JP5227495B2 - 粘着シート - Google Patents

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Description

本発明は、所定の温度以上に加熱した場合に粘着性が低下又は消滅する粘着シートに関する。更に詳しくは、加熱した場合であっても粘着剤層が基材から剥離し難く、被着体に糊残りの生じ難い粘着シートに関する。
適度な粘着力で被着体に貼り付けることができるとともに、使用目的を終え不要となった後には簡単に剥離することのできる再剥離性粘着シートは、例えば、封筒や精密機械収納用ケース等のシール部分、壁紙、ラベル、車のバンパーや電線等の取り付け、フレキシブルプリント基板(FPC)製造工程における裏打用シートやメッキ工程でのマスク材、並びに半導体ウェハの切断工程、及び積層セラミックコンデンサーの小片化加工工程における仮止めシート等として、電気・電子業界において広く用いられている。このような再剥離性シートとしては、基材上に熱膨張性微小球を含有する粘着剤層を設けた粘着シート(例えば、特許文献1〜4参照)等が提案され、用いられている。
特許文献1〜4において開示されたタイプの粘着シートは、被着体と粘着剤層との界面に凹凸を発生させることにより被着体との接触面積が小さくなり、粘着力が低下するものである。従って、他のタイプの粘着シートに比べて、被着体を容易に剥離させることができる。また、再剥離性粘着シートのなかでも、初期剥離力を高くすることができる。従って、被着体を加工する際に、強い力が加わる工程、例えば、積層セラミックコンデンサーの小片化加工工程や処理液等に浸漬させるような工程、例えばメッキ工程等、各種工程で用いられている。
しかしながら、粘着シートの初期剥離力が高過ぎる場合には、被着体の貼り直し作業や積層セラミックコンデンサーの小片化加工の際に、粘着剤層が基材から剥離する場合があった。基材から剥離した粘着剤層は、被着体側に付着して、いわゆる糊残りを生じ易く、作業効率や加工精度の低下を生ずる場合があった。
特開平11−302614号公報 特開2000−351947号公報 特開2002−69422号公報 特開2003−160765号公報
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、基材と粘着剤層との密着性、及び被着体との密着性に優れ、被着体の貼り直しが容易であるとともに、被着体について高精度の加工を行うことができ、かつ、加工完了後は、被着体に糊残り等による汚染を生ずることなく容易に剥離可能な粘着シートを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、粘着剤層が基材から剥離するという現象は、貼り直し時や加工時に粘着剤層に負荷される外部からの力を、粘着剤層が十分に吸収できないことに起因する現象であることを見出した。そして、粘着剤層の弾性率を所定の範囲に限定することにより、粘着剤層が、負荷される外部からの力を十分に吸収可能となり、上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、以下に示す粘着シートが提供される。
[1]フィルム状又はシート状の基材と、前記基材の少なくとも一方の面上に配設される、熱膨張性微小球を含有する粘着剤層と、を備えた粘着シートであって、前記粘着剤層の20℃における弾性率が、1.0×10Pa以上、1.0×10Pa未満であり、前記粘着剤層が、前記熱膨張性微小球、酸価が30以上かつ重量平均分子量が20万〜100万のアクリル系粘着剤、前記アクリル系粘着剤と反応し得る架橋剤、及び軟化点が120℃以上の粘着付与樹脂を含有する粘着剤組成物が、前記基材の少なくとも一方の面上に層状に塗布されて形成されたものであり、前記粘着剤組成物に含有される前記架橋剤の割合が、前記アクリル系粘着剤に対する割合で、0.001〜0.3当量である粘着シート。
]下記剥離試験により測定される初期剥離力が、5N/25mm以上である前記[1]に記載の粘着シート。
[剥離試験]:SUS304板をJIS K 0237に従って処理して得られた被着体の表面に、23℃、65%RHの条件下、20mm幅の粘着シートを貼付し、0.5時間放置した後、23℃、65%RHの条件下、180°剥離力を測定し、測定された180°剥離力の値を、25mm幅の粘着シートを用いた場合の値(N/25mm)に換算する。
