JP5225710B2 - レーザーダイシングシートおよびチップ体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、レーザー光でワークをダイシングしてチップ化する際に被切断物(以下、「ワーク」と記載する)を固定するために好適に用いられるダイシングシート(以下、「レーザーダイシングシート」ともいう)、および、該レーザーダイシングシートを用いて好適に行われるチップ体の製造方法に関する。
レーザーダイシングは、ブレードダイシングでは切断困難なワークも切断可能である場合があり、近年特に注目されている。そのようなレーザーダイシングに用いられるダイシングシートは種々提案されている(特許文献1〜3)。
レーザーダイシングにおいては、ダイシングシート上に固定されたワークにレーザー光を走査してワークを切断(ダイシング)している。この際、レーザー光の焦点は、次のように移動している。すなわち、ワークが貼付されていないダイシングシート表面(ワークの外縁部)から加速し、ワーク表面を一定速度で走査し、ワークの他方の外縁部で減速、停止する。その後、進行方向を反転し、加速後、ワーク表面を走査し、再度減速、停止、反転する。
したがって、レーザー光焦点の移動における加速・減速時には、ワークが貼付されていないダイシングシートの端部に直接レーザー光が照射されている。この際、レーザー光によりダイシングシート端部が切断されたり、レーザー光がダイシングシートを透過し、チャックテーブルを損傷するという問題が発生することがあった。さらに、レーザー光によって加熱されたチャックテーブルに接するダイシングシートの面が溶融し、チャックテーブルに融着するという問題が発生することもあった。
これらの問題を回避するために、厚いダイシングシートを用いて、ワークとチャックテーブル表面との距離を長くする手法がとられた(特許文献4)。この手法では、基材をエキスパンドフィルムと保護フィルムとの2層構造とすることで、ダイシングシートの厚みを稼いでいる。レーザーダイシング時には厚みのある基材を使用しているため、チャックテーブルに到達したレーザー光は焦点が合っておらず、したがってエネルギー密度が低いため、チャックテーブルの損傷には至らない。また、上記したダイシングシートの融着の問題も起こらない。レーザーダイシング終了後に、基材を構成する保護フィルムを剥離した後に、エキスパンドおよびチップのピックアップを行っている。しかし、レーザーダイシング終了後に、基材の構成層の一方を剥離する必要があり、工程が煩雑になる。また、レーザーダイシング時にエキスパンドフィルムがレーザー光により切断されることもあり、エキスパンドが行えない場合もある。
特開2002−343747号公報 特開2005−236082号公報 特開2005−252094号公報 特開2006−245487号公報
本発明は上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものである。すなわち、本発明は、レーザーダイシングにおいて、レーザー光によるダイシングシートの切断、チャックテーブルの損傷およびダイシングシートのチャックテーブルへの融着を防止しうるレーザーダイシングシートおよびそれを用いたレーザーダイシング法によるチップ体の製造方法を提供することを目的としている。
このような課題の解決を目的とした本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)エネルギー線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーとエネルギー線硬化性モノマーとを含有する配合物にエネルギー線を照射して得られる硬化物であるポリエポキシ(メタ)アクリレートからなる基材と、その片面に形成された粘着剤層とからなるレーザーダイシングシート。
(2)エネルギー線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーが、ポリエーテル型エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーである(1)に記載のレーザーダイシングシート。
(3)ポリエーテル型エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーのエーテル結合部が、アルキレンオキシ基(-(-R-O-)n-:ただしRは炭素数1〜6のアルキレン基であり、nは2〜200の整数)である(2)に記載のレーザーダイシングシート。
(4)アルキレンオキシ基(-(-R-O-)n-)のアルキレン基Rが、エチレン、プロピレン、ブチレンまたはテトラメチレンである(3)に記載のレーザーダイシングシート。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のレーザーダイシングシートの粘着剤層にワークを貼付し、
レーザー光によりワークを個片化してチップを作製する、チップ体の製造方法。
