近年における通信需要の飛躍的な増大に対応するため、複数の半導体光装置(例えば、半導体レーザ装置、変調器、光スイッチ)を半導体基板上に集積して、光半導体装置の多機能化・高性能化を図ろうとする試みが活発化している。
モノリシック集積化光半導体装置すなわち同一半導体基板上に複数の光半導体装置を集積化した光半導体装置を高性能化するためには、個々の光半導体装置の構造を最適化することが重要である。そして、光半導体装置の構造を最適化するためには、能動層と埋め込み層の両面において、その構造を最適化する必要がある。
モノリシック集積化光半導体装置の代表例としては、分布帰還型半導体レーザ装置(以下、DFB半導体レーザ装置と呼ぶ)と、半導体光変調器を集積化した光変調器付きDFB半導体レーザ装置がある。そこで、光変調器付きDFB半導体レーザ装置を例として、装置構造の最適化に付いて説明する。
光変調器付きDFB半導体レーザ装置に於ける能動層の最適化とは、そのDFB半導体レーザ装置の能層層すなわち活性層を光通信に適した1.55μm帯で発光する半導体層で構成し、一方、半導体変調器の能層層すなわち光吸収層を光吸収端が1.55μm帯より僅かに波長が短い半導体層で構成することである。
一方、光変調器付きDFB半導体レーザ装置に於ける埋め込み層の最適化とは、大出力が要求されるDFB半導体レーザ装置を、大電流の注入に適したpnキャリアブロック層で埋め込むことである。これに対して、半導体光変調器に於ける埋め込み層の最適化とは、寄生容量が小さく高速動作に適した半絶縁性半導体層又はポリイミド層で半導体光変調器を埋め込むことである。
すなわち、pnキャリアブロック層は、強い電流狭窄作用を有し、大電流を漏れなく活性層に集中させることができるので、大出力が要求される半導体レーザ装置等に適している。しかし、寄生容量が大きいので、直接変調を目的とする半導体レーザ装置や光変調器等の高速動作が要求される光半導体装置には適していない。
一方、半絶縁性半導体層等の埋め込み層は、寄生容量が小さいので、高速動作が要求される半導体光変調器等の光半導体装置に適している。しかし、半導体レーザ装置等の埋め込み層を半絶縁性半導体層で構成した場合、注入電流を大きくして行くと、半絶縁性半導体層を伝わって漏れる電流が急激に増大する。従って、半絶縁性半導体層は、大出力半導体レーザ装置等、大出力を目的とした光半導体装置の埋め込み層には適していない。
また、ポリイミド層からなる埋め込み層も、寄生容量が小さく、高速動作が要求される光半導体装置の埋め込み層には適している。但し、放熱特性が悪いので、半導体レーザ装置の埋め込み層には適していない。
このように夫々の埋め込み層には利害得失があるので、集積化光半導体装置を高性能化するためには、光半導体装置毎にその機能に応じた埋め込み構造を適用することが必要になる。
ところで、モノリシック集積化光半導体装置の高性能化には、個々の光半導体装置の構造最適化だけでなく、光半導体装置間の光結合効率を高くすることも重要である。
図1は、光半導体装置の光結合率の低下原因を説明するために、中心軸ずれ等を起こしたままで光学的に接続された光導波路2,3の状態を説明する平面図である。
光半導体装置を構成する光導波路の幅は一般的には1〜2μmと細いため、図1(a)のように、光導波路2,3の中心軸4,6が僅かにずれただけでも、光結合率は大きく低下する。また、図1(b)のように、夫々の中心軸4,6が平行でなくなった場合にも、光結合率が低下する。従って、光半導体装置間の光結合効率を高くするためには、個々の光半導体装置を構成する光導波路を一直線上に配置し、その中心軸を一致させることが重要である。
図2は、個々の光半導体装置の構造最適化と光半導体装置間の光結合効率を高くするという上記要請を満した光集積化半導体装置の一例を説明する斜視図である(但し、電極等は省略されている。)。
図2には、pnキャリアブロック層12を埋め込み層とするDFB半導体レーザ装置14と、ポリイミド層16を埋め込み層とする半導体光変調器18が同一基板上に集積化された、光変調器付きDFB半導体レーザ装置が示されている(特許文献1)。
図3乃至6は、この光変調器付きDFB半導体レーザ装置20の製造方法を説明する工程図である。以下、図3乃至6を参照して、この光変調器付きDFB半導体レーザ装置20の製造方法を説明する。
まず、基板22(n−InP)の上に、下側クラッド層24(n−InP層)を形成する。次に、活性層26(InGaAsP層)、光ガイド層28(p−InGaAsP層)、グレーティング30、及び上側クラッド層32(p−InP層)を順次形成する(図3(a)参照)。尚「n−」はn型を意味し、同じく、「p−」はp型を意味するものとする。
次に、上側クラッド層(p−InP層)32上に、例えばSiO2からなるマスク33を形成する(図3(b)参照)。
このマスクを用いて、上側クラッド層32(p−InP層)から活性層26(InGaAsP層)までをエッチングし、島状の第1の光導波路予備層34を形成する(図4(a)参照)。
次に、エッチングで露出した下側クラッド層24の上に、光吸収層36(InGaAsP層)及び上側クラッド層38(p−InP層)を形成して、第1の光導波路予備層34の周辺を第2の光導波路予備層40で埋め込む。その後、マスク33を除去し、第1及び第2の光導波路予備層34,40の表面上に、上側クラッド層42(p−InP層)及び電極コンタクト層44(p+−InGaAs)を順次形成する(図4(b)参照)。
