JP5245208B2 - 多孔性金属錯体の製造方法 - Google Patents

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Description

この発明は、多孔性金属錯体の製造方法、多孔性金属錯体、吸着材、分離材、ガス吸着材及び水素吸着材に関する。
近年、燃料電池車両に搭載するための固体高分子型燃料電池の開発競争が活発に繰り広げられている。このような燃料電池車両の実用化のために、低コスト、軽量で、かつ吸蔵密度の高い水素吸蔵材料を用いる効率的な水素吸蔵方法の開発が望まれている。
そこで、金属イオンと有機配位子からなる二次元格子構造を単位モチーフとして三次元的に積層した骨格構造を有する多孔性の有機金属錯体を用いた水素吸蔵材料が提案され(特許文献1、特許文献2参照)、メタン、窒素、水素などのガス吸着材として注目されている。中でも特に安息香酸、トルイル酸などのモノカルボン酸化合物を有機配位子に用いた多孔性の有機金属錯体がガス吸蔵材として好適であることが見出されている(特許文献3、非特許文献1、非特許文献2参照)。モノカルボン酸化合物を用いた有機金属錯体は圧力、温度などの外部環境に応じて柔軟に構造が変化する。このように柔軟な骨格構造を持つ金属錯体は、選択吸着性があり、ガス吸蔵材として好適である。
特開2001−348361号公報 米国特許出願公開第2003/0004364号明細書 特開2003−342260号公報 森和亮、大村哲賜、佐藤智彦,「カルボン酸金属錯体の気体吸蔵とその応用」,ペトロテック(PETROTECH),社団法人石油学会,2003年,第26巻,第2号,p.105−112 松田亮太郎、北川進,「新しい結晶性多孔質物質「金属錯体ポーラス材料」の構造と機能」,日本結晶学会誌,日本結晶学会,2004年,第46巻,第1号,p.53−58
しかしながら、有機配位子となるモノカルボン酸化合物は、有機金属錯体を得るためには使用される溶媒への溶解度が低く、溶媒必要量が多くなる。一度に合成できる量が限られ、これを増やそうとすると多量の溶媒を必要とする。また、モノカルボン酸化合物は金属塩との反応性が低く、有機金属錯体を得るためには長い反応時間が必要である。この反応時間を短くするために反応温度を上げると副反応が多くなり、目的とする有機金属錯体の収率が低くなることがある。中間体が不安定な化合物では、収率の低下がより顕著に見られ、コスト、量産性の点で問題がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明に係る多孔性金属錯体の製造方法は、中心金属とカルボキシレート基を有する有機配位子とを備える金属錯体の三次元的多孔性骨格構造からなる多孔性金属錯体の製造方法であって、有機配位子の塩をモノカルボン酸金属塩として調製する工程と、中心金属の塩を第2の金属塩として調製する工程と、モノカルボン酸金属塩及び第2の金属塩を反応させる工程と、を備え、上記反応においては、ピラジンが加えられ、モノカルボン酸金属塩は、安息香酸ナトリウム又は安息香酸カリウムであり、前記中心金属は、Cu又はRhであることを特徴とする。
本発明に係る多孔性金属錯体は、上記本発明に係る多孔性金属錯体の製造方法により得られたことを特徴とする。
本発明に係る吸着材は、上記本発明に係る多孔性金属錯体を含むことを特徴とする。
本発明に係る分離材は、上記本発明に係る多孔性金属錯体を含むことを特徴とする。
本発明に係るガス吸着材は、上記本発明に係る多孔性金属錯体を含むことを特徴とする。
本発明に係る水素吸着材は、上記本発明に係るに係る多孔性金属錯体を含むことを特徴とする。
本発明によれば、モノカルボン酸金属塩は、モノカルボン酸よりも解離しやすく、溶解度が高いので、従来に比べて必要溶媒量が少なくてすみ、反応時間も短縮できる。また、モノカルボン酸金属塩が解離しやすいので、金属塩との反応性が高く、反応温度の低下、単位時間当たりの生産性及び収率の増加を期待でき、製造コストを削減できる。
本発明によれば、柔軟な多孔性金属錯体が、効率良く安価に得られる。
本発明によれば、本発明に係る多孔性金属錯体を用いるので、安価な吸着材、分離材、ガス吸着材及び水素吸着材を効率よく得られる。
以下、本発明の実施の形態に係る多孔性金属錯体の製造方法、多孔性金属錯体、吸着材、分離材、ガス吸着材及び水素吸着材を説明する。
