JP6540438B2 - 好気性固定床による被処理水の生物学的処理方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1においては、コークス炉ガス液(安水)を生物学的に処理するに際し、無酸素条件の脱窒槽と好気性雰囲気の硝化槽とを用い、前段の脱窒槽に後段の硝化槽からの硝化液を循環させてコークス炉ガス液中のチオシアン酸を水素供与体として利用する方法が提案されており、この方法は、無酸素条件の脱窒槽でチオシアン酸イオンと硝酸又は亜硝酸を除去し、また、好気性雰囲気の硝化槽でアンモニア性窒素を硝酸又は亜硝酸に酸化する方法である。しかしながら、この方法においては、最低でも2つの処理槽(実施例では2つの脱窒槽と2つの硝化槽が用いられている。)を設置する必要があり、既存の処理槽を有する設備ではその適用が現実的でないほか、無酸素条件の脱窒槽において水素供与体として利用するチオシアン酸成分が不足すると、処理コスト高の原因となるメタノール等の薬品を別途添加する必要が生じる。更に、この方法は、非特許文献1に開示されている通り、好気条件下でチオシアン酸イオンを除去する場合に比べて除去速度が著しく遅い。
先ず、被処理水中のチオシアン酸イオンを除去する微生物には付着性があることを知見し、また、この付着性微生物については、無酸素条件よりも好気性雰囲気の方がより速くチオシアン酸イオンを除去できることを確認した。そして、これらの知見から、好気性固定床による生物学的処理を検討する過程で、驚くべきことには、微生物の馴致処理の過程ではチオシアン酸イオンの除去とアンモニウムイオンの亜硝酸イオンへの酸化とが同時に生じることが認められたが、生物処理槽内において微生物馴致処理後の固定担体表面積当りの被処理水流量(以下、「固定担体表面積当りの被処理水流量」を単に「被処理水流量」ということがある。)を微生物馴致処理時の被処理水流量よりも多くすると、チオシアン酸イオンを分解する微生物は好気性固定床に留まり易くて流出され難く、また、アンモニアイオンを分解する微生物は好気性固定床に留まり難くて流出され易く、結果として、アンモニウムイオンの亜硝酸への酸化が抑制され、チオシアン酸イオンが選択的に除去されることを知見した。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
(1) 固定担体を備えた生物処理槽内にチオシアン酸イオン及びアンモニウムイオンを含有する被処理水を連続的に導入すると共に曝気して前記固定担体に微生物を定着させて好気性固定床を構成し、この好気性固定床の生物学的処理により前記被処理水を連続的に処理する方法であって、
前記生物処理槽内には、生物処理槽内の処理水若しくはこの槽内から排出される処理水のチオシアン酸イオン及び亜硝酸イオンをモニタリングしながら、前記固定担体に微生物を定着させて好気性固定床を構成する微生物馴致処理の第1段処理から第N段処理へと固定担体表面積当りの被処理水流量を段階的に又は連続的に変化させて被処理水を導入し、
第2段処理以降の前記被処理水流量については、被処理水中のチオシアン酸イオンの除去及び処理水中の亜硝酸イオンの生成抑制が確認されるまで、前段処理の被処理水流量よりも多くなるように制御し、
亜硝酸イオンの生成を抑制しつつチオシアン酸イオンを選択的に除去することを特徴とする好気性固定床による被処理水の生物学的処理方法。
(2) 前記第2段処理以降における固定担体表面積当りの被処理水流量の制御は、被処理水中のチオシアン酸イオンの除去及び処理水中の亜硝酸イオンの生成抑制が確認された後も、引き続いて前記第1段処理の被処理水流量よりも多くなるように行われることを特徴とする前記(1)に記載の好気性固定床による被処理水の生物学的処理方法。
(3) 前記第2段処理以降における固定担体表面積当りの被処理水流量の制御は、被処理水中のチオシアン酸イオンの除去及び処理水中の亜硝酸イオンの生成抑制が確認された後も、引き続き増加した被処理水流量を維持するように行われることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の好気性固定床による被処理水の生物学的処理方法。