次に、第1及び第2の光導波路予備層34,40の上に、上側クラッド層42及び電極コンタクト層44を介して、ストライプ状の第1のマスク46を形成する。第1のマスク46は、基板22の<011>方向に沿って第1及び第2の光導波路予備層34,40に跨るように形成する。
次に、第1のマスク46を保護膜として、上側クラッド層42及び電極コンタクト層44が積層された第1及び第2の光導波路予備層34,40をエッチングして、ストライプ状のリッジ48を形成する(図5(a)参照)。
ここで、リッジ48は、上側クラッド層42及び電極コンタクト層44が積層された第1の光導波路予備層34がエッチングされてなる第1の光導波路層50と、同じく上側クラッド層42及び電極コンタクト層44が積層された第2の光導波路予備層40がエッチングされてなる第2の光導波路層52によって構成されている。
次に、第1のマスク46が設けられている第2の光導波路層52全体を覆うように第2のマスク54を形成する(図5(b)参照)。
次に、有機金属気相成長法(MOCVD)を用いて、露出している下側クラッド層24の上に、下側電流ブロック層56(p−InP)及び上側電流ブロック層58(n−InP)を形成する(図6(a)参照)。
次に、第1および第2のマスク46,54を除去する(図6(b)参照)。
次に、第2のマスク54を除去した露出面上にポリイミド層16を形成する(図7参照)。
次に、所定の電極等を形成し、光変調器付きDFBレーザ20を完成する。
このように、従来の光変調器付きDFBレーザ20では、DFB半導体レーザ装置14をpnキャリアブロック層12で埋め込むことによって、DFB半導体レーザ装置14の大出力化を可能にしている。一方、半導体光変調器18をポリイミド層16で埋め込むことによって、半導体光変調器18の高速動作を可能にしている。
特開平8−162706号公報
特開2005−223300号公報
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
(実施の形態1)
本実施の形態は、大電流注入を必要とするDFB半導体レーザ装置と高速動作が要求される半導体光変調器とが混在する光変調器付きDFB半導体レーザ装置において、 夫々を構成する光導波路層の中心軸が一致した状態で、DFB半導体レーザ装置をpnキャリアブロック層で埋め込み、一方、半導体光変調器は半絶縁性半導体で埋め込むことを可能とする光変調器付きDFB半導体レーザ装置(集積化光半導体装置)の製造方法の製造方法に関するものである。
図8は、本実施の形態で製造される光変調器付きDFB半導体レーザ装置の要部斜視図である。また、図9は、図8のA-A’線に於ける断面を矢印の方向から見た断面図(図9(a))と図8のB-B’線に於ける断面を矢印の方向から見た断面図(図9(b))である。
図8及び図9に示すように、本実施の形態によって製造される光変調器付きDFB半導体レーザ装置20(集積化光半導体装置)は、半導体基板22の主面に平行な直線状の第1の光導波路層50からなり、前記第1の光導波路層50の両側が、p型半導体層68とn型半導体層70が積層されてなるpnキャリアブロック層12(第1の埋め込み層)によって埋め込まれてなるDFB半導体レーザ装置14(第1の光半導体装置)と、前記第1の光導波路層50に光学的に接続された直線状の第2の光導波路層52からなり、前記第2の光導波路層52が、半絶縁性半導体からなる半絶縁性半導体層66(第2の埋め込み層)によって両側を埋め込まれてなる半導体光変調器18(第2の光半導体装置)を具備し、前記第1及び第2の光導波路層50,52が一の直線上に配置されている。
ここで、pnキャリアブロック層12は、第1のp型電流ブロック層76と、n型電流ブロック層78と、第2のp型電流ブロック層80が順次積層された構成であることが好ましい。
また、半絶縁性半導体からなる半絶縁性半導体層66(第2の埋め込み層)は、pnキャリアブロック層12(第1の埋め込み層)の上に延在している。また、半導体基板22の伝導型はn型であり、その主面は(100)面である。
尚、図8及び9では、電極は省略されている。更に、図8では、第1及び第2の光導波路層50,52の頂上(すなわち、電極コンタクト層44)と半絶縁性半導体層66の表面が一致するように描かれている。しかし、実際は、半絶縁性半導体層66は、図9の断面図に示すように、第1及び第2の光導波路層50,52の近傍で盛り上がっている。
図10乃至図14は、本実施の形態における光変調器付きDFB半導体レーザ装置の製造方法を説明する状態図である。以下、図10乃至14を参照して、この光変調器付きDFB半導体レーザ装置20の製造方法を説明する。
尚、本実施の形態を含め以下に説明する、集積化光半導体装置の製造方法において使用する結晶成長法は、有機金属気相成長法である。原料ガスは、III族に対してはトリメチルインジウム(TMI)、トリエチルガリウム(TEG)を使用し、V族に対してはフォスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)を使用する。
まず、(100)面を主面とするn型InP基板22の上に、InGaAsPからなる厚さ0.05μmの埋め込み回折格子72、厚さ0.25μmのn−InPからなる下側クラッド層74、厚さ0.3μmのi型InGaAsP量子井戸からなる活性層26、及びp−InPからなる上側クラッド層32を順次形成する(図10(a)参照)。
次に、上側クラッド層32上に、例えば、SiO2からなるマスク33を形成する(図10(b)参照)。