本発明の粘着シートは、基材と粘着剤層との密着性に優れたものであるとともに、被着体との貼り直しも容易であり、かつ、被着体から剥離後も、被着体に糊残り等による汚染が生じ難いものである。また、本発明の粘着シートは、被着体との密着性に優れたものである。従って、被着体の加工時には、被着体と強固に密着可能であるために、高精度の加工を行うことができる。更に、加工完了後は、容易に被着体から剥離可能なものである。
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
本発明の粘着シートの一実施形態は、フィルム状又はシート状の基材と、基材の少なくとも一方の面上に配設される、熱膨張性微小球を含有する粘着剤層と、を備えた粘着シートであり、粘着剤層の20℃における弾性率が、1.0×104Pa以上、1.0×106Pa未満のものである。以下、その詳細について説明する。
本実施形態の粘着シートを構成する基材の材質は特に制約されず、粘着シートの利用分野に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、セロハン、ポリイミド、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリアミド、ポリスルホン等の合成樹脂によって基材を構成することができる。基材は、透明であっても、各種顔料や染料を配合して着色したものであってもよい。また、その表面がマット状に加工された基材を用いることもできる。
粘着シートを50〜90℃程度の環境で長時間さらす分野で使用する場合には、寸法変化やカール発生等を回避すべく、JIS C 2318で定義される加熱収縮率が0.5%以下の基材を用いることが好ましく、0.2%以下の基材を用いることが更に好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、及びポリエチレンナフタレートフィルムのうちから、加熱収縮率が0.2%以下であるのものを選択するとよい。
基材の厚さは、粘着シートの利用分野に応じて適宜選択することができる。基材の厚さは、具体的には、25〜250μmであることが好ましい。粘着シートの用途が、切断及び小片化加工時の被着体保持用途である場合、基材の厚さは25〜250μmであることが好ましい。但し、被着体がセラミック系シートであり、粘着シートを、このセラミック系シートを小片化加工する際の保持に用いる場合には、基材の厚さは100〜188μmであることが好ましい。
基材には、公知の添加剤、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等を含有させることができる。また、基材と粘着剤層との密着性を向上させるために、基材の粘着剤層が配設される面に表面処理を施すこと、及び/又は、基材と粘着層との間に接着性を有する中間層を介在させることが好ましい。表面処理としては、例えば(1)コロナ放電処理やグロー放電処理等の放電処理、(2)プラズマ処理、(3)火炎処理、(4)オゾン処理、(5)紫外線処理や電子線、放射線処理等の電離活性線処理、(6)サンドマット処理やヘアライン処理等の粗面化処理、(7)化学薬品処理等を挙げることができる。また、中間層としては、例えば、粘着剤層を形成する粘着剤組成物から熱膨張性微小球を除いた組成物により形成された層であって、基材との密着性が、膨張性微小球を含有する粘着剤組成物によって形成された粘着剤層よりも高い層を好適に用いることができる。なお、中間層の厚さは、1〜100μmであることが好ましく、基材との密着性、生産性の観点からは、10〜50μmであることが更に好ましい。
本実施形態の粘着シートは、基材の少なくとも一方の面上に、熱膨張性微小球を含有する粘着剤層が配設された積層構造を有するものである。この粘着剤層の、20℃における弾性率は、1.0×104Pa以上、1.0×106Pa未満、好ましくは1.0×105Pa以上、更に好ましくは5.0×105Pa以上である。粘着剤層の20℃における弾性率が1.0×104Pa未満であると、粘着シートの初期剥離力が低下する。この初期剥離力の低下は、被着体との密着性の低下につながる。また、粘着シートとして、微粘着性のものとの差別化が困難となり、剥離性の面で熱膨張性微小球を用いる利点がなくなる。一方、粘着剤層の20℃における弾性率が1.0×106Pa以上であると、基材と粘着剤層との密着性が低下してしまい、粘着剤層上に貼付した被着体の貼り直しや、加工の際に加わる力を十分に吸収することができなくなる。従って、粘着剤層の一部又は全部が基材から剥離し易くなり、被着体に粘着剤層が付着してしまうために好ましくない。
