JP3921392B2 - 水分散型ポリウレタン組成物、その製造方法及びノンクロム処理金属塗料 - Google Patents
水分散型ポリウレタン組成物、その製造方法及びノンクロム処理金属塗料 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の原料から得られる水分散型ポリウレタン組成物、その製造方法及びノンクロム処理金属塗料に関するものであり、詳しくは、家電製品や建材等に使用されるクロム処理を施さない金属材のプレコート塗料、プレコートプライマー塗料、潤滑塗料等のノンクロム処理金属塗料に好適な水分散型ポリウレタン組成物、その製造方法及びノンクロム処理金属塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】
家電用、建材用、自動車用などに用いられる鋼板等の金属材には耐食性が要求されるため、プライマーにクロム系の防錆顔料を含有させたり、プライマーの下地処理としてクロメート処理被膜を施すクロム処理が行われている。特に亜鉛系めっき鋼板の防錆用途では、耐食性付与被膜としてクロメート処理被膜が使用されている。
【0003】
しかしながら、クロメート処理被膜及びクロム系防錆顔料を含む有機被膜から6価のクロムが溶出するおそれがあり、環境汚染、労働衛生、安全性の観点から、最近ではノンクロム防錆処理、ノンクロム有機被膜に対する要望が高まっている。
【0004】
一方、金属のコーティングに用いられている金属材用塗料も同様に、環境汚染、労働衛生、安全性の観点から、水系塗料が用いられている。これらの樹脂成分としてポリウレタン、エポキシ樹脂等の各種樹脂材料が用いられているが、塗膜の延び、強度等の物性のバランスがよいのでポリウレタンが適している。例えば、特開平7−331160号、特開平9−221629号、特開平2000−73179号、特開平2000−107686号公報等で水分散性ポリウレタン組成物の使用が報告されている。
【0005】
しかし、クロメート処理は、コーティング層の下地金属材への密着性を高める効果を有しており、これを施していないノンクロム金属材用としては、上記の水分散性ポリウレタン組成物は、塗料に充分な密着性を付与していない問題点を有している。また、塗装面には、塗装後の工程において、耐アルカリ性(耐アルカリ脱脂工程)及び耐溶剤性(耐エタノールラビング)が必要である。従来の水分散性ポリウレタン組成物は、これらについても充分ではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、ノンクロム処理金属材塗料用に好適な、基材に対する密着性と耐アルカリ性及び耐溶剤性を与える水分散性ポリウレタン組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、検討を重ねた結果、特定の改質剤成分を含む、特定の原料組成の水分散型ポリウレタン組成物が、上記課題を解決し得ることを知見し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明の第1は、ジイソシアネート(a0)を必須成分とし、他のポリイソシアネート化合物(a’)を任意成分として含有してなるポリイソシアネート成分(a)、ポリオール成分(b)、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物を一種類以上含む改質剤成分(c)、ジカルボン酸ジヒドラジド化合物(d0)を必須成分とし、ポリアミン化合物(d’)を任意成分として含有してなる鎖延長剤成分(d)、及び水(h)から得られる水分散型ポリウレタン組成物を提供する。
【0009】
【化3】
【0010】
(式中、R1、R2は、炭素数1〜18の炭化水素基を表し、pは、0又は1を表す;R3、R4は、炭素数1〜18の炭化水素基を表し、qは、1又は2を表し、qが1の場合、Aは、水素原子、又は酸素原子、窒素原子を含んでもよく、水酸基を有してもよい炭素数1〜18の炭化水素基を表し、qが2の場合、Aは炭素数1〜18の二価の炭化水素基A’を表し、A’に結合する構造は互いに異なっていてもよい。R5は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、rは、0〜2の整数を表す。)
本発明の第2は、さらに、下記一般式(I)で表されるシラン化合物(e)を含んで得られる本発明の第1記載の水分散型ポリウレタン組成物を提供する。
【0011】
【化4】
【0012】
(式中、Xは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、lは、0又は1を表し、nは、1、2又は3を表す。Rは、炭素数1〜8のアルキル基を表し、Ramは、アミノ基又はNH基を有する有機基を表し、Yは、単結合、−O−、−S−、−N−、−NH−、−NR’−を表し、Zは炭素数1〜4のアルキレン基を表し、mは、Yが単結合、−O−、−S−、−NH−、−NR’−の場合は1を表し、Yが−N−の場合は2を表し、R’は、炭素数1〜18の有機基を表す。)
本発明の第3は、さらに、メラミン化合物(f)を含んで得られる本発明の第1又は2に記載の水分散型ポリウレタン組成物を提供する。
本発明の第4は、本発明の第1〜3のいずれかに記載の水分散性ポリウレタン組成物を含有してなるノンクロム処理金属塗料を提供する。
本発明の第5は、本発明の第1に示されたポリイソシアネート成分(a)、ポリオール成分(b)、鎖延長剤成分(d)、必要に応じて加えられる本発明の第2に示されたシラン化合物(e)、及び必要に応じて加えられる本発明の第3に示されたメラミン化合物(f)を使用して、下記(イ)、(ロ)又は(ハ)の方法によるノンクロム処理金属塗料用水分散型ポリウレタン組成物の製造方法を提供する。
ポリイソシアネート成分(a)、ポリオール成分(b)及び必要に応じて用いられるメラミン化合物(f)からプレポリマーを合成して、このプレポリマー組成物に改質剤成分(c)を加え、これを水中で鎖延長剤成分(d)及び必要に応じて用いられるシラン化合物(e)を反応、分散させる方法(イ);ポリイソシアネート成分(a)、ポリオール成分(b)、必要に応じて用いられるシラン化合物(e)及び必要に応じて用いられるメラミン化合物(f)からプレポリマーを合成して、このプレポリマー組成物に改質剤成分(c)を加え、これを水中で鎖延長剤成分(d)を反応、分散させる方法(ロ);ポリイソシアネート成分(a)、ポリオール成分(b)、鎖延長剤成分(d)、シラン化合物(e)、メラミン化合物(f)からポリマーを合成して、このポリマー組成物に改質剤成分(c)を加え、これを水中にフィードして分散させる方法(ハ)
