JP5505773B2 - 異種金属多核錯体およびそれを用いた触媒の製造方法 - Google Patents

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本発明は、イオン性の異種金属多核錯体およびそれを用いた触媒の製造方法に関し、さらに詳しくは複数種類の金属原子を有するイオン性の異種金属多核錯体およびそれを用いた触媒の製造方法に関するものである。
近年の研究によれば、制御されたサイズを有する金属クラスターは、触媒活性等の化学的性質及び磁性等の物理的性質に関して、バルクの金属とは異なる性質を有することが明らかになっている。
この金属クラスターの特異な性質を利用するために、サイズを制御したクラスターを簡便に且つ大量に合成する方法が必要とされている。
一方、サイズを制御したクラスターを得るために現在知られている方法としては、真空中において金属ターゲットを蒸散させて様々なサイズのクラスターを生成させ、このようにして得たクラスターから、マススペクトルの原理を用いてクラスターサイズを分離する方法がある。しかしながらこの方法ではサイズを制御した金属クラスターを簡便に且つ大量に合成することはできない。
貴金属による触媒性能を用いる例としては、自動車用エンジン等の内燃機関から排出される排ガスの浄化を挙げることができる。この排ガスの浄化では、排ガス中に含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)等を、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属を主成分とする触媒成分によって、二酸化炭素、窒素、水、酸素に転化させている。この排ガス浄化の用途では一般に、貴金属である触媒成分をアルミナ等の酸化物製多孔質担体に担持して、排ガスと触媒成分との大きい接触面積を与えるようにしている。
触媒成分である貴金属の酸化物製多孔質担体への担持は、一般に貴金属の硝酸塩又は単一の貴金属原子を有する貴金属錯体の溶液を担体に含浸させて、担体の表面に貴金属化合物を分散させて、次いで溶液を含浸させた担体を乾燥及び焼成することによって行っている。このような方法では、簡便に大量の触媒を調製することは出来るが、金属は単原子分散状態もしくは、適当な加熱・雰囲気制御により粒子成長させた状態であり、任意の構成原子数を有する貴金属クラスターを担持させることはできない。
こうした排ガス浄化触媒においても、貴金属資源枯渇の問題への対応と環境改善に対する要求から排ガス浄化性能のさらなら向上への期待は強く、貴金属をクラスターの状態で担持させることが提案されている。
例えば、特許文献1には、複数の有機多座配位子と複数の貴金属原子からなる多核錯体を担体上に析出させ、次いで有機多座配位子を除去することにより、貴金属クラスター担持触媒を製造する貴金属クラスター担持触媒の製造方法が記載されている。そして、酸化物担体表面上の水酸基と有機多座配位子とを反応させて有機多座配位子を酸化物担体に結合させ、この有機多座配位子を貴金属原子及び他の有機多座配位子と反応させて酸化物担体上に結合した多核錯体を形成し、次いでこの多角錯体の有機多座配位子を例えば大気雰囲気下の加熱で燃焼除去することを含む方法が開示されている。
一方、金属錯体として複数の金属を含む錯体が知られていて、例えば、非特許文献1には、分子中にパラジウムを2つ含みアミドを架橋配位子とする2核錯体、パラジウムを4つ含むアミド架橋4核錯体、2核ロジウムアミド錯体あるいは2核イミド錯体が提案された。
特開2006−55807号公報
錯体化学討論会講演要旨集、2007.9.10、第57巻、第8頁、講演番号1Aa−07「アミド架橋パラジウムクラスターの合成」
しかし、従来公知の金属クラスターでは大量に合成することが不可能であるとか、貴金属錯体を担持する際に錯体中に含まれる金属原子が1種類の金属原子に限られるため異種金属の金属クラスターとはならないとか、また前記特許文献1に記載の水溶性を意図していないため触媒調製時に有機溶媒を必要とし有機溶媒溶液では担体表面との濡れ性が良くないため予め水酸基化する必要があるなど複雑な工程を必要とし、また有機配位子を含むため有機配位子の分解に酸素雰囲気での焼成が必要となり、焼成温度が高すぎると貴金属クラスターサイズに影響を及ぼす恐れがあり、得られる触媒は性能的に焼成条件の影響を受け易い。
従って、本発明の目的は、複数種の金属原子を有していて異種金属クラスターを形成することが可能であって且つ水溶性である金属錯体、およびそのような金属錯体を使用する触媒の製造方法を提供することである。
本発明は、複数種類の異種の金属原子を有するイオン性の異種金属多核錯体であって、式:
[M1 M2 n+n−
[式中、M1、M2はPt、PdおよびRhから選ばれる少なくとも2種であって、2価の配位子であるAはNR基(Rは水素、メチル基、エチル基又はプロピル基である。)であり、Dは1価の配位子であり、Xn−は対イオンであり、p、qは1以上の整数であり、a、bは各々偶数であり、nは1〜3の整数である。]
で示される、前記錯体に関する。
さらに、本発明は、前記の異種金属多核錯体を含む水溶液に多孔質担体を含浸する触媒の製造方法に関する。
本発明によれば、複数種の金属原子を有していて異種の金属クラスターを形成することが可能であって且つ水溶性である金属錯体を得ることができる。
また、本発明によれば、複数種の金属原子を有する異種金属多核錯体が水溶性であるため、溶媒として水を用いて異種金属クラスターを含む触媒を調製し得る。
図1は、実施例3で得られた錯体4の単結晶構造解析の結果を示す図である。 図2は、実施例4で得られた錯体のMSスペクトル図である。 図3は、実施例4で得られた錯体のNMRスペクトル図である。
本発明の実施態様によれば、複数種類の異種金属原子を有するイオン性の異種金属多核錯体によって、異種金属多核錯体がイオン性であるため水溶性である。
また、本発明の実施態様によれば、複数種の金属原子を有するイオン性の異種金属多核錯体によって金属錯体がイオン性であるので水溶性であり溶媒として水を用いて触媒調製することができ、特に複数個の金属原子が窒素含有基で架橋されているので窒素含有化合物を加熱により除去可能である。
従来の技術によれば、ある元素に着目した場合、クラスター(原子の集合体)のサイズにより触媒活性などの化学的特性や磁性などの物理的特性が変化し得る。
このクラスターの特異的な性質を利用するために、サイズを制御したクラスターを簡便に且つ大量に合成する方法が望まれているが、現在試みられているサイズを制御したクラスターを生成する方法としては真空中で金属ターゲットを蒸発させて様々なサイズのクラスターを生成させた後、MASS(MSと略記する場合もある)スペクトルの原理を用いてクラスターサイズを分離する方法であり大量に作ることは不可能である。また、触媒の調製法として利用されている錯体を用いる方法では、簡便に大量の触媒を調製することはできるが、金属は単原子分散状態若しくは適当な加熱・雰囲気制御により粒子成長させるため、異種金属により構成される金属原子や組成を有するクラスターを担持し得ない。
このように、従来技術によるクラスター調製では、装置の制約上、安価且つ大量にクラスターを合成することは不可能である。例えば、従来公知の錯体、例えばテトラアンミンPd、硝酸Pdを担持する方法では、錯体中に含まれる金属原子数が1原子であるためクラスターとはなり得ない。また、従来公知の錯体を利用して2種類の錯体を混合しても、錯体金属同士の化学結合が出来ないため、合金クラスターを作ることが困難である。
また、複数の金属を含む錯体であっても、錯体化合物が分子中に有機配子を含むため、錯体が水に溶け難く、配位子を分解するために酸素共存下で焼成する必要があり焼成温度が高すぎるとクラスターサイズに悪影響を及ぼし得る。
これに対して、本発明の異種金属多角金属錯体は、複数種類の異種金属原子を有し且つイオン性であり、アニオンである対イオン(以下、単に対イオンと略記する)を選択することにより水に可溶な化合物とし得る。また、本発明の異種金属多角金属錯体によれば複数種の金属元素が複合化した合金クラスターを化学的に合成し得るため、従来技術により得られる材料の特性を大幅に上回る、従来の材料にはない特性を有する材料の創製を可能とし得る。
以下、本発明について、本発明の実施態様である下記の化学式で表わされる異種金属多角金属錯体を用いて説明する。
本発明の実施態様である異種金属多角金属錯体の一例としては、下記の化学式:
Figure 0005505773
Figure 0005505773
で示される2種類の異種金属多核錯体が挙げられる。
前記の本発明の実施態様の異種金属多角金属錯体は、異種金属原子が異種貴金属元素、Pd、PtがNH基で架橋された貴金属多核錯体であり、貴金属原子を複数個有する貴金属クラスターを化学的に合成することを可能とし得る。また、複数種の金属元素が複合化した金属クラスターを化学的に合成することを可能とし得る。
また、前記の異種金属多角金属錯体を触媒の調製に用いると、対イオンを選択することにより水に可溶な化合物とし、触媒調製時の溶媒として水を用いることを可能とし得る。また、錯体をカチオンとして触媒の担体である金属酸化物表面に吸着させることが可能となり、さらに配位子としてNH基を用いて貴金属同士を結合しているため、この錯体を担体に担持した後に酸素共存下での焼成を必要とせず加熱するだけで配位子の除去が容易である。さらに、配位子がNH基であるため工業ベースの利用を考慮するとコスト面においても優れている。