本実施形態の粘着シートの初期剥離力は、5N/25mm以上であることが好ましく、7.5〜25N/25mmであることが更に好ましく、10〜25N/25mmであることが特に好ましい。初期剥離力が5N/25mm未満であると、被着体との間で十分な密着性が発揮され難くなる傾向にある。なお、本明細書にいう「初期剥離力」は、以下に示す剥離試験によって測定される物性値をいう。
[剥離試験]:SUS304板をJIS K 0237に従って処理して得られた被着体の表面に、23℃、65%RHの条件下、20mm幅の粘着シートを貼付し、0.5時間放置した後、23℃、65%RHの条件下、180°剥離力を測定し、測定された180°剥離力の値を、25mm幅の粘着シートを用いた場合の値(N/25mm)に換算する。
粘着剤層は、所定の粘着剤組成物を、基材上の少なくとも一方の面上に層状に塗布することにより形成することができる。粘着剤組成物には、(a)熱膨張性微小球の他に、例えば(b)粘着剤、(c)架橋剤、及び(d)所望により用いられる粘着付与樹脂等の成分が含有される。なお、これら各成分の種類及び/又は含有割合を適宜調製することにより、形成される粘着剤層の弾性率を前述の所定の範囲内とすることができる。
(a)熱膨張性微小球としては、加熱により容易にガス化して膨張する物質を、弾性を有する殻内に内包させた微小球を好適例として挙げることができる。加熱により容易にガス化して膨張する物質としては、例えばイソブタン、プロパン、ペンタン等を挙げることができる。また、殻は、熱溶融性物質や熱膨張により破壊する物質等で形成されたものを好適例として挙げることができる。殻を形成する物質としては、例えば、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホン等を挙げることができる。熱膨張性微小球の市販品としては、例えば「マイクロスフェア」(商品名、松本油脂製薬社製)等を挙げることができる。
熱膨張性微小球は、粘着シートの使用温度を考慮して、そのガス化温度(熱膨張温度)が好適なものを適宜選択すればよい。具体的には、その熱膨張温度が、粘着シートに貼付される被着体の切断加工、小片化加工等の際の加工温度よりも、25℃以上であるものを用いることが好ましい。また、熱膨張性微小球の体積膨張率は、5倍以上であることが好ましく、7倍以上であることが更に好ましく、10倍以上であることが特に好ましい。熱膨張性微小球の体積膨張率が前記数値以上であると、加熱処理することによって粘着層の粘着力を効率よく低下させることができる。なお、熱膨張性微小球の殻は、前記体積膨張率となるまで膨張した場合であっても破裂しない、適度な強度を有するものであることが好ましい。熱膨張性微小球の大きさは、粘着シートの用途により適宜選択すればよい。具体的には、質量平均粒径で5〜50μmであることが好ましい。
熱膨張性微小球は単独でも用いてもよいが、二種以上を組み合わせて用いることもできる。二種以上の組み合わせとしては、(1)ガス(内包される物質)が異なる組み合わせ、(2)質量平均粒径が異なる組み合わせ、(3)殻を構成する材質が異なる組み合わせ、(4)殻の厚さが異なる組み合わせ、(5)(1)〜(4)の組み合わせ、を挙げることができる。
一般に、粘着シートの剥離に要する時間は、配合される熱膨張性微小球の種類によって定まる。例えば、熱膨張性微小球が、120℃、30分間で膨張のピークに到達する場合、剥離に際しての加熱条件は、通常、120℃、30分となる。但し、作業工程やスケジュール等により、加熱時間が30分を超える場合がある。加熱時間が30分を超えると、膨張した粘着剤層が萎んでくる。例えば、120℃、30分間加熱した場合、粘着剤層の膨張倍率は約3倍であるのに対し、120℃、90分間加熱した場合、粘着剤層の膨張倍率は約1.5倍である。粘着剤層の萎みは、被着体と粘着剤層との再密着性の原因となり、被着体が粘着シートから容易に剥離できなくなる場合がある。
ここで、二種以上の熱膨張性微小球を組み合わせると、粘着剤層の萎みを抑制することが可能となるために好ましい。具体的には、第一の熱膨張性微小球と、この第一の熱膨張性微小球に比してその質量平均粒径が大きい第二の熱膨張性微小球を組み合わせて使用することが更に好ましく、第二の熱膨張性微小球100質量部に対して、5〜50質量部の第一の熱膨張性微小球を配合することが特に好ましい。
