JP6075194B2 - チオシアン分解菌の集積方法及びチオシアンの分解方法 - Google Patents

チオシアン分解菌の集積方法及びチオシアンの分解方法 Download PDF

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Description

本発明は、自然海水からチオシアン分解菌を集積する方法、及び、それにより集積されたチオシアン分解菌を用いてチオシアンを分解する方法に関する。
チオシアンは、製鉄所のコークス炉排水である安水等に含まれる硫黄化合物である。安水は、主要なCOD(Chemical Oxygen Demand:化学的酸素要求量)成分としてフェノール、チオ硫酸、チオシアン等を含むが、通常は活性汚泥処理によりこれらのCOD成分を分解処理している(非特許文献1)。
但し、フェノール、チオ硫酸は活性汚泥処理により比較的容易に分解されるのに対して、チオシアンは分解され難く、活性汚泥処理をしても分解せずに残ってしまうことが知られている(特許文献1)。
また、チオシアン分解菌は、これまで好気性の微生物と考えられてきたため、活性汚泥処理で積極的に空気曝気することで、チオシアン分解を促進することが試みられている(非特許文献2)。
また、安水を処理する活性汚泥中のチオシアン分解菌を同定することも試みられており、片山らは、安水処理活性汚泥から好気性のチオシアン分解菌チオバシラス・チオパルス(Thiobaci11us Thioparus)を単離培養することに成功している(非特許文献3)。
Shaw, K.C. (1993) Biological treatment of full-strength coke plant waste water at Genova Steel., Iron and Steel Engineering, 29-32. 藤田、八田、「製鉄研究」、第300号、1980 Katayama, Y. and Kuraishi, Y (1978), Canadian Journal of Microbiology, vol. 24, 804-810.
特開平9−290290号公報
安水処理活性汚泥に存在する好気性のチオシアン分解菌であるチオバシラス・チオパルス(Thiobaci11us Thioparus)が、片山ら(非特許文献3)によって同定された。しかし、本発明者らが調べた結果、実際の安水処理活性汚泥では、片山らが報告したチオシアン分解菌であるチオバシラス・チオパルス(Thiobaci11us Thioparus)がPCR(polymerase chain reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)法により検出されない場合であっても、チオシアンの分解が良好に起こっているケースが殆どであることが判明した。
したがって、片山らの培養方法とは全く異なる方法で、チオシアン分解菌を集積培養することができれば、新たなチオシアン分解菌の解明が進む他、集積したチオシアン分解菌をチオシアンの分解に利用できるメリットも考えられる。
また、チオシアン分解菌を利用してチオシアンを分解させたい場合であっても、チオシアン分解菌を簡便に集積する方法が確立されていなかったため、チオシアン分解菌を利用してチオシアンを分解させることは実質的に難しかった。
そこで、本発明は、自然海水からチオシアン分解菌を簡便に集積する方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明者らは、自然海水からチオシアン分解菌を集積する方法について鋭意検討することにより、自然海水からチオシアン分解菌を集積する方法を確立することに成功し、本発明を完成するに至った。
本発明の要旨とするところは、次の(1)〜(11)である。
(1)自然海水と淡水との混合液に、チオシアン酸イオン、アンモニウムイオン、炭酸イオン、及びリン酸イオンを含有させた水溶液をチューブ内に通液して、前記自然海水中に存在するチオシアン分解菌を前記チューブの内壁に集積させることを特徴とする、チオシアン分解菌の集積方法。
(2)前記チューブがシリコーン樹脂製である、(1)に記載の方法。
(3)前記自然海水と前記淡水との混合割合が体積比で1:1〜3:1の範囲である、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)チオシアン酸イオンがチオシアン酸ナトリウムに由来し、アンモニウムイオンが塩化アンモニウムに由来し、炭酸イオンが炭酸水素ナトリウムに由来し、リン酸イオンがリン酸水素二ナトリウムに由来する、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の方法。
(5)前記水溶液中のチオシアン酸イオン濃度が50mg/L以上300mg/L以下であり、アンモニウムイオン濃度が300mg/L以上1300mg/L以下であり、炭酸イオン濃度が600mg/L以上2600mg/L以下であり、リン酸イオン濃度が6mg/L以上40mg/L以下である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の方法。
(6)前記チューブ内を通液する環境が10℃以上40℃以下の温度範囲である、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の方法。
(7)前記チューブの内径が1mm以上4mm以下である、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の方法。
(8)前記チューブの長さが50cm以上200cm以下である、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の方法。
