JP2008073915A - 樹脂基体およびその製造方法 - Google Patents

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幸生 野村
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大橋  秀行
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成寿 金澤
Norihisa Mino
規央 美濃
Shuzo Tokumitsu
修三 徳満
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Abstract

【課題】耐久性の優れた、帯電防止、撥水、撥油性樹脂基体を提供することを目的とするものである。
【解決手段】表面に導電性を有し加水分解可能な樹脂層を有する樹脂基板の表面にシロキサン結合を有する膜を設けた樹脂基体8であり、この構成によると、加水分解可能な樹脂層とシロキサン結合を有する膜が強固に結合し、また、加水分解可能な樹脂層と樹脂基板は熱膨張の差が小さいため密着力に優れるため、耐久性の優れたシロキサン結合を有する膜が設けられた基体を提供できる。しかも、シロキサン結合を有する膜は膜厚が薄いため、荷電粒子を導電性を有する樹脂層へ容易に透過させることができるので、帯電による汚れ付着防止性も兼ね備えたものとなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂層を表面に有する樹脂基板上にシロキサン結合を有する膜を設けた機能性樹脂基体およびその製造方法に関する。
従来、オレフィン系樹脂表面に例えば撥水、撥油、防汚性を持たすために、数々の手段が行われている。例えばポリプロピレン樹脂にシリコーン樹脂を混合する方法や、ポリプロピレン樹脂にUVやコロナ放電を照射した後にシリコーンやフルオロアルキルアルキルシランを塗布する方法や、ポリプロピレン樹脂にUVやコロナ放電を照射した後にシリカ膜を設け、アルキルシランやフルオロアルキルシランを設ける方法などがある(例えば、特許文献1参照)。
また、樹脂表面は非常に帯電しやすいため、帯電による汚れの付着がおこりやすく、これを防ぐために、樹脂表面に導電膜を設けたり、樹脂に導電性を持たせたりする方法などがある(例えば、特許文献2参照)。
特開2001−128891号公報 特開平5−128590号公報
しかしながら、ポリプロピレン樹脂にシリコーン樹脂を混合する方法では、樹脂の力学的強度が低下する課題があった。また、ポリプロピレン樹脂にUVやコロナ放電を照射した後にシリコーンやフルオロアルキルアルキルシランを塗布する方法では、プロピレン表面が柔らかいためにと膜の耐久性とくに耐摩耗性に課題があった。
これを解決するため、ポリプロピレン樹脂にUVやコロナ放電を照射した後にシリカ膜を設け、アルキルシランやフルオロアルキルシランを設ける方法では、樹脂とシリカコートの熱膨張の差が大きいため、シリカコートが熱破壊(密着強度低下)する課題があった。
また、ポリプロピレン表面がきわめて安定なために、UVやコロナ放電を行ったとしても、表面を活性化できず、この表面と膜の間の密着強度に課題があった。さらに樹脂成型品への適用が困難であった。
さらに、樹脂表面に帯電防止性を持たせても、上記の防汚膜の厚膜のためその効果が消失し、撥水撥油性と帯電による付着防止性を両立することが困難であった。
本発明はこの課題を解決するものであり、耐久性の優れた親水、撥水、撥油性に優れた樹脂基体およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、このような目的を達成するため、導電性を有し、かつ加水分解可能な樹脂層を表面に有する樹脂基板上にシロキサン結合を有する膜を設けたものである。
本発明によれば、導電性を有し加水分解可能な樹脂層とシロキサン結合を有する膜が強固に結合し、また、導電性を有し加水分解可能な樹脂層と樹脂基板は熱膨張の差が小さい
ため密着力に優れるため、耐久性に優れた親水、撥水、撥油性樹脂基体を提供できる。加えて、シロキサン結合を有する膜は膜厚が薄いため、荷電粒子を導電性を有する樹脂層へ容易に透過させることができるので、帯電による付着防止性も兼ね備えた樹脂基体ともなる。さらに、金型を用いた樹脂成型にも適用できるので、適用範囲が広く、工業的な利用価値大である。
第1の発明は、導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂層を表面に有する樹脂基板上にシロキサン結合を有する膜を設けた。
この構成によると、加水分解可能な樹脂層とシロキサン結合を有する膜が強固に結合し、また、加水分解可能な樹脂層と樹脂基板は熱膨張の差が小さいため密着力に優れ、耐久性の優れたシロキサン結合を有する膜が設けられた親水、撥水、撥油性樹脂基体となる。しかもシロキサン結合を有する膜は膜厚が薄いために荷電粒子を、導電性を有する樹脂層へ容易に透過させることができるので、帯電による付着防止性も兼ね備えた樹脂基体ともなる。
第2の発明は、導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂層を表面に有する樹脂基板上にシロキサン結合を有する膜がシロキサン結合を介して、導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂層と化学結合している膜を設けた。
この構成によると、加水分解可能な樹脂層とシロキサン結合を有する膜がシロキサン結合を介していっそう強固に共有結合し、また、加水分解可能な樹脂層と樹脂基板は熱膨張の差が小さいため密着力に優れ、耐久性の優れたシロキサン結合を有する親水、撥水、撥油性膜が設けられた樹脂基体となる。しかも、シロキサン結合を有する膜は膜厚が薄いために荷電粒子を導電性を有する樹脂層へ容易に透過させることできるので、帯電による付着防止性も兼ね備えた樹脂基体ともなる。
第3の発明は、シロキサン結合を有する膜が少なくともアルキル基もしくはフルオロアルキル基を有するものとして、樹脂表面を撥水、撥油化し、また耐久性を高め、長期に渡り性能を維持できるようにした。しかも、シロキサン結合を有する膜は膜厚が薄いために荷電粒子を導電性を有する樹脂層へが容易に透過させることできる。
