JP4967361B2 - 樹脂基体およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、表面に加水分解可能な樹脂基板表面に加水分解可能なシラン化合物層を設け
た、樹脂基体およびその製造方法に関する。
従来、オレフィン系樹脂表面に例えば撥水性を持たすために、数々の手段が行われている。例えばポリプロピレン樹脂にシリコーン樹脂を混合する方法や、ポリプロピレン樹脂にUVやコロナ放電を照射した後にシリコーンやフルオロアルキルアルキルシランを塗布する方法や、ポリプロピレン樹脂にUVやコロナ放電を照射した後にシリカ膜を設け、アルキルシランやフルオロアルキルシランを設ける方法などがある。
特開2001−128891号公報
しかしながら、ポリプロピレン樹脂にシリコーン樹脂を混合する方法では、樹脂の力学的強度が低下する課題があった。また、ポリプロピレン樹脂にUVやコロナ放電を照射した後にシリコーンやフルオロアルキルアルキルシランを塗布する方法では、樹脂表面が柔らかいためにと膜の耐久性、特に耐摩耗性に課題があった。これを解決するため、樹脂にUVやコロナ放電を照射した後にシリカコートを設け、アルキルシランやフルオロアルキルシランを設ける方法では、樹脂とシリカコートの熱膨張の差が大きいため、シリカコートが熱破壊(密着強度低下)する課題があった。また、樹脂表面がきわめて安定なために、UVやコロナ放電を行ったとしても、表面を活性化できない場合や、仮に活性化できたとしても、時間をかけて樹脂の高分子鎖の熱運動により、活性化した表面が内部に潜み込んで、表面が再びもとに戻るため、この表面と膜の間の密着強度、安定性に課題があった。さらに樹脂成型品への適用例えば後加工が困難であった。
本発明はこの課題を解決するものであり、樹脂基板表面上に加水分解可能な樹脂層を設け、前記樹脂層の上に加水分解可能な樹脂層と化学結合し、加水分解可能なSiX(Xは加水分解可能な官能基)層を設けた樹脂基体、さらにその上に加水分解可能なSiX層と化学結合し、加水分解可能なRSiY4−n(nは1〜3の整数 Rはアルキル基、もしくはフルオロアルキル基、Yは加水分解可能な官能基)層を設けた樹脂基体およびその製造方法を発明するに至った。
本発明により、加水分解可能なシラン化合物SiX(Xは加水分解可能な官能基)層が、加水分解した(活性化した)樹脂分子と強固に化学結合することで、シラン化合物SiX層を介して樹脂分子同士を固定化し樹脂表面を安定化させる。また、この層は分子レベルの超薄膜のため、熱膨張の差による破壊も起こらない。このため表面が極めて安定化した加水分解可能なシラン化合物SiX層となる。さらに、この上にシラン化合物RSiY4−n(nは1〜3の整数 Rはアルキル基、もしくはフルオロアルキル基、Yは加水分解可能な官能基)層を設けることも可能で、これらにより、耐久性の優れた親水、撥水、撥油性樹脂基体を提供できる。また、金型を用いた樹脂成型にも適用できるので、適用範囲が広く、工業的な利用価値大である。
請求項に記載の発明は、金型面に加水分解可能な樹脂層を形成する工程と、樹脂を供給してモールド成型を行う工程と、金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、成型した樹脂の加水分解可能な樹脂層表面を加水分解する工程と、金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、少なくともシラン化合物SiX(Xは加水分解可能な官能基)を接触させる工程と、形成されたシラン化合物SiX層を加水分解する工程とを有する樹脂基体の製造方法である。
また、請求項に記載の発明は、金型面に加水分解可能な樹脂層を形成する工程と、樹脂を供給してモールド成型を行う工程と、金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、成型した樹脂の加水分解可能な樹脂層表面を加水分解する工程と、金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、少なくともシラン化合物SiX(Xは加水分解可能な官能基)を接触させる工程と、金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、形成されたシラン化合物SiX層を加水分解する工程と、金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、加水分解したシラン化合物SiX層に少なくともシラン化合物RSiY4−n(nは1〜3の整数、Rはアルキル基もしくはフルオロアルキル基、Yは加水分解可能な官能基)を接触する工程と、形成されたシラン化合物RSiY4−n層を加水分解する工程を有する樹脂基体の製造方法である。
これらの方法によって、加水分解可能な樹脂層とシロキサン結合を有する膜がシロキサン結合を介していっそう強固に共有結合し、また、加水分解可能な樹脂層と樹脂は熱膨張の差が小さいため密着力に優れるため、耐久性の優れたシロキサン結合を有する親水、撥水撥油膜が設けられた表面を有する樹脂成型品を製造できる。また、樹脂成型工程の金型内部で、加水分解可能な樹脂層表面を加水分解できるので、より簡単に本発明の樹脂基体を製造できる。さらに、成型する形状に関係なく加水分解した樹脂層表面のみにシロキサン結合を有する膜を形成でき、樹脂の他の部分に影響を及ぼすことがない。
請求項に記載の発明は、金型面に加水分解可能な樹脂フィルムを装着する工程と、樹脂を供給してフィルムインモールド成型を行う工程と、金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、成型した樹脂の加水分解可能な樹脂層表面の加水分解を行う工程と、金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、少なくともシラン化合物SiX(Xは加水分解可能な官能基)を接触させる工程と、形成されたシラン化合物SiX層を加水分解する工程とを有する樹脂基体の製造方法である。