本発明の異種金属多核錯体の化合物は、式:[M1M2n+ n− M1、M2は各々異なる金属原子であり、Aは2価の配位子でありDは1価の配位子であり、 n− 対イオンであり、p、qは1以上の整数で、a、bは各々偶数であり、nは1〜3の整数である。)で示すことが出来る。
前記のイオン性の異種金属多核錯体を構成する異種金属としては、遷移金属であれば特に制限はなく、例えばチタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金(Pt)及び金から選ばれる少なくとも2種の金属であってよく、特にPd、PtおよびRhから選ばれる2種が好適である。
また、前記の異種金属原子は2価の配位子(前記一般式ではAで表される)、例えば2価の窒素含有基、好適にはNR基(RはH又はアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基などである)などで架橋されていて、さらに、複数の金属は1価の配位子(前記一般式ではDで表される。)、例えば1価の窒素含有基、好適にはNR’〔R’はH又はアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基など又はピリジン基(化学式中、Pyで示される)である〕と結合されていることが好ましい。前記の2価の配位子として、特にはNH基を、1価の配位子として特にはNH基、ピリジン基を挙げることができる。
また、前記のイオン性の異種金属多核錯体における金属原子の数は合計で2以上、好適には2〜100、特に2〜10である。
本発明における異種金属多核錯体化合物の対イオンとしては、B[C(CF 、B( 、Y(Yはハロゲン原子である。)、OH、AlCl 、AlBr 、GaCl 、PF 、AsF 、SbCl 、SbF などが挙げられるが、製造時の有機溶媒への溶解性の高さからB[C(CF 、B( が好ましい。
本発明のイオン性の異種金属多核錯体は、分子中に2個以上の異種金属原子を有するイオン性錯体で且つ水溶性であり、セラミック系の基材である多孔質担体表面によって吸着可能で担体表面に特別な処理、例えばOHを付ける前処理をすることなく担体表面に前記イオン性の異種金属多核錯体を吸着させて、加熱のみによって配位子を除去して異種金属クラスターを形成可能であり、触媒活性向上の観点から好適である。しかしながら、多孔質担体表面を予め前処理することによってこの発明のイオン性の異種金属多核錯体との接着性を改良しても構わないことは当然である。
本発明におけるイオン性の異種金属多核錯体化合物は、例えば、有機溶媒中、第1の金属、たとえばPtと1価の配位子と2価の配位子とリチウムと対イオンとを有する第1の金属化合物と、第2の金属、例えばPdとピリジン基と対イオンとを有する第2の金属化合物とを接触させて、ピリジンおよびリチウムの対イオン化合物を除くことによって2種の金属化合物を結合させることにより、第1の金属、第2の金属、1価の配位子と2価の配位子および対イオンを有するイオン性の異種金属多核錯体化合物として得ることができる。この反応を順次続けることによって、または第1の金属化合物と第2の金属化合物との組み合わせを選択することによって、前記の式:[M1M2n+ n− における任意のp、qを有するイオン性の異種金属多核錯体を得ることができる。
前記の有機溶媒としては、特に制限はなく例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテルなどのエーテル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンセン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、N−メチル2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミドなど、あるいはこれらの少なくとも1種とn−ヘキサン(単に、ヘキサンと略記する場合がある)などの炭化水素との混合溶媒を挙げることができる。
また、前記の反応は、溶媒の凝固点以上で25℃以下の温度、好適には−95〜25℃で、2〜24時間攪拌下に行うことができる。
反応終了後、溶媒に不溶な固体を除去し、溶媒を留去することにより又は再結晶することによって結晶として得ることができる。