第4の発明は、特に第1または第2の発明において、アルキル基もしくはフルオロアルキル基が直鎖状であり、かつ炭素数を18以下としたことで、シロキサン結合を有する膜の厚さがさらに薄くできるために荷電粒子を導電性を有する樹脂層へ容易に透過させることができる。
第5の発明は、特に第3または第4の発明において、シロキサン結合を有する膜を単分子膜にしたことにより、シロキサン結合を有する膜を無色透明の超薄膜にでき、その結果、樹脂の色感が維持され、そのため、シロキサン結合を有する膜は荷電粒子を導電性を有する樹脂層へさらに容易に透過させることができる。
第6の発明は、特に第1から第5のいずれか一つの発明において、樹脂層に界面活性剤を含ませた。したがって、樹脂層内部の界面活性剤やそれによって捕捉された水分子の解離等によって帯電が中和されるため、樹脂層に帯電による付着防止機能を付与できる。
第7の発明は、特に第1から第5のいずれか一つの発明において、樹脂層の高分子内にイオン性官能基もしくは水酸基をもたせ、このイオン性基の解離や水酸基によって捕捉された水分子の解離等によって帯電を中和したもので、その帯電による付着防止機能を付与
できる。しかも、樹脂内部に化学結合で固定化されるため、その耐久性が大いに向上する。
第8の発明は、特に第1から第7のいずれか一つの発明において、樹脂層の表面の鉛筆硬度をH以上にしたことによって、シロキサン結合を有する膜が結合するところの樹脂が硬い樹脂となり、耐久性、特に耐摩耗性を向上できる。
第9の発明は、特に第1から第8のいずれか一つの発明において、樹脂層の高分子をアクリル、メタクリル、シリコーン、およびこれらの共重合体、もしくはポリイミド、ポリアミド、およびこれらの共重合体とした。
これにより、樹脂表面の加水分解が容易で、かつシロキサン結合を有する膜が化学結合する樹脂が硬い樹脂となるため、耐久性特に耐摩耗性を大幅に向上できる。
第10の発明は、特に第1から第8のいずれか一つの発明において、シート抵抗を1×1014Ω/□未満に設定して、機能性樹脂基体の帯電による付着をおこりにくくし、いつまでも汚れにくい樹脂としたものである。
第11の発明は、樹脂基板上に導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂層を設ける工程と、樹脂層表面を加水分解する工程と、加水分解した樹脂層表面に少なくともシラン化合物を接触させる工程とを有する樹脂基体の製造方法である。
第12の発明は、導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂層片側表面を加水分解する工程と、加水分解した樹脂層表面に少なくともシラン化合物を接触させる工程と、樹脂基板表面に少なくともシラン化合物を接触させた面を表面になるよう樹脂層を設ける工程とを有する樹脂基体の製造方法である。
これらの方法によって、導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂層とシロキサン結合を有する膜がシロキサン結合を介していっそう強固に共有結合し、また、加水分解可能な樹脂層と樹脂は熱膨張の差が小さいため密着力に優れ、耐久性の優れたシロキサン結合を有する膜が設けられた親水、撥水、撥油性樹脂基体で、しかもシロキサン結合を有する膜は膜厚が薄いために荷電粒子を、導電性を有する樹脂層へ容易に透過させることができるので、帯電による付着防止性も兼ね備えた樹脂基体を製造できる。
第13の発明は、金型面に導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂層を形成する工程と、樹脂を供給してモールド成型を行う工程と、加水分解可能な樹脂層表面を加水分解する工程と、加水分解した樹脂層表面に少なくともシラン化合物を接触させる工程とを有する樹脂基体の製造方法である。
この方法によって、導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂層とシロキサン結合を有する膜がシロキサン結合を介していっそう強固に共有結合し、また、加水分解可能な樹脂層と樹脂は熱膨張の差が小さいため密着力に優れ、耐久性の優れたシロキサン結合を有する膜が設けられた親水、撥水、撥油性表面を有する樹脂成型品で、しかもシロキサン結合を有する膜は膜厚が薄いために荷電粒子を、導電性を有する樹脂層へ容易に透過できるので、帯電による付着防止性も兼ね備えた樹脂成形品を製造できる。
第14の発明は、金型面に導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂フィルムを装着する工程と、樹脂を供給してフィルムインモールド成型を行う工程と、成型した樹脂の加水分解可能な樹脂層表面の加水分解を行う工程と、少なくともシラン化合物を接触させる工程とを有する樹脂基体の製造方法である。
第15の発明は、導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂フィルム片側表面を加水分解する工程と、加水分解した樹脂フィルム片側表面に少なくともシラン化合物を接触させる工程と、金型面に少なくともシラン化合物を接触させた面が表面になるよう樹脂フィルムを装着する工程と、樹脂を供給してフィルムインモールド成型を行う工程とを有する樹脂基体の製造方法である。
これらの方法によって、上記、親水、撥水、撥油性表面を有し、かつ帯電による付着防止性も兼ね備えた樹脂成型品を簡単に作製できる。
第16の発明は、導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂層の表面の加水分解を行う工程が少なくともUV照射もしくはコロナ放線照射であることを特徴とする樹脂基体の製造方法である。
この方法によると、加水分解可能な樹脂層表面のみにUV照射もしくはコロナ放線照射できるので、樹脂の他の部分に影響を及ぼすことなく、導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂層表面を加水分解できる。
第17の発明は、請求項17に記載の発明は、導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂層の表面の加水分解を行う工程が金型面と加水分解可能な樹脂層間での少なくともオゾンもしくは酸素プラズマの接触であることを特徴とする樹脂基体の製造方法である。