また、熱膨張性微小球は、その粒度分布を調整してから使用することが好ましい。熱膨張性微小球の粒度分布を調整して用いることにより、形成される粘着剤層の表面の平滑性を向上させることができるとともに、熱膨張性微小球の膨張時における粘着剤層の表面凹凸を均一にすることができる。粒度分布の調整は、使用する熱膨張性微小球に含まれる比較的の大きな粒径のものを、遠心力型風力分級機、乾式分級機、篩過機等で分級して除去すればよい。平均粒径に比して大きな粒径粒子を除去することにより、形成される粘着剤層の表面の平滑性を向上させることができる。
また、熱膨張性微小球を分級することにより、形成される粘着剤層の厚さを調整し易くなる。例えば、粘着剤層の厚さを20μm程度にする場合、質量平均粒径が8μm程度の熱膨張性微小球を使用することの他、質量平均粒径が15μm程度のものから、大粒径(例えば、粒径が20μm以上)のものを分級して除去した熱膨張性微小球を使用することができる。このように熱膨張性微小球を分級する方法によれば、これまで使用していた熱膨張性微小球をそのまま使用することができる。従って、膨張特性、挙動等を新たに把握する必要がなく、開発時間を短縮し、開発効率を向上させることができる。
(b)アクリル系粘着剤としては、形成される粘着剤層の弾性率を好ましい範囲に調整できるものであれば、特に制限はない。但し、その酸価が30以上のアクリル系粘着剤を用いることが好ましい。アクリル系粘着剤の酸価を30以上とすることにより、架橋剤を用いて架橋した場合に十分な架橋密度とすることができる。また、架橋剤と反応しなかった未反応の官能基が基材と反応し易くなるため、基材と粘着剤層との密着性が向上するために好ましい。なお、未反応の官能基は、被着体とも反応し易くなる。従って、高温条件下においても被着体との密着性が十分に発揮されるとともに、熱膨張性微小球の膨張後においては、基材と粘着剤層との密着性が向上する。
基材や被着体との密着性向上の観点からは、アクリル系粘着剤の酸価は、40〜50であることが更に好ましい。なお、本明細書にいう「酸価」とは、試料(アクリル系粘着剤)1g中に含まれる遊離脂肪酸や樹脂酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量(mg)をいい、JIS K 0070に準拠して測定され、下記式(1)から中和滴定法により算出することができる。
A(酸価)=B×F×5.611/S (1)
(B:測定に用いた0.1mol/l水酸化カリウムのエタノール溶液の量(ml)、F:0.1mol/l水酸化カリウムのエタノール溶液のファクター、S:試料の質量(g)、5.611:水酸化カリウムの式量(56.11×1/10))
アクリル系粘着剤の重量平均分子量は、1万〜200万であることが好ましく、10万〜150万であることが更に好ましく、20万〜100万であることが特に好ましい。アクリル系粘着剤の重量平均分子量が上記範囲内であると、高精度の加工を行なうのに十分な剥離力を有し、かつ被着体への粘着剤層の付着もなく、加工後の剥離性も良好である。
アクリル系粘着剤は、架橋剤と反応し得るものである。このアクリル系粘着剤には、アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルと、架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体との共重合体が包含される。アクリル酸アルキルエステル、及びメタクリル酸アルキルエステルの「アルキルエステル」としては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、イソオクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、ペンタデシルエステル、オクタデシルエステル、ノナデシルエステル、エイコシルエステル等を挙げることができる。架橋剤と反応し得る官能基としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基を挙げることができる。
架橋剤と反応し得る官能基がカルボキシル基である単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等を挙げることができる。また、官能基がヒドロキシル基である単量体としては、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ヒドロキシヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシヘキシル、アクリル酸ヒドロキシオクチル、メタクリル酸ヒドロキシオクチル、アクリル酸ヒドロキシデシル、メタクリル酸ヒドロキシデシル、アクリル酸ヒドロキシラウリル、メタクリル酸ヒドロキシラウリル等を挙げることができる。