図1に、多孔性金属錯体の一例である安息香酸ロジウム(II)−ピラジンの三次元的な結晶構造1を模式的に示す。ここでは、中心金属2の間の結合には、有機配位子と架橋配位子の二種類を配位子として用いている。
この安息香酸ロジウム(II)−ピラジン1は、ロジウムイオンを中心金属2とし、その周りに4つの安息香酸イオンが有機配位子3として配位されている。各安息香酸イオンは1つのカルボキシレート基を有し、このカルボキシレート基の2つの酸素原子を介してロジウムイオンに配位することにより、2つのロジウムイオンを4つの格子点とする環(空隙)が縮合した格子状の2次元構造が形成されている。各有機配位子はπ−π相互作用、水素結合などの比較的弱い結合により結合され、この二次元格子構造を単位モチーフ、つまり、基本的繰り返しパターンとして積層し、各二次元格子構造を架橋配位子4であるピラジンで架橋することにより三次元的多孔性骨格構造が形成される。この構造では、複数の二次元構造の各空隙列が一列に整列するため、一次元のチャネルを複数形成している。
このような構造を有する多孔性金属錯体は、カルボキシレート基を有する有機配位子の塩をモノカルボン酸金属塩として調製し、中心金属の塩を第2の金属塩として調製し、モノカルボン酸金属塩及び第2の金属塩を反応させることによって製造する。この場合には、有機配位子となる化合物を金属塩とすることで化合物が解離しやすくなり、溶媒に対して溶解度が高くなるので、従来に比べて必要溶媒量が少なくてすみ、反応時間も短縮できる。また、モノカルボン酸金属塩及び第2の金属塩は解離しやすいので反応性が高く、反応温度の低下、単位時間当たりの生産性及び収率の増加が期待でき、製造コストを削減できる。
ここで、三次元的多孔性骨格構造を有する多孔性金属錯体の製造方法の一例として、図2(a)に本発明の実施の形態に係る化学反応を、図2(b)に従来例における化学反応を示す。図2(b)に示すように、従来例では有機配位子となる化合物としてモノカルボン酸を用い、溶媒中で中心金属となる金属塩と反応させている。この反応では、溶媒中におけるモノカルボン酸の解離定数が低く溶媒に対する溶解度が低いため、反応終了時間が長く、反応収率も低い。これに対し、図2(a)に示すように有機配位子となる化合物としてモノカルボン酸金属塩を使用した場合には、この化合物は溶媒に易溶であり、容易にイオン化して反応が進む。このため、従来例よりも短時間で反応が終了し、反応収率も従来例と比べて高くなる。なお、この例では、中心金属と有機配位子とからなる二次元格子構造を基本的繰り返しパターンとして積層し、更に有機配位子で架橋することにより三次元的多孔性骨格構造が形成される。
次に、モノカルボン酸金属塩及び第2の金属塩を反応させる際に、中心金属に2座配位可能な架橋配位子を加えた例、つまり、図1で示したように、中心金属の間の結合に有機配位子と架橋配位子の二種類を配位子として用いた多孔性金属錯体(以下、しばしば「多孔性架橋金属錯体」と呼ぶ。)を調製する例として、図3(a)に本発明の実施の形態に係る他の例の化学反応を、図3(b)に他の従来例における化学反応を示す。図3(b)に示すように、従来例では有機配位子となる化合物としてモノカルボン酸を用い、溶媒中で中心金属となる金属塩と反応させている。この反応では、溶媒中におけるカルボン酸の解離定数が低く溶解度が低いため、反応終了時間が長く、反応収率も低い。また、モノカルボン酸と金属塩とを反応させて二次元格子構造からなる金属錯体を形成し、この反応液に更に架橋配位子となる化合物を添加し、架橋金属錯体を形成する2段階の合成法を取る。このため、反応時間が増加し、反応収率が更に低くなる。これに対し、図3(a)に示すように、有機配位子となる化合物としてモノカルボン酸金属塩を使用した場合には、この反応では、中心金属となる銅イオンと安息香酸イオンとから形成される二次元格子構造からなる単位モチーフが形成されると同時に、中心金属に2座配位可能な架橋配位子としてピラジンを加えることにより、ピラジンが二次元格子構造間を架橋して三次元的多孔性骨格構造を形成する。この反応において、有機配位子となる化合物を金属塩とすることで化合物が解離しやすくなり、溶媒に対して溶解度が高くなるため、従来に比べて必要溶媒量が少なくてすみ、反応時間も短縮できる。また、第1及び第2の金属塩は解離しやすいので反応性が高く、反応温度の低下、単位時間当たりの生産性及び収率の増加がを期待でき、製造コストを削減できる。また、モノカルボン酸金属塩、第2の金属塩及び架橋配位子を同時に反応させるため、二次元格子構造からなる金属錯体の形成と同時に架橋配位子による架橋反応が進み、架橋金属錯体が形成する。このように、合成プロセスを1段階に短縮することができ、単位時間当たりの生産性及び収率の増加が期待でき、製造コストを削減できる。