(9)前記水溶液を20mL/時間以下の流量でチューブ内に通液する、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の方法。
(10)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の方法でチューブ内壁にチオシアン分解菌を集積したチューブ内に、チオシアンを含有する液を通液することを特徴とする、チオシアンの分解方法。
(11)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の方法でチューブ内壁にチオシアン分解菌を集積することを含む、チオシアンを分解するためのチューブの製造方法。
本発明により、簡便な手法で、自然海水からチオシアン分解菌を集積することが可能になる。チオシアン分解菌を利用したチオシアン分解の安定化、効率化が期待できる。
図1は実施例1の結果を示すグラフである。 図2は実施例2の結果を示すグラフである。 図3は実施例3の結果を示すグラフである。 図4は実施例4の結果を示すグラフである。 図5は実施例5の結果を示すグラフである。 図6は実施例6の結果を示すグラフである。 図7は実施例7の結果を示すグラフである。 図8は実施例8の結果を示すグラフである。 図9は実施例9の結果を示すグラフである。 図10は実施例10の結果を示すグラフである。
以下、本発明の好適な実施の形態について、詳細に説明する。但し、本発明は決して以下の実施の形態に束縛されるものではなく、適宜変更を加えて実施することが可能である。
なお、本明細書では、チオシアン酸、チオシアン酸イオン、及び各種のチオシアン酸塩(例えばチオシアン酸ナトリウム等)を総称して、単に「チオシアン」という場合がある。
[I.チオシアン分解菌の集積方法]
本発明の第1の態様は、チオシアン分解菌の集積方法に関する。
まず、本発明で使用する自然海水について説明する。
本態様において、自然海水はチオシアン分解菌の供給源となる。自然海水であれば、いかなる海域の自然海水でも使用可能である。
自然海水の採取から使用までの時間は、なるべく短い方が好ましい。具体的には、例えば48時間以内であることが好ましい。自然海水の採取から使用までの時間が長過ぎると、自然海水に含まれるチオシアン分解菌の増殖に必要な微量なミネラル成分が他の微生物によって消費されることにより、あるいは、自然海水を保管したタンクの底部に水酸化物等の形態で沈降してしまうことにより、チオシアン分解菌がこれら微量なミネラル成分を利用できなくなって、チオシアン分解菌の増殖が抑制される可能性があるからである。勿論、採取から使用までの時間が48時間を超えた自然海水であっても使用可能ではあるが、チオシアン分解菌が集積し難くなる可能性が高くなるため、自然海水の採取から使用までの時間はなるべく短い方が好ましい。
次に、本発明で使用する淡水について説明する。本発明では、上記の自然海水に淡水を混合して用いる。
淡水の種類は制限されず、任意の淡水を使用することができる。具体的には、河川湖沼水、地下水等の自然環境から得られる淡水の他、農業用水、工業用水、上水道から供給される淡水や、蒸留水、脱イオン水等の精製した水も淡水として使用可能である。
自然海水と淡水との混合割合は、体積比で1:1〜3:1の範囲とすることが好ましい。
自然海水と淡水との体積比において、1:1よりも淡水の混合割合が高くなると、自然海水由来のチオシアン分解菌を集積させるためには海水由来の塩分濃度が不十分となり、効率良くチオシアン分解菌を集積することが困難になる可能性がある。
一方、自然海水と淡水との体積比において、3:1よりも自然海水の混合割合が高くなると、本発明で集積させるチオシアン分解菌が海水に近い高塩分濃度に馴養されてしまう。しかし、集積させたチオシアン分解菌を排水に含まれるチオシアンの分解に使用しようとする場合、これらチオシアンを含む排水の塩分濃度は海水と比較して低いことが考えられる。したがって、本発明では、自然海水と淡水との割合が体積比で3:1以下になるように混合することで、排水に含まれるチオシアンの分解に適応させるよう、チオシアン分解菌を馴養して集積することが好ましい。
以上の理由から、自然海水と淡水とを1:1〜3:1の体積比の範囲で混合した混合液を用いることが好ましい。
次に、本発明でチオシアン分解菌を集積させるために用いる水溶液の作製方法について説明する。
本発明では、前記の自然海水と淡水との混合液に、チオシアン酸イオン、アンモニウムイオン、炭酸イオン、及びリン酸イオンを含有させた水溶液を用いる(以下適宜「集積用水溶液」という。)。
チオシアン酸イオンは、チオシアン分解菌の基質となる。チオシアン酸イオンの供給源としては、チオシアン酸又はチオシアン酸塩を用いる。チオシアン酸塩としては、制限されるものではないが、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム等が挙げられる。中でも、チオシアン酸イオン源としては、チオシアン酸ナトリウムが好ましい。なお、複数のチオシアン酸イオン源を併用してもよい。
アンモニウムイオンは、チオシアン分解菌を集積するために必要である。アンモニウムイオンは、自然海水中に存在する好気性微生物のアンモニア酸化細菌の作用を受けて亜硝酸イオンに、さらに亜硝酸イオンは同じく好気性微生物の硝化細菌の作用を受けて硝酸イオンに酸化される。本発明で用いるチューブに流入する前の淡水と自然海水との混合液は酸素を含んでいる。チューブの入り口付近のチューブ内壁に好気性微生物であるアンモニア酸化細菌や硝化細菌が付着して棲息することにより、酸素呼吸により酸素が消費されて嫌気性環境になる他、嫌気性微生物の呼吸基質となる亜硝酸イオンや硝酸イオンが発生し、チューブの内部に供給されることになる。したがって、チューブの内壁に嫌気性微生物であるチオシアン分解菌を集積することが可能となるのである。
