JP5238002B2 - 有機性排水処理装置および処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、下水、産業排水等の有機性排水を、メタン発酵処理した後に好気性生物処理する有機性排水処理装置および有機性排水処理方法に関する。
産業排水などの高濃度の有機性排水を、メタン発酵処理した後に好気性生物処理する技術は、従来の好気性生物処理を単独で行なう技術と比較すると、(1)汚泥発生量が少ない、(2)メタンガスを回収し熱エネルギーとして有効利用できる、等のメリットがあり、近年普及している。メタン発酵処理方法としては、特にUASB(Up-flow Anaerobic Sludge Blanket)法が普及している。しかし、UASB法を適用する場合、一般的には排水の有機物濃度はCODcr2000mg/L以上が対象となる。これは、有機性排水の有機物濃度が低いと、メタン発酵を担う微生物の活性を維持するために、UASB槽内の温度を最適温度(35℃)にする加温エネルギ−をメタン発酵処理で発生するバイオガスで賄うことができなくなることや、グラニュール汚泥の維持のため通水速度を0.5〜2.0m/hに維持すること、などの制約条件があるためである。
一方で、ブラジル、インド、東南アジア等の温暖化地域においては、下水などの低濃度の有機性排水(例えばCODcr400〜1000mg/L)をUASB処理するケースがみられるようになってきた。図14に低濃度の有機性排水をメタン発酵処理および好気性生物処理する装置201の例を示す。まず、UASB槽10’でUASB処理を行い、排水中の易分解性有機物をメタンガスに分解し回収する。UASB処理水2には、UASB処理では分解できない有機物が残存する。そのため、後段の反応槽20’と沈殿池30を用いて好気性生物処理を行い、これらの残存有機物を仕上げ処理する。なお、低濃度の有機性排水は、高濃度の有機性排水に比べて同一有機物量(濃度×水量)において水量が多くなる。そのため、低濃度の有機性排水をUASB処理した場合、発生するCH、COガスがUASB処理水2中に溶存する量は、高濃度の有機性排水に比べて多くなる。その結果、UASB処理水2が大気と接触していると、溶存メタンの一部は大気中に放散される(図15参照)。また、後段の好気性生物処理において、反応槽20’を構成する曝気槽21aから残存する溶存メタンが曝気空気とともに大気中に放散される(図16参照)。
図17に、水温と水に対するメタンの溶解度との関係を示す。ここでのメタンと二酸化炭素の分圧は前者が0.75atm、後者が0.25atmである。水温が低くなるとメタンの水に対する溶解度は高くなる。水温20℃における水に対するメタンの溶解度は24.8(mL−CH/L−水)である。生活排水(CODcr400mg/L)を20℃でHRT10hにて処理した場合、発生メタンガスの40〜60%がUASB処理水に溶存メタンとして溶解することになる。メタンガスは強力な温室効果ガスの一つとして知られており、その温室効果はCOの約21倍であると言われている。溶存メタンの放散による地球温暖化に与える影響は大きい。
溶存メタンを扱う従来技術として、特許文献1に開示された技術がある。特許文献1では、溶存メタン含有排水に含まれる溶存メタンを物理的作用である物質移動作用により効率良く回収できる方法、および装置を提供している。すなわち、気相中に配置した多孔質性の保水部材の上部から溶存メタン含有排水を供給して気液接触させ、該溶存メタン含有排水から気相への物質移動作用により、前記溶存メタン含有排水に含まれる溶存メタンをガス化して回収する溶存メタン回収方法、および装置を提供する。この従来技術では、低コストで溶存メタンを回収できる。
特開2008−168264号公報
上記のとおり、メタン発酵処理水中の溶存メタンが大気中に放散するのを防止する必要性は高い。しかし、特許文献1の従来技術では、物理的な気液放散操作を行なっているため、溶存メタンの回収率を高めようとすると、吹込空気量が増えて回収するメタンガスの濃度が低くなり、別途排ガスの処理が必要となる。
そこで本発明は、メタン発酵処理により発生し、メタン発酵処理水中に溶存したメタンを、大気中に放散することなく容易に処理できる有機性排水処理装置および有機性排水処理方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様に係る有機性排水処理装置101は、例えば図1〜3に示すように、有機性排水をメタン発酵処理するメタン発酵処理槽10と;メタン発酵処理槽10で処理されたメタン発酵処理水2を好気性生物処理する、浸漬型の反応槽20と、反応槽20中の混合液3を固液分離する固液分離装置30とを備える。メタン発酵処理槽10は、該メタン発酵処理槽10中のメタン発酵処理水2に溶存したメタンが大気中に放散するのを防止する蓋部11と、前記溶存メタンが大気中に放散するのを防止した状態を保ちながら、メタン発酵処理水2を反応槽20に供給する供給部13とを有する。
なお、「有機性排水」は、食品工場排水のような高濃度有機性排水であっても、生活排水のような低濃度有機性排水であってもよい。本明細書において、「高濃度有機性排水」とは、CODcr値が1000mg/L以上の排水をいい、「低濃度有機性排水」とは、CODcr値が1000mg/L以下の排水をいう。これは、溶存メタンの影響が大きい有機性排水の濃度範囲として定義したものである。「放散するのを防止する」とは、放散を完全に防ぐ場合に限られず、放散を抑制する場合も含まれる。「メタン発酵処理槽」とは、ORPが−330mV以下の範囲で嫌気的処理をする槽をいう。「好気性生物処理する反応槽」とは、ORPが+50mV〜100mV以上の範囲で好機的処理をする槽をいう。
このように構成すると、メタン発酵処理により生じたメタンであって、メタンガスとして回収されずに処理水中に溶存するメタンが、メタン発酵処理槽外に放散するのを防ぐことができる。さらに、該溶存メタンを、大気中に放散することなく反応槽に移送し、該反応槽において、二酸化炭素と水に酸化分解することができる。
なお、低濃度有機性排水を処理した場合のメタン発酵処理水は、高濃度有機性排水を処理した場合のメタン発酵処理水に比べて、より多くの溶存メタンを含む。よって、本発明は、低濃度有機性排水に対してより高い効果を奏する。例えば、CODcr値が400〜1000mg/Lの流入下水に効果的である。