この方法によると、成型する形状に関係なく導電性を有し加水分解可能な樹脂層表面のみにオゾンもしくは酸素プラズマを接触できるので、樹脂の他の部分に影響を及ぼすことなく、導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂層表面を加水分解できる。
第18の発明は、導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂層の表面の加水分解を行う工程が金型面と加水分解可能な樹脂層間であり、少なくともオゾンもしくは酸素プラズマの接触であることを特徴とする樹脂基体の製造方法である。
この方法によると、樹脂成型工程の金型内部で、導電性を有し加水分解可能な樹脂層表面を加水分解できるので、より簡単に本発明の樹脂基体を製造できる。
第19の発明は、シラン化合物がハロゲン化シラン、アルコキシシラン、イソシアネートシランであることを特徴とする樹脂基体の製造方法である。
この方法によると、導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂層とシロキサン結合を有する膜がシロキサン結合を介して強固に共有結合し、また、加水分解可能な樹脂層と樹脂は熱膨張の差が小さいため密着力に優れ、耐久性の優れたシロキサン結合を有する膜が設けられた親水、撥水、撥油性樹脂基体で、しかもシロキサン結合を有する膜は膜厚が薄いために荷電粒子を、導電性を有する樹脂層へ容易に透過させることができるので、帯電による付着防止性も兼ね備えた樹脂基体を製造できる。
第20の発明は、ハロゲン化シラン化合物がクロロシランであることを特徴とする樹脂基体の製造方法である。
この方法によると、クロロシランの反応性が高いので、導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂層とシロキサン結合を有する膜がシロキサン結合を介していっそう強固にかつすばやく共有結合できるので、耐久性かつ量産性に優れたシロキサン結合を有する膜が設けられた親水、撥水、撥油性樹脂基体で、しかもシロキサン結合を有する膜は膜厚が薄いため
に荷電粒子を、導電性を有する樹脂層へ容易に透過させることができるので、帯電による付着防止性も兼ね備えた樹脂基体を製造できる。
第21の発明は、シラン化合物を接触させる工程が湿度35%以下の無水雰囲気であることを特徴とする樹脂基体の製造方法である。
この方法によると、シラン化合物を空気中の水蒸気と反応させることなく、導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂層とシロキサン結合を有する膜がシロキサン結合を介して強固に共有結合できるので、耐久性に優れたシロキサン結合を有する膜が設けられた親水、撥水、撥油性樹脂基体で、しかもシロキサン結合を有する膜は膜厚が薄いために荷電粒子を導電性を有する樹脂層へ容易に透過させることができるので、帯電による付着防止性も兼ね備えた樹脂基体を製造できる。
第22の発明は、シラン化合物を接触させる工程がシラン化合物の溶液の接触であることを特徴とする樹脂基体の製造方法である。
この方法によると、成型する形状に関係なく、導電性を有しかつ加水分解した樹脂層表面にシロキサン結合を有する膜を形成でき、親水、撥水、撥油性表面を有し、かつ帯電による付着防止性も兼ね備えた樹脂成型品を製造できる。
第23の発明は、請求項23に記載の発明は、シラン化合物を接触させる工程が金型面と加水分解可能な樹脂層間での少なくともシラン化合物の蒸気の接触であることを特徴とする樹脂基体の製造方法である。
この方法によると、成型する形状に関係なく導電性を有しかつ加水分解した樹脂層表面のみにシロキサン結合を有する膜を形成でき、樹脂の他の部分に影響を及ぼすことがない。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態により本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1において、金型面1に、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを5重量%含むアクリル樹脂溶液を塗布、乾燥することで、N,N−ジメチルアミノ基によりアクリル樹脂内に水を吸蔵し、この水によって導電性を発現するアクリル樹脂2を50μmを形成したのち、ポリプロピレン樹脂3を供給し、モールド成型を行い、表面に導電性を有するアクリル樹脂層を有するポリプロピレン樹脂基板4が製造される。
この樹脂基板4表面に、172nmの波長を有するエキシマUV光5を照射することで雰囲気中の水蒸気により表面が加水分解され、水酸基が形成された樹脂基板6が製造される。
窒素雰囲気(無水)下でこの樹脂基板6にヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン7を含むフロリナート(3M社製)溶液に浸漬し、通常雰囲気で乾燥することで、樹脂表面の水酸基とクロロシリル基が脱塩酸反応をおこして、シロキサン結合を介してプタデカフルオロデシル基が樹脂基体の化学結合で固定化され、樹脂基体8が作製される。
そして、この樹脂基体8は表面にヘプタデカフルオロデシル基による撥水、撥油性を付与することができる。さらに、このシロキサン結合を有する膜は膜厚が薄いために荷電粒子を、導電性を有するアクリル樹脂層を有するポリプロピレン樹脂層へ容易に透過させる
ことできるので、帯電による付着防止性も兼ね備えた樹脂基体ともなる。
なお、本実施の形態に供されるシロキサン結合を有する膜にある官能基として、親水性を付与するには、水酸基が最も優れる。次に撥水、防汚性にはアルキル基が良く、さらに撥油性を付与し、防汚性を高める場合には、フルオロアルキル基が優れている。
さらに、これらの官能基は固定化される化合物の割合(被覆率)を高めるためにも、直鎖状が優れている。
次にシロキサン結合を介して、加水分解可能な樹脂層と化学結合するシロキサン結合を有する膜にある官能基として、クロロシリル基を始めとするハロゲン化シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネートシリル基が有効であるが、クロロシリル基は加水分解可能な樹脂層表面にある水酸基等との反応性の高さを考慮すると特に有効である。
また、シロキサン結合を介することにより、従来の共有結合を介したもの(例えば、スルフィド結合−S−)よりも、より強固に基板に結合するので、耐熱性、耐水性、耐電気特性等が優れる。