(4) 前記被処理水中のチオシアン酸イオンの除去及び処理水中の亜硝酸イオンの生成抑制が確認された後における前記第2段処理より後の生物学的処理において、チオシアン酸イオンを分解し亜硝酸イオンを生成させない被処理水流量の変動により、前記処理水中のチオシアン酸イオンの除去率が低下した場合には前段処理の前記被処理水流量よりも減少させて行われ、また、前記処理水中の亜硝酸イオンの生成が生じた場合には前段処理の前記被処理水流量よりも増加させて行われることを特徴とする前記(1)に記載の好気性固定床による被処理水の生物学的処理方法。
(5) 前記生物処理槽内への被処理水の導入は、前記固定担体表面積当りの被処理水流量を段階的に変化させて行われる前記(1)〜(4)のいずれかに記載の好気性固定床による被処理水の生物学的処理方法。
(6) 前記微生物処理槽内の処理水若しくはこの槽内から排出される処理水のpH値をモニタリングし、前記生物処理槽内の処理水若しくはこの槽内から排出される処理水のチオシアン酸イオン濃度が所定の値以上になり、更に前記処理水のpH値が7.0未満に低下した際に、前記生物処理槽内のpH値を7.0〜8.5の範囲に調整することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の好気性固定床による被処理水の生物学的処理方法。
図2において、被処理水の生物学的処理設備は、生物処理槽1と沈降槽2とを基に構成されている。前記生物処理槽1には配管3を介して処理対象となる被処理水が導入され、また、この生物処理槽1内には、微生物を定着させる固定担体9が槽内に導入される被処理水と接触するように設置されていると共に、汚濁物質のチオシアン酸イオンを除去し得る微生物が生息する図示外の微生物植種源が投入される。また、この生物処理槽1には、水面にモーター11で駆動される表面曝気装置10が、若しくは前記生物処理槽1の水中にはエアポンプ12が設けられており、これら表面曝気装置10若しくはエアポンプ12により空気が送り込まれて曝気され、被処理水の生物学的処理における微生物馴致処理(第1段処理)の際に、前記固定担体9の表面に微生物植種源又は被処理水由来の微生物が定着して好気性固定床が形成される。そして、生物処理槽1内に導入された被処理水は、この生物処理槽1内を前記固定担体9の表面積当り所定の流量で移動し、その間にチオシアン酸イオンが除去されて処理水となり、この処理水が配管4を介して沈降槽2に送り込まれ、更に、この沈降槽2内で固液分離されて上澄み部分が最終処理水となり、この最終処理水が配管5を介してこの生物学的処理設備の系外に排出されるようになっている。
工業用水と自然海水とを体積比2:3で混合して得られた溶媒中に、下記の表1に示す溶質を表1に示す濃度で溶解し、好気性条件下で用いる人工排水(被処理水)を調製した。
この微生物馴致処理(第1段処理)後の8日間の生物処理領域20a内の処理水中のチオシアン酸イオンの平均濃度は、図4に示すように、検出下限(2.5mgSCN/L)未満であり、また、亜硝酸イオンの平均濃度は70mgN/Lであった。また、この期間に測定された生物処理領域20a内のMLSSの平均濃度は141mg/Lであり、浮遊している活性汚泥がチオシアン酸イオンの除去に寄与する割合が小さいことが確認された。
この期間の処理水中のチオシアン酸イオンの平均濃度は、図4に示すように、2.5mgSCN/Lであり、また、亜硝酸イオンの平均濃度は61mgN/Lであった。また、この際に測定された生物処理領域20a内のMLSSの平均濃度は70mg/Lであり、この時も浮遊している活性汚泥がチオシアン酸イオンの除去に寄与する割合が小さいことが確認された。