本発明においては、基材の構成樹脂としてポリエポキシ(メタ)アクリレートを用いているため、基材にレーザー光が照射されても、基材の受ける損傷は小さく切断されない。また基材は損傷を受けなくとも基材を透過してチャックテーブルにまで到達する光量は低減される。この結果、レーザーダイシングにおいて、レーザー光によるダイシングシートの切断、チャックテーブルの損傷およびダイシングシートのチャックテーブルへの融着が防止され、レーザーダイシングによるチップ体の製造工程が円滑に行われるようになる。
本発明についてさらに具体的に説明する。本発明に係るレーザーダイシングシートは、基材と、その上に形成された粘着剤層とからなる。本発明のレーザーダイシングシートでは、基材がポリエポキシ(メタ)アクリレートを主たる構成成分とする樹脂フィルムからなる。
以下、本発明のレーザーダイシングシートの基材を構成するポリエポキシ(メタ)アクリレートフィルムについて具体的に説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよびメタアクリルの両者を含む意味で用いられる。
(ポリエポキシ(メタ)アクリレートフィルム)
本発明のレーザーダイシングシートの基材を構成するポリエポキシ(メタ)アクリレートフィルムは、エネルギー線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーとエネルギー線硬化性モノマーとを含有する配合物を製膜後、これにエネルギー線を照射して得られる硬化物が好ましい。
エネルギー線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエステル型またはポリエーテル型などのジエポキシド化合物と、(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる。また、エネルギー線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ジエポキシド化合物と、多価カルボン酸とを反応させて得られるプレポリマーに、(メタ)アクリル酸を反応させて得ることもできる。
ジエポキシド化合物は、アルキレンジエポキシド、ポリエーテル型ジエポキシド、ポリエステル型ジエポキシド、ポリカーボネート型ジエポキシドの何れであってもよいが、ポリエーテル型ジエポキシドを用いることで、より良好な効果が得られる。
ポリエーテル型ジエポキシドは、一般にE-(-R-O-)n-E(Eはエポキシ基またはグリシジル基)で示される。ここで、Rは2価の炭化水素基、好ましくはアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数1〜6のアルキレン基、特に好ましくは炭素数2または3のアルキレン基である。また、炭素数1〜6のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、メチルメチレン、プロピレン、トリメチレン、エチルメチレン、ブチレン、テトラメチレン、1-メチルトリメチレン、2-メチルトリメチレン、1,1-ジメチルエチレン、1,2-ジメチルエチレン、n-プロピルメチレン、イソプロピルメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン等が挙げられ、その中でも好ましくはエチレン、プロピレン、ブチレンまたはテトラメチレン、特に好ましくはエチレンまたはプロピレンである。また、nは好ましくは2〜200,さらに好ましくは10〜100である。したがって、特に好ましいポリエーテル型ジエポキシドとしては、ジエポキシオクタエチレングリコール、ジエポキシオクタプロピレングリコール、ジエポキシオクタブチレングリコール、ジエポキシオクタテトラメチレングリコール、ジエポキシドデカエチレングリコール、ジエポキシドデカプロピレングリコール、ジエポキシドデカブチレングリコール、ジエポキシドデカテトラメチレングリコール、ジエポキシポリエチレングリコール、ジエポキシポリプロピレングリコール、ジエポキシポリブチレングリコール、ジエポキシポリテトラメチレングリコールなどのジエポキシ化合物;ジグリシジルオクタエチレングリコール、ジグリシジルオクタプロピレングリコール、ジグリシジルオクタブチレングリコール、ジグリシジルオクタテトラメチレングリコール、ジグリシジルドデカエチレングリコール、ジグリシジルドデカプロピレングリコール、ジグリシジルドデカブチレングリコール、ジグリシジルドデカテトラメチレングリコール、ジグリシジルポリエチレングリコール、ジグリシジルポリプロピレングリコール、ジグリシジルポリブチレングリコール、ジグリシジルポリテトラメチレングリコールなどのジグリシジル化合物が挙げられ、さらに特に好ましいポリエーテル型ジエポキシドとしては、ジグリシジルドデカエチレングリコール、ジグリシジルオクタプロピレングリコール、ジエポキシポリエチレングリコール、ジエポキシポリプロピレングリコール、ジグリシジルポリエチレングリコール、ジグリシジルポリプロピレングリコールが挙げられる。
ポリエーテル型ジエポキシドは、(メタ)アクリル酸との反応により、エーテル結合部(-(-R-O-)n-)を誘導し、末端に(メタ)アクリロイル基を有するエネルギー線硬化性ポリエーテル型エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを生成する。このようなエーテル結合部は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン等の環状エーテルの開環反応によって誘導される構造であってもよい。
