JP5232350B2 - Ca125遺伝子のリピート配列並びに診断および治療的介入のためのその使用 - Google Patents
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Description
関連出願の相互引用
本出願は、米国仮特許出願60/284175号(2001年4月17日出願)、米国仮特許出願60/299380号(2001年6月19日出願)、米国非仮特許出願09/965738号(2001年9月27日)、米国仮特許出願60/345180(2001年12月21日)(前記は参照により本明細書に含まれる)の権利を請求する。
本発明は一般に、CA125遺伝子の糖化アミノ末端ドメイン、マルチリピートドメインおよびカルボキシ末端のin vitroでのクローニング、特定および発現に関し、より具体的にはエピトープ結合部位との遺伝子組換え体CA125の診断および治療を目的とする使用に関する。
CA125は、卵巣癌細胞表面に存在する抗原性決定基で正常な成人卵巣組織では本来発現しない。CA125は卵巣腺癌をもつ患者の血清中で上昇し、そのために、CA125は、前記患者の治療への反応に対して患者を管理する場合に、さらに症状の再発のインジケーターとして15年以上にわたって決定的な役割を担ってきた。
CA125は卵巣癌でのみ発現されるわけではなく、正常な分泌組織および他の癌(すなわち膵臓、肝臓、結腸(colon))でも見出されることはよく認識されている(H. Hardardottir et al., Distribution of CA125 in embryonic tissue and adult derivatives of the fetal periderm, Am. J. Obstet. Gynecol. 163;6(1):1925-1931(1990); V.R. Zurawski et al., Tissue distribution and characteristics of the CA125 antigen, Cancer Rev. 11-12:102-108(1988); T.J. O'Brien et al., CA125 antigen in human amniotic fluid and fetal membranes, Am. J. Obstet Gynecol. 155:50-55(1986); M. Nap et al., Immunohistochemical characterization of 22 monoclonal antibodies against the CA125 antigen: 2nd report from the ISOBM TD-1 workshop, Tumor Biology 17:325-332(1996))。
それにもかかわらず、CA125は、前記疾患をもつ患者の症状に正比例し(すなわち進行、退行および無変化)、卵巣癌患者をモニターする“ゴールドスタンダード”となった(R.C. Bast et al., A radioimmunoassay using a monoclonal antibody to monitor the course of epithelial ovarian cancer, N. Engl. J. Med. 309:883-887(1983); G.C. Bon et al., Serum tumor marker immunoassay s in gynecologic oncology: Establishment of reference values, Am. J. Obstet. Gynecol. 174:107-114(1996))。CA125は、子宮内膜組織が萎縮し、結果として正常な循環CA125の主要な供給源ではなくなった閉経後の患者で特に有用である。
顕著な進歩が何年かにわたって為され、CA125分子、その構造および機能の特徴がさらに明らかにされた。CA125分子は、もっぱらO−結合糖側鎖を有する高分子量糖タンパク質である。天然の分子は非常に大きな複合体(約2−5百万ダルトン)として存在する。前記複合体、CA125分子を含むエピトープおよびCA125エピトープを含まない結合タンパク質で構成されているようである。CA125分子はサイズおよび荷電の両者において不均一であり、これはおそらくは、体液中でのCA125の消長時における側鎖の連続的な糖除去反応によるものであろう。コアのCA125サブユニットは200000ダルトンを越え、さらにOC125およびM11クラスの抗体の両者と結合する能力を保持する。前記糖タンパク質の生化学および代謝は本発明者によって報告されてきたが、CA125遺伝子をクローニングした者はまだいない。CA125遺伝子は、その構造並びに正常および悪性の両組織におけるその生理学的役割を理解する基礎を提供するであろう。
CA125のような血清腫瘍マーカーの検出および定量における進歩にもかかわらず、なお卵巣癌患者の大半は、その疾患の進行期(病期IIIまたはIV)に診断が下される。さらにまた、治療に対する患者の反応の管理および症状再発の検出には大きな問題が残っている。したがって現行のCA125アッセイ系を大きく改善しさらに標準化する必要がある。さらにまた、卵巣癌のリスクを示す初期インジケーターの開発は初期診断および予後診断の改善に有用なツールを提供するであろう。
発明が解決しようとする課題
CA125遺伝子をクローニングし、マルチリピート配列をその糖化アミノ末端およびカルボキシ末端と同様に特定した。CA125は35000塩基を越える転写物を必要とし、染色体19q13.2のほぼ150000bpを占有する。CA125分子は以下の3つの主要部分から構成される:細胞外アミノ末端ドメイン(ドメイン1);大きなマルチリピートドメイン(ドメイン2);および短い細胞質ドメインをもつトランスメンブレンアンカーを含むカルボキシ末端ドメイン(ドメイン3)。前記アミノ末端ドメインは5つのゲノムエクソン、4つの非常に短いアミノ末端配列および1つのきわめて大きなエクソンを結合させることによって組み立てられる。前記ドメインは、O−糖化の能力およびその結果としてのセリンとスレオニン残基の豊富さを特徴とする。さらに、アミノ末端伸長部分が存在し、前記は4つのゲノムエクソンを含む。前記アミノ末端伸長部分の分析によって、そのアミノ酸構成は前記のアミノ末端ドメインのアミノ酸構成と一致することが判明した。
CA125の特徴である細胞外リピートドメインはまた、CA125分子の構造の主要部分である。前記はアミノ末端ドメインの下流に存在し、その近傍の細胞外マトリックスに対してそれ自身を極めて特異な態様で提示する。前記リピートの特徴は、エクソン構造における高度に保存された性質および均一性を含む多くの特性である。しかしながら特に一貫していることは、配列に含まれるシステインがシステインループを形成することができるということである。ドメイン2はCA125分子の156アミノ酸リピートユニットを含む。前記リピートドメインはCA125分子の最大部分を構成する。前記リピートユニットはまた、OC125群およびM11群を含む両主要クラスに対するエピトープ(今や詳細に報告され分類されている)を含む。60を越えるリピートユニットが特定され、配列を決定され、CA125ドメイン構造内に切れ目なく配置された。前記リピート配列は互いに70−85%の相同性を示す。リピート配列の存在は大腸菌(E. coli)での発現によって確認された(前記大腸菌では、OC125/M11両クラスの抗体はCA125リピート上の部位と結合することが見出された)。
