JP5223229B2 - サンドブラスト用マスクを形成するためのインクジェットインクとそれを用いた凹凸画像形成方法 - Google Patents
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前記アルカリ可溶性硬化型樹脂の重量平均分子量が10000以上、50000未満であり;前記アルカリ可溶性硬化型樹脂は、温度が25℃でpHが8〜12の水溶液中で、樹脂の95%以上が溶解する特性を備えた樹脂であり;前記アルカリ可溶性硬化型樹脂は、揮発性塩基で中和されているカルボキシル基を有するポリスチレン−アクリル系樹脂である、インクジェットインク。
はじめに、本発明のサンドブラスト用インクジェットマスク形成インク(以下、単にマスク形成インクともいう)について説明する。
一般的に、マスク形成用に用いられるインクとしては、マスクを形成するための固形成分が必須要件であるが、この固形成分には、十分なエッチング耐性と、アルカリ除去性とを兼ね備えていることが求められる。更には、マスク形成用インクに添加した際、インクジェット記録装置より安定に射出できることが求められる。本発明者らは、種々のポリマーバインダーを検討した結果、重量平均分子量が10000以上、50000未満のアルカリ可溶性硬化型樹脂(以下、単に樹脂ともいう)を、固形分として5質量%以上含有したマスク形成インクにより、従来広く適用されてきたフォトリソ法を用いることなく、また、強酸などを用いたウエットエッチング処理を必要とせず、簡易な方法で様々な対象基材に、高精細で、かつエッチング耐性に優れたマスキングを形成することができるサンドブラスト用インクジェットマスク形成インクを実現できることを見出し、本発明に至った次第である。本発明に係るアルカリ可溶性硬化型樹脂の含有量としては、更には5質量%以上、50質量%以下であることが好ましい。
本発明のサンドブラスト用インクジェットマスク形成インクには、本発明に係るアルカリ可溶性硬化型樹脂と共に、インク不溶性樹脂分散物を固形分として5質量%以上、30%未満含有することが、射出安定性を保ちつつ耐エッチング性を向上することができる観点から好ましい。
本発明のマスク形成インクに適用可能な水溶性有機溶剤としては、比較的低表面張力の有機溶剤であるグリコールエーテル類や、1,2−アルカンジオール類を用いることが、樹脂基板などの低表面エネルギー材料にも高精細に印字ができる観点から好ましい。
本発明マスク形成インクには、シリコーン系界面活性剤もしくはフッ素系界面活性剤を好ましく用いることができる。シリコーン系界面活性剤もしくはフッ素系界面活性剤を含有させることにより、様々な記録材料に対する所望とする濡れ性を得ることができる点で好ましい。
本発明においては、形成したマスク部の仕上がりを目視で確認できる目的から、色剤を添加して着色することができる。この場合、インクに添加する色材としては、染料でも顔料でもよいが、インクへの溶解性がよい染料を用いることがより好ましい。染料としては、インクを構成する水、水溶性有機溶剤等の組成に応じて、酸性染料、直接染料から選択することができる。また、サンドブラスト後もマスクを残す用途において、マスク部を着色することが望ましい場合には、顔料を用いることが好ましい。
本発明の凹凸画像形成方法においては、少なくとも
1)対象基材にインクジェット法により、本発明のサンドブラスト用インクジェットマスク形成インクを付与して、任意のマスク部を形成する工程1と、
2)マスク部を形成した後の対象基材にサンドブラスト処理を施し、非マスク部の少なくとも一部を切削する工程2
とから構成されていることを特徴とする。
次に、対象基材について説明する。本発明に適用可能な対象基材としては、ガラス(ソーダガラスなど加工性の良いもの)、金属(銅、アルミ、鉄など)、プラスチック(アクリル、ポリカーボネート等)、セラミック、陶器等を用いることができる。
本発明の凹凸画像形成方法においては、工程1にてマスク部を形成した後、対象基材にサンドブラスト処理を施して、非マスク部の少なくとも一部を切削することを特徴とする。
本発明の凹凸画像形成方法においては、上記の様な非マスク部の少なくとも一部を切削する工程2(サンドブラスト処理)の後に、アルカリ溶液でマスク部を除去する工程4を有することが好ましい。通常は、マスクは除去することが好ましいが、必要に応じてそのまま残してもよい。
《アルカリ可溶性硬化型樹脂の合成》
〔アルカリ可溶性硬化型樹脂R−1の合成〕