得られるポリエーテル型エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、一般式:Z−X−Zで示される(ここで、Xはポリエーテル型ジエポキシドにより誘導される構成単位であり、Zは(メタ)アクリル酸から誘導される(メタ)アクリロイル基である)。
また、ポリエーテル型エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、上記ポリエーテル型ジエポキシドと、多価カルボン酸とを反応させて得られるプレポリマーに、(メタ)アクリル酸を反応させて得ることもできる。ポリエーテル型ジエポキシドは前記と同様であり、多価カルボン酸としては、たとえばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、トリメリト酸、トリカルバリリル酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、リンゴ酸、酒石酸等のオキシジカルボン酸類、クエン酸等のオキシトリカルボン酸類、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、テトラエチレンペンタミン七酢酸等が挙げられる。特に好ましくは芳香環を有さないシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フマル酸である。
ポリエーテル型ジエポキシドは、多価カルボン酸との反応により、エーテル結合部(-(-R-O-)n-)を誘導し、エーテル結合含有プレポリマーを生成する。
次いで、エーテル結合含有プレポリマーと(メタ)アクリル酸とを反応させて、ポリエーテル型エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーが得られる。得られるポリエーテル型エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、一般式:Z−(Y−(X−Y)m)−Zで示される(ここで、Xはポリエーテル型ジエポキシドにより誘導される構成単位であり、Yは多価カルボン酸から誘導される構成単位であり、Zは(メタ)アクリル酸から誘導される(メタ)アクリロイル基である)。上記一般式においてmは、好ましくは1〜200、さらに好ましくは1〜50となるように選択される。
得られるポリエーテル型エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、分子内に光重合性の二重結合を有し、エネルギー線照射により重合硬化し、皮膜を形成する性質を有する。
本発明で好ましく用いられるポリエーテル型エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、1000〜50000、さらに好ましくは2000〜40000の範囲にある。上記のポリエーテル型エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは一種単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記のようなポリエーテル型エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーのみでは、製膜が困難な場合が多いため、本発明では、エネルギー線硬化性のモノマーで稀釈して製膜した後、これを硬化してフィルムを得る。エネルギー線硬化性モノマーは、分子内にエネルギー線重合性の二重結合を有し、特に本発明では、比較的嵩高い基を有するアクリルエステル系化合物が好ましく用いられる。
このようなポリエーテル型エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを稀釈するために用いられるエネルギー線硬化性のモノマーの具体例としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンタン(メタ)アクリレートなどの脂環式化合物、フェニルヒドロキシプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノールエチレンオキシド変性アクリレートなどの芳香族化合物、もしくはテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリンアクリレート、N−ビニルピロリドンまたはN−ビニルカプロラクタムなどの複素環式化合物が挙げられる。また必要に応じて多官能(メタ)アクリレートを用いてもよい。このようなエネルギー線硬化性モノマーは単独で、あるいは複数を組合せて用いても良い。
上記エネルギー線硬化性モノマーは、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー100重量部に対して、好ましくは5〜900重量部、さらに好ましくは10〜500重量部、特に好ましくは30〜200重量部の割合で用いられる。
