50Bの順で直列に配置されている。
各画像形成部50(Y,M,CおよびB)の下方には、各画像形成部50(Y,M,CおよびB)により形成された画像を搬送する搬送ベルト52が配置されている。
搬送ベルト52は、図示しないモータにより矢印の方向に回転されるベルト駆動ローラ56およびテンションローラ54に掛け渡され、ベルト駆動ローラ56が回転される方向に所定の速度で回転される。
各画像形成部50(Y,M,CおよびB)は、それぞれ、円筒ドラム状で、矢印の方向に回転可能に形成され、光走査装置及びそのレーザビームにより形成される、画像に対応する静電潜像が形成される感光体ドラム58Y,58M,58Cおよび58Bを有している。
それぞれの感光体ドラム58(Y,M,CおよびB)の周囲には、感光体ドラム58(Y,M,CおよびB)の表面に所定の電位を提供する帯電装置60Y,60M,60Cおよび60B、感光体ドラム58(Y,M,CおよびB)の表面に形成された静電潜像に対応する色が与えられているトナーを供給することで現像する現像装置62Y,62M,62Cおよび62B、搬送ベルト52を感光体ドラム58(Y,M,CおよびB)との間に介在させた状態で感光体ドラム58(Y,M,CおよびB)に対向され、搬送ベルト52または搬送ベルト52を介して搬送される記録媒体すなわち記録用紙Pに感光体ドラム58(Y,M,CおよびB)のトナー像を転写する転写装置64Y,64M,64Cおよび64B、転写装置64(Y,M,CおよびB)を介してトナー像が転写されたあとに感光体ドラム58(Y,M,CおよびB)上に残った残存トナーを除去するクリーナ66Y,66M,66Cおよび66B、及び、転写装置64(Y,M,CおよびB)を介してトナー像が転写されたあとの感光体ドラム58(Y,M,CおよびB)上に残った残存電位を除去する除電装置68Y,68M,68Cおよび68Bが、各感光体ドラム58(Y,M,CおよびB)の回転方向に沿って順に配置されている。
なお、光走査装置1の各ミラー37Y,37M,37Cおよび33Bにより案内される感光体ドラム58上で副走査方向に2つのビームとなる、2本のビームを合成されたレーザビームLY,LM,LCおよびLBは、それぞれ、各帯電装置60(Y,M,CおよびB)と各現像装置62(Y,M,CおよびB)との間に照射される。
搬送ベルト52の下方には、各画像形成部50(Y,M,CおよびB)により形成された画像が転写されるための記録媒体すなわち用紙Pを収容する用紙カセット70が配置されている。
用紙カセット70の一端であって、テンションローラ54に近接する側には、おおむね半月状に形成され、用紙カセット70に収容されている用紙Pを、最上部から1枚ずつ取り出す送り出しローラ72が配置されている。送り出しローラ72とテンションローラ54との間には、カセット70から取り出された1枚の用紙Pの先端と画像形成部50B(黒)の感光体ドラム58Bに形成されたトナー像の先端とを整合させるためのレジストローラ74が配置されている。
レジストローラ74と第1の画像形成部50Yとの間であって、テンションローラ54の近傍、実質的に、搬送ベルト52を挟んでテンションローラ54の外周上には、レジストローラ72を介して所定のタイミングで搬送される1枚の用紙Pに、所定の静電吸着力を提供する吸着ローラ76が配置されている。なお、吸着ローラ76の軸線とテンションローラ54は、平行に配置される。
搬送ベルト52の一端であって、ベルト駆動ローラ56の近傍、実質的に、搬送ベルト52を挟んでベルト駆動ローラ56の外周上には、搬送ベルト52あるいは搬送ベルトにより搬送される用紙P上に形成された画像の位置を検知するためのレジストセンサ78および80が、ベルト駆動ローラ56の軸方向に所定の距離をおいて配置されている(図4は、正面断面図であるから、後方のセンサ80のみが示されている)。
ベルト駆動ローラ56の外周に対応する搬送ベルト52上には、搬送ベルト52上に付着したトナーあるいは用紙Pの紙かすなどを除去する搬送ベルトクリーナ82が配置されている。
搬送ベルト52を介して搬送された用紙Pがテンションローラ56から離脱されてさらに搬送される方向には、用紙Pに転写されたトナー像を用紙Pに定着する定着装置84が配置されている。