本発明の第2の態様に係る有機性排水処理装置102は、上記本発明の第1の態様に係る排水処理装置101において、例えば図4〜7に示すように、反応槽40は、脱窒処理をする無酸素槽41と好気性生物処理する好気槽21bを有する。無酸素槽41と好気槽21bは、好気槽21bで処理された好気性処理水が、好気槽21bから無酸素槽41内に流入する構成を有する。メタン発酵処理槽10が有する供給部13は、メタン発酵処理水2を無酸素槽41に供給する。
なお、本明細書において、「好気性処理水」とは、反応槽(好気槽または曝気槽)において好気性生物処理された処理水を指す。「無酸素槽」とは、ORPが−50mV〜−200mVの範囲で生物学的窒素除去法において脱窒素を行うために分子状酸素はないが、硝酸イオンなどの結合型酸素は存在している状態(無酸素性の状態)である槽をいう。「好気槽」とは、ORPが50mV〜100mV以上(特に硝化反応が伴う場合は+200mV〜400mV)の範囲で好気的処理をする槽をいう。
このように構成すると、メタン発酵処理水に含まれる溶存メタンが、放散により失われることなく反応槽に移送される。反応槽の好気槽では、硝化菌によりNH−NがNO−N、NO−Nに酸化され、硝化液が生成される。溶存メタンを含むメタン発酵処理水と硝化液を無酸素槽に流入させることにより、無酸素槽では、溶存メタンの酸化により生じた中間生成物(メタノ−ル等)を脱窒処理の水素供与体として利用し、硝化液を脱窒処理することができる。このように、溶存メタンを脱窒処理に有効活用することができる。
通常、生物学的窒素処理では、含有するアンモニアを好気槽で硝化し亜硝酸や硝酸に変換する。その後、無酸素槽で亜硝酸や硝酸を脱窒処理し、窒素ガスが除去される。この脱窒処理は、排水中に含まれる有機物中の水素供与体を利用して行われる。しかし、メタン発酵処理後のメタン発酵処理水に含まれる有機物は少ない。そのため、メタン発酵処理水を生物学的窒素処理しようとすると、無酸素槽において脱窒処理に利用する水素供与体が不足する。本発明は、この水素供与体不足を解消し、無酸素槽における脱窒処理を良好に行なうことができる。
本発明の第3の態様に係る有機性排水処理装置103は、上記本発明の第2の態様に係る排水処理装置102において、例えば図8、9に示すように、メタン発酵処理槽10の下流であって、反応槽40の上流に設けられた溶存メタン回収槽70を備える。溶存メタン回収槽70は、溶存メタン回収槽70内のメタン発酵処理水2に、二酸化炭素、窒素、空気、不活性ガスの内の1の気体または2以上の混合気体を吹き込む気体吹込装置71と、前記気体の吹き込みにより回収されたメタンガスを無酸素槽41に供給する供給部72を有する。
このように構成すると、溶存メタン回収槽に二酸化炭素、窒素、空気、不活性ガスといったメタンガス以外の気体を吹き込むことにより、溶存メタンをメタン発酵処理水から追い出し、メタンガスとして回収することができる。さらに、溶存メタンの場合は、無酸素槽に供給するメタンの量はメタン発酵処理水の量で決まってしまうのに対し、メタンガスとして回収した場合は、無酸素槽に供給するメタンの量を調節することができる。
本発明の第4の態様に係る有機性排水処理装置103は、上記本発明の第2の態様に係る排水処理装置102において、例えば図8、10に示すように、メタン発酵処理槽10の下流であって、反応槽40の上流に設けられた溶存メタン回収槽80を備える。溶存メタン回収槽80は、高低差によりメタン発酵処理水2を自然流下させ、前記自然流下に起因する脱気により回収したメタンガスを無酸素槽41に供給する供給部82を有する。
このように構成すると、メタン発酵処理水の自然流下により、溶存メタン回収槽内に負圧が生じる。これにより、溶存メタンがメタン発酵処理水から脱気するので、メタンガスとして回収することができる。さらに、溶存メタンの場合は、無酸素槽に供給するメタンの量はメタン発酵処理水の量で決まってしまうのに対し、メタンガスとして回収した場合は、無酸素槽に供給するメタンの量を調節することができる。
本発明の第5の態様に係る有機性排水処理装置104は、上記本発明の第2の態様に係る排水処理装置102において、例えば図11に示すように、メタン発酵処理水2が、メタン発酵処理槽10から無酸素槽41まで移動する際にメタン発酵処理槽10内に生ずる気相部を吸引する吸引装置46をさらに備える。吸引装置46は、前記気相部を吸引することにより回収したメタンガスを無酸素槽41に供給する供給部47を有する。
このように構成すると、吸引装置46の吸引により、メタン発酵処理槽10内がより負圧となり、メタン発酵処理水に溶存するメタンが、槽外に放散するのをより防止できる。さらに、溶存メタンの場合は、無酸素槽に供給するメタンの量はメタン発酵処理水の量で決まってしまうのに対し、メタンガスとして回収した場合は、無酸素槽に供給するメタンの量を調節することができる。
本発明の第6の態様に係る有機性排水処理装置105は、上記本発明の第1の態様に係る排水処理装置101において、例えば図12に示すように、メタン発酵処理槽10の下流であって、反応槽20の上流に設けられたメタン酸化槽90を備える。メタン酸化槽90は、メタン酸化菌が固定化された担体を有する。
このように構成すると、メタン酸化槽内に固定化したメタン酸化菌を有することができる。そのため、メタン酸化菌の量を多くすることができ、結果としてメタンを酸化する槽の大きさをコンパクトにできる。
本発明の第7の態様に係る有機性排水処理装置106は、上記本発明の第1の態様に係る排水処理装置101において、例えば図13に示すように、メタン発酵処理槽10の下流であって、反応槽20の上流に設けられたメタン酸化槽90を備える。メタン酸化槽90は、メタン酸化菌が固定化された担体を有し、反応槽20で処理され固液分離装置30で固液分離された好気性処理水4を槽内に流入させる流入部を有する。
このように構成すると、メタン酸化槽90では、メタン発酵処理水中に含まれる溶存メタンが好気性処理水中に含まれる溶存酸素により酸化される。さらに、好気性処理水中に含まれる硝化により生じた硝酸や亜硝酸が、溶存メタンの酸化により生じた中間生成物(メタノ−ル等)の存在により良好に脱窒処理される。
本発明の第8の態様に係る有機性排水処理方法は、例えば図1に示すように、有機性排水1をメタン発酵処理するメタン発酵処理工程と;前記メタン発酵処理工程で処理されたメタン発酵処理水2に溶存したメタンを好気性生物処理する生物処理工程と;前記メタン発酵処理工程後、前記メタンが大気中に放散するのを防止した状態でメタン発酵処理水2を前記生物処理工程に供給する工程とを備える。