モノカルボン酸金属塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩からなることが好ましい。モノカルボン酸金属塩がアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩である場合には、モノカルボン酸の脱プロトン化と比較して溶媒中でカルボキシレート基と金属イオンに解離しやすい。このため、モノカルボン酸金属塩は、モノカルボン酸よりも解離しやすく、溶解度が高いので、従来に比べて必要溶媒量が少なくてすみ、反応時間も短縮できる。また、モノカルボン酸金属塩が解離しやすいので、金属塩との反応性が高く、反応温度の低下、単位時間当たりの生産性及び収率の増加を期待でき、製造コストを削減できる。配位子に有機配位子、架橋配位子の2種類を用いた場合は、第1及び第2の金属塩は解離しやすいので反応性が高く、合成プロセスを1段階に短縮しても、単位時間当たりの生産性及び収率の増加が期待でき、製造コストを削減できる。
このモノカルボン酸金属塩は、次の一般式(I)
XOOC−R ・・・(I)
(ただし、Rはアルキル基、アルキニル基、アルケニル基又はアリール基を示す。Xはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を示す。)で表されるモノカルボン酸誘導体を含むことが好ましい。この場合、アルキル基、アルキニル基、アルケニル基又はアリール基は置換基を有していても良い。
上記の一般式(I)において、Xは、Na(ナトリウム)又はK(カリウム)を含むことが好ましい。XがNa又はKである場合には、従来に比べ、多孔性金属錯体が効率良く安価に得られる。また、Rはアリール基を含むことが好ましく、アリール基は置換基を有していても良い。
このRは、次の一般式(II)〜(XII)
Figure 0005245208
のいずれか一つで表される置換基を含むことが好ましい。一般式(II)〜(XII)において、*の箇所にはカルボキシレート基が結合し、このカルボキシレート基の酸素原子が中心金属に配位することにより二次元格子構造を形成する。
第2の金属塩は、2〜4価の金属を含む金属群から選択された金属を含むことが好ましく、特に、第2の金属塩は2価の金属を含むことが好ましい。この場合には、第2の金属塩が溶媒で解離して金属がイオン化するため、モノカルボン酸金属塩との反応が促進される。このため、従来に比べ、反応時間も短縮でき、反応温度の低下、収率の増加が可能となる。なお、この第2の金属塩は、Cu、Zn、Mo、Ru、Cr、Ni及びRhを含む金属群から選択された金属を含むことがより好ましい。また、第2の金属塩は、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩及び蟻酸塩を含む金属塩群から選択される金属塩を含むことが好ましい。
モノカルボン酸金属塩の調製は、モノカルボン酸金属塩を第1の溶媒に溶解して第1の溶液を得ることを含み、第2の金属塩の調製は、第2の金属塩を第2の溶媒に溶解して第2の溶液を得ることを含み、反応は、第1及び第2の溶液を混合することを含む。第1及び第2の溶液を混合することにより、モノカルボン酸金属塩が解離すると共に第2の金属塩が解離して金属イオンが生成し、金属錯体が生成する。なお、モノカルボン酸金属塩の調製、第2の金属塩の調製及び反応のいずれか一つは、第1又は第2の溶液に超音波を照射することを含んでいてもよい。この場合には、モノカルボン酸金属塩と第2の金属塩との反応、又はモノカルボン酸金属塩と架橋配位子との反応が促進される。