図5には、図4に示したカラー画像形成装置に利用されるマルチビーム光走査装置が示されている。なお、図4に示したカラー画像形成装置では、通常、Yすなわちイエロー、Mすなわちマゼンタ、CすなわちシアンおよびBすなわちブラック(黒)の各色成分ごとに色分解された4種類の画像データと、Y,M,CおよびBのそれぞれに対応して各色成分ごとに画像を形成するさまざまな装置が4組利用されることから、同様に、各参照符号にY,M,CおよびBを付加することで、色成分ごとの画像データとそれぞれに対応する装置を識別する。
図5に示されるように、マルチビーム光走査装置1は、光源としてのレーザ素子から出射されたレーザビームを、所定の位置に配置された像面すなわち図4に示した第1ないし第4の画像形成部50Y,50M,50Cおよび50Bの感光体ドラム58Y,58M,58Cおよび58Bのそれぞれの所定の位置に向かって所定の線速度で偏向する偏向手段としてのただ1つの光偏向装置5を有している。なお、以下、光偏向装置5によりレーザビームが偏向される方向を主走査方向と示す。
光偏向装置5は、複数、たとえば、8面の平面反射鏡(面)が正多角形状に配置された多面鏡本体5aと、多面鏡本体5aを、主走査方向に所定の速度で回転させる図示しないモータとを有している。多面鏡本体5aは、たとえば、アルミニウムにより形成される。また、多面鏡5aの各反射面は、多面鏡本体5aが回転される方向を含む面すなわち主走査方向と直交する面、すなわち、副走査方向に沿って切り出されたのち、切断面に、たとえば、SiO2などの表面保護層が蒸着されることで提供される。
光偏向装置5と像面との間には、光偏向装置5の反射面により所定の方向に偏向されたレーザビームに所定の光学特性を与える第1および第2の結像レンズ30aおよび30bからなる2枚組みの偏向後光学系30、偏向後光学系30の第2の結像レンズ30bから出射されたそれぞれの合成されたレーザビームL(Y,M,CおよびB)の個々のビームが、画像が書き込まれる領域より前の所定の位置に到達したことを検知するためのただ1つの水平同期検出器23、及び、偏向後光学系21と水平同期検出器23との間に配置され、偏向後光学系21内の後述する少なくとも一枚のレンズを通過された4×2本の合成されたレーザビームL(Y,M,CおよびB)の一部を、水平同期検出器23に向かって主・副走査方向共異なる方向へ反射させるただ1組の水平同期用折り返しミラー25などが配置されている。
次に、光源としてのレーザ素子と光偏向装置5との間の偏向前光学系について詳細に説明する。
光走査装置1は、Ni(iは正の整数)を満たす第1および第2の2つ(N1=N2=N3=N4=2)のレーザ素子を含み、色成分に色分解された画像データに対応するレーザビームを発生する第1ないし第4の光源3Y,3M,3Cおよび3B(M,Mは正の整数で、ここでは4)を有している。
第1ないし第4の光源3Y,3M,3Cおよび3Bは、それぞれ、Yすなわちイエロー画像に対応するレーザビームを出射するイエロー第1レーザ3Yaおよびイエロー第2レーザ3Yb、Mすなわちマゼンタ画像に対応するレーザビームを出射するマゼンタ第1レーザ3Maおよびマゼンタ第2レーザ3Mb、Cすなわちシアン画像に対応するレーザビームを出射するシアン第1レーザ3Caおよびシアン第2レーザ3Cb、ならびに、Bすなわちブラック(黒)画像に対応するレーザビームを出射する黒第1レーザ3Baおよび黒第2レーザ3Bbを有している。なお、それぞれのレーザ素子からは、互いに対をなす第1ないし第4のレーザビームLYaおよびLYb,LMaおよびLMb,LCaおよびLCb、ならびに、LBaおよびLBbが出射される。
それぞれのレーザ素子3Ya,3Ma,3Caならびに3Baと光偏向装置5との間には、それぞれの光源3Ya,3Ma,3Caならびに3BaからのレーザビームLYa,LMa,LCaならびにLBaの断面ビームスポット形状を所定の形状に整える4組みの偏向前光学系7(Y,M,CおよびB)が配置されている。
ここで、イエロー第1レーザ3Yaから光偏向装置5に向かうレーザビームLYaを代表させて、偏向前光学系7(Y)について説明する。
イエロー第1レーザ3Yaから出射された発散性のレーザビームは、有限焦点レンズ9Yaにより所定の収束性が与えられたのち、絞り10Yaにより、断面ビーム形状が後述する所定の形状に整えられる。絞り10Yaを通過されたレーザビームLYaは、ハイブリッドシリンダレンズ11Yを介して、副走査方向に対してのみ、さらに、所定の収束性が与えられて、光偏向装置5に案内される。
