JP5222786B2 - 樹脂成形品の表面処理方法、及びその表面処理後に形成される表面層を有する樹脂成形品の製造方法 - Google Patents

樹脂成形品の表面処理方法、及びその表面処理後に形成される表面層を有する樹脂成形品の製造方法 Download PDF

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本発明は樹脂成形品の表面処理方法、及びその表面処理後に形成される表面層を有する樹脂成形品の製造方法、さらに詳しくは、ポリアセタール樹脂成形品等、表面の接着性が良好でない樹脂成形品の表面を改質するための処理方法と、その表面処理後に塗料、接着剤等の素材を積層して形成される表面層を有する樹脂成形品の製造方法に関する。
ポリアセタール樹脂は、良好な機械的性質を有し、優れた熱的特性や電気的特性を有するとともに、耐疲労性に優れ、また、成形性なども良好であるため、電気・電子機器、事務用機器、自動車等の部品や構造材料などとして広く使用されている。また、ポリアセタール樹脂成形品の利用分野の拡大に伴い、成形品に塗装等の二次加工を施すことも多くなっている。
しかしながら、ポリアセタール樹脂成形品はその表面が化学的に極めて安定であるために、塗料を塗布する等によって表面層を形成することが容易ではなく、その表面の接着性、塗装性が不良であるという問題点がある。そのような問題点を解決するため、従来よりコロナ放電処理、酸水溶液処理等の方法により成形品表面を処理し、塗膜との密着性を向上することが試みられている。
しかし、コロナ放電処理はその効果が経時的に失われるため、処理後、連続して塗装を行わなければならないという不便さがある。又、酸水溶液処理は、効果は大きいものの、アニーリング、脱脂、エッチング、中和、水洗、乾燥等の工程が必要であり、作業工程が煩雑であり時間がかかるとともに酸処理条件によってはクラックが発生して製品不良率が増加する場合がある。
そこで、これらの問題点を解決するために、たとえば下記特許文献1のような特許出願がなされている。この特許文献1に係る発明は、ポリアセタール樹脂成形品の表面にインキまたは塗料を塗布する、ポリアセタール樹脂成形品への印刷・塗装方法において、ポリアセタール樹脂成形品の表面を粗化する表面粗化工程と、粗化されたポリアセタール樹脂成形品の表面に二酸化珪素の被膜を形成する被膜形成工程と、二酸化珪素被膜が形成されたポリアセタール樹脂成形品の表面にインキまたは塗料を塗布する塗布工程とを含むことを特徴とする、ポリアセタール樹脂成形品への印刷・塗装方法である。
しかし、この特許文献1は、樹脂成形品の表面を粗化することによって表面改質を行う方法であるため、接着性、塗装性を向上させるには限界がある。従って、処理された樹脂成形品の表面に、塗料等を塗布する場合、塗布された塗料の剥離防止効果が必ずしも十分とはいえない。
この点に関し、当該特許文献1の実施例では、二酸化珪素の被膜形成を行わないで表面粗化のみを行ったもの(比較例1)、表面粗化を行わないで二酸化珪素の被膜形成のみを行ったもの(比較例2)、表面粗化及び二酸化珪素の被膜形成の双方を行わないもの(比較例3)を比較例として準備し(特許文献1の明細書の段落[0019]〜[0021])、粘着テープ剥離テストやクロスカット剥離テストによって評価を行い(明細書の段落[0022])、クロスカット剥離テストでは、表面粗化及び二酸化珪素の被膜形成の双方を行う実施例1〜3で良好な結果が得られたのに対し、上記比較例1〜3のいずれも結果は不良であった。
この評価結果は、表面粗化のみならず、二酸化珪素の被膜形成によっても塗料等の剥離防止効果が生じることを意味するものである。しかしながら、二酸化珪素の被膜形成は、その被膜の形成自体を目的としてなされるもので、二酸化珪素の被膜を形成することが、その上面側の塗料等の剥離防止に寄与しているという理論的根拠に乏しいものである。実際、特許文献1には、二酸化珪素の被膜を形成することで、塗料等の剥離防止効果が生じる理由については全く記載されていない。