また、第1及び第2の溶媒の一方は、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’-ジエチルホルムアミド、水、アルコール類、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、アセトン及びアセトニトリルを含む溶媒群から選択された溶媒を含むことが好ましい。アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール等が使用可能である。これらの溶媒は、モノカルボン酸金属塩及び第2の金属塩を溶解するが、目的物である金属錯体を溶解しないため、効率良く目的物を得ることが可能となる。中でも、第1及び第2の溶媒の一方は、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’-ジエチルホルムアミド、水、アルコール類を含む溶媒群から選択された溶媒を含むことが好ましい。また、第1及び第2の溶媒が同じ溶媒でも構わない。
反応は、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、蟻酸ナトリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、炭酸カリウム及び蟻酸カリウムを含む金属塩群から選択された金属塩を副生成物として得ることを含むことが好ましい。これらの副生成物は反応速度が大きいため、モノカルボン酸金属塩と第2の金属塩の反応、又はモノカルボン酸金属塩と架橋配位子と第2の金属塩との反応が促進される。このため、反応時間の低下、反応温度の低下及び反応収率の増加が可能となる。生成した多孔性金属錯体は、8〜10のpHを有することが好ましい。pHが8〜10の範囲にある場合には、モノカルボン酸金属塩及び第2の金属塩が溶媒中で解離しやすくなるため溶媒への溶解度が上がり、反応が促進される。
この多孔性金属錯体の製造方法により生成した多孔性金属錯体は、中心金属とカルボキシレート基を有する有機配位子とを備え、中心金属の周りに有機配位子が配位される。各有機配位子は1つのカルボキシレート基を有し、このカルボキシレート基の2つの酸素原子を介して中心金属に配位することにより、中心金属を格子点とする環(空隙)が縮合した格子状の二次元構造が形成される。各有機配位子はπ−π相互作用、水素結合などの比較的弱い結合により結合され、この二次元格子構造を単位モチーフ、つまり、基本的繰り返しパターンとして積層し、各二次元格子構造の単位モチーフを三次元方向へも積層又は、他の有機化合物で架橋することにより三次元的多孔性骨格構造が形成される。この構造では、複数の二次元構造の各空隙列が一列に整列するため、一次元のチャネルを複数形成する。また、反応において、中心金属に2座配位可能な架橋配位子を加えた場合には多孔性架橋金属錯体が生成する。この多孔性架橋金属錯体は、中心金属とカルボキシレート基を有する有機配位子と中心金属に二座配位可能な架橋配位子を備え、中心金属の周りに有機配位子及び架橋配位子が配位される。各有機配位子は1つのカルボキシレート基を有し、各カルボキシレート基の2つの酸素原子を介して中心金属に配位することにより、中心金属を格子点とする環(空隙)が縮合した格子状の二次元構造が形成される。この二次元格子構造を単位モチーフ、つまり、基本的繰り返しパターンとして積層し、各二次元格子構造を更に架橋配位子で架橋することにより三次元的多孔性骨格構造が形成される。この構造では、複数の二次元構造の各空隙列が一列に整列するため、一次元のチャネルを複数形成する。
この多孔性金属錯体において、二次元格子構造の単位モチーフを積層した三次元的多孔性骨格構造は空隙を画成する骨格部であり、各空隙の細孔径は0.3〜2.0[nm]の大きさである。そして、この細孔径より小さな気体又は液体分子を骨格構造に取り込むことが可能である。また、有機配位子が比較的弱い結合により結合されているため、圧力、熱などの外部環境に応じてその結合がずれることにより骨格構造は可撓性を有した柔軟な構造を形成する。外部からの熱又は圧力によって骨格構造を変形させることにより、空隙は変形可能である。また、この多孔性金属錯体は上記副生成物を残留物として含む。上記副生成物を残留物として含む場合には、出発物質がモノカルボン酸金属塩と第2の金属塩であることが示される。