このように構成すると、メタン発酵処理工程により生じたメタンであって、メタンガスとして回収されずに処理水中に溶存するメタンが、大気中に放散するのを防ぐことができる。さらに、該溶存メタンを、大気中に放散することなく生物処理工程に移送し、該生物処理工程において、二酸化炭素と水に酸化分解することができる。
本発明の第9の態様に係る有機性排水処理方法は、上記本発明の第8の態様に係る排水処理方法において、例えば図4に示すように、前記生物処理工程は、脱窒処理をする脱窒処理工程と好気性生物処理する好気処理工程とを有する。前記生物処理工程は、好気処理工程での好気性処理水を脱窒処理工程に供給する工程を有する。メタン発酵処理水2を前記生物処理工程に供給する工程では、メタン発酵処理水2を前記生物処理工程の脱窒処理工程に供給する。前記好機処理工程では、メタン発酵処理水2に含まれるアンモニアから硝化液を生成する。前記脱窒処理工程では、前記メタン発酵処理水中の溶存メタンの酸化により生じた有機物を用いて、前記硝化液を脱窒処理する。
このように構成すると、メタン発酵処理水に含まれる溶存メタンが、放散により失われることなく脱窒処理工程に移送される。好気処理工程では、硝化菌によりNH−NがNO−N、NO−Nに酸化され、硝化液が生成される。溶存メタンを含むメタン発酵処理水と硝化液を脱窒処理工程に移送することにより、脱窒処理工程では、溶存メタンの酸化により生じた中間生成物(メタノ−ル等)を脱窒処理の水素供与体として利用し、硝化液を脱窒処理することができる。このように、溶存メタンを脱窒処理に有効活用する方法となる。
本発明によれば、メタン発酵処理により発生し、メタン発酵処理水中に溶存したメタンを、大気中に放散することなく容易に処理することができる。よって、メタンが大気中に放散するのを防止して、地球温暖化対策に貢献することができる。
本発明の第1の実施の形態に係る有機性排水処理装置101の構成図である。 UASB槽10の概略図である。 反応槽20および沈殿池30の概略図である。 本発明の第2の実施の形態に係る有機性排水処理装置102の構成図である。 反応槽40および沈殿池30の概略図である。 反応槽50および沈殿池30の概略図である。 反応槽60および沈殿池30の概略図である。 本発明の第3の実施の形態に係る有機性排水処理装置103の構成図である。 溶存メタン回収槽70の概略図である。 溶存メタン回収槽80の概略図である。 本発明の第4の実施の形態に係る有機性排水処理装置104の構成図である。 本発明の第5の実施の形態に係る有機性排水処理装置105の構成図である。 本発明の第6の実施の形態に係る有機性排水処理装置106の構成図である。 有機性排水をメタン発酵処理および好気性生物処理する従来の装置201の構成図である。 従来のUASB槽10’の概略図である。 従来の反応槽20’および沈殿池30の概略図である。 水温と、メタンの水に対する溶解度との関係を示すグラフである。 実施例1〜4、比較例1〜4で用いた流入下水性状の表(表1)を示す図である。 実施例1、比較例1の実験条件の表(表2)を示す図である。 実施例1、比較例1の実験結果の表(表3)を示す図である。 実施例2、比較例2の実験条件の表(表4)を示す図である。 実施例2、比較例2の実験結果の表(表5)を示す図である。 実施例3、比較例3の実験条件の表(表6)を示す図である。 実施例3、比較例3の実験結果の表(表7)を示す図である。 実施例4、比較例4の実験条件の表(表8)を示す図である。 実施例4、比較例4の実験結果の表(表9)を示す図である。 実施例5、比較例5の実験条件の表(表10)を示す図である。 実施例5、比較例5の実験結果の表(表11)を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一または相当する部分には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。また、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。特に、メタン発酵処理には、UASB法、固定床法、流動床法のいずれも適用できる。以下の実施の形態では、メタン発酵処理に最も適しているUASB法を例にとり説明する。
本発明の有機性排水処理装置および有機性排水処理方法は、メタン発酵処理で回収されずに処理水中に溶存するメタンが大気中に放散されるのを防ぐという目的を、溶存メタンがメタン発酵処理槽外に放散するのを防止した状態で溶存メタンを後段の好気性生物処理に移送し、好気性生物処理において処理するという構成により実現した。
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る有機性排水処理装置101について説明する。有機性排水処理装置101は、メタン発酵処理槽としてのUASB槽10、反応槽20、固液分離装置としての沈殿池30を備える。図1に示すように、有機性排水1は、まず、UASB槽10においてメタン発酵処理される。次に、メタン発酵処理水としてのUASB処理水2は、反応槽20において好気性生物処理される。反応槽20から流出する混合液3は、沈殿池30において固液分離され、上澄液(好気性処理水4)は塩素滅菌等が施された後放流される。
図2にUASB槽10を示す。UASB槽10は、上部に蓋部11を有し、内部にGSS(気固液分離部)12を有する。さらに、UASB処理水2を移送するための、供給部としての配管13を有する。UASB槽10では、有機性排水1中の易分解性有機物が、メタン発酵微生物群で構成される汚泥床14にてメタンガスと二酸化炭素に分解される。発生したメタンガス等は、GSS12を経由して回収され、有効利用される。
しかし、一部のメタンガスはUASB処理水2中に溶け込み、溶存メタンとして存在する。この溶存メタンは、UASB処理水2表面から放出して、大気中に放散する可能性がある。このため、UASB槽10は、上部に蓋部11を有し、溶存メタンがUASB槽10内から大気中に放散するのを防止する。なお、蓋部11は、UASB槽10を完全に密閉してもよく、または、溶存メタンが大気中へ放散するのを防止することを妨げない程度の隙間のある密閉であってもよい。すなわち、蓋部11は、UASB槽10内のガスが槽外へ流出するのを防止できればよく、槽内が負圧の場合等、槽外から槽内に大気が流入する隙間があってもよい。具体的には、蓋部11としてUASB槽10の上部をボルトで固定した蓋で覆ってもよい。