この期間の処理水中のチオシアン酸イオンの平均濃度は、図4に示すように、5.5mgSCN/Lであり、また、亜硝酸イオンの平均濃度は2.3mgN/Lであった。また、この際に測定された生物処理領域20a内のMLSSの平均濃度は56mg/Lであり、この時も浮遊している活性汚泥がチオシアン酸イオンの除去に寄与する割合が小さいことが確認された。
安定後6日間の処理水中のチオシアン酸イオンの平均濃度は、図4に示すように、11mgSCN/Lであり、また、亜硝酸イオンの平均濃度は0.3mgN/Lであった。また、この際に測定された生物処理領域20a内のMLSSの平均濃度は92mg/Lであり、この時も浮遊している活性汚泥がチオシアン酸イオンの除去に寄与する割合が小さいことが確認された。
上記実施例1の生物学的処理において、固定担体21表面積当りの被処理水流量85L/dayで52日間操業した後に、生物処理槽20の生物処理領域20a内の微生物が付着した固定担体21を取り除き、前記生物処理領域20a内に浮遊する活性汚泥を使用し、実施例1の場合と同様に、チオシアン酸イオン及び亜硝酸イオンのモニタリングとpH値のモニタリングとを行いながら、また、その他の処理条件も実施例1の場合と同様にした。
この35日間の生物学的処理における運転日数とその間に測定されたチオシアン酸イオン濃度及び亜硝酸イオン濃度との関係を図5に示す。
この図5に示す35日間の生物学的処理において、0日目は浮遊する活性汚泥のみで生物学的処理を行った結果を示しており、また、その後は個体担体21をセットした後におけるチオシアン酸イオン濃度及び亜硝酸イオン濃度を示している。
なお、固定担体無しの生物学的処理において、亜硝酸イオンの生成が抑制されていたのは、上述の通り、好気性固定床を構成して固定担体表面積1m2当り被処理水流量85L/dayで生物学的処理を行った後に、固定担体21を取り外して実施したため、アンモニウムイオンを酸化して亜硝酸イオンを生成させる微生物が既に生物処理槽20内から槽外に流出していたからであると考えられる。
工業用水と自然海水とを体積比2:3で混合して得られた溶媒中に、下記の表2に示す溶質を表2に示す濃度で溶解し、好気性条件下で用いる人工排水(被処理水)を調製した。この実施例3においては、実施例1の溶質に加えて、コークス炉排水に含まれる主なCOD成分のフェノール及びチオ硫酸イオンを追加した。
この微生物馴致処理(第1段処理)後の8日間の生物処理領域20a内の処理水中のチオシアン酸イオンの平均濃度は、図6に示すように、7.3mgSCN/Lであり、また、亜硝酸イオンの平均濃度は141mgN/Lであった。
この期間の処理水中のチオシアン酸イオンの平均濃度は、図6に示すように、3.7mgSCN/Lであり、また、亜硝酸イオンの平均濃度は3.7mgN/Lであった。また、この際に測定された生物処理領域20a内のMLSSの平均濃度は80mg/Lであり、浮遊している活性汚泥がチオシアン酸イオンの除去に寄与する割合が小さいことが確認された。
この期間の処理水中のチオシアン酸イオンの平均濃度は、図6に示すように、13mgSCN/Lであり、また、亜硝酸イオンの平均濃度は0.6mgN/Lであった。また、この際に測定された生物処理領域20a内のMLSSの平均濃度は13mg/Lであり、この時も浮遊している活性汚泥がチオシアン酸イオンの除去に寄与する割合が小さいことが確認された。
この期間の処理水中のチオシアン酸イオンの平均濃度は、図6に示すように、159mgSCN/Lであり、また、亜硝酸イオンの平均濃度は0.16mgN/Lであった。また、この際に測定された生物処理領域20a内のMLSSの平均濃度は71mg/Lであり、この時も浮遊している活性汚泥がチオシアン酸イオンの除去に寄与する割合が小さいことが確認された。
安定後9日間の処理水中のチオシアン酸イオンの平均濃度は、図6に示すように、6.6mgSCN/Lであり、また、亜硝酸イオンの平均濃度は0.19mgN/Lであった。また、この際に測定された生物処理領域20a内のMLSSの平均濃度は142mg/Lであり、この時も浮遊している活性汚泥がチオシアン酸イオンの除去に寄与する割合が小さいことが確認された。