また、請求項に記載の発明は、金型面に加水分解可能な樹脂フィルムを装着する工程と、樹脂を供給してフィルムインモールド成型を行う工程と、金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、成型した樹脂の加水分解可能な樹脂層表面の加水分解を行う工程と、金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、少なくともシラン化合物SiX(Xは加水分解可能な官能基)を接触させる工程と、金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、形成されたシラン化合物SiX層を加水分解する工程と、金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、加水分解したシラン化合物SiX層に少なくともシラン化合物RSiY4−n(nは1〜3の整数 Rはアルキル基、もしくはフルオロアルキル基 Yは加水分解可能な官能基)を接触する工程と、形成されたシラン化合物RSiY4−n層を加水分解する工程とを有する樹脂基体の製造方法である。
これらによって、金型内のみで、耐久性の優れたシロキサン結合を有する親水、撥水撥油膜が設けられた表面を有する樹脂成型品を簡単に製造できる。また、樹脂成型工程の金型内部で、加水分解可能な樹脂層表面を加水分解できるので、より簡単に本発明の樹脂基体を製造できる。さらに、成型する形状に関係なく加水分解した樹脂層表面のみにシロキサン結合を有する膜を形成でき、樹脂の他の部分に影響を及ぼすことがない。
請求項5に記載の発明は、金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、成型した樹脂の加水分解可能な樹脂層の表面の加水分解を行う工程がオゾンもしくは酸素プラズマの接触であることを特徴とする樹脂基体の製造方法である。
この方法によると、成型する形状に関係なく加水分解可能な樹脂層表面のみにオゾンもしくは酸素プラズマを接触できるので、樹脂の他の部分に影響を及ぼすことなく、加水分
解可能な樹脂層表面を加水分解できる。
請求項に記載の発明は、加水分解可能な樹脂フィルム片側表面を加水分解する工程と、加水分解した樹脂フィルム片側表面に、少なくともシラン化合物SiX(Xは加水分解可能な官能基)を接触させる工程と、形成されたシラン化合物SiX層を加水分解する工程と、金型面に加水分解されたシラン化合物SiX層が表面になるよう樹脂フィルムを装着する工程と、シラン化合物SiX 層が形成された樹脂フィルムの裏面に樹脂を供給してフィルムインモールド成型を行う工程とを有する、樹脂基体の製造方法である。ド成型を行う工程とを有する、樹脂基体の製造方法である。
また、請求項に記載の発明は、加水分解可能な樹脂フィルム片側表面を加水分解する工程と、加水分解した樹脂フィルム片側表面に、少なくともシラン化合物SiX(Xは加水分解可能な官能基)を接触させる工程と、形成されたシラン化合物SiX層を加水分解する工程と、加水分解したシラン化合物SiX層に少なくともシラン化合物RSiY4−n(nは1〜3の整数 Rはアルキル基、もしくはフルオロアルキル基 Yは加水分解可能な官能基)を接触する工程と、形成されたシラン化合物RSiY4−n層を加水分解する工程と、金型面に加水分解されたシラン化合物RSiY4−n(nは1〜3の整数 Rはアルキル基、もしくはフルオロアルキル基 Yは加水分解可能な官能基)が表面になるよう樹脂フィルムを装着する工程と、シラン化合物SiX およびR SiY 4−n 層が形成された樹脂フィルムの裏面に樹脂を供給してフィルムインモールド成型を行う工程とを有する樹脂基体の製造方法である
これらの方法によって、例えばロールコータを用いてロールツーロールで耐久性の優れたシロキサン結合を有する親水、撥水撥油膜を有する樹脂フィルムが簡単に作製できる上、そのフィルムを使って単にフィルムインモールド成型を行うので、非常に簡便かつ量産的に耐久性の優れたシロキサン結合を有する親水、撥水撥油膜が設けられた表面を有する樹脂成型品を簡単に製造できる。
請求項に記載の発明は、加水分解可能な樹脂層の表面の加水分解を行う雰囲気が湿度10%以上であることを特徴とする樹脂基体の製造方法である。
この方法によると、この方法によると、上記UV照射、コロナ放電照射、オゾンもしくは酸素プラズマ接触による加水分解可能な樹脂層の加水分解を加速できる。
請求項に記載の発明は、シラン化合物がハロゲン化シラン、アルコキシシラン、イソシアネートシランであることを特徴とする樹脂基体の製造方法である。
この方法によると、加水分解可能な樹脂層とシロキサン結合を有する膜がシロキサン結合を介して強固に共有結合し、また、加水分解可能な樹脂層と樹脂は熱膨張の差が小さいため密着力に優れるため、耐久性の優れたシロキサン結合を有する膜が設けられた樹脂基体を製造できる。
請求項10に記載の発明は、ハロゲン化シラン化合物がクロロシランであることを特徴とする樹脂基体の製造方法である。
この方法によると、クロロシランの反応性が高いので、加水分解可能な樹脂層とシロキサン結合を有する膜がシロキサン結合を介していっそう強固にかつすばやく共有結合できるので、耐久性かつ量産性に優れたシロキサン結合を有する膜が設けられた樹脂基体を製造できる。
請求項11に記載の発明は、シラン化合物を接触させる工程が湿度35%以下の無水雰囲気であることを特徴とする樹脂基体の製造方法である。
この方法によると、シラン化合物を空気中の水蒸気と反応させることなく、加水分解可能な樹脂層とシロキサン結合を有する膜がシロキサン結合を介して強固に共有結合できるので、耐久性に優れたシロキサン結合を有する膜が設けられた樹脂基体を製造できる。
請求項12の発明は、シラン化合物を接触させる工程がシラン化合物の溶液の接触であることを特徴とする樹脂基体の製造方法である。