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ポリイソシアネート成分(a)
本発明に係るポリイソシアネート成分(a)は、ジイソシアネート(a0)を必須成分とし、他のポリイソシアネート化合物(a’)を任意成分として含有してなるものであり、その配合等により特に制限を受けるものではない。
ジイソシアネート(a0)としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トランス及び/又はシス−1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4及び/又は(2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類等;及びこれらの混合物等が挙げられ、得られる塗膜の耐水性が良いので脂環式ジイソシアネートが好ましく、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートがより好ましい。これらは、カルボジイミド変性、イソシアヌレート変性、ビウレット変性等の変性物の形で用いてもよく、各種のブロッキング剤によってブロックされたブロックイソシアネートの形で用いてもよい。
これらのジイソシアネート(a0)のポリイソシアネート成分(a)中の含有量(質量%)は、50%より小さいと塗膜の可撓性が不十分になるおそれがあるので50%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
【0014】
また、上記のポリイソシアネート成分(a)において、必要に応じて用いられる他のポリイソシアネート化合物(a’)としては、トリフェニルメタントリイソシアネート、1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、これらの混合物等の三官能以上のイソシアネート、これらの三官能以上のイソシアネートのカルボジイミド変性、イソシアヌレート変性、ビウレット変性等の変性物、これらを各種のブロッキング剤によってブロックされたブロックイソシアネート、上記例示のジイソシアネートのイソシアヌレート三量体、ビウレット三量体等が挙げられる。
【0015】
ポリオール成分(b)
本発明に係るポリオール成分(b)とは、分子中に上記のポリイソシアネート成分(a)のイソシアネート基と反応してウレタン結合を形成せしめるヒドロキシル基を2個以上有するポリオール化合物の一種類又は二種類以上の混合物からなるものである。
【0016】
ポリオール化合物としては、低分子ポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエステルポリカーボネートポリオール類、結晶性又は非結晶性のポリカーボネートポリオール類、及び後述するイオン基導入ポリオールが挙げられる。
【0017】
上記低分子ポリオール類としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族ジオール化合物、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパン等の三価以上の脂肪族又は脂環族アルコール化合物が挙げられる。
【0018】
上記低分子ポリオール類としては、他に、ポリヒドロキシル芳香族化合物又はその芳香族環の(部分)水添物が挙げられ、例えば、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン、3−メチルレゾルシン、3−エチルレゾルシン、3−プロピルレゾルシン、3−ブチルレゾルシン、3−第三ブチルレゾルシン、3−フェニルレゾルシン、3−クミルレゾルシン、3−メチルハイドロキノン、3−エチルハイドロキノン、3−プロピルハイドロキノン、3−ブチルハイドロキノン、3−第三ブチルハイドロキノン、3−フェニルハイドロキノン、3−クミルハイドロキノン−4,4’−ジヒドロキシジフェニル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,4,4−トリメチルシクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロドデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)ベンゼン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)ベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(別名ビスフェノールF)、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)エタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名ビスフェノールA)、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−シクロヘキシルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メトキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ)ブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル2−メチル)ブタン、及びこれらポリヒドロキシル芳香族化合物のエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物等、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA等の脂環式ジオール化合物、及びそれらのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0019】