特開2006−167507号公報
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、ポリアセタール樹脂等、接着性、塗装性が良好でない樹脂成形品の表面に塗料等の表面層を形成する場合の接着性、塗装性を、上記従来の表面粗化の処理方法等に比べて著しく向上させることができ、従って、塗料等の表面層の剥離防止効果が良好となる、樹脂成形品の表面処理方法、及びその表面処理後の形成される表面層を有する樹脂成形品の製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、このような課題を解決するために、1つの側面では、樹脂成形品の表面を、放電出力0.7〜1.5kW、圧力0.2〜0.5Pa、温度20〜40℃、処理時間20〜40分の条件下で酸素を用いてプラズマ処理する酸素プラズマ処理によって前記樹脂成型品表面に水酸基を導入し、導入された水酸基、及び該水酸基と空気中の水分子との相互作用により前記樹脂成形品の表面に付与される水によって、該樹脂成形品の表面を改質することを特徴とする樹脂成形品の表面処理方法を提供するものである。
また、本発明は、他の側面では、樹脂成形品の表面を、放電出力0.7〜1.5kW、圧力0.2〜0.5Pa、温度20〜40℃、処理時間20〜40分の条件下で酸素を用いてプラズマ処理する酸素プラズマ処理によって前記樹脂成形品の表面に水酸基を導入し、導入された水酸基、及び該水酸基と空気中の水分子との相互作用により前記樹脂成形品の表面に付与される水によって該樹脂成形品の表面を改質し、改質された樹脂成形品の表面に、水の存在下で表面層を形成しうる素材を塗布して、前記樹脂成形品の表面に表面層を形成することを特徴とする、表面層を有する樹脂成形品の製造方法を提供するものである。
この場合、水の存在下で表面層を形成しうる素材としては、たとえば水との反応で重合する樹脂のようなものが用いられる。また、水の存在下で重合する樹脂としては、たとえばイソシアネートを用いた2液性ポリウレタンや、シアノアクリレートやのようなものが例示される。
本発明は、上述のように、樹脂成形品の表面を、酸素を用いてプラズマ処理する酸素プラズマ処理によって前記樹脂成型品表面に水酸基を導入し、導入された水酸基、及び該水酸基と空気中の水分子との相互作用により前記樹脂成形品の表面に付与される水によって、該樹脂成形品の表面を改質する表面処理方法であるため、水が樹脂成形品の表面近傍に存在する状態となり、そのような状態で、水の存在下で表面層を形成しうる素材を樹脂成形品の表面に塗布することで、その素材が被膜化、硬化等することによって表面層が形成されることとなる。
たとえば水の存在下で重合するような樹脂のモノマー等を付与すれば、その樹脂のモノマーの重合反応が生じ、それによって、重合した樹脂が塗料、接着剤等として樹脂成形品の表面に塗着されることとなるのである。
この結果、表面層を形成する素材は、上記のように酸素プラズマ処理工程で樹脂成形品に導入された水酸基、及びその水酸基との相互作用で存在している水が介在することによって、樹脂成形品の表面に強力に接着された状態となる。
従って、たとえばポリアセタール樹脂等、一般に接着性が不良と認識されている樹脂の成形品の表面に、塗料等の表面層を好適に接着させることが可能になるという効果がある。
また、その表面層を形成する塗料等の樹脂成形品表面からの剥離が、上記のような作用により好適に防止されることとなるので、樹脂成形品の表面に形成される塗料等の表面層を構成する素材の剥離防止効果が、従来に比べて著しく向上するという効果がある。
一実施形態としての表面層を有する樹脂成形品の構造を示す断面図。 一実施例としての、ぬれ性評価試験の結果を示すグラフ。
本発明の樹脂成形品の表面処理方法は、上述のように、樹脂成形品の表面を、酸素を用いてプラズマ処理する酸素プラズマ処理によって前記樹脂成型品表面に水酸基を導入し、導入された水酸基、及び該水酸基と空気中の水分子との相互作用により前記樹脂成形品の表面に付与される水によって、該樹脂成形品の表面を改質するものである。
