JP3890842B2 - 樹脂成形体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低表面自由エネルギー層を有し、防汚性に優れた便座部品、局部洗浄便座部品、水周りにて使用される部材等の熱可塑性樹脂成形体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、便座シート、便蓋、本体ケース等の便座あるいは洗浄ノズル等を備える局部洗浄便座の部品は、一般に、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下、ABS樹脂と略する)もしくはポリプロピレン樹脂(以下、PP樹脂と略する)等の熱可塑性樹脂成形品で主に構成されている。
【0003】
この便座シート、便座底板、便蓋、本体ケース等の便座の露出構成部品は皮膚に直接接する部分が多く、その衛生面には配慮が払われ、多くの工夫が実用化されてきた。たとえば暖房便座部材に防汚性と抗菌性を兼ね備える場合特開平9−56642号に記載されているように、便座などをシリコ−ンレジンを分散した樹脂体とすることで表面エネルギ−を低下させ撥水性などの防汚性能を向上させ、さらに抗菌剤を分散することで抗菌性を付与させている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の便座あるい局部洗浄便座の場合、男性が小便をする場合は主として便座シートを上げた状態で使用するため、便座シートの裏面や、局部洗浄便座の本体ケースの前面部に小便がかかることがある。大便をする場合は、便器内に落下した大便が便器トラップ内の水を跳ね返し、便座シートの裏面に汚物や水が付着する場合がある。また、使用時に皮膚の触れる便座シートの表面や便蓋についても、皮脂等の皮膚の汚れ等が付着する。
【0005】
便座シート、便蓋、本体ケース等便座あるいは局部洗浄便座の露出構成部品に使用される上記ABS樹脂は比較的その表面自由エネルギーが大きい。そのため、汚れが強固に付着しやすく汚れの除去が難しいという欠点を持っている。
【0006】
また、付着した汚れを除去するため洗剤で便座の各部材表面を清掃することが行われるが、ABS樹脂は耐洗剤性に劣り、洗剤に繰り返し晒されるとソルベントクラックが発生する場合があった。
【0007】
PP樹脂は、ABS樹脂に比べ表面自由エネルギーが低いが、不十分であり、水垢等の強力に固着した汚れは、除去が困難であり、より低表面自由エネルギーを有する表面が望まれていた。
【0008】
即ち、PPは、水垢等の付着汚れは、ABSに比較して除去しやすいものの、浸透性の汚れ、例えばうがい薬、ヨーチン等の汚れが浸透しやすく、一度浸透した場合には汚れの除去が非常に困難である。
【0009】
前記のように便座あるいは局部洗浄便座部品は、日常使用するにあたって、汚れ易い、汚れの回復性が悪い等の状況がある。しかし汚れ成分の組成、樹脂成形体が汚れるメカニズムは複雑であり、十分な解明はなされていない。一般的には、人体に由来する油脂やタンパク質、油脂分を含んだ大便、尿等の水溶性成分や尿中に含まれるミネラル分による尿石、水道水や大便器トラップ内から跳ね返った水中に含まれるミネラル分による水垢、ほこり類等が挙げらる。またこれらの汚れを栄養源として菌、カビ汚れ等が発生する。これらの汚れは、発生初期の付着力はいずれも大きくなく、除去は比較的容易である。
【0010】
しかし、長期的な使用や、汚れが乾燥するにしたがい、汚れ自体の凝集力の増加、汚れ成分の変性等により、複合化の進んだ強固な汚れとなり、基材への密着力が高まり、除去の困難な汚れとなっている。その状態は以下のように区分できる。
1)樹脂成形体の表面の凹凸の中に埋まった状態。
2)樹脂成形体の表面分子と汚れの分子の分子間引力による状態
3)樹脂成形体の表面分子と汚れの分子が化学結合した状態
4)樹脂成形体の内部に汚れが浸透または拡散した状態
5)樹脂成形体の帯電によって静電気的に付着した状態
6)汚れ成分の粘着成分によって付着した状態。
【0011】
一方、生活環境中では、汚れが全く付かないという状態を作り出す事は難しく、汚れが付き難く、汚れが付いた場合は付いた汚れが取れ易い、掃除がしやすい、と言った事が重要である。
【0012】
このような強固な汚れの付着力には、汚れ成分と基材表面との濡れ性が深く関与しており、濡れ性が悪いほど、汚れの付着力は小さくなる。汚れの付着力を低減させるには、基材の表面自由エネルギーを低下させ、汚れ、もしくは汚れを含む液体の濡れ性を低下させることが効果的である。
【0013】
一般に個体表面での液体による濡れにはYoungの式が成立する。
γS=γSL+γLcosθ
γS:個体の表面自由エネルギー
γSL:液体固体間の表面自由エネルギー
γL:液体の表面自由エネルギー
θ:液体の固体に対する接触角
濡れ性はこのθの大きさによって定義され、θが大きいほど濡れ性は悪く、θが小さいほど濡れ性は良い。さらに、基材への液体の付着仕事Waは次式で表される。