ポリエーテルポリオール類としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のエチレンオキサイド付加物、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のプロピレンオキサイド付加物、上記の低分子ポリオールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0020】
ポリエステルポリオール類としては、上記に例示の低分子ポリオール等のポリオールと、その化学量論的量より少ない量の多価カルボン酸又はそのエステル、無水物、ハライド等のエステル形成性誘導体、及び/又は、ラクトン類もしくはその加水分解開環して得られるヒドロキシカルボン酸、との直接エステル化反応及び/又はエステル交換反応により得られるものが挙げられる。多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸、水添ダイマー酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸類、トリメリト酸、トリメシン酸、ひまし油脂肪酸の三量体等のトリカルボン酸類、ピロメリット酸等のテトラカルボン酸類などの多価カルボン酸が挙げられ、そのエステル形成性誘導体としては、これらの多価カルボン酸の酸無水物、該多価カルボン酸のクロライド、ブロマイド等のハライド、該多価カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、アミルエステル等の低級脂肪族エステルが挙げられる。上記ラクトン類としてはγ−カプロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
【0021】
改質剤成分(c)
本発明に係る改質剤成分(c)は、前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物を一種類、又は二種類以上含む。改質剤成分(c)は、基材に対する密着性、塗膜の耐溶剤、塗膜の耐アルカリ性を向上させる効果があり、特に金属、ガラス、セラミックス等の無機基材に対して優れた効果を奏するものである。
【0022】
本発明に係る改質剤成分(c)において、上記の一般式(1)及び(2)は、便宜上ケト型構造で表記しているが、エノール型構造と平衡を有する場合はこれを含むものである。
【0023】
一般式(1)で表される化合物は、β−ジケトン化合物(pが0の場合)とβ−ケトエステル化合物(pが1の場合)である。R1又はR2で表される炭素数1〜18の炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル等のアルキル基;フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−第三ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、4−オクチルフェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4−ジ第三ブチルフェニル、2,5−ジ第三ブチルフェニル、2,6−ジ−第三ブチルフェニル、2,4−ジ第三ペンチルフェニル、2,5−ジ第三アミルフェニル、シクロヘキシルフェニル、ビフェニル、2,4,5−トリメチルフェニル等のアルキルアリール基;ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン−2−イル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等のアリールアルキル基が挙げられる。
【0024】
一般式(1)で表される化合物の更なる具体例としては、以下に挙げる化合物が挙げられる。
【0025】
【化5】
【0026】
【化6】
【0027】
一般式(2)で表される化合物は、ケチミン化合物であり、例えばβ−ジケトン化合物とモノ又はジアミン化合物から得られる。一般式(2)において、R3又はR4で表される炭素数1〜18の炭化水素基としては、R1で例示した基が挙げられる。qが1の場合、Aは、水素原子、又は酸素原子、窒素原子を含んでもよく、水酸基を有してもよい炭素数1〜18の炭化水素基を表す。上記酸素原子、窒素原子を含んでもよく、水酸基を有してもよい炭素数1〜18の炭化水素基としては、上記のR1で例示の炭化水素基、2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、2−ジメチルアミノエチル、2−ジエチルアミノエチル、3−ジメチルアミノプロピル、6−メチル−3,6−ジアザヘプチル等が挙げられる。qが2の場合、Aは炭素数1〜18の二価の炭化水素基A’を表し、A’に結合する構造は互いに異なっていてもよい。A’は、ジアミン化合物から導入される残基であり、該ジアミン化合物としては、前記の低分子ジオールのアルコール性水酸基がアミノ基に置換されたものであるエチレンジアミン、プロピレンジアミン等の低分子ジアミン類、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンジアミン等のポリエーテルジアミン類、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の脂環式ジアミン類、m−キシレンジアミン、α−(m/pアミノフェニル)エチルアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、ジメチルチオトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等が好ましく挙げられる。
【0028】
一般式(2)で表される化合物の更なる具体例としては、以下に挙げる化合物が挙げられる。
【化7】
【0029】
【化8】
【0030】