有限焦点レンズ9Yaとハイブリッドシリンダレンズ11Yとの間には、偏光ビームスプリッタ12Yが挿入されている。この偏光ビームスプリッタ12Yについては後述する。なお、イエロー第2レーザ3Ybと偏光ビームスプリッタ12Yとの間には、イエロー第2レーザ3YbからのレーザビームLYbに所定の収束性を与える有限焦点レンズ9Ybおよび絞り10Ybが配置されている。
偏光ビームスプリッタ12Yを介して副走査方向に所定のビーム間隔を有する実質的に1本のレーザビームにまとめられたそれぞれのレーザビームLYaおよびLYbは、図9を用いて後述するレーザ合成ミラーユニット13を通過され、光偏向装置5に案内される。
以下、同様に、Mすなわちマゼンタに関連して、マゼンタ第1レーザ3Maとレーザ合成ミラーユニット13との間には、有限焦点レンズ9Ma、絞り10Ma、ハイブリッドシリンダレンズ11M、偏光ビームスプリッタ12M、マゼンタ第2レーザ3Mb、有限焦点レンズ9Mbおよび絞り10Mb、Cすなわちシアンに関連して、シアン第1レーザ3Caとレーザ合成ミラーユニット13との間には、有限焦点レンズ9Ca、絞り10Ca、ハイブリッドシリンダレンズ11C、偏光ビームスプリッタ12C、シアン第2レーザ3Cb、有限焦点レンズ9Cbおよび絞り10Cb、ならびに、Bすなわち黒に関連して、黒第1レーザ3Baとレーザ合成ミラーユニット13との間には、有限焦点レンズ9Ba、絞り10Ba、ハイブリッドシリンダレンズ11B、偏光ビームスプリッタ12B、黒第2レーザ3Bb、有限焦点レンズ9Bbおよび絞り10Bbが、それぞれ、所定の位置に配置されている。なお、それぞれの光源3(Y,M,CおよびB)、偏向前光学系7(Y,M,CおよびB)、および、レーザ合成ミラーユニット13は、たとえば、アルミニウム合金などによって形成された保持部材15により、一体的に保持されている。
有限焦点レンズ9(Y,M,CおよびB)aおよび9(Y,M,CおよびB)bには、それぞれ、非球面ガラスレンズもしくは球面ガラスレンズに図示しないUV硬化プラスチック非球面レンズを貼り合わせた単レンズが利用される。
図6は、偏向前光学系7の偏光ビームスプリッタ12と光偏向装置5の反射面との間の光路に関し、折り返しミラーなどを省略した状態で副走査方向から見た部分断面図である。なお、図6では、1つのレーザビームLY(LYa)に対する光学部品のみが代表して示されている。
ハイブリッドシリンダレンズ11(Y)は、副走査方向に対して実質的に等しい曲率を持つPMMAのシリンダレンズ17(Y)とガラスのシリンダレンズ19(Y)とによって形成されている。PMMAのシリンダレンズ17(Y)は、空気と接する面がほぼ平面に形成される。
図7には、図6に示した偏向前光学系7(Y,M,CおよびB)のそれぞれを、光偏向装置5の反射面の回転軸に直交する方向(副走査方向)のそれぞれのレーザ合成ミラーの反射面13Y,13Mおよび13Cから光偏向装置5に向かうレーザビームLY,LMおよびLCが示されている。LYはLYaとLYb、LMはLMaとLMb、LCはLCaとLCbから成っている。
図7から明らかなように、それぞれのレーザビームLY,LM,LCおよびLBは、光偏向装置5の反射面の回転軸と平行な方向に、相互に異なる間隔で、光偏向装置5に案内される。また、レーザビームLMおよびLCは、光偏向装置5の反射面の回転軸と直交するとともに反射面の副走査方向の中心を含む面、すなわち、光走査装置1の系の光軸を含む面を挟んで非対称に、光偏向装置5の各反射面に案内される。なお、光偏向装置5の各反射面上でのレーザビームLY,LM,LCおよびLB相互の間隔は、LY−LM間で3.20mm、LM−LC間で2.70mm、及び、LC−LB間で2.30mmである。
図8には、光走査装置1の光偏向装置5から各感光体ドラム58すなわち像面までの間に配置される光学部材に関し、光偏向装置5の偏向角が0°の位置で副走査方向から見た状態が示されている。
