JP5992807B2 - 排水処理装置および排水処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、窒素を含有する排水を生物処理する排水処理装置および排水処理方法に関する。
窒素を含有する排水(以下、窒素含有排水)を生物処理する際、反応副生成物として亜酸化窒素ガス(NOガス)が発生することが知られている。亜酸化窒素ガスは温室効果ガスであり、その温室効果は二酸化炭素ガスの約310倍と非常に高い。また、亜酸化窒素ガスは、フロンガスと同様、成層圏のオゾン層を破壊するオゾン層破壊ガスとしても問題視されている。このため、窒素含有排水を生物処理する際、大気中への亜酸化窒素ガスの拡散を抑制することが地球環境保護の観点から急務となっている。なお、窒素含有排水としては、下水処理場の最初沈殿池より供給される原水、一般下水や汚水、し尿、工場排水、農業集落排水、漁業集落排水、養殖排水などを処理した排水や浄水原水等を例示できる。
一般に、窒素含有排水を生物処理する方法(以下、排水処理方法と表記)は、硝化菌を利用して窒素含有排水中のアンモニア性窒素を酸化する硝化工程と、脱窒菌を利用して窒素含有排水中に含まれる窒素酸化物を還元する脱窒工程と、を含む(特許文献1参照)。硝化工程は、以下に示す化学反応式(1),(2)に従ってアンモニアが酸化されて亜硝酸となる工程と、以下に示す化学反応式(3)に従って亜硝酸が酸化されて硝酸となる工程と、を含む。
NH +O+H+2e → NHOH+HO …(1)
NHOH+HO → NO +5H+4e …(2)
NO +0.5O → NO …(3)
化学反応式(1),(2)は、本来的には1対の反応として連続的に進み、以下の化学反応式(4)に示すように余った電子が酸素に渡される。しかしながら、化学反応式(1)に従って生成されたNHOHの一部が化学反応式(2)の反応経路を経ることなく以下に示す化学反応式(5)に従って酸化されることによって、亜酸化窒素が生成されることがある。また、曝気量が不足して硝化工程に必要な酸素量を確保できない場合、反応が十分に進行せず、排水中にNO が蓄積し、以下に示す化学反応式(6),(7)の反応が生じ、硝化率が低下することによって、亜酸化窒素への転換率が上昇することがある。
0.5O+2H+2e → HO …(4)
NHOH+NO → NO+HO+OH …(5)
NO +3H+2e → 0.5NO+1.5HO …(6)
NO +H+2(H) → 0.5NO+1.5HO …(7)
一方、脱窒工程は、有機物を利用して以下に示す化学反応式(8)に従って進行する。化学反応式(8)中の(H)は、水素供与体としてのエタノールおよびその他の有機物を示している。しかしながら、この脱窒工程において、有機物量が少ない、溶存酸素量が多い等、反応環境が良好でないと、脱窒反応が不十分になり、窒素への完全な分解が進まなくなる。この結果、以下に示す化学反応式(9)〜(12)のうち、化学反応式(11)までで反応が終了してしまい、亜酸化窒素の発生量が増加することがある。
NO +H+5(H) → 0.5N+3HO …(8)
NO +2H → NO +HO …(9)
NO +H+(H) → NO+HO …(10)
NO+(H) → 0.5NO+0.5HO …(11)
O+2(H) → N+HO …(12)
ところで、嫌気好気法(AO法)、嫌気無酸素好気法(A2O法)、循環型硝化脱窒法などの排水処理方法において、窒素除去率を向上させるためには、硝化槽において発生した硝化液を脱窒槽(嫌気槽や無酸素槽)に循環させ、生物学的な還元反応によって窒素化を促進する必要がある。
特開平6−63588号公報
ところが、亜酸化窒素を含む活性汚泥が返送経路を介して好気槽に返送されると、好気槽での散気の影響によって、亜酸化窒素が揮散されて大気中に放出されてしまう。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、亜酸化窒素を効率的に除去し、装置外への放出を抑制できる排水処理装置および排水処理方法を提供することにある。
上述した課題を解決し、上記目的を達成するために、本発明に係る排水処理装置は、窒素含有排水に対して生物処理を行う活性汚泥を含む反応槽と、反応槽において生成された混合気体に含まれる亜酸化窒素を少なくとも好気脱窒菌により脱窒する分解槽と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る排水処理装置は、上記の発明において、分解槽が、反応槽において生成された混合気体に含まれる亜酸化窒素を好気脱窒菌および嫌気脱窒菌によって脱窒するように構成されていることを特徴とする。本発明に係る排水処理装置は、この構成において、分解槽内において、好気脱窒菌と嫌気脱窒菌とが仕切り手段により分離されていることを特徴とする。さらに、本発明に係る排水処理装置は、これらの構成において、嫌気脱窒菌が、細菌を担持可能に構成された嫌気用担体に担持されていることを特徴とする。また、本発明に係る排水処理装置は、分解槽が混合気体を散気する混合気体散気手段を備え、混合気体散気手段から散気される混合気体の流量を制御することによって亜酸化窒素の分解速度を制御することを特徴とする。
本発明に係る排水処理装置は、上記の発明において、好気脱窒菌が、細菌を担持可能に構成された好気用担体に担持されていることを特徴とする。
本発明に係る排水処理装置は、上記の発明において、反応槽が好気槽であることを特徴とする。これは、好気槽において生成される混合気体に亜酸化窒素が多く含まれるという本発明者の知見に基づいており、この構成により好気槽において生成される混合気体に含まれる亜酸化窒素を除去することによって、分解槽の設置数を最小限にしつつ亜酸化窒素の排水処理装置外への放出を効率的に抑制できる。
本発明に係る排水処理方法は、窒素含有排水に対して混合気体の生成を伴う生物処理を行う反応ステップと、混合気体を分解槽に供給する供給ステップと、分解槽に供給された混合気体を好気脱窒菌に供給する好気ガス供給ステップと、好気脱窒菌により混合気体に含まれる亜酸化窒素を分解する好気分解ステップと、を含むことを特徴とする。
本発明に係る排水処理方法は、上記の発明において、好気分解ステップ後に、混合気体を嫌気脱窒菌に供給する嫌気ガス供給ステップと、嫌気脱窒菌により混合気体に含まれる亜酸化窒素を分解する嫌気分解ステップと、をさらに含むことを特徴とする。
本発明に係る排水処理装置および排水処理方法によれば、亜酸化窒素を効率的に除去し、装置外への放出を大幅に抑制することが可能となる。