一般式(3)で表される化合物は、ベンゾトリアゾール化合物である。一般式(3)において、R5で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチルが挙げられ、具体例としては、以下に挙げる化合物が挙げられる。R5は、ベンゾトリアゾール環に、0ないし2個置換していてもよい。
【0031】
【化9】
【0032】
鎖延長剤成分(d)
本発明に係る鎖延長剤成分(d)は、ジカルボン酸ジヒドラジド化合物(d0)を必須成分とし、ポリアミン化合物(d’)を任意成分として含有してなるものであり、その配合等により特に制限を受けるものではない。
ジカルボン酸ジヒドラジド化合物(d0)としては、上記のポリエステルポリオールに用いられる多価カルボン酸で例示したジカルボン酸とヒドラジンとの反応生成物が挙げられる。中でも脂肪族ジカルボン酸ジヒドラジドは、得られる塗膜について熱による劣化が少なく、水分散性ポリウレタン組成物の分散安定性を保つことができるので好ましく、アジピン酸ジヒドラジドがより好ましい。
鎖延長剤成分(d)中のジカルボン酸ジヒドラジド化合物(d0)のモル比率(%)は、5%より少ないと使用効果が得られず、95%を超えると分散安定性が低下する場合があるので5〜95%が好ましく、10〜80%がより好ましい。
【0033】
上記ポリアミン化合物(d’)としては、前記例示の低分子ジオールのアルコール性水酸基がアミノ基に置換されたものであるエチレンジアミン、プロピレンジアミン等の低分子ジアミン類;ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンジアミン等のポリエーテルジアミン類;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の脂環式ジアミン類;m−キシレンジアミン、α−(m/pアミノフェニル)エチルアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、ジメチルチオトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等の芳香族ジアミン類等が挙げられる。中でも低分子ジアミン類が低コストなので、好ましく、1,2−エチレンジアミン、1,2−または1,3−プロピレンジアミンがより好ましい。
【0034】
シラン化合物(e)
本発明に係る前記一般式(I)で表されるシラン化合物(e)は、該化合物のアミノ基又はNH基とイソシアネート基との反応により、水分散性ポリウレタンの末端に加水分解性シリル基及び/又はこれが加水分解されたシリル基を導入するものである。
【0035】
前記一般式(I)において、Rで表される炭素数1〜8のアルキルとしては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシルが挙げられ、Xで表される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチルが挙げられる。Rがメチル又はエチルでありXがメチルのものが入手が容易で低コストなので好ましい。
【0036】
また、Zとしては、メチレン、エチレン、プロピレン、メチルエチレン、ブチレン、1−メチルプロピレン、2−メチルプロピレンが挙げられ、好ましくはメチレン、エチレン、プロピレン、メチルエチレンであり、R’としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、オクチル、ラウリル、ステアリル、フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン−2−イル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル、ビニル、アリル等が挙げられ、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチルである。
【0037】
また、Ramで表されるアミノ基又はNH基を有する有機基としては、例えば、下記式で表される基が挙げられる。
【0038】
【化10】
【0039】
(式中、R6は、水素原子、アルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基を表し、R7は、アルキレン基、シクロアルカンジイル基、アリーレン基、カルボニル基、アルキレンカルボニル基、(ポリ)オキシアルキレン基を表す。)
【0040】
上記の式において、R6で表されるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル等が挙げられ、R7で表されるアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、メチルエチレン、ブチレン、1−メチルプロピレン、2−メチルプロピレン、1,2−ジメチルプロピレン、1,3−ジメチルプロピレン、1−メチルブチレン、2−メチルブチレン、3−メチルブチレン、4−メチルブチレン、2,4−ジメチルブチレン、1,3−ジメチルブチレン、ペンチレン、へキシレン、ヘプチレン、オクチレン等が挙げられ、シクロアルカンジイル基としては、シクロブタン−1,3−ジイル、シクロヘキサン−1,4−ジイル等が挙げられ、アリーレン基としては、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、2,5−ジメチル−1,4−フェニレン、ジフェニルメタン−4,4’−ジイル、2,2−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイル等が挙げられ、アルキレンカルボニル基としては、上記例示のアルキレン基とカルボニル基が結合した基が挙げられ、(ポリ)オキシアルキレン基としては、オキシエチレン、ポリオキシエチレン、オキシプロピレン、ポリオキシプロピレン等が挙げられる。
【0041】
前記の一般式(I)で表されるシラン化合物(e)のさらなる具体例としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【0042】
【化11】
【化12】
(式中、Rは、上記一般式(I)のRと同様の基を表す。)
【0043】
メラミン化合物(f)