本発明のイオン性の異種金属多核錯体の化学構造は、後述の実施例の欄に測定法について詳細に記載される核磁気共鳴(以下、NMRと略記する。)分析によるHチャート、後述の実施例の欄に測定法について詳細に記載される質量分析(以下、MSと略記する)分析および元素分析から分子量および各配位子が、後述の実施例の欄に測定法について詳細に記載される単結晶のX線構造解析に基いたORTEP図から複数の異種金属原子を含むカチオン(例えば、前記式:[M1M2n+ n− から n− が取れた式:[M1M2n+で示されるカチオン)が特定される。
また、MSチャートにより、イオン性錯体のn個の対イオン n− の1個のXが脱離した1価のカチオン(式:[M1M2n+ (n−1)−)のm/z(mはイオンの質量数を、zはイオンの価数を示す。)が特定される。
これらの分析結果から、イオン性の異種金属多核錯体の化学構造が明らかになる。
例えば、本発明の1実施態様である実施例1で得られたイオン性の異種金属多核錯体化合物のMSチャートにより、2核のイオン性の異種金属多核錯体化合物は2個の対イオンのうち1個が脱離した1価のカチオンのm/z=1203であり、本発明の1実施態様である実施例2で得られたイオン性の異種金属多核錯体化合物の3核のイオンの異種金属多核錯体化合物は2個の対イオンのうち1個が脱離した1価のカチオンのm/z=1307である。
そして、前記の3核イオン性の異種金属多核錯体(前記式からXn−が取れた式:[M1M2 n+で示される)の一例のORTEPを示す図1から、前記のイオン性の異種金属多核錯体は1個のPd原子と2個のPt原子とが同一平面に配置されていることがわかる。
これらの結果から、本発明の実施態様であるイオン性の異種金属多核錯体は、各々前記の化学構造を有することを確認することができる。
本発明のイオン性の異種金属多核錯体を含む水溶液に多孔質担体を含浸する触媒の製造方法、特に排ガス浄化触媒の製造方法としては、本発明の各(p+q)核イオンの異種金属多核錯体の水溶液を酸化物担体に含浸させた後、好適には不活性雰囲気下に加熱し、乾燥・焼成して、多孔質担体上に金属クラスターを担持させる方法を挙げることができる。
前記の多孔質担体としては、特に制限はなく、例えば基材内に多数の微細な気孔を有する、コージェライト、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素等の、耐熱性を有するセラミック材料からなるハニカム基材を用いることが好ましく、優れた耐熱性と低い熱膨張係数を有するコージェライトハニカムを用いることが好ましい。このハニカム基材は、両端が開口した多数のセルを有するものが好ましい。また、ハニカム基材のセル壁に存在する気孔は実質的に非貫通孔であることが好ましく、セル壁が40〜75%の気孔率と10〜50μmの気孔径を有するものを用いることが好ましい。
前記の多孔質担体は表面に多数の活性点、例えばOH基、O基等の官能基や突起などの欠陥部を有しており、この発明のイオン性の異種金属多核錯体を含む水溶液で処理することにより、活性点にイオン性の異種金属多核錯体のカチオンが化学的又は物理的に吸着され、後処理の不活性雰囲気下での乾燥・焼成工程によって金属クラスターを形成することができる。
良好な触媒活性を与えるp+q核数を有するイオン性の異種金属多核錯体は、例えば前記の金属蒸散―MS法によって種々の数の金属クラスター数を形成して別途に求めた担体上の金属クラスター数と触媒活性との関係を示す図から求められる良好な触媒活性を与える金属クラスター数を予め求めておき、イオン性の異種金属多核錯体におけるp+q核数と金属クラスターの数との関係を求めることによって、良好な触媒活性を与えるp+q核数を有するイオン性のp+q核数の異種金属多核錯体を決定することができる。
以下、本発明の実施例を示す。
以下の実施例は単に説明するためのものであり、この発明を限定するものではない。
以下の各例において、分析は以下に示す測定機器で行った。
NMR:VARIAN−MERCURY300−C/H(VARIAN社)
MS:JEOL SX−203(JEOL社)
元素分析:Parkin−Elmer 2400(Parkin−Elmer社)
X線結晶構造解析:PAXIS−RAID(Rigaku社)
ORTEP:単結晶についてのPAXIS−RAID(Rigaku社)によるX線結晶構造解析に基く
IR測定:JASCO FT−IR4100(日本分光社)
参考例1
[Pt(NH][B(C(1)の合成
[Pt(NH]Cl・HO(991mg、2.82mmol)の水溶液(30mL)に室温(25℃)でLi[B(C](5.53g、5.63mmol)の水溶液(60mL)を加えて1時間攪拌した。生じた固体をろ別し、THF(30mL)で洗浄してから、硫酸マグネシウムで乾燥した。再度ろ別し、真空乾燥することにより、1・4.3THF(下記の化学式1の物質に平均で4.3個のTHFが溶媒和したもの)が無色の結晶性固体として得られた。収量は2.48g(収率88%)であった。