この方法によると、成型する形状に関係なく加水分解した樹脂層表面にシロキサン結合を有する膜を形成できる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の第1、2の実施形態における樹脂基体と本発明の第9と10の実施形態における樹脂基体の製造プロセスを示す。
金型面1にアクリル樹脂溶液を塗布、乾燥してアクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル)2を50μmを形成したのち、ポリプロピレン樹脂3を供給し、モールド成型を行い、表面にアクリル樹脂層を有するポリプロピレン樹脂基板4が製造される。
この樹脂基板4表面に、172nmの波長を有するエキシマUV光5を照射することで雰囲気中の水蒸気により表面が加水分解され、水酸基が形成された樹脂基板6が製造される。
窒素雰囲気(無水)下でこの樹脂基板6にテトラクロロシラン7を含むフロリナート(3M社製)溶液に浸漬し、通常雰囲気で乾燥することで、樹脂表面の水酸基とクロロシリル基が脱塩酸反応をおこして、シロキサン結合を介して樹脂とテトラクロロシランが化学結合し、さらにこのテトラクロロシランを介して、樹脂同士が固定化する。その結果、樹脂表面に強固に固定化したテトラクロロシランの加水分解層が形成され、本発明の耐久性に優れた親水樹脂基板8が製造される。
この樹脂基板8にへプタデカフルオロデシルトリクロロシラン9を含むフロリナート(3M社製)溶液に浸漬し、通常雰囲気で乾燥することで、テトラクロロシラン加水分解層の水酸基とクロロシリル基が脱塩酸反応をおこして、シロキサン結合を介してプタデカフルオロデシル基がテトラクロロシラン加水分解層の化学結合で固定化され、本発明の耐久性に優れた撥水樹脂基体10が作製される。
なお本発明に供されるシラン化合物SiX(Xは加水分解可能な官能基)とシラン化合物RSiY4−n(nは1〜3の整数、Rはアルキル基もしくはフルオロアルキル基、Yは加水分解可能な官能基)の加水分解可能な官能基X、Yとしてはクロロシリル基を始めとするハロゲン化シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネートシリル基が有効であるが、クロロシリル基は加水分解可能な樹脂層表面にある水酸基等との反応性の高く、特に本発明の場合、高温で熱処理が困難な樹脂基板であることを考慮すると特に有効である。 また、シロキサン結合を介することにより、従来の共有結合を介したもの(例えば、スルフィド結合−S−)よりも、より強固に基板に結合するので、耐熱性、耐水性、耐電気特性等が優れる。また、撥水性を付与するRとしては、アルキル基が良く、さらに撥油性を付与し、防汚性を高める場合には、フルオロアルキル基が優れている。さらにこれらの官能基は固定化される化合物の割合(被覆率)を高めるためにも、直鎖状のものや、
n=1の構造のものがよい。この結果、シラン化合物RSiY4−n(nは1〜3の整数 Rはアルキル基、もしくはフルオロアルキル基、Yは加水分解可能な官能基)は単分子膜になり、CH3やCF3基が表面に露出し、さらに撥水、撥油、防汚性が高まる。
以上のことから、本発明に供される化合物の具体例として、シラン化合物SiX(Xは加水分解可能な官能基)場合は、以下のものが例示できる。
(1) SiCl
(2) Si(OC
(3) Si(NCO)
なお、一般式、XSiO−(SiXO)−X(ただし、nは1以上の自然数、m、lは自然数、kは0もしくは1でXはハロゲン基、アルコキシ基、イソシアネート基)に対応する以下の化合物も適用可能である。
(4) SiCl−O−SiCl
(5) SiCl−O−SiCl−O−SiCl
(6) Si(OCH−O−Si(OCH
(7) Si(OC−O−Si(OCH
(8) Si(OC−O−Si(OC
(9) Si(NCO)−O−Si(NCO)
撥水、撥油、防汚を付与するシラン化合物RSiY4−n(nは1〜3の整数 Rはアルキル基、もしくはフルオロアルキル基、Yは加水分解可能な官能基)場合は、以下のものが例示できる。
(10) CH(CHO(CHSiZqCl3−q
(11) CH(CH−Si(CH(CH−SiZCl3−q
(12) CFCOO(CHSiZCl3−q
ただし、pは1〜3の整数、qは0〜2の整数、rは1〜25の整数、sは0〜12の整数、tは1〜20の整数、uは0〜12の整数、vは1〜20の整数、wは1〜25の整数を示す。また、Yは、水素、アルキル基、アルコキシル基、含フッ素アルキル基または含フッ素アルコキシ基である。
さらに、具体的なシラン系化合物として下記に示す(15)−(21)が挙げられる。
(13) CHCHO(CH15SiCl
(14) CH(CHSi(CH(CH15SiCl
(15) CH(CHSi(CH(CHSiCl
(16) CHCOO(CH15SiCl
(17) CF(CF−(CH−SiCl
(18) CF(CF−(CH−SiCl
(19) CF(CF−C−SiCl
(20) (CF−SiCl
(21) (CF−SiCl
また、上記クロロシラン系化合物の代わりに、全てのクロロシリル基をイソシアネート基に置き扱えたイソシアネート系化合物、例えば下記に示す(22)−(26)を用いてもよい。
(22) CH−(CHSiZ(NCO)3−p
(23) CH(CHO(CHSiZ(NCO)q−P
(24) CH(CH−Si(CH(CH−SiZ(NCO)
3−q
(25) CFCOO(CHSiZ(NCO)3−q
但し、p、q、r、s、t、u、v、wおよびXは、前記と同様である。
前記のシラン系化合物に変えて、下記(27)−(33)に具体的に例示するシラン系化合物を用いてもよい。
(26) CHCHO(CH15Si(NCO)
(27) CH(CHSi(CH(CH2)15Si(NCO)
(28) CH(CHSi(CH(CH2)Si(NCO)
(29) CHCOO(CH15Si(NCO)
(30) CF(CF−(CH−Si(NCO)
(31) CF(CF−(CH−Si(NCO)
(32) CF(CF−C−Si(NCO)
(33) (CF−Si(NCO)
(34) (CF−SiNCO