また、本発明に係るメラミン化合物(f)は、ポリウレタン分子に架橋構造を与えるものであり、特に塗膜等の強度が必要な場合に用いられるものである。該メラミン化合物(f)としては、メラミン、モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、メチル化メチロールメラミン、ブチル化メチロールメラミン、メラミン樹脂等が挙げられる。中でも水分散性ポリウレタン組成物の分散性と塗膜の基材密着性に特に優れるのでメラミンが好ましい。
【0044】
水分散性ポリウレタン組成物の製造方法
本発明の水分散性ポリウレタン組成物において、その製造方法については、特に制限を受けず、周知一般の方法を適用することができる。製造方法としては、反応に不活性且つ水との親和性の大きい溶媒中で反応させプレポリマーを合成してから、これを水にフィードして分散させるプレポリマー法が好ましい。また、改質剤成分(c)は、プレポリマー合成時に添加使用してもよいが、他の成分と反応し、所望の物性が得られなくなる場合があるので、プレポリマー合成後に加える方法が好ましく、得られる水分散ポリウレタン組成物の分散特性が良好なので、プレポリマー組成物に加える方法がより好ましい。
水分散性ポリウレタン組成物の製造方法としては、例えば、ポリイソシアネート成分(a)、ポリオール成分(b)及び必要に応じて用いられるメラミン化合物(f)からプレポリマーを合成して、このプレポリマー組成物に改質剤成分(c)を加え、これを水中で鎖延長剤成分(d)及び必要に応じて用いられるシラン化合物(e)を反応、分散させる方法(イ)、ポリイソシアネート成分(a)、ポリオール成分(b)、必要に応じて用いられるシラン化合物(e)及び必要に応じて用いられるメラミン化合物(f)からプレポリマーを合成して、このプレポリマー組成物に改質剤成分(c)を加え、これを水中で鎖延長剤成分(d)を反応、分散させる方法(ロ)、ポリイソシアネート成分(a)、ポリオール成分(b)、鎖延長剤成分(d)、シラン化合物(e)、メラミン化合物(f)からポリマーを合成して、このポリマー組成物に改質剤成分(c)を加え、これを水中にフィードして分散させる方法(ハ)等が挙げられる。
【0045】
上記の好適な製造方法に使用される反応に不活性で水との親和性の大きい溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン等を挙げることができる。これらの溶媒は、通常、プレポリマーを製造するために用いられる上記原料の合計量に対して、3〜100質量%が用いられる。これら溶媒のなかで、沸点100℃以下の溶媒はプレポリマー合成後、減圧留去することが好ましい。
【0046】
上記の製造方法において、各成分配合については、特に制限を受けるものではない。該配合比は、製造時に反応させる段階でのイソシアネート基と各成分のイソシアネート反応性基(OH基、NH基などの活性水素基)とのモル比に置き換えることができ、該モル比については、イソシアネート基1に対して、イソシアネート反応性基は0.3〜2が好ましく、0.5〜1.5がより好ましい。また、ポリオール成分(b)、鎖延長剤成分(d)、シラン化合物(e)及びメラミン化合物(f)の配合比については、モル比において、ポリオール成分(b)1に対して、鎖延長剤成分(d)が0.01〜1.0、シラン化合物(e)が0.01〜0.3、メラミン化合物(f)が0.05〜1.0になる範囲が好ましい。
【0047】
また、改質剤成分(c)の使用量は、水分散性ポリウレタン組成物の固形分質量(成分(a)、(b)、(d)、(e)、(f)及び後に説明する中和剤成分の質量の総和)に対して0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。
【0048】
また、本発明の水分散ポリウレタン組成物において、その固形分は、特に制限を受けず、任意の値を選択できる。該固形分は1〜60質量%が分散性と塗装性が良好なので好ましく、5〜40質量%がより好ましい。
【0049】
本発明の水分散性ポリウレタン組成物の状態としては、エマルション、サスペンション、ディスパーション、コロイダル分散液、水溶液等が挙げられる。これらの水分散性ポリウレタン組成物を得る方法としては、ポリウレタン分子中にアニオン性基又はカチオン性基のイオン性基を導入するイオン法、ポリウレタン分子中にノニオン性基を導入するノニオン法、界面活性剤等の乳化剤を使用する方法が挙げられ、また、これらの2種類以上を併用して用いてもよい。
【0050】
上記のイオン法としては、例えば、ポリオール成分(b)中にイオン性基導入ポリオールを用いてイオン性基を導入し、これを、中和剤により中和する方法が容易でコストも小さいので好ましい。イオン性基導入ポリオールの使用量は、特に制限を受けず、適宜選択することができる。該イオン性基導入ポリオールの使用量は、モル比で全ポリオール化合物を100とすると、1より小さいと分散安定性が低下し、90より大きいと水分散性ポリウレタン組成物から得られる塗膜等の耐水性が悪化する場合があるので、1〜90が好ましく5〜75がより好ましい。
【0051】
上記のイオン性基導入ポリオールとしては、アニオン性基を導入するものとして、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸等のカルボキシル基を含有するポリオール類、1,4−ブタンジオール−2−スルホン酸等のスルホン酸基を含有するポリオール類が挙げられ、カチオン性基を導入するものとしては、例えば、N,N−ジアルキルアルカノールアミン類、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、N−ブチル−N,N−ジエタノールアミン等のN−アルキル−N,N−ジアルカノールアミン類、トリアルカノールアミン類が挙げられる。
【0052】
上記のイオン法に用いられるアニオン性基の中和剤としては、例えばトリメチルアミンやトリエチルアミン等のトリアルキルアミン類、N,N−ジアルキルアルカノールアミン類、N−アルキル−N,N−ジアルカノールアミン類、トリアルカノールアミン類等の3級アミン、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等塩基性化合物が挙げられ、カチオン性基の中和剤としては、蟻酸、酢酸、乳酸、コハク酸、グルタル酸、クエン酸等の有機カルボン酸、パラトルエンスルホン酸、スルホン酸アルキル等の有機スルホン酸、塩酸、リン酸、硝酸、スルホン酸等の無機酸、エピハロヒドリン等のエポキシ化合物、ジアルキル硫酸、ハロゲン化アルキル等の4級化剤が挙げられる。これらの中和剤の使用量は、通常イオン性基1モルに対して過不足が大きいと水分散性ポリウレタン組成物から得られる塗膜等の耐水性、強度、延び等の物性が低下するおそれがあるので0.5〜2.0モルが好ましく、0.8〜1.5モルがより好ましい。