基材を構成するポリエポキシ(メタ)アクリレートフィルムは、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーおよびエネルギー線硬化性モノマーを含む配合物を製膜、硬化して得られる。この際、該配合物に光重合開始剤を混入することにより、エネルギー線照射による重合硬化時間ならびにエネルギー線照射量を少なくすることができる。このような光重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィノキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等の光開始剤、アミンやキノン等の光増感剤などが挙げられ、具体的には1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β-クロールアントラキノン、1,2-ジフェニルメタン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
光重合開始剤の使用量は、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーおよびエネルギー線硬化性モノマーの合計100重量部に対して、好ましくは0.05〜15重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部、特に好ましくは0.3〜5重量部である。
また、上述の配合物中には、炭酸カルシウム、シリカ、雲母などの無機フィラー、鉄、鉛等の金属フィラーを添加してもよい。さらに、上記成分の他にも、基材には顔料や染料等の着色剤等の添加物が含有されていてもよい。
製膜方法としては、流延製膜(キャスト製膜)と呼ばれる手法が好ましく採用できる。具体的には、液状の配合物(硬化前の樹脂、樹脂の溶液等)を、たとえば工程シート上に薄膜状にキャストした後に、塗膜に紫外線、電子線などのエネルギー線を照射して重合硬化させてフィルム化することで基材を製造できる。このような製法によれば、製膜時に樹脂にかかる応力が少なく、フィッシュアイの形成が少ない。また、膜厚の均一性も高く、厚み精度は、通常2%以内になる。
また、基材の上面、すなわち粘着剤層が設けられる側の面には粘着剤との密着性を向上するために、コロナ処理を施したり、エチレン酢酸ビニル共重合体等によりプライマー層を設けてもよい。また粘着剤層とは反対面に別のフィルムや塗膜を有する積層フィルムを基材として用いても良い。本発明に係るレーザーダイシングシートは、上記のような基材上に粘着剤層を設けることで製造される。なお、粘着剤層を紫外線硬化型粘着剤により構成する場合には、基材は紫外線に対して透明である必要がある。本発明のレーザーダイシングシートにおいて、基材の厚みは、本発明の解決手段としては特に制限はないが、作業性などの面から、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは30〜300μm、特に好ましくは50〜200μmである。
粘着剤層は、従来より公知の種々の粘着剤により形成され得る。このような粘着剤としては、何ら限定されるものではないが、たとえばゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル等の粘着剤が用いられる。また、エネルギー線硬化型や加熱発泡型、水膨潤型の粘着剤も用いることができる。
エネルギー線硬化(紫外線硬化、電子線硬化)型粘着剤としては、特に紫外線硬化型粘着剤を用いることが好ましい。
粘着剤層の厚さは、好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは3〜80μm、特に好ましくは5〜50μmである。なお、粘着剤層には、その使用前に粘着剤層を保護するために剥離シートが積層されていてもよい。
剥離シートは、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなるフィルムまたはそれらの発泡フィルムや、グラシン紙、コート紙、ラミネート紙等の紙に、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有カルバメート等の剥離剤で剥離処理したものを使用することができる。
基材表面に粘着剤層を設ける方法は、剥離シート上に所定の膜厚になるように塗布し形成した粘着剤層を基材表面に転写しても構わないし、基材表面に直接塗布して粘着剤層を形成しても構わない。
次に、本発明のレーザーダイシングシートを使用したチップ体の製造方法について説明する。
本発明のチップ体の製法では、上記レーザーダイシングシートの粘着剤層にワークを貼付し、ワーク表面をレーザー光で走査し、ワークを切断してチップ体を得る。このようなレーザーダイシング方法自体は公知である。レーザーダイシングにおいては、レーザー光の焦点は、次のように移動している。すなわち、ワークが貼付されていないダイシングシートの露出表面(ワークの外縁部)から加速し、ワーク表面を一定速度で走査し、ワークの他方の外縁部で減速、停止する。その後、進行方向を反転し、加速後、再度ワーク表面を走査し、再度減速、停止、反転する。通常は、ひとつのダイシングラインあたり、1〜複数回程度のレーザー光走査を行う。