アンモニウムイオンの供給源としては、アンモニウム塩を用いる。アンモニウム塩としては、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等が挙げられるが、中でも塩化アンモニウムが好ましい。なお、複数のアンモニウムイオン源を併用してもよい。
炭酸イオンは、水溶液のpHを調製するとともに、嫌気性微生物であるチオシアン分解菌の炭素源として用いる。炭酸イオンの供給源としては、炭酸又は炭酸塩を用いる。炭酸塩の例としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。中でも、炭酸イオン源としては、炭酸水素ナトリウムが好ましい。なお、複数の炭酸イオン源を併用してもよい。
リン酸イオンは、チオシアン分解菌やアンモニア酸化細菌、硝化細菌等、本発明のチューブの内部で棲息する微生物が必要とするリンを供給するために用いる。リン酸イオンの供給源としては、リン酸又はリン酸塩を用いる。リン酸塩の例としては、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等が挙げられる。中でも、リン酸イオン源としては、リン酸水素二ナトリウムが好ましい。なお、複数のリン酸イオン源を併用してもよい。
前記の自然海水と淡水との混合液に、上述のチオシアン酸イオン源、アンモニウムイオン源、炭酸イオン源、及びリン酸イオン源を溶解させることにより、当該混合液にチオシアン酸イオン、アンモニウムイオン、炭酸イオン、及びリン酸イオンを含有させた水溶液(集積用水溶液)を作製する。各イオン源の使用量は、限定されるものではないが、得られる集積用水溶液中のチオシアン酸イオンの濃度が50mg/L以上300mg/L以下、アンモニウムイオンの濃度が300mg/L以上1300mg/L以下、炭酸イオンの濃度が600mg/L以上2600mg/L以下、リン酸イオンの濃度が6mg/L以上40mg/L以下となるように、それぞれ調整することが好ましい。
例えば、チオシアン酸イオン源としてチオシアン酸ナトリウムを用い、アンモニウムイオン源として塩化アンモニウムを用い、炭酸イオン源として炭酸水素ナトリウムを用い、リン酸イオン源としてリン酸水素二ナトリウムを用いる場合には、チオシアン酸ナトリウム濃度が70mg/L以上420mg/L以下、塩化アンモニウム濃度が892mg/L以上3864mg/L以下、炭酸水素ナトリウム濃度が840mg/L以上3641mg/L以下、リン酸水素二ナトリウム濃度が9mg/L以上60mg/L以下となるように、前記の混合液に対してそれぞれ溶解させることにより、集積用水溶液を作製することが好ましい。
集積用水溶液中のチオシアン酸イオンの濃度が50mg/L未満の場合には、チオシアンの供給量が不足するため、チオシアン分解菌を効率的に集積することができなくなる可能性がある。一方、集積用水溶液中のチオシアン酸イオンの濃度が300mg/Lを超える場合には、チオシアン濃度が高過ぎるため、チオシアン分解菌に阻害的に作用して、集積を抑制する可能性がある。したがって、集積用水溶液に含まれるチオシアン酸イオンの濃度は、50mg/L以上300mg/L以下であることが好ましい。
集積用水溶液中のアンモニウムイオンの濃度が300mg/L未満の場合には、アンモニア酸化細菌、あるいは硝化細菌の働きによりチューブ内に供給される亜硝酸イオン、あるいは硝酸イオンの量が不足するため、チオシアン分解菌をチューブの内壁に安定に集積できなくなる可能性がある。一方、集積用水溶液中のアンモニウムイオンの濃度が1300mg/Lを超える場合には、アンモニウムイオンの濃度が高過ぎるため、アンモニア酸化細菌や硝化細菌が亜硝酸イオン、硝酸イオンを生成する効率を低める可能性がある他、チオシアン分解菌の増殖も阻害する可能性がある。したがって、集積用水溶液に含まれるアンモニウムイオンの濃度は、300mg/L以上1300mg/L以下であることが好ましい。
集積用水溶液中の炭酸イオンの濃度が600mg/L未満の場合には、アンモニアイオンを亜硝酸イオンに酸化させるアンモニア酸化細菌や亜硝酸イオンを硝酸イオンに酸化させる硝化細菌の作用により、集積用水溶液のpHが低下してしまい、チューブ内壁にチオシアン分解菌を集積できなくなる可能性がある。また、炭酸イオンは、チューブ内部で集積されるチオシアン分解菌の炭素源であり、炭素源が枯渇することで、チオシアン分解菌の増殖を抑制することが懸念される。一方、集積用水溶液中の炭酸イオンの濃度が2600mg/Lを超える場合には、逆に集積用水溶液のpHが高くなり過ぎて、チューブ内壁にチオシアン分解菌を集積できなくなる可能性がある。したがって、集積用水溶液に含まれる炭酸イオンの濃度は、600mg/L以上2600mg/L以下であることが好ましい。
集積用水溶液中のリン酸イオンの濃度が6mg/L未満の場合には、微生物に供給されるリンの量が不足する可能性があり、チオシアン分解菌の集積を抑制してしまう可能性が考えられる。一方、集積用水溶液中のリン酸イオンの濃度が40mg/Lを超える場合は、チオシアン分解菌やアンモニア酸化細菌や硝化細菌等、微生物が必要とするリンを十分供給することができるものの、必要以上のリンを供給することとなるためコスト的にまた貴重な資源であるリンを無駄に消費することになり不利である。したがって、集積用水溶液中のリン酸イオンの濃度は6mg/L以上40mg/L以下であることが好ましい。
次に、本発明においてチオシアン分解菌を集積するためにチューブを用いる理由について説明する。
まず、嫌気性微生物であるチオシアン分解菌を、チューブ内壁ではなく、例えば水処理で使用されるような担体に付着させて集積させると仮定する。