架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体との比は、質量比で、92:8〜98:2の範囲であることが好ましい。この範囲よりも、架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体の配合比が少ないと、熱膨張性微小球が膨張した場合に、被着体と粘着剤層との剥離性が損なわれる傾向にある。一方、この範囲よりも、架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体の配合比が多いと、被着体と粘着剤層との粘着力が乏しくなる傾向にある。被着体と粘着剤層との粘着性及び剥離性を向上させるという観点からは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体との比は、質量比で、95:5〜93:7であることが更に好ましい。
なお、所望により、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体以外のその他の単量体を併用することもできる。その他の単量体としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド、ポリエチレングリコールアクリレート、N−ビニルピロリドン、テトラフルフリルアクリレート等を挙げることができる。
アクリル系粘着剤は、単量体成分をラジカル共重合させることによって得ることができる。この場合の共重合法は従来公知であり、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、光重合法等を挙げることができる。また、アクリル系粘着剤のガラス転移温度は、−50〜−20℃であることが好ましい。ガラス転移温度が−20℃超であると、被着体と粘着剤層との粘着力が低下する傾向にある。一方、ガラス転移温度が−50℃未満であると、加熱処理後の剥離時に糊残りを生じ易くなり、剥離性が良好になり難くなる傾向にある。被着体と粘着剤層との粘着性及び剥離性を向上させるという観点からは、アクリル系粘着剤のガラス転移温度は、−40℃〜−25℃であることが更に好ましい。
形成された粘着剤層中において、アクリル系粘着剤は、所定の(c)架橋剤で架橋されている。(c)架橋剤は、用いるアクリル系粘着剤に合せて適宜選択すればよく、特に制約はない。架橋剤の具体例としては、イソシアネート系架橋剤、金属キレート架橋剤、エポキシ系架橋剤等を挙げることができる。これらのなかでも、熱膨張性微小球が膨張する温度への加熱後における、被着体からの剥離性を向上させ、被着体への糊残りを防止するといった観点から、エポキシ系架橋剤を用いることが好ましい。エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノール系エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
常温における被着体との粘着性、及び熱膨張性微小球の膨張後における被着体からの剥離性の面で、多官能のエポキシ系架橋剤が好ましく、4官能のエポキシ系架橋剤が更に好ましい。具体的には、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンを挙げることができる。但し、これらのエポキシ系架橋剤は、架橋反応速度が遅くなる傾向にある、このため、架橋反応が不十分である場合には、粘着剤層の凝集力が低くなり、被着体表面に糊残り等が発生し易くなる場合がある。従って、架橋反応を促進するために、(1)アミン等の触媒を添加する、(2)粘着剤の構成成分としてアミン系官能基を持つ単量体を用いる、(3)架橋剤にアジリジン系架橋剤を併用する、ことが望ましい。特に、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン等の架橋剤に、触媒効果を有する3級アミンを添加することが好ましい。