さらに、UASB処理水2は、溶存メタンが大気中に放散するのを防止した状態で反応槽20に移送される。すなわち、図2に示すように、UASB槽10の有する配管13を経由して、UASB処理水2は大気と接触することなく反応槽20に移送される。このように、UASB槽10は、UASB処理水2中に含まれる溶存メタンが槽外に放散するのを防ぎながら、UASB処理水2を反応槽20に移送することができる。なお、UASB槽10の供給部として、配管13に替えて蓋を備えた水路を用いてもよい。また、UASB槽10と反応槽20を隣接させて設置した場合、供給部は、UASB処理水2がUASB槽10から流出する部位となる。
反応槽20には、浸漬型処理槽を用いることが好ましい。「浸漬型」とは、処理槽内に処理液を満たした状態で、空気、酸素富化空気、または純酸素等を供給して、好気性生物処理する活性汚泥処理や生物膜処理を意味する。すなわち、処理反応が処理液中に浸漬した状態で行なわれる処理法をいう。浸漬型の好気性生物処理の具体例としては、浮遊性好気性生物処理(連続式活性汚泥処理、回分式活性汚泥処理、オキシデ−ション法、生物膜処理等)、流動床型生物処理(包括固定化法、結合固定化法等)が挙げられる。
したがって、例えば、散水ろ床のような、ろ材に処理液を散水させて大気中の酸素と接触させる生物膜処理は含まない。散水ろ床のような処理の場合、処理槽内における気体の占める割合が高いため(ろ材以外の空間における気液の比率は、気体が60〜95%、液体が40〜5%)、UASB処理水2に含まれる溶存メタンが、メタン酸化菌により分解される前に、物理的に容易にUASB処理水2から放散し、大気中に排出されてしまう。このため、メタンの排出を防止するには、別途メタンを処理する設備が必要となり好ましくない。
なお、「処理液を満たした状態」とは、必ずしも処理液で処理槽をいっぱいにした状態を意図するものではない。処理液が処理槽内に滞留しているか、または処理槽内を流動しているかに関わらず、少なくとも処理槽内に処理液が溜まっている状態であればよい。また、「空気、酸素富化空気、または純酸素等」とは、処理液中に酸素を供給し酸化反応を可能とするガス状の酸化剤であればよい。
好気性生物処理の一例として、図3に示す反応槽20と沈殿池30を用いて、UASB処理水2を活性汚泥処理する場合を説明する。反応槽20は、好気性生物処理する曝気槽(すなわち好気槽)21a、槽内に酸素を供給する曝気ライン22を有する。さらに、槽内のガスが大気中に放散するのを防止する蓋部23を有する。UASB処理水2は、UASB槽10から配管13を経由して曝気槽21aに供給される。配管13の出口は、曝気槽21aの水面下になるように配置する。さらに、配管13の出口は、曝気槽のより底部に近い位置に設置されることが好ましい。例えば有効水深5mの曝気槽の場合、曝気槽底部から1m以内、好ましくは50cm以内の位置が良い。すなわち、UASB処理水2に含まれる溶存メタンが曝気槽21a中により長く滞留するようにすることが好ましい。さらに、溶存メタンが、曝気槽21aにおいて生物的に分解される速度と、曝気槽21aから物理的に放散する速度を考慮すると、放散速度の方が速い。よって、曝気槽21aの上部に、蓋部23(またはカバー)を設置し、溶存メタンが槽外に放散するのを防ぐことが好ましい。こうすることにより、UASB処理水2中に含まれる溶存メタンは、メタン酸化菌により効率的に酸化分解され、物理的放散によるメタン放出を防ぐことができる。なお、UASB処理水2に含まれる溶存メタンは、曝気槽21aにおいて活性汚泥中に存在するメタン酸化菌により水と二酸化炭素に分解される。このように、有機性排水処理装置101は、UASB処理水2中に含まれる溶存メタンを大気中に放散することなく、曝気槽21aのメタン酸化菌により酸化分解し無機化することができる。
図3に沈殿池30を示す。沈殿池30は、沈殿槽31と返送汚泥ポンプ32を有する。
沈殿地30では、反応槽20から流出した混合液3を、上澄液である好気性処理水4(すなわち活性汚泥処理水4)と沈殿する活性汚泥5に分離する。沈殿した活性汚泥5の一部は、返送汚泥ポンプ32により、返送汚泥5として曝気槽21aへ返送される。好気性処理水4は、消毒処理等が施された後放流される。
なお、上記のとおり、混合液3は、好気性処理水4と活性汚泥5を含む混合液である。本明細書において、混合液3中に含まれる好気性処理水を指す場合も、好気性処理水4と称する。すなわち、好気性処理水4とは、反応槽(曝気槽または好気槽)において好気性生物処理された処理水を指す。
第1の実施の形態に係る有機性排水処理装置101は、図3に示す反応槽20と沈殿地30(固液分離装置)を備え連続式活性汚泥法を行なう装置として説明したがこれに限られない。例えば、固液分離装置として反応槽を兼用する回分式活性汚泥法であってもよい。また、固液分離装置として沈殿池の代わりに生物膜を用いる膜分離活性汚泥法(Membrane Bioreactor:MBR)であってもよい。MBRの場合は、生物膜を備えた膜分離装置を、沈殿池に代えて反応槽外に設置するか、または反応槽内に設置し固液分離を行なう。生物学的窒素処理において、処理水のNOx−N濃度が10mg/L以上になると沈殿池で脱窒素による汚泥浮上の問題が起こる。しかし、MBRを適用した場合は汚泥の固液分離を膜で行なうため、前記問題は起こらない。また、固液分離装置には、浸漬型固定床方式などで使用する生物膜ろ過装置も含まれる。すなわち、好気性処理が浸漬型固定床方式などの場合は、好気性生物を固定化するため、後段の沈殿池等を除くこともある。その場合は、生物膜ろ過装置が固液分離を行なう固液分離装置となる。
図4を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る有機性排水処理装置102について説明する。有機性排水処理装置102は、図1の有機性排水処理装置101において、反応槽20に替えて、反応槽40を備える。UASB槽10および沈殿地30は、同一であるため説明を省略する。