この場合、窒素ガスによるバブリング等の手段で、強制的に水から酸素を抜かない場合、水に溶けている酸素のため、担体には酸素呼吸をする好気性微生物が優占的に付着してしまう。担体に付着した好気性微生物が形成するバイオフィルムの内部は嫌気性環境になるため、嫌気性微生物であるチオシアン分解菌も棲息できるようになる。しかし、担体の表面は好気性微生物に覆われるため、嫌気性微生物であるチオシアン分解菌がチオシアンを含む水と効率的に接することが困難となる。また、嫌気性微生物であるチオシアン分解菌は、あくまで好気性微生物と担体とに挟まれた空間にしか棲息できず、本発明のようにチオシアン分解菌を容易に集積することは困難と考えられる。また、窒素ガスによるバブリングのように強制的に水から酸素を抜いて嫌気性環境にする場合には、嫌気性環境を保つためのエネルギーコスト、特別な設備、そして嫌気性環境を整えるための手間と時間がかかるため、効率的とは言い難い。
一方、本発明ではチューブを用いてチオシアン分解菌を集積する。チューブを用いる利点として以下の理由が考えられる。通常の環境で得られる淡水と自然海水とを混合した混合液にチオシアン酸イオンやアンモニウムイオン等を溶解させた上記の集積用水溶液には、酸素が溶存している。この水溶液をチューブの内部を通すことによって、チューブを入ってすぐの領域において、当該水溶液中に存在する酸素呼吸をする好気性微生物がチューブ内壁に付着して集積する。これら好気性微生物は酸素を消費するため、チューブの内部に進む水溶液は溶存酸素が欠乏した状態となる。また、チューブ入り口付近のチューブ内壁に付着する好気性微生物には、アンモニア塩のアンモニウムイオンを亜硝酸イオンに酸化するアンモニア酸化細菌や亜硝酸イオンを硝酸イオンに酸化する硝化細菌が存在し、嫌気性微生物であるチオシアン分解菌の呼吸基質となる硝酸イオンや亜硝酸イオンをチューブ内壁に付着して棲息するチオシアン分解菌に供給することが可能となる。したがって、チューブを用いることでチオシアン分解菌を容易かつ効率的に集積することが可能となるのである。
次に、本発明において用いるチューブの形状について説明する。
本発明において用いるチューブは、チューブの内壁に均一にチオシアン分解菌が集積できるように、断面が円形であることが好ましい。
本発明において用いるチューブの内径は、チューブ内側を流れる水溶液が効率よく嫌気性環境となるように、且つ、チューブ内壁に付着して棲息するチオシアン分解菌がチューブ内側を流れる水溶液と効率よく接することができるように決定することが好ましい。具体的には、本発明において用いるチューブの内径は、限定されるものではないが、1mm以上4mm以下であることが好ましい。チューブの内径が1mm未満の場合には、チューブ内側への送液の抵抗が大きくなり水溶液の送液が難しくなることがある。一方、チューブの内径が4mmを超える場合には、チューブ内壁に付着して棲息するチオシアン分解菌が送液される水溶液と効率的に接し難くなる可能性がある。
本発明において用いるチューブの長さは、限定されるものではないが、50cm以上200cm以下であることが好ましい。チューブの長さが50cm未満の場合には、チューブ内側を流れる水溶液に含まれるチオシアンを分解するのに十分なチオシアン分解菌をチューブ内壁に集積できない可能性がある。一方、チューブの長さが200cmを超える場合には、チューブの途中で水溶液に含まれるチオシアンの分解が完了してしまい、残る部分のチューブでの処理が不要となり、非効率となる可能性がある。
次に、チューブの内側を通過する集積用水溶液の流量について説明する。
チューブの内側を通過する集積用水溶液の流量が0.5mL/h未満の場合には、当該水溶液中のチオシアンが、チューブの内壁に集積したチオシアン分解菌によりチューブの入口近傍付近で分解されてしまい、チューブの出口付近ではチオシアンが不足して、チオシアン分解菌の集積効率が低下する可能性がある。一方、チューブの内側を通過する水溶液の流量が20mL/hを超える場合には、流量が多過ぎて、水溶液に含まれるチオシアンがチューブの内壁に集積するチオシアン分解菌により効率的に利用されない可能性や、チューブの内壁に付着して増殖するチオシアン分解菌が、当該水溶液によってチューブ内壁から剥離し、流失してしまう可能性がある。したがって、チューブの内側を通過する水溶液の流量は、0.5mL/h以上20mL/h以下とすることが好ましい。
次に、本発明でチオシアン分解菌を集積するためにチューブを設置した環境の温度について説明する。
温度が10℃未満の場合には、温度が低過ぎてチオシアン分解菌の増殖が抑制されるため、チューブの内壁に効率的にチオシアン分解菌を集積することができなくなる可能性がある。一方、温度が40℃を超える場合は、温度が高過ぎてチオシアン分解菌が死滅するため、チューブの内壁に効率的にチオシアン分解菌を集積することができなくなる可能性がある。したがって、チューブを設置した環境の温度は、10℃以上40℃以下であることが好ましい。
次に、本発明で使用するチューブの材質について説明する。
本発明で使用するチューブの材質は、微生物が付着可能な材質であれば限定されず、任意の材質が使用できる。中でも、入手の容易さ、変形のし易さ、ペリスタポンプを用いた送液の容易さ等の観点から、シリコーン樹脂を材質とするチューブが好ましい。
上記の集積用水溶液を、上記の条件の下で、上記のチューブの内側にかけ流しの状態で通液することにより、チューブの内壁にチオシアン分解菌を集積させる。チオシアン分解菌の集積には、限定されるものではないが、チューブ内側への水溶液の通液開始後、通常は2〜3週間程度の時間を要する。
チオシアン分解菌がチューブ内壁に集積したことの判断は、例えば、チューブの内側を通り抜ける前の水溶液と、チューブの内側を通り抜けてきた水溶液のチオシアン濃度を分析して比較することにより、チューブの内側を通り抜けてきた水溶液のチオシアンの濃度が低下することを確認することにより、判断することができる。通常、本発明のチオシアン分解菌の集積方法により、チューブの内側を通り抜けてきた水溶液のチオシアンの濃度を2.5mg/L未満にまで低下させることが可能である。尚、チオシアンの濃度の分析方法としては、例えば高速液体クロマトグラフィーを用いる方法等がある。