図1は、本発明の第1の実施形態による排水処理装置の分解槽および反応槽を示す概略構成図である。 図2は、本発明の第1の実施形態による分解槽における亜酸化窒素の除去方法を示すフローチャートである。 図3は、本発明の第2の実施形態による排水処理装置の分解槽の詳細を示す構成図である。 図4は、本発明の第3の実施形態による排水処理装置の分解槽および反応槽を示す概略構成図である。 図5は、本発明の第3の実施形態による分解槽における亜酸化窒素の除去方法を示すフローチャートである。 図6は、本発明の第4の実施形態による排水処理装置の分解槽の詳細を示す構成図である。 図7は、本発明の第4の実施形態による排水処理装置の分解槽における好気脱窒菌担体層の湿潤状態を示す構成図である。 図8は、本発明の第4の実施形態による排水処理装置の分解槽における好気脱窒菌担体層および嫌気脱窒菌担体層の浸漬状態を示す構成図である。 図9は、本発明の第4の実施形態による排水処理装置の分解槽の仕切り板の構成の変形例を示す構成図である。 図10は、本発明の第4の実施形態による排水処理装置の分解槽の仕切り板の構成の変形例を示す構成図である。 図11は、本発明の第5の実施形態による排水処理装置の分解槽、反応槽および硝化槽を示す概略構成図である。 図12は、本発明の第6の実施形態による排水処理装置を示す概略構成図である。 図13は、本発明の実施形態に基づく実施例を示す図表である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する実施形態によって限定されるものではない。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態による分解槽を有する排水処理装置について説明する。図1は、この第1の実施形態による排水処理装置の分解槽および反応槽を示す模式図である。
図1に示すように、この第1の実施形態による排水処理装置においては、少なくとも反応槽10および分解槽20を備える。反応槽10は、他の反応槽から流出した処理水が流入する活性汚泥槽であり、例えば無酸素槽、嫌気槽、または好気槽などの他の反応槽(図1中、図示せず)の下流側に配置される。また、反応槽10において処理された処理水は、さらに下流の例えば好気槽などの反応槽や固液分離槽に流出される。
反応槽10内には、活性汚泥を含む生物処理水16を攪拌するための攪拌手段としての攪拌機11が設けられている。攪拌機11は、例えば、モータなどによって回転される攪拌羽根からなる。反応槽10の底部には、貯留されている生物処理水に空気を供給するための空気散気手段としての空気散気部12が設けられている。空気散気部12には、バルブ13aを備えた配管13が連通されている。また、配管13には、窒素(N2)および酸素(O2)を主に含む空気を供給するためのブロワ14が設けられ、空気がブロワ14によって配管13を通じて空気散気部12に供給される。また、ブロワ14からの曝気空気の流量の調整は、バルブ13aを流量調整手段として用いることで行うことが可能であるが、空気散気部12、配管13またはブロワ14に流量調整手段を別途設置することも可能である。また、反応槽10には、上部の空間を密閉するための密閉手段としての蓋部15が設けられている。
分解槽20は、上方から処理水を散水可能に構成された生物分解処理槽である。分解槽20の内部には、好気脱窒菌担体層21が設けられている。この好気脱窒菌担体層21は、処理水が上方から必要量散水されることにより、少なくとも湿潤状態とされる。ここで湿潤状態とは、好気脱窒菌担体層21に含有される水分が、少なくとも好気脱窒菌の生成に必要な量以上ある状態であり、処理水の散水量を多くすることによって、分解槽20の内部に処理水を貯留して、図1に示す好気脱窒菌担体層21が処理水に浸漬された状態を含む。
好気脱窒菌担体層21は、表面に好気脱窒菌が担持された担体や内部に好気脱窒菌が包括固定化された担体を単一で用いた単一体、または複数集合させた集合体から構成される。脱窒菌を保持する担体としては、固定担体や流動担体を採用することができ、天然高分子、合成高分子、これらの複合体、および吸水性ポリマーといったゲル状のものを用いることが可能である。また、担体に担持させたり包括固定化させたりする好気脱窒菌としては、独立栄養性の好気脱窒菌が好適に採用される。独立栄養性の好気脱窒菌としては、例えば、ヒュードモナス属(Pseudomonas sp.DNY8、Pseudomonas stutzeri(Ps)など)、パラコッカス属(Paracoccus denitrificans、Paracoccus pantotrophusなど)、およびDCB−T6などを挙げることができるが、必ずしもこれらの細菌に限定されるものではなく、公知な細菌や新規な細菌を適宜採用することが可能である。
好気脱窒菌担体層21の下方で分解槽20の底部には、混合気体散気手段としての混合気体散気部22が設けられている。混合気体散気部22は、好気脱窒菌担体層21に向けて混合気体を散気可能に構成されている。なお、分解槽20の内部に処理水が貯留されている場合には、混合気体散気部22は処理水に混合気体を曝気可能に構成されている。
混合気体散気部22には、配管23が連通されている。配管23には、バルブ24aを備えるとともに他端が反応槽10の上部の密閉空間10a内に連通する、配管24が連結されている。配管24にはブロワ26が設けられている。配管24およびブロワ26によって、混合気体を捕集するための捕集管が構成されている。また、ブロワ26によって、密閉空間10a内の混合気体を配管24および配管23を順次通じて混合気体散気部22に供給可能に構成されている。
また、ブロワ26からの混合気体の流量は、バルブ24aを流量調整手段として用いるとともに所定の制御手段(図示せず)などで制御することによって、制御可能である。なお、混合気体散気部22、配管23、またはブロワ26に外部から制御可能な流量調整手段を別途設置することも可能である。これにより、詳細は後述するが、混合気体散気部22から散気される混合気体の流量を制御することによって、分解槽20内におけるN2Oガスの分解速度を制御することが可能になる。
さらに、配管23,24には、反応槽10の密閉空間10a内の混合気体を外気に放出するための配管27が連結されている。配管27にはバルブ27aが設けられており、このバルブ27aの開閉によって配管27を通じた混合気体の外気への放出が制御される。
また、分解槽20の底部には、分解槽20内に貯留された処理水を反応槽10に供給するための配管25が連通されている。この配管25には、分解槽20から反応槽10に供給する処理水の水量を制御するとともに、分解槽20に貯留される処理水の量を制御するための開閉可能なバルブ25aが設けられている。
また、配管25には、処理水の流れ方向に沿ってバルブ25aの上流側から下流側にバイパスするように、オーバーフロー配管28が連結されている。オーバーフロー配管28は、その上部が分解槽20の上部よりやや低い位置になるように設けられている。これにより、分解槽20は、内部に貯留する処理水の水圧に基づいて、上部から処理水が溢れるのを防止可能に構成されている。また、オーバーフロー配管28は、その途中で分岐されている。オーバーフロー配管28は、直接およびオーバーフロー配管バルブ28aを介してバルブ25aの下流側に連結されている。そして、分解槽20は、オーバーフロー配管バルブ28aを制御することによって、分解槽20中の処理水の貯留量、すなわち分解槽20に貯留される処理水の水面レベルを制御可能に構成されている。
次に、以上のようにして構成された排水処理装置を用いた排水処理方法における亜酸化窒素の除去方法について説明する。図2は、この第1の実施形態による亜酸化窒素の除去方法を示すフローチャートである。