CA125抗原のマルチリピートドメインの特定および配列決定によって、卵巣癌およびCA125が発現される他の癌をもつ患者の検出、モニターおよび治療を目的とする新規な臨床的および治療的応用が提供されよう。例えば、適切なエピトープを有するCA125のリピートドメインを発現させる能力は、研究および臨床で用いることができる必要性の高い標準試薬を提供するであろう。現行のCA125のためのアッセイは、標準物として培養細胞株または患者の腹水から製造されたCA125を利用する。いずれの供給源でもCA125分子の品質または純度は明確ではない。本発明は、エピトープ結合部位を含むCA125のマルチリピートドメインを提供することによって、現行アッセイの前記欠点を克服する。表16に示した60を越えるリピートのうち任意の少なくとも1つまたは2つ以上を、CA125の有無を調べるために“ゴールドスタンダード”として用いることができる。さらにまた、リコンビナント生成物を利用して抗体生成のために新規でより特異的なアッセイを開発することができる。
おそらくより重要なことであるが、CA125のマルチリピートドメインまたは他のドメインはまた、卵巣癌患者のための潜在的ワクチンの開発に用いることができた。ヒトでCA125に対して細胞性および液性免疫を誘発するために、患者の抗イディオタイプ抗体産生を期待してCA125に特異的なネズミの抗体を用い、したがって間接的にCA125分子に対して免疫反応を誘発させることができた。リコンビナントCA125(特に公知のネズミ抗体に対するエピトープ結合部位を包含するドメイン)の利用性に関しては、CA125に対する患者の免疫系をさらに直接的に刺激し、結果として卵巣癌患者を延命させるということは実現可能性が高いであろう。
CA125の発現はさらに、卵巣腫瘍細胞にとって生存または転移に関して利益を提供する。CA125リピート配列に由来するアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いてCA125の発現をダウンレギュレートすることができる。さらにまた、アンチセンス療法を上記に述べたタイプの腫瘍細胞デリバリー系と一緒に用いることもできる。CA125分子のリコンビナントドメインはまた、CA125分子の個々のドメインと結合する小分子を特定する潜在能力を有する。このような小分子はまたデリバリー薬剤として、または生物学的改変物質として用いることができる。
本発明の別の特徴では、アミノ末端ドメインのセリンおよびスレオニンO−糖化パターンは図8Bの配列番号:299に印(o)を付して示されている。
本発明の別の特徴では、表26に印(x)を付したアミノ末端伸長部分のN−糖化部位は、#139、#434、#787、#930、#957、#1266、#1375、#1633、#1840、#1877、#1890、#2345、#2375、#2737、#3085、#3178、#3501、#4221、#4499、#4607、#4614、#4625、#5048、#5133、#5322、#5396、#5422、#5691、#5865、#6090、#6734、#6861、#6963、#8031、#8057、#8326、#8620、#8686、#8915、#9204、#9495、#9787、#10077および#10175位にコードされる。
別の特徴では、アミノ末端伸長部分のセリンおよびスレオニンO−糖化パターンは表26に印(o)を付して示されている。
本発明の別の特徴では、リピートドメインは、エピトープ結合部位を含む156アミノ酸リピートユニットを含む。前記エピトープ結合部位は、図5の配列番号:150のアミノ酸#59−79(C−Cと印を付されている)のC−包囲部分に位置している。
別の特徴では、156アミノ酸リピートユニットは、図5Cの配列番号:150の#128、#129、#132、#133、#134、#135、#139、#145、#146、#148、#150、#151および#156位にO−糖化部位を含む。前記156アミノ酸リピートユニットはさらに、図5Cの配列番号:150の#33および#49位にN−糖化部位を含む。前記リピートユニットはまた、図5Cの配列番号:150の#24位に少なくとも1つの保存メチオニン(Mで表示)を含む。
さらに別の特徴では、カルボキシ末端ドメインのトランスメンブレンドメインは、図9Bの配列番号:300の#230−252位(下線部)に位置する。前記カルボキシ末端ドメインの細胞質ドメインは高度に塩基性の配列を含み、前記塩基性配列は、図9Bの配列番号:300の#256−260位のトランスメンブレン、図9Bの配列番号:300の#254、#255および#276位のセリンおよびスレオニンリン酸化部位、並びに図9Bの配列番号:300の#264、#273および#274位のチロシンリン酸化部位に隣接する。
本発明の別の特徴では、CA125遺伝子の単離核酸は、以下から成る群から選択されるアミノ酸配列をもつポリペプチドをコードする配列を含む:(a)配列番号:11−47、50−80、82、146、148、149、151および153−158に示すアミノ酸配列;(b)(a)の配列のいずれかと少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列;(c)(a)から(b)のいずれの配列の保存的変種;および(d)(a)から(c)のいずれかの配列のフラグメント。
さらに別の特徴では、CA125遺伝子の核酸を含むベクターが開示される。前記ベクターはクローニングベクター、シャトルベクターまたは発現ベクターであろう。前記ベクターを含む培養細胞もまた開示される。
さらに別の特徴では、細胞でCA125抗原を発現させる方法が開示される。前記方法は以下の工程を含む:(a)(i)配列番号:49、67、81、83−145、147、150および152に示されたヌクレオチド配列;(ii)(i)のいずれかの配列と少なくとも70%の配列同一性を有するヌクレオチド配列;(iii)(i)から(ii)のいずれかの配列の縮退変種;および(iv)(i)から(iii)のいずれかの配列のフラグメントから成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの核酸を提供し;(b)CA125抗原をコードするmRNAを含む細胞を提供し;さらに(c)前記細胞に前記核酸を導入し、CA125抗原を前記細胞で発現させる。
別の特徴では、CA125タンパク質のレセプター結合ドメイン内のエピトープと選択的に結合する精製抗体が開示される。ここで前記エピトープは以下から成る群から選択されるアミノ酸配列内に存在する:(a)配列番号:11−48、50、68−80、146、151および153−158に示すアミノ酸配列;(b)(a)の配列のいずれかと少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列;(c)(a)から(b)のいずれの配列の保存的変種;および(d)(a)から(c)のいずれかの配列のフラグメント。
Ca125抗原の存在を検出およびモニターする診断薬もまた開示される。前記診断薬は、配列番号:11−48、50、68−80、82、146、150、151、153−161および162(アミノ酸#1643−11438)に示すアミノ酸配列から成る群から選択されるエピトープ結合部位を含むCA125リピートドメインの少なくとも1つのリピートユニットを含むリコンビナントCA125を含む。
CA125抗原レベルが上昇するか、またはCA125抗原レベルの上昇に付随する症状または症状の再発を惹起させる危険性のある哺乳類を治療する治療用ワクチンもまた開示される。前記ワクチンはエピトープ結合部位を含むリコンビナントCA125リピートドメインを含み、前記リピートは、配列番号:11−48、50、68−80、82、146、148、149、150、151、153−161および162(アミノ酸#1643−11438)並びに配列番号:300のアミノ酸#175−284から成るアミノ酸配列群から選択される。