また、シラン系化合物として、一般に、SiZ(OA)4−k(Zは、前記と同様、Aはアルキル基、kは0、1、2または3)で表される物質を用いることが可能である。中でも、CF−(CF−(R)−SiY(OA)3−q(nは1以上の整数、好ましくは1〜22の整数、Rはアルキル基、ビニル基、エチニル基、アリール基、シリコンもしくは酸素原子を含む置換基、lは0または1、Z、Aおよびqは前記と同様)で表される物質を用いると、よりすぐれた防汚性の被膜を形成できるが、これに限定されるものではなく、これ以外にも、 CH−(CH−SiZ(OA)3−qおよびCH−(CH−0−(CH−SiZ(OA)3−q、CH−(CH2)−Si(CH−(CH−SiZ(OA)3−q、CFCOO−(CH−SiZ(OA)3−q(但し、q、r、s、t、u、v、w、YおよびAは、前記と同様)などが使用可能である。
さらに、より具体的なシラン系化合物としては、下記に示す(34)−(57)を挙げることができる。
(35) CHCHO(CH15Si(OCH
(36) CFCHO(CH15Si(OCH
(37) CH(CHSi(CH(CH15Si(OCH
(38) CH(CHSi(CH(CHSi(OCH3)
(39) CHCOO(CH15Si(OCH
(40) CF(CF(CHSi(OCH
(41) CF(CF−C−Si(OCH
(42) CHCHO(CH15Si(OC
(43) CH(CHSi(CH(CH15Si(OC
(44) CH(CHSi(CH(CHSi(OC
(45) CF(CHSi(CH(CHSi(OC
(46) CHCOO(CH15Si(OC
(47) CFCOO(CH15Si(OC
(48) CFCOO(CH15Si(OCH
(49) CF(CF(CHSi(OC
(50) CF(CF2)(CH2)Si(OC
(51) CF(CF2)(CH2)Si(OC
(52) CF(CFSi(OC
(53) CF(CF(CH)2Si(OCH
(54) CF(CF(CHSi(OCH
(55) CF(CF(CHSiCH(OC
(56) CF(CF(CHSiCH(OCH
(57) CF(CF(CHSi(CHOC
(58) CF(CF(CHSi(CHOCH
なお、(2)−(3)、(6)−(9)、(22)−(58)の化合物を用いた場合には、塩酸が発生しないため、装置保全および作業上のメリットもある。

なお、図1のシラン化合物を浸漬する工程に示す最初の反応ステップ(脱塩化水素反応)は、一般に化学吸着反応と呼ばれている。
またシラン化合物を接触させる雰囲気として、シラン化合物と雰囲気中の水蒸気との反応を抑えるためにも、雰囲気湿度が35%以下、さらに望ましくは不活性ガス雰囲気下、無水雰囲気下等が望ましい。
次に溶媒としては、水を含まない非水系溶媒を用いるのが好ましく、水を含まない炭化水素系溶媒、フッ化炭素系溶媒、シリコーン系、アルコール系溶媒などを用いることが可能である。なお、石油系の溶剤の他に具体的に使用可能なものは、石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、灯油、リグロイン、ジメチルミリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエステルシリコーンなどを挙げることができる。ただしこれらの溶媒は樹脂を侵す可能性があるので、フッ化炭素系溶媒が最も好ましい。フッ化炭素系溶媒には、フロン系溶媒や、フロリナート(3M社製品)、アフルード(旭ガラス社製品)などがある。なお、これらは1種単独で用いてもよいし、よく混合するものなら2種以上を組み合わせてもよい。
また、シラン化合物を接触させる方法として、その蒸気を接触させたり、その溶液に浸漬させる方法の他、スプレー等が形状によらないため有効である。また、フィルム状のものに塗布する場合、スピナー、ロールコータなどが薬液の使用効率の観点から特に優れる。
また、加水分解可能な樹脂として、一般にポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)、エポキシ樹脂などが適用できるが、特にシロキサン結合を有する膜が結合する表面樹脂層が硬い樹脂ほど、耐久性特に耐摩耗性が大幅に向上するので、アクリル樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチルなど)シリコーン樹脂、およびこれらの共重合体、もしくはポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、およびこれらの共重合体が好ましい。さらに上記のうち熱硬化性樹脂と類される樹脂およびこれらの変性樹脂の場合、耐熱性が向上する。
また基板の樹脂としては、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリスチレン樹脂(PP)、アクリロニトリルスチレン共重合体(AS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂や上記熱硬化性樹脂およびこれらの変性樹脂などが適用できるがこれらに限定されることはない。特に本発明では従来の方法ではきわめて困難であったポリオレフィン系樹脂上へのシロキサン結合を有する膜を形成するのが可能である。
またこれらの形態だが、特に平面形状に限定されることはなく、処理可能であれば、樹脂成型品などの曲面形態でもかまわない。
また、樹脂表面の加水分解の手段としては、酸、アルカリによるWETプロセスでもかまわないが、樹脂の吸水による変形等を考えると、DRYプロセスがよい。樹脂表面が平板の場合は、UV処理やコロナ放電処理などが優れる。このUV処理では波長としては400nm以下のUV光が有効であるが、特に200nm以下の真空紫外域では、強力なオゾンが発生すること、樹脂内部までUVが到達しないので樹脂を光劣化させることがない。また樹脂が形状品の場合、オゾン処理や酸素プラズマ処理が有効である。
(実施例1)