図2に示すように、この第1の実施形態による亜酸化窒素の除去方法においては、まずステップST1において、反応ステップおよび供給ステップとして、反応槽10の密閉空間10a内に放出される亜酸化窒素(N2O)を含有する混合気体を、分解槽20に供給する。すなわち、まず、図1に示す反応槽10内の生物処理水16において、攪拌機11を駆動させつつ外部から空気散気部12を通じて空気を供給する。これにより、反応槽10内において、例えば、溶存酸素濃度が高い環境下で硝化菌の作用によって硝化処理が行われ、上述した化学反応式(1),(2)に従って亜硝酸が生成され、上述した化学反応式(3)に従って硝酸が生成される。
このとき、化学反応式(1)に従って生成されたNHOHの一部が化学反応式(2)の反応経路を経ることなく上述した化学反応式(5)に従って酸化されると、反応槽10内において、生物処理水16から密閉空間10a内に亜酸化窒素(N2O)が放出されてしまう。また、種々の原因によって排水中にNO が蓄積されると、上述した化学反応式(6),(7)の反応が生じて硝化率が低下し、反応槽10の上部の空間にN2Oがさらに放出される。このようにして、上述した化学反応式(5)〜(7)に従った反応および空気散気部12から散気される空気によって、密閉空間10a内に少なくともN2Oと、N2およびO2とを含む混合気体としてのN2O含有ガスが放出される。
次に、バルブ27aを閉じた状態でバルブ24aを開け、ブロワ26を稼働させることにより、密閉空間10a内のN2O含有ガスが捕集される。捕集されたN2O含有ガスは、配管23を通じて分解槽20に供給される。
次に、図2に示すステップST2に移行して、分解槽20においてN2O含有ガスが散気される。すなわち、図1に示す反応槽10の密閉空間10a内において捕集されたN2O含有ガスは、分解槽20に供給され、混合気体散気部22から散気される。なお、反応槽10において発生したN2O含有ガスの生成量が、混合気体散気部22において許容される散気量を超えた場合、バルブ27aを開けることによって、配管27を通じて余剰のN2O含有ガスを外部に放出させる。このようにして、バルブ27aは安全弁として用いることができるが、反応槽10、その密閉空間10aの容積、またはN2Oガスの発生量によっては、バルブ27aや配管27を採用しないことも可能である。
続いて、図2に示すステップST3に移行して、好気ガス供給ステップとして、分解槽20において好気脱窒菌担体層21に対して、N2O含有ガスを供給する。すなわち、図1に示す分解槽20に供給され混合気体散気部22から散気されたN2O含有ガスは、好気脱窒菌担体層21に対して散気または曝気されることによって供給される。好気脱窒菌担体層21は処理水によって常時湿潤状態にあることから、N2O含有ガスが処理水に溶解して好気脱窒菌による反応に供する。
次に、図2に示すステップST4に移行して、好気分解ステップとして、好気脱窒菌担体層21に担持された好気脱窒菌によりN2O含有ガス中のN2Oが分解される。すなわち、図1に示す分解槽20において、N2O含有ガスが好気脱窒菌担体層21に供給されると、担体に担持されている好気脱窒菌によって、例えば上述した化学反応式(12)に従った脱窒が行われる。これによって、N2O含有ガス中のN2OがN2ガスに分解されて外部に放出される。なお、N2O含有ガス中のN2O以外の気体成分も併せて外部に放出される。
以上説明した第1の実施形態によれば、反応槽10において生成される亜酸化窒素(N2O)を分解槽20に供給して、好気脱窒菌担体層21により分解して窒素(N2)として放出していることにより、温室効果ガスである亜酸化窒素ガスを排水処理装置から外部に放出する量を低減できるので、窒素含有排水を生物処理する際に、大気中への亜酸化窒素ガスの拡散を抑制できる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図3は、この第2の実施形態による分解槽を示す構成図である。図3に示すように、この第2の実施形態による分解槽20は、第1の実施形態と異なり、好気用担体としての複数の好気脱窒菌担体21aに好気脱窒菌を担持させつつ、分解槽20に処理水を貯留する。これによって、分解槽20の処理水中に好気脱窒菌担体21aを浮遊させて好気脱窒菌担体層21を構成する。ここで、個々の好気脱窒菌担体21aの寸法は、最大径が例えば10〜12mmになるように形成するのが好ましいが、必ずしもこれらの数値に限定されるものではない。
また、分解槽20の側部には、DO計やORP計などに処理水を供給するためのバルブ20a,20bが設けられている。また、N2Oの脱窒除去は好気脱窒菌担体21aに担持されている好気脱窒菌によって行われる。その他の構成および亜酸化窒素の除去方法については第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図4は、この第3の実施形態による排水処理装置に設けられる反応槽および分解槽を示す模式図である。
図4に示すように、この第3の実施形態による排水処理装置においては、第1の実施形態と異なり、分解槽30において、好気脱窒菌担体層21の上方に嫌気脱窒菌担体層31が設けられている。この嫌気脱窒菌担体層31は、上方から散水される処理水によって常時湿潤状態とされる。ここで湿潤状態とは、嫌気脱窒菌担体層31に含有される水分が少なくとも嫌気脱窒菌の生成に必要な量以上ある状態であり、処理水の散水量を多くすることによって、分解槽30の内部に処理水を貯留して、図4に示す嫌気脱窒菌担体層31が分解槽30に貯留された処理水に浸漬された状態を含む。また、外部から水素供与体としての有機物が供給されることにより、脱窒菌に栄養が供給される。
次に、この第3の実施形態の排水処理方法について説明する。この第3の実施形態によるN2Oの除去方法は、第1の実施形態と異なり、好気脱窒菌担体層21によってN2Oが分解されて通過した混合気体に対して、嫌気脱窒菌担体層31によって脱窒処理が改めて行われる。図5は、この第3の実施形態による亜酸化窒素の除去方法を示すフローチャートである。
図5に示すように、この第3の実施形態による亜酸化窒素の除去方法においては、まずステップST11において、反応槽10の密閉空間10a内に放出されるN2Oを含有した混合気体を、分解槽30に供給する。すなわち、まず、図4に示す反応槽10内の生物処理水16において、攪拌機11を駆動させつつ外部から空気散気部12を通じて空気を供給する。これにより、反応槽10内において、例えば、溶存酸素濃度が高い環境下で硝化菌の作用によって硝化処理が行われ、上述した化学反応式(1),(2)に従って亜硝酸が生成され、上述した化学反応式(3)に従って硝酸が生成される。
このとき、化学反応式(1)に従って生成されたNHOHの一部が、化学反応式(2)の反応経路を経ることなく、上述した化学反応式(5)に従って酸化されると、反応槽10内において生物処理水16から密閉空間10a内にN2Oが放出される。また、種々の原因によって排水中にNO が蓄積されると、上述した化学反応式(6),(7)の反応が生じて硝化率が低下し、反応槽10の上部の空間にN2Oがさらに放出される。このようにして、上述した化学反応式(5)〜(7)に従った反応および空気散気部12から散気される空気によって、密閉空間10a内に少なくともN2Oと、N2およびO2とを含む混合気体としてのN2O含有ガスが放出される。