本発明の別の特徴では、以下によってコードされるCA125の発現を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドが開示される:(a)配列番号:49、67、81、83−145、147、150および152に示されたヌクレオチド配列;(b)(a)のいずれかの配列と少なくとも70%の配列同一性を有するヌクレオチド配列;(c)(a)から(b)のいずれかの配列の縮退変種;および(d)(a)から(c)のいずれかの配列のフラグメント。
本発明の前述の特徴およびさらに別の特徴は、本発明の単なる例示として下記に述べる、現時点で好ましい本発明の実施態様の記載から当業者には明白となろう。
したがって、本明細書で用いられる場合は、下記の用語は以下に設定される定義を有するであろう。
“ベクター”はレプリコン、例えばプラスミド、ファージまたはコスミドであり、それに対して別のDNAセグメントが結合され、その結果、前記結合されたセグメントの複製を生じる。
“DNA分子は”、一本鎖形または二本鎖らせんを示すデオキシリボヌクレオチド(アデニン、グアニン、チミンまたはシトシン)の重合形を指す。本用語は前記分子の一次または二次構造のみを指し、具体的な三次元形はいずれも指定されない。したがって、本用語には、とりわけ直鎖状DNA分子(例えば制限フラグメント)、ウイルス、プラスミドおよび染色体で見出される二本鎖DNAが含まれる。
“メッセンジャーRNA”または“mRNA”は、1つまたは2つ以上のポリペプチドをコードするRNA分子を意味するであろう。
“DNAポリメラーゼ”は、DNA鋳型を用いてデオキシリボヌクレオチド三リン酸の重合を触媒してDNA鎖を生成する酵素を指すであろう。
“逆転写酵素”は、RNAまたはDNA鋳型を用いて、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド三リン酸の重合を触媒してDNAまたはRNAを生成する酵素を意味するであろう。
“相補性DNA”または“cDNA”は、逆転写酵素活性を有する酵素によるデオキシリボヌクレオチドの重合によって合成されたDNA分子を意味するであろう。
“単離核酸”は、その構造が天然に存在する核酸のいずれの構造とも同一でない、または3つを越えるそれぞれ別個の遺伝子を含む天然に存在するゲノム核酸のいずれのフラグメントの構造とも同一でない核酸である。したがって前記用語は以下を含む:例えば、(a)天然に存在するゲノムDNA分子の一部分の配列を有するDNAであるが、前記DNAが天然に存在する生物のゲノム内の前記分子の前記部分と接するコード配列の両方と接していない前記DNA;(b)ベクター、原核細胞もしくは真核細胞のゲノムDNA内に取り込まれた核酸であって、その結果生じる分子が天然に存在するいずれのベクターまたはゲノムDNAとも同一でない態様で取り込まれてある前記核酸;(c)切り離された分子、例えばcDNA、ゲノムフラグメント、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成されたフラグメント、または制限フラグメント;および(d)ハイブリッド遺伝子(すなわち融合タンパク質をコードする遺伝子)の一部分であるリコンビナントヌクレオチド配列。
“DNAフラグメント”にはポリヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチドが含まれ、天然に存在する塩基およびシクロフラノシル基が天然のホスホジエステル結合によって結合して生成された複数の結合ヌクレオチドユニットを指す。事実上、本用語は、天然に存在する種または天然に存在するサブユニットから生成された合成種を指す。“DNAフラグメント”はまた、プリンおよびピリミジン基、並びに同様に機能するが天然に存在しない部分を有する成分を指す。したがって、DNAフラグメントは改変糖成分または糖間結合を含むことができる。前記の例は、特にホスホロチオエートおよび他の硫黄含有種である。前記はまた、改変塩基ユニットまたは他の改変部分を含むことができるが、ただし生物学的活性が保持されていることを条件とする。DNAフラグメントはまた、少なくともいくつかの改変塩基系を有する種も含むことができる。したがって、通常は天然に見出されないプリンおよびピリミジンも前記に含むことができる。同様に、ヌクレオチドサブユニットのシクロフラノース部分の改変もまた、生物学的機能がそのような改変によって排除されないかぎり包含することができる。
本明細書のプライマーは、個々の標的DNA配列の別の鎖と“実質的に”相補的であるように選択される。このことは、プライマーは、その対応する鎖とハイブリダイズするために実質的に相補的でなければならないことを意味する。したがって、プライマー配列は鋳型の正確な配列を反映する必要はない。例えば、非相補的なヌクレオチドフラグメントをプライマーの5’末端に結合させ、前記プライマー配列の残りの部分を前記鎖に相補的であるようにすることができる。また別に、非相補的な塩基、または長い配列をプライマー中に点在させてもよい(ただしプライマー配列が前記配列と十分な相補性を有するか、または前記とハイブリダイズし、それによって伸長生成物の合成のための鋳型を形成することを条件とする)。
本明細書で用いられるように、“制限エンドヌクレアーゼ”および“制限酵素”とは、二本鎖DNAを固有のヌクレオチド配列で、またはその近くで切断する細菌由来の酵素を指す。
“精製ポリペプチド”は、タンパク分解切断または化学的切断によってCA125から生成された任意のペピチドを指す。
“縮退変種”とはリピート配列における任意のアミノ酸変種を指し、前記変種はエクソン構造の相同性および配列の保存性を満たし、M11、OC125およびISOBM抗体シリーズによって認識される。
“フラグメント”とは、ある精製方式で特定されたCA125分子の任意の部分を指す。
“保存的変種抗体”は、M11、OC125またはISOBM抗体シリーズのいずれかの抗体の基準を満たす任意の抗体を指す。
A.組織の収集、RNAの単離およびcDNAの合成
正常および卵巣腫瘍組織の両方をcDNA調製に用いた。組織収集プロトコルにしたがって組織を日常的に収集し、−80℃で保存した。
全RNAの単離は、GibcoBRL(カタログ番号#15596-018)から購入したトリゾール試薬(TriZol Reagent)を用い製造元の指示にしたがって実施した。いくつかの事例では、mRNAはオリゴdTアフィニティークロマトグラフィーを用いて単離した。回収したRNAの量はUV分光法によって定量した。第一鎖相補性DNA(cDNA)は、クロンテック(Clontech)から入手した 第一鎖合成キット(カタログ番号K1402-1)を用い製造元のプロトコルにしたがい、5.0μgのRNAおよびランダムな六量体プライマーを用いて合成した。cDNAの純度は、β−チューブリン遺伝子に特異的なプライマーを用いてPCRによって検定した。これらのプライマーは、純粋なcDNAから生成されたPCR生成物をゲノムDNA夾雑cDNAから区別することができるようにイントロンの全長に広がる。
臭化シアンを用いて、2−5百万ダルトンのCA125糖タンパク質(リピートドメインを含む)を糖ペプチドフラグメントに化学的に分断することができる。図1に示すように、これらのフラグメントのいくつか(特に40kDaおよび60kDaフラグメント)は、OC125およびM11で定義される2つの古典的抗体群となお結合する。