以上説明したチオシアン分解菌の集積方法によれば、チューブ内壁にチオシアン分解菌を集積させたチューブが得られる。斯かるチューブの内壁に集積されたチオシアン分解菌は、上述の片山ら(非特許文献3)による培養方法とは全く異なる方法で集積されたものである。従って、上記方法により集積されるチオシアン分解菌は、上述の片山ら(非特許文献3)によって同定されたチオシアン分解菌チオバシラス・チオパルス(Thiobaci11us Thioparus)とは異なる新規なチオシアン分解菌を含むものと考えられる。斯かるチオシアン分解菌を内壁に集積させた上記のチューブやその製造方法も、本発明の対象となる。なお、本チューブの製造方法は、上述のチオシアン分解菌の集積方法を用いてチューブ内壁にチオシアン分解菌を集積する工程の他に、任意の工程(例えば各種の後処理工程等)を含んでいてもよい。また、斯かる製造方法で得られるチューブは、前記の新規なチオシアン分解菌が内壁に集積されたものであるが、斯かる新規なチオシアン分解菌に加えて、従来公知のチオシアン分解菌が混在していてもよい。
[II.チオシアンの分解方法]
本発明の第2の態様は、チオシアンの分解方法に関する。
上記の第1の態様に係るチオシアン分解菌の集積方法によれば、チューブ内壁にチオシアン分解菌を集積させたチオシアン分解菌集積チューブが得られる。このチオシアン分解菌集積チューブの内側に、チオシアンを含む水溶液(以下適宜「処理対象液」という。)を通過させることにより、処理対象液に含まれるチオシアンを分解することが可能である。
チューブの内壁に付着して棲息しているチオシアン分解菌は、自然海水と淡水との体積比1:1〜3:1の範囲の混合液を溶媒として作製した上記の集積用水溶液を用いて集積しているため、可能であれば、上記の集積用水溶液と同程度の塩化ナトリウム濃度及び同程度のチオシアン濃度を有する処理対象液を処理することが好ましい。
処理対象液の流量は、集積したチオシアン分解菌がチューブ内壁から剥離するのを避けるため、1チューブあたり20mL/h以下であることが好ましい。但し、流量が低いと非効率となるため、1チューブあたり1mL/h以上であることが好ましい。したがって、処理対象液の流量は、チオシアン分解菌集積時の集積用水溶液の流量と同様に、1mL/h以上20mL/h以下であることが好ましい。
チオシアン分解時の温度も、チオシアン分解菌が効率的にチオシアン分解を行えるように、チオシアン分解菌集積時のチューブの環境温度と同様に、10℃以上40℃以下であることが好ましい。
なお、チオシアン分解菌集積チューブは一本のみ使用してもよいが、処理対象液に含まれるチオシアンを効率的に分解するために、二本以上のチオシアン分解菌集積チューブを並列に設けてもよい。複数のチューブを並列に配置することで、複数のチューブで同時にチオシアンを分解することができるとともに、処理対象液の流量もチューブの本数に応じて増加させることができ、効率化を図ることが可能となる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。
実施例1
脱イオン水と自然海水(千葉県富津市で採水:以下同様)とを体積比1:1.5で混合した混合液を調製した。この混合液1Lにつき、表1に示すように、チオシアン酸ナトリウム(チオシアン酸イオン源)、塩化アンモニウム(アンモニウムイオン源)、炭酸水素ナトリウム(炭酸イオン源)、及びリン酸水素二ナトリウム(リン酸イオン源)を溶解させて、チオシアン分解菌を集積させるための水溶液(集積用水溶液)を作製した。
Figure 0006075194
また、内径2mm長さ100cmの断面が円形のシリコーンチューブを、ペリスタポンプに連結し、その一端を前記作製した集積用水溶液の中に入れ、温度20℃の室内で、集積用水溶液を流量10mL/hでチューブの内側に通液した。チューブの出側には容器を設け、チューブから排出される液を回収し、チオシアン濃度を経時的に分析した。結果を図1に示す。
図1に示したように、3週間後には、チューブを通過して排出される液のチオシアン濃度が実質的にゼロとなり、チオシアン分解菌がチューブの内壁に集積したことが明らかになった。
以上の結果により、本発明の方法によって、チューブの内壁にチオシアン分解菌を集積できることが実証された。
実施例2
脱イオン水と自然海水とを体積比1:0.5、1:1、1:3、及び1:5で混合した混合液をそれぞれ調製した。
これらの混合液それぞれ1Lにつき、表1に示すように、チオシアン酸ナトリウム、塩化アンモニウム、炭酸水素ナトリウムリン酸水素二ナトリウムを溶解させて、チオシアン分解菌を集積させるための水溶液(集積用水溶液)を作製した。
内径2mm、長さ100cmの断面が円形のシリコーンチューブを、ペリスタポンプに連結し、その一端を前記作製した集積用水溶液の中に入れ、温度20℃の室内で、集積用水溶液を流量10mL/hでチューブの内側に通液した。4週間経過後、チューブを通り抜けてきた水を回収し、チューブを通過して排出された液のチオシアン濃度を測定した。
チューブに入る前の集積用水溶液のチオシアン濃度から、チューブを通過した排出液のチオシアン濃度を引いた差の値を、チューブに入る前の集積用水溶液のチオシアン濃度で割った値を、チオシアン分解率として求めた。その結果を図2に示す。
図2に示したように、脱イオン水と自然海水とを体積比1:1又は1:3で混合した混合液を用いた場合には、チューブを通過した排出液のチオシアン濃度が何れもゼロで、チオシアン分解率は何れも1となり、チオシアン分解菌がチューブの内壁に集積したことが明らかになった。
一方、脱イオン水と自然海水とを体積比1:0.5又は1:5で混合した混合液を用いた場合には、チューブを通過した排出液にチオシアンが残存していたため、チオシアン分解率はそれぞれ0.3及び0.7となった。
したがって、脱イオン水と自然海水とを体積比1:1から1:3の範囲で混合した混合液を用いることが好ましいことが分かった。