以上のことから、本実施の形態に供されるシロキサン結合を介して基板表面に固定化する官能基と、機能を発現する官能基とを有する化合物の具体例として、親水性を付与する場合は、以下のものが例示できる。
(1)XSiO−(SiXO)−X
さらに具体的には
(2)SiCl
(3)SiCl−O−SiCl
(4)SiCl−O−SiCl−O−SiCl
(5)Si(OC
(6)Si(OCH−O−Si(OCH
(7)Si(OC−O−Si(OCH
(8)Si(OC−O−Si(OC
(9)Si(NCO)
(10)Si(NCO)−O−Si(NCO)
ただし、nは1以上の自然数、m、1は自然数、kは0もしくは1でXはハロゲン基、アルコキシ基、イソシアネート基である。
撥水、撥油、防汚の場合は、以下のものが例示できる。
(11)SiYpCl4−p
(12)CH(CHO(CHSiYqCl3−q
(13)CH(CH−Si(CH(CH−SiYCl3−q
(14)CFCOO(CHSiYCl3−q
ただし、pは1〜3の整数、qは0〜2の整数、rは1〜25の整数、sは0〜12の整数、tは1〜20の整数、uは0〜12の整数、vは1〜20の整数、wは1〜25の整数を示す。また、Yは、水素、アルキル基、アルコキシル基、含フッ素アルキル基または含フッ素アルコキシ基である。
さらに、具体的なシラン系化合物として下記に示す(15)−(21)が挙げられる。
(15)CHCHO(CH15SiCl
(16)CH(CHSi(CH(CH15SiCl
(17)CH(CHSi(CH(CHSiCl
(18)CHCOO(CH15SiCl
(19)CF(CF−(CH−SiCl
(20)CF(CF−(CH−SiCl
(21)CF(CF−C−SiCl
また、上記クロロシラン系化合物の代わりに、全てのクロロシリル基をイソシアネート基に置き扱えたイソシアネート系化合物、例えば下記に示す(22)−(26)を用いてもよい。
(22)SiY(NCO)4−p
(23)CH−(CHSiY(NCO)3−p
(24)CH(CHO(CHSiY(NCO)q−P
(25)CH(CH−Si(CH(CH−SiY(NCO)3−q
(26)CFCOO(CHSiY(NCO)3−q
但し、p、q、r、s、t、u、v、wおよびXは、前記と同様である。
前記のシラン系化合物に変えて、下記(27)−(33)に具体的に例示するシラン系化合物を用いてもよい。
(27)CHCHO(CH15Si(NCO)
(28)CH(CHSi(CH(CH2)15Si(NCO)
(29)CH(CHSi(CH(CH2)Si(NCO)
(30)CHCOO(CH15Si(NCO)
(31)CF(CF−(CH−Si(NCO)
(32)CF(CF−(CH−Si(NCO)
(33)CF(CF−C−Si(NCO)
また、シラン系化合物として、一般に、SiY(OA)4−k(Yは、前記と同様、Aはアルキル基、kは0、1、2または3)で表される物質を用いることが可能である。中でも、CF−(CF−(R)−SiY(OA)3−q(nは1以上の整数、好ましくは1〜22の整数、Rはアルキル基、ビニル基、エチニル基、アリール基、シリコンもしくは酸素原子を含む置換基、lは0または1、Y、Aおよびqは前記と同様)で表される物質を用いると、よりすぐれた防汚性の被膜を形成できるが、これに限定されるものではなく、これ以外にも、 CH−(CH−SiY(OA)3−qおよびCH−(CH−0−(CH−SiY(OA)3−q、CH−(CH2)−Si(CH−(CH−SiY(OA)3−q、CFCOO−(CH−SiY(OA)3−q(但し、q、r、s、t、u、v、w、YおよびAは、前記と同様)などが使用可能である。
さらに、より具体的なシラン系化合物としては、下記に示す(34)−(57)を挙げることができる。
(34)CHCHO(CH15Si(OCH
(35)CFCHO(CH15Si(OCH
(36)CH(CHSi(CH(CH15Si(OCH
(37)CH(CHSi(CH(CHSi(OCH3)
(38)CHCOO(CH15Si(OCH
(39)CF(CF(CHSi(OCH
(40)CF(CF−C−Si(OCH
(41)CHCHO(CH15Si(OC
(42)CH(CHSi(CH(CH15Si(OC
(43)CH(CHSi(CH(CHSi(OC
(44)CF(CHSi(CH(CHSi(OC
(45)CHCOO(CH15Si(OC
(46)CFCOO(CH15Si(OC
(47)CFCOO(CH15Si(OCH
(48)CF(CF(CHSi(OC
(49)CF(CF2)(CH2)Si(OC
(50)CF(CF2)(CH2)Si(OC
(5l)CF(CFSi(OC
(52)CF(CF(CH)2Si(OCH
(53)CF(CF(CHSi(OCH
(54)CF(CF(CHSiCH(OC
(55)CF(CF(CHSiCH(OCH
(56)CF(CF(CHSi(CHOC
(57)CF(CF(CHSi(CHOCH
なお、(5)−(10)、(22)−(57)の化合物を用いた場合には、塩酸が発生しないため、装置保全および作業上のメリットもある。
また、図1のシラン化合物を浸漬する工程に示す最初の反応ステップ(脱塩化水素反応)は、一般に化学吸着反応と呼ばれている。
さらに、これらのシラン化合物分子の構造としては、上記のようなアルキル基もしくはフルオロアルキル基が直鎖状であり、かつ炭素数が18以下であることが望ましい。これは、分岐状の場合、シロキサン結合を有する膜が高密度に形成されず、撥水、撥油性性能が低下するためである。
また、炭素数が18を超えると、シロキサン結合を有する膜の膜厚が厚くなるため、シロキサン結合を有する膜が帯電しても、導電性を有する樹脂基板にその帯電を逃がすことができず、シロキサン結合を有する膜の帯電防止による付着防止効果が著しく低下するからである。また同じ理由から、シロキサン結合を有する膜は単分子膜であることが望ましい。
またシラン化合物を接触させる雰囲気として、シラン化合物と雰囲気中の水蒸気との反応を抑えるためにも、雰囲気湿度が35%以下、さらに望ましくは不活性ガス雰囲気下、無水雰囲気下等が望ましい。
次に溶媒としては、水を含まない非水系溶媒を用いるのが好ましく、水を含まない炭化水素系溶媒、フッ化炭素系溶媒、シリコーン系、アルコール系溶媒などを用いることが可能である。なお、石油系の溶剤の他に具体的に使用可能なものは、石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、灯油、リグロイン、ジメチルミリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエステルシリコーンなどを挙げることができる。