レーザー光焦点の移動における加速・減速時には、ワークが貼付されていないダイシングシートの端部に直接レーザー光が照射されている。この際、レーザー光がダイシングシートを切断することがあった。また、レーザー光がダイシングシートを透過し、チャックテーブルを損傷するという問題が発生することがあった。さらに、レーザー光によって加熱されたチャックテーブルに接するダイシングシートの面が溶融し、チャックテーブルに融着するという問題が発生することもあった。
しかし、本発明においては、レーザーダイシングシートの基材として、上述したポリエポキシ(メタ)アクリレートフィルムを使用することで、上記の課題を解決している。すなわち、本発明のレーザーダイシングシートを使用した場合、たとえレーザー光がレーザーダイシングシートに直接照射されても、基材は、レーザー光による損傷を受けにくいことが確認された。具体的には、基材表面の一部分がレーザー光により切り込まれるのみであり、基材が切断されることがない。また、高いエネルギーをもったレーザー光が基材を透過してチャックテーブルに至ることもなく、レーザーダイシングシートの融着も確認されなかった。
レーザーダイシングを終えた後、必要に応じ、レーザーダイシングシートをエキスパンドして、チップ間隔を広げる。チップ間隔を広げることで、チップ同士の接触による損傷が低減される。その後、チップをピックアップして取り出し、チップ体を得る。なお、粘着剤層が紫外線硬化型粘着剤からなる場合は、必要に応じて、ピックアップ前に紫外線照射を行う。紫外線硬化型粘着剤は、紫外線の照射により重合硬化し、粘着力が低下するため、チップのピックアップを円滑に行えるようになる。
本発明において適用可能なワークとしては、レーザー光によって切断処理を実施することができる限り、その素材に限定はなく、たとえば半導体ウエハ、ガラス基板、セラミック基板、FPC等の有機材料基板、又は精密部品等の金属材料など種々の物品を挙げることができる。
レーザーは、波長及び位相が揃った光を発生させる装置であり、YAG(基本波長=1064nm)、もしくはルビー(基本波長=694nm)などの固体レーザー、又はアルゴンイオンレーザー(基本波長=1930nm)などの気体レーザーおよびこれらの高調波などが知られており、本発明ではそれらの種々のレーザーを用いることができる。
本発明においては、基材の構成樹脂としてポリエポキシ(メタ)アクリレートフィルムを用いているため、基材レーザー光が照射されても、基材の受ける損傷は小さく、また基材を透過してチャックテーブルにまで到達する光量は低減される。この結果、レーザーダイシングにおいて、レーザー光によるチャックテーブルの損傷およびダイシングシートのチャックテーブルへの融着が防止され、レーザーダイシングによるチップ体の製造工程が円滑に行われるようになる。
(実施例)
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例において、粘着剤として下記組成物を用いた。
[粘着剤組成物]
ブチルアクリレート84重量部、メチルメタクリレート10重量部、アクリル酸1重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート5重量部からなる共重合体(重量平均分子量700,000)のトルエン30重量%溶液に対し、多価イソシアナート化合物(コロネートL(日本ポリウレタン社製))5.5重量部を混合し粘着剤組成物を得た。
また、レーザーダイシング条件およびダイシング結果の評価法を以下に示す。
[レーザーダイシング条件]
・ 装置 :Nd−YAGレーザー
・ チャックテーブル材質:石英
・ 波長 :355nm(第3高調波)
・ 出力 :5.5W
・ 繰り返し周波数 :10kHz
・ パルス幅 :35nsec
・ 照射回数 :2回/1ライン
・ カット速度 :200mm/sec
・ デフォーカス量 :テープ表面上から+50μm(ウエハの表面上に焦点)
・ ウエハ材質 :シリコン
・ ウエハ厚 :50μm
・ ウエハサイズ :6インチ
・ カットチップサイズ :5mm□
・ ウエハの外にレーザーが走査する距離:5mm
[切込深さ評価]
レーザーダイシングが終了した後にカットラインを断面観察し、粘着剤層を含むシート表面からの切込深さを計測した(観察部位はウエハが貼られていない、レーザーが直射される部分)。切断されてしまったものは「切断」と表記した。
[チャックテーブルの損傷]
レーザーダイシングが終了した後にテーブル表面を目視で観察し、損傷がないか確認した。テーブルに損傷がなかったものを「A」とし、損傷があったものを「B」とした。
[チャックテーブルへの融着]
レーザーダイシング後にレーザーダイシング装置内臓の搬送機構でダイシングテーブルからレーザーダイシングシート付きのウエハを取り出す際、搬送に問題がなかったものを「A」とし、レーザーダイシングシートがテーブルに熱融着してスムーズな搬送が困難だったものを「B」とした。
(実施例1)
ジグリシジルドデカエチレングリコール(DGDEG: 分子量554)とアクリル酸(AAc)とをDGDEG:AAc=1:2のモル比で用意した。これらを反応させてポリエーテル型エポキシアクリレート系オリゴマーを得た。