以上説明した製造方法により、本発明の実施の形態に係る多孔性金属錯体の製造方法では、モノカルボン酸金属塩は、モノカルボン酸よりも解離しやすく、溶解度が高いので、従来に比べて必要溶媒量が少なくてすみ、反応時間も短縮できる。また、モノカルボン酸金属塩が解離しやすいので、金属塩との反応性が高く、反応温度の低下、単位時間当たりの生産性及び収率の増加を期待でき、製造コストを削減できる。配位子に有機配位子、架橋配位子の2種類を用いた場合は、モノカルボン酸金属塩及び第2の金属塩は解離しやすいので反応性が高く、合成プロセスを1段階に短縮しても、単位時間当たりの生産性及び収率の増加が期待でき、製造コストを削減できる。このように、この製造方法により多孔性金属錯体を効率良く安価に得られる。また、この製造方法により得られた多孔性金属錯体を用いて吸着材、分離材、ガス吸着材及び水素吸着材を製造した場合には、従来に比べて効率良く安価に得られる。
以下、実施例1,3〜4,9,11〜12、参考例2,5〜8,10及び比較例1〜2により本発明の実施の形態に係る多孔性金属錯体の製造方法について更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
1.試料の調製
実施例1 安息香酸銅−ピラジンの合成
モノカルボン酸誘導体として安息香酸ナトリウムを、第2の金属塩として酢酸銅を用いた。まず、安息香酸ナトリウム2.10[g]と酢酸銅一水和物2.60[g]を水/メタノール溶液に溶解して攪拌後室温にて18[時間]放置した。析出した固体を吸引濾過により回収し、粗結晶を得た。粗結晶をアセトンに溶解し、ピラジンを加えて室温で6[時間]攪拌し、吸引濾過を行った。その後、100[℃]で2[時間]真空乾燥を行い、目的物である安息香酸銅−ピラジンを得た。
参考例2 ナフトエ酸銅−ピラジンの合成
モノカルボン酸誘導体としてナフトエ酸のイオン交換により合成したナフトエ酸ナトリウムを、第2の金属塩として酢酸銅を用いた。ナフトエ酸ナトリウム2.60[g]と酢酸銅一水和物2.60[g]を水/メタノール溶液に溶解して攪拌後室温にて26[時間]放置した。析出した固体を吸引濾過により回収し、粗結晶を得た。粗結晶をアセトンに溶解し、ピラジンを加えて室温で10[時間]攪拌し、吸引濾過を行った。その後、100[℃]で2[時間]真空乾燥を行い、目的物であるナフトエ酸銅−ピラジンを得た。
実施例3 安息香酸銅−ピラジンの合成
モノカルボン酸誘導体として安息香酸カリウムを、第2の金属塩として酢酸銅を用いた。安息香酸カリウム2.42[g]と酢酸銅一水和物2.60[g]を水/メタノール溶液に溶解して攪拌後室温にて26[時間]放置した。析出した固体を吸引濾過により回収し、粗結晶を得た。粗結晶をアセトンに溶解し、ピラジンを加えて室温で10[時間]攪拌し、吸引濾過を行った。その後、100[℃]で2[時間]真空乾燥を行い、目的物である安息香酸銅−ピラジンを得た。
実施例4 安息香酸ロジウム−ピラジンの合成
モノカルボン酸誘導体として安息香酸ナトリウムを、第2の金属塩として酢酸ロジウム二水和物を用いた。安息香酸ナトリウム2.10[g]と酢酸ロジウム二水和物2.60[g]を水/メタノール溶液に溶解して攪拌後室温にて26[時間]放置した。析出した固体を吸引濾過により回収し、粗結晶を得た。粗結晶をアセトンに溶解し、ピラジンを加えて室温で10[時間]攪拌し、吸引濾過を行った。その後、100[℃]で2[時間]真空乾燥を行い、目的物である安息香酸ロジウム−ピラジンを得た。
参考例5 安息香酸銅の合成
モノカルボン酸誘導体として安息香酸ナトリウムを、第2の金属塩として酢酸銅を用いた。まず、安息香酸ナトリウム2.88[g]と酢酸銅一水和物2.00[g]を水/メタノール溶液に溶解して攪拌後室温にて18[時間]放置した。析出した固体を吸引濾過により回収し、その後、80[℃]で2[時間]真空乾燥を行い、目的物である安息香酸銅を得た。
参考例6 ナフトエ酸銅の合成
モノカルボン酸誘導体としてナフトエ酸のイオン交換により合成したナフトエ酸ナトリウムを、第2の金属塩として酢酸銅を用いた。ナフトエ酸ナトリウム3.88[g]と酢酸銅一水和物2.00[g]を水/メタノール溶液に溶解して攪拌後室温にて24[時間]放置した。析出した固体を吸引濾過により回収し、その後、80[℃]で2[時間]真空乾燥を行い、目的物であるナフトエ酸銅を得た。
参考例7 安息香酸銅の合成
モノカルボン酸誘導体として安息香酸カリウムを、第2の金属塩として酢酸銅を用いた。安息香酸カリウム3.20[g]と酢酸銅一水和物2.00[g]を水/メタノール溶液に溶解して攪拌後室温にて24[時間]放置した。析出した固体を吸引濾過により回収し、その後、80[℃]で2[時間]真空乾燥を行い、目的物である安息香酸銅を得た。