CA125を一定の糖ペプチドに変換するために、CA125親分子を臭化シアン消化で処理した。前記切断処理によって2つの主要な分画がポリアクリルアミドゲル電気泳動後のクーマシーブルー染色で得られた。約60kDaバンドおよび前記より優勢な40kDaバンドが図1に示すように特定された。これらのバンドのウェスタンブロットをOC125またはM11抗体(それらは両方ともCA125分子を特定する)を用いて調べたとき、これらのバンドは両抗体と結合した。40kDaバンドは60kDaバンドよりもきわめて顕著であった。したがって、これらのデータは、前記バンド(特に40kDaバンド)はCA125分子の純正の切断ペプチドであろうということを示した(前記ペプチドはOC125およびM11の結合という識別特性を保持していた)。
40kDaおよび60kDaバンドをPVDFブロットから切り出し、ハーバードシークェンシング(Harvard Sequencing, Harvard Microchemistry Facility and The Biological Laboratories, 16 Divinity Avenue, Cambridge, Massachusetts 02138)が報告し実施したように、アミノ末端ペプチドおよび内部ペプチドアミノ酸配列決定を実施した。配列決定は40kDaバンドについてのみ成功し、両アミノ末端配列およびいくつかの内部配列が表1の配列番号:1−4で示したように得られた。CA125タンパク質の40kDaフラグメントは、2つの翻訳されたEST配列(GenBank Accession No. BE005912およびAA640762)と相同性を有することが判明した。これら翻訳された配列の目視検査によって類似のアミノ酸領域が判明し、反復ドメインの可能性が示唆された。ESTGenBank Accession番号BE005912の核酸およびアミノ酸配列(配列番号:5および6にそれぞれ対応する)は表1に示されている。共通配列は枠で囲むか、または下線を施されている。
前記の提唱リピートファミリーの他の個々のメンバーを特定するために、2つのオリゴヌクレオチドプライマーを前記EST配列に相同な領域を基準にして合成した。表2Aに示したように、前記プライマー配列は、配列番号:7および8(センスプライマー)並びに配列番号:9および10(アンチセンスプライマー)に一致する。リピート配列は以下の参考文献に開示された方法にしたがって増幅した:K. Shigemasa et al., p.21: A monitor of p53 dysfunction in ovarian neoplasia, Int. J. Gynecol. Cancer 7:296-303 (1997); K. Shigemasa et al., p16 Overexpression: A potential early indicator of transformation in ovarian Carcinoma, J. Soc. Gynecol. Invest. 4:95-102(1997)。腫瘍cDNAバンクから入手した卵巣腫瘍cDNAを用いた。
GCG(Wisconsin Genetic's Computer Group)のパイルアップ(Pileup)プログラムを用いて得られた配列を分析した。これら特定したリピートユニットのヌクレオチド配列内の高度に保存された2つの領域に対してデザインしたプライマーを用いてリピートユニットの順序を決定した。表2Bに示したように、センスおよびアンチセンスプライマー(5’−GTCTCTATGTCAATGGTTTCACCC−3’/5’−TAGCTGCTCTCTGTCCAGTCC−3’、それぞれ配列番号:301および302)は任意の1つのリピート内で互いに反対向きにオーバーラップ配列をつくり、したがって2つのリピートユニットのいずれの結合部も横断増幅させることができる。PCR反応、クローニング、配列決定および分析は上記に述べたように実施した。
CA125リピートユニットの他に開放読み枠含有配列の検索では、NCBI(National Center for Biotechnology Information; www.ncbi.nlm.nih.gov/)で利用できるBLASTプログラムを用いてデータベース検索を実施した。検索用配列(query sequence)としてリピートユニットを用いて、コスミドAC008734は、順不同の(35)連続DNA断片(contigとしても知られている)全体にマルチリピート配列を有することが明らかにされた。これらcontigの1つ、#32はその3’末端にリピート領域のエクソン1および2を有することが見出された。contig#32はまた、前記リピート配列の上流に大きな開放読み枠(ORF)を含むことが判明した。PCRを再度用いて前記ORFの存在を実証し、それがリピートユニットに連結されていることを確認した。特異的プライマーはこのORFの3’末端(5’−CAGCAGAGAGACCAGCACGAGTACTC−3’;配列番号:51)、およびリピート内の配列(5’−TCCACTGCCATGGCTGAGCT−3’;配列番号:52)を認識する。アミノ末端ドメインの残りの部分はこのcontigから同様な態様で組み立てた。それぞれPCRで確認しながら新規なプライマー(表10A参照)を前記の組み立てた配列に対してデザインし、これを、別の上流の潜在的ORFに対してデザインしたプライマーと一緒に用いた(セット1:5’−CCAGCACAGCAGCTCTTCCCAGGAC−3’/5’−GGAATGGCTGAGCTGACGTCTG−3’(配列番号:53および配列番号:54);セット2:5’−CTTCCCAGGACAACCTCAAGG−3’/5’−GCAGGATGAGTGAGCCACGTG−3’(配列番号:55および配列番号:56);セット3:5’−GTCAGATCTGGTGACCTCACTG−3’/5’−GAGGCACTGGAAAGCCCAGAG−3’)(配列番号:57および配列番号:58)。データベース検索で検索用配列としてcontig#32配列を用いて、潜在的な隣接配列(ESTAU133673を含むcontig#7)もまた特定された。確認用プライマーをデザインし、これを典型的な態様で用いた(5’−CTGATGGCATTATGGAACACATCAC−3’/5’−CCCAGAACGAGAGACCAGTGAG−3’)(配列番号:59および配列番号:60)。
D.CA125カルボキシ末端ドメインの特定およびアッセンブリー
検索用配列として確認済みリピートユニットを用いてデータベース検索を実施し、他のリピートユニットだけでなく潜在的カルボキシ末端配列を含むcDNA配列(GenBank AK024365)もまた特定した。組み立てられたCA125を含むこの配列の連続性特性は、contigおよびEST分析と同様に、PCRを用いて確認した(5’−GGACAAGGTCACCACACTCTAC−3’/5’−GCAGATCCTCCAGGTCTAGGTGTG−3’)(それぞれ配列番号:303および配列番号:304)。