このマスクを用いて、上側クラッド層32、活性層26、下側クラッド層74、埋め込み回折格子72をエッチングし、島状の第1の光導波路予備層34を形成する(図11(a)参照)。
次に、エッチングで露出した基板22の上に、厚さ0.3μmのn−InPからなる下側クラッド層76、厚さ0.3μmのi型InGaAsP量子井戸からなる光吸収層36、及び上側クラッド層(p−InP層)38を形成して、第1の光導波路予備層34の周囲を第2の光導波路予備層40で埋め込む。すなわち、第2の光導波路予備層40を、第1の光導波路予備層34に対して突き合わせ成長する。
次に、マスク33を除去し、第1及び第2の光導波路予備層34,40の表面上に、上側クラッド層42(p−InP層)及び電極コンタクト層44(p+−InGaAs)を順次形成する(図11(b)参照)。
次に、上側クラッド層42及び電極コンタクト層44が積層された第1及び第2の光導波路予備層34,40の上に、例えばSiO2からなるストライプ状の第1のマスク46を形成する。第1のマスク46は、基板22の<011>方向に沿って、上側クラッド層42及び電極コンタクト層44が積層された第1及び第2の光導波路予備層34,40を跨ぐように形成する。
次に、第1のマスク46を保護膜として、上側クラッド層42及び電極コンタクト層44が積層された第1及び第2の光導波路予備層34,40をドレイエッチングして、幅2μm、高さ1.5μmのストライプ状のリッジ48を形成する(図12(a)参照)。
ここで、リッジ48は、上側クラッド層42及び電極コンタクト層44が積層された第1の光導波路予備層34がエッチングされてなる第1の光導波路層50と、同じく上側クラッド層42及び電極コンタクト層44が積層された第2の光導波路予備層40がエッチングされてなる第2の光導波路層52からなる。
次に、第1のマスク46が設けられている第2の光導波路層52全体を覆うように、例えば、SiNからなる第2のマスク54を形成する(図12(b)参照)。ここで、第2のマスク54は、第1のマスク46に対して選択的にエッチング可能な材料で形成する(即ち、第2のマスク54を、特定のエッチング液に対するエッチング速度が、第1のマスク46を形成する材料より十分遅くなる材料で形成する。)。
次に、有機金属気相成長法(MOCVD)を用いて、露出している基板22の上に、p−InPからなる第1のp型電流ブロック層76と、n−InPからなるn型電流ブロック層78と、p−InPからなる第2のp型電流ブロック層80を成長し、pnキャリアブロック層82を形成する。ここで、p−InPのドーパントとしては、例えば、ジメチルジンクを用いる。また、n−InPのドーパントとしては、例えば、硫化水素を用いる。
次に、フッ化水素酸とフッ化アンモニウムの混合液により第2のマスク54を選択的に除去する。このエッチングによって、DFB半導体レーザ装置14となる領域(第1の光導波路層34)及び半導体光変調器18となる領域(第2の光導波路層36)の上部が第1のマスク46によって覆われた図13(a)に示すような構造体が得られる。
次に、このようにして形成された構造体の上に、例えば、Feのように深い不純物準位を形成する元素がドーピングされたInPからなる半絶縁半導体層66を成長し、半導体光変調器18となる第2の光導波路層36からなるリッジを埋め込む(図13(b)参照)。この時、半絶縁半導体層66は、成長済みのpnキャリアブロック層82の上にも成長する。尚、Feの原料は、フェロセンである。
図13には図示されていないが、リッジ48に覆い被さるように半絶縁半導体層66がリッジ上に突出して、突起を形成する。この突起は後の電極形成の妨げになるので、ウェットエッチングによって除去する。尚、このような突起の形成は、リッジ48の方向を変えても防止することはできない。
次に、例えば、フッ化水素酸により、SiO2からなる第1のマスク46を除去する(図14参照)。
最後に、DFB半導体レーザ装置14となる第1の光導波路層34の上に、p型電極を形成する。また、半導体光変調器18となる第2の光導波路層36の上にも、p型電極を形成する。
一方、基板22の裏面にはn型電極が形成する。
以上の工程により、図8に示す、DFB半導体レーザ装置14と半導体光変調器18からなる光変調器付きDFB半導体レーザ装置が完成する(但し、図8には、電極は図示されていない。)。
図15は、以上の製造工程を纏めたフロー図である。
本実施の形態に従う集積化光半導体装置の製造方法は、図15に示すように、第1の光導波路層50となる第1の半導体積層構造(上側クラッド層42と電極コンタクト層44が積層された第1の予備導波路層34)と、前記第2の光導波路層52となる第2の半導体積層構造(上側クラッド層42と電極コンタクト層44が積層された第2の予備導波路層40)を、前記半導体基板上に形成する第1の工程(ステップS1;図10及び図11)を備えている。
ここで、第1の半導体積層構造とは、上述した例では、InGaAsPからなる埋め込み回折格子72と、n−InPからなる下側クラッド層74と、i型InGaAsP量子井戸からなる活性層26と、p−InPからなる上側クラッド層32とからなる第1の光導波路予備層34(図10(a)参照)の上に、更に、上側クラッド層42と、電極コンタクト層44が積層された半導体積層構造のことである。
また、第2の半導体積層構造とは、上述した例では、下側クラッド層76と、InGaAsP量子井戸からなる光吸収層36と、上側クラッド層38とからなる第2の光導波路予備層40(図11(b)参照)の上に、更に、上側クラッド層42と、電極コンタクト層44が積層された半導体積層構造のことである。