図8に示されるように、偏向後光学系30の第2の結像レンズ30bと像面との間には、レンズ30bを通過された4×2本のレーザビームL(Y,M,CおよびB)を像面に向かって折り曲げる第1の折り返しミラー33(Y,M,CおよびB)、第1の折り返しミラー33Y,33Mおよび33Cにより折り曲げられたレーザビームLY,LMおよびLCを、さらに折り返す第2および第3の折り返しミラー35Y,35Mおよび35Cならびに37Y,37Mおよび37Cが配置されている。なお、図8から明らかなように、B(ブラック)画像に対応するレーザビームLBは、第1の折り返しミラー33Bにより折り返されたのち、他のミラーを経由せずに、像面に案内される。
第3の折り返しミラー37Y,37M,37Cおよび第1の折り返しミラー33Bと像面との間であって、それぞれのミラー33B、37Y,37Mおよび37Cを介して反射された4×2=8本のレーザビームL(Y,M,CおよびB)が光走査装置1から出射される位置には、さらに、光走査装置1内部を防塵するための防塵ガラス39(Y,M,CおよびB)が配置されている。
図9には、第1ないし第4の合成されたレーザビームLY,LM,LCおよびLBを、1つの束のレーザビームとして光偏向装置5の各反射面に案内するレーザ合成ミラーユニット13が示されている。
レーザ合成ミラーユニット13は、画像形成可能な色成分の数(色分解された色の数)よりも「1」だけ少ない数だけ配置される第1ないし第3のミラー13M,13Cおよび13Bと、それぞれのミラー13M,13Cおよび13Bを保持する第1ないし第3のミラー保持部13α,13βおよび13γならびにそれぞれの保持部13α,13βおよび13γを支持するベース13aにより構成される。光源3Yすなわちイエロー第1レーザ3Yaおよびイエロー第2レーザ3YbからのレーザビームLYは、すでに説明したように、光偏向装置5の各反射面に直接案内される。
次に、図5および図8を参照して、光偏向装置5の多面鏡5aで反射されたレーザビームL(Y,M,CおよびB)と偏向後光学系30を通って光走査装置1の外部へ出射される各レーザビームLY,LM,LCおよびLBの傾きと折り返しミラー33B,37Y,37Mおよび37Cとの関係について説明する。
既に説明したように、光偏向装置5の多面鏡5aで反射され、第1ないし第2の結像レンズ30aおよび30bにより所定の収差特性が与えられた各レーザビームLY,LM,LCおよびLBは、それぞれ、第1の折り返しミラー33Y,33M,33Cおよび33Bを介して所定の方向に折り返される。
このとき、レーザビームLBは、第1の折り返しミラー33Bで反射されたのち、そのまま防塵ガラス39Bを通って感光体ドラム58bに案内される。これに対し、残りのレーザビームLY,LMおよびLCは、それぞれ、第2の折り返しミラー35Y,35Mおよび35Cに案内され、第2の折り返しミラー35Y,35Mおよび35Cによって、第3の折り返しミラー37Y,37Mおよび37Cに向かって反射され、さらに、第3の折り返しミラー37Y,37Mおよび37Cで反射されたのち、それぞれ、防塵ガラス39Y,39Mおよび39Cにより、おおむね等間隔でそれぞれの感光体ドラムに結像される。この場合、第1の折り返しミラー33Bで出射されたレーザビームLBとレーザビームLBに隣り合うレーザビームLCも、おおむね等間隔で感光体ドラム58Bおよび58Cのそれぞれに結像される。
ところで、レーザビームLBは、多面鏡5aで偏向されたのち折り返しミラー33Bで反射されるのみで光走査装置1から感光体ドラム58に向かって出射される。このことから、実質的に折り返しミラー33B1枚のみで案内されるレーザビームLBが確保できる。
なお、上記マルチビーム光走査装置1は、光源3を8個備えており、偏光ビームスプリッタでの合成を、同じ潜像を形成する光線同士でおこなっているが、図10に示すように、異なる潜像を形成する光線の合成を、偏光ビームスプリッタで行うものもある。
この場合も、上記マルチビーム光走査装置1と同様にY,M,CおよびBの4種類の系統から構成されることには違いはない。
接合面が副走査方向から同じ方向に傾けられた複数のレーザダイオードからの光線LB、LMと、接合面が前記レーザダイオードの副走査方向からの傾きと大きさが同じで反対方向に傾けられた複数のレーザダイオードからの光LCとLYが、副走査方向に対して45度の角度の偏光方向のビームを出射する、偏光ビームスプリッタ面を持つ光路合成光学素子12に入射されている。偏光方向は、接合面の広がる方向と平行方向であるから、これによって、LB、LMとLC、LYの偏光方向は、副走査方向に対し対称となる。