表11に示すCA125リピートの開放読み枠を、センスプライマー(5’−ACCGGATCCATGGGCCACACAGAGCCTGGCCC−3’)(配列番号:65)およびアンチセンスプライマー(5’−TGTAAGCTTAGGCAGGGAGGATGGAGTCC−3’)(配列番号:66)を用いてPCRで増幅した。PCRは以下から成る反応混合物を用いて実施した:50ngのmRNAに由来する卵巣腫瘍cDNA、CA125リピートに対する各々5pmolのセンスおよびアンチセンスプライマー、0.2mmolのdNTPおよび1xの緩衝液中の0.625UのTaqポリメラーゼ(最終容積25mL)。前記混合物を1分の変性(95℃)とそれに続く30サイクルの以下から成るPCRに付した:95℃30秒の変性、62℃30秒のアニーリングおよび72℃1分の伸長、並びに最後のサイクルではさらに7分の伸長。生成物を2%アガロースゲルで電気泳動して分離した。PCR生成物を精製し、制限酵素BamHIおよびHindIIIで消化した。前記消化PCR生成物を続いて発現ベクターpQE−30(BamHIおよびHindIIIで予め消化)に連結した。このクローンは、6xHisタグ付加−CA125リピートリコンビナントの発現を可能にするであろう。形質転換大腸菌(JM109)をOD600=1.5−2.0に37℃で増殖させ、続いてIPTG(0.1mM)で25℃4−6時間誘発してリコンビナントタンパク質を生成した。全大腸菌溶解物を12%のSDSポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、クーマシ−染色して強く発現されたタンパク質を検出した。
タンパク質を12%SDS−PAGEで分離し、100V40分4℃でニトロセルロース膜に電気的にブロッティングした。前記ブロットを5%脱脂乳含有リン酸緩衝食塩水(PBS)(pH7.3)で一晩ブロックした。CA125抗体M11、OC125またはISOBM9.2を5%のミルク/PBS−T(PBS+0.1%TX−100)中の5μg/mLの希釈で前記の膜とインキュベートし、さらに室温で2時間インキュベートした。数回PBSを交換してブロットを30分間洗浄し、1:10000稀釈のセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗マウスIgG抗体(Bio-Rad)で室温で1時間インキュベートした。数回PBSを交換してブロットを30分洗浄し、さらに化学発光基質(ECL(Amersham PharmaciaBiotech))とともにインキュベートし、その後可視化のためにX線フィルムに10秒暴露した。
図4は、リコンビナントタンパク質を含まない大腸菌溶解物(レーン1、陰性コントロール)およびCA125と無関係のリコンビナントタンパク質TAGD−14(レーン3)と比較した大腸菌溶解物から精製したリコンビナントCA125リピート(レーン2)のウェスタンイムノブロットの3つのパターンを示す。図に示したように、M11抗体、OC125抗体および抗体ISOBM9.2(OC125類似抗体)は全てCA125リコンビナントリピート(レーン2)を認識したが、大腸菌溶解物(レーン1)または無関係のTADG−14リコンビナント(レーン3)はいずれも認識しなかった。これらのデータによって、前記リコンビナントリピートが、CA125のそれぞれ別個のエピトープ、OC125エピトープおよびM11エピトープをコードすることが確認された。
G.ノザンブロット分析
全RNAサンプル(約10μg)を6.3%ホルムアミド、1.2%アガロースゲル(0.02MのMOPS、0.05M酢酸ナトリウム(pH7.0)および0.001MのEDTA)で電気泳動により分離した。続いてRNAを毛細管作用によって20XのSSPE中でハイボンド−N(Amersham)にブロッティングし、80℃で2時間、乾熱処理して膜に固定した。CA125分子の400bpリピートであるPCR生成物をプロメガ(Promega)から入手可能なPrime-a-Gene標識系(カタログ番号U1100)を用いて放射能標識した。ブロットをクロンテック(Clontech)から入手可能なExpressHyb Hybridization Solutionプロトコルにしたがってプローブして切り出した。
1997年に、CA125(患者の腹水に由来する)の精製のための系が本発明の共同発明者および他の研究者らによって報告された。前記CA125は続いて臭化シアン消化を実施したとき、60kDaおよび40kDaのCA125のペプチドフラグメントを生じた(T.J. O' Brien et al., More than 15 years of Ca125: What is known about the antigen, its structure and its function, Int. J. Biological Markers 13(4):188-195(1998))。両フラグメントはポリアクリルアミドゲルでクマシーブルー染色によって、さらにウェスタンブロットによって特定された。両フラグメントはOC125およびM11抗体の両方に結合することが判明し、主要なエピトープクラスの両方が遊離されたペプチドに保存されていることが示唆された(図1)。
40kDaバンドのタンパク質配列決定によって、プロテアーゼ消化で生成されたアミノ末端配列といくつかの内部配列の両方が判明した(表1:配列番号:1−4)。60kDaバンドの収量は不十分で信頼できる配列情報は得られなかった。残念ながら、これらの配列に対してデザインしたリダンダントプライマーを用いてPCR生成物を増幅させる試みは成功しなかった。2000年の半ばに、EST(#BE005912)がGCGデータベースに登録された。ESTは表1(配列番号:5および6)に示すように、40kDaバンドの配列との相同性を含んでいた。このESTの翻訳は40kDaリピートのアミノ末端と良好な相同性を示し(例えばPGSRKFKTTE)、ただ1つのアミノ酸のみが異なっていた(すなわちアスパラギンがフェニルアラニンの代わりにEST配列に存在する)。さらにまた、内部配列のいくつかは部分的に保存されている(例えば配列番号:2、続いてその程度は低くなるが配列番号:3および4)。より重要なことには、全ての内部配列で塩基性アミノ酸が先行し(表1、矢印で表示)、前記は40kDa臭化シアンリピートから内部ペプチドを得るために用いられるトリプシンによるタンパク質分解に適している。合体させた配列(アミノ酸配列決定によって得られた配列、並びにEST(#BE005912)およびデータベースで特定した第二のEST(#AA640762)で特定された配列)を用いて、センスプライマー、5’−GGAGAGGGTTCTGCAGGGTC−3’(配列番号:7)(アミノ酸ERVLQGを表す)およびアンチセンスプライマー、5’−GTGAATGGTATCAGGAGAGG−3’(配列番号:9)(PLLIPFを表す)を作製した。PCRを用いて、卵巣腫瘍内にこれらの配列を示す転写物が存在すること、正常卵巣にはそれらが存在しないこと、およびムチン性腫瘍内では非常に低レベルで存在するかまたは全く検出できないレベルであることを確認した(図2A)。転写物の存在はさらに多数の原発性卵巣癌細胞株に由来するcDNAで確認され、同じ患者の対応するリンパ球培養では転写物は存在しないことが確認された(図2B)。
各カテゴリーのリピートの例を配列決定し、その結果は表3、4および5に示されている。前記の配列はEST(GenBank Accession No. BE005912)に由来するオリゴヌクレオチドプライマーを用いて得たPCR生成物の増幅および配列データを示す。表3は、CA125分子の400bpリピートのアミノ酸配列を示す。前記は配列番号:11から配列番号:21として特定される。表4は、CA125分子の800bpリピートのアミノ酸配列を示す。前記は配列番号:22から配列番号:35に一致する。表5、CA125分子の1200bpリピートのアミノ酸配列を示す。前記は配列番号:36から配列番号:46として特定される。オーバーラップ配列のPCR増幅および配列決定を利用するこれらリピート配列(PILEUPアプリケーションを用いGCG(=Genetics Computer Group)ソフトで決定したとき互いに75−80%の相同性を有する)のアッセンブリーによって、9リピート構造を構築することができた。9リピートのアミノ酸配列は配列番号47として表6に示されている。個々のC−包囲部分は表で強調されている。