金型面にアクリル樹脂溶液を塗布、乾燥してアクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル)を50μmを形成したのち、ポリプロピレン樹脂を供給し、モールド成型を行い、表面にアクリル樹脂層を有するポリプロピレン樹脂基板が製造される。
この樹脂基板表面に、172nmの波長を有するエキシマUV光を照射することで雰囲気中の水蒸気により表面が加水分解され、水酸基が形成された樹脂基板が製造される。
窒素雰囲気(無水)下でこの樹脂基板にテトラクロロシランを含むフロリナート(3M社製)溶液に浸漬し、通常雰囲気で乾燥することで、樹脂表面の水酸基とクロロシリル基が脱塩酸反応をおこして、シロキサン結合を介して樹脂とテトラクロロシランが化学結合し、さらにこのテトラクロロシランを介して、樹脂同士が固定化する。その結果、樹脂表面に強固に固定化したテトラクロロシランの加水分解層が形成され、本発明の耐久性に優れた親水樹脂基板が製造される。
この樹脂基板にへプタデカフルオロデシルトリクロロシランを含むフロリナート(3M社製)溶液に浸漬し、通常雰囲気で乾燥することで、テトラクロロシラン加水分解層の水酸基とクロロシリル基が脱塩酸反応をおこして、シロキサン結合を介してプタデカフルオロデシル基がテトラクロロシラン加水分解層の化学結合で固定化され、本発明の耐久性に優れた撥水樹脂基体Aが作製される。
(比較例1)
実施例1のアクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル)を50μm形成しなかったことを除いて、実施例1と同様に樹脂基体R1を作製した。
(比較例2)
実施例1のポリプロピレン樹脂に代わり、ポリエチレンテレフタレート樹脂を使用し、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル)を50μm形成しなかったことを除いて、実施例1と同様に樹脂基体R2を作製した。
(撥水、撥油性の比較)
樹脂基体A、R1、R2の接触角はそれぞれ、108°、93°、104°であり、また、油性マジックで文字を書き、ワイパーでこすったところ、Aは消え、R1はまったく消えず、R2はやや消えたことより、程度には差があるもののAおよびR2にはへプタデカフルオロデシル基を含むシロキサン結合を有する膜が形成されたのに対し、R1は樹脂表面に水酸基が形成されなかったことによってこの膜が形成されなかったことがわかる。したがって本発明の効果が実証され、特にポリプロピレンをはじめとするポリオレフフィン系樹脂には絶大な効果があることがわかる。
(比較例3)
実施例1の172nmの波長を有するエキシマUV光を照射しなかったことを除いて、
実施例1と同様に樹脂基板R3を作製した。
(撥水、撥油性の比較)
樹脂基体A、R3の接触角はそれぞれ、108°、64°であり、また、油性マジックで文字を書き、ワイパーでこすったところ、Aは消え、Bはまったく消えず、Aはヘプタデカフルオロデシル基を含むシロキサン結合を有する膜が形成されたのに対し、R3はこの膜が形成されなかったことがわかる。これは、R3樹脂表面に水酸基が形成されなかったことに起因するヘプタデカフルオロデシル基を含むシロキサン結合を有する膜が形成されなかったためである。
なお、本発明はエキシマUV以外のUVや、コロナ放電照射の場合にも樹脂基体Aのような効果が認められた。
(比較例4)
実施例1の、テトラクロロシランを含むフロリナート(3M社製)溶液の代わりに、市販のシリカゾル溶液を用い、実施例1と同様に樹脂基体R4を作製した。
(比較例5)
実施例1の、テトラクロロシランを含むフロリナート(3M社製)溶液に浸漬しないこと以外は、実施例1と同様に樹脂基体R5を作製した。
(撥水、撥油性とその耐久性能の比較)
樹脂基体A、R4、R5の水の接触角はそれぞれ、108°、103°、92°であった。R5の水の接触角が低いのは、樹脂表面の少ない水酸基にへプタデカフルオロデシルトリクロロシランが固定化されているためである。
これらの樹脂基体を80℃雰囲気下で10時間放置後、表面を観察したところ、樹脂基体AおよびR5には異常が見られなかったものの、樹脂基体R4にはシリカ膜にクラックが見られた。この状態で油性マジックを用いて文字を書き、ワイパーでこすったところ、Aは消えたものの、R4、R5は消えず、R4は形成したシリカ膜が剥離していた。これは、Aは樹脂表面の水酸基を介してテトラクロロシランと樹脂表面が強固に架橋(化学結合)し樹脂表面が安定化するとともに、加水分解して多くの水酸基を持つこのテトラクロロシランがへプタデカフルオロデシルトリクロロシランとも強固に化学結合しているためである。これに対し、R4は樹脂表面とシリカ膜は強固に結合せず、熱膨張係数に起因するシリカ膜の内部応力によりシリカ膜が剥離するためである。またR5は樹脂表面が熱により分子運動をおこして表面が不安定化し、表面に固定化したへプタデカフルオロデシルトリクロロシランが破壊されたためと考えられる。したがって、本発明の樹脂基板は撥水、撥油性とその耐久性に極めて優れていることがわかる。
(実施例2)
実施例1のへプタデカフルオロデシルトリクロロシランに代わり、デシルトリクロロシランを用いたことを除いて、実施例1と同様に樹脂基体Bを作製した。
(撥水、撥油性の比較)
樹脂基体A,Bの接触角は108°107°でほとんど変わらないにもかかわらず、油性マジックで文字を書き、ワイパーでこすったところ、Aは消え、Bはまったく消えなかった。これはA表面は撥水撥油性が付与されたのに対し、Bは、撥水親油性が付与されたためである。
(実施例3)
実施例1のへプタデカフルオロデシルトリクロロシランに代わり、(へプタデカフルオロデシル)ジクロロシランを用いたことを除いて、実施例1と同様に樹脂基体Cを作製した。
(撥水、撥油性の比較)
樹脂基体A,Cの接触角は108°92°であった。油性マジックで文字を書いたところ、Aははじいて書けないのに対し、Cははじかず書けた。一方ワイパーでこすったところ、Aは消えやすいのに対し、Cは消えにくかった。これはジ(へプタデカフルオロデシル)ジクロロシランが、かさ高な分子のため表面を被覆しないためと考えられ、実施例3の手段により撥水撥油性をコントロールできるとともに、より撥水撥油性を付与したい場合は、本発明の実施例1の手段が優れることがわかる。