図5に反応槽40を示す。反応槽40は、曝気槽である好気槽21bの前段に無酸素槽41を有する。具体的には、槽を仕切板44により仕切り、連続して1つの無酸素槽41と3つの好気槽21b、すなわち無酸素槽41/好気槽21b/好気槽21b/好気槽21bとなるように構成する。無酸素槽41は、水中攪拌機42を有し、好気槽21bは、曝気槽21aと同様に曝気ライン22を有する。さらに、無酸素槽41は、溶存メタンが槽内から大気中に放散するのを防止する蓋部43を有することが好ましい。
一般的に、メタン発酵処理では、排水中の易分解性有機物が分解されてメタンガスとして除去・回収される一方で、排水中に蛋白質などの有機物が含まれていると、これらが分解されてNH−Nがメタン発酵処理水中に残存することになる。このNH−Nを含むメタン発酵処理水では、BOD/NH−N比は低くなり、後段の好気性生物処理において、NH−Nの硝化反応(アンモニア性窒素の酸化)が進行する。なお、好気性生物処理が活性汚泥処理の場合、硝化反応が進行し活性汚泥処理液中のNOx−N濃度が高くなると、反応槽後の沈殿池において脱窒反応による汚泥浮上などの問題が発生する。
さらに、窒素規制の厳しい地域では、メタン発酵処理後の好気性生物処理において生物学的窒素処理を適用するケースがある。この場合では、後述するように脱窒工程において水素供与体が不足するためメタノールなどの外部基質を添加する必要があり、ランニングコストがかかるといった問題が発生していた。
有機性排水処理装置102の反応槽40では、好気槽21bでの溶存メタンの酸化分解とともに、好気槽21bと無酸素槽41を用いて生物学的窒素処理を行なう。生物学的窒素処理は、硝化菌によりアンモニアを亜硝酸、硝酸に酸化する硝化工程と、亜硝酸、硝酸を脱窒菌により窒素ガスに変換する脱窒工程に分けられる。硝化工程は好気槽21bで処理され、脱窒工程は無酸素槽41で処理される。具体的には、図5に示すように好気槽21bで硝化された硝化液を含む混合液3を循環ポンプ45を用いて無酸素槽41に戻し、UASB処理水2と混合し脱窒処理を行なう。
脱窒処理は、排水中に含まれる有機物中の水素供与体を利用して行われる。したがって、生物学的窒素処理では、通常、処理前の原水(有機物を含む排水)を無酸素槽に供給して水素供与体として利用した後、好気槽に移送する。しかし、メタン発酵処理では、易分解性の有機物が絶対嫌気性菌(偏性嫌気性菌)によりメタンガスに変換される。そのため、メタン発酵処理水に含まれる有機物が少ない。よって、メタン発酵処理水に対して生物学的窒素処理を行なおうとすると、無酸素槽において脱窒用の水素供与体が欠乏するといった問題が生ずる。こうした問題を解決するため、本願の有機性排水処理装置102では、メタン発酵処理水(UASB処理水2)に含まれる溶存メタンを脱窒用の水素供与体として利用する。なお、メタン酸化菌は、メタンを分解する過程で、以下のとおり、中間生成物としてメタノール等の有機物を生成することが知られている。
CH→ CHOH → HCHO → HCOOH → CO
出典:加藤暢夫著、植田光義編著:微生物機能の開発 第2章 環境を守る微生物 p.39〜p.43 京都大学学術出版会(2008年)
さらに、メタン酸化処理ではメタン負荷が高い場合や酸素供給が不十分な場合、メタン酸化菌によりメタンが二酸化炭素と水までに分解されず、中間生成物(メタノール等)の状態で止まることがある。
本発明では、この中間生成物(主にメタノール)が水素供与体として作用したものと考えられる。すなわち、好気槽21bで硝化菌によりNH−NがNO−N、NO−Nに酸化される。この硝化液を含む混合液3を循環ポンプ45により無酸素槽41に戻し、UASB処理水2と混合する。混合液3中には、溶存酸素(DO)が含まれる。無酸素槽41では、UASB処理水2に含まれる溶存メタンが混合液3中に含まれる溶存酸素(DO)によりメタン酸化される。しかし、メタンの量に対し酸素供給が不十分なため、酸化されたメタンは中間生成物(メタノール等)として存在すると考えられる。この中間生成物が、脱窒用の水素供与体として作用し、無酸素槽41において脱窒処理が進行したと考えられる。
実際にメタン酸化処理において、メタンが二酸化炭素と水までに分解されず、中間生成物(メタノール等)の状態で止まる場合とは、具体的にはDOレベルでは、0.5〜1mg/L以下である。メタン負荷は、水温16℃では、0.1〜0.2mgCH/gMLVSS/d以上、水温20℃では、0.13〜0.26mgCH/gMLVSS/d以上、水温25℃では、0.26〜0.45mgCH/gMLVSS/d以上が目安となる。
有機性排水処理装置102では、溶存メタンの酸化により生じたと考えられるメタノール等の中間生成物により、脱窒用の水素供与体不足分を十分に補強できる。よって、沈殿池30において汚泥浮上の問題が生ずるのを防止することができる。また、外部基質を添加する必要もないため、従来の装置に比べランニングコストを削減することができる。さらに、循環ポンプ45を用いると、混合液3の戻す量を調整しやすいといった利点もある。
例えば、CODcr400mg/Lの下水を水温20℃、HRT10hの条件でUASB処理した場合、CODcr除去率50%では、除去CODcrの半分がメタンガスとして回収でき、残りの半分がUASB処理水に溶存する。したがって、溶存メタンガスのCODcr濃度は約100mg/Lとなる。一方、UASB処理水は、溶解性BOD40mg/L、溶解性CODcr100mg/L、NH−Nは30mg/L前後となり、溶存メタンを含むUASB処理水溶解性BODは120mg/L(BOD/CODcr=0.8とする。)となる。UASB処理水BOD/NH−N=4.0となり、生物学的窒素処理するのに十分な水素供与体が供給可能となる。このように、図5に示す反応槽40を用いた本実施の形態では、溶存メタンを有効利用することができる。
なお、膜分離活性汚泥法(MBR)を用いてメタン発酵処理水を処理する場合であって膜分離装置を反応槽40内に設置する場合は、好気槽21bの最終処理槽に膜分離装置を設置すればよい(反応槽50、60においても同様)。