偏光ビームスプリンタ面の1面には、接合面が同じ方向に傾いたレーザダイオードからの光LBとLM、反対面には、他の方向に傾いたレーザダイオードからの光LCとLYが、それぞれ、異なる潜像を形成する光線毎に、副走査方向に異なる高さで入射し、ビームスプリッタ面上で、隣り合う、異なる潜像を形成する各光線の偏光方向が異なるようにしている。
これにより、LBとLM、および、LCとLYを偏光ビームスプリッタに入る前に、通常ミラーで主走査方向に折り返して主走査方向光路を合成する為の、通常ミラーが配置される位置での、ビーム同士の副走査方向の間隔を広くとることを可能とし、さらに、LBとLM、LCとLYの透過率、反射率を50%以上とすることを可能としている。
光源3を8個備えて、各光線を、ハーフミラーで合成した後に、図10に示すような構成も可能であり、この場合には、同じ潜像を形成する光線同士の偏光方向を揃える為、同じ潜像を形成する光線を出射するレーザダイオードに関しては、接合面を副走査方向から同じ方向に傾けるようにする。
以上のように構成された複数ドラム方式カラープリンタにおいて、本実施形態は特に絞り10を改良したものである。ここでは、波長板を使用せずに、絞り10で光線の処理を行っている。
まず、上記光源3は、偏光した長形の光線を出射するレーザダイオードアレイによって構成されている。レーザダイオードアレイから出射する光は、具体的には、楕円形状(図1参照)の光線となり、その偏光方向は、その放射角の小さい方向(短軸方向)に向いている。
図11は2つのレーザダイオードアレイの発光点の並びを表したもので、偏光方向が副走査方向に対して同じ角度で、互いに反対側になるように重ねられている。具体的には、各レーザダイオードアレイは、それから出射されて合成される2つのレーザビームの偏光方向が、偏光ビームスプリッタ12で合成されて互いに重なった状態で、副走査方向に伸びる直線に対して互いに対称関係又はほぼ対称関係になるように、配置されている。
偏光ビームスプリッタ12は光路合成光学素子であるが、図12に示すように構成されている。具体的には、偏光ビームスプリッタ12は、2枚のプリズムを貼り合わせて形成され、各プリズムの境界面が偏光ビームスプリッタ面となっている。この偏光ビームスプリッタ面は、副走査方向へ伸びる直線に対して45°の偏光角で入射する入射光を透過させ、この入射光の偏光角と垂直な方向の偏光角を有する入射光を透過させないように設定されている。この偏光依存性を有する光学素子としての偏光ビームスプリッタ面は、誘電体をコーティングした平面によって構成することができる。偏光ビームスプリッタ12を誘電体キューブ・ビームスプリッタ(Dielectric Cube Beamsp1itters)で構成してもよい。なお、光路合成光学素子としてハーフミラーを用いて2つのレーザビームを合成する場合は、誘電体をコーティングしたミラーを用いてもよい。
上記2つのレーザビームの偏光角を、副走査方向へ伸びる直線に対して互いに反対方向へ同じ角度だけ傾けて設定するのは、透過させたいビームの透過率と、反射させたいビームの反射率をほぼ同じにすると共に、像面での主、副走査方向ビーム径を揃えるためである。
これにより、偏光ビームスプリッタ面は、副走査方向に対し45°の方向の偏光方向のレーザビームは100%近く透過させ、上記偏光方向に垂直な方向の偏光ビームに対しては、ほぼ100%反射する面となっている。入射するレーザビームの偏光方向と、副走査方向へ伸びる直線との角度をαとすると、COS(α−45°)の成分がそれぞれ反射及び透過されることとなる。このαは必ずしも45°とはならなず、上記レーザダイオードアレイの設置角度の違いにより、45°から多少ずれる。
例えば、図13の実線でビーム拡がりが記載されているレーザビームの偏光方向は、偏光ビームスプリッタ12で透過される偏光方向との角度が(α−45°)であるから、入射光のうち、COS(α−45°)の成分が透過される。残りは反射される。
一点鎖線でビーム拡がりが記入されているレーザビームの偏光方向は、偏光ビームスプリッタ12で反射される偏光方向との角度が(α−45°)であるから、入射光のうち、COS(α−45°)の成分が反射される。残りは透過される。