ただし、これらの溶媒は樹脂を侵す可能性があるので、フッ化炭素系溶媒が最も好ましい。フッ化炭素系溶媒には、フロン系溶媒や、フロリナート(3M社製品)、アフルード(旭ガラス社製品)などがある。なお、これらは1種単独で用いてもよいし、よく混合するものなら2種以上を組み合わせてもよい。
また、導電性を有する加水分解可能な樹脂として、一般にポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)、エポキシ樹脂などに類される樹脂およびこれらの変性樹脂に界面活性剤を混合したもの、あるいはこれらの樹脂の分子中にイオン性官能基もしくは水酸基を有するもの適用できるが、これらに限定されることはない。特にシロキサン結合を有する膜が結合する表面樹脂層が硬い樹脂ほど、耐久性特に耐摩耗性が大幅に向上するので、アクリル樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチルなど)シリコーン樹脂、およびこれらの共重合体、もしくはポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、およびこれらの共重合体に界面活性剤を混合したもの、あるいはこれらの樹脂の分子中に界面活性基を有するものが好ましい。
このとき、加水分解可能な樹脂内に界面活性基もしくはイオン性基が形成されることで水が吸蔵し、この水によって導電性を発現する。なお、分子中にイオン性官能基もしくは水酸基を有するものは耐久性に優れており、イオン性官能基としては、カチオン性基としては、4級アンモニウム塩基またはホスホニウム塩基が望ましい。
また、アニオン性基としてはスルホン酸基もしくはその塩基が望ましい。なお、この樹脂層の厚みは1〜500μmが望ましいが、フィルムインサートによる一体成型を行う場合には十分な加工性を得るために300μm以下が望ましい。
また、樹脂としては、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリスチレン樹脂(PP)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂や上記熱硬化性樹脂およびこれらの変性樹脂などが適用できるがこれらに限定されることはない。
特に本実施の形態では従来の方法ではきわめて困難であったポリオレフィン系樹脂上へのシロキサン結合を有する膜を形成するのが可能である。
またこれらの形態だが、特に平面形状に限定されることはなく、処理可能であれば、樹脂成型品などの曲面形態でもかまわない。
(実施の形態2)
金型面にN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを5重量%含むアクリル樹脂溶液を塗布、乾燥することで、N,N−ジメチルアミノ基によりアクリル樹脂内に水を吸蔵し、この水によって導電性を発現するアクリル樹脂2を50μmを形成したのち、ポリプロピレン樹脂を供給し、モールド成型を行い、表面にアクリル樹脂層を有するポリプロピレン樹脂基板とした後、この樹脂基板表面に、172nmの波長を有するエキシマUV光を照射する。
さらに、この樹脂基板を窒素雰囲気(無水)下でヘプタデカフルオロデシルトリクロロシランを含むフロリナート(3M社製)溶液に浸漬し、通常雰囲気で乾燥することで、本発明の樹脂基体Aが作製される。
(比較例1)
実施例1のアクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル)を50μm形成しなかったことを除いて、実施例1と同様に樹脂基体R1を作製した。
(比較例2)
実施の形態2のポリプロピレン樹脂に代わり、ポリエチレンテレフタレート樹脂を使用し、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル)を50μm形成しなかったことを除いて、
実施例1と同様に樹脂基体R2を作製した。
(撥水、撥油性の比較)
樹脂基体A、R1、R2の接触角はそれぞれ、107°、92°、103°であり、また、油性インキで文字を書き、ワイパーでこすったところ、Aは消え、R1はまったく消えず、R2はやや消えたことより、程度には差があるもののAおよびR2にはへプタデカフルオロデシル基を含むシロキサン結合を有する膜が形成されたのに対し、R1は樹脂表面に水酸基が形成されなかったことによってこの膜が形成されなかったことがわかる。
したがって本実施例の効果が実証され、特にポリプロピレンをはじめとするポリオレフフィン系樹脂には絶大な効果があることがわかる。
発明者は本樹脂層について、他の種々の樹脂について調べたところ、加水分解が困難なポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂やAS(アクリロニトリル・スチレン共重合体)やABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)などのポリスチレン系樹脂がポリプロピレンと同様、撥水性維持の性能がよくないことがわかった。
一方、加水分解可能な樹脂でも、シリコーン、アクリルシリコン共重合体、ポリイミド、ポリアミド、ポリスチレンではアクリル樹脂と同様に極めて優れた撥水性維持の性能を示すことがわかった。また、熱硬化性樹脂を用いると耐熱性が優れることがわかった。これ以外の加水分解可能な樹脂、例えばPC(ポリカーボーネート)などは、アクリルとポリプロピレンの間の撥水撥油維持性能を示した。
(比較例3)
実施例1の172nmの波長を有するエキシマUV光を照射しなかったことを除いて、実施例1と同様に樹脂基板R3を作製した。
(撥水、撥油性の比較)
樹脂基体A、R3の接触角はそれぞれ107°、62°であり、また、油性インキで文字を書き、ワイパーでこすったところ、Aは消え、Bはまったく消えず、Aはヘプタデカフルオロデシル基を含むシロキサン結合を有する膜が形成されたのに対し、R3はこの膜が形成されなかったことがわかる。
これは、R3樹脂表面に水酸基が形成されなかったことに起因するヘプタデカフルオロデシル基を含むシロキサン結合を有する膜が形成されなかったためである。