次いで、上記ポリエーテル型エポキシアクリレート系オリゴマー50重量部と、エネルギー線硬化性モノマー(イソボルニルアクリレート)50重量部と、光開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製ダロキュア1173)0.5重量部とを混合し、塗膜形成用のコーティング液を得た。
上記コーティング液をファウンテンダイ方式により、シリコーン剥離処理を行ったポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(リンテック社製SP-PET3801)上に厚みが80μmとなるように塗工して樹脂組成物層を形成した。塗工直後に、樹脂組成物層の上に、同じシリコーン剥離処理を行ったPETフィルムをラミネートし、その後、高圧水銀ランプを用いて、照度250mW/cm2、光量600mJ/cm2の条件でエネルギー線(紫外線)照射を行うことにより樹脂組成物層を架橋・硬化させて、厚さ80μmの基材フィルムを得た。
両面に積層された剥離フィルムは、後述する粘着剤層を転写する前に剥離した。
別に、上記粘着剤組成物を、シリコーン剥離処理を行ったPETフィルム(リンテック社製SP-PET3801)上に乾燥膜厚が10μmとなるように塗布乾燥(100℃、1分間)した。
剥離フィルムを剥離した基材フィルム上に、上記粘着剤層を転写し、レーザーダイシングシートを得た。
粘着剤層上のPETフィルム(リンテック社製SP-PET3801)を剥離して、50μm厚のシリコンウエハを貼付し上記条件でレーザーダイシングを行った。結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1のポリエーテル型エポキシアクリレート系オリゴマーに代えて、ジグリシジルオクタプロピレングリコール(DGOPG: 分子量578)とアクリル酸(AAc)とをDGOPG:AAc=1:2(モル比)で反応させて得たポリエーテル型エポキシアクリレート系オリゴマーを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1のポリエーテル型エステルアクリレート系オリゴマーに代えて、ジグリシジルドデカエチレングリコール(DGDEG: 分子量554)とアジピン酸(Adp-Ac)をDGDEG:Adp-Ac=3:4(モル比)であらかじめ反応させたプレポリマー(Prep)に対し、アクリル酸(AAc)をPrep:AAc=2:1(モル比)で反応させて得たポリエーテル型エポキシアクリレート系オリゴマーを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
基材フィルムとして、厚さ100μmのポリ塩化ビニルフィルム(可塑剤としてジオクチルフタレートを25重量%含有)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
基材フィルムとして、厚さ100μmのエチレン-メタクリル酸共重合体フィルム(メタクリル酸共重合比率9重量%)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
Figure 0005225710
実施例1〜3のレーザーダイシングシートは、切断されることもなく、チャックテーブルの損傷およびチャックテーブルへの融着もみられなかった。比較例1のレーザーダイシングシートは、切断され、チャックテーブルの損傷およびチャックテーブルへの融着がみられた。比較例2のレーザーダイシングシートは、切断されることがなかったが、ダイシングシートを透過したレーザー光によりチャックテーブルの損傷およびチャックテーブルへの融着がみられた。

Claims (5)

  1. エネルギー線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーとエネルギー線硬化性モノマーとを含有する配合物にエネルギー線を照射して得られる硬化物であるポリエポキシ(メタ)アクリレートからなる基材と、その片面に形成された粘着剤層とからなるレーザーダイシングシート。
  2. エネルギー線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーが、ポリエーテル型エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーである請求項1に記載のレーザーダイシングシート。
  3. ポリエーテル型エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーのエーテル結合部が、アルキレンオキシ基(-(-R-O-)n-:ただしRは炭素数1〜6のアルキレン基であり、nは2〜200の整数)である請求項2に記載のレーザーダイシングシート。
  4. アルキレンオキシ基(-(-R-O-)n-)のアルキレン基Rが、エチレン、プロピレン、ブチレンまたはテトラメチレンである請求項3に記載のレーザーダイシングシート。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のレーザーダイシングシートの粘着剤層にワークを貼付し、
    レーザー光によりワークを個片化してチップを作製する、チップ体の製造方法。
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