酸素プラズマ処理工程における酸素プラズマ処理の条件は、放電出力は0.7〜1.5kW、圧力は0.2〜0.5Pa、温度は20〜40℃、処理時間は20〜40分とされる
このような酸素プラズマ処理工程においては、成形品を構成する樹脂の表面に、水酸基が導入される。そして、このように樹脂の表面に水酸基が導入される結果、その水酸基との水素結合等の相互作用によって、水が樹脂成形品の表面近傍に存在することとなる。
この場合、空気中に存在していた水分子が、上記水酸基との水素結合等の相互作用によって樹脂成形品の表面近傍に存在することとなり、それによって、樹脂成形品の表面改質がなされることとなる。
さらに、本発明の、表面層を有する樹脂成形品の製造方法は、上記のように、酸素を用いてプラズマ処理する酸素プラズマ処理によって前記樹脂成形品の表面に水酸基を導入し、導入された水酸基、及び該水酸基と空気中の水分子との相互作用により前記樹脂成形品の表面に付与される水によって該樹脂成形品の表面を改質し、改質された樹脂成形品の表面に、水の存在下で表面層を形成しうる素材を塗布して、前記樹脂成形品の表面に表面層を形成するものである。
表面層形成工程においては、上記のように水を樹脂成形品の表面近傍に付与した状態で、表面層を形成する素材を塗布することで、その素材と水との相互作用により、その素材からなる表面層を形成することができる。この場合の「塗布」とは、塗り付ける狭義の塗布の他、たとえば吹き付けによって塗布するような場合も広く含む意味である。
表面層は、たとえば水の存在下で重合する樹脂のようなもので構成される。この場合の水の存在下で重合する樹脂としては、たとえばイソシアネートを用いた2液性ポリウレタンや、シアノアクリレートのようなものが例示される。水の存在下で重合するような樹脂のモノマー等を付与することで、その樹脂のモノマーの重合反応が生じ、それによって、重合した樹脂が塗料や接着剤等として樹脂成形品の表面に塗着され。表面層が形成されることとなるのである。
たとえば、シアノアクリレートは、空気中の水分の存在によって重合し、一般には瞬間接着剤として用いられるものであるが、本発明においては、上記のように酸素プラズマ処理工程で水酸基が樹脂にほぼ均一に導入されることとなり、その水酸基と空気中の水分子との水素結合等の相互作用によって水が樹脂成形品の表面近傍に付与されることとなるので、その水によってシアノアクリレートの重合反応が生じることとなる。そして重合反応終了後に、ポリシアノアクリレートの被膜が表面層として樹脂成形品の表面に形成されることとなるのである。
またポリウレタンの場合は、そのポリウレタンを構成するイソシアネートに対して水が関与する。すなわち、ポリイソシアネートのプレポリマーを得る反応過程で、上記のように樹脂成形品の表面に存在する水が関与することが想定される。
ポリウレタンを使用する場合、そのポリウレタンの高分子ポリオールとしては、たとえば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、共役ジエン重合体系ポリオール、ひまし油系ポリオール、シリコーン系ポリオール、ビニル重合体系ポリオールなどを用いることができる。これらの高分子ポリオールは1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
さらに、ポリウレタンのイソシアネートとしては、たとえばブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート等を用いることができる。
さらに、このような2液性ポリウレタンを用いる場合において、その前処理として、1液性の塗料を薄く塗着させることによって、2液性ポリウレタンの表面活性をより確実に維持できるという利点がある。具体的には、たとえばABS樹脂をシンナー(溶剤)に溶解させたような1液塗料を、20μm以下の厚みでプレコートすることによって表面活性を維持させ、その上側に2液硬化型の塗料が塗布されると、前記溶剤で前処理されたABS樹脂層が溶解し、上側に塗布された2液硬化型の塗料と混成して基材と直接反応結着することとなる。