【0053】
上記のノニオン法は、ポリウレタン分子の主鎖や側鎖にオキシエチレン鎖等のノニオン性親水基を導入して、水分散性を与える方法である。ノニオン性親水性基の導入は、ウレタンプレポリマーの側鎖及び又は主鎖に必要量のオキシエチレン鎖を組み込む方法が挙げられる。
【0054】
また、上記の乳化剤としては、水分散性ポリウレタンに使用される周知一般のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子系界面活性剤、反応性界面活性剤等を使用することができる。中でも、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤又はカチオン性界面活性剤がコストも低く、良好な乳化が得られるので好ましい。
【0055】
上記のアニオン性界面活性剤としては、例えば、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムドデシルサルフェート等のアルキルサルフェート類;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート、アンモニウムポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート等のポリオキシエチレンエーテルサルフェート類;ナトリウムスルホリシノレート;スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレート、トルエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ナトリウムベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ポリオキシエチレンエーテルリン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩;N−アシルアミノ酸塩;N−アシルメチルタウリン塩等が挙げられる。
【0056】
またノニオン性界面活性剤としては、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート等の多価アルコールの脂肪酸部分エステル類;ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル類;ポリグリセリン脂肪酸エステル類;炭素数1〜18のアルコールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物;アルキルフェノールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物;アルキレングリコール及び/又はアルキレンジアミンのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。該ノニオン性界面活性剤を構成する炭素数1〜18のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、2−ブタノール、第三ブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、第三アミルアルコール、ヘキサノール、オクタノール、デカンアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられ、アルキルフェノールとしては、フェノール、メチルフェノール、2,4−ジ第三ブチルフェノール、2,5−ジ第三ブチルフェノール、3,5−ジ第三ブチルフェノール、4−(1,3−テトラメチルブチル)フェノール、4−イソオクチルフェノール、4−ノニルフェノール、4−第三オクチルフェノール、4−ドデシルフェノール、2−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノール、4−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノール、ナフトール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられ、アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられ、アルキレンジアミンとしては、これらのアルキレングリコールのアルコール性水酸基がアミノ基に置換されたものが挙げられる。また、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物は、ランダム付加物でもブロック付加物でもよい。
【0057】
また、カチオン性界面活性剤としては、1級〜3級アミン塩、ピリジニウム塩、アルキルピリジニウム塩、ハロゲン化アルキル4級アンモニウム塩等の4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0058】
これらの乳化剤を使用する場合の使用量は、特に制限を受けず任意の量を使用することができるが、ポリウレタン化合物1に対する質量比で0.01より小さいと充分な分散性が得られない場合があり、0.3を超えると水分散性ポリウレタン組成物から得られる塗膜等の耐水性、強度、延び等の物性が低下するおそれがあるので0.01〜0.3が好ましく、0.05〜0.2がより好ましい。
【0059】
上記の水分散性ポリウレタン組成物を得る分散方法は、用途によって適宜選択される。例えば、ノンクロム処理金属材用塗料の場合は、ノンクロム防錆剤との相性がよいので、ポリウレタン分子中にアニオン性基を導入するアニオン法が好ましい。
【0060】