図6を参照して、反応槽50を説明する。有機性排水処理装置102では、図5に示す反応槽40に替えて、図6に示す反応槽50を用いてもよい。反応槽50では、好気槽21bの前段に無酸素槽41を設けて、無酸素槽41/好気槽21b/無酸素槽41/好気槽21bと交互にしてステップ脱窒できるように配置し、生物学的窒素処理を行なう。このように構成すると、動力を必要とする循環ポンプ45(図5参照)を設けることなく生物学的窒素処理が可能となる。溶存メタンを含んだUASB処理水2は、無酸素槽41にそれぞれ供給する。このようにして、好気槽21bで硝化処理を、無酸素槽41で脱窒処理を行なう。すなわち、好気槽21bの溶存酸素と硝化液を含む混合液3が直後の無酸素槽41に流入し、さらに溶存メタンを含むUASB処理水2と混合され脱窒処理を行なう。好気槽21bと無酸素槽41の槽数は、それぞれ2槽以上とすることが好ましく、さらに、好気性処理水4のT−N(Total Nitrogen:全窒素)濃度レベルに応じて槽数を設定することが好ましい。なお、最終処理槽は、好気槽21bとする。最終処理槽の好気槽21bでは、残存有機物の仕上げ処理等を行なう。また、図6に示すように、好気槽21bに蓋部43を設けると、未分解の溶存メタンが槽内から大気中に放散するのを防止することができ好ましい。槽内のガス等(排ガス)は、別途排ガス処理装置(不図示)に配管などを介して供給することが好ましい。排ガス処理方法としては、生物学的脱臭処理、薬液洗浄、活性炭等の物理学的処理がある。
図7を参照して、反応槽60を説明する。有機性排水処理装置102では、図5に示す反応槽40に替えて、図7に示す反応槽60を用いてもよい。反応槽60では、槽の先頭に好気槽21bを設けて、好気槽21b/無酸素槽41/好気槽21b/無酸素槽41/好気槽21bとなるように配置し、生物学的窒素処理を行なう。このように構成すると、動力を必要とする循環ポンプ45(図5参照)を設けることなく生物学的窒素処理が可能となる。なお、溶存メタンを含んだUASB処理水2は、無酸素槽41にそれぞれ供給する。このようにして、好気槽21bで硝化処理を無酸素槽41で脱窒処理を行なう。好気槽21bと無酸素槽41の槽数は、それぞれ2槽以上とすることが好ましく、さらに、好気性処理水4のT−N濃度レベルに応じて槽数を設定することが好ましい。なお、最終処理槽は、好気槽21bとする。
図8を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る有機性排水処理装置103について説明する。有機性排水処理装置103は、図4の有機性排水処理装置102において、UASB処理槽10と反応槽40(50、60)との間に溶存メタン回収槽70を備える。溶存メタン回収槽70内にUASB処理水2の一部または全部を通過させ(実線矢印)、溶存メタン回収槽70内のUASB処理水2中にメタンガス以外の気体を吹き込む。UASB処理水2から放出したメタンガスを含む混合ガス(点線矢印)を回収し、反応槽40(50、60)の無酸素槽41に吹き込む。メタンガスの回収・吹き込みには、ブロワやファンといった装置(不図示)を用いる。
図9に溶存メタン回収槽70を示す。溶存メタン回収槽70は、メタンガス以外の気体を吹き込む気体吹込装置としてのガス吹込ライン71、メタンガスを含む混合ガスを無酸素槽41に供給する供給部としての配管72を有する。溶存メタン回収槽70は気泡搭型であり、溶存メタン回収槽70内にUASB処理水2を滞留させ、下部よりメタンガス以外の気体を吹き込んで溶存メタンを追い出すことにより、メタンを回収する。なお、メタンガス以外の気体とは、二酸化炭素、窒素、空気、その他不活性ガス、または、これら2以上の混合気体が好ましく、特に二酸化炭素と窒素が好ましい。有機性排水処理装置103では、UASB処理水2中に含まれる溶存メタンを気体状態のメタンガスとして無酸素槽41に供給するので、吹き込むメタンガスの量を調整することができる。
溶存メタン回収槽70に替えて、図10に示す溶存メタン回収槽80を用いてもよい。溶存メタン回収槽80は、メタンガスを含む混合ガスを無酸素槽41に供給する供給部としての配管82を有する。溶存メタン回収槽80は、高低差を利用してUASB処理水2の自然流下が可能なように槽を傾斜させ、槽内を仕切板81で仕切った多段槽構成となっている。自然流下により槽内に負圧が生じ、溶存メタンが脱気される。または、溶存メタン回収槽80は、槽内に階段状の段差を設けて高低差を作り、自然流下が可能なカスケード構造としてもよい。具体的には、UASB処理水2を移送する水路に高低差を設けさらに蓋を備えてもよい。
図11を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る有機性排水処理装置104について説明する。有機性排水処理装置104は、図4の有機性排水処理装置102において、さらに、吸引装置としてのブロワ46を備える。ブロワ46は、メタンガスを含む混合ガスを無酸素槽41に供給する供給部としての配管47を有する。有機性排水処理装置104では、UASB処理槽10の配管13内の気相部をブロワを用いて吸引し、溶存メタンの一部をメタンガスとして回収する。該回収メタンガスを無酸素槽41に吹き込む。なお、UASB処理槽10本体内の気相部をブロワにより吸引する構成としてもよい。有機性排水処理装置104では、処理水中に含まれる溶存メタンを気体状態のメタンガスとして無酸素槽41に供給するので、吹き込むメタンガスの量を調整することができる。また、ブロワの吸引により、配管13を含むUASB処理槽10内がより負圧となり、溶存メタンがUASB処理槽10外へ放出するのをより防止することができる。
図12を参照して、本発明の第5の実施の形態に係る有機性排水処理装置105について説明する。有機性排水処理装置105は、図1の有機性排水処理装置101において、さらに、メタン酸化槽90を備える。
UASB処理水2に含まれる溶存メタンをメタン酸化菌により処理しようとする場合、活性汚泥処理のような浮遊方式で行なうと生物量が少ないため、処理槽を大きくする必要がある。この対策として、メタン酸化菌を担体に固定化して処理してもよい。図12では、メタン酸化菌を固定化した担体を有するメタン酸化槽90に、溶存メタンを含んだUASB処理水2を槽底部から供給し、さらに、槽内に酸素を供給するためのガス吹込ラインを用いて空気を底部から供給し、溶存メタンを処理する。溶存メタンは、固定化されたメタン酸化菌により水と二酸化炭素に分解される。なお、UASB処理水2の供給量は一部あるいは全量のいずれでも良い。全量をメタン酸化槽90に供給する場合は、図12の反応槽20はなくてもよい。
有機性排水処理装置105では、メタン酸化槽90がメタン酸化菌を固定化した担体を有することにより、メタン酸化菌の量を多くでき、結果として溶存メタンを酸化する槽の大きさをコンパクトにすることができる。なお、メタン酸化槽90で使用する固定化担体には、軽石、活性炭、プラスチックろ材等が使用できる。表面に凹凸のある性状の担体が生物付着性に適しており好ましい。担体の大きさは5〜20mm、好ましくは7〜12mmが良い。