また、本実施の形態に従う集積化光半導体装置の製造方法は、第1の誘電体膜からなる直線状の第1のマスク46を、上記第1及び第2の半導体積層構造双方に亘って形成する第2の工程(ステップS2)と、上記第1及び第2の半導体積層構造をエッチングして、上記第1のマスク46によって保護された領域に、上記第1及び第2の光導波路層50,52を形成する第3の工程(ステップS3)を備えている(図12(a)参照)。
また、本実施の形態に従う集積化光半導体装置の製造方法は、上記第1のマスク46を残存させたままの状態で、上記第2の光導波路層52及び上記第2の光導波路層52の両側に、第2の誘電体膜からなる第2のマスク54を形成する第4の工程(ステップS4;図13(a)参照)を備えている。
また、本実施の形態に従う集積化光半導体装置の製造方法は、上記第1及び第2のマスク46,54を選択成長膜として、上記第1の光導波路層50の両側に、pnキャリアブロック層82からなる第1の埋め込み層を成長する第5の工程(ステップS5)を備えている。
ここで、pnキャリアブロック層82は、有機金属気相成長法によって形成する。原料ガスは、フォスフィン(PH3)とトリメチルインジウム(TMI)である。p−InPのドーパント源としては、例えば、ジメチルジンクを用いる。また、n−InPのドーパント源としては、例えば、硫化水素を用いる。
また、本実施の形態に従う集積化光半導体装置の製造方法は、上記第1のマスク46を残存させたまま、上記第2のマスク54を除去する第6の工程(ステップS6;図13(a)参照)。
更に、本実施の形態に従う集積化光半導体装置の製造方法は、残存させた上記第1のマスク46を選択成長膜として、上記第2の光導波路層52の両側に、半絶縁性半導体層66(例えば、FeがドーピングされたInP)からなる上記第2の埋め込み層を形成する工程を備えている(ステップS7;図13(b)参照)。
ここで、半絶縁性半導体層66は、第6の工程(ステップS6)と同様、有機金属気相成長法によって形成する。また、原料ガスは、フォスフィン(PH3)とトリメチルインジウム(TMI)からなる。但し、InP成長層にFeをドーピングするため、原料ガスにはフェロセンを添加する。
従って、本実施の形態によれば、DFB半導体レーザ装置のような大電流注入を必要とする第1の光半導体装置と、半導体光変調のような高速動作が要求される第2の光半導体装置とが混在するモノリシック集積化光半導体装置において、第1の光半導体装置はpnキャリアブロック層で埋め込み、第2の光半導体装置は半絶縁性半導体で埋め込むことを可能となる。更に、本実施の形態では、ストライプ状の一本のマスクを保護膜として光導波路層50,52をエッチングして形成するので、第1及び第2の光半導体装置を構成する夫々の光導波路層の中心軸は一致している。
(実施の形態2)
本実施の形態は、実施の形態1に従う集積化光半導体装置の製造方法において、塩素系化合物を添加した原料ガスを用いた有機金属気相成長法によって、第1の埋め込み層(pnキャリアブロック層82)を成長する集積化光半導体装置の製造方法に関する。実施の形態1では、第1及び第2の光導波路層50,52からなるリッジ48を、高さ1.5μmになるように形成する(図12(a)参照)。
しかし、この高さでは、活性層26(又は光吸収層36)と電極コンタクト層44の上に形成される電極(図示せず)が近すぎるため(図9参照)、両者の間隔は、活性層26(又は光吸収層36)を伝播する光が、電極によって反射されることを実質上阻止するために必要な最小限の距離しか確保することができない。
このため、成長条件の揺らぎ等により、活性層26(又は光吸収層36)の組成が少し短波化したり厚さが薄くなったりすることで光の閉じ込めが少し弱くなっただけでも、光のフィールドが広がり、出射光のファー・フィールド・パターン(以下、フィールドパターンと略す)が乱れ変形してしまう。
その結果、集積化光半導体装置(例えば、光変調器付きDFB半導体レーザ装置14)の出射光を光ファイバー等へ光結合する際の損失が大きくなってしまう。このような集積化光半導体装置は、使用不能な不良品であり、従って、実施の形態1に従う製造方法の歩留まりは必ずしも高くない。
そこで、本発明者は、リッジ48の高さを1.5μmより高くして、実施の形態1と同じ工程によって、光変調器付きDFB半導体レーザ装置14の製造を試みた。尚、リッジ48の伸べる方向も、実施の形態1と同じ[011]方向である。
その結果、リッジ48の高さが1.5μmを超えると、第2のマスク54との境界領域90で、pnキャリアブロック層82が異常成長することが明らかになった(図16参照)。
図16は、第2のマスク54を形成後、pnキャリアブロック層82を成長する直前の半導体基板22の状態を説明する斜視図である。
図17は、pnキャリアブロック層82を成長した直後の境界領域90の状態を示す断面図である。
図18は、更に、半絶縁性半導体層66を成長した直後の状態を示している。尚、図17及び18は、リッジ48に垂直な、第2のマスクの辺84が、紙面に対して垂直になるように描かれている。
図17に示すように、第2のマス54がリッジ48を覆った状態の基板22の上にpnキャリアブロック層82を成長すると、図17に示すように、(111)A面85が異常に早く成長するため第2のマスク54に覆い被さるように庇構造86が形成される。即ち、第2のマスク54との境界領域90で、pnキャリアブロック層82が異常成長する。