架橋剤は、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。架橋剤の配合割合は、前述の熱膨張性微小球、アクリル系粘着剤、及び所望により用いられる、後述する粘着付与樹脂とともに、粘着剤層が好ましい弾性率となるように適宜選択すればよく、特に制限はない。但し、粘着剤組成物に含有される架橋剤の割合は、アクリル系粘着剤に対する割合で、0.5当量以下とするのが、基材との密着性が向上するために好ましい。架橋剤の割合が、アクリル系粘着剤に対する割合で0.5当量を超えると、被着体との粘着力が低下し易くなり、熱膨張性微小球を加熱膨張させる前に、被着体と粘着剤層とが剥離し易くなる傾向にあるために好ましくない。基材及び被着体との密着性の面から、粘着剤組成物に含有される架橋剤の割合は、アクリル系粘着剤に対する割合で、1×10-3〜0.3当量とすることが更に好ましい。
粘着剤層の20℃における弾性率を、1.0×104Pa以上、1.0×106Pa未満の範囲とすると、初期剥離力が低下する傾向にあるため、被着体との密着性が低下する場合がある。このため、被着体の加工精度や加工歩留りが低下する場合も想定される。従って、粘着剤層を形成する粘着剤組成物に(d)粘着付与樹脂を含有させることが、常温付近における被着体との密着性の調整が容易となるために好ましい。粘着付与樹脂としては、その軟化点が120℃以上であるものが好ましい。粘着付与樹脂の具体例としては、α−ピネン系、β−ピネン系、ジペンテン系、テルペンフェノール系等のテルペン系樹脂;ガム系、ウッド系、トール油系等の天然系ロジン;これらの天然系ロジンに水素化、不均化、重合、マレイン化、エステル化等の処理をしたロジン系誘導体等のロジン系樹脂;石油樹脂;クマロン−インデン樹脂等を挙げることができる。
これらのなかでも、軟化点が120〜160℃の範囲内であるものが更に好ましく、150〜160℃の範囲であるものが特に好ましい。軟化点が上記の範囲内である粘着付与樹脂を用いると、被着体への汚染、糊残りが少ないばかりでなく、作業環境下における被着体との密着性をさらに向上させることが可能となる。また、粘着剤層の弾性率を、所望とする所定の範囲内に調整し易く、しかも粘着剤層の弾性率が1.0×106Pa未満であっても初期剥離力を高くすることができるので好ましい。更に、粘着付与樹脂としてテルペンフェノール系の粘着付与樹脂を用いると、被着体への汚染、糊残りが少ないばかりか、50〜90℃の環境下での被着体との粘着性が向上するとともに、熱膨張性微小球の膨張後は、被着体から更に容易に剥離可能となる。
粘着付与樹脂の配合割合は、粘着剤層の弾性率を所望とする所定の数値範囲内に調整することができるように適宜選択すればよく、特に制限はない。但し、粘着剤層の弾性率と初期剥離力の面から、アクリル系粘着剤100質量部に対して、10〜100質量部とすることが好ましい。粘着付与樹脂の配合割合が、アクリル系粘着剤100質量部に対して、10質量部未満であると、作業時の被着体の密着性が低下する傾向にある。一方、100質量部超であると、常温における被着体との貼り付け性が低下する。被着体との密着性、及び常温における貼り付け性の面から、粘着付与樹脂の配合割合を、アクリル系粘着剤100質量部に対して、15〜50質量部とすることが更に好ましい。また、粘着付与樹脂の水酸基価は、30以上であることが好ましい。粘着付与樹脂の水酸基価が30未満であると、剥離時に被着体に糊残りが生じ易くなる場合がある。
本実施形態の粘着シートを得るには、先ず、前述の各成分を含有する粘着剤組成物を適当な溶剤に溶解又は分散させ、その固形分濃度が20〜50質量%の粘着剤層形成塗工液を調製する。次いで、調製した粘着剤層形成塗工液を、基材の少なくとも一方の面上に直接、又は適当な中間層を介して、常法に従って塗布及び乾燥することにより、例えば10〜100μmの厚みの粘着剤層を形成する。なお、粘着剤層の厚みが100μm超であると、加熱処理後の剥離時に凝集破壊が起こり易くなり、良好な剥離性が得られなくなる場合がある。一方、粘着剤層の厚みが10μm未満であると、被着体との十分な粘着力を得難くなる場合がある。
また、粘着剤層中に残存する揮発分の量(残存揮発分量)によっては、粘着剤層と基材との粘着性や、加熱後における被着体からの剥離性、糊残り性に影響を及ぼす場合がある。従って、粘着剤層中の残存揮発分量を4質量%以下とすることが好ましく、2質量%以下とすることが更に好ましい。なお、粘着剤層形成塗工液には、従来慣用されている各種添加剤、例えば、界面活性剤、潤滑剤、安定剤、粘度調整剤等を添加することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各種物性値の測定方法、及び諸特性の評価方法を以下に示す。