なお、本実施の形態はエキシマUV以外のUVや、コロナ放電照射の場合にも樹脂基体Aのような効果が認められた。
(比較例4)
実施の形態2の樹脂基板を窒素雰囲気(無水)下でヘプタデカフルオロデシルトリクロロシランを含むフロリナート(3M社製)溶液に浸漬するかわりに、湿度20、35、40%で行い、実施の形態2と同様に樹脂基板R4(20)、R4(35)、R4(40)を作製した。
(撥水、撥油性の比較)
樹脂基体A、R4(20)、R4(35)、R4(40)の接触角は107°、106°103°、92°であった。また、油性インキで文字を書き、ワイパーでこすったところ、A、R4(20)、R4(35)は消え、R4(40)はまったく消えなかったことから、A、R4(20)、R4(35)はヘプタデカフルオロデシル基を含むシロキサン
結合を有する膜が形成されたのに対し、R4(40)はこの膜が形成されなかったことがわかる。
これは、R4(40)は雰囲気の水蒸気とへプタデカフルオロデシルトリクロロシランが反応し、ヘプタデカフルオロデシル基を含むシロキサン結合を有する膜が形成されなかったためである。
(実施の形態3)
実施の形態2のN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドに代わり、N,N−ジメチルアミノノナンを用いたことを除いて、実施例1と同様に樹脂基板Bを作製した。
(比較例5)
実施例1のN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを用いないことを除いて、実施例1と同様に樹脂基板R5を作製した。
(撥水、撥油性、帯電による付着防止性の比較)
樹脂基体A、B、R5の接触角はそれぞれ107°、105°、106°であった。
また、油性インキで文字を書き、ワイパーでこすったところ、すべて消えることを確認した。
さらに、ワイパー100往復、1000往復擦ったのち、ダストチャンバー法(ASTM・D2741−68)によりゴミ(10μmトナー)を付着させると、ワイパー100往復ではA、Bはトナーがあまり付着しなかったのに対し、R5は大量に付着した。
また、1000往復では、Aはトナーがあまり付着しなかったのに対し、Bは大量に付着した。
また、この後、油性マジックで文字を書き、ワイパーでこすったところ、A、R5は消え、Bは消えなかった。このことは、本実施の形態の樹脂基版は撥水、撥油性と帯電による付着防止いう2つの防汚性を兼ね備えることがわかる。さらに界面活性基を分子内に固定化したものが耐久性に優れることがわかる。
一方界面活性基を分子内に固定化していないものは、初期性能はすぐれるものの、表面に界面活性剤が出やすいため、帯電防止の耐久性だけでなく、シロキサン結合を有する膜の耐久性にも影響することがわかった。
(実施の形態4)
実施の形態2のN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドの添加量2wt%、1wt%にした樹脂基体C1、C2を作製した。シート抵抗を測定したところ、Aは1×1012Ω/□、C1は1×1013Ω/□、C2は1×1014Ω/□であった。
(シート抵抗と帯電防止による付着防止効果)
樹脂基体A、C1、C5の接触角はそれぞれ107°、106°、106°であった。また、油性インキで文字を書き、ワイパーでこすったところ、すべて消えることを確認した。
ワイパー100往復擦ったのち、ダストチャンバー法(ASTM・D2741−68)によりゴミ(10μmトナー)を付着させると、A、C1はトナーがあまり付着しなかったのに対し、C2は大量に付着した。このことは、本樹脂基版A、C1は撥水、撥油性と帯電による付着防止という2つの防汚性を兼ね備えることがわかる。
そして、本樹脂基版の帯電防止による付着防止効果を有するシート抵抗値は1×1014Ω/□未満であることがわかる。
(実施の形態5)
実施の形態2のへプタデカフルオロデシルトリクロロシランに代わり、デシルトリクロロシランを用いたことを除いて、実施例1と同様に樹脂基体Dを作製した。
(撥水、撥油性の比較)
樹脂基体A,Dの接触角は107°105°でほとんど変わらないにもかかわらず、油性インクで文字を書き、ワイパーでこすったところ、Aは消え、Dはまったく消えなかった。これはA表面は撥水撥油性が付与されたのに対し、Dは、撥水親油性が付与されたためである。
(実施の形態6)
図2に示すように、金型面11にN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを5重量%を含むアクリル樹脂シート(100μm)12をセットし、これを金型面11上でシートに成型される金型13でプレス成型する。
この後、金型を13から14にかえ、ポリプロピレン樹脂15を供給して、フィルムインモールド成型を行い、導電性を有するアクリル樹脂層を有するポリプロピレン樹脂基板16とした後、この樹脂基板16表面に172nmの波長を有するエキシマUV光17を照射し、表面水酸基が形成された樹脂基板18が製造される。
さらに、この樹脂基板18を窒素雰囲気(無水)下でヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン19を含むフロリナート(3M社製)溶液に浸漬し、通常雰囲気で乾燥することで、本発明の樹脂基体E1が作製される。
なお、172nmの波長を有するエキシマUV光を照射することに代わり、酸素プラズマ処理を行い、同様な樹脂基体E2を作製した。
(作製の簡便性)
樹脂基体A,E1、E2の接触角は107°109°107°でほとんど変わらないにもかかわらず、この方法により本樹脂基体Aよりも、簡便な方法で同様な性能をもつ樹脂基体E1およびE2が作製される。
(実施の形態7)
図3に示すように、金型面21にN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを5重量%を含むアクリル樹脂シート(100μm)22をセットし、これを金型面21上でシートに成型される金型23でプレス成型する。
この後、金型を23から24にかえ、ポリプロピレン樹脂25を供給して、フィルムインモールド成型を行い、導電性を有するアクリル樹脂層を有するポリプロピレン樹脂基板26とした後、さらに金型面21の導入孔27よりオゾンと水蒸気28を導入し、この樹脂基板表面に接触させ、表面水酸基が形成された樹脂基板29が製造される。