樹脂成形品を構成する樹脂の種類は特に限定されるものではないが、本発明においては、成形品の表面に接着するのが困難であると一般に認識されている樹脂、たとえばポリアセタール樹脂のようなものに適用するのが望ましい。ポリアセタール樹脂以外に、ポリエチレンやポリプロピレン等のように耐溶剤性能に富む合成樹脂に適用することも可能である。
ポリアセタール樹脂は、オキシメチレン基を主たる重合単位として含む高分子化合物であって、単一重合体(ホモポリマー)であるか共重合体(コポリマー)であるかを問わない。また、ポリアセタール樹脂の重合度についても特に限定されないし、また、分子形態も線状、分岐状、架橋状などを問わない。すなわち、本発明に用いるポリアセタール樹脂とは、主鎖中の主たる構成単位がオキシメチレン基よりなる高分子化合物のすべてが該当し、ホルムアルデヒド又はその環状オリゴマーであるトリオキサンやテトラオキサンの単独重合体、又はこれらを主体とし共重合可能な成分との共重合によって得られる共重合体である。共重合体は3成分以上の多元共重合体や分子に分岐や架橋構造を有するグラフト共重合体であってもよい。
本発明のプラズマ処理において用いる装置に関しては特に制限はなく、一般に用いられている装置を使用することができる。
尚、本発明に用いられるポリアセタール樹脂には、他の熱可塑性樹脂とポリマーブレンドをしたものを用いることもできる。この場合に使用する熱可塑性樹脂は特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ジカルボン酸とジオール或いはオキシカルボン酸等からなる芳香族ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ABS、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、各種のポリウレタン系樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。また、これらの熱可塑性樹脂は2種以上混合して使用することができる。
また、一般の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂に添加される可塑剤、酸化防止剤等の安定剤、帯電防止剤、表面処理剤、界面活性剤、無機及び有機の繊維状、粉粒状、板状の充填剤、難燃剤、染料や顔料等の着色剤及び流動性や離型性の改善のための滑剤、潤滑剤及び結晶化促進剤等も適宜配合することができる。
本発明の表面層を有する樹脂成形品の製造方法において、「表面層」とは、上記のような酸素プラズマ処理工程によって水酸基が導入され、その後の水酸基と水分子との相互作用によって水が付与され、表面改質処理された樹脂成形品の表面に形成される層であり、製造後の樹脂成形品の最上面を意味するものではない。
この点をより具体的に説明すると、たとえば、「表面層を有する樹脂成形品」の一例として、図1のように樹脂成形品である基材1の表面に、ベースコート層2、金属光沢層3、ミッドコート層4、トップコート層5が順次積層された積層構造体において、「表面層を有する樹脂成形品」の「表面層」は、最上面のトップコート層5ではなく、基材1の上面のベースコート層2に相当する。
すなわち、本発明は、樹脂成形品の表面改質を主眼とするものであるから、本発明の樹脂成形品の表面処理方法によって表面処理された後に形成される表面層は、樹脂成形品の上面に形成される層を意味するものである。その一方で、本発明は、樹脂成形品の表面(上面)に形成される表面層の1層のみならず、複数の層が積層された樹脂成形品にも適用することが可能である。
そこで、そのような積層構造体である樹脂成形品について上記図1を参照して説明すると、一例としての積層構造体である樹脂成形品は、上述のように樹脂成形品である基材1の表面に、アンダーコート層2、金属光沢層3、ミドルコート層4、トップコート層5が順次積層された構成からなる。