AK024365のcDNAによって、CA125遺伝子の下流のカルボキシ末端配列だけでなくさらに4つのリピートのアラインメントが可能になった。表8は、CA125分子のカルボキシ末端に連続する13のリピートの完全なDNA配列を示している。前記は配列番号:49に対応する。表9は、CA125分子の13リピートおよびカルボキシ末端の完全なアミノ酸配列を示している。前記は配列番号:50に対応する。カルボキシ末端はさらに遺伝子バンクのデータベースの2つのEST(GenBank Accession No., AW150602およびAI923224)の存在によって確認された。前記の両者は(TGA)と表示した終止コドンおよびポリAシグナル配列(AATAA)およびポリAテールであることが確認された(表9参照)。これらのリピートの存在はしょう液性卵巣腫瘍で確認され、正常卵巣組織およびムチン性腫瘍では予想されたように存在しないことが確認された(図2A参照)。さらにまた、これらリピートの転写物は、卵巣腫瘍由来の腫瘍細胞株に存在するが、正常なリンパ球細胞株には存在しないことが示された(図2B参照)。さらにまた、正常組織または卵巣癌由来のmRNAおよびP32標識CA125リピート配列を用いたノザンブロット分析(図6に提示)によって、卵巣腫瘍抽出物に20kbのRNA転写物が過剰に存在することが確認された(図2B参照)。
仮定的C125リピートドメインと公知のCA125分子との関係についての最終的確認は、リコンビナントリピートドメインを大腸菌で発現させることによって達成された。図4では、リコンビナントCA125リピートドメインの発現は、ベクター単独(レーン1、パネルD)に対してレーン2に示されている。以下の大腸菌抽出物を表す一連のウェスタンブロットをCA125抗体、M11(パネルA);OC125(パネルB)およびISOBM9.2(パネルC)を用いて調べた:ベクター単独(レーン1)、CA125リコンビナントタンパク質(レーン2)、およびリコンビナントTAGD−14(無関係のリコンビナントプロテアーゼ)(レーン3)。全ての事例で、CA125抗体はリコンビナントCA125抗原のみを認識した(各パネルのレーン2)。
CA125分子のリピートドメインは、最低限45個の種々の156アミノ酸リピートユニットを包含し、個々のリピートは配列内で2回以上発生するのでおそらく60を超えるリピートが包含されるという証拠が示された。この発見は前記観察された異常なサイズをよく説明することができる。リピートユニットのアミノ酸組成(図7A、7C、表21)は、この配列がムチン遺伝子の高STPリピート領域に典型的なセリン、スレオニンおよびプロリンに富んでいることを示している(J.R. Gum, Jr., Mucin genes and the proteins they encode: Structure, diversity and regulation, Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 7:557-564(1992))。結果からリピートの下流末端は重度に糖化されていることが示唆される。
以前に述べたように、リピート配列に対する相同性がGCGデータベースの染色体19コスミドAC008734で見出された。前記コスミドはこの時点で35の順不同contigから成っていた。リピート配列について前記コスミドを検索した後、contig#32は、リピートユニットのエクソン1および2をその3’末端に有することが判明した。contig#32はまた、前記2つのリピートユニットの上流に大きな開放読み枠を有していた。このことは、前記contigはCA125のアミノ末端と一致する配列を含むことを示唆している。センスプライマーをcontig#32の上流の非リピート部分に対して合成しリピート領域内に由来する固有のプライマーと結合させた(方法の項参照)。卵巣腫瘍cDNAのPCR増幅によって、これら2つのドメインの連続的な位置決定が確認された。PCR反応で約980bpのバンドが得られた。前記バンドを配列決定して、上流の開放読み枠をCA125のリピート領域に連結することが判明した。これらのデータから、さらに多くのプライマーセット(方法の項参照)を合成してPCR反応で用い、断片をつなぎ合わせcontig#32に含まれる完全な開放読み枠を完成させた。配列の5’最末端を見つけるために、EST(AU133673)を見つけた(前記ESTはcontig#32を同じコスミドのcontig#7に連結させていた)。ESTおよびcontig#32に対する固有のプライマーを合成した(5’−CTGATGGCATTATGGAACACATCAC−3’(配列番号:59)および5’−CCCAGAACGAGAGACCAGTGAG−3’(配列番号:60))。PCR反応を実施し、EST配列部分はcontig#32と実際に連続していることを確認した。オーバーラップ配列を用いるこの連続5’プライマー配列決定法で確認することによって5’領域(ドメイン1)のアッセンブリーが可能になった(図8A)。5’RACEPCRを腫瘍cDNAで実施し、CA125のアミノ末端配列を確認した。前記検査によってCA125のアミノ末端にcontig#7配列が存在することが確認された。
印(x)を付した潜在的N−糖化部位は#81、#271、#320、#624、#795、#834、#938および#1165位にコードされる(図8B参照)。O−糖化部位はきわめて豊富で、本質的にアミノ末端ドメインをカバーする(図8B)。O−糖化パターンによって示されるように、ドメイン1にはスレオニンおよびセリンの両者が非常に豊富である(図8B)。
更なる研究により、糖化されるアミノ末端配列の伸長部分が特定されクローニングされた。表24(配列番号:309)は、CA125のアミノ末端伸長部分のDNA配列を示している。表25(配列番号:310)は、CA125遺伝子のアミノ末端伸長部分のタンパク質配列を示している。配列番号:310の最後の4つのアミノ酸、TDGIはアミノ末端ドメインのエクソン1に属していることは留意されるべきである。表26は、CA125アミノ末端伸長部分のセリン/スレオニンo−糖化パターンを示している。
上記に記載したリピート配列を用いてGenBankを検索することによって、AK024365(GenBank Accession No.)と称されるcDNA配列が明らかになった。前記配列は2つのリピート配列を有することが判明した。前記リピート配列は6リピートシリーズのうちの2つの既知リピート配列とオーバーラップした。結果として、前記cDNAは、固有のカルボキシ末端配列に沿って6つの全てのカルボキシ末端リピートのアラインメントを可能にした。前記カルボキシ末端はさらに、2つの他のEST(GenBank Accession No. AW150602およびA1923224)の存在によって確認された。前記2つのESTのいずれもポリAシグナル配列およびポリAテールの他に終止コドンが確認された(GCGデータベース#AF414442参照)。カルボキシ末端ドメインの配列は、リピートドメインのすぐ下流の配列に対してデザインされたセンスプライマー(5’−GGACAAGGTCACCACACTCTAC−3’、配列番号:303)、およびカルボキシ末端に対してデザインされたアンチセンスプライマー(5’−GCAGATCCTCCAGGTCTAGGTGTG−3’、配列番号:304)を用いて確認された。