(実施例4)
実施例1のへプタデカフルオロデシルトリクロロシランを含むフロリナート(3M社製)溶液に浸漬後に、基板をフロリナートで洗浄し、過剰なへプタデカフルオロデシルトリクロロシランを取り除いたこと以外は、実施例1と同様に樹脂基体Dを作製した。
(撥水、撥油性の比較)
樹脂基体A,Dの接触角は108°112°であった。油性マジックで文字を書いたところ、Aははじいて書けないのに対し、Dはまったくかけなかった。これはDのへプタデカフルオロデシルトリクロロシランが単分子膜になっており、表面にCF3基が露出しているためと考えられる。
(実施例5)
実施例1の表面鉛筆硬度3Hアクリル樹脂に代わり、表面鉛筆硬度Hのアクリル樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様に樹脂基体Eを作製した。
(比較例6)
実施例1の表面鉛筆硬度3Hアクリル樹脂に代わり、表面鉛筆硬度Bのアクリル樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様に樹脂基体R6を作製した。
(撥水、撥油性と耐久性)
樹脂基体A、E、R6の水の接触角は108°、105°、105°であった。この後、10g/cm2の荷重をかけ、水をしみこませたふきんで1000往復こすると、樹脂基体A,E、R6の水の接触角は105°103°、52°であった。表面を観察したところ、R6には表面に削り傷がみられた。このことより、樹脂表面の硬度が硬いほど、表面が削られにくいので、その上の膜の耐久性が優れることがわかり、鉛筆硬度でH以上では実用的であるといえる。
(実施例6)
実施例1のアクリル樹脂に変わりPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様に樹脂基体Fを作製した。
(比較例7)
実施例1のアクリル樹脂に変わりポリプロピレン樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様に樹脂基体R7を作製した。
(撥水、撥油性と耐久性)
樹脂基体A、F、R7の水の接触角は108°、111°、90°であった。この状態で油性マジックを用いて文字を書き、ワイパーでこすったところ、A、Fは消えたものの
、R7は消えなかった。また、樹脂基体を50℃雰囲気下で100時間放置後、A、F,RDの水の接触角を測定したところ、102°、111°、75°であった。これはアクリル、PET樹脂に比べ、ポリプロピレン樹脂は、加水分解しないために水酸基の生成がほとんどなく、そのためテトラクロロシランによる架橋(化学結合)せず、表面安定化しない。また、へプタデカフルオロデシルトリクロロシランも化学結合しないためと考えられる。また、AがFに比べて耐熱性が優れるのは、Fが熱硬化性樹脂であるためと考えら得る。
発明者は他の種々の樹脂について調べたところ、加水分解が困難なポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂やAS(アクリロニトリル・スチレン共重合体)やABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)などのポリスチレン系樹脂がポリプロピレンと同様、撥水撥油性維持の性能がよくないことがわかった。一方、加水分解可能な樹脂でも、シリコーン、アクリルシリコン共重合体、ポリイミド、ポリアミド、ポリスチレンではアクリル樹脂と同様に極めて優れた撥水撥油維持の性能を示すことがわかった。また、熱硬化性樹脂を用いると耐熱性が優れることがわかった。これ以外の加水分解可能な樹脂、例えばPC(ポリカーボーネート)などは、アクリルとポリプロピレンの間の撥水撥油維持性能を示した。
(実施例7)
実施例1のテトラクロロシランに代わり、テトラエトキシシランを用いたことをのぞいて、実施例1と同様に樹脂基板Gを作製した。
(実施例8)
実施例1のへプタデカフルオロデシルトリクロロシランに代わり、へプタデカフルオロデシルトリエトキシシランを用いたことを除いて、実施例1と同様に樹脂基板Hを作製した。
(撥水、撥油性とその耐久性能の比較)
樹脂基体A、G、Hの水の接触角は108°、101°、94°であった。この後、10g/cm2の荷重をかけ、水をしみこませたふきんで1000往復こすると、樹脂基体A,G、Hの水の接触角は105°97°、79°であった。このことより、クロロシランのほうが、アルコキシシランよりも強固に表面に化学結合を形成し、本発明の樹脂基板の耐久性を向上させえることがわかる。
(比較例8)
実施例1の樹脂基板を窒素雰囲気(無水)下でヘプタデカフルオロデシルトリクロロシランを含むフロリナート(3M社製)溶液に浸漬するかわりに、湿度20、35、40%で行い、実施例1と同様に樹脂基板R8(20)、R8(35)、R8(40)を作製した。
(撥水、撥油性の比較)
樹脂基体A、R8(20)、R8(35)、R8(40)の接触角は108°、106°104°、82°であった。また、A、R8(20)、R8(35)は消え、R8(40)はまったく消えなかったことから、A、R8(20)、R8(35)はヘプタデカフルオロデシル基を含むシロキサン結合を有する膜が形成されたのに対し、R8(40)はこの膜が形成されなかったことがわかる。これは、R8(40)は雰囲気の水蒸気とへプタデカフルオロデシルトリクロロシランが反応し、ヘプタデカフルオロデシル基を含むシロキサン結合を有する膜が形成されなかったためである。
(実施例9)