実施例3
脱イオン水と自然海水とを体積比1:1.5で混合した混合液を調製した。この混合液それぞれ1Lにつき、表2に示すようにチオシアン酸ナトリウム、塩化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、及びリン酸水素二ナトリウムを溶解させて、チオシアン酸ナトリウムの濃度が異なる集積用水溶液を作製した。
Figure 0006075194
内径2mm、長さ100cmの断面が円形のシリコーンチューブを、ペリスタポンプに連結し、その一端を前記作製した集積用水溶液の中に入れ、温度20℃の室内で、集積用水溶液を流量10mL/hでチューブの内側に通液した。4週間経過後、チューブを通過して排出された液を回収し、当該排出液のチオシアン濃度を測定した。
チューブに入る前の集積用水溶液のチオシアン濃度から、チューブを通過した排出液のチオシアン濃度を引いた差の値を、チューブに入る前の水溶液のチオシアン濃度で割った値を、チオシアン分解率として求めた。その結果を図3に示す。
図3に示したように、チオシアン酸ナトリウムの濃度が70mg/L(チオシアン酸イオン換算で50mg/L)又は420mg/L(チオシアン酸イオン換算で300mg/L)の場合には、チューブを通過した排出液のチオシアン濃度が何れもゼロで、チオシアン分解率は何れも1となり、チオシアン分解菌がチューブの内壁に集積したことが明らかになった。
一方、チオシアン酸ナトリウムの濃度が35mg/L(チオシアン酸イオン換算で25mg/L)又は630mg/L(チオシアン酸イオン換算で451mg/L)の場合には、チューブを通過して排出された液にチオシアンが残存していたため、チオシアン分解率はそれぞれ0.6及び0.4となった。
したがって、淡水と自然海水との混合液に溶解させるチオシアン酸ナトリウムの濃度は70mg/L以上420mg/L以下(チオシアン酸イオン換算で50mg/L以上300mg/L以下)が好ましいことが分かった。
実施例4
脱イオン水と自然海水とを体積比1:1.5で混合した混合液を調製した。この混合液それぞれ1Lにつき、表3に示すようにチオシアン酸ナトリウム、塩化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム及びリン酸水素二ナトリウムを溶解させて、塩化アンモニウムの濃度が異なる集積用水溶液を作製した。
Figure 0006075194
内径2mm、長さ100cmの断面が円形のシリコーンチューブを、ペリスタポンプに連結し、その一端を前記作製した集積用水溶液の中に入れ、温度20℃の室内で、集積用水溶液を流量10mL/hでチューブの内側に通液した。4週間経過後、チューブを通過して排出された液を回収し、当該排出液のチオシアン濃度を測定した。
チューブに入る前の集積用水溶液のチオシアン濃度から、チューブを通過した排出液のチオシアン濃度を引いた差の値を、チューブに入る前の水溶液のチオシアン濃度で割った値を、チオシアン分解率として求めた。その結果を図4に示す。
図4に示したように、塩化アンモニウムの濃度が892mg/L(アンモニウムイオシ換算で300mg/L)又は3864mg/L(アンモニウムイオン換算で1300mg/L)の場合には、チューブを通過した排出液のチオシアン濃度が何れもゼロで、チオシアン分解率は何れも1となり、チオシアン分解菌がチューブの内壁に集積したことが明らかになった。
一方、塩化アンモニウムの濃度が500mg/L(アンモニウムイオン換算で168mg/L)又は5000mg/L(アンモニウムイオン換算で1682mg/L)の場合には、チューブを通過した排出液にチオシアンが残存していたため、チオシアン分解率はそれぞれ0.7及び0.3となった。
したがって、淡水と自然海水を混合した混合液に溶解させる塩化アンモニウムの濃度は892mg/L以上3864mg/L以下(アンモニウムイオン換算で300mg/L以上1300mg/L以下)が好ましいことが分かった。
実施例5
脱イオン水と自然海水とを体積比1:1.5で混合した混合液を調製した。この混合液それぞれ1Lにつき、表4に示すようにチオシアン酸ナトリウム、塩化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、及びリン酸水素二ナトリウムを溶解させて、炭酸水素ナトリウムの濃度が異なる集積用水溶液を作製した。
Figure 0006075194
内径2mm、長さ100cmの断面が円形のシリコーンチューブを、ペリスタポンプに連結し、その一端を前記作製した集積用水溶液の中に入れ、温度20℃の室内で、集積用水溶液を流量10mL/hでチューブの内側に通液した。4週間経過後、チューブを通過して排出された液を回収し、当該排出液のチオシアン濃度を測定した。
チューブに入る前の集積用水溶液のチオシアン濃度から、チューブを通過した排出液のチオシアン濃度を引いた差の値を、チューブに入る前の水溶液のチオシアン濃度で割った値を、チオシアン分解率として求めた。その結果を図5に示す。
図5に示したように、炭酸水素ナトリウムの濃度が840mg/L(炭酸イオン換算で600mg/L)又は3641mg/L(炭酸イオン換算で2600mg/L)の場合には、チューブを通過した排出液のチオシアン濃度が何れもゼロで、チオシアン分解率は何れも1となり、チオシアン分解菌がチューブの内壁に集積したことが明らかになった。
一方、炭酸水素ナトリウムの濃度が450mg/L(炭酸イオン換算で321mg/L)又は4800mg/L(炭酸イオン換算で3427mg/L)の場合には、チューブを通過した排出液にチオシアンが残存していたため、チオシアン分解率はそれぞれ0.6及び0.4となった。
したがって、淡水と自然海水を混合した混合液に溶解させる炭酸水素ナトリウムの濃度は840mg/L以上3641mg/L以下(炭酸イオン換算で600mg/L以上2600mg/L以下)が好ましいことが分かった。