参考例8 安息香酸ロジウムの合成
モノカルボン酸誘導体として安息香酸ナトリウムを、第2の金属塩として酢酸ロジウム二水和物を用いた。安息香酸ナトリウム2.88[g]と酢酸ロジウム二水和物4.78[g]を水/メタノール溶液に溶解して攪拌後室温にて24[時間]放置した。析出した固体を吸引濾過により回収し、その後、80[℃]で2[時間]真空乾燥を行い、目的物である安息香酸ロジウムを得た。
実施例9 安息香酸銅−ピラジンの合成
モノカルボン酸誘導体として安息香酸ナトリウムを、第2の金属塩として酢酸銅を用いた。まず、安息香酸ナトリウム2.88[g]とピラジン0.40[g]と酢酸銅一水和物2.00[g]を水/メタノール溶液に溶解して攪拌後室温にて18[時間]放置した。析出した固体を吸引濾過により回収し、その後、80[℃]で2[時間]真空乾燥を行い、目的物である安息香酸銅−ピラジンを得た。
参考例10 ナフトエ酸銅−ピラジンの合成
モノカルボン酸誘導体としてナフトエ酸のイオン交換により合成したナフトエ酸ナトリウムを、第2の金属塩として酢酸銅を用いた。ナフトエ酸ナトリウム3.85[g]とピラジン0.40[g]と酢酸銅一水和物2.00[g]を水/メタノール溶液に溶解して攪拌後室温にて20[時間]放置した。析出した固体を吸引濾過により回収し、その後、80[℃]で2[時間]真空乾燥を行い、目的物であるナフトエ酸銅−ピラジンを得た。
実施例11 安息香酸銅−ピラジンの合成
モノカルボン酸誘導体として安息香酸カリウムを、第2の金属塩として酢酸銅を用いた。安息香酸カリウム3.20[g]とピラジン0.40[g]と酢酸銅一水和物2.00[g]を水/メタノール溶液に溶解して攪拌後室温にて20[時間]放置した。析出した固体を吸引濾過により回収し、その後、80[℃]で2[時間]真空乾燥を行い、目的物である安息香酸銅−ピラジンを得た。
実施例12 安息香酸ロジウム−ピラジンの合成
モノカルボン酸誘導体として安息香酸ナトリウムを、第2の金属塩として酢酸ロジウム二水和物を用いた。安息香酸ナトリウム2.88 [g]とピラジン0.40[g]と酢酸ロジウム二水和物4.78[g]を水/メタノール溶液に溶解して攪拌後室温にて20[時間]放置した。析出した固体を吸引濾過により回収し、その後、80[℃]で2[時間]真空乾燥を行い、目的物である安息香酸ロジウム−ピラジンを得た。
比較例1 安息香酸銅−ピラジンの合成
モノカルボン酸として安息香酸を用いた。まず、安息香酸1.00[g]と酢酸銅一水和物0.50[g]をジエチレングリコールメチルエステルに溶解し、攪拌後室温にて36[時間]放置した。析出した固体を吸引濾過により回収し粗結晶を得た。粗結晶をアセトンに溶解し、ピラジンを加えて室温で10[時間]攪拌し、吸引濾過を行った。その後、100[℃]で2[時間]真空乾燥を行い、目的物である安息香酸銅−ピラジンを得た。
比較例2 安息香酸ロジウム−ピラジンの合成
モノカルボン酸として安息香酸を用いた。まず、安息香酸1.00[g]と酢酸ロジウム二水和物0.50[g]をジエチレングリコールメチルエステルに溶解し、攪拌後室温にて48[時間]放置した。析出した固体を吸引濾過により回収し粗結晶を得た。粗結晶をアセトンに溶解し、ピラジンを加えて室温で10[時間]攪拌し、吸引濾過を行った。その後、100[℃]で2[時間]真空乾燥を行い、目的物である安息香酸ロジウム−ピラジンを得た。
2.ガス貯蔵能力の測定
実施例1及び参考例2で得られた試料について、ガス貯蔵能力を測定した。測定方法は、JIS H 7201の水素吸蔵放出測定試験に従った。試料を秤量して測定用耐圧試料管に入れ、200[℃]で3[時間]真空引きして試料管内に残留しているガスを放出させて、水素が吸蔵されていない原点を得た後測定を行った。測定温度は25[℃]とした。その後大気圧まで減圧して水素放出量の確認を行った。
3.結晶構造の確認
合成した試料の結晶構造の確認にはマックスサイエンス社製X線回折装置(MXP 18VAHF)を用い、電圧40[kV]、電流300[mA]、X線波長CuKαで測定を行った。
4.組成の確認
合成した試料の組成は、元素分析により確認した。炭素、水素、窒素の確認には、JPI-5S-65-2004を用い、金属元素の確認には、誘導結合プラズマ発光分光分析法を用いた。