出射されたビームは、副走査方向に対し、偏光方向が約45°傾いた状態でビームスプリッタ12を出射するため、光偏向装置5で偏向された後に透過光学系を透過しても、透過率の角度依存性が小さなビームとなる。これは、P波とS波の透過率の角度依存性が図14に示すようになっており、45°偏向角が傾いた光線については、ほぼ、この平均値となって、透過率変動が抑えられるからである。
なお、ここでは、副走査方向に対して対称関係にあることを述べたが、良好なビーム強度分布を得るためには主走査方向に対しても対称関係にあることが望ましい。
また、副走査方向に対して対称関係にすることにより、光偏向装置5では隣り合う各レーザビーム同士で偏光方向が異なる。
絞り10は次のように構成されている。
絞り10は、図1及び図15に示すように、その開口部10aが長孔状に形成され、その長孔状の開口部10aの長軸方向を、上記光源からのレーザビームの偏光方向(短軸方向)に合わせて設定すると共に当該レーザビームの領域よりも外側にまで広げて形成されている。具体的には、レーザビームのピーク強度に対し1/e2で領域が規定される場合は、その領域よりも外側にまで広げて形成されている。これは、レーザビームのピーク強度に対し1/e2で規定される領域のうち、長軸方向両端部をカットし、短軸方向をその領域を越えて漏れているレーザビームまで取り込んで、出射するレーザビーム形状を形成するためである。レーザビームのピーク強度に対し1/e2で規定される楕円形の領域の長軸方向に関しては、その内側まで狭めた形成されている。
絞り10の開口部10aは、ほぼ亀甲形状に形成されている。レーザビームの短軸方向の両側辺は、レーザビームの短軸方向の幅とほぼ同じ寸法で平行に設定されている。レーザビームの長軸方向は三角形状に形成されている。この三角形の形状や寸法を変えると、像面ビーム強度が少しずつ変化する。このため、三角形の形状や寸法を微調整して像面ビーム強度分布が良好な状態になる点を探る。一点鎖線で表されているのが、断面強度分布のピーク強度に対し1/e2の強度となる個所であり、副走査方向に関して傾いた楕円形状となっている。偏光方向は、一点鎖線の矢印の方向、即ち、楕円の短軸方向となっている。
強度分布がガウス分布の場合、同一の絞りの開口径、結像関係(物点、像面、レンズ焦点距離、レンズ位置、絞り位置)であれば、絞りに入射するガウス分布の1/e2径が大きい方が、結像面でのビーム径が小さくなることが知られている。これは、本実施形態で、開口形状が、光軸を通り、副走査方向に延びる直線に対して対称である時には、上記の傾いた楕円形状の長軸方向に対応する、結像面での所定方向のビーム径が、短軸方向に対応する結像面でのビーム径に対し小さくなることを意味する。結像面での対称性を増すには、絞り面での、上記傾いた楕円形の短軸方向に対応する結像面での所定方向のビーム径を小さくする必要がある。
一方で、絞りに入射する強度分布、結像関係が一定の場合、絞りの開口径が大きいほど、結像面でのビーム径が小さくなるということが知られている。
絞りの開口部を、楕円形状の短軸方向に対し、外側にまで広げることにより、上記楕円形状の短軸方向に対応する方向のビーム径を小さくすることにより、絞り面での強度分布の非対称性に起因する結像面での強度分布の非対称性を、打ち消すことが出来る。
この考えに基づき、先に述べた像面ビーム強度分布が良好な状態になる点を探る過程で、絞りの閉口部が、1/e2の強度となる楕円形状の短軸方向に、長軸方向の開口部よりも外側にまで広げて形成されることにより、主走査方向、副走査方向での対称性が増すことが確認された。この結果が、図1及び図15に示す形状である。
以上のように構成された絞り10の開口部10aの形状に対する像面ビーム強度分布を調べた。
なお、この絞り10の開口部10aの像面ビーム強度分布と対比するために、従来の絞りの開口部形状の像面ビーム強度分布も調べた。この従来の絞りの開口部形状の像面ビーム強度分布の例を図16及び図17に示す。ここでは、絞りの開口部を、図 に示すように、引用文献1に記載の従来技術の開口部よりもさらに大きくして(2つのビームの重なり合う部分の限度いっぱいまで大きくして)、像面ビーム強度分布を調べた。これにより、図 に示すような結果を得た。ここで、レーザの広がり角は、θ⊥=20°、θ//=10°とし、開口部は、θ//方向の1/e2径の円形状となる。このとき、けられによる光学効率は、29%となっており、図17に示すように、像面での強度分布は、傾いた形となった。なお、図17は、像面での強度分布を等高線で示したものである。横軸が主走査方向位置、縦軸が副走査方向位置を示す。
