JP5252583B2 - Mg合金およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、Mg合金およびその製造方法に関し、特に変形の等方性を高めたMg合金およびその製造方法に関する。
Mg合金は、軽量で室温および高温での強度が得られ、耐食性も優れているため、種々の用途への適用が進められている。しかし、構造物としての靭性や塑性加工性を高めるために延性を向上させる必要があった。
例えば、特開2002−256370号公報には、Mg100−a−bLn、LnはY,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Tb,Lu,ミッシュメタルのうちの1種以上、MはAl,Znのうちの1種以上、0.5≦a≦5、0.2≦b≦4、1.5≦a+b≦7であって、結晶粒径を2000nm(=2μm)未満としたことにより、高強度かつ高延性を得ることが提案されている。しかし、Zn含有量1at%より大ではMg中への固溶限を超えるのでMg−Zn系金属間化合物が生成し、高延性を実現できない虞がある。
また、特開平5−306424号公報には、MgbalLn(ここで、XはZn,Ni,Cuの少なくとも1種、LnはY,La,Ce,ミッシュメタルの少なくとも1種、1≦a≦10、1≦b≦20であって、結晶粒の平均径5μm以下、金属間化合物の平均粒子径5μm以下としたことにより、強度、靭性、二次加工性を兼備させることが提案されている。
特開平7−3375号公報には、MgZn(ここでXはY,Ce,La,Nd,Pr,Sm,ミッシュメタルの1種以上、87at%≦a≦98at%、b、cは図1に示す範囲内、0≦Y≦4.5at%、0≦Ce,La,Nd,Pr,Sm,ミッシュメタル≦3at%であって、微結晶から成る母相にMg−Zn系およびMg−X系の金属間化合物が分散した組織とすることにより、高強度および高靭性を得ることが提案されている。
国際公開WO2004/085689には、Znをaat%含有し、La,Ce、ミッシュメタルから成る群から選択される少なくとも1種の希土類元素を合計でbat%含有し、残部がMgから成り、aとbは下記式(1)〜(3):(1)0.2≦a≦3.0、(2)0.3≦b≦1.8、(3)−0.2a+0.55≦b≦−0.2a+1.95を満たすことにより、高強度・高靭性を得ることが提案されている。
特開2005−113235号公報には、Mg100−a−bZn(ここでa/12≦b≦a/3、1.5≦a≦10であって、時効析出相としてのMg3Zn6Y1準結晶とその近似結晶が微細粒子の形態で分散した組織とすることにより、高温強度を高めることが提案されている。
特開2006−2184号公報には、1〜8wt%の希土類元素、1〜6wt%のCaを含むMg基合金であって、Mgの最大結晶粒径が30μm以下、金属間化合物の最大粒径が20μm以下でありMgの結晶粒内および結晶粒界に分散した組織とすることにより、室温での強度と延性、200℃付近での高温強度、疲労強度を高めることが提案されている。
しかし、上記のいずれにおいても引張変形と圧縮変形の強度および延性の差については何ら配慮がなされていない。
本発明は、引張変形と圧縮変形における強度および延性を同等のレベルに揃えたことにより高強度と高延性とを兼備するMg合金およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、第1観点によれば、本発明のMg合金は、Y:0.1〜1.5at%および残部:Mgおよび不可避的不純物から成る化学組成を有し、Y濃度が平均濃度よりも高い高Y領域がナノオーダーのサイズおよび間隔で分散しているミクロ組織を有することを特徴とする。
本発明のMg合金を製造する方法は、上記化学組成を有する合金を熱間加工した後に等温熱処理することにより上記ミクロ組織を形成することを特徴とする。
本発明のMg合金は、上記規定した化学組成およびミクロ組織により、Mg六方晶の底面に沿った方向以外での変形が可能になり、引張変形と圧縮変形での降伏強度が揃うため、高い延性を実現できる。
本発明の方法は、上記化学組成のMg合金に熱間加工および等温熱処理を施して上記ミクロ組織を形成することにより、上記本発明のMg合金を製造することができる。