Wa=γS+γL-γSL
Wa=γL(1+cosθ)
この付着仕事は汚れを基材から引き離す仕事に相当し、θが大きく濡れ性が悪いほど付着仕事は小さな値(付着力小)となる。従って、基材の表面自由エネルギーを低くし、汚れまたは汚れを含む液体の接触角を増大させることにより、汚れの基材への付着力を低減させることができる。
【0014】
上記より樹脂成形体の付着汚れの易除去性を確保するには一般的に以下の方法が効果的であると考えられる。
【0015】
(1)樹脂成形体に表面自由エネルギーの小さい物質、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等を配合し、表面自由エネルギーを低下させることにより、汚れの表面への付着力を低減させる。
【0016】
(2)樹脂成形体表面の静電気に由来する汚れを防止するため帯電防止剤を添加する。
【0017】
しかし上記の(1)表面自由エネルギーの小さい樹脂を配合する方法においては、表面自由エネルギーの小さい樹脂を配合しても、成形体内部にその多くが存在し、表面に露出し、表面特性に寄与できる表面自由エネルギーの小さい樹脂の割合は限られていて、表面自由エネルギーを低下させる為には多量の添加が必要である。さらに表面自由エネルギーの大きい樹脂が基材樹脂の場合には、汚れの表面への付着力を低減させるためには、表面自由エネルギーの小さい樹脂をより多量に配合しなければならない問題があった。
【0018】
また、(2)(帯電防止剤の添加)の方法については静電気に影響されるほこりなど以外の汚れに対する防止効果が少なくしかもその効果が持続しないという問題があった。
【0019】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、乾燥固化した汚れの付着力が小さい表面を有する熱可塑性樹脂成形体、特に熱可塑性樹脂成形体の中でも便座部品、局部洗浄便座部品、水周りにて使用される部材等の熱可塑性樹脂成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた請求項1記載の発明は、熱可塑性樹脂成形体において、基材樹脂の表面に、前記基材樹脂の射出成形時において前記射出成形の成形型の表面からシリコーンレジンを転写することによって、0.02〜10.00μmの薄厚の低表面自由エネルギー層を形成し、基材樹脂表面に比べて低い10dyne/cm以上28dyne/cm未満の表面自由エネルギーを有する表面としたことを特徴とする。
【0021】
本発明においては、表面に0.02〜10.00μmの薄厚で、且つ10dyne/cm以上28dyne/cm未満の低表面自由エネルギー層を形成したことにより、乾燥固化した汚れの付着力が小さい表面を有する熱可塑性樹脂成形体を提供できる。
【0022】
上記目的を達成するためになされた請求項2記載の発明は、便座シート、便蓋等の便座の構成部品の少なくとも一部品が、表面に低表面自由エネルギー高分子による低表面自由エネルギー層を形成することにより、表面を基材樹脂に比べて低い表面自由エネルギーを有する表面としたことを特徴とする。
【0023】
本発明においては、表面に低表面自由エネルギー層を形成したことにより、乾燥固化した汚れの付着力が小さい表面を有する便座部品を提供できる。
【0024】
上記目的を達成するためになされた請求項3記載の発明は、便座シート、便蓋、本体ケース等の局部洗浄便座の構成部品の少なくとも一部品が、表面に低表面自由エネルギー高分子による低表面自由エネルギー層を形成することにより、表面を基材樹脂に比べて低い表面自由エネルギーを有する表面としたことを特徴とする。
【0025】
本発明においては、表面に低表面自由エネルギー層を形成したことにより、乾燥固化した汚れの付着力が小さい表面を有する局部洗浄便座部品を提供できる。
【0026】
上記目的を達成するためになされた請求項4記載の発明は、水周りにて使用される部材が、表面に低表面自由エネルギー高分子による低表面自由エネルギー層を形成することにより、表面を基材樹脂に比べて低い表面自由エネルギーを有する表面としたことを特徴とする。
【0027】
本発明においては、表面に低表面自由エネルギー層を形成したことにより、乾燥固化した汚れの付着力が小さい表面を有する水周りにて使用される部材を提供できる。
【0032】