[弾性率]:粘着シートを構成する粘着剤層の、20℃における弾性率(Pa)を測定した。具体的には、先ず、試料となる粘着剤組成物を所定のシリコーンシート上に塗工・乾燥後に剥離させることにより、厚さ0.1mm×幅3mm×長さ15mmの試料シートを作製した。次いで、作製した試料シートの長手方向の一方の端部を固定式チャックに、他方の端部を可動式チャックに、それぞれ担持した。この状態で、TMA4000S(MAC SCIENCE社製)を用いて、TMA引張モード法により−0.2〜−0.5gの荷重を負荷して弾性率(Pa)を測定した。
[初期剥離力(SUS)]:SUS304板をJIS K 0237に従って処理して得られた被着体の表面に、23℃、65%RHの条件下、20mm幅の粘着シートを貼付し、0.5時間放置して測定用サンプルを用意した。この測定用サンプルを放冷後、23℃、65%RHの条件下で180°剥離力を測定した。測定した180°剥離力の値を、25mm幅の粘着シートを用いた場合の値(N/25mm)に換算した。
[剥離性(PETフィルム)]:被着体としてPETフィルムを使用し、その表面に粘着シートを貼付した後、130℃のホットプレート上で5分間加熱した。放冷後、室温(23℃)にて、粘着シートの粘着層が被着体から剥離しているか否かを評価した。評価基準は、放冷後、何も力を加えずに被着体より粘着シートが剥離した場合を「◎」、粘着シートに指を触れた後、被着体より剥離した場合を「○」、粘着シートに力を加え、剥離した場合を「△」、被着体より剥離困難である場合を「×」とした。
[汚染性(PETフィルム)]:前述の「剥離性(PETフィルム)」の評価において、粘着シートを剥離した被着体の表面の汚染性を評価した。評価基準は、被着体に変色、糊残りが認められない場合を「○」、被着体に変色又は糊残りが認められた場合を「×」とした。
[基材との密着性]:被着体としてガラス板を使用し、その表面に23℃、65%RHの環境下で20mm幅の粘着シートを貼付し、0.5時間放置してサンプルを用意した。23℃、65%RHの環境下で粘着シートをガラス板より剥離し、その際の粘着シートの状態を目視して以下の基準により評価した。
○:基材と粘着剤層とが密着しており、被着体に粘着剤層の付着が認められない。
×:基材と粘着剤層との界面で剥離が認められる。
[粘着剤層の膨張率]:熱風乾燥機を使用して、粘着シートを、(1)温度120℃、30分間で加熱した後の粘着剤層の厚さ、及び(2)温度120℃、90分間加熱した後の粘着剤層の厚さ、をそれぞれ測定した。膨張させる前の粘着剤層の厚さから、それぞれの条件で加熱した後の膨張率を算出した。
(実施例1)
熱膨張性微小球(松本油脂製薬社製、商品名「マイクロスフェアF50D」、平均粒径:15μm)6質量部、アクリル系粘着剤(アクリル酸−アクリル酸ブチル共重合体、質量平均分子量:51万、ガラス転移温度:−32℃、酸価:46)27質量部、テルペンフェノール系粘着付与樹脂(軟化点:150℃)5質量部、エポキシ系架橋剤(N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン)0.15質量部、及びトルエン61.85質量部を均一に混合、溶解し、粘着剤層形成塗工液を調製した。この粘着剤層形成塗工液を、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートシート上にベーカー式アプリケーターにて塗布し、80℃にて十分乾燥することにより、厚さ50μmの粘着剤層を有する再剥離性の粘着シートを作製した。この粘着シートの物性値の測定結果、及び各種特性の評価結果を表1に示す。
(実施例2)
熱膨張性微小球として、平均粒径8μmの熱膨張性微小球(松本油脂製薬社製、商品名「マイクロスフェアF80GSD」)2質量部と、前述の実施例1で使用した平均粒径15μmの熱膨張性微小球4質量部とを混合したものを用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして粘着シートを作製した。この粘着シートの物性値の測定結果、及び各種特性の評価結果を表1に示す。
(比較例1)