第2の観点によれば、本発明のMg合金は、Y:0.1at%超および残部:Mgおよび不可避的不純物から成る化学組成を有し、Y濃度が平均濃度よりも高い高Y領域がナノオーダーのサイズおよび間隔で分散しているミクロ組織を有し、かつ、平均再結晶粒径が下記式1:
式1:−0.87c+1.10<logd<1.14c+1.48
ただし、c:Y含有量(at%)
d:平均再結晶粒径(μm)
を満たす範囲内であることを特徴とする。
第2の観点において、Y含有量が0.6at%超であって、平均再結晶粒径が下記式2:
式2:−0.55c+1.20<logd<1.13c+0.93
を満たす範囲内であることが望ましい。
第2観点において、平均結晶粒径が下記式3:
式3:logd>−0.31c+0.92
を満たす範囲内であることが更に望ましい。
第2観点において、平均結晶粒径が下記式4:
式4:−0.31c+1.22<logd<−2.60c+6.14
を満たす範囲内であることが最も望ましい。
図1は、本発明のMg−0.6at%合金について、押出し・熱処理材の押出し方向に平行な断面の走査電子顕微鏡(SEM)写真をおよび電子線後方散乱回折(EBSD)により解析した結果を示す。
図2は、本発明のMg−0.6at%合金について、アトムプローブ観察を行なった結果を示す。
図3は、本発明のMg−0.6at%合金について、熱間押出し材および熱間押出し・熱処理材の引張試験および圧縮試験における公称応力−公称ひずみ線図を示す。
図4は、本発明のMg合金および比較合金について、熱間押出し・熱処理材の圧縮試験における公称応力−公称ひずみ線図を示す。
図5は、第2観点の発明について、Y濃度(c)と平均再結晶粒度(d)との種々の組合せの点をプロットし、各組合せにより得られた降伏応力比(B/A)を各プロットに付記したグラフである。ここで、Bは圧縮降伏応力、Aは引張降伏応力である。
図6は、第2観点の発明について、Y濃度(c)と平均再結晶粒度(d)との種々の組合せの点をプロットし、各組合せにより得られた圧縮破断ひずみを各プロットに付記したグラフである。
本発明者は、第1観点において、Mgに0.1〜1.5at%のYを添加し、熱間加工および等温熱処理を施して、Y濃度が平均濃度よりも高い高Y領域がナノオーダーのサイズおよび間隔で分散しているミクロ組織を形成することにより、引張変形と圧縮変形での降伏強度を揃えることができ、高い変形等方性を達成できることを新規に知見して本発明を完成させた。
本発明の方法において、熱間加工の温度とひずみ量および熱処理の各温度は、その結果として上記のミクロ組織が得られる温度であれば良く、特に限定する必要はない。一般に、熱間加工温度は、素材全体にわたって、均一で微細な再結晶粒を形成させるために300℃以上であることが望ましいが、加工に伴うひずみを蓄積させるために450℃以下とすることが望ましい。熱間加工のひずみ量は初期組織を均一に微細化するために、相当塑性ひずみ3以上が望ましい。熱処理の温度は等軸な結晶粒を成長させるために熱間加工温度以上であることが望ましいが、Y濃度の粗密領域を形成させるために450℃以下とすることが望ましい。
従来のAZ31に代表される展伸用Mg合金においては、常温付近での塑性変形は、原子の最密配列面すなわちMg六方晶のいわゆる底面内での転位の運動によるすべり変形によって行なわれている。このように底面に沿った方向以外でのすべり変形が起き難いと、特に圧縮変形においては双晶の発生による変形が起き易い。すなわち、圧縮変形では転位によるすべり変形に優先して双晶発生による変形が起きる。具体的には応力−ひずみ線図において降伏強度および降伏後の加工硬化率が、引張変形時に比べて圧縮変形時に低下する現象が生ずる。
このように引張変形と圧縮変形とで変形挙動が異なるいわゆる変形の異方性が生じると、Mg合金から成る3次元構造物に外力が作用した際、圧縮応力の作用部位で双晶変形が生じるため引張応力作用部位よりも低応力で変形を開始し、低い応力かつ小さいひずみで破壊の起点となる変形双晶が発生し、一部の変形双晶で変形が集中するために急激な応力増加の後、小さいひずみで破壊に至る。