このようなpnキャリアブロック層82の上に、半絶縁性半導体層66を成長すると、図18に示すように、庇構造86の下に空洞88が形成される。
この空洞88は、リッジ48に垂直な辺84全体に渡って形成され、リッジ48の直近にも及ぶ。このため、活性層26(又は光吸収層36)から滲み出した導波光(活性層等を伝播する光)がこの空洞88まで到達するため、導波光のモードパターン(電界強度分布)が、空洞88の屈折率(=1)と埋め込み層82,66の屈折率(≒3.4)の大きな差によって乱される。従って、光変調器付きDFB半導体レーザ装置20のフィールドパターンが変形し、その装置特性が劣化する。
また、庇構造86には結晶欠陥が発生しやすく、その結晶欠陥が、庇構造86の上に成長した半絶縁性半導体層66にも伝播する。これらの結晶欠陥は、第1及び第2の埋め込み層内に、電流が流れやすい通り道(パス)を形成し、電流リークの原因となる。
このため、pnキャリアブロック層82で埋め込まれた光半導体装置(例えば、DFB半導体レーザ装置14)への電流注入効率が低下し、集積化光半導体装置(例えば、変調器付きDFB半導体レーザ装置20)の特性を劣化させる。
図19は、リッジ48をpnキャリアブロック層82で埋め込んだ直後の断面図である。図19に示すように、庇構造86は、第2のマスク54との境界領域90だけでなく、リッジ48の頂上部にも形成される。リッジ48の頂上で第1のマスク46に覆い被さるように(111)A面98が成長する。尚、図19では、pnキャリアブロック層82の記載は、省略されている。
このような庇構造86の発生を抑制する方法として、塩素系化合物を添加した原料ガスを用いて有機金属気相成長法によって埋め込み層を成長する方法が報告されている(特許文献2)。
そこで、本発明者は、図15を参照して実施の形態1で説明した第5の工程(ステップS5)すなわちpnキャリアブロック層82を成長する工程に於いて、原料ガスに塩素系化合物を添加することによって、第2のマスク54とpnキャリアブロック層82の境界領域90に於ける庇構造86の発生が抑制できるか試みた。
具体的には、例えば、トリメチルインジウム(TMI)とフォスフィン(PH3)からなる原料ガスにジクロロエチレンを添加し、pnキャリアブロック層82を成長した。この際、トリメチルインジウム(TMI)の流量に対するジクロロエチレンの流量の割合(=ジクロロエチレンの流量/TMIの流量)を30とした。
以上のような条件下でpnキャリアブロック層82を成長したところ、リッジ48の頂上だけでなく、第2のマスク54とpnキャリアブロック層82の境界領域意90にも庇構造86は形成されなかった。
この庇構造の抑制作用は、以下のようなメカニズムによって発揮されるものと考えられる。
図20は、原料ガスにジクロロエチレンを添加して、リッジ48をpnキャリアブロック層82で埋め込んだ時の断面図である。
図19に示すように、ジクロロエチレン等の塩素系化合物を原料ガスに添加しない通常の有機金属気相成長法では、InPからなる基板22の主面に平行な結晶面((100)面92)とリッジ48に覆い被さる(111)A面98の成長が速く、リッジ48の側面に対して斜めに成長する結晶面(例えば、(311)B面94)のような結晶面の成長は遅い。
ところが、ジクロロエチレンが添加されると、図20に示すように、例えば、リッジ48の側面に対して傾いた結晶面(例えば、(311)B面94)の成長が著しく促進される。その結果、庇構造86の発生原因となる結晶面((111)A面98)の成長が抑制される。この時、第2のマスク54とpnキャリアブロック層82の境界領域90に於ける庇構造86の発生原因となっている(111)A面85の成長も同時に抑制される。
このため、リッジ48の頂上だけでなく、pnキャリアブロック層82と第2のマスク54の境界領域90でも、庇構造86の成長が抑制される。従って、pnキャリアブロック層12の上に、半絶縁性半導体層66を成長しても、空洞88や結晶欠陥が形成されることはない。
故に、リッジ48を高くして庇構造が成長しやすくなっても、空洞や結晶欠陥の発生を原因とする集積化光半導体装置の特性劣化を防止することが可能になる。
以上説明したとおり、本実施の形態は、図15を参照して実施の形態1で説明した集積化光半導体装置の製造方法において、上記第5の工程が、塩素系化合物を添加した原料ガスを用い、前記第1の埋め込み層を有機金属気相成長法によって成長する点が具体的に特定されている。
そして、本実施の形態によれば、リッジ48を高くしても、第2のマスク54の周囲に於ける庇構造の発生が抑制されるので、集積化光半導体装置の特性劣化を防止することが可能になり、集積化光半導体装置の歩留まりを高くすることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態は、実施の形態2に従う集積化光半導体装置の製造方法において、第2のp型電流ブロック層80の成長開始に合わせて、原料ガスに添加する塩素系化合物の種類を切り替えて、pnキャリアブロック層(第1の埋め込み層)を成長する集積化光半導体装置の製造方法に関するものである。
実施の形態2では、pnキャリアブロック層82を成長するための原料ガスに塩素系化合物を添加して、庇構造の発生原因となる(111)A面の成長を抑制する。この時、基板22の主面に平行な結晶面(例えば、(100)面92)の成長も同時に抑制される(図20参照)。