図13を参照して、本発明の第6の実施の形態に係る有機性排水処理装置106について説明する。有機性排水処理装置106は、図1の有機性排水処理装置101において、さらに、空気を吹き込まないメタン酸化槽90を備える。メタン酸化槽90は、メタン酸化菌および脱窒菌を固定化した担体を有する。さらに、メタン酸化槽90は、反応槽20で処理され沈殿地30で固液分離された好気性処理水4をメタン酸化槽90に供給する供給部としての配管を有する。有機性排水処理装置106では、メタン酸化槽90に、溶存メタンを含んだUASB処理水2と好気性処理水4を、槽底部から供給する。好気性処理水4は、硝化反応が進んだ亜硝酸、硝酸を多く含み、さらに溶存酸素4〜8mg/Lが含まれている。メタン酸化槽90では、メタン酸化菌により、UASB処理水2に含まれる溶存メタンが酸化される一方で、好気性処理水4中に含まれる硝化液(亜硝酸、硝酸性窒素含む)が脱窒菌により脱窒処理される。なお、UASB処理水2の供給量は一部あるいは全量のいずれでも良い。有機性排水処理装置106では、メタン酸化槽90に浮遊体の菌ではなく固定化した菌を用いることにより、メタン酸化菌および脱窒菌の量を多くでき、結果として槽の大きさをコンパクトにすることができる。
上記の実施の形態では、溶存メタンを生物学的窒素処理に有効活用する装置の例を説明した。しかし、溶存メタンの量は、溶存する液体の水量、水温、CHとCOのガス組成比により左右される。そのため、上記の実施の形態において、好気槽41での脱窒に水素供与体として利用するには不十分となる場合がある。このような場合は、UASB槽10で発生したメタンガスのうち、UASB処理水2に溶存せず、メタンガスとして回収されたものの一部を無酸素槽41に供給しても良い。
以下に、本発明の実施例を説明する。しかし、本発明の実施例は以下の実施例に制限されるものでない。実施例1〜4、および比較例4では、有機性排水として図18の表1に示す流入下水を使用して、UASB槽(有効容量940L)と反応槽としての活性汚泥槽(有効総容量940L)を用いて実験を行なった。各例では、溶存メタンが大気中に放散するのを防止した状態で、UASB処理水(メタン発酵処理水)を浸漬型の反応槽に移送し、生物処理を行なった。一方で、比較例1〜3では、溶存メタンが大気中に放散するのを防止することなく、すなわちUASB処理水が大気と接触した状態で、浸漬型の反応槽に移送し、生物処理を行なった。
[実施例1/比較例1]
図19の表2に実験条件を示す。図1に実施例1で用いた装置の構成を示す。水温18〜29℃、水量333L/d(UASB処理、活性汚泥処理ともにHRTは8時間)で実験を行った。
図20の表3に溶存メタン濃度の測定結果を示す。なお、溶存メタン濃度は、ヘッドスペ−スGC(ガスクロマト)法により測定した。実施例1では、UASB槽内では26.6mL−CH/L、UASB処理水2(活性汚泥原水)では26.3mL−CH/L、活性汚泥処理水4では0mL−CH/Lであった。一方で、比較例1では、UASB槽内では26.6mL−CH/L、UASB処理水2(活性汚泥原水)では5.9mL−CH/L、活性汚泥処理水4では0mL−CH/Lであった。実施例1では、溶存メタンがUASB処理水2から大気中に放散されることなく、活性汚泥処理により無機化されている。
[実施例2/比較例2]
図21の表4に実験条件を示す。図4、5に実施例2で用いた装置の構成を示す。比較例2では、図4の装置において、UASB処理水2を大気と接した状態で無酸素槽41に供給した。
図22の表5に実験結果を示す。UASB処理水2のNH−N26mg/L、T−N34mg/Lに対し、実施例2の活性汚泥処理水4では、NH−N5mg/L、T−N10mg/Lであった。比較例2の活性汚泥処理水4では、NH−N5mg/L、T−N25mg/Lであった。実施例2では、無酸素槽41での脱窒素が良好に行なえているため、T−N除去率が70.6%であるのに対し、比較例2では、好気槽21bで硝化は進んでいるが、無酸素槽41での脱窒素が水素供与体不足のため、T−N除去率が26.5%であった。
[実施例3/比較例3]
図23の表6に実験条件を示す。図4、6に実施例3で用いた装置の構成を示す。比較例3では、図4の装置において、UASB処理水2を大気と接した状態で無酸素槽41に供給した。
図24の表7に実験結果を示す。UASB処理水2のNH−N28mg/L、T−N39mg/Lに対し、実施例3の活性汚泥処理水4では、NH−N6mg/L、T−N10mg/Lであった。比較例3の活性汚泥処理水4では、NH−N6mg/L、T−N25mg/Lであった。実施例3では、無酸素槽41での脱窒素が良好に行なえているため、T−N除去率が74.4%であるのに対し、比較例3では、好気槽21bで硝化は進んでいるが、無酸素槽41での脱窒素が水素供与体不足のため、T−N除去率が35.9%であった。
[実施例4/比較例4]
図25の表8に実験条件を示す。図13に実施例4で用いた装置の構成を示す。メタン酸化槽90の実験機として、直径60mm、高さ1.5mの塩化ビニ−ル製透明カラムを用いた。ろ材として園芸用軽石(以後軽石と記す)を0.94L充填した。ろ材(軽石)は粒径5〜15mmのものを使用した。空隙率は48%であった。該透明カラムに、通気無しで、UASB処理水2と活性汚泥処理水4を1.6:1の割合で供給した。一方で、比較例4では、該透明カラムに通気有りでUASB処理水2のみを供給した。
図26の表9に実験結果を示す。比較例4(平均水温25℃)では、透明カラムへの流入水はT−N42mg/L、NH−N26.3mg/Lであるのに対し、透明カラムからの流出水はT−N40.9mg/L、NH−N22.5mg/Lであり、脱窒処理に関し、流入水、流出水の性状の変化はほとんどない。
実施例4(平均水温25℃)では、透明カラムへの流入水はT−N37.7mg/L、NH−N17mg/L、NO−N11mg/Lに対し、透明カラムからの流出水はT−N28.6mg/L、NH−N15.9mg/L、NO−N0.6mg/Lであり、脱窒素処理により、T−N除去率24.1%の結果が得られた。
[実施例5/比較例5]