そのため従来は、Mg合金の強度特性が結局のところ圧縮時の変形特性によって変形量が限定されてしまうのが実態であった。
本発明のMg合金においては、引張変形と圧縮変形における変形挙動、特に降伏強度を揃えて変形の等方性を達成するために、Y:0.1〜1.5at%および残部:Mgおよび不可避的不純物から成る化学組成と、Y濃度が平均濃度よりも高い高Y領域がナノオーダーのサイズおよび間隔で分散しているミクロ組織とを規定した。
本発明においては、変形の等方性の指標として下記(1)(2)の2つの特性値を用い、これらが同時にそれぞれの規定条件を満たす場合に、変形等方性が良好であると判定した。
(1)降伏応力比≧0.6
圧縮変形時の降伏応力と引張変形時の降伏応力との比である「降伏応力比」を用い、その値が0.6以上であること。
(2)公称圧縮ひずみ≧0.4
圧縮変形での延性の指標として「公称圧縮ひずみ」を用い、その値が0.4以上であること。
これらの規定条件を同時に満たすためには、Y含有量を0.1〜1.5at%とする必要がある。
以下に具体的な実施例により、変形等方化の機構を含め本発明を更に詳細に説明する。
第1観点の発明の実施例を説明する。
<合金の作製>
イットリウム(Y)と純マグネシウム(Mg)(純度99.95%)をアルゴン雰囲気にて完全に溶解し、鉄製鋳型に鋳込み、Y含有量が0.1at%、0.3at%、0.6at%、1.0at%、1.2at%、1.5at%、2.2at%である7種類のMg−Y合金を作製した。Y含有量0.1at%〜1.5at%は本発明の範囲内の発明例であり、Y含有量2.2at%は本発明の範囲外の比較例である。表1に、実施例1〜6、比較例1として各々示した。なお、表1にはY以外の元素としてAl、Zn、Liとの合金も比較例2〜6として示した。比較例1〜6の合金も実施例1〜6の合金と同様に、以下に示す手順および条件にて作製した。
得られた鋳造合金を、温度500℃にて24時間炉中保持(大気雰囲気)後に水冷することにより、溶体化処理を施した。
その後、機械加工により、直径40mm、長さ70mmの円柱材とした。
この円柱材を表1に示す各押出し温度に保持したコンテナ内(大気中)で30分間保持した後、押出し比25:1にて押出しによる強ひずみ熱間加工を行なった。断面減少率から求めた平均相当塑性ひずみは3.7となる。
この押出し材を温度400℃の炉中に24時間等温保持した後、炉外で空冷した。
<組織の観察>
図1に、本発明例の代表として実施例3のMg−0.6at%合金について、得られた押出し・熱処理材の押出し方向に平行な断面の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。図示したように、結晶粒組織は加工によるフロー組織の無い等軸粒組織であった。また、電子線後方散乱回折(EBSD)により解析した結果、集合組織は認められず、個々の結晶粒の方位はランダムであった。この結果から、結晶粒サイズすなわち数μm〜数10μmのオーダーで等方性の高い組織であることが分かる。上記の組織状態は他の実施例についても同様であった。
従来の典型的な展伸用Mg合金であるAZ31では、圧延、鍛造、押出しなど熱間加工を行なうと、結晶格子の最密原子配列面(六方晶の底面)が加工方向に平行に配向した集合組織を形成する傾向が強く、変形の異方性を助長していた。これに対して本発明の合金は、上記のように熱間押出しのままの状態でも結晶粒組織が等軸粒組織であり、加工に起因した集合組織も観察されず、変形の等方性を達成するのに有利な組織状態が得られている。なお、本実施例では、熱間加工を押出しにより行なったが、圧延や鍛造などの熱間加工方法を用いても良い。
更に、Mg−0.6at%合金について、アトムプローブ観察を行なった結果を図2に示す。図中、明灰色(ほぼ白色)の斑点は、Yが平均濃度0.6at%より高い1.0at%以上の高Y領域であり、数nmオーダーのサイズの高Y領域が数nmオーダーの間隔で分布していることが認められる。なお、図2には、典型的な観察例として実施例3のMg−0.6at%合金について、1.0at%Y以上の高Y領域を示したが、他の実施例のいずれの場合も平均濃度より50%程度以上高い高Y領域と、逆に平均濃度より50%程度低い低Y領域とが、数nmオーダーのサイズおよび間隔で交互に分布していることが観察された。また更に詳細な観察により、いずれの実施例についても、このようなナノオーダーの高Y領域は、結晶粒内に均一分布している一方、結晶粒界では分布密度が高いことも分かった。