このため、基板22の主面に平行な結晶面を主要部96とするn型電流ブロック層78が薄くなり、pnキャリアブロック層82の電流狭窄機能が劣化することがある。従って、pnキャリアブロック層82によって埋め込まれた光半導体装置(例えば、DFB半導体レーザ装置14)への電流注入効率が低下し、所定の性能が得られない集積化光半導体装置が製造される。このため、実施の形態2によっても、集積化光半導体装置の歩留まりは、未だ不十分である。
そこで、本実施の形態では、このようなn型電流ブロック層78の薄層化による電流狭窄機能の低下を緩和するため、塩素系化合物添加による庇構造86の抑制作用を、第1のp型電流ブロック層76及びn型電流ブロック層78を成長する際には控え目にして、庇構造86の抑制作用の副作用としてn型電流ブロック層78の薄層化を抑制する。一方、第2のp型電流ブロック層80を成長する時には、塩素系化合物の種類を切り替えて、塩素系化合物添加による庇構造86の抑制作用を強化して、庇構造86の顕在化を阻止する。尚、塩素系化合物の原料ガスに対する添加割合は、塩素系化合物の切り替えに合わせて、適宜変更するものとする。
このため、本実施の形態によれば、原料ガスへの塩素系化合物の添加に起因する、pnキャリアブロック層82の電流狭窄機能の低下を防止することが可能になる。また、本実施の形態によれば、実施の形態2と同様に、リッジ48を高くしても、第2のマスク54との境界領域に於ける庇構造の形成に起因する集積化光半導体装置の特性劣化を防止することができる。
以下、本実施の形態に従う光変調器付きDFB半導体レーザ装置20の製造方法を具体的に説明する。
本実施の形態に従う製造方法は、pnキャリアブロック層を成長する第5の工程を除き、図15を参照して実施の形態1で説明した製造方法と略同じである。従って、第5の工程(ステップS5)以外の工程の説明は省略する。
図21は、本実施の形態に従うpnキャリアブロック層82の形成手順を説明するフロー図である。
まず、図12(a)に示すようにリッジ48の頂上に第1のマスク46が形成され、更に、第2の光導波路層52を覆うように第2のマスク54が形成された構造体を、成長炉に設置する(ステップS51)。
次に、フォスフィン(PH3)を供給しながら、反応炉の温度を600℃に昇温する。また、反応炉内の圧力は、150Torrに設定する。
次に、フォスフィン(PH3)とトリメチルインジウム(TMI)からなる原料ガスに塩化メチルを添加し、反応炉に供給する。この時、トリメチルインジウム(TMI)の流量に対する塩化メチルの流量の割合(=塩化メチルの流量/TMIの流量;添加割合)は30とする。
このような条件の下、第1の光導波路層50の両側に、p型InPからなる第1のp型電流ブロック層76及びn型InPからなるn型電流ブロック層78を成長する。ここで、p−InPのドーパント源としては、実施の形態2と同様に、例えば、ジメチルジンクを用いる。また、n−InPのドーパント源としては、例えば、硫化水素を用いる(ステップS52)。
次に、塩化メチルをジクロロエチレンに切り替え、p型InPからなる第2のp型電流ブロック層78を成長する。ここで、トリメチルインジウム(TMI)の流量に対するジクロロエチレンの流量の割合(=ジクロロエチレンの流量/TMIの流量)は60である(ステップS53)。尚、p−InPのドーパント源は、例えば、ジメチルジンクを用いる。
以上の工程により、十分な厚さを備えたn型電流ブロック層78が形成される。従って、本実施の形態によれば、pnキャリアブロック層82の電流ブロック機能の劣化をすることができる。
以上の説明から明らかなように、本実施の形態に従う集積化光半導体装置の製造方法は、実施の形態2に従う製造方法において、以下のような点が特定されている。
まず、本実施の形態に従って製造される集積化光半導体装置は、第1の埋め込み層(例えば、pn電流ブロック層12)が、第1のp型半導体層(第1のp型電流ブロック層76)とn型半導体層(n型電流ブロック層78)と第2のp型半導体層(第2のp型ブロック80)が順次積層されて構成されている。
また、原料ガスに添加される塩素系化合物が、第1のp型半導体層76及びn型半導体層78を形成する際に原料ガスに添加する第1の塩素系化合物(例えば、塩化メチル)と、第2のp型半導体層80を形成する際に原料ガスに添加する第2の塩素系化合物(例えば、ジクロロエチレン)からなる。
また、第1及び第2の塩素系化合物を、夫々上記原料ガスに第1及び第2の割合(例えば、塩化化合物の流量/TMIの流量)で添加する。
そして、第1の割合に於いて第1の塩素系化合物(例えば、塩化メチル)が半導体基板22の主面に平行な結晶面の成長を抑制する作用は、第2の割合に於いて第2の塩素系化合物(例えば、ジクロロエチレン)が上記主面に平行な結晶面の成長を抑制する作用より弱くなるように、第1及び第2の塩素系化合物の種類及び原料ガスに対する添加割合が選ばれている。
そして、本実施の形態では、第1及び第2の塩素系化合物が異なる化合物である。
従って、本実施の形態によれば、塩素系化合物によるn型電流ブロック層の薄層化を緩和して、pnキャリアブロック層82の電流狭窄機能の劣化を阻止することができる。このため、集積化光半導体装置の歩留まりを一層高くすることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態は、実施の形態2に従う集積化光半導体装置の製造方法において、第2のp型電流ブロック層80の成長開始に合わせて、原料ガスに添加する塩素系化合物の種類は変えずに添加割合を切り替えて、pnキャリアブロック層(第1の埋め込み層)を成長する集積化光半導体装置の製造方法に関するものである。