図27の表10に実験条件を示す。図4、5に実施例5で用いた装置の構成を示す。実施例5では、食品製造排水のUASB処理水2を、溶存メタンが大気中に放散するのを防止した状態で、無酸素槽に流入させた。比較例5では、溶存メタンが大気中に放散するのを防止することなく、すなわちUASB処理水2を大気と接触した状態で、無酸素槽に流入させた。
図28の表11に実験結果を示す。UASB処理水2のNH−N28mg/L、T−N37mg/Lに対し、実施例5の活性汚泥処理水4では、NH−N0.5mg/L、T−N8.5mg/Lであった。比較例5の活性汚泥処理水4では、NH−N0.5mg/L、T−N22mg/Lであった。実施例5では、無酸素槽41での脱窒素が良好に行なえているため、T−N除去率が77.0%であるのに対し、比較例5では、好気槽21bで硝化は進んでいるが、無酸素槽41での脱窒素が水素供与体不足のため、T−N除去率40.5%であった。このように食品製造排水の処理においても、高いT−N除去率が得られた。
1 有機性排水
2 UASB処理水、メタン発酵処理水
3 混合液
4 好気性処理水、活性汚泥処理水
5 活性汚泥、返送汚泥
10、10’ UASB槽、メタン発酵処理槽
11、23、43 蓋部
12 GSS
13、47、72、82 配管、供給部
14 汚泥床
20、20’、40、50、60 反応槽
21a 曝気層
21b 好気層
22 曝気ライン
30 固液分離装置、沈殿池
31 沈殿槽
32 返送汚泥ポンプ
41 無酸素槽
42 水中攪拌機
44、81 仕切板
45 循環ポンプ
46 ブロワ
70、80 溶存メタン回収槽
71 ガス吹込ライン
90 メタン酸化槽
101、102、103、104、105、106 有機性排水処理装置

Claims (4)

  1. 有機性排水をメタン発酵処理するメタン発酵処理槽と;
    前記メタン発酵処理槽で処理されたメタン発酵処理水を好気性生物処理する、浸漬型の反応槽と;
    前記反応槽中の混合液を固液分離する固液分離装置とを備え;
    前記メタン発酵処理槽は、該メタン発酵処理槽中の前記メタン発酵処理水に溶存したメタンが大気中に放散するのを防止する蓋部と、前記溶存メタンが大気中に放散するのを防止した状態を保ちながら、前記メタン発酵処理水を前記反応槽に供給する供給部とを有し、
    前記反応槽は、脱窒処理をする無酸素槽と好気性生物処理する好気槽を有し、
    前記メタン発酵処理槽が有する供給部は、前記メタン発酵処理水を前記無酸素槽に供給し、
    前記メタン発酵処理槽の下流であって、前記反応槽の上流に設けられた溶存メタン回収槽を備え;
    前記溶存メタン回収槽は、該溶存メタン回収槽内の前記メタン発酵処理水に、二酸化炭素、窒素、空気、不活性ガスの内の1の気体または2以上の混合気体を吹き込む気体吹込装置と、前記気体の吹き込みにより回収されたメタンガスを前記無酸素槽に供給する供給部を有する、
    有機性排水処理装置。
  2. 有機性排水をメタン発酵処理するメタン発酵処理槽と;
    前記メタン発酵処理槽で処理されたメタン発酵処理水を好気性生物処理する、浸漬型の反応槽と;
    前記反応槽中の混合液を固液分離する固液分離装置とを備え;
    前記メタン発酵処理槽は、該メタン発酵処理槽中の前記メタン発酵処理水に溶存したメタンが大気中に放散するのを防止する蓋部と、前記溶存メタンが大気中に放散するのを防止した状態を保ちながら、前記メタン発酵処理水を前記反応槽に供給する供給部とを有し、
    前記反応槽は、脱窒処理をする無酸素槽と好気性生物処理する好気槽を有し、
    前記メタン発酵処理槽が有する供給部は、前記メタン発酵処理水を前記無酸素槽に供給し、
    前記メタン発酵処理槽の下流であって、前記反応槽の上流に設けられた溶存メタン回収槽を備え;
    前記溶存メタン回収槽は、高低差により前記メタン発酵処理水を自然流下させ、前記自然流下に起因する脱気により回収したメタンガスを前記無酸素槽に供給する供給部を有する、
    有機性排水処理装置。
  3. 有機性排水をメタン発酵処理するメタン発酵処理槽と;
    前記メタン発酵処理槽で処理されたメタン発酵処理水を好気性生物処理する、浸漬型の反応槽と;
    前記反応槽中の混合液を固液分離する固液分離装置とを備え;
    前記メタン発酵処理槽は、該メタン発酵処理槽中の前記メタン発酵処理水に溶存したメタンが大気中に放散するのを防止する蓋部と、前記溶存メタンが大気中に放散するのを防止した状態を保ちながら、前記メタン発酵処理水を前記反応槽に供給する供給部とを有し、
    前記反応槽は、脱窒処理をする無酸素槽と好気性生物処理する好気槽を有し、
    前記メタン発酵処理槽が有する供給部は、前記メタン発酵処理水を前記無酸素槽に供給し、
    前記メタン発酵処理水が、前記メタン発酵処理槽から前記無酸素槽まで移動する際に前記メタン発酵処理槽内に生ずる気相部を吸引する吸引装置をさらに備え;
    前記吸引装置は、前記気相部を吸引することにより回収したメタンガスを前記無酸素槽に供給する供給部を有する、
    有機性排水処理装置。
  4. 有機性排水をメタン発酵処理するメタン発酵処理工程と;
    前記メタン発酵処理工程で処理されたメタン発酵処理水に溶存したメタンを好気性生物処理する生物処理工程と;
    前記メタン発酵処理工程後、前記メタンが大気中に放散するのを防止した状態で前記メタン発酵処理水を前記生物処理工程に供給する工程とを備え;
    前記生物処理工程は、脱窒処理をする脱窒処理工程と好気性生物処理する好気処理工程とを有し、
    前記メタン発酵処理水を前記生物処理工程に供給する工程では、前記メタン発酵処理水を前記生物処理工程の脱窒処理工程に供給し、
    前記好気処理工程では、前記メタン発酵処理水に含まれるアンモニアから硝化液を生成し、
    前記脱窒処理工程では、前記メタン発酵処理水中の溶存メタンの酸化により生じた有機物を用いて、前記硝化液を脱窒処理し、
    前記メタン発酵処理工程の下流であって、前記生物処理工程の上流に設けられた溶存メタン回収工程を備え;
    前記溶存メタン回収工程は、前記メタン発酵処理水に、二酸化炭素、窒素、空気、不活性ガスの内の1の気体または2以上の混合気体を吹き込む気体吹込工程と、前記気体吹込工程により回収されたメタンガスを前記脱窒処理工程に供給する工程を有する、
    有機性排水処理方法。
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