<静的引張試験および静的圧縮試験>
作製した実施例1〜6、比較例1〜6のMg合金について、上記押出し・熱処理材から採取した試験片について、室温にてひずみ速度1×10−3/secで静的な引張試験および圧縮試験を行なった。
図3に、本発明例の典型例として、実施例3のMg−0.6at%Y合金の上記引張試験および圧縮試験における公称応力−公称ひずみ線図を示す。押出したままの状態では引張変形T0と圧縮変形C0の降伏応力XT0とXC0とに大差があるが、押出し後に熱処理した状態では引張変形THと圧縮変形CHの降伏応力XTHとXCHとの差は顕著に低減しており、変形異方性が大幅に軽減されている。また、図3に実施例1〜6、比較例1について圧縮試験のみについて公称応力−公称ひずみ線図を示す。引張および圧縮の両試験結果をまとめて表1に示す。
表1の結果から、Y含有量が0.1at%〜1.5at%の範囲内にある実施例1〜6は、降伏応力比(=圧縮降伏応力/引張降伏応力)が0.6以上、圧縮破断ひずみが0.4以上であり、変形の等方性が高い。なお、1.2at%Yおよび1.5at%Yの実施例5および実施例6については、降伏応力比が1.0に近い変形等方性が確保されている。
これに対して、Y含有量が本発明の範囲外である比較例1およびY以外との合金である比較例2〜6では、いずれも降伏応力比が0.6未満、圧縮破断ひずみが0.4未満であり、変形の等方性が劣る。
<衝撃圧縮試験>
熱間押出し・熱処理材から試験片を採取し、室温にて歪み速度1.3×10/secで衝撃圧縮試験を行なった。公称歪み27%まで圧縮荷重を負荷したが、試験片の側面にはクラックなどが生じずに、一様変形した。
以上の実施例で示したように本発明のMg合金において、高い変形等方性が達成されたのは下記の機構によると考えられる。
原子サイズの大きいYが濃化したナノオーダーの高Y領域の存在により結晶格子が著しく歪むため、六方晶の底面を転位が移動する際に高Y領域を通過することが困難になる。その結果、底面でのすべりが優先的に起きることが無くなり、底面以外の結晶面でのすべり系が活動する。
図1に示すように結晶粒径が10μm以上と粗大であることから、変形初期(公称ひずみ15%程度まで)には結晶粒内に[10−12]双晶を容易に形成し、変形初期の変形能を発現する。これに対して、上記のように変形の自由度が増加することにより、変形の中期には結晶粒内で転位のクロススリップが起き易くなり、転位同士の相互作用から亜結晶粒界が形成され、さらにその粒界角度が増加することから、転位の局在化を抑制することになり、従来の展伸用Mg合金に見られた著しい加工硬化が抑制される。
圧縮変形と引張変形による降伏応力の異方性を起こす原因は圧縮変形における双晶の発生であった。したがって、すべり変形方向の増加により、双晶の発生が変形開始時に低減される本発明の合金においては、引張と圧縮における変形挙動の相違が大幅に軽減または完全に解消され、降伏応力の等方性が著しく高まる。
更に、上記のように双晶発生を防止するナノオーダーの高Y領域の分布による格子ひずみは、同時に、すべり変形を担う転位の運動に対する抵抗として機能するから、合金の強化機構として非常に有効に作用する。ここで作用する強化機構は、結晶粒内における格子ひずみによる粒内強化だけでなく、高Y領域が粒内より高密度で分布している結晶粒界の強化にも有効に作用し、粒界破壊の防止により合金の延性向上に寄与する。もちろん、粒界強化は高温でのクリープ強度の向上にも効果的である。
第2観点の発明の実施例を説明する。
実施例Iと同様の手順および条件により表2に示す各組成のMg−Y合金を作製した。押出温度は表2に示す各温度を用いた。実施例Iと同様にして、平均再結晶粒径(μm)、引張降伏応力(A)、圧縮降伏応力(B)、降伏応力比(B/A)、圧縮破断ひずみを測定した。結果をまとめて表2に示す。
また、図5および図6に、Y濃度(c)と平均再結晶粒度(d)との種々の組合せの点をプロットし、各組合せにより得られた降伏応力比(B/A)および圧縮破断ひずみをそれぞれ各プロットに付記した。
