JP5255764B2 - 被覆電線およびワイヤーハーネス - Google Patents

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Description

本発明は、分散剤および高分子組成物ならびに被覆電線およびワイヤーハーネスに関するものである。
従来、様々な分野において、樹脂やゴム、エラストマーなどを含有する高分子組成物が用いられている。この高分子組成物には、その用途に応じて、各種機能を付与するなどの目的で、フィラーが添加されることが多い。
例えば、自動車などの車両部品や電気・電子機器部品などの配線として用いられる電線の分野では、電線の被覆材などに高分子組成物が用いられている。この場合、被覆材などには、耐摩耗性などの機械特性、柔軟性、加工性、難燃性などの電線に要求される特性に応じて、可塑剤や安定剤、難燃剤などの各種フィラーが添加されることがある。
ところで、高分子組成物にフィラーが添加される場合には、フィラーの種類や材質、添加量などによっては、かえって機械特性などの材料特性を損なうことがある。
例えば電線の場合、被覆材などには、地球環境への負荷を抑制するなどの観点から、燃焼時に有害なハロゲン系ガスを出さないオレフィン系樹脂などの有機高分子が用いられるようになってきている。
この場合、十分な難燃性を確保するため、難燃剤を多量に添加することが有効である。その一方で、難燃剤を多量に添加すると、耐摩耗性などの機械特性が著しく低下することが知られている(特許文献1)。
特許第3280099号公報
ここで、機械特性などの材料特性が低下する原因は、高分子組成物中にフィラーが十分に分散されていないためと推察される。従来知られる高分子組成物においても、このような機械特性などの材料特性の低下を抑えるために、フィラーの分散性を高めるような種々の検討はなされているものの、その機械特性などの材料特性には改良の余地があった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、フィラーを含有する高分子組成物の機械特性などの材料特性を向上させることが可能な分散剤および高分子組成物を提供することにある。また、他の課題は、これを用いて、耐摩耗性などの機械特性に優れる被覆電線ならびにワイヤーハーネスを提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討した結果、フィラーとの親和性に優れる構造と、オレフィン系樹脂などの有機高分子との親和性に優れる構造とをあわせ持つ材料を用いれば、フィラーを含有していても、機械特性などの材料特性を向上させることが可能であるとの知見を得た。
すなわち、本発明に係る被覆電線は、有機高分子と、フィラーと、前記有機高分子中に前記フィラーを分散させるための分散剤と、を含有し、前記分散剤が、長鎖アルキルカルボン酸またはその誘導体のカルボキシル基の末端、あるいは、長鎖アルキルアルコールのヒドロキシル基の末端に、アミノカルボン酸基あるいは1,3−ジケトン基からなるキレート構造が導入されたものからなる高分子組成物を被覆材に用いたことを要旨とするものである。
このとき、前記キレート構造は、エステル結合、エーテル結合、あるいは、アミド結合により、長鎖アルキルカルボン酸またはその誘導体のカルボキシル基、あるいは、長鎖アルキルアルコールのヒドロキシル基と結合されていると良い。
この場合、前記高分子組成物中の前記分散剤の含有率は、前記有機高分子100質量部に対し0.1〜20重量部の範囲内にあることが望ましい。
さらに、本発明に係るワイヤーハーネスは、上記の被覆電線を含むことを要旨とするものである。
本発明に係る分散剤は、長鎖アルキルカルボン酸またはその誘導体のカルボキシル基の末端、あるいは、長鎖アルキルアルコールのヒドロキシル基の末端に、アミノカルボン酸基あるいは1,3−ジケトン基からなるキレート構造が導入されたものからなる。そのため、フィラーを含有する高分子組成物に添加すると、その材料特性、とりわけ機械特性を向上させることができる。これは、分散剤中のキレート構造がフィラーとの親和性に優れるので、フィラーと強く結合してフィラー同士が互いに凝集するのを防止し、フィラーが高分子組成物中に高分散されるためであると推測される。
この場合、長鎖アルキルカルボン酸、その誘導体、または、長鎖アルキルアルコールは、その官能基の末端にキレート構造を導入しやすい。
そして、前記キレート構造が、アミノカルボン酸、1,3−ジケトンに由来するものは、機械特性などの材料特性を向上させる効果に優れる。