さらに、この樹脂基板を窒素雰囲気(無水)下でヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン30を含むフロリナート(3M社製)溶液に浸漬し、通常雰囲気で乾燥することで、樹脂基体Fが作製される。
(作製の簡便性)
樹脂基体E1、Fの接触角は109゜、105°でほとんど変わらないにもかかわらず、この方法により本樹脂基体E1よりも、さらに簡便な方法で同様な性能をもつ樹脂基体Fが作製される。
(実施の形態8)
図4に示すように、金型面31にN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを5重量%を含むアクリル樹脂シート(100μm)32をセットし、これを金型面31上でシートに成型される金型33でプレス成型する。
この後、金型を33から34にかえ、ポリプロピレン樹脂35を供給して、フィルムインモールド成型を行い、導電性を有するアクリル樹脂層を有するポリプロピレン樹脂基板36とした後、さらに金型面31の導入孔37よりオゾンと水蒸気38を導入し、この樹脂基板36表面に接触させ、表面水酸基が形成された樹脂基板39が製造される。
さらに、導入孔37よりヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン蒸気40を導入し、樹脂基体Gが作製される。
(作製の簡便性)
樹脂基体F、Gの接触角は105°、100゜でほとんど変わらないにもかかわらず、この方法により樹脂基体Fよりも、さらに簡便な方法で同様な性能をもつ樹脂基体Gが作製される。
(実施の形態9)
図5に示すように、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを5重量%を含むアクリル樹脂シート(100μm)41に172nmの波長を有するエキシマUV光42を照射し、表面水酸基が形成した導電性を有するアクリル樹脂シート43を製造する。
このアクリル樹脂シート43を窒素雰囲気(無水)下でヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン44を含むフロリナート(3M社製)溶液に浸漬し、通常雰囲気で乾燥することで、シロキサン結合を有する膜を有するアクリル樹脂シート45が形成される。
さらに、金型面46にこのアクリル樹脂シート45をセットし、これを金型面41上でシートに成型される金型47でプレス成型する。
この後、金型を47から48にかえ、ポリプロピレン樹脂49を供給して、フィルムインモールド成型を行い、樹脂基体Hが作製される。
(作製の簡便性)
樹脂基体のE1、Hの接触角は109°、106°でほとんど変わらないのにもかかわらず、Gはアクリル樹脂をシート状でシロキサン結合を有する膜を形成できるので、樹脂基体E1よりも、さらに簡便な方法で同様な性能をもつ樹脂基体Hが作製される。
(実施の形態6)
先の実施の形態1における実施例1のへプタデカフルオロデシルトリクロロシランに代わり、へプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、へプタデカフルオロデシルトリイソシアネートシランを用いたことを除いて、実施例1と同様に樹脂基体I1、I2を作製した。
(撥水、撥油性の比較)
樹脂基体A,I1、I2の接触角は107°、108°、109゜でほとんど変わらない。しかしながら、エタノールを含むワイパーで10000回こすったところ、樹脂基体A,I1、I2の接触角は107°、90°、92゜であり、樹脂基板Aの耐久性が優れていることがわかる。
これはヘプタデカフルオロデシルトリクロロシランを使用することにより、樹脂基板に化学結合によってヘプタデカフルオロデシルトリクロロシランがより固定化されたことを示す。
(実施の形態10)
先の実施の形態2における実施例1のへプタデカフルオロデシルトリクロロシランCF(CF−(CH−SiCl(炭素数10)に代わり、CF(CF15−(CH−SiCl、CF(CF17−(CH−SiClを用いたことを除いて、実施例1と同様に樹脂基体J1、J2を作製した。
(シート抵抗と帯電防止による付着防止効果)
樹脂基体A、J1、J5の接触角はそれぞれ107°、106°、106°であった。また、油性インキで文字を書き、ワイパーでこすったところ、すべて消えることを確認した。
ワイパー100往復擦ったのち、ダストチャンバー法(ASTM・D2741−68)によりゴミ(10μmトナー)を付着させると、A、J1はトナーがあまり付着しなかったのに対し、J2は大量に付着した。
このことは、樹脂基版A、C1は撥水、撥油性と帯電による付着防止という2つの防汚性を兼ね備えていることがわかる。
そして、本樹脂基版の帯電防止による付着防止効果を有するシロキンサン結合を有する膜の炭素数は直鎖状で18以下であることがわかる。
(実施の形態11)
先の実施の形態2における実施例1の樹脂基板を窒素雰囲気(無水)下でヘプタデカフルオロデシルトリクロロシランを含むフロリナート(3M社製)溶液に浸漬した後に、その樹脂基版をフロリナート(3M社製)溶媒で洗浄した後、通常雰囲気で乾燥することを除いて、実施例1と同様に樹脂基体Kを作製した。
(シート抵抗と帯電による付着防止効果)
樹脂基体A、Kの接触角はそれぞれ107°、109°であった。また、油性インキで文字を書き、ワイパーでこすったところ、すべて消えることを確認した。またKのほうが消えやすいことがわかった。これはKはシロキサン結合を有する膜が単分子膜であるからである。
また、ワイパー100往復擦ったのち、ダストチャンバー法(ASTM・D2741−68)によりゴミ(10μmトナー)を付着させると、A、J1はトナーがあまり付着しなかったのに対し、Kはほとんどトナーが付着しなかった。
このことは、樹脂基版A、C1は撥水、撥油性と帯電による付着防止という2つの防汚性を兼ね備えることがわかる。
そして、シロキサン結合を有する膜が単分子膜であれば、その効果は絶大であることが
わかる。
本発明によれば、導電性を有し加水分解可能な樹脂層とシロキサン結合を有する膜が強固に結合し、また、加水分解可能な樹脂層と樹脂基板は熱膨張の差が小さいため密着力に優れるため、耐久性の優れた撥水、撥油性樹脂基体を提供できる。また、シロキサン結合を有する膜は膜厚が薄いため荷電粒子を、導電性を有する樹脂層へ容易に透過させることができるので、帯電による汚れ付着防止性も兼ね備えた樹脂基体ともなる。また、金型を用いた樹脂成型にも適用できるので、適用範囲が広く、工業的な利用価値大である。