実施例1,3〜4,9,11〜12、参考例2,5〜8,10及び比較例1〜2において合成された金属錯体、有機配位子、第2の金属塩、架橋配位子、反応終了時間及び反応の収率を表1に、実施例1及び参考例2で得られた試料の水素吸蔵能を表2に示す。
Figure 0005245208

Figure 0005245208
前述した図3を用いて、実施例9と比較例1の反応について説明する。図3(a)に実施例9における化学反応を、図3(b)に比較例1における化学反応を示す。図3(b)に示すように、比較例1ではカルボン酸としてモノカルボン酸である安息香酸を用い、ジエチレングリコールメチルエステル中で酢酸銅一水和物と反応させている。この反応では、ジエチレングリコールメチルエステル中における安息香酸の解離定数が低く、溶解度が低いため、表1に示すように反応終了時間が46[時間]と長く、その後に安息香酸と酢酸銅との反応物と架橋配位子であるピラジンを反応させていることから、反応収率も48[%]と低い。これに対し、実施例9ではモノカルボン酸誘導体である安息香酸ナトリウムを使用している。安息香酸ナトリウムは水/メタノール溶液に易溶であり、容易にイオン化して反応が進む。また、安息香酸ナトリウム、酢酸銅及び架橋配位子であるピラジンを同時に反応させるため、合成プロセスを1段階に短縮することができ、反応時間が18[時間]と短く、反応収率も85[%]と高かった。
図4に、実施例1、実施例9及び比較例1における反応速度と反応収率との関係を示す。ここで反応速度は、反応時間の逆数を示し、右にいく程反応速度が大きいことを示している。カルボン酸誘導体として金属塩を用いた実施例1と、モノカルボン酸を用いた比較例1とを比較すると、実施例1の反応速度は比較例1の1.9倍であり、反応収率は1.7倍であった。また、カルボン酸誘導体として金属塩を用い、更に、安息香酸ナトリウム、酢酸銅及び架橋配位子であるピラジンを同時に反応させた実施例9と比較例1とを比較すると、実施例9の反応速度は比較例1の2.6倍、反応収率は1.8倍となり、ピラジンを安息香酸ナトリウム及び酢酸銅と同時に反応させたことにより、実施例1よりも更に反応速度が速く、反応収率が良くなった。このように、モノカルボン酸誘導体としてモノカルボン酸金属塩を用い、更に、架橋配位子をモノカルボン酸金属塩の反応と同時に反応させた場合には、モノカルボン酸を使用するよりも反応時間が短かく、収率の増加が可能となることがわかった。
カルボン酸誘導体として安息香酸カリウムを用いた実施例3、第2の金属塩として酢酸ロジウムを用いた実施例4のいずれにおいても比較例1よりも収率が高くなっており、カルボン酸誘導体としてモノカルボン酸金属塩を使用したことによる効果がみられた。カルボン酸誘導体としてナフトエ酸を使用した場合には、参考例2と比較例2で得られた値を比較すると、参考例2は比較例2と比べて反応時間、収率共に1.33倍と高くなっており、ナフトエ酸金属塩を使用したことによる効果がみられた。架橋配位子を用いていない参考例5〜8においても、カルボン酸誘導体としてモノカルボン酸金属塩を用いたことにより、いずれも反応時間が短く、反応収率が高かった。また、架橋配位子をモノカルボン酸金属塩と第2の金属塩とを反応させると同時に反応させた実施例9,11〜12及び参考例10では、実施例1,3〜4及び参考例2よりも更に反応時間が短く、反応収率が高かった。
実施例1の水素吸蔵能は10[MPa]で0.51[wt%]、35[MPa]で0.86[wt%]であり、参考例2の水素吸蔵能は10[MPa]で0.53[wt%]、35[MPa]で0.98[wt%]だった。このように、実施例1及び参考例2で得られた試料は高い水素吸蔵能を有することがわかった。
実施例1,3〜4,9,11〜12、参考例2,5〜8,10及び比較例1〜2の結果より、本発明の実施の形態に係る多孔性金属錯体の製造方法では、モノカルボン酸金属塩はモノカルボン酸と比較して溶媒中で解離しやすく、溶解度が高いため、従来に比べて反応時間の短縮及び収率の増加が可能となることがわかった。また、架橋配位子をモノカルボン酸金属塩と第2の金属塩とを反応させると同時に反応させた場合には、更に反応時間が短く、収率の増加が可能となることがわかった。