このとき、前記キレート構造は、エステル結合、エーテル結合、あるいは、アミド結合により、長鎖アルキルカルボン酸またはその誘導体のカルボキシル基、あるいは、長鎖アルキルアルコールのヒドロキシル基と確実に結合することができる。また、キレート構造を簡便に導入することができる。
一方、本発明に係る高分子組成物は、上記分散剤と、有機高分子と、フィラーとを含有してなる。そのため、機械特性などの材料特性が向上する。
この場合、前記分散剤の含有率が、0.1〜20重量部の範囲内にあると、上記効果に一層優れる。
そして、本発明に係る被覆電線は、上記高分子組成物を被覆材に用いてなる。 また、本発明に係るワイヤーハーネスは、上記高分子組成物を用いてなる。そのため、耐摩耗性などの機械特性に優れる。これにより、材料の劣化が抑えられ、長期にわたって高い信頼性を確保することができる。
次に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明に係る分散剤は、官能基を有する長鎖アルキル化合物の官能基の末端にキレート構造を有するものからなる。
上記する長鎖アルキル化合物は、長鎖アルキル基と官能基とを有している。長鎖アルキル基は、直鎖状でも良いし、分岐していても良い。また、長鎖アルキル基中には、炭素−炭素不飽和結合や、アミド結合、エーテル結合、エステル結合などを含んでいても良い。長鎖アルキル基の炭素数としては、特に限定されないが、6〜50であることが好ましい。より好ましくは、炭素数が8〜30である。
上記する長鎖アルキル化合物が有する官能基としては、カルボキシル基、チオカルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基などを例示することができる。官能基は、上記する長鎖アルキル化合物中に1または2以上含んでいても良い。これらの官能基は1種または2種以上有していても良い。
長鎖アルキル化合物としては、特に限定されないが、例えば、長鎖アルキルカルボン酸や、長鎖アルキルカルボン酸エステル、長鎖アルキルカルボン酸アミドなどの長鎖アルキルカルボン酸誘導体、長鎖アルキルアルコール、長鎖アルキルチオール、長鎖アルキルアルデヒド、長鎖アルキルエーテル、長鎖アルキルアミン、長鎖アルキルアミン誘導体、長鎖アルキルハロゲンなどを例示することができる。これらのうち、キレート構造が導入されやすい点などで、長鎖アルキルカルボン酸、長鎖アルキルカルボン酸誘導体、長鎖アルキルアルコール、長鎖アルキルアミンが好ましい。
より具体的には、例えば、ドデシルカルボン酸、ヘキサデシルカルボン酸、オクタデシルカルボン酸、ドデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ドデシルカルボン酸クロリド、ヘキサデシルカルボン酸クロリド、オクタデシルカルボン酸クロリドなどを例示することができる。これらのうち、入手が容易である点などにおいて、オクタデシルカルボン酸、ドデシルアルコール、オクタデシルアルコール、オクタデシルアミンが好適である。
キレート構造は、上記する長鎖アルキル化合物の官能基の末端に形成されており、フィラーと結合しやすいキレート機能を長鎖アルキル化合物に付与する。長鎖アルキル化合物の官能基の末端にキレート構造が形成されるその形態としては、特に限定されないが、キレート構造と長鎖アルキル化合物の官能基の末端とが、エステル結合、エーテル結合、チオエステル結合、チオエーテル結合およびアミド結合などにより結合されて、長鎖アルキル化合物の官能基の末端にキレート構造が形成されていることが好ましい。エステル結合などの上記結合は、1又は2以上有していても良い。
このような結合を形成するには、例えば、長鎖アルキル化合物の官能基と上記結合を形成する官能基を有するキレート配位子を用いると良い。キレート配位子は、配位結合可能な非共有電子対を複数有する。
例えば長鎖アルキル化合物の官能基がカルボキシル基であるときには、キレート配位子がヒドロキシル基を有していれば、エステル結合により、長鎖アルキル化合物の官能基の末端にキレート配位子を導入することができる。また、キレート配位子がアミノ基を有していれば、アミド結合により、長鎖アルキル化合物の官能基の末端にキレート配位子を導入することができる。
キレート配位子としては、例えば、ポリリン酸塩、アミノカルボン酸、1,3−ジケトン、ヒドロキシカルボン酸、ポリアミン、アミノアルコール、芳香族複素環式塩基、フェノール類、オキシム類、シッフ塩基、テトラピロール類、イオウ化合物、合成大環状化合物、ホスホン酸、およびヒドロキシエチリデンホスホン酸などを示すことができる。これらの化合物は、配位結合可能な非共有電子対を複数有している。