次に、バルブ27aを閉じた状態でバルブ24aを開け、ブロワ26を稼働させることにより、密閉空間10a内のN2O含有ガスが捕集される。捕集されたN2O含有ガスは、配管23を通じて分解槽30に供給される。
次に、図5に示すステップST12に移行して、分解槽30においてN2O含有ガスが散気される。すなわち、図1に示す反応槽10の密閉空間10a内において捕集されたN2O含有ガスは、分解槽30に供給され、混合気体散気部22から散気される。なお、反応槽10において発生したN2O含有ガスの生成量が、混合気体散気部22において許容される散気量を超えた場合、バルブ27aを開けることによって、配管27を通じて余剰のN2O含有ガスを外部に放出させる。このようにして、バルブ27aは安全弁として用いることができるが、反応槽10、その密閉空間10aの容積、またはN2Oガスの発生量によっては、バルブ27aや配管27を採用しないことも可能である。
続いて、図5に示すステップST13に移行して、分解槽30において好気脱窒菌担体層21に対して、N2O含有ガスを供給する。すなわち、図4に示す分解槽30に供給され混合気体散気部22から散気されたN2O含有ガスは、好気脱窒菌担体層21に対して散気または曝気されることによって供給される。
次に、図5に示すステップST14に移行して、好気脱窒菌担体層21に担持された好気脱窒菌によりN2O含有ガス中のN2Oが分解される。すなわち、図4に示す分解槽30において、N2O含有ガスが好気脱窒菌担体層21に供給されると、好気脱窒菌によって、例えば上述した化学反応式(12)に従った脱窒が行われる。これによって、N2O含有ガス中のN2Oの一部がN2ガスに分解される。
次に、図5に示すステップST15に移行して、嫌気ガス供給ステップとして、嫌気脱窒菌担体層31にN2Oの残部を含むN2O含有ガスが供給される。すなわち、図4に示す好気脱窒菌担体層21を通過したN2O含有ガスは、嫌気脱窒菌担体層31に対して散気または曝気によって供給される。
続いて、図5に示すステップST16に移行して、嫌気分解ステップとして、嫌気脱窒菌担体層31に担持された嫌気脱窒菌によりN2O含有ガス中のN2Oが分解される。すなわち、図4に示す分解槽30において、N2Oが好気脱窒菌担体層21において分解されずに残ったN2Oを含む窒素酸化物が、嫌気脱窒菌担体層31によって還元されて脱窒処理が行われる。これによって、N2O含有ガス中のN2Oの一部がN2ガスに分解される。なお、N2O以外のガスは嫌気脱窒菌による化学反応を生じることなく通過して、外部に放出される。
この第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、さらに嫌気脱窒菌担体層31によって脱窒処理を再度行っていることにより、反応槽10内において発生したN2Oを含む窒素化合物をさらに還元して分解することが可能になるので、窒素酸化物の外部への放出量をより一層低減できる。
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図6は、この第4の実施形態による分解槽を示す構成図である。図6に示すように、この第4の実施形態による分解槽30は、第3の実施形態と異なり、複数の好気脱窒菌担体21aに好気脱窒菌が担持されているとともに、嫌気用担体としての複数の嫌気脱窒菌担体31aに嫌気脱窒菌が担持されている。また、これらの複数の好気脱窒菌担体21aと複数の嫌気脱窒菌担体31aとは、仕切り手段としての仕切り板33により互いに分離した状態となっている。仕切り板33は例えば微小の開孔が例えば等間隔に複数形成され、少なくとも分解槽30内で液相および気相を通過可能、かつ好気脱窒菌担体21aおよび嫌気脱窒菌担体31aが通過できない大きさに形成されている。
仕切り板33は、具体的には、プラスチック、ゴム、金属、またはセラミックス膜から構成される。プラスチックとしては、耐薬品性と機械的物性とに優れ、常用耐熱温度が60℃以上、好適には80℃以上であることから、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、およびポリプロピレンなどが採用される。また、仕切り板33をプラスチックから構成する場合には、板厚は例えば10〜数10mm程度とするのが望ましい。
また、ゴムとしては、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、およびニトリルゴム(NBR)などが採用される。EPM、EPDMは、耐オゾン、アルコール、ケトン、デリコールのような極性溶剤や塩酸、苛性ソーダなどに耐性を有し、耐水、耐蒸気性を有するため好ましい。CRは、耐熱性、耐老化性、耐オゾン性、耐候性、および耐燃性に優れ、酸化性薬品以外の薬品類に対して耐性を有するため好ましい。また、NBRは、耐油性、耐摩耗性、および機械的強度の向上に寄与するため好ましい。また、仕切り板33をゴムから構成する場合には、板厚は例えば10〜数10mmとするのが望ましいが、仕切り板33自体の寸法に応じて、ゴムを支持する支持体を設ける必要も生じる。
また、金属としては、仕切り板33を薄板化可能であるためステンレス鋼(SUS304,SUS316)などが好ましい。この場合、仕切り板33の板厚は、数mm以上、具体的には仕切り板33の開孔の目詰まりが抑制される1mm以上であれば良く、数10mm以下でよい。
また、分解槽30中に仕切り板33を設けなかった場合、分解槽30に貯留される処理水を、水深L1および容積V1とする。そして、この場合、混合気体としてのN2O含有ガスが混合気体散気部22から散気された時点から処理水の水面に到達するまでの接触時間T1において、N2O含有ガスが気泡として処理水と接触し、N2O含有ガス内の各種ガス成分が処理水に溶融する。
他方、図6に示すように、分解槽30中に仕切り板33を設けた場合、分解槽30の好気脱窒菌担体層21に貯留される処理水を、水深L2および容積V2とする。そして、この場合、N2O含有ガスが混合気体散気部22から散気された時点から好気脱窒菌担体層21の上面、すなわち仕切り板33に到達するまでの接触時間T2において、散気されたN2O含有ガスが気泡として処理水と接触する。これによって、N2O含有ガスのガス成分が処理水に溶融し、溶融したガス成分のうちのN2Oが好気脱窒菌担体層21の好気脱窒菌によって分解される。
同様に、分解槽30の嫌気脱窒菌担体層31に貯留される処理水を、水深L3および容積V3とする。そして、この場合、N2O含有ガスが仕切り板33を通過した時点から嫌気脱窒菌担体層31の上面、すなわち処理水面に到達するまでの接触時間T3において、N2O含有ガスが気泡として処理水と接触する。これによって、N2O含有ガス内の各種ガス成分が処理水に溶融し、溶融したガス成分のうちのN2Oが嫌気脱窒菌担体層31の嫌気脱窒菌によって分解される。
このような仕切り板33を設けない場合と設けた場合とを比較すると、分解槽30に貯留される処理水の関係から、(13)式および(14)式が成立する。