以上、本実施の形態について説明したが、上記実施の形態の開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
多孔性金属錯体の三次元構造を示す模式図である。 (a)本発明の実施の形態に係る化学反応の一例を示す図である。(b)従来例における化学反応を示す図である。 (a)本発明の実施の形態に係る他の例の化学反応を示す図である。(b)他の従来例における化学反応を示す。 多孔性金属錯体の製造における反応速度と反応収率との関係を示すグラフである。
符号の説明
1 安息香酸ロジウム(II)−ピラジンの三次元的な結晶構造
2 中心金属
3 有機配位子
4 架橋配位子

Claims (8)

  1. 中心金属とカルボキシレート基を有する有機配位子とを備える金属錯体の三次元的多孔性骨格構造からなる多孔性金属錯体の製造方法であって、
    前記有機配位子の塩をモノカルボン酸金属塩として調製する工程と、
    前記中心金属の塩を第2の金属塩として調製する工程と、
    前記モノカルボン酸金属塩及び第2の金属塩を反応させる工程と、
    を備え、
    前記反応においては、ピラジンが加えられ、
    前記モノカルボン酸金属塩は、次の一般式(I)
    XOOC−R ・・・(I)
    (ただし、Rはアリール基を示し、XはNa又はKを示す。)で表されるモノカルボン酸誘導体を含み、
    前記第2の金属塩は、2〜4価の金属を含む金属群から選択された金属を含み、
    前記モノカルボン酸金属塩は、安息香酸ナトリウム又は安息香酸カリウムであり、
    前記中心金属は、Cu又はRhであることを特徴とする多孔性金属錯体の製造方法。
  2. 前記第2の金属塩は、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩及び蟻酸塩を含む金属塩群から選択される金属塩を含むことを特徴とする請求項1に記載の多孔性金属錯体の製造方法。
  3. 前記モノカルボン酸金属塩の調製は、前記モノカルボン酸金属塩を第1の溶媒に溶解して第1の溶液を得ることを含み、
    前記第2の金属塩の調製は、前記第2の金属塩を第2の溶媒に溶解して第2の溶液を得ることを含み、
    前記反応は、前記第1及び第2の溶液を混合することを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の多孔性金属錯体の製造方法。
  4. 前記モノカルボン酸金属塩の調製、前記第2の金属塩の調製及び前記反応のいずれか一つは、前記第1又は第2の溶液に超音波を照射することを含むことを特徴とする請求項3に記載の多孔性金属錯体の製造方法。
  5. 前記第1及び第2の溶媒の一方は、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’-ジエチルホルムアミド、水、アルコール類、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、アセトン及びアセトニトリルを含む溶媒群から選択された溶媒を含むことを特徴とする請求項3又は4に記載の多孔性金属錯体の製造方法。
  6. 前記第1及び第2の溶媒の一方は、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’-ジエチルホルムアミド、水、アルコール類を含む溶媒群から選択された溶媒を含むことを特徴とする請求項5に記載の多孔性金属錯体の製造方法。
  7. 前記反応は、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、蟻酸ナトリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、炭酸カリウム及び蟻酸カリウムを含む金属塩群から選択された金属塩を副生成物として得ることを含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の多孔性金属錯体の製造方法。
  8. 前記多孔性金属錯体は、8〜10のpHを有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の多孔性金属錯体の製造方法。
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