より具体的には、ポリリン酸塩としては、トリポリリン酸ナトリウムやヘキサメタリン酸などを例示することができる。アミノカルボン酸としては、エチレンジアミン二酢酸、エチレンジアミン二プロピオン酸、エチレンジアミン四酢酸、N−ヒドロキシメチルエチレンジアミン三酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジアミノシクロヘキシル四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン二酢酸、ヘキサメチレンジアミンN,N,N,N−四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、ジアミノプロパン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ポリ(p−ビニルベンジルイミノ二酢酸)などを例示することができる。
1,3−ジケトンとしては、アセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、テノイルトリフルオロアセトン、アセト酢酸アミノプロピル、アセト酢酸ヒドロキシプロピルなどを例示することができる。ヒドロキシカルボン酸としては、N−ジヒドロキシエチルグリシン、エチレンビス(ヒドロキシフェニルグリシン)、ジアミノプロパノール四酢酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸などを例示することができる。ポリアミンとしては、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、トリアミノトリエチルアミン、ポリエチレンイミンなどを例示することができる。アミノアルコールとしては、トリエタノールアミン、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ポリメタリロイルアセトンなどを例示することができる。
芳香族複素環式塩基としては、ジピリジル、o−フェナントロリン、オキシン、8−ヒドロキシキノリンなどを例示することができる。フェノール類としては、5−スルホサリチル酸、サリチルアルデヒド、ジスルホピロカテコール、クロモトロプ酸、オキシンスルホン酸、ジサリチルアルデヒドなどを例示することができる。オキシム類としては、ジメチルグリオキシム、サリチルアドキシムなどを例示することができる。シッフ塩基としては、ジメチルグリオキシム、サリチルアドキシム、ジサリチルアルデヒド、1,2−プロピレンジミンなどを例示することができる。
テトラピロール類としては、フタロシアニン、テトラフェニルポルフィリンなどを例示することができる。イオウ化合物としては、トルエンジチオール、ジメルカプトプロパノール、チオグリコール酸、エチルキサントゲン酸カリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジチゾン、ジエチルジチオリン酸などを例示することができる。合成大環状化合物としては、テトラフェニルポルフィリン、クラウンエーテル類などを例示することができる。ホスホン酸としては、エチレンジアミンN,N−ビスメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸などを例示することができる。
上記キレート配位子には、適宜ヒドロキシル基やアミノ基などを導入することも可能である。ヒドロキシル基やアミノ基などを導入することにより、長鎖アルキル化合物の官能基の末端にキレート構造が導入可能となる場合もある。上記キレート配位子は、塩として存在可能なものもある。この場合、塩の形態で用いても良い。また、上記キレート配位子またはその塩の水和物や溶媒和物を用いても良い。さらに、上記キレート配位子には、光学活性体のものも含まれているが、任意の立体異性体、立体異性体の混合物、ラセミ体などを用いても良い。
本発明に係る分散剤は、特に限定されるものではないが、例えば、官能基を有する上記長鎖アルキル化合物と上記キレート配位子とを接触させて得ることができる。このとき、溶媒を用いても良いし、撹拌させても良い。また、反応速度を上げるなどの目的で、加熱しても良いし、触媒を添加しても良い。さらに、副生物を除去するなどして、平衡反応を生成系に偏らせて、高収率で目的物が得られるようにしても良い。
官能基を有する上記長鎖アルキル化合物と上記キレート配位子とを接触させると、長鎖アルキル化合物の官能基と上記キレート配位子の官能基とが反応することにより化学結合が形成される。例えば、長鎖アルキルカルボン酸とヒドロキシル基を有するキレート配位子とを反応させると、エステル結合が形成されて本発明に係る分散剤が得られる。また、長鎖アルキルカルボン酸とアミノ基を有するキレート配位子とを反応させると、アミド結合が形成されて本発明に係る分散剤が得られる。