【0033】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載の熱可塑性樹脂は、基材表面に低表面自由エネルギー層を形成したものである。基材となる一般の熱可塑性樹脂は、例えばABS、PP、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリメチルペンテン、ポリアセタール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート等があげられるがこれらに限定されるものではない。上記一般の熱可塑性樹脂の表面自由エネルギーは、28dyne/cm以上45dyne/cm未満の値をとるが、この基材表面に表面自由エネルギー10dyne/cm以上28dyne/cm未満の低表面自由エネルギー層を形成することにより、汚れの濡れ性を低下させ、汚れの付着力を減少させることができる。このような表面では、従来除去が困難であった、水垢汚れ等のように基材への密着力が強く、除去の困難な汚れを容易に除去する事ができる。
【0101】
請求項2に記載の便座シート、便蓋等の便座の構成部品は、基材表面に低表面自由エネルギー層を形成したものである。一般の便座に用いられる樹脂の表面自由エネルギーは、28dyne/cm以上45dyne/cm未満の値をとるが、この基材表面に表面自由エネルギー10dyne/cm以上28dyne/cm未満の低表面自由エネルギー層を形成することにより、汚れの濡れ性を低下させ、汚れの付着力を減少させることができる。このような表面では、従来除去が困難であった、水垢汚れ等のように基材への密着力が強く、除去の困難な汚れを容易に除去する事ができる。
【0102】
請求項3に記載の便座シート、便蓋、本体ケース等のの構成部品は、基材表面に低表面自由エネルギー層を形成したものである。一般の局部洗浄便座に用いられる樹脂の表面自由エネルギーは、28dyne/cm以上45dyne/cm未満の値をとるが、この基材表面に表面自由エネルギー10dyne/cm以上28dyne/cm未満の低表面自由エネルギー層を形成することにより、汚れの濡れ性を低下させ、汚れの付着力を減少させることができる。このような表面では、従来除去が困難であった、水垢汚れ等のように基材への密着力が強く、除去の困難な汚れを容易に除去する事ができる。
【0103】
請求項4に記載の水周りにて使用される部材は、基材表面に低表面自由エネルギー層を形成したものである。一般の水周りにて使用される部材に用いられる樹脂の表面自由エネルギーは、28dyne/cm以上45dyne/cm未満の値をとるが、この基材表面に表面自由エネルギー10dyne/cm以上28dyne/cm未満の低表面自由エネルギー層を形成することにより、汚れの濡れ性を低下させ、汚れの付着力を減少させることができる。このような表面では、従来除去が困難であった、水垢汚れ等のように基材への密着力が強く、除去の困難な汚れを容易に除去する事ができる。
【0104】
また請求項5に記載の発明では、表面層を形成する低表面自由エネルギー高分子をシリコーン樹脂としたものである。シリコーン樹脂は、その特殊な分子構造により、10dyne/cm以上28dyne/cm未満の低い表面自由エネルギー表面層を得ることができる。
【0105】
シリコーン樹脂としては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン樹脂、及びこれらシリコーン樹脂に有機基を付与したシリコーン樹脂としてアミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、脂肪酸エステル変性等の変性シリコーン樹脂等があげられるがこれらに限定されるものではない。また、脱水縮合反応、付加反応、過酸化物反応、脱オキシム反応、脱アルコール反応等で得られるシリコーン樹脂レジン及びシリコーン樹脂ゴムおよびそれらの変性樹脂等があるがこれらに限定されるものではない。さらに、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等のシリコーン変性有機レジンがあるがこれらに限定されるものではない。
【0106】
また請求項6に記載の発明では、表面層を形成する低表面自由エネルギー高分子をフッ素樹脂としたものである。フッ素樹脂は、その特殊な分子構造により、10dyne/cm以上28dyne/cm未満の低い表面自由エネルギー表面層を得ることができる。
【0107】
フッ素樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン等があげられるがこれらに限定するものではない。
【0108】
【0109】
本発明では、低表面自由エネルギー高分子の成形型への塗布は、原液もしくは溶剤等の溶媒で任意の粘度に調整を行い、スプレーによる方法やワイピングによる方法等により塗布される。尚、塗布は、成形型内の製品面全面に均一に塗布してもよいし、成形型内の製品面で、低表面自由エネルギーを有する表面層による汚れの付着力を減少させる効果が、特に必要な任意部分にのみ塗布してもよい。基材樹脂である熱可塑性樹脂の成形は、上記表面層形成材料を塗布した成形金型により、射出成形、プレス成形等の成形方法で行われる。
【0110】