カルボキシ末端ドメインは14000を越えるゲノム塩基対をカバーする。連結によって前記ドメインは図9Aに示すように9つのエクソンを含む。カルボキシ末端は、リピートドメインから下流の284アミノ酸配列と規定される(図9B参照)。印(x)を付したN−糖化部位(#31、#64、#103、#140、#194、#200)および印(o)を付した少数のO−糖化部位が本分子のカルボキシ末端で予想される(図9A、9B)。特に留意すべきは、仮定的トランスメンブレンドメインは#230−#252位に位置し、その後に細胞質ドメインが続くことであり、前記細胞質ドメインは、いくつかの潜在的S/Tリン酸化部位(#254、#255、#276)およびチロシンリン酸化部位(#264、#273、#274)とともに、膜近傍の高度に塩基性の配列(#256−#260)を特徴とする(図9A、9B)。
オーバーラップ配列のPCR増幅によって実証されたCA125分子のアッセンブリーは、前記分子の全体像を提供する(図10および表21参照)。完全なヌクレオチド配列は、GenBank Accession #AF414442で入手できる。現時点でアラインメントが完了したアミノ酸配列は表21に示されている。
CA125分子は以下の3つの主要なドメインを含む:細胞外アミノ末端ドメイン(ドメイン1)、大きなマルチリピートドメイン(ドメイン2)およびカルボキシ末端ドメイン(ドメイン3)。前記カルボキシ末端ドメインは短い細胞質ドメインを有するトランスメンブレンアンカーを含んでいる(図10)。前記アミノ末端ドメインは、5つのゲノムエクソン、4つの非常に短いアミノ末端配列および1つのきわめて大きなエクソン(これはしばしばムチンの細胞外糖化ドメインの特徴である)を結合させることによって組み立てられる(J.L. Desseyn et al., Human mucin gene MUC5B, the 10.7-kb large central exon encoudes various alternate subdomains resulting in a super-repeat. Structual evidence for a 11p15.5 gene family, J. Biol. Chem. 272(6):3168-3178(1997))。このドメインは、O−糖化の能力およびその結果としてセリンとスレオニン残基の豊富さを特徴とする。全体的に、O−糖化の潜在的能力は本質的にこのドメインの全体をカバーし、したがってCA125分子のこの末端部分で炭水化物の上層構造がECM相互作用に影響を与えることを可能にする(図8)。糖化がほとんどまたは全く予想できない短い1つの領域があり、この領域は細胞外マトリックスでタンパク質−タンパク質相互作用を可能にするであろう。
何年もの間試みられたCA125の精製は、このアミノ末端ドメインの存在のために明らかに複雑であった(前記ドメインが、OC125またはM11クラスの抗体によって認識されるエピトープをもつことはありそうもないことである)。CA125分子はin vivoで分解するので、この高度に糖化されたアミノ末端はおそらく種々の数のリピートユニットと結合しているであろうと考えられる。このことは、血清および腹水でしばしば特定されるCa125分子の荷電およびサイズの不均一性をともに非常によく説明することができる。さらにまた留意されるべきことは、アミノ酸#45−58の2つのT−TALK配列(図8Bの下線部)であり、前記はCA125分子に固有である。
CA125分子のカルボキシ末端ドメインは、他の公知のドメインとは相同性をまったくもたない細胞外ドメインを含む。前記ドメインは典型的なトランスメンブレンドメインおよび短い細胞質テールをコードする。前記ドメインはまた、トランスメンブレンドメインから約50アミノ酸上流にタンパク分解切断部位を含む。前記部位は、CA125分子のタンパク分解切断および遊離を可能にするであろう(図9)。Fendrickら(CA125 phosphorylation is associated with its secretion from the WISH human amnion cell line, Tumor Biology 18:278-289(1997))が示したように、リン酸化がCA125分子の遊離に先行し、ホスファターゼの抑制物質によって、特にホスファターゼ2Bの抑制によってCA125の遊離は持続する。前記トランスメンブレンドメインの隣にS/Tリン酸化部位を、さらにそこから下流にチロシンリン酸化部位を含む細胞質テールはそのようなリン酸化に適応するであろう。非常に明瞭な陽性に荷電した配列が前記チロシンの上流に存在し、陰性荷電リン酸基並びに陽性荷電リジンおよびアルギニン基を含むシグナルトランスダクション系が示唆される。
要約すれば、CA125の多数の縦並びのリピート(前記はCA125分子構造の特徴であり、CA125分子のエピトープ結合部位をおそらく含んでいる)は予想されなかった。さらにまた、何年もの間この分子の単離および性状決定を困難にしてきたタンパク分解活性については誰も未だに説明することができない。プロテアーゼドメインそれ自体はCA125分子の構成的部分ではないが、細胞外ドメインによるCA125分子のリガンド結合ドメインとの直接的結合の可能性はきわめて高い。最後に、この細胞外構造で優勢なリピートドメインの役割は何であろうか。上皮細胞表面および腺管内のCA125分子の発現データによれば、システインループをもつこれらリピートユニットの固有の構造が、腺の抗侵入分子としての役割(細菌の捕捉)および/または上皮表面間および管腔内層の抗粘着(開存維持)における役割の両方を果たすと結論することは合理的といえよう。
結論すれば、CA125分子は、35000塩基を越える転写物を必要とし、染色体19q13.2上で約150000bpを占有することが開示される。CA125は、大きな一連の細胞外リピートユニット(156アミノ酸)を特徴とし、前記ユニットは、特に高度に保存された固有のシステインループによる分子の相互作用の潜在能力を提供する。前記リピートユニットはまた、今や詳しく記載され、主要な両クラスのCA125抗体(すなわちOC125およびM11群)に対して分類されているエピトープを含んでいる。CA125分子は、トランスメンブレンドメインおよび短い細胞質テールを介してそのカルボキシ末端で固定される。CA125はまた、高度に糖化されたアミノ末端ドメインを含み、前記ドメインは、いくつかのムチンに典型的な大きな細胞外エクソンを含む。上皮表面および卵巣腫瘍細胞表面の両者に大量のリピートドメインが存在するとなると、CA125は、上皮細胞および腫瘍細胞周辺の細胞外環境の決定に主要な役割を果たすことができると考えられよう。
1)従来のCA125のアッセイは、培養細胞株または患者腹水から生成されたCA125を標準物として使用する。いずれの供給源もCA125分子の質または純度に関して特定されていない。したがって、患者のCA125レベルの記載に任意の単位が用いられる。CA125が上昇している患者の治療ではカットオフ値は重用であり、さらにCA125の測定に多くの異なるアッセイ系が臨床で用いられているので、全てのCA125アッセイのための標準物を規定することは重要で、実際必要なことである。エピトープ結合部位を含むリコンビナントCA125は、この標準化のための要件を満たすことができるであろう。さらにまた、リコンビナント生成物を抗体産生に用いて、新規でより特異的なアッセイを開発することができる。