上述する本発明に係る分散剤の一例を構造式で表すと、例えば式(1)のようになる。
Figure 0005255764
ただし、式(1)中、R1は長鎖アルキル基を示し、R2は酸素原子、窒素原子、硫黄原子を持つエステル結合、エーテル結合、チオエステル結合、チオエーテル結合、またはアミド結合を示し、R3はキレート構造部位を示している。
式(1)の構造式で表される分散剤のうち、特に好ましい例について、以下に説明する。以下の式(2)〜式(7)では、R1は、オクタデシル基、ヘキサデシル基、またはドデシル基のいずれかを示している。なお、本発明に係る分散剤は、以下の化合物に限定されるものではない。
Figure 0005255764
式(2)は、長鎖アルキルアルコールのヒドロキシル基の末端にジエチレントリアミン五酢酸基を有する分散剤であり、このジエチレントリアミン五酢酸基によりキレート配位可能になっている。
Figure 0005255764
式(3)は、長鎖アルキルカルボン酸のカルボキシル基の末端にエチルイミノ二酢酸基を有する分散剤であり、このエチルイミノ二酢酸基によりキレート配位可能になっている。
Figure 0005255764
式(4)は、長鎖アルキルカルボン酸のカルボキシル基の末端にジアミノプロパン四酢酸基を有する分散剤であり、このジアミノプロパン四酢酸基によりキレート配位可能になっている。
Figure 0005255764
式(5)は、長鎖アルキルカルボン酸のカルボキシル基の末端にN−メチレンエチレンジアミン三酢酸基を有する分散剤であり、このエチレンジアミン三酢酸基によりキレート配位可能になっている。
Figure 0005255764
式(6)は、長鎖アルキルカルボン酸のカルボキシル基の末端にエチリデンジホスホン酸基を有する分散剤であり、このジホスホン酸基によりキレート配位可能になっている。
Figure 0005255764
式(7)は、長鎖アルキルアルコールのヒドロキシル基の末端にアセト酢酸基を有する分散剤であり、このアセト酢酸基によりキレート配位可能になっている。
次に、本発明に係る高分子組成物について説明する。本発明に係る高分子組成物は、上記分散剤と、有機高分子と、フィラーとを含有してなる。
上記分散剤の含有率は、0.1〜20重量部の範囲内にあることが好ましい。より好ましくは、0.5〜10重量部の範囲内である。0.1重量部未満では、分散剤の量が少ないので、機械特性などの材料特性を向上させる効果が低下しやすく、一方、20重量部を超えると、コストが増大するからである。よって、上記範囲内にあれば、機械特性などの材料特性を向上させる効果に一層優れる。
有機高分子としては、特に限定されるものではないが、樹脂やエラストマー、ゴムを示すことができる。これらは、1種または2種以上併用しても良い。
樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、エチレン−アクリル酸メチル(EMA)、エチレン−アクリル酸エチル(EEA)、エチレン−アクリル酸ブチル(EBA)、エチレン−メタクリル酸メチル(EMMA)、エチレン−酢酸ビニル(EVA)等のオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート(PC)等のエンジニアリングプラスチックなどを例示することができる。
エラストマーとしては、オレフィン系エラストマー(TPO)、スチレン系エラストマー(SEBS等)、アミド系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、アイオノマー、フッ素系エラストマー、1,2−ポリブタジエンやトランス−1,4−ポリイソプレン等の熱可塑性エラストマーなどを例示することができる。
ゴムとしては、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)などを例示することができる。
上記樹脂やエラストマー、ゴムには、各種物性を高めるために、その物性を妨げない範囲において、必要に応じて官能基の導入を行なうことができる。導入可能な官能基としては、例えば、カルボン酸基、酸無水基、エポキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルケニル環状イミノエーテル基、シラン基などを例示することができる。これらは、1種または2種以上併用しても良い。