熱膨張性微小球(松本油脂製薬社製、商品名「マイクロスフェアF50D」、平均粒径:15μm)5質量部、熱膨張性微小球(松本油脂製薬社製、商品名「マイクロスフェアF80GS」、平均粒径:8μm)2.5質量部、アクリル系粘着剤(アクリル酸ブチル−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、質量平均分子量:48万、ガラス転移温度:−35℃、酸価:21)33質量部、テルペンフェノール系粘着付与樹脂(軟化点:125℃)10質量部、エポキシ系架橋剤(N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン)0.18質量部、及びトルエン49.32質量部を均一に混合、溶解し、粘着剤層形成塗工液を調製した。この粘着剤層形成塗工液を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして粘着シートを作製した。この粘着シートの物性値の測定結果、及び各種特性の評価結果を表1に示す。
(比較例2)
熱膨張性微小球(松本油脂製薬社製、商品名「マイクロスフェアF50D」、平均粒径:15μm)5質量部、熱膨張性微小球(松本油脂製薬社製、商品名「マイクロスフェアF80GS」、平均粒径:8μm)2.5質量部、アクリル系粘着剤(アクリル酸ブチル−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、質量平均分子量:81万、ガラス転移温度:−64℃、酸価:23)25質量部、テルペンフェノール系粘着付与樹脂(軟化点:125℃)15質量部、エポキシ系架橋剤(N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン)0.11質量部、及びトルエン52.39質量部を均一に混合、溶解し、粘着剤層形成塗工液を調製した。この粘着剤層形成塗工液を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして粘着シートを作製した。この粘着シートの物性値の測定結果、及び各種特性の評価結果を表1に示す。
Figure 0005227495
表1の結果から、実施例1、2の粘着シートは、粘着剤層に貼付した被着体を貼り直したり、被着体に力を加えて加工したりしても、粘着剤層が基材から剥離し難く、粘着剤層が被着体に付着する等の不具合も生じ難いものであることが分かる。更に、粘着剤層の弾性率が1.0×106Pa未満である実施例1、2の粘着シートは、比較例1、2の粘着シートに比して、被着体との密着性に優れたものであることが明らかである。従って、実施例1、2の粘着シートは、被着体の加工性に優れたものであることが分かる。
本発明の粘着シートは、被着体と強固に密着させること可能であるとともに、加熱により被着体から容易に剥離可能である。しかも、被着体を貼り直しや加工時に加わる圧力等によっても粘着剤層が基材から剥離し難く、被着体に粘着剤層が付着し難いものであるため、被着体の加工精度や生産性(歩留まり)の向上が期待される。従って、本発明の粘着シートは、各種被着体の加工時の裏打用シート等として好適である。

Claims (2)

  1. フィルム状又はシート状の基材と、前記基材の少なくとも一方の面上に配設される、熱膨張性微小球を含有する粘着剤層と、を備えた粘着シートであって、
    前記粘着剤層の20℃における弾性率が、1.0×10Pa以上、1.0×10Pa未満であり、
    前記粘着剤層が、
    前記熱膨張性微小球、酸価が30以上かつ重量平均分子量が20万〜100万のアクリル系粘着剤、前記アクリル系粘着剤と反応し得る架橋剤、及び軟化点が120℃以上の粘着付与樹脂を含有する粘着剤組成物が、前記基材の少なくとも一方の面上に層状に塗布されて形成されたものであり、
    前記粘着剤組成物に含有される前記架橋剤の割合が、前記アクリル系粘着剤に対する割合で、0.001〜0.3当量である粘着シート。
  2. 下記剥離試験により測定される初期剥離力が、5N/25mm以上である請求項1に記載の粘着シート。
    [剥離試験]:SUS304板をJIS K 0237に従って処理して得られた被着体の表面に、23℃、65%RHの条件下、20mm幅の粘着シートを貼付し、0.5時間放置した後、23℃、65%RHの条件下、180°剥離力を測定し、測定された180°剥離力の値を、25mm幅の粘着シートを用いた場合の値(N/25mm)に換算する。
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