図2に示すように金型面11にアクリル樹脂シート(100μm)12をセットし、これを金型面11上でシートに成型される金型13でプレス成型する。この後、金型を13から14にかえ、ポリプロピレン樹脂15を供給して、フィルムインモールド成型を行い、表面にアクリル樹脂層を有するポリプロピレン樹脂基板16とした後、この樹脂基板16表面に、172nmの波長を有するエキシマUV光17を照射し、表面水酸基が形成された樹脂基板18が製造される。さらに、この樹脂基板18を窒素雰囲気(無水)下でテトラクロロシラン19を含むフロリナート(3M社製)溶液に浸漬し、通常雰囲気で乾燥することで、本発明の親水樹脂基板20が作製される。さらにこの樹脂基板20を窒素雰囲気(無水)下でヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン21を含むフロリナート(3M社製)溶液に浸漬し、通常雰囲気で乾燥することで、本発明の樹脂基体Iが作製される。
(実施例10)
実施例1の、172nmの波長を有するエキシマUV光を照射することに代わり、酸素プラズマ処理を行い、同様な本発明の樹脂基体Jを作製した。
(作製の簡便性)
樹脂基体A,I、Jの接触角は108°109°107°でほとんど変わらないにもかかわらず、この方法により本発明の樹脂基体Aよりも、簡便な方法で同様な性能をもつ樹脂基体IおよびJが作製される。
(実施例11)
図3に示すように金型面31にアクリル樹脂シート(100μm)32をセットし、これを金型面31上でシートに成型される金型33でプレス成型する。この後、金型を33から34にかえ、ポリプロピレン樹脂35を供給して、フィルムインモールド成型を行い、表面にアクリル樹脂層を有するポリプロピレン樹脂基板36とした後、さらに金型面31の導入孔37よりオゾンと水蒸気38を導入し、この樹脂基板表面に接触させ、表面水酸基が形成された樹脂基板39が製造される。さらに、この樹脂基板39を窒素雰囲気(無水)下でテトラクロロシラン40を含むフロリナート(3M社製)溶液に浸漬し、通常雰囲気で乾燥することで、本発明の樹脂親水性基体41が作製される。さらに、この樹脂基板41を窒素雰囲気(無水)下でヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン42を含むフロリナート(3M社製)溶液に浸漬し、通常雰囲気で乾燥することで、本発明の樹脂親水性基体Kが作製される。
(作製の簡便性)
樹脂基体I、Kの接触角は109゜、105°でほとんど変わらないにもかかわらず、この方法により本発明の樹脂基体Iよりも、さらに簡便な方法で同様な性能をもつ樹脂基体Eが作製される。
(実施例12)
図4に示すように金型面51にアクリル樹脂シート(100μm)52をセットし、これを金型面51上でシートに成型される金型53でプレス成型する。この後、金型を53から54にかえ、ポリプロピレン樹脂55を供給して、フィルムインモールド成型を行い、表面にアクリル樹脂層を有するポリプロピレン樹脂基板56とした後、さらに金型面51の導入孔57よりオゾンと水蒸気58を導入し、この樹脂基板56表面に接触させ、表面水酸基が形成された樹脂基板59が製造される。さらに、導入孔57よりテトラクロロシラン蒸気60を導入し、本発明の親水性樹脂基体61が作製される。さらに、いったん通常雰囲気で乾燥した後、導入孔57よりヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン蒸気62を導入し、本発明の樹脂基体Lが作製される。
(作製の簡便性)
樹脂基体K、Lの接触角は105°、100゜でほとんど変わらないにもかかわらず、この方法により本発明の樹脂基体Eよりも、さらに簡便な方法で同様な性能をもつ樹脂基体Fが作製される。
(実施例13)
図5に示すようにアクリル樹脂シート(100μm)71に172nmの波長を有するエキシマUV光72を照射し、表面水酸基が形成したアクリル樹脂シート73を製造する。このアクリル樹脂シート73を窒素雰囲気(無水)下でテトラクロロシラン74を含むフロリナート(3M社製)溶液に浸漬し、通常雰囲気で乾燥することで、親水性アクリル樹脂シート75が形成される。このアクリル樹脂シート75を窒素雰囲気(無水)下でヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン76を含むフロリナート(3M社製)溶液に浸漬し、通常雰囲気で乾燥することで、撥水性のシロキサン結合を有する膜を有するアクリル樹脂シート77が形成される。さらに金型面78にこのアクリル樹脂シート77をセットし、これを金型79でプレス成型する。この後、金型を79から80にかえ、ポリプロピレン樹脂81を供給して、フィルムインモールド成型を行い、本発明の樹脂基体Mが作製される。
(作製の簡便性)
樹脂基体のI、Mの接触角は109°、106°でほとんど変わらないのにもかかわらず、Mはアクリル樹脂をシート状でシロキサン結合を有する膜を形成できるので、本発明の樹脂基体Iよりも、さらに簡便な方法で同様な性能をもつ樹脂基体Mが作製される。
本発明により、加水分解可能な樹脂層とシロキサン結合を有する膜が強固に結合し、また、加水分解可能な樹脂層と樹脂基板は熱膨張の差が小さいため密着力に優れるため、耐久性の優れた撥水、撥油性樹脂基体を提供できる。また、金型を用いた樹脂成型にも適用できるので、適用範囲が広く、工業的な利用価値大である。
本発明の樹脂基体の製造プロセスを示す工程図 フィルムインモールド法を用いた樹脂基体の製造プロセスを示す工程図 金型内で表面加水分解が行われる樹脂基体の製造プロセスを示す工程図 金型内のみで行われる樹脂基体の製造プロセスを示す工程図 シロキサン膜を設けたシートとのフィルムインモールド法を用いた樹脂基体の製造プロセスを示す工程図
2 アクリル樹脂
12,32,52,71 アクリル樹脂シート
3,15,35,55,81 ポリプロピレン樹脂
7,19,40,66,74 テトラクロロシラン
9,21,42,62,76 ヘプタデカフロオロデシルトリクロロシラン
8,20,41 親水樹脂基体
10,I,K,L,M 撥水、撥油樹脂基体

Claims (12)