1=L2+L3 ……(13)
1=V2+V3 ……(14)
これに対し、仕切り板33の下方においてN2O含有ガスが滞留することによって、N2O含有ガスと処理水との接触時間が増加し、接触時間T1,T2,T3の間は、(15)式の関係になる。
1<T2+T3 ……(15)
すなわち、分解槽30に液相および気相を通過可能な仕切り板33を設けることによって、N2O含有ガスと処理水との接触時間を増加させることができる。これにより、N2O含有ガス中のN2Oの処理水中への溶存量が増加し、これに伴ってN2Oの分解速度を増加させることができるので、N2Oの除去効率を向上させることができる。
また、分解槽30に脱窒菌担体を分離するための仕切り板33を設けることによって、担体を分解槽30の上部および下部のそれぞれの層に維持できる。そのため、担体に付着した菌である脱窒菌の生育を溶存酸素濃度に応じた環境に適して行うことができるので、安定した分解速度を維持できる。これに対し、仕切り板33を設けない場合には、散気されて流入するN2O含有ガスのガス量によって担体が浮遊することが考えられ、貯留された処理水の上部と下部とで担体が流動する、いわゆる流動床になる。さらに、流入するN2O含有ガスのガス量が小さい環境下では、担体が分解槽30の下部に堆積するため、溶存酸素濃度の高い環境が維持される。また、仕切り板33を設けることによって、担体付着汚泥を所望の一定水位である程度維持することによって、安定的な分解速度を実現できる。
次に、この第4の実施形態による分解槽30の変形例について説明する。図7および図8はそれぞれ、第1および第2の変形例による分解槽30の構成を示す概略図であり、図9および図10はそれぞれ、第3および第4の変形例による分解槽30の内部の仕切り板33における板張り出し構造を示す概略図である。
まず、この第4の実施形態による分解槽30の第1の変形例について説明する。図7に示すように、分解槽30の第1の変形例においては、仕切り板33の上方で複数の嫌気脱窒菌担体31aの上方には、シャワーボール34が設けられている。このシャワーボール34には、バルブ35aにより供給量を制御可能な配管35を通じた処理水と、バルブ36aにより供給量を制御可能な配管36を通じた例えばメタノールなどの有機物とが、配管37で合流して混合物となって供給される。
そして、シャワーボール34から散布される処理水と有機物との混合物によって、複数の好気脱窒菌担体21aおよび複数の嫌気脱窒菌担体31aは常に湿潤状態に保たれる。なお、貯留される処理水が少ない場合には、複数の好気脱窒菌担体21aおよび複数の嫌気脱窒菌担体31aを常に湿潤状態に維持するために、シャワーボール34から間欠散布を行う。また、分解槽30に貯留される処理水が多い場合でも、複数の好気脱窒菌担体21aのみを処理水中に浸漬させて浮遊させるように構成する。
具体的には、仕切り板33とほぼ同じ高さの位置で分岐したオーバーフロー配管28におけるオーバーフロー配管バルブ28aを開け、仕切り板33よりも高い位置に処理水が貯留しないように制御する。これにより、処理水が最も貯留された状態では、分解槽30の内部における仕切り板33の下方において、複数の好気脱窒菌担体21aが、処理水に浸漬されつつ浮遊して好気脱窒菌担体層21を構成する。他方、複数の嫌気脱窒菌担体31aは、重力により仕切り板33上に堆積して嫌気脱窒菌担体層31を構成する。
次に、この第4の実施形態による第2の変形例について説明する。図8に示すように、第2の変形例による分解槽30においては、第1の変形例と異なり、複数の好気脱窒菌担体21aおよび複数の嫌気脱窒菌担体31aを処理水中に浸漬可能に構成する。この場合、オーバーフロー配管バルブ28aを閉じることによって、オーバーフロー配管28の上部まで処理水が上昇可能に構成するので、仕切り板33より上方の嫌気脱窒菌担体31aの部分にも処理水を貯留させる。
そして、仕切り板33の下方において処理水中に複数の好気脱窒菌担体21aが浸漬されて好気脱窒菌担体層21が構成される。これとともに、仕切り板33の上方において、処理水中に複数の嫌気脱窒菌担体31aが浸漬されて嫌気脱窒菌担体層31が構成される。なお、オーバーフロー配管バルブ28aを開けた状態としても、オーバーフロー配管28の分岐した部分を仕切り板33の上面より高い位置に設けることによって、複数の嫌気脱窒菌担体31aの少なくとも一部を処理水に浸漬させて嫌気脱窒菌担体層31を構成するようにしても良い。この場合、貯留される処理水が少ない場合には、複数の好気脱窒菌担体21aおよび複数の嫌気脱窒菌担体31aを常に湿潤状態に維持するために、シャワーボール34から間欠散布を行う。その他の構成は、第1の変形例による分解槽30と同様であるので、説明を省略する。
次に、この第4の実施形態による第3の変形例について説明する。図9に示すように、この第3の変形例による分解槽30においては、仕切り板33の代わりに、少なくとも2枚の仕切り板33a,33bを設ける。そして、分解槽30における最も高い位置に設けられた仕切り板33aより上方に、複数の嫌気脱窒菌担体31a(図9中、図示せず)から構成される嫌気脱窒菌担体層31を設ける。他方、分解槽30の最も低い位置に設けられた仕切り板33bより下方に、複数の好気脱窒菌担体21a(図9中、図示せず)から構成される好気脱窒菌担体層21を設ける。
仕切り板33a,33bの間には、例えば分解槽30の内側壁から内側に向けて、張り出し板38a,38b,38c,38dがそれぞれ交互に張り出した、いわゆる板張り出し構造を有する気液接触延長手段としての気液接触部38が設けられている。
すなわち、好気脱窒菌担体層21を通過したN2O含有ガスの気泡は、仕切り板33bを通過した後、順次張り出し板38d,38cの間、張り出し板38c,38bの間、および張り出し板38b,38aの間を通過することで、気液接触部38を通過する。気液接触部38を通過したN2O含有ガスの気泡は、仕切り板33aに到達して、嫌気脱窒菌担体層31に供給される。この第3の変形例による気液接触部38を設けた分解槽30の場合、上述した第1および第2の変形例による分解槽30の場合に比して、N2O含有ガスと処理水との接触時間を約2〜10倍に増加させることができる。これにより、貯留された処理水中にN2O含有ガス中のN2Oをより多く溶解できるので、特に嫌気脱窒菌担体層31によるN2Oの除去に寄与し、効率良く除去することが可能になる。
なお、このような気液接触部38の構成は、N2Oの除去効率を考慮すると、複数の仕切り板33a,33bの間に設けることが好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば好気脱窒菌担体層21中に設けても良い。また、仕切り板33a,33bは2枚に限定されるものではなく3枚以上設けても良く、この場合もN2O含有ガスと処理水とが接触する時間が増加するため、仕切り板33a,33bの目詰まり等を考慮して適宜設置するのが好ましい。