図5中の領域(1)は、Y濃度(c)が0.1at%超であって、降伏応力比(B/A)が0.84超の高い値を達成できる範囲であり、下記式1:
式1:−0.87c+1.10<logd<1.14c+1.48
ただし、c:Y含有量(at%)
d:平均再結晶粒径(μm)
を満たす範囲である。
図5中の領域(2)は、Y濃度(c)が0.6at%超であって、降伏応力比(B/A)が0.93超の更に高い値を達成できる範囲であり、下記式2:
式2:−0.55c+1.20<logd<1.13c+0.93
ただし、c:Y含有量(at%)
d:平均再結晶粒径(μm)
を満たす範囲である。
また、図6中の領域(1)は、圧縮破断ひずみが0.20超の高い値を達成できる範囲であり、下記式3:
式3:logd>−0.31c+0.92
ただし、c:Y含有量(at%)
d:平均再結晶粒径(μm)
を満たす範囲である。
図6中の領域(2)は、圧縮破断ひずみが0.35超の高い値を達成できる範囲であり、下記式4:
式4:−0.31c+1.22<logd<−2.60c+6.14
ただし、c:Y含有量(at%)
d:平均再結晶粒径(μm)
を満たす範囲内である。
実施例IIで示したように、Y濃度(c)と平均再結晶粒径(d)との適切な組み合わせにより、極めて高い降伏応力比および圧縮破断ひずみを達成できる。
本発明によれば、引張変形と圧縮変形における強度および延性を同等のレベルに揃えたことにより高強度と高延性とを兼備するMg合金およびその製造方法が提供される。
本発明のMg合金は、結晶粒内の変形自由度の増加および結晶方位分布のランダム化が達成される。そのため、従来のマグネシウム合金では達成されていなかった変形の等方性、すなわち、圧縮および引張り変形時の降伏応力を近づけることが可能となる。
従って、本発明のMg合金から成る展伸材(板材・棒材・パイプ)を用いて構成する3次元構造物に外力が作用した場合、素材の変形が等方に近づくことにより、局所的に作用する圧縮荷重および引張荷重について、同等の強さを示すことになる。従来のMg展伸材では、一般的に圧縮降伏応力が引張降伏応力よりも低いため、荷重に対する構造物の強さが圧縮側の降伏応力に左右されるという欠点があったが、本発明のMg合金はこの弱点を克服している。
上述の変形の等方性により、本発明のMg合金では、高速変形や衝撃荷重に対しても高い変形能を示す。従って、衝撃荷重が作用するような自動車用衝撃吸収材や構造材としての適用が可能となる。

Claims (6)

  1. Y:0.1at%超かつ3.0at%以下および残部:Mgおよび不可避的不純物から成る化学組成を有し、Y濃度が平均濃度よりも高い高Y領域がナノオーダーのサイズおよび間隔で分散しているミクロ組織を有し、かつ、平均再結晶粒径が下記式1:
    式1:−0.87c+1.10<logd<1.14c+1.48
    ただし、c:Y含有量(at%)
    d:平均再結晶粒径(μm)
    を満たす範囲内であることを特徴とするMg合金。
  2. 請求項1において、等軸粒組織であり且つ集合組織がないことを特徴とするMg合金。
  3. 請求項1または2において、Y含有量が0.6at%超であって、平均再結晶粒径が下記式2:
    式2:−0.55c+1.20<logd<1.13c+0.93
    を満たす範囲内であることを特徴とするMg合金。
  4. 請求項1から3までのいずれか1項において、平均結晶粒径が下記式3:
    式3:logd>−0.31c+0.92
    を満たす範囲内であることを特徴とするMg合金。
  5. 請求項4において、平均結晶粒径が下記式4:
    式4:−0.31c+1.22<logd<−2.60c+6.14
    を満たす範囲内であることを特徴とするMg合金。
  6. 請求項1から5までのいずれか1項に記載のMg合金の製造方法であって、請求項1記載の化学組成を有する合金を熱間加工した後に等温熱処理することにより請求項1記載のミクロ組織を形成することを特徴とするMg合金の製造方法。
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