滴下ロート、窒素導入管、還流冷却管、温度計及び攪拌装置を備えたフラスコにメチルエチルケトン100gを加え、窒素バブリングしながら、75℃に加温した。そこへ、表1に記載の各モノマーと、メチルエチルケトン50g、開始剤AIBN(アゾビスイソブチルニトリル)500mgの混合物を滴下ロートより3時間かけ滴下した。滴下後、更に6時間、加熱還流した。放冷後、減圧下で加熱してメチルエチルケトンを留去し、重合物残渣を得た。次いで、上記重合物残渣にイオン交換水350mlと、モノマーとして添加したアクリル酸の1.05倍モル相当のアンモニアを添加して上記重合物残渣を溶解し、最後にイオン交換水で調整し、アルカリ可溶性硬化型樹脂R−1を固形分濃度で20%含有する水溶液を得た。
カラム: TSKgel Multipore(東ソー(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
上記アルカリ可溶性硬化型樹脂R−1の合成において、モノマー組成を表1に記載の様に変更し、更にメチルエチルケトンの使用量、開始剤AIBNの添加量、反応温度を適宜変更した以外は同様にして、それぞれ重量平均分子量の異なるアルカリ可溶性硬化型樹脂R−2〜R−5を固形分濃度で20%含有する水溶液を得た。また、表1に、上記方法に従って測定した重量平均分子量を示す。
スチレンが58部、α−メチルスチレンが19部、2−エチルヘキシルアクリレートが11部及びアクリル酸が12部からなるモノマーを、従来公知の方法に従って合成し、平均重量分子量が95000のインク不溶性樹脂を20質量%含むインク不溶性樹脂分散物Em−1を調製した。
表2に記載のマスク形成インクの各構成要素を混合、調製した後、5μmのフィルターでろ過して、マスク形成インク1〜15を調製した。なお、表2に記載のアルカリ可溶性硬化型樹脂、インク不溶性樹脂分散物、有機溶剤、界面活性剤のそれぞれの添加量は、マスク形成インク中における固形分比率(質量%)で表示し、総量が100質量%になるようにイオン交換水を添加して仕上げた。
AR52:C.I.アシッドレッド52
〔アルカリ可溶性硬化型樹脂〕
表1に記載のアルカリ可溶性硬化型樹脂R−1〜R5
〔有機溶剤〕
DEGBE:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
DEG:ジエチレングリコール
1,2−HD:1,2−ヘキサンジオール
〔界面活性剤〕
351A:KF−351A、シリコーン系界面活性剤(信越化学社製)
《凹凸画像の形成》
〔インクジェットプリント装置〕
ピエゾ型インクジェットヘッド(720dpi(dpiとは、2.54cmあたりのドット数を表す)、液適量16pl)4基を並列には位置した4色プリント可能なインクジェットプリント装置を用いてマスク画像を作成した。このインクジェットプリント装置には、基材を下方より接触式ヒーターにて任意に加温できる機構を備えており、また、インクジェットヘッド格納ポジションにインク空打ちポジションとブレードワイプ式のメンテナンスユニットを備え、任意の頻度でヘッドクリーニングができる。
上記インクジェットプリント装置の1つのインクジェットヘッドに、上記調製した各マスク形成インクを各々装填し、下記の方法に従って、表3に記載の条件で、基材Aまたは基材B上にマスクを形成した。
印字解像度:720dpi×720dpi
インクジェットヘッド搬送速度:50mm/sec(片方向印字)
マスク画像:線幅100μm、線間隔50μm(図1に記載の画像パターン)
印字時の加熱条件:印字面表面温度を65℃に加熱
印字後の乾燥条件:印字後、70℃の温風で乾燥
評価環境:20℃、相対湿度55%
また、表3に記載の各変化条件の詳細は以下の通りである。
基材A:低融点ガラス80部、セルロース樹脂20部からなるガラスペーストをソーダガラス上に、乾燥膜厚30μmになるように塗布したものを用いた。
硬化処理1:印字後、80℃で5分間加熱
硬化処理2:印字後、150℃で1分間加熱
〈形成マスク厚〉
表3に記載の条件
〈マスク形成方法〉
方法1:同一箇所に5回重ね打ちをしてマスクを形成
方法2:同一箇所に3回重ね打ちをしてマスクを形成
〔サンドブラスト処理〕
各基材上に各マスクを形成した試料1〜25について、ガラスビーズ#600を用いて、ブラスト圧98kPaの条件で60秒間のサンドブラスト処理を行った。
上記サンドブラスト処理を行った後、各試料をpH11、液温30℃の炭酸ナトリウム水溶液に浸漬し、2分間激しく攪拌して、マスクを除去して、凹凸画像1〜25を作製した。
上記各凹凸画像と、マスク形成後の試料、サンドブラスト処理後の試料について、下記の方法に従って、各評価を行った。