次に、この第4の実施形態による第4の変形例について説明する。図10に示すように、この第4の変形例による分解槽30においては、仕切り板33の代わりに、分解槽30の内側壁から内側に向けて互い違いに張り出した張り出し板38e,38fと、気相および液相を通過可能な少なくとも2枚の仕切り板33c,33dとを設ける。仕切り板33c,33dはそれぞれ、張り出し板38e,38fの端部を気相および液相を通過可能で好気脱窒菌担体21aや嫌気脱窒菌担体31aが通過できない状態に封止するように設けられる。
このような構成により、N2O含有ガスの気泡の流れに沿って仕切り板33cより上流側に、複数の好気脱窒菌担体21a(図10中、図示せず)から構成される好気脱窒菌担体層21が設けられる。他方、N2O含有ガスの気泡の流れに沿って仕切り板33cより下流側に、複数の嫌気脱窒菌担体31a(図10中、図示せず)から構成される嫌気脱窒菌担体層31を設ける。
そして、仕切り板33c,33dの間における張り出し板38e,38fによって、気液接触部38が構成される。すなわち、好気脱窒菌担体層21を通過したN2O含有ガスの気泡は、仕切り板33cを通過した後、張り出し板38e,38fの間を通過して気液接触部38を通過し、仕切り板33dを通過して、嫌気脱窒菌担体層31に供給される。この第4の変形例による気液接触部38を設けた分解槽30の場合、上述した第1および第2の変形例による分解槽30の場合に比して、N2O含有ガスと処理水との接触時間を約2〜10倍に増加させることができる。これにより、貯留された処理水中にN2O含有ガス中のN2Oをより多く溶解できるので、特に嫌気脱窒菌担体層31によるN2Oの除去に寄与し、効率良く除去することが可能になる。
なお、このような気液接触部38の構成は、N2Oの除去効率を考慮すると、複数の張り出し板38e,38fにより構成するのが好ましく、仕切り板33c,33dおよび張り出し板38e,38fの構成を複数設けることが可能である。この場合もN2O含有ガスと処理水との接触時間が増加するため、仕切り板33c,33dの目詰まり等を考慮して適宜好ましい枚数を設置する。
以上のように構成されたこの第4の実施形態によれば、第1〜第3の実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、さらに好気脱窒菌担体層21および嫌気脱窒菌担体層31を処理水に浸漬させたり処理水により湿潤状態で堆積させたりすることによって、N2O含有ガスを脱窒菌により接触させることができる。そのため、反応槽10内において発生したN2Oを含む窒素化合物をさらに還元して分解することが可能になる。また、気液接触部38を設けた場合には、処理水中にN2Oを含む窒素化合物のガスをより多く溶解させることができるので、好気脱窒菌担体層21および嫌気脱窒菌担体層31によるN2Oを含む窒素化合物の除去に寄与し、N2Oの外部への放出量をさらに低減できる。
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。図11は、この第5の実施形態による排水処理装置に設けられる反応槽、硝化槽および分解槽を示す模式図である。
図11に示すように、この第5の実施形態においては、第3の実施形態による反応槽10および分解槽30に加え、好気槽である硝化槽40が設けられている。硝化槽40の内部には、表面に硝化菌が担持された担体や内部に硝化菌が包括固定化された担体を複数集合させた集合体からなる硝化菌担体層41が設けられている。硝化菌担体層41における硝化菌を担持する担体としては、固定担体や流動担体を採用することができ、天然高分子、合成高分子、これらの複合体および吸水性ポリマーといったゲル状のものを用いることが可能である。また、担体に担持させたり包括固定化させたりする硝化菌としては、従来公知の硝化菌や新規の硝化菌を適宜採用することが可能である。
また、この硝化菌担体層41は、上方から必要量の処理水を散水することにより、少なくとも湿潤状態になっている。湿潤状態とは、硝化菌担体層41に含有される水分が少なくとも硝化菌の生成に必要な量以上ある状態であり、処理水の散水量を多くすることによって硝化槽40の内部に処理水を貯留して、図11に示す硝化菌担体層41が処理水に浸漬された状態を含む。
また、硝化菌担体層41の下方で硝化槽40の底部には、混合気体散気手段としての混合気体散気部42が設けられている。混合気体散気部42は、硝化菌担体層41に対して混合気体を散気可能に構成されている。なお、硝化槽40の内部に処理水が貯留されている場合には、混合気体散気部42は処理水に混合気体を曝気可能に構成される。
混合気体散気部42には配管43が連通され、配管43は配管24に連結されている。配管43,24には、反応槽10の密閉空間10a内の混合気体を外気に放出するための配管47が連結されている。配管47にはバルブ47aが設けられており、このバルブ47aの開閉によって配管47を通じた混合気体の外気への放出が制御される。また、硝化槽40の底部には、硝化槽40内に貯留された処理水を反応槽10に供給するための配管46が連通されている。
また、硝化槽40には、上部の空間を密閉するための密閉手段としての蓋部45が設けられている。蓋部45には硝化槽40の上部の密閉空間に連通した配管44の一端が連結されている。配管44の他端は、分解槽30にN2O含有ガスを供給するための配管23に連結されている。その他の構成については、第1および第2の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
次に、この第5の実施形態による排水処理方法においては、第3および第4の実施形態と異なり、反応槽10において生成された混合気体のうちの窒素含有悪臭成分が、硝化槽40において硝化される。具体的には、硝化槽40において、反応槽10から混合気体散気部42を通じて供給されるN2O含有ガスに含まれる成分のうちのN2、O2およびN2O以外の、例えばアンモニアなどの窒素含有悪臭成分を硝化する硝化処理が行われる。その他の構成については、第3の実施形態と同様なので、説明を省略する。
以上のように構成されたこの第5の実施形態によれば、第1〜第4の実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、第3の実施形態による排水処理装置に対して、さらに好気槽としての硝化槽を設けていることにより、反応槽10内において生成されたN2O含有ガスに含まれる悪臭成分を除去できるので、排水処理装置の外部への悪臭成分の放出量をより一層低減することが可能となる。
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。図12は、この第6の実施形態による排水処理装置を示す模式図である。
図12に示すように、この第6の実施形態による排水処理装置においては、無酸素槽51,54,57、好気槽60,70,80、固液分離槽(沈殿槽)90、および分解槽20を主な構成要素として備えている。
無酸素槽51は、窒素含有排水が最初、または下水処理場の構成によっては最初沈殿池(図示せず)を介して原水として流入して、生物処理水53が貯留された反応槽である。無酸素槽54は、無酸素槽51の下流側に配置され、無酸素槽51から流出した処理水が流入して生物処理水56が貯留された反応槽である。無酸素槽57は、無酸素槽54の下流側に配置され、無酸素槽54から流出した処理水が流入して生物処理水59が貯留された反応槽である。これらの無酸素槽51,54,57は、無酸素環境下において脱窒菌の作用によって処理水に対して脱窒処理を行う反応槽であり、それぞれ活性汚泥を攪拌するための攪拌手段としての攪拌機52,55,58が設けられている。