本発明の水分散型ポリウレタン組成物には、必要に応じて、周知一般に用いられる各種添加剤を用いてもよい。該添加剤としては、例えば、顔料;染料;造膜助剤;硬化剤;外部架橋剤;粘度調整剤;レベリング剤;消泡剤;ゲル化防止剤;分散安定剤;ヒンダードアミン等の光安定剤;フェノール系化合物、リン系化合物、硫黄系化合物等の酸化防止剤;トリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール系化合物等の紫外線吸収剤;ラジカル捕捉剤;耐熱性付与剤;無機及び有機充填剤;可塑剤;滑剤;帯電防止剤;補強剤;触媒;揺変剤;抗菌剤;防カビ剤;防腐触剤;加水分解性シリル基安定剤等が挙げられる。また、基材に対して特に強固な密着性が必要な場合は、コロイダルシリカ、テトラアルコキシシラン及びその縮重合物やエポキシ化合物を用いてもよい。
【0061】
本発明の水分散型ポリウレタン組成物の用途としては、塗料、接着剤、表面改質剤、有機及び/又は無機粉体のバインダー、形成材等が挙げられ、具体的には、ガラス繊維集束剤、感熱紙コート剤、インクジェット紙コート剤、印刷インクのバインダー剤、鋼板用コート剤、ガラス、スレート、コンクリート等無機系構造材用塗料、木工塗料、繊維処理剤等が挙げられる。特に塗料に優れた物性を与え、金属に対して優れた密着性を与えるので鋼板等の金属材へのコート剤として有用である。
【0062】
本発明の水分散性ポリウレタン組成物は、クロム処理を施さないノンクロム金属材の塗料に特に好適なものである。該塗料には、フッ化亜鉛、ヘキサフルオロ珪酸亜鉛、これらの水和物等のエッチング系フッ化物や防錆剤が用いられことがあり、防錆剤を含有するものが好ましい。防錆剤としては、例えば、リン酸系化合物、バナジウム系化合物、これらを網目修飾イオン源とガラス状物質の一方または両方を含有する混合物を焼成し粉砕することにより得られるもの、表面をめっき処理されたMg2Si合金粉末、モリブデン酸塩系化合物、メタ硼酸バリウム等の硼酸系化合物等が挙げられる。
【0063】
上記のリン酸系化合物としては、オルトリン酸、縮合リン、種々の金属のオルトリン酸塩または縮合リン酸塩、五酸化リン、リン酸塩鉱物、市販の複合リン酸塩顔料、リン酸アンモニウムまたはこれらの混合物が挙げられる。なお、ここで言うオルトリン酸塩の中には、その一水素塩(HPO4 2-の塩)、二水素塩(H2PO4 -の塩)も含む。また縮合リン酸塩の中にも水素塩を含む。また縮合リン酸塩にはメタリン酸塩も含み、通常のポリリン酸塩、ポリメタリン酸塩も含む。リン化合物の具体例としてはリン酸塩鉱物、例えばモネタイト、トルフィル石、ウィトロック石、ゼノタイム、スターコライト、ストルーブ石、ラン鉄鉱等や、市販の複合リン酸塩顔料、例えばポリリン酸シリカ等や、複合リン酸、例えばピロリン酸、メタリン酸や、複合リン酸塩、例えばメタリン酸塩、テトラメタリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ピロリン酸塩、酸性ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩や、あるいはこれらの混合物が挙げられる。リン酸塩を形成する金属種は特に限定的でなく、アルカリ金属、アルカリ土類金属、その他の典型元素の金属種および遷移金属が挙げられる。好ましい金属種の例としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、鉛、スズ等が挙げられる。この他にバナジル、チタニル、ジルコニル等、オキソカチオンも含まれ、特に好ましいのはカルシウム、マグネシウムである。
【0064】
また上記のバナジウム系化合物としては、バナジウムの原子価が0、2、3、4または5のいずれかまたは2種以上を有する化合物であり、これらの酸化物、水酸化物、種々の金属の酸素酸塩、バナジル化合物、ハロゲン化物、硫酸塩、金属粉などが挙げられ、5価のバナジウム化合物を1つの成分として含むものが好ましい。バナジウム化合物の具体例としては、酸化バナジウム(II)、水酸化バナジウム(II)、酸化バナシウム(III)、酸化バナジウム(IV)、ハロゲン化バナジル、酸化バナジウム(V)、種々の金属のオルトバナジン酸塩、メタバナジン酸塩またはピロバナジン酸塩、ハロゲン化バナジル、バナジン化アンモニウム、またはこれらの混合物が挙げられる。バナジン酸塩の金属種はリン酸塩で示したものと同じものが挙げられる。
【0065】
またノンクロム処理金属材としては、例えば、熱延鋼板、冷延鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、亜鉛合金めっき鋼板、アルミめっき鋼板、ニッケルめっき鋼板、銅めっき鋼板、亜鉛ニッケルめっき鋼板、亜鉛アルミめっき鋼板、亜鉛鉄めっき鋼板、スズめっき鋼板などのめっき鋼板や、ステンレス鋼板、アルミ板、銅板、アルミ合金板が挙げられる。
【0066】
【実施例】
以下、製造例、製造実施例、製造比較例、評価例等をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の製造実施例、評価例等によって何ら制限を受けるものではない。
なお、使用される原材料についての略号は以下の通りである。
【0067】
(ポリイソシアネート)
HMDI:ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート
IPDI:イソホロンジイソシアネート
(ポリオール)
MPD/TPA:3−メチル−1,5−ペンタンジオールとテレフタル酸のポリエステルポリオール
1,6HD/TPA:1,6−ヘキサンジオール/テレフタル酸のポリエステルポリオール
1,6HD/AA/IPA:1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸/イソフタル酸=1/1モルのポリエステルポリオール
PPG:ポリプロピレングリコール
PCD:1,6−ヘキサンジオールから得られるポリカーボネートジオール
なお、上記のポリオールの分子量はOH価から求めたものであり、表1に示す。
(シラン化合物)
AS−1:γ−アミノプロピルトリエトキシシラン
AS−2:γ−アミノプロピルジエトキシメチルシラン
(メラミン化合物)
MM:メラミン
(鎖延長剤)
EDA:エチレンジアミン
ADH:アジピン酸ジヒドラジド