2)ワクチン:CA125を治療用ワクチンとして用い、卵巣癌の患者を治療することができるという考えを支持する、適切なデータが今や存在する(以下を参照されたい:U. Wagner et al., Immunological consolidation of ovarian carcinoma recurrences with monoclonal anti-idiotype antibody ACA125:Immune responses and survival in palliative treatment, Clin. Cancer Res. 7:1112-1115(2001))。これまで、CA125に対する細胞性および液性免疫をヒトで誘発するために、CA125に特異的なネズミ抗体を用いて患者で抗イディオタイプ抗体を産生させ、したがって間接的にCA125分子に対する免疫を誘発した。リコンビナントCA125(特に公知のネズミ抗体のためのエピトープ結合部位を含むドメインおよび腫瘍細胞上でCA125を直接固定するドメイン)の利用可能性により、CA125に対する患者の免疫系をより直接的に刺激し、結果として前掲書(Wagner et al.)によって示されたように卵巣癌患者を延命させることが容易になるであろう。
免疫系における前記のような治療反応を達成するためにはいくつかのアプローチを利用することができる:1)CA125エピトープまたは他のドメインを含むリコンビナント抗原を用いて患者を直接免疫する;2)患者から樹状細胞を採集する;3)前記の細胞をin vitro培養で増殖させる;4)リコンビナントCA125エピトープドメインもしくは他のドメインまたはこれらのドメインに由来するペプチドで前記樹状細胞を活性化させる(以下の文献を参照されたい:A.D. Santin et al., Induction of ovarian tumor-specific CD8+ cytotoxic T lymphocytes by acid-eluted peptide-pulsed autologous dendritic cells, Obstetrics & Gynecology 96(3):422-430(2000));続いて5)前記免疫系細胞を前記患者に戻し、CA125に対する免疫反応を完成させる。前記の方法はまた、患者の組織適合抗原と適合する特定のペプチドを用いて実施することができる。集団内で一般的なHLA−A2結合モチーフと適合するそのようなペプチドは図12に示されている。
4)アンチセンス療法:CA125発現は卵巣腫瘍細胞の生存または転移に利点を提供する可能性がある。したがってCA125配列に由来するアンチセンスオリゴヌクレオチドはCA125発現のダウンレギュレーションに用いることができよう。アンチセンス療法は、例えば上記で述べたような腫瘍細胞デリバリー系と併用して用いることができよう。
5)小分子:CA125のリコンビナントドメインはまた、前記分子の個々のドメインと結合する小分子を特定する潜在能力を提供する。組み合わせ化学物質ライブラリーまたは小ペプチドに由来する小分子はまた、デリバリー薬剤としてまたは生物学的改変物質として用いることができる。
本明細書に引用した全ての参考文献は参照によりその全体が本明細書に含まれる。
本明細書に記載した現時点で好ましい実施態様に対する種々の変更および改変は当業者には明白であることは理解されよう。前記のような変更および改変は、本発明の範囲内で本発明の利点を低下させることなく為されるものであろう。
Claims (14)
- CA125ポリペプチドを発現させる方法であって、
CA125のフラグメントを含むポリペプチドを、該ポリペプチドをコードする組み替え核酸から形質転換細胞で発現させる工程を含み、
該CA125のフラグメントが
(i)配列番号299の残基1〜1637、
(ii)表16のリピートユニット1〜62から選ばれるリピートユニット、
(iii)配列番号164〜191、195〜208、210〜219、222〜225、227〜247、250〜254、256〜276及び278〜293からなる群より選ばれるアミノ酸配列、並びに
(iv)配列番号300
からなる群より選ばれる、上記方法。 - 該CA125のフラグメントが、表16のリピートユニット1〜62から選ばれるリピートユニットである、請求項1記載の方法。
- CA125のフラグメントを含む精製ポリペプチドであって、
該CA125のフラグメントが
(i)配列番号299の残基1〜1637、
(ii)表16のリピートユニット1〜62から選ばれるリピートユニット、
(iii)配列番号164〜191、195〜208、210〜219、222〜225、227〜247、250〜254、256〜276及び278〜293からなる群より選ばれるアミノ酸配列、並びに
(iv)配列番号300
からなる群より選ばれ、
該ポリペプチドが、配列番号310及び、続く配列番号162からなる連続ポリペプチドではない、上記精製ポリペプチド。 - 該CA125のフラグメントが、表16のリピートユニット1〜62から選ばれるリピートユニットである、請求項3記載の精製ポリペプチド。
- CA125のフラグメントを含む精製ポリペプチドであって、
該CA125のフラグメントが、配列番号310の残基1〜10,427であり、
該ポリペプチドが、配列番号310及び、続く配列番号162からなる連続ポリペプチドではない、上記精製ポリペプチド。 - CA125のフラグメントを含む精製された組み替えポリペプチドであって、
該CA125のフラグメントが
(i)配列番号299の残基1〜1637、
(ii)表16のリピートユニット1〜62から選ばれるリピートユニット、
(iii)配列番号164〜191、195〜208、210〜219、222〜225、227〜247、250〜254、256〜276及び278〜293からなる群より選ばれるアミノ酸配列、並びに
(iv)配列番号300
からなる群より選ばれ、
該ポリペプチドが、配列番号310及び、続く配列番号162からなる連続ポリペプチドではない、上記精製された組み替えポリペプチド。 - 該ポリペプチドが、表16のリピートユニット1〜62からなる群より選ばれるCA125のフラグメントを含む、請求項6記載の精製された組み替えポリペプチド。
- CA125のフラグメントを含むポリペプチドをコードする単離核酸であって、
該CA125のフラグメントが
(i)配列番号299の残基1〜1637、
(ii)表16のリピートユニット1〜62から選ばれるリピートユニット、
(iii)配列番号164〜191、195〜208、210〜219、222〜225、227〜247、250〜254、256〜276及び278〜293からなる群より選ばれるアミノ酸配列、並びに
(iv)配列番号300
からなる群より選ばれ、
該単離核酸分子は発現ベクターであり、該ポリペプチドの細胞での発現に適合している、上記単離核酸。 - 該単離核酸が、CA125のフラグメントを含むポリペプチドをコードし、
該CA125のフラグメントが、表16のリピートユニット1〜62からなる群より選ばれる、請求項8記載の単離核酸。 - CA125又はそのフラグメントを含むポリペプチドをコードする単離核酸であって、 該ポリペプチドが配列番号310を含み、
該単離核酸分子はベクターである、上記単離核酸。 - 該核酸が、配列番号310及び、続く配列番号162からなる連続ポリペプチドをコードする、請求項10記載の単離核酸。
- CA125遺伝子の単離核酸であって、
配列番号81、83〜145、147及び309に示されるヌクレオチド配列からなる群より選ばれるヌクレオチド配列を含む、上記単離核酸。 - CA125遺伝子の単離核酸であって、
配列番号11〜47、68〜80、82、146、148、158〜161及び310に示されるアミノ酸配列からなる群より選ばれるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする配列を含む、上記単離核酸。 - 請求項13記載の核酸を含む、ベクター。
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