  1. 金型面に加水分解可能な樹脂層を形成する工程と、樹脂を供給してモールド成型を行う工程と、金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、成型した樹脂の加水分解可能な樹脂層表面を加水分解する工程と、金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、少なくともシラン化合物SiX(Xは加水分解可能な官能基)を接触させる工程と、形成されたシラン化合物SiX層を加水分解する工程とを有する樹脂基体の製造方法。
  2. 金型面に加水分解可能な樹脂層を形成する工程と、樹脂を供給してモールド成型を行う工程と、金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、成型した樹脂の加水分解可能な樹脂層表面を加水分解する工程と、金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、少なくともシラン化合物SiX(Xは加水分解可能な官能基)を接触させる工程と、金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、形成されたシラン化合物SiX層を加水分解する工程と、金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、加水分解したシラン化合物SiX層に少なくともシラン化合物RSiY4−n(nは1〜3の整数、Rはアルキル基もしくはフルオロアルキル基、Yは加水分解可能な官能基)を接触する工程と、形成されたシラン化合物RSiY4−n層を加水分解する工程を有する樹脂基体の製造方法。
  3. 金型面に加水分解可能な樹脂フィルムを装着する工程と、樹脂を供給してフィルムインモールド成型を行う工程と、金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、成型した樹脂の加水分解可能な樹脂層表面の加水分解を行う工程と、金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、少なくともシラン化合物SiX(Xは加水分解可能な官能基)を接触させる工程と、形成されたシラン化合物SiX層を加水分解する工程とを有する樹脂基体の製造方法。
  4. 金型面に加水分解可能な樹脂フィルムを装着する工程と、樹脂を供給してフィルムインモールド成型を行う工程と、金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、成型した樹脂の加水分解可能な樹脂層表面の加水分解を行う工程と、金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、少なくともシラン化合物SiX(Xは加水分解可能な官能基)を接触させる工程と、金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、形成されたシラン化合物SiX層を加水分解する工程と、金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、加水分解したシラン化合物SiX層に少なくともシラン化合物RSiY4−n(nは1〜3の整数 Rはアルキル基、
    もしくはフルオロアルキル基 Yは加水分解可能な官能基)を接触する工程と、形成されたシラン化合物RSiY4−n層を加水分解する工程とを有する樹脂基体の製造方法。
  5. 金型面と加水分解可能な樹脂層の隙間で、成型した樹脂の加水分解可能な樹脂層表面の加水分解を行う工程がオゾンもしくは酸素プラズマの接触であることを特徴とする請求項4のいずれか1項に記載の樹脂基体の製造方法。
  6. 加水分解可能な樹脂フィルム片側表面を加水分解する工程と、加水分解した樹脂フィルム片側表面に、少なくともシラン化合物SiX(Xは加水分解可能な官能基)を接触させる工程と、形成されたシラン化合物SiX層を加水分解する工程と、金型面に加水分解されたシラン化合物SiX層が表面になるよう樹脂フィルムを装着する工程と、シラン化合物SiX 層が形成された樹脂フィルムの裏面に樹脂を供給してフィルムインモールド成型を行う工程とを有する樹脂基体の製造方法。
  7. 加水分解可能な樹脂フィルム片側表面を加水分解する工程と、加水分解した樹脂フィルム片側表面に、少なくともシラン化合物SiX(Xは加水分解可能な官能基)を接触させる工程と、形成されたシラン化合物SiX層を加水分解する工程と、加水分解したシラン化合物SiX層に少なくともシラン化合物RSiY4−n(nは1〜3の整数 Rはアルキル基、もしくはフルオロアルキル基 Yは加水分解可能な官能基)を接触する工程と、形成されたシラン化合物RSiY4−n層を加水分解する工程と、金型面に加水分解されたシラン化合物RSiY4−n(nは1〜3の整数 Rはアルキル基、もしくはフルオロアルキル基 Yは加水分解可能な官能基)が表面になるよう樹脂フィルムを装着する工程と、シラン化合物SiX およびR SiY 4−n 層が形成された樹脂フィルムの裏面に樹脂を供給してフィルムインモールド成型を行う工程とを有する樹脂基体の製造方法。
  8. 加水分解可能な樹脂層の表面の加水分解を行う雰囲気が湿度10%以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂基体の製造方法。
  9. シラン化合物がハロゲン化シラン、アルコキシシラン、イソシアネートシランであることを特徴とする請求項7のいずれか1項に記載の樹脂基体の製造方法。
  10. ハロゲン化シラン化合物がクロロシランであることを特徴とする請求項に記載の樹脂基体の製造方法。
  11. シラン化合物を接触させる工程が湿度35%以下の無水雰囲気であることを特徴とする請求項7のいずれか1項に記載の樹脂基体の製造方法。
  12. シラン化合物を接触させる工程がシラン化合物の溶液の接触であることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の樹脂基体の製造方法。
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