基材1には、上記のようなポリアセタール樹脂等が使用される。また、上記「面層」に相当するアンダーコート層2には、たとえばポリウレタンのようなものが用いられる。ポリウレタンのポリオール及びイソシアネートとしては、上記に列挙したようなものを用いることができる。
また、金属光沢層3としては、たとえばスパッタリングによってアルミニウム、クロム、チタン等の金属を蒸着することによって形成されたようなものが用いられる。さらに、スパッタリング以外に、イオンプレーティング等の手段で蒸着することも可能である。
さらに、トップコート層5としては、上記アンダーコート層2と同様にポリウレタンを使用することができる他、たとえば紫外線硬化性樹脂のようなものを用いることもできる。
さらに、ミドルコート層4としては、上記アンダーコート層2と同様にポリウレタンを使用することができる。
(実施例1)
本実施例では、樹脂成形品としてポリアセタール樹脂からなる樹脂成形品を用いた。この樹脂成形品は、ポリプラスチック製のジュラコン(商品名)を成形することによって得られたものである。
このようにして準備された樹脂成形品の表面に、酸素プラズマ処理を施した。この酸素プラズマ処理工程においては、真空蒸着装置(SIP 1600F〔昭和真空株式会社製〕)を用いた。また酸素プラズマ処理工程における放電出力は1kWとし、圧力は0.35Paとした。さらに酸素プラズマ処理時の温度は、30℃で行い、処理時間は30分で行った。
このような酸素プラズマ処理によって樹脂成形品の表面に水酸基が導入され、その導入された水酸基と空気中の水分子との相互作用により、上述のように水を樹脂成形品の表面に付与できることとなるが、本実施例では、上記のように酸素プラズマ処理した樹脂成形品を空気中に5分以上暴露させることによって、空気中の水分子が、樹脂成形品の表面に導入された水酸基と相互作用し、水を付与させることができた。
その後の表面層形成工程において、上記酸素プラズマ処理及びその処理によって導入された水酸基と水分子との相互作用で水が付与されて改質処理された樹脂成形品の表面に、シアノアクリレートを塗布した。その結果、ポリシアノアクリレートの塗膜が、樹脂成形品の表面に好適に塗着された。これは、上記水付与工程で付与された水の存在下でシアノアクリレートが重合し、それによって、ポリシアノアクリレートの塗膜が塗着されたものと思われる。
結果として、ポリシアノアクリレートの塗膜は、不用意に剥離するようなことがないような強固な状態で樹脂成形品に塗着されていた。
(実施例2)
実施例1と同様にポリアセタール樹脂からなる樹脂成形品を用い、実施例1と同様の条件で酸素プラズマ処理。及びその処理によって導入された水酸基と空気中の水との相互作用による表面改質処理を行った。
本実施例では、その後の表面層形成工程において、ポリエステルウレタン系塗料を用いた。すなわち、イソシアネート系硬化剤を用いた2液性ポリエステルウレタン系塗料(SF6062A−N 藤倉化成株式会社)を用い、樹脂成形品の表面に塗布した。その結果、ポリエステルウレタン系塗料の塗膜が、樹脂成形品の表面に好適に塗着された。
結果として、ポリエステルウレタン系塗料の塗膜は、不用意に剥離するようなことがないような強固な状態で樹脂成形品に塗着されていた。
(試験例1)
本試験例では、樹脂成形品の表面における、ぬれ性評価試験を行った。より具体的には、ポリアセタール樹脂の成形品の表面に酸素プラズマ処理を施し、その処理後の樹脂成形品の表面に水を滴下し、表面上に広がった水の面積(ぬれ面積)を測定した。ポリアセタール樹脂成形品のサンプルは、縦50mm、横50mm、厚さ1mmの平板状のものを用いた。酸素プラズマ処理の放電出力は1kWとし、圧力は0.35Paとし、酸素プラズマ処理時の温度は、30℃で行った。
酸素プラズマ処理の時間は、1分、5分、10分、20分、30分、40分、60分の7水準において行い、時間の変化に伴うぬれ面積の変化を試験した。水の滴下量は50μlとし、滴下後、5分間放置した後のぬれ面積を求めた。その試験結果を図2に示す。