上記フィラーは、材料の要求特性に応じて添加される。その添加量は、フィラーの種類や材料の要求特性などに応じて定められるが、組成物中のポリマー成分100重量部に対して30〜250重量部含有していることが好ましい。より好ましくは、50〜200重量部である。30重量部未満では、フィラーとしての添加効果が小さく、一方、250重量部を超えると、ポリマーの特性がフィラーに打ち消されやすくなるためである。
フィラーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、金属粉、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化アンチモン、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラス繊維、チタン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、木材繊維、フラーレン、カーボンナノチューブ、メラミンシアヌレートなどを例示することができる。これらは、1種または2種以上併用しても良い。
本発明においては、本発明の特性を阻害しない範囲で、上記分散剤、有機高分子およびフィラー以外に、一般的に高分子組成物に使用される添加剤を配合しても良い。このような添加剤としては、酸化防止剤、金属不活性化剤(銅害防止剤)、紫外線吸収剤、紫外線隠蔽剤、難燃剤、難燃助剤、加工助剤(滑剤、ワックス等)、着色用顔料などを例示することができる。
また、本発明に係る高分子組成物は、必要に応じて架橋させても良い。架橋の手段は、過酸化物架橋、シラン架橋、電子線架橋などが挙げられるが、その手段は特に限定されない。
上述した本発明に係る高分子組成物の製造方法としては、特に限定されるものではなく、公知の製造方法を用いることができる。例えば、分散剤と、有機高分子と、フィラーと、必要に応じてその他の添加剤などを配合し、これらを通常のタンブラーなどでドライブレンドしたり、あるいは、バンバリミキサー、加圧ニーダー、混練押出機、二軸押出機、ロールなどの通常の混練機で溶融混練して均一に分散したりすることにより当該組成物を得ることができる。
このとき、組成物を構成する成分の添加方法は、特に限定されるものではない。例えば、分散剤とフィラーとを混練した後、有機高分子やその他の添加剤などを添加して混練しても良いし、組成物を構成する成分全部を加えてから混練しても良い。
混練時の温度は、フィラーが組成物中に分散されやすくなる程度に、有機高分子の粘度が低下する温度にすると良い。具体的には、100〜300℃の範囲にあることが好ましい。混練時、有機高分子がせん断されることにより発熱が起きる場合には、発熱による温度上昇を考慮して、最適温度になるように温度調整すれば良い。
混練した後は、混練機から取り出して当該組成物を得る。その際、ペレタイザーなどで当該組成物をペレット状に成形すると良い。
以上により説明した本発明に係る高分子組成物の用途は、特に限定されるものではない。例えば、自動車などの車両部品や電気・電子機器部品などの配線として用いられる被覆電線の被覆材や、電線束を被覆するワイヤーハーネス保護材、コネクタハウジングなどのコネクタ部品、医療器具、人工臓器、高分子塗料、建築材料などのフィラーが添加される材料を例示することができる。
次に、本発明に係る被覆電線およびワイヤーハーネスについて説明する。
本発明に係る被覆電線は、上述する高分子組成物を被覆材の材料として用いたものである。被覆電線の構成としては、導体の外周に直接この被覆材が被覆されていても良いし、導体とこの被覆材との間に、他の中間部材、例えば、他の絶縁体やシールド導体などが介在されていても良い。被覆材が複数層形成されていても良い。
導体は、その導体径や導体の材質など、特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜定めることができる。また、被覆材の厚さについても、特に制限はなく、導体径などを考慮して適宜定めることができる。
上記被覆電線は、例えば、バンバリミキサー、加圧ニーダー、ロールなどの通常用いられる混練機を用いて混練した本発明に係る高分子組成物を、通常の押出成形機などを用いて導体の外周に押出被覆するなどして製造することができる。また、一軸押出機や二軸押出機などで高分子組成物を混練形成しつつ、導体の外周に押出被覆する方法でも良い。
一方、本発明に係るワイヤーハーネスは、上述する高分子組成物を用いたものである。本発明に係るワイヤーハーネスは、上述する高分子組成物を被覆材の材料として用いた本発明に係る被覆電線を含んでなるものであっても良いし、上述する高分子組成物を、複数本の被覆電線よりなる電線束を被覆するワイヤーハーネス保護材の材料として用いたものであっても良い。ワイヤーハーネス保護材の材料として用いるときの電線束には、本発明に係る被覆電線を含んでいても良いし、含んでいなくても良い。電線の本数は、任意に定めることができ、特に限定されるものではない。