基材樹脂の成型と同時に基材樹脂表面への表面層の転写が行われる。表面自由エネルギーの小さい樹脂等で塗装する方法は、基材樹脂と塗膜との密着性等の耐久性が問題であったが、表面自由エネルギーの小さい樹脂層を基材樹脂の成形と同時に金型から転写することにより、基材樹脂表面と表面自由エネルギーの小さい樹脂による表面層との密着性が、アンカー効果等による物理的な付着力で大きくなり、耐久性が向上する。
【0111】
以下本発明の低表面エネルギー層を詳細に説明する。本発明におけるシリコーンレジンの表面エネルギーは一般に10dyne/cm以上28dyne/cm未満の値を示す。そのため本発明では基材表面にシリコーンレジンによる低表面自由エネルギー層を形成することにより、汚れの濡れ性を低下させ、汚れの付着力を減少させることができる。従って、基材樹脂としては限定されるものではないが、28dyne/cm以上45dyne/cm未満の樹脂を用いた方がより効果的であり、このような表面では、シリコーンレジンによる低表面自由エネルギー層を形成することにより、従来除去が困難であった、水垢汚れ等のように基材への密着力が強く、除去の困難な汚れを容易に除去する事ができる。
【0112】
本発明における表面自由エネルギー28dyne/cm以上45dyne/cm未満の樹脂としては、例えばABS、PP、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリメチルペンテン、ポリアセタール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート等があげられるがこれらに限定されるものではない。
【0113】
本発明のシリコーンレジンとは、加水分解性のシラン誘導体モノマー及び/又は未硬化のシロキサンポリマーを部分的に加水分解・縮重合させることにより形成されるレジンである。
【0114】
シリコーンレジンとしては、例えばメチルフェニルシリコーンレジン、ジフェニルシリコーンレジン等のシリコーンレジン、およびそれらの変性樹脂としてアルキッド変性、ポリエステル変性、エポキシ変性、アクリル変性、フェノール変性、ウレタン変性、メラミン変性等の変性シリコーンレジン等があげられるがこれらに限定されるものではない。
【0115】
具体的には、一般式R12SiX2(式中、R1は有機基であり、Xは塩素、臭素、又は炭素数1〜4のアルコキシ基である。以下同様)で表される加水分解性2官能シラン誘導体と、一般式R1SiX3で表される加水分解性3官能シラン誘導体と、一般式SiX4で表される加水分解性4官能シラン誘導体から調製される。
【0116】
加水分解性3官能シラン誘導体としては、メチルトリクロルシラン、メチルトリブロムシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシラン、メチルトリt−ブトキシシラン、エチルトリクロルシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシラン、ビニルトリクロルシシラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリクロルヒドロシラン、トリブロムヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、トリエトキシヒドロシランを挙げることができる。
【0117】
また、n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリブロムシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシラン、n−ヘキシルトリクロルシラン、n−ヘキシルトリブロムシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリクロルシラン、トリフルオロプロピルトリブロムシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、がある。
【0118】
加水分解性2官能シラン誘導体としては、ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、ヘプタデカフルオロオクチルメチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロオクチルメチルジエトキシシラン、及びジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランがある。
【0119】
加水分解性4官能シラン誘導体には、テトラクロルシラン、テトラブロムシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシランがある。
【0120】
シリコーンレジンには、従来公知の加水分解触媒を添加することができ、水と接触するとpH=2〜5の酸性を示すものを使用するのがよい。特に酸性のハロゲン化水素、カルボン酸、スルホン酸、酸性あるいは弱酸性の無機塩、イオン交換