図2からも明らかなように、未処理の場合には、ぬれ面積は43mm2程度であったところ、酸素プラズマ処理を1分間行っただけでも、ぬれ面積は56mm2程度に向上した。5分、10分の酸素プラズマ処理時間では、それぞれ63mm2、72mm2程度に上昇し、さらに20分、30分の酸素プラズマ処理時間では、ともに107mm2程度に上昇し、ぬれ面積が最も良好となった。40分、60分の酸素プラズマ処理時間では、ぬれ面積は減少したが、それでも92mm2、83mm2程度に維持されていた。
以上の試験結果からも明らかなように、酸素プラズマ処理を行わない場合に比べて、酸素プラズマ処理を行った場合には、わずか1分の処理時間であっても樹脂成形品の表面におけるぬれ性の改善が認められた。また、20分、30分の酸素プラズマ処理時間で、ぬれ性が最良となることがわかった。その後、40分、60分の酸素プラズマ処理時間ではぬれ性が低下したが、10分以下の酸素プラズマ処理時間の場合に比べると、良好であった。
(試験例2)
本試験例では、上記実施例2のようにして得られたポリエステルウレタン系塗料の塗膜の剥離性を確認するために、クロスカット剥離試験を行った。ポリアセタール樹脂成形品のサンプルは、縦50mm、横50mm、厚さ1mmの平板状のものを用い、その表面にポリエステルウレタン系塗料を塗布した。
クロスカット剥離試験は、JISK5400に準じ、カッターナイフを用いて試験片上の塗装面に直交する縦・横11本ずつの平行線を1mmの間隔で形成して、1cm2の面積中に100個の升目を形成し、碁盤目の部分に粘着テープを密着させて一気に引き剥がし、残った升目を数えることにより行った。
試験の結果、100個の升目のすべてに剥離がなく、実施例2のようにして得られたポリエステルウレタン系塗料の塗膜の剥離強度が良好であることがわかった。
(試験例3)
本試験例では、上記のようにポリエステルウレタン系塗料を塗布したポリアセタール樹脂成形品のサンプルを温水に浸漬した後、上記実施例2と同様のクロスカット剥離試験を行った。クロスカット剥離試験は、実施例2と同様にして行った。
試験の結果、本試験例においても、100個の升目のすべてに剥離がなく、ポリエステルウレタン系塗料の塗膜の剥離強度が良好であることがわかった。
1…基材 2…アンダーコート層
3…金属光沢層 4…ミドルコート層
5…トップコート層

Claims (4)

  1. 樹脂成形品の表面を、放電出力0.7〜1.5kW、圧力0.2〜0.5Pa、温度20〜40℃、処理時間20〜40分の条件下で酸素を用いてプラズマ処理する酸素プラズマ処理によって前記樹脂成形品の表面に水酸基を導入し、導入された水酸基、及び該水酸基と空気中の水分子との相互作用により前記樹脂成形品の表面に付与される水によって、該樹脂成形品の表面を改質することを特徴とする樹脂成形品の表面処理方法。
  2. 樹脂成形品の表面を、放電出力0.7〜1.5kW、圧力0.2〜0.5Pa、温度20〜40℃、処理時間20〜40分の条件下で酸素を用いてプラズマ処理する酸素プラズマ処理によって前記樹脂成形品の表面に水酸基を導入し、導入された水酸基、及び該水酸基と空気中の水分子との相互作用により前記樹脂成形品の表面に付与される水によって該樹脂成形品の表面を改質し、改質された樹脂成形品の表面に、水の存在下で表面層を形成しうる素材を塗布して、前記樹脂成形品の表面に表面層を形成することを特徴とする、表面層を有する樹脂成形品の製造方法。
  3. 水の存在下で表面層を形成しうる素材が、水と反応して重合する樹脂である請求項2記載の表面層を有する樹脂成形品の製造方法。
  4. 水と反応して重合する樹脂が、イソシアネートを用いた2液性ポリウレタン、又はシアノアクリレートである請求項3記載の表面層を有する樹脂成形品の製造方法。
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