実施の形態3は、第2のp型電流ブロック層80の成長開始に合わせて、原料ガスに添加する塩素系化合物の種類を切り替えて、n型電流ブロック層の薄層化を抑制する。これに対して、本実施の形態では、原料ガスに添加する塩素系化合物の種類は変えずに、その添加割合を、第2のp型電流ブロック層80を成長する時より、第1のp型電流ブロック層76及びn型電流ブロック層を成長する時の方を小さくする。
このようにすると、第1のp型電流ブロック層76及びn型電流ブロック層78を成長する際のn型電流ブロック層78の薄層化が抑制される一方、第2のp型電流ブロック層80を成長する際の庇構造形成の抑制作用が強化されるので、第2のマスク54との境界領域に於ける庇構造86の顕在化が阻止することができる。
このため、本実施の形態によれば、実施の形態3と同様に、原料ガスへの塩素系化合物の添加に起因する、pnキャリアブロック層82の電流狭窄機能の低下を防止することが可能になる。また、本実施の形態によれば、実施の形態2と同様に、リッジ48を高くしても、第2のマスク54との境界領域に於ける庇構造の形成に起因する集積化光半導体装置の特性劣化を防止することができる。
以下、本実施の形態に従う光変調器付きDFB半導体レーザ装置20の製造方法を具体的に説明する。
本実施の形態に従う製造方法は、pnキャリアブロック層を成長する第5の工程を除き、図15を参照して実施の形態1で説明した製造方法と略同じである。従って、第5の工程(ステップS5)以外の工程の説明は省略する。
図22は、本実施の形態に従うpnキャリアブロック層82の形成手順を説明するフロー図である。
まず、図12(a)に示すようにリッジ48の頂上に第1のマスク46が形成され、更に、第2の光導波路層52を覆うように第2のマスク54が形成された構造体を、成長炉に設置する(ステップS51)。
次に、フォスフィン(PH3)を供給しながら、反応炉の温度を575℃に昇温する。また、反応炉内の圧力は、150Torrに設定する。
次に、フォスフィン(PH3)とトリメチルインジウム(TMI)からなる原料ガスに塩化メチルを添加し、反応炉に供給する。この時、トリメチルインジウム(TMI)の流量に対する塩化メチルの流量の割合(=塩化メチルの流量/TMIの流量;添加割合)は20とする。
このような条件の下、第1の光導波路層50の両側に、p型InPからなる第1のp型電流ブロック層76及びn型InPからなるn型電流ブロック層78を成長する。ここで、p−InPのドーパント源としては、実施の形態2と同様に、例えば、ジメチルジンクを用いる。また、n−InPのドーパント源としては、例えば、硫化水素を用いる(ステップS52)。
次に、トリメチルインジウム(TMI)の流量に対する塩化メチルの流量の割合(=ジクロロエチレンの流量/TMIの流量)は30に切り替える(ステップS53)。尚、p−InPのドーパント源は、例えば、ジメチルジンクを用いる。
以上の工程によれば、n型電流ブロック層78を成長する際に添加する塩素系化合物の添加割合が小さいので、n型電流ブロック層78の薄層化が抑制される。従って、本実施の形態によれば、pnキャリアブロック層82の電流ブロック機能の劣化を阻止することができる。
以上の説明から明らかなように、本実施の形態に従う集積化光半導体装置の製造方法は、実施の形態2に従う製造方法と以下の点で相違する。
まず、本実施の形態3では、第1及び第2の塩素系化合物が異なる化合物であったが、本実施の形態では、同一に化合物である。更に、本実施の形態では、第1の塩素化合物を原料ガスに添加する割合が、第2の塩素化合物を原料ガスに添加する割合より小さい。
従って、本実施の形態によれば、塩素系化合物によるn型電流ブロック層の薄層化を緩和して、pnキャリアブロック層82の電流狭窄機能の劣化を阻止することができる。このため、集積化光半導体装置の歩留まりを、実施の形態2より一層高くすることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態は、実施の形態2乃至4において、第2の埋め込み層を形成する第6の工程が、塩素系化合物を添加した原料ガスを用いて半絶縁性半導体からなる埋め込み層を有機金属気相成長法で成長する工程からなる集積化光半導体装置の製造方法に関するものである。
図23は、本実施の形態で製造される光変調器付きDFB半導体レーザ装置の要部斜視図である。また、図24は、図23のA-A’線に於ける断面を矢印の方向から見た断面図(図24(a))と図23のB-B’線に於ける断面を矢印の方向から見た断面図(図24(b))である。
図23及び図24に示すように、本実施の形態によって製造される光変調器付きDFB半導体レーザ装置100(集積化光半導体装置)は、半導体基板22の主面に平行な直線状の第1の光導波路層50からなり、前記第1の光導波路層50の両側が、p型半導体層68(第1のp型電流ブロック層76)とn型半導体層70(n型電流ブロック層78)が積層されてなるpnキャリアブロック層12(第1の埋め込み層)によって埋め込まれてなるDFB半導体レーザ装置14(第1光半導体装置)と、前記第1の光導波路層50に光学的に接続された直線状の第2の光導波路層52からなり、前記第2の光導波路層52が、半絶縁性半導体からなる半絶縁性半導体層66(第2の埋め込み層)によって両側を埋め込まれてなる半導体光変調器18(第2光半導体装置)を具備し、前記第1及び第2の光導波路層50,52が一の直線上に配置されている。
更に、半絶縁性半導体からなる半絶縁性半導体層66(第2の埋め込み層)は、pnキャリアブロック層12(第1の埋め込み層)の上に延在している。
ここで、pnキャリアブロック層12は、実施の形態1乃至4のpnキャリアブロック層82ように、第1のp型電流ブロック層76と、n型電流ブロック層78と、第2のp型電流ブロック層80が順次積層された構成であることが好ましい(図24)。
すなわち、本実施の形態によって製造される光変調器付きDFB半導体レーザ装置100(集積化光半導体装置)は、実施の形態1乃至4によって製造される光変調器付きDFB半導体レーザ装置20(集積化光半導体装置)と同一の部材を備えている。
但し、図23及び24(a)に示すように、半絶縁性半導体層66(第2の埋め込み層)の表面が、DFB半導体レーザ装置14(第1光半導体装置)及び半導体光変調器18(第2光半導体装置)の近傍で平坦であり、且つ、DFB半導体レーザ装置14(第1光半導体装置)及び半導体光変調器18(第2光半導体装置)の頂上と略同一平面上にある。
尚、本実施の形態では、半導体基板22の伝導型はn型であり、その主面は(100)面である。また、図23及び24では、電極は省略されている。
次に、本実施の形態に従う光変調器付きDFB半導体レーザ装置20の製造方法を具体的に説明する。
本実施の形態に従う製造方法は、半絶縁性半導体層66からなる第2の埋め込み層を成長する第7の工程を除き、図15を参照して実施の形態1で説明した製造方法と略同じである。従って、第7の工程(ステップS7)以外の工程の説明は省略する。
本実施の形態に従う製造方法の第7の工程は、原料ガスに、塩素系化合物を添加する点を除いて、実施の形態2乃至4に従う製造方法と略同じである。
すなわち、本実施の形態に従う第7の工程(ステップS7)では、第1のマスク46を選択成長膜として、第2の光導波路層52の両側に、フォスフィン(PH3)とトリメチルインジウム(TMI)からなる原料ガスにフェロセンを添加し、有機金属気相成長法によって半絶縁性半導体層66(FeがドーピングされたInP)からなる上記第2の埋め込み層を形成する(図13(a)及び(b)参照)。
但し、本実施の形態では、原料ガスに、ジクロロエチレンを添加する。この時、ジクロロエチレンの添加割合すなわちトリメチルインジウム(TMI)の流量に対する塩化メチルの流量の割合(=塩化メチルの流量/TMIの流量)を60とする。また、成長温度は575℃とし、成長圧力は150Torrとする。
上述したように、原料ガスにジクロロエチレンを添加することによって、半導体基板22の主面(例えば、(100)面)に対して傾いた、例えば、(311)B結晶面の成長速度が著しく速くなる。このため、庇成長の原因となる(111)A面やB面の成長や、半導体基板22の主面方向の成長が抑制される。
このため、図23及び24(a)に示すように、半絶縁性半導体層66(第2の埋め込み層)の表面が、DFB半導体レーザ装置14及び半導体光変調器18の近傍で平坦であり、且つ、DFB半導体レーザ装置14及び半導体光変調器18の頂上と略同一平面上にある。
一方、DFB半導体レーザ装置14及び半導体光変調器18から十分離れた場所では、半絶縁性半導体層66は、DFB半導体レーザ装置14及び半導体光変調器18近傍の平坦部より極めて薄くなっている。そして、両領域の中間には斜面が形成されている(図24参照)。
以上説明したように、本実施の形態に従う光半導体装置の製造方法では、図15等を参照して説明した実施の形態2乃至4の製造方法において、第7の工程が、塩素系化合物を添加した原料ガスを用いて第2の埋め込み層を有機金属気相成長法によって成長するので、各光半導体装置(DFB半導体レーザ装置14及び半導体光変調器18)の表面が、その両側で平坦になり、且つ光半導体装置の頂上と同一平面になる。従って、各光半導体装置の頂上と埋め込み層の間には、段差が殆ど形成されないため、各光半導体装置の頂上に電極を形成する時に問題となる、マスク途切れおよび電極途切れを回避することが可能なる。
このため、本実施の形態に従えば、製造歩留まりが、更に向上する。
尚、上記実施の形態1乃至5では、各光半導体装置の間の電極コンタクト層44は除去せずにそのまま残したままである。しかし、この部分で電極コンタクト層44を除去して分離溝を形成し、各光半導体装置間の電気抵抗を大きくしてもよい。
また、上記実施の形態では、原料ガスに添加する塩素系化合物として、塩化メチル及びジクロロエチレンを例示し集積化半導体装置の製造方法を説明しているが、他の塩素系化合物、例えば、四塩化炭素、モノクロルエタン、モノクロロメタン(塩化メチル)、塩化水素、トリクロロエタン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、ジクロロプロパンを用いてもよい。
また、第2の埋め込み層を構成する半絶縁性半導体として、FeをドーピングしたInP(Fe―InP)を例示したが、例えば、Ru−InP或いはTi−InPなどの他の半絶縁性半導体を使うことも可能である。
また、半導体レーザ装置の活性層及び光変調器の光吸収層を構成する量子井戸構造として、InGaAsPからなる量子井戸構造を例示したが、AlGaInAs,AlGaInP,InGaAs,InGaAsSbなどの混晶半導体からなる量子井戸構造を用いてもよい。