実施例6
脱イオン水と自然海水とを体積比1:1.5で混合した混合液を調製した。この混合液それぞれ1Lにつき、表5に示すようにチオシアン酸ナトリウム、塩化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、及びリン酸水素二ナトリウムを溶解させて、リン酸水素二ナトリウムの濃度が異なる集積用水溶液を作製した。
Figure 0006075194
内径2mm、長さ100cmの断面が円形のシリコーンチューブを、ペリスタポンプに連結し、その一端を前記作製した集積用水溶液の中に入れ、温度20℃の室内で、集積用水溶液を流量10mL/hでチューブの内側に通液した。4週間経過後、チューブを通過して排出された液を回収し、当該排出液のチオシアン濃度を測定した。
チューブに入る前の集積用水溶液のチオシアン濃度から、チューブを通過した排出液のチオシアン濃度を引いた差の値を、チューブに入る前の水溶液のチオシアン濃度で割った値を、チオシアン分解率として求めた。その結果を図6に示す。
図6に示したように、リン酸水素二ナトリウムの濃度が9mg/L(リン酸イオン換算で6mg/L)及び60mg/L(リン酸イオン換算で40mg/L)の場合には、チューブを通過した排出液のチオシアン濃度が何れもゼロで、チオシアン分解率は何れも1となり、チオシアン分解菌がチューブの内壁に集積したことが明らかになった。
一方、リン酸水素二ナトリウムの濃度が5mg/L(リン酸イオン換算で3.3mg/L)及び120mg/L(リン酸イオン換算で80mg/L)の場合には、チューブを通過した排出液にチオシアンが残存していたため、チオシアン分解率はそれぞれ0.6及び0.7となった。
したがって、淡水と自然海水を混合した混合液に溶解させるリン酸水素二ナトリウムの濃度は9mg/L以上60mg/L以下(リン酸イオン換算で6mg/L以上40mg/L以下)が好ましいことが分かった。
実施例7
脱イオン水と自然海水とを体積比1:1.5で混合した混合液を調製した。この混合液1Lにつき、表1に示すようにチオシアン酸ナトリウム、塩化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムを溶解させて、チオシアン分解菌を集積するための集積用水溶液を作製した。
表6に示す内径と長さが異なる断面が円形のチューブをそれぞれ、ペリスタポンプに連結し、その一端を前記作製した集積用水溶液の中に入れ、温度20℃の室内で、集積用水溶液を流量10mL/hでチューブの内側に通液した。4週間経過後、チューブを通過して排出された液を回収し、当該排出液のチオシアン濃度を測定した。
Figure 0006075194
チューブに入る前の集積用水溶液のチオシアン濃度から、チューブを通過した排出液のチオシアン濃度を引いた差の値を、チューブに入る前の水溶液のチオシアン濃度で割った値を、チオシアン分解率として求めた。その結果を図7に示す。
図7に示したように、チューブの長さが100cmでチューブの内径が0.5mm、1mm、又は4mmの場合には、チオシアン分解率は何れも1であったが、内径が8mmの場合にはチオシアン分解率は0.7となり分解率が低下した。したがって、チューブの内径は4mm以下が好ましいことが分かった。
また、チューブの内径が2mmでチューブの長さが50cm、200cm、又は400cmの場合には、チオシアン分解率は何れも1であったが、長さが25cmの場合にはチオシアン分解率は0.5となり分解率が低下した。したがって、チューブの長さは50cm以上が好ましいことが分かった。
前記結果から、チューブの形状は内径が4mm以下で長さが50cm以上であることが好ましい。
実施例8
脱イオン水と自然海水とを体積比1:1.5で混合した混合液を調製した。この混合液1Lにつき、表1に示すようにチオシアン酸ナトリウム、塩化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、及びリン酸水素二ナトリウムを溶解させて、チオシアン分解菌を集積するための集積用水溶液を作製した。
内径2mm、長さ100cmの断面が円形のシリコーンチューブを、ペリスタポンプに連結し、その一端を前記作製した集積用水溶液の中に入れ、温度20℃の室内で0.5mL/h、1mL/h、20mL/h、40mL/hの異なる流量で、集積用水溶液をチューブの内側に通液した。4週間経過後、チューブを通過して排出された液を回収し、当該排出液のチオシアン濃度を測定した。
チューブに入る前の集積用水溶液のチオシアン濃度から、チューブを通過した排出液のチオシアン濃度を引いた差の値を、チューブに入る前の水溶液のチオシアン濃度で割った値を、チオシアン分解率として求めた。その結果を図8に示す。
図8に示したように、チューブの内側を通過する水溶液の流量が0.5mL/h、1mL/h、又は20mL/hの場合には、チオシアン分解率は何れも1となったが、流量が40mL/hの場合には、チオシアン分解率は0.6となり分解率が低下した。したがって、チューブの内側を通過する水溶液の流量は20mL/h以下であることが好ましいことが分かった。
実施例9
脱イオン水と自然海水とを体積比1:1.5で混合した混合液を調製した。この混合液1Lにつき、表1に示すようにチオシアン酸ナトリウム、塩化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、及びリン酸水素二ナトリウムを溶解させて、チオシアン分解菌を集積するために用いる集積用水溶液を作製した。
内径2mm、長さ100cmの断面が円形のシリコーンチューブを、ペリスタポンプに連結し、その一端を前記作製した集積用水溶液の中に入れ、温度5℃、10℃、40℃、及び50℃において、それぞれ流量10mL/hで、集積用水溶液をチューブの内側に通液した。チューブの出側には容器を設け、チューブを通過して排出された液を回収し、チオシアン濃度を測定した。