(イオン性基導入化合物)
DMPA:ジメチロールプロピオン酸
(中和剤)
TEA;トリエチルアミン
(改質剤)
前記化合物No.1〜No.32の中のいずれか。
(比較化合物)
EDTAジナトリウム:エチレンジアミンテトラアセテートジナトリウム
デヒドロ酢酸
HyMePhBzTrzl:2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
【0068】
[製造例]ウレタンプレポリマーの製造
表1に記載の配合比の各原料成分及びこれら各成分の総質量の40.3質量%のN−メチル−2−ピロリドンを反応フラスコに仕込み、窒素気流下で、125℃で2時間反応させた後に中和剤のTEAを加え、更に1時間撹拌してプレポリマー組成物:PP−1〜PP9を得た。表1に原料の種類とそれらの配合比と、ウレタン化反応して得られたプレポリマー組成物の種類を示す。
【0069】
【表1】
【0070】
[製造実施例]
上記で得られた各プレポリマー組成物400gに表2に記載の改質剤成分を加えた組成物を、シリコーン系消泡剤SE−21(ワッカーシリコン社製)0.2gを溶解した505gの水に15分で滴下した。その後、鎖延長剤成分としてエチレンジアミンとアジピン酸ジヒドラジド(エチレンジアミン:アジピン酸ジヒドラジド=4:1(モル比))を表2に記載の量で加え、25℃で30分撹拌して水分散型ポリウレタン組成物;PU−1〜PU−15を得た。表2に使用したプレポリマー組成物、改質剤、鎖延長剤成分の種類とそれらの配合比と、得られた水分散型ポリウレタン組成物の種類を示す。
【0071】
【表2】
【0072】
[製造比較例]
上記プレポリマー組成物PP−1の400gに表3に記載の比較化合物を加えた組成物を、シリコーン系消泡剤SE−21(ワッカーシリコン社製)0.2gを溶解した505gの水に15分で滴下した。その後、鎖延長剤成分としてエチレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド(エチレンジアミン:アジピン酸ジヒドラジド=4:1(モル比))を表3に記載の量で加え、25℃で30分撹拌して比較用水分散型ポリウレタン組成物:比較PU−1〜比較PU−4を得た。
【0073】
【表3】
【0074】
[評価例]
上記で得られた製造実施例及び製造比較例で得られた水分散性ポリウレタン組成物のいくつかについて以下の評価を行った。結果を表4に示す。
(密着性評価)
クロム処理を行っていない冷延鋼板に上記で得た水分散性ポリウレタン組成物をバーコーターで3g/m2塗布し、220℃で20秒加熱して得た試験片を塗装面を外側にして180℃折り曲げ加工を行った。加工部の塗膜について、ルーペによるヒビの観察及びセロハンテープを圧着させた後、セロハンテープを剥がしたときの塗膜の剥がれにより評価した。外観の点数基準は以下の通りである。
○:ヒビ及び剥がれなし。△:ヒビあり。×:剥がれあり。
(耐エタノール性評価)
クロム処理を行っていない冷延鋼板にバーコーターで3g/m2で塗布し、220℃で20秒加熱して得た試験片の塗膜面を、圧力180g/cm2、カナキン3号の摩擦布を使用して、30往復のエタノールラビングを行い、塗膜の評価を外観で行った。外観の点数基準は以下の通りである。
5:外観変化なし。4:表面の艶引けあり。3:表面べとつきあり。2:剥離あり。1:50%以上の溶解又は剥離。
(耐アルカリ性評価)
クロム処理を行っていない冷延鋼板にバーコーターで3g/m2で塗布し、220℃で20秒加熱して得た試験片を50℃の2質量%リン酸アンモニウム溶液に30分間浸漬し、塗膜の評価を行った。外観の点数基準は以下の通りである。5:外観変化なし。4:表面の変色。3:表面の溶解あり。2:剥離あり。1:全剥離又は全溶解。
【0075】
【表4】
【0076】
【発明の効果】
本発明は、ノンクロム処理金属材塗料用に好適な、基材に対する密着性と耐アルカリ性及び耐溶剤性を与える水分散性ポリウレタン組成物を提供するものである。
Claims (5)
- ジイソシアネート(a0)を必須成分とし、他のポリイソシアネート化合物(a’)を任意成分として含有してなるポリイソシアネート成分(a)、
ポリオール成分(b)、
下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物を一種類以上含む改質剤成分(c)、
ジカルボン酸ジヒドラジド化合物(d0)を必須成分とし、ポリアミン化合物(d’)を任意成分として含有してなる鎖延長剤成分(d)、及び
水(h)
から得られる水分散型ポリウレタン組成物。
- さらに、メラミン化合物(f)を含んで得られる請求項1又は2に記載の水分散型ポリウレタン組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の水分散性ポリウレタン組成物を含有してなるノンクロム処理金属塗料。
- 請求項1に示されたポリイソシアネート成分(a)、ポリオール成分(b)、鎖延長剤成分(d)、必要に応じて加えられる請求項2に示されたシラン化合物(e)、及び必要に応じて加えられる請求項3に示されたメラミン化合物(f)を使用して、下記(イ)、(ロ)又は(ハ)の方法によるノンクロム処理金属塗料用水分散型ポリウレタン組成物の製造方法。
ポリイソシアネート成分(a)、ポリオール成分(b)及び必要に応じて用いられるメラミン化合物(f)からプレポリマーを合成して、このプレポリマー組成物に改質剤成分(c)を加え、これを水中で鎖延長剤成分(d)及び必要に応じて用いられるシラン化合物(e)を反応、分散させる方法(イ);
ポリイソシアネート成分(a)、ポリオール成分(b)、必要に応じて用いられるシラン化合物(e)及び必要に応じて用いられるメラミン化合物(f)からプレポリマーを合成して、このプレポリマー組成物に改質剤成分(c)を加え、これを水中で鎖延長剤成分(d)を反応、分散させる方法(ロ);
ポリイソシアネート成分(a)、ポリオール成分(b)、鎖延長剤成分(d)、シラン化合物(e)、メラミン化合物(f)からポリマーを合成して、このポリマー組成物に改質剤成分(c)を加え、これを水中にフィードして分散させる方法(ハ)
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