ワイヤーハーネス保護材は、複数本の被覆電線が束ねられた電線束の外周を覆い、内部の電線束を外部環境などから保護する役割を有するものである。ワイヤーハーネス保護材を構成する基材としては、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系高分子組成物が好ましい。
ワイヤーハーネス保護材としては、テープ状に形成された基材の少なくとも一方の面に粘着剤が塗布されたものや、チューブ状、シート状などに形成された基材を有するものなどを、用途に応じて適宜選択して用いることができる。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、本実施例では、材料特性の一つとして、被覆電線の耐摩耗性を評価した。
(供試材料および製造元など)
本実施例および比較例において使用した供試材料を製造元、商品名などとともに示す。
(A)有機高分子
・ポリエチレン(PE)[(株)プライムポリマー製、商品名「ハイゼックス5000S」]
・ポリプロピレン(PP)[(株)プライムポリマー製、商品名「プライムポリプロE−150GK」]
・エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)[三井・デュポンポリケミカル(株)製、商品名「エバフレックスEV360」]
・アイオノマー[三井・デュポンポリケミカル(株)製、商品名「ハイミラン1706」]
・オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)[(株)プライムポリマー製、商品名「T310E」]
・スチレン系熱可塑性変性エラストマー(変性SEBS)[クレイトンポリマージャパン(株)製、商品名「KRATON G FG1901X」]
・ポリアミド(PA6)[デュポン(株)製、商品名「ザイテルFN727」]
・ポリカ−ボネート(PC)[三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名「ユーピロンS−2000」]
・ポリブチレンテレフタレート(PBT)[東レ(株)製、商品名「トレコン1401X06」]
・エチレン−プロピレンゴム(EPR)[JSR(株)製、商品名「EP51」]
・ブタジエンゴム(BR)[JSR(株)製、商品名「BR01」]
・イソプレンゴム(IR)[JSR(株)製、商品名「IR2200」]
(B)フィラー
・金属無機水和物(水酸化マグネシウム)[マーチンスベルグ社製、商品名「マグニフィンH10」]
・メラミンシアヌレート[DSMジャパン(株)製、商品名「melapurMC15」]
・クレー[白石カルシウム(株)製、商品名「オプチホワイト」]
・炭酸カルシウム[白石カルシウム(株)製、商品名「白艶華CCR」]
・タルク[日本タルク(株)製、商品名「MS−P」]
・酸化亜鉛[ハクスイテック(株)製、商品名「亜鉛華2種」]
(C)その他添加剤
・酸化防止剤[チバスペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名「イルガノックス1010」]
・金属不活性化剤[チバスペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名「イルガノックスMD1024」]
(D)分散剤
・下記化合物A〜B
(化合物A(式(2)の化合物、R1=オクタデシル基)の合成)
ジエチレントリアミン五酢酸5g(17mmol)をトルエン50mlに溶解させ、さらにオクタデシルアルコール3g(18.9mmol)を溶解させる。混合液を撹拌しながら105℃まで加温し、副生物をDean−starkトラップにて除きながら2時間反応させる。反応終了後、減圧濃縮し、白色のワックス状組成物を得た。ここに冷水20mlを加えて固化させた後、ろ取して目的物を得た(収率32%)。H−NMR(DMSO)σppm(TMS):0.86(t、3H)、1.25(m、30H)、1.57(t、2H)、2.49(s、10H)、2.79(s、8H)、3.41(s、6H)、3.48(s、2H)、4.03(t、2H)。IR:2910、1735、1634、1315、1225、1060。
(化合物B(式(7)の化合物、R1=オクタデシル基)の合成)
ジエチレントリアミン五酢酸に代えて、t−ブチルアセトアセテート5g(18.5mmol)を用いたこと以外、化合物Aと同様にして合成した(収率45%)。H−NMR(CDCl)σppm(TMS):0.88(t、3H)、1.26(m、30H)、1.64(m、2H)、2.27(s、2H)、3.42(s、2H)、4.13(t、2H)。IR:2924、1710、1622、1422、1001。