また、それぞれの無酸素槽54,57内のそれぞれの生物処理水56,59には、無酸素槽54内に返送経路93を介して好気槽80内の硝化液が循環されることによる硝酸が含まれる。この硝酸は、上述した化学反応式(9)〜(12)に従った化学反応によって窒素に分解される。返送経路93を介して無酸素槽54内に硝化液を循環させることによって、無酸素槽54,57における脱窒効率を向上させることができる。
好気槽60は、無酸素槽57の下流側に配置され、無酸素槽57から流出した処理水が流入する槽であり、上述した反応槽10と同様の構成を有する。また、好気槽70,80はそれぞれ、好気槽60,70の下流側に配置され、それぞれ好気槽60,70から流出した処理水が流入する反応槽であり、いずれも上述した反応槽10と同様の構成を有する。
これらの好気槽60,70,80内にはそれぞれ、生物処理水を攪拌する攪拌手段としての攪拌機61,71,81が設けられている。好気槽60,70,80の底部にはそれぞれ、貯留されている処理水に空気を供給するための空気散気手段としての空気散気部62,72,82が設けられている。各空気散気部62,72,82にはそれぞれ、配管63,73,83の一端が連結されており、これらの配管63,73,83の他端は、空気を供給するブロワ14に連結されている。配管63,73,83にはそれぞれ、バルブ63a,73a,83aが設けられ、各空気散気部62,72,82に供給する空気をそれぞれ調整可能に構成されている。それぞれの好気槽60,70,80内においてはそれぞれ、空気散気部62,72,82による散気が行われ、溶存酸素濃度が高い環境下で硝化菌の作用によって処理水の硝化が行われる。また、好気槽60,70,80にはそれぞれ、上部の空間を密閉する密閉手段としての蓋部65,75,85がそれぞれ設けられている。また、分解槽20に貯留された処理水は、配管25を通じて好気槽60に供給されるように構成されている。
それぞれの好気槽60,70,80における各蓋部65,75,85にはそれぞれ、配管64,74,84が連通されている。これらの配管64,74,84は、混合気体散気部22に連通されブロワ26を備えた配管23に連結されている。また、配管64,74,84にはそれぞれ、分解槽20に供給するN2O含有ガスの流量を制御するためのバルブ64a,74a,84aが設けられている。配管64,74,84、配管23およびブロワ26によって、各好気槽60,70,80におけるそれぞれの密閉空間60a,70a,80a内の混合気体を捕集するための捕集管が構成される。そして、それぞれの密閉空間60a,70a,80a内の混合気体がそれぞれ配管64,74,84と、配管23とを順次通じて混合気体散気部22に供給可能に構成されている。
固液分離槽90は、好気槽80の下流側に位置し、好気槽80から流出した処理水が流入する槽である。固液分離槽90は、生物処理が完了した処理水を例えば沈殿などによって固液分離するための槽であり、例えば固液分離を促進するための攪拌機91を備える。そして、固液分離槽90において固液分離によって生成された上澄水95が、装置外に排出可能に構成されている。返送経路93は、ポンプ93aを備え、このポンプ93aによって沈殿した汚泥94の一部を無酸素槽54まで返送するための配管である。固液分離槽90において固液分離された汚泥94の残部は、余剰汚泥として装置外に排出するように構成されている。この第6の実施形態による排水処理装置のその他の構成については、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
次に、本発明の第6の実施形態による排水処理方法について説明する。この第6の実施形態による排水処理方法において、窒素含有排水は、まず無酸素槽51に流入され、続いて無酸素槽54,57に順次流入されて、それぞれにおいて脱窒処理が行われる。続いて、処理水は、好気槽60,70,80に順次流入して、それぞれの好気槽60,70,80において硝化処理される。このとき、それぞれの好気槽60,70,80においてはN2O含有ガスが生成される。この生成されたN2O含有ガスは、配管64,74,84を通じ、さらに配管23および混合気体散気部22を順次通じて分解槽20に供給され、好気脱窒菌担体層21においてN2Oが分解されて除去される。
一方、好気槽80を流出した処理水は、固液分離槽90に流入する。固液分離槽90においては、処理水が固液分離されて生成された上澄水95が装置外に排出される。固液分離槽90において固液分離されて沈殿した汚泥94の一部は、返送経路93を通じて無酸素槽54に返送される。一方で沈殿した汚泥94の残部は、余剰汚泥として装置外に排出される。この第6の実施形態による排水処理方法のその他のステップについては、第1および第2の実施形態と同様であるので、説明を省略する。なお、分解槽20の代わりに第3および第4の実施形態による分解槽30を採用することも可能である。この場合、第6の実施形態による排水処理方法のその他のステップについては、第3および第4の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
この第6の実施形態によれば、好気槽60,70,80において生成されたN2O含有ガスのN2Oを分解槽20において除去していることにより、第1および第2の実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、複数の反応槽を有する排水処理装置であっても、分解槽20,30を用いることでN2Oを効率良く分解除去できるので、種々の排水処理装置において、N2Oの排水処理装置の外部への放出を抑制できる。
(実施例)
次に、以上の実施形態に基づいた実施例について説明する。すなわち、第1および第2の実施形態に基づいてN2Oガスの分解を行った実施例1,および第3および第4の実施形態に基づいてN2Oガスの分解を行った場合の実施例2〜7について説明する。図13は、これらの実施例1〜7の結果を示す。なお、図13の表において、分解N2Oガス濃度は、流入N2Oガス濃度から捕集N2Oガス濃度を減算した濃度である。また、MLSS換算量は、嫌気用担体または好気用担体の付着MLSS分と、これらの担体に付着した以外の活性汚泥の合計を1(L)当たりのMLSS量に換算した値である。
図13に示す実施例1から、第1および第2の実施形態による分解槽20のように好気脱窒菌担体層21のみを設けた、いわゆる好気状態における脱窒反応(溶存酸素濃度DO=0.2mg/L)でのN2Oの分解率が31.5%になることがわかる。これは、分解槽20を設けておらず、流入N2Oガス濃度のままでN2Oが外部に放出されていた従来の場合(比較例)に比して、N2Oの放出量を70%以下の68.5%にまで低減できたことを意味する。