これに対して、本実施形態に係る絞り10の開口部10aの像面ビーム強度分布は図18に示すようになった。この場合、透過率は34%となって、従来の方式に比べて大きくなっている。さらに、像面での強度分布の主、副走査方向対称性にも優れている。また、ビームスプリッタから出射されるビームの偏光方向が、副走査方向から45°傾いた状態、すなわちP波とS波の中間の透過率を持つことから、偏向後光学系で発生する透過率の角度依存による光量むらを低減することができる。像面での強度分布の主、副走査方向に対する非対称性が強いと、潜像形成時に例えば直線を書いた際、方向により線の太さや凸凹具合が異なってきて画質が劣化してしまうことがあるが、強度分布の主、副走査方向対称性を良くすることで、これを解消できる。なお、図1及び図15のいずれの場合も図18に示す同じ結果を得た。
以上の構成の絞り10は、偏光ビームスプリッタ12の光源3側に設けられて、偏光ビームスプリッタ12で合成される前のレーザビームを絞っているが、偏光ビームスプリッタ12で合成された後のレーザビームを絞るようにしてもよい。この場合、絞り10は、図19に示すように構成される。この絞り10の開口部10bの形状は、図1及び図15に示す開口部10aを合わせた形状になっている。
透過率を増すために、図19のように、光ビームのピーク強度が1/e2で規定される大きさ以上となる範囲よりもアパーチャの内孔が大きい場合を示す。この場合、像面でのビーム強度分布は、図20に示すように、主、副走査方向に対し非対称とはなるが、けられによる透過効率は41%と大きくなっている。
光線を合成する際に、通常のハーフミラーを使うと、出射光の光量が、入射光の光量の半分以下になってしまうが、偏光方向が異なれば、偏光方向により、透過率、反射率が大きく異なる素子を利用して、出射光の光量を、入射光の光量の半分以上とすることが可能で偏光方向が90°異なる場合に、その効率は最大にすることができる。
また、高価な波長板を用いることなく、又は、使用する波長板を合成後の1/4波長板1枚とすることができ、コスト低減を図ることができる。
なお、上述したマルチビーム光走査装置1では、レーザビームの偏光方向を、副走査方向に伸びる直線に対して互いに対称関係又はほぼ対称関係になるように配置すると共に絞り10を設けたが、絞り10を設けない場合もある。絞り10を設けないで、副走査方向に対称なレーザビームだけで潜像を形成する場合、副走査方向に対称なレーザビームが主走査方向に同じ状態の線を引く。即ち、各レーザビームが、副走査方向に対称で斜めになっている場合であっても、両方のレーザビームが対称状態で主走査方向に同じ状態の線を引き、光量むら等の問題は生じない。繊細な線を引くことは難しいが、光量むら等のない潜像を形成することはできる。これにより、1/4波長板も絞り10も使用せずに、コスト低減を図ることができる。
なお、偏光ビームスプリッタ12による合成後のレーザビームを円偏光したい場合等においては、偏光ビームスプリッタ12による合成後の光路に、1/4波長板を備える場合もある。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、2ビーム光走査装置が利用されるシングルドラム方式の単色プリンタ(単色画像形成装置)について説明する。
図21には、この発明の第2実施形態である2ビーム光走査装置が利用されるシングルドラム方式の単色プリンタ(単色画像形成装置)が示されている。
図示するように、画像形成装置200は、周知のレーザビームプリンタ方式の画像形成部250を有している。
画像形成部250は、図22ないし図23を用いて後述する光走査装置201の折り返しミラー233を介してレーザビームL1,L2が出射される位置に、配置されている。