化合物1のNMR、MSおよびIR測定結果を次に示す。
H NMR(CDCN):d3.36(br、12H、NH
MS(FAB):m/z942{(1−[B(C]}
IR(nujol):3356(br)、1516(s)、1274(m)、1084(m)、979(s)cm−1
参考例1の反応を下記の化学式に示す。
Figure 0005505773
参考例2
[Pd(CN)][B(C(2)合成
[Pd(NH][B(C・4.6THF(2.00g、1.07mmol)をピリジン(10mL)に溶解し、80℃で10時間攪拌した。溶媒を留去し、残った固体をTHF/ヘキサン(10mL/40mL)で再結晶して2・THF(下記の化学式2の物質に1個のTHFが溶媒和したもの)が無色の結晶として得られた。収量は1.51g(収率76%)であった。
化合物2のMS、NMRおよびIR測定結果を次に示す。
722840OPdとしての計算値:C,46.67;H,1.52;N,3.02 測定値:C,46.69;H,1.33;N,2.87
H NMR(CDCN):d7.52(m,8H,py),7.98(m,4H,py),8.73(m,8H,py)
MS(FAB):m/z1101{(2−[B(C]}
IR(nujol):1644(m)、1610(w)、1515(s)、1275(m)、1090(m)、1090(m)、1058(w)、977(s)、757(m)cm−1
参考例2の反応を下記の化学式に示す。
Figure 0005505773
実施例1
[(NHPt(m−NHPd(CN)][B(C(3)の合成
1・4.3THF(100mg、0.052mmol)のTHF溶液(5mL)を−95℃に冷却し、n−BuLi(2.64Mヘキサン溶液、41μL、0.11mmol)を加えた後、激しく攪拌しつつ3時間かけて徐々に室温まで戻した。反応液を再び−95℃に冷却し、2・THF(96mg、0.052mmol)のTHF溶液(5mL)を加え、激しく攪拌しつつ12時間かけて室温まで戻した。無色であった反応液は黄色へと変化した。溶媒を留去し、残った固体を水(30mL)で洗浄してからTHF(10mL)に溶解させ、硫酸マグネシウムで乾燥した。固体をろ別後に溶媒を留去することにより、3・THF・0.5pyridineが薄黄色の結晶性固体として得られた。収量は89mg(収率89%)であった。
化合物3のNMR、MSおよびIR測定結果を次に示す。
H NMR(CDCN):d−0.70(br,4H,m−NH),2.84(br,6H,NH),7.45(m,4H,py),7.91(m,2H,py),8.48(m,4H,py)
MS(FAB):m/z1203{(3−[B(C]}
IR(nujol):3635(br)、3292(w)、1644(m)、1515(s)、1276(m)、1087(m)、977(s)cm−1
実施例1の反応を下記の化学式に示す。
Figure 0005505773
実施例2
[(NHPt(m−NHPd(m−NHPt(NH][B(C(4)の合成(3と1からの合成)
1・4.3THF(72mg、0.037mmol)のTHF溶液(5mL)を−95℃に冷却し、n−BuLi(2.64Mヘキサン溶液、30μL、0.079mmol)を加えた後、激しく攪拌しつつ3時間かけて徐々に室温まで戻した。反応液を再び−95℃に冷却し、3・THF・0.5pyridine(80mg、0.037mmol)のTHF溶液(5mL)を加え、激しく攪拌しつつ12時間かけて室温まで戻した。溶媒を留去し、残った固体を水(30mL)で洗浄してからTHF(10mL)に溶解させ、硫酸マグネシウムで乾燥した。固体をろ別後に溶媒を留去することにより、4・3.7THFが薄黄色の結晶性固体として得られた。収量は72mg(収率86%)であった。
化合物4のMS、NMRおよびIR測定結果を次に示す。
522840OPdPtとしての計算値:C,30.33;H,1.37;N,5.44 測定値:C,30.31;H,1.32;N,5.17
H NMR(CDCN):d−1.61(br,8H,m−NH),2.69(br,12H,NH
MS(FAB):m/z1307(4−[B(C]}
IR(nujol):3680(w)、3623(w)、3369(br)、3289(w)、3174(br)、1645(m)、1515(s)、1275(m)、1084(m)、977(s)cm−1
また、実施例2の反応を下記の化学式に示す。