本発明の実施の形態1における樹脂基体の製造工程図 本発明の実施の形態6における樹脂基体の製造工程図 本発明の実施の形態7における樹脂基体の製造工程図 本発明の実施の形態8における樹脂基体の製造工程図 本発明の実施の形態9における樹脂基体の製造工程図
符号の説明
2 アクリル樹脂
3,15,25,35,49 ポリプロピレン樹脂
7,19,30,40,44 ヘプタデカフロオロデシルトリクロロシラン
8,E1,F,G,H 樹脂基体
12,22,32,41 アクリル樹脂シート

Claims (23)

  1. 導電性を有し、かつ加水分解可能な樹脂層を表面に有する樹脂基板上にシロキサン結合を有する膜を設けた樹脂基体。
  2. 導電性を有し、かつ加水分解可能な樹脂層を表面に有する樹脂基板上にシロキサン結合を有する膜がシロキサン結合を介して導電性を有し、かつ加水分解可能な樹脂層と化学結合している膜を設けた樹脂基体。
  3. シロキサン結合を有する膜が少なくともアルキル基もしくはフルオロアルキル基を有することを特徴とする請求項1または2記載の樹脂基体。
  4. 前記アルキル基もしくはフルオロアルキル基が直鎖状であり、かつ炭素数が18以下であることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂基体。
  5. シロキサン結合を有する膜が単分子膜であることを特徴とする請求項3または4記載の樹脂基体。
  6. 樹脂層に界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の樹脂基体。
  7. 樹脂層の高分子内にイオン性官能基もしくは水酸基を有することを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の樹脂基体。
  8. 樹脂層の表面の鉛筆硬度がH以上であることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載の樹脂基体。
  9. 樹脂層の高分子がアクリル、メタクリル、シリコーン、およびこれらの共重合体、もしくはポリイミド、ポリアミド、およびこれらの共重合体であることを特徴とする請求項1〜8いずれか1項記載の樹脂基体。
  10. シート抵抗が1×1014Ω/□未満であることを特徴とする請求項1〜9いずれか1項記載の樹脂基体。
  11. 樹脂基板上に導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂層を設ける工程と、樹脂層表面を加水分解する工程と、加水分解した樹脂層表面に少なくともシラン化合物を接触させる工程とを有する樹脂基体の製造方法。
  12. 導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂層片側表面を加水分解する工程と、加水分解した樹脂層表面に少なくともシラン化合物を接触させる工程と、樹脂基板表面に少なくともシラン化合物を接触させた面を表面になるよう樹脂層を設ける工程とを有する樹脂基体の製造方法。
  13. 金型面に導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂層を形成する工程と、樹脂を供給してモールド成型を行う工程と、加水分解可能な樹脂層表面を加水分解する工程と、加水分解した樹脂層表面に少なくともシラン化合物を接触させる工程とを有する樹脂基体の製造方法。
  14. 金型面に導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂フィルムを装着する工程と、樹脂を供給してフィルムインモールド成型を行う工程と、成型した樹脂の加水分解可能な樹脂層表面の加水分解を行う工程と、少なくともシラン化合物を接触させる工程とを有する樹脂基体の製造方法。
  15. 導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂フィルム片側表面を加水分解する工程と、加水分解した樹脂フィルム片側表面に少なくともシラン化合物を接触させる工程と、金型面に少なくともシラン化合物を接触させた面が表面になるよう樹脂フィルムを装着する工程と、樹脂を供給してフィルムインモールド成型を行う工程とを有する樹脂基体の製造方法。
  16. 導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂層の表面の加水分解を行う工程が少なくともUV照射もしくはコロナ放電照射であることを特徴とする請求項11〜15いずれか1項記載の樹脂基体の製造方法。
  17. 導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂層表面の加水分解を行う工程が少なくともオゾンもしくは酸素プラズマの接触であることを特徴とする請求項11〜15いずれか1項記載の樹脂基体の製造方法。
  18. 導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂層の表面の加水分解を行う工程が金型面と加水分解可能な樹脂層間であり、少なくともオゾンもしくは酸素プラズマの接触であることを特徴とする請求項13または14記載の樹脂基体の製造方法。
  19. シラン化合物がハロゲン化シラン、アルコキシシラン、イソシアネートシランであることを特徴とする請求項11〜15いずれか1項記載の樹脂基体の製造方法。
  20. ハロゲン化シラン化合物がクロロシランであることを特徴とする請求項19に記載の樹脂基体の製造方法。
  21. シラン化合物を接触させる工程が湿度35%以下の無水雰囲気であることを特徴とする請求項11〜15いずれか1項記載の樹脂基体の製造方法。
  22. シラン化合物を接触させる工程がシラン化合物の溶液の接触であることを特徴とする請求項11〜15いずれか1項記載の樹脂基体の製造方法。
  23. シラン化合物を接触させる工程が金型面と導電性を有しかつ加水分解可能な樹脂層間であり少なくともシラン化合物の蒸気の接触であることを特徴とする請求項13または14記載の樹脂基体の製造方法。
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