この期間の処理水中のチオシアン酸イオンの平均濃度は、図6に示すように、
0.50mgSCN/Lであり、また、亜硝酸イオンの平均濃度は2.3mgN/Lであった。この間の処理水中のチオシアン酸イオン及び亜硝酸イオンの濃度の経過は、図7に示すように、チオシアン酸イオンの除去率を高い値に維持しつつ、亜硝酸イオンの生成のほぼ完全な抑制も維持していた。また、この際に測定された生物処理領域20a内のMLSSの平均濃度は119mg/Lであり、この時も浮遊している活性汚泥がチオシアン酸イオンの除去に寄与する割合が小さいことが確認された。
Claims (6)
- 固定担体を備えた生物処理槽内にチオシアン酸イオン及びアンモニウムイオンを含有する被処理水を連続的に導入すると共に曝気して前記固定担体に微生物を定着させて好気性固定床を構成し、この好気性固定床の生物学的処理により前記被処理水を連続的に処理する方法であって、
前記生物処理槽内には、生物処理槽内の処理水若しくはこの槽内から排出される処理水のチオシアン酸イオン及び亜硝酸イオンをモニタリングしながら、前記固定担体に微生物を定着させて好気性固定床を構成する微生物馴致処理の第1段処理から第N段処理へと固定担体表面積当りの被処理水流量を段階的に又は連続的に変化させて被処理水を導入し、
第2段処理以降の前記被処理水流量については、被処理水中のチオシアン酸イオンの除去及び処理水中の亜硝酸イオンの生成抑制が確認されるまで、前段処理の被処理水流量よりも多くなるように制御し、
亜硝酸イオンの生成を抑制しつつチオシアン酸イオンを選択的に除去することを特徴とする好気性固定床による被処理水の生物学的処理方法。 - 前記第2段処理以降における固定担体表面積当りの被処理水流量の制御は、被処理水中のチオシアン酸イオンの除去及び処理水中の亜硝酸イオンの生成抑制が確認された後も、引き続いて前記第1段処理の被処理水流量よりも多くなるように行われることを特徴とする請求項1に記載の好気性固定床による被処理水の生物学的処理方法。
- 前記第2段処理以降における固定担体表面積当りの被処理水流量の制御は、被処理水中のチオシアン酸イオンの除去及び処理水中の亜硝酸イオンの生成抑制が確認された後も、引き続き増加した被処理水流量を維持するように行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の好気性固定床による被処理水の生物学的処理方法。
- 前記被処理水中のチオシアン酸イオンの除去及び処理水中の亜硝酸イオンの生成抑制が確認された後における前記第2段処理より後の生物学的処理において、チオシアン酸イオンを分解し亜硝酸イオンを生成させない被処理水流量の変動により、前記処理水中のチオシアン酸イオンの除去率が低下した場合には前段処理の前記被処理水流量よりも減少させて行われ、また、前記処理水中の亜硝酸イオンの生成が生じた場合には前段処理の前記被処理水流量よりも増加させて行われることを特徴とする請求項1に記載の好気性固定床による被処理水の生物学的処理方法。
- 前記生物処理槽内への被処理水の導入は、前記固定担体表面積当りの被処理水流量を段階的に変化させて行われる請求項1〜4のいずれかに記載の好気性固定床による被処理水の生物学的処理方法。
- 前記微生物処理槽内の処理水若しくはこの槽内から排出される処理水のpH値をモニタリングし、前記生物処理槽内の処理水若しくはこの槽内から排出される処理水のチオシアン酸イオン濃度が所定の値以上になり、更に前記処理水のpH値が7.0未満に低下した際に、前記生物処理槽内のpH値を7.0〜8.5の範囲に調整することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の好気性固定床による被処理水の生物学的処理方法。
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