また、実施例1から、ガス流量を10.1L/minから1L/minに変換し、分解N2Oガス濃度を10ppmとして外挿すると、分解速度は3.8μg−N/gSS・hとなる。そして、分解率を31.5%に補正すると分解速度は1.1μg−N/gSS・hになる。
また、図13に示すように、第3および第4の実施形態による分解槽30を用い、好気脱窒菌担体層21および嫌気脱窒菌担体層31によってN2Oガスを除去する構成に基づいて実施例2〜7を行った。実施例2〜4は、流入N2Oガス濃度を90ppmと一定とし、混合気体の流量をそれぞれ、1L/min、3L/min、および6L/minに制御した場合の結果を示す。また、実施例5〜7は、流入N2Oガス濃度を32〜34ppmとほぼ一定とし、実施例2〜4と同様に混合気体のガス流量をそれぞれ、1L/min、3L/min、および6L/minに制御した場合の結果を示す。
実施例2〜4から、混合気体散気部22からの混合気体の散気の流量を増加させると、分解速度が30.0μg−N/gSS・h、89.0μg−N/gSS・h、および131.5μg−N/gSS・hと、単調増加することがわかる。すなわち、混合気体散気部22からの混合気体のガス流量を制御することによって、N2Oの分解速度を制御できることがわかる。これにより、N2Oの分解速度を所望の分解速度とするために、混合気体のガス流量を制御するのが好ましいことがわかる。
また、実施例2〜4から、好気脱窒菌担体層21および嫌気脱窒菌担体層31を備えた分解槽30を用いた嫌気状態における脱窒反応(溶存酸素濃度DO=0mg/L)によるN2Oの分解率は、72.2%以上98.9%以下となり、N2Oをほとんど除去できることがわかる。
また、実施例5〜7から、流入N2Oガス濃度を実施例2〜4に比して小さくした場合には、混合気体の散気の流量を増加させると、分解速度が11.1μg−N/gSS・h、33.8μg−N/gSS・h、および71.0μg−N/gSS・hと、単調増加することがわかる。すなわち、実施例2〜4の場合と同様に、流入N2Oガス濃度が比較的低い場合でも、混合気体のガス流量を制御することでN2Oの分解速度を制御できるので、混合気体のガス流量を制御することで、分解速度を所望の分解速度に制御できることがわかる。
また、実施例5〜7から、流入N2Oガス濃度が実施例2〜4に比して比較的小さい場合においては、嫌気状態における脱窒反応(溶存酸素濃度DO=0mg/L)によるN2Oの分解率が96.9%以上97.1%以下となり、極めて高い分解率を実現できることがわかる。すなわち、混合気体の流入N2Oガス濃度が比較的低い場合には、含まれているN2Oをほとんど除去できることがわかる。
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の実施形態において挙げた数値、材料、形状はあくまでも例に過ぎず、それぞれ、必要に応じてこれと異なる数値、材料、形状を採用してもよい。
上述の第1〜第5の実施形態においては、反応槽10を硝化菌によって硝化を行う好気槽としたが、反応槽10は嫌気性脱窒菌によって脱窒を行う脱窒槽であってもよい。
また、上述の第6の実施形態においては、好気槽60,70,80を物理的に分離した槽から構成しているが、複数の好気槽60,70,80を、隔壁または槽内流によって1つの好気槽内を仮想的に複数に区分けしたものであってもよい。
10 反応槽
10a,60a,70a,80a 密閉空間
11,52,55,58,61,71,81,91 攪拌機
12,62,72,82 空気散気部
13,23,24,25,27,35,36,37,43,44,46,47,63,64,73,74,83,84 配管
13a,24a,25a,27a,47a,63a,64a,73a,74a,83a,84a バルブ
14,26 ブロワ
15,45,65,75,85 蓋部
16 生物処理水
20,30 分解槽
21 好気脱窒菌担体層
21a 好気脱窒菌担体
22 混合気体散気部
28 オーバーフロー配管
28a オーバーフロー配管バルブ
31 嫌気脱窒菌担体層
31a 嫌気脱窒菌担体
33,33a,33b,33c,33d 仕切り板
34 シャワーボール
38 気液接触部
38a,38b,38c,38d,38e,38f 張り出し板
40 硝化槽
41 硝化菌担体層
42 混合気体散気部
51,54,57 無酸素槽
60,70,80 好気槽
90 固液分離槽
93 返送経路
93a ポンプ
94 汚泥
95 上澄水

Claims (6)

  1. 窒素含有排水に対して生物処理を行う活性汚泥を含む反応槽と、
    前記反応槽において生成された混合気体に含まれる亜酸化窒素を少なくとも好気脱窒菌により脱窒する分解槽と、
    を備え
    前記分解槽は、
    好気脱窒菌を担持する好気用担体が設けられる好気用担体層と、
    前記好気用担体層の上方に設けられ、嫌気脱窒菌を担持する嫌気用担体が設けられる嫌気用担体層と、
    前記好気用担体層内に前記混合気体を供給する混合気体散気手段と、を有し、
    前記好気用担体層において、前記混合気体散気手段から供給された前記混合気体に含まれる亜酸化窒素を脱窒し、前記嫌気用担体層において、前記好気用担体層を通過した前記混合気体に含まれる亜酸化窒素を脱窒する、排水処理装置。
  2. 前記分解槽は、前記好気用担体層及び前記嫌気用担体層との間に設けられ、液相及び気相を通過可能であって、好気用担体及び嫌気用担体が通過できないように構成される仕切り手段を更に有する、請求項に記載の排水処理装置。
  3. 記混合気体散気手段から散気される前記混合気体の流量を制御することによって前記亜酸化窒素の分解速度を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排水処理装置。
  4. 前記反応槽が好気槽であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の排水処理装置。
  5. 前記嫌気用担体層の上方に設けられ、前記窒素含有排水及び有機物を混合して前記嫌気用担体層に向けて供給する供給手段を更に有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の排水処理装置。
  6. 窒素含有排水に対して混合気体の生成を伴う生物処理を行う反応ステップと、
    前記混合気体を分解槽において好気脱窒菌を担持する好気用担体が設けられる好気用担体層に供給する供給ステップと、
    前記好気用担体層に供給された混合気体を前記好気脱窒菌に供給する好気ガス供給ステップと、
    前記好気用担体層内の前記好気脱窒菌により前記混合気体に含まれる亜酸化窒素を分解する好気分解ステップと、
    前記好気分解ステップ後に、前記分解槽において前記好気用担体層の上方に設けられ嫌気脱窒菌を担持する嫌気用担体が設けられる嫌気用担体層に、前記好気用担体層を通過した前記混合気体を供給する嫌気ガス供給ステップと、
    前記嫌気用担体層内の前記嫌気脱窒菌により、前記混合気体に含まれる亜酸化窒素を分解する嫌気分解ステップと、
    を含むことを特徴とする排水処理方法。
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