(高分子組成物および被覆電線の作製)
まず、後述の表1または表2に示す各成分を二軸混練機に投入し、有機高分子が流動する好適温度(例えばポリプロピレンなどでは220℃)で約5分混練した後、ペレタイザーにてペレット状に成形して本実施例および比較例に係る高分子組成物をそれぞれ得た。次いで、得られた各組成物を、φ50mm押出機により、軟銅線を7本撚り合わせた軟銅撚線の導体(断面積0.5mm)の外周に0.20mm厚で押出被覆し、本実施例および比較例に係る被覆電線を作製した。
以上のように作製した各被覆電線について、耐摩耗性試験を行った。以下に試験方法および評価方法について説明する。また、実施例の結果を表1に、比較例の結果を表2に示す。各比較例の高分子組成物は、同じ番号の各実施例の高分子組成物と比べて、(D)分散剤を含有していない点で異なっており、(A)有機高分子、(B)フィラー、(C)その他添加剤、の種類および含有量は同じになっている。なお、表1および表2に示される(A)有機高分子、(B)フィラー、(C)その他添加剤、の量は、重量部でそれぞれ表されている。また、(D)分散剤の量は、高分子組成物全体量に対する重量%で表されている。
(耐摩耗性試験)
JASO D611−94に準拠し、ブレード往復法により行った。すなわち、被覆電線を750mmの長さに切り出して試験片とした。次いで、25℃の室温下にて、台上に固定した試験片の被覆材表面を軸方向に10mmの長さにわたってブレードを往復させ、被覆材の摩耗によってブレードが導体に接触するまでの往復回数を測定した。この際、ブレードにかける荷重は7Nとし、ブレードは毎分50回の速度で往復させた。次いで、試験片を100mm移動させて、時計方向に90度回転させ、上記の測定を繰り返した。この測定を同一試験片について合計3回行い、その最低値を評価値とした。摩耗回数が500回以上を合格とした。
Figure 0005255764
Figure 0005255764
表1および表2によれば、本発明に従う分散剤を含有していない比較例に係る被覆電線は、耐摩耗性に劣ることが分かる。これに対し、本発明の一実施例に係る分散剤を含有する実施例に係る被覆電線は、耐摩耗性に優れることを確認した。これは、分散剤中のキレート構造がフィラーと強く結合してフィラー同士が互いに凝集するのを防止し、分散剤中の長鎖アルキル基部分が有機高分子と相溶することで、フィラーが高分子組成物中に高分散されているためと推測される。
したがって、本実施例に示される被覆電線を電線束中に含んだワイヤーハーネスとすれば、電線束中の他の被覆電線などと接触する形態で使用されても、被覆材が著しく摩耗することはなく、長期にわたって高い信頼性が確保される。
なお、本実施例では、電線特性のうち、フィラー添加により低下しやすい耐摩耗性について評価しているが、フィラーの分散性に起因して低下する他の電線特性についても向上効果があると考えられる。また、電線だけでなく、他の材料、例えば成形材料全般などまたはこれ以外の材料についても、フィラーの分散性に起因して低下する機械特性などの材料特性の向上効果があると考えられる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。

Claims (4)

  1. 有機高分子(ポリウレタンを除く)と、フィラーと、前記有機高分子中に前記フィラーを分散させるための分散剤と、を含有し、前記分散剤が、長鎖アルキルカルボン酸またはその誘導体のカルボキシル基の末端、あるいは、長鎖アルキルアルコールのヒドロキシル基の末端に、アミノカルボン酸基あるいは1,3−ジケトン基からなるキレート構造が導入されたものからなる高分子組成物を被覆材に用いたことを特徴とする被覆電線。
  2. 前記キレート構造は、エステル結合、エーテル結合、あるいは、アミド結合により、長鎖アルキルカルボン酸またはその誘導体のカルボキシル基、あるいは、長鎖アルキルアルコールのヒドロキシル基と結合されていることを特徴とする請求項1に記載の被覆電線。
  3. 前記高分子組成物中の前記分散剤の含有率は、前記有機高分子100質量部に対し0.1〜20重量部の範囲内にあることを特徴とする請求項1または2に記載の被覆電線。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の被覆電線を含むワイヤーハーネス。
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