マスク形成後の試料について、マスクの厚さをマイクロノギスで10点測定し、その平均値を求め、これをマスクの厚みとした。
マスク形成後の試料について、光学顕微鏡を用いて、マスク部が高精細に形成されているか否かを観察し、下記の基準に従ってマスク描写性を評価した。
4:エッジ部まで正確に描画されているが、エッジ部と中央部の膜厚に不均一さが見られた
3:エッジ部にやや丸みや線のゆがみが認められるが、実用上許容される品質である
2:形成したマスクに、明らかな細り、太り、エッジの丸みが認められ、設計品質から外れている
1:ハジキやにじみの発生が激しく、全くマスクが形成されていない
〔サンドブラスト耐性の評価〕
サンドブラスト処理後の試料及び凹凸画像について、マスクの状態を目視観察し、下記の基準に従って、サンドブラスト耐性を評価した。
4:マスク部の極一部は取れているが、凹凸画像はほぼ設計通りにできている
3:マスク部が部分的に取れており、凹凸画像のマスクした部分にわずかに傷の発生は認められるが、実用上許容される品質である
2:マスク部が部分的に取れてしまい、凹凸画像のマスクした周辺部分が傷があり、実用上問題となる品質である
1:マスクがほぼ取れてしまい、凹凸画像がほとんど形成されていない
〔マスク除去性の評価〕
上記マスク除去処理を施した後の各凹凸画像試料について、マスク部の除去の有無を目視観察し、下記の基準に従ってマスク除去性を評価した。
4:前記マスク除去処理で、マスクは完全に基材から除去されている
3:前記マスク除去処理でマスクはほぼ除去できたが、液の撹拌の少ない部分でわずかにマスク部の残りが認められ、更に2分間の追加処理で除去される
2:前記マスク除去処理ではマスク部が部分的に残留し、更に2分間の追加処理でも完全には除去できない
1:前記マスク除去処理ではマスクの大半が残留し、更に2分間の追加処理でもほとんど除去できない
以上により得られた各評価結果を、表3に示す。
2 マスク
Claims (9)
- アルカリ可溶性硬化型樹脂を固形分として5質量%以上含有する、アルカリで除去可能なサンドブラスト用マスクを形成するためのインクジェットインクであって、
前記アルカリ可溶性硬化型樹脂の重量平均分子量が10000以上、50000未満であり、
前記アルカリ可溶性硬化型樹脂は、温度が25℃でpHが8〜12の水溶液中で、樹脂の95%以上が溶解する特性を備えた樹脂であり、
前記アルカリ可溶性硬化型樹脂は、揮発性塩基で中和されているカルボキシル基を有するポリスチレン−アクリル系樹脂である、
インクジェットインク。 - インク不溶性樹脂分散物を、固形分として5質量%以上、30質量%未満含有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットインク。
- 対象基材にインクジェット法により請求項1または2に記載のインクジェットインクを付与して、任意のマスク部を形成する工程1と、該マスク部を形成した後の対象基材にサンドブラスト処理を施し、非マスク部の少なくとも一部を切削する工程2とを含むことを特徴とする凹凸画像形成方法。
- 前記マスク部の乾燥膜厚が、5μm以上、50μm未満の膜厚になるように、前記インクジェットインクを付与することを特徴とする請求項3に記載の凹凸画像形成方法。
- 前記マスク部を形成する工程1は、同一または異なる組成の前記インクジェットインクを、基材上の同一領域上に、複数回に分けて重ねて付与することを特徴とする請求項3または4に記載の凹凸画像形成方法。
- 前記マスク部を形成する工程1と、前記非マスク部の少なくとも一部を切削する工程2との間に、マスク硬化処理工程3を有することを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の凹凸画像形成方法。
- 前記非マスク部の少なくとも一部を切削する工程2の後に、アルカリ溶液でマスク部を除去する工程4を有することを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の凹凸画像形成方法。
- 前記対象基材が、支持基材上にコーティング層を有していることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載の凹凸画像形成方法。
- 前記対象基材が、非平面であることを特徴とする請求項3〜8のいずれか1項に記載の凹凸画像形成方法。
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