画像形成部250は、円筒ドラム状で、所定の方向に回転可能に形成され、画像に対応する静電潜像が形成される感光体ドラム258を有している。感光体ドラム258の周囲には、感光体ドラム258の表面に所定の電位を提供する帯電装置260、感光体ドラム258の表面に形成された静電潜像に対応する色が与えられているトナーを供給することで現像する現像装置262、搬送ベルト252を感光体ドラム258との間に介在させた状態で感光体ドラム258に対向され、搬送ベルト252または搬送ベルト252を介して搬送される記録媒体すなわち記録用紙Pに感光体ドラム258上のトナー像を転写する転写装置264、転写装置264を介してトナー像が転写されたあとに感光体ドラム258上に残った残存トナーを除去するクリーナ266および転写装置264を介してトナー像が転写されたあとの感光体ドラム258上に残った残存電位を除去する除電装置268が、感光体ドラム258の回転方向に沿って、順に、配置されている。
なお、光走査装置201のミラー233により案内されるレーザビームL1およびL2は、帯電装置260と現像装置262との間に照射される。
感光体258の下方には、画像形成部250により形成された画像が転写されるための記録媒体すなわち用紙Pを収容する用紙カセット270が配置されている。
用紙カセット270の一端であって、テンションローラ254に近接する側には、おおむね半月状に形成され、用紙カセット270に収容されている用紙Pを最上部から1枚ずつ取り出す送り出しローラ272が配置されている。送り出しローラ272と感光体ドラム258との間には、カセット270から取り出された1枚の用紙Pの先端と感光体ドラム258に形成されたトナー像の先端とを整合させるためのレジストローラ276が配置されている。
転写装置264により感光体ドラム258に形成された画像が転写された用紙Pが搬送される方向には、用紙Pに転写されたトナー像を用紙Pに定着する定着装置284が配置されている。
図22及び図23には、図21に示した画像形成装置に利用される2ビーム光走査装置が示されている。
図示するように、光走査装置201は、光源としての第1および第2のレーザ素子203aおよび203bから出射されたNi=2本のレーザビームを、所定の位置に配置された像面の所定の位置に向かって所定の線速度で偏向する偏向手段としてのただ1つの光偏向装置205を有している。なお、以下、光偏向装置5によりレーザビームが偏向される方向を主走査方向と示す。
光偏向装置5と像面との間には、光偏向装置205の反射面により所定の方向に偏向された第1および第2のレーザビームに所定の光学特性を与えるただ1枚の結像レンズ230が配置されている。なお、結像レンズ230と像面との間には、防塵ガラス239が配置されている。
次に、光源としてのレーザ素子と光偏向装置5との間の偏向前光学系について詳細に説明する。
光走査装置201は、Ni=2を満たす2つレーザ素子を含み、M (Mは正の整数で、ここでは1) 群の光源203を有している。
光源203の第1のレーザ203aと光偏向装置5との間には、偏向前光学系としてのコリメートレンズ209a、絞り210a、偏光ビームスプリッタ212、及び、ハイブリッドシリンダレンズ211が配置されている。また、偏光ビームスプリッタ212の偏光ビームスプリッタ面の第1のレーザ203aからのレーザビームL1が入射される面と反対側の面には、第2のレーザ203b、コリメートレンズ209bおよび絞り210bが配置されている。なお、偏向前光学系に利用される各光学要素の光学特性、形状および材質などは、すでに説明した第1および第2の実施例と実質的に同一であるから詳細な説明を省略する。
以上のように構成された単色プリンタにおいて、光源203は、上述した第1実施形態の光源3と同様に、2つのレーザビームの偏光方向が、偏光ビームスプリッタ212で合成されて互いに重なった状態で、副走査方向に伸びる直線に対して互いに対称関係又はほぼ対称関係になるように、配置されている。
さらに、絞り210も同様に、その開口部が長孔状に形成され、その長孔状の開口部の長軸方向を、上記光源からのレーザビームの偏光方向(短軸方向)に合わせて設定すると共に当該レーザビームの領域よりも外側にまで広げて形成されている。具体的には、レーザビームのピーク強度に対し1/e2で領域が規定される場合は、その領域よりも外側にまで広げて形成されている。
この場合も上記第1実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。