チューブに入る前の集積用水溶液のチオシアン濃度から、チューブを通過した排出液のチオシアン濃度を引いた差の値を、チューブに入る前の水溶液のチオシアン濃度で割った値を、チオシアン分解率として求めた。その結果を図9に示す。
図9に示したように、チューブを設置した環境の温度を10℃又は40℃に設定した場合には、チオシアン分解率は何れも1となったが、温度を5℃又は50℃に設定した場合には、チオシアン分解率はそれぞれ0.3と0.1となり分解率が低下した。したがって、チューブを設置した環境の温度は10℃以上40℃以下が好ましいことが分かった。
実施例10
脱イオン水と自然海水とを体積比1:1.5で混合した混合液を調製した。この混合液それぞれ1Lにつき、表1に示すようにチオシアン酸ナトリウム、塩化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、及びリン酸水素二ナトリウムを溶解させて、チオシアン分解菌を集積するために用いる集積用水溶液を作製した。
内径2mm、長さ100cmの断面が円形のシリコーンチューブを、ペリスタポンプに連結し、その一端を前記作製した集積用水溶液の中に入れた。一方の系では、シリコーンチューブを一本のみ、もう一本の系ではシリコーンチューブを10本並列に設置して、試験を行った。温度20℃の室内で、チューブ一本あたり流量10mL/hで、集積用水溶液をチューブの内側に通液した。
4週間経過後、チューブ一本のみを通過して排出された液、及び並列に設置された10本のチューブを通過して排出された液をそれぞれ回収し、チューブを通過した排出液のチオシアン濃度をそれぞれ測定した。
チューブに入る前の集積用水溶液のチオシアン濃度から、チューブを通過した排出液のチオシアン濃度を引いた差の値を、チューブに入る前の水溶液のチオシアン濃度で割った値を、チオシアン分解率として求めた。その結果を図10に示す。
図10に示したように、チューブ1本のみの場合でも、チューブを10本並列に設置した場合でも、チオシアン分解率は1であった。したがって、チューブを複数本並列させることでチオシアン分解菌を同時にチューブ内壁に集積でき、チオシアンを含む水溶液の流量も10倍に増加させられることが実証できた。
さらに、作製したチューブの内壁にチオシアン分解菌を集積させた10本のシリコーンチューブそれぞれの一端を、チオシアン濃度が100mg/Lの製鐵所安水(処理対象液)の中に入れ、ペリスタポンプに設置した。
温度20℃の室内でチューブ一本あたり流量10mL/hで、製鐵所安水をチューブの内側に通液した。並列に設置された10本のチューブを通過して排出された液を回収し、当該排出液のチオシアン濃度を測定した。その結果、チューブを通過した排出液のチオシアン濃度はゼロとなっており、チオシアン分解菌を集積したチューブを用いてチオシアンを含む安水のチオシアンを分解できることが分かった。
本発明によれば、自然海水からチオシアン分解菌を簡便に集積し、集積されたチオシアン分解菌を用いてチオシアンを分解することが可能となる。従って、本発明は、安水等の排水処理等の分野に好適に使用することができ、その産業上の意義は大きい。

Claims (11)

  1. 自然海水と淡水との混合液に、チオシアン酸イオン、アンモニウムイオン、炭酸イオン、及びリン酸イオンを含有させた水溶液をチューブ内に通液して、前記自然海水中に存在するチオシアン分解菌を前記チューブの内壁に集積させることを特徴とする、チオシアン分解菌の集積方法。
  2. 前記チューブがシリコーン樹脂製である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記自然海水と前記淡水との混合割合が体積比で1:1〜3:1の範囲である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. チオシアン酸イオンがチオシアン酸ナトリウムに由来し、アンモニウムイオンが塩化アンモニウムに由来し、炭酸イオンが炭酸水素ナトリウムに由来し、リン酸イオンがリン酸水素二ナトリウムに由来する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記水溶液中のチオシアン酸イオン濃度が50mg/L以上300mg/L以下であり、アンモニウムイオン濃度が300mg/L以上1300mg/L以下であり、炭酸イオン濃度が600mg/L以上2600mg/L以下であり、リン酸イオン濃度が6mg/L以上40mg/L以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記チューブ内を通液する環境が10℃以上40℃以下の温度範囲である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記チューブの内径が1mm以上4mm以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記チューブの長さが50cm以上200cm以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記水溶液を20mL/時間以下の流量でチューブ内に通液する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法でチューブ内壁にチオシアン分解菌を集積したチューブ内に、チオシアンを含有する液を通液することを特徴とする、チオシアンの分解方法。
  11. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法でチューブ内壁にチオシアン分解菌を集積することを含む、チオシアンを分解するためのチューブの製造方法。
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