Figure 0005505773
実施例3
[(NHPt(m−NHPd(m−NHPt(NH][B(C(4)の合成(1と2からの1ポット合成)
1・4.3THF(1.01g、0.52mmol)のTHF溶液(10mL)を−95℃に冷却し、n−BuLi(2.64Mヘキサン溶液、417μL、1.10mmol)を加えた後、激しく攪拌しつつ3時間かけて徐々に室温まで戻した。反応液を再び−95℃に冷却し、2・THF(485mg、0.262mmol)のTHF溶液(10mL)を加え、激しく攪拌しつつ12時間かけて室温まで戻した。溶媒を留去し、残った固体を水(50mL)で洗浄後THF/ヘキサン(10mL/40mL)から再結晶して4を黄色針状結晶として得られた。収量は500mg(収率96%)であった。
得られた錯体化合物4の単結晶構造解析結果を図1に示す。
実施例3の反応を下記の化学式に示す。
Figure 0005505773
実施例4
[PtPd(NHNH][B(C(5)の合成
Pt錯体化合物1(279mg、0.150mmol)をTHF5mLに溶解させ、−95℃に冷却した。n−BuLi溶液159μL(2.64Mヘキサン溶液、0.420mmol)を滴下し、2.5時間攪拌した。この間、温度は室温まで上昇し、反応液は白濁した。再び−95℃に冷却し、Pd錯体化合物2(191mg、0.100mmol)のTHF溶液(2.5mL)を滴下した。溶液は黄色の溶液となった。攪拌しつつ約2時間かけて室温まで戻した。その後、溶液を一晩攪拌した。反応液の一部を採取し、H NMRを測定した結果、5核錯体化合物:[PtPd(NH(NH][B(Cと3核錯体化合物:[PtPd(NH(NH][B(Cのシグナルが観測された。両生成物の生成比は5核:3核=8:3であった。なお、このことから、得られた反応液には5異核錯体化合物と3異核錯体化合物との混合物が含まれているが、他の成分は存在せず且つ分子量が大きく異なるので液体クルマトグラフィーで容易に分離可能であり、5を単一生成物として取得するのは容易であると推定した。
生成物(5核:3核=8:3)のNMRおよびMS測定結果を次に示す。
[PtPd(NHNH][B(Cに対する H NMR(500MHz、CDCN):d2.69(br,12H,NH),−1.64(br,8H,m−NH),−2.04(br,8H,m−NH
[PtPd(NHNH][B(Cに対するFAB−MS(2−nitrophenyl Octyl ether中):m/z1673({[PtPd((NHNH][B(C]}
実施例4の反応を下記の化学式に示す。
Figure 0005505773
(式中、[B]は[B(C]を示す)
また、実施例4で得られた生成物のMSスペクトル図を図2に、NMRスペクトル図を図3に示す。
図2において942m/zのピークは下記の金属錯体を示す。
Figure 0005505773
図2において1307m/zのピークは下記の金属錯体を示す。
Figure 0005505773
図2において1673m/zのピークは下記の金属錯体を示す。
Figure 0005505773
本発明のイオン性の異種金属多核錯体によれば、溶媒として水を用いて触媒調製が可能となり、特に異種の金属原子がNHで架橋されているものは異種金属多核錯体を不活性雰囲気下で加熱により除去可能であり、高性能の触媒を得ることが可能となる。

Claims (6)

  1. 複数種類の異種の金属原子を有するイオン性の異種金属多核錯体であって、式:
    [M1 M2 n+n−
    [式中、M1、M2はPt、PdおよびRhから選ばれる少なくとも2種であって、2価の配位子であるAはNR基(Rは水素、メチル基、エチル基又はプロピル基である。)であり、Dは1価の配位子であり、Xn−は対イオンであり、p、qは1以上の整数であり、a、bは各々偶数であり、nは1〜3の整数である。]
    で示される、前記錯体。
  2. 前記1価の配位子であるDが、NH 基又はピリジン基である請求項1に記載の異種金属多核錯体。
  3. 前記NR 基が、NHある請求項1に記載の異種金属多核錯体。
  4. 金属原子数が2〜100である請求項1〜3のいずれか1項に記載の異種金属多核錯体。
  5. 前記対イオンがB(C 、Y(Yはハロゲン原子である。)又はOHある請求項1〜4のいずれか1項に記載の異種金属多核錯体。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の異種金属多核錯体を含む水溶液に多孔質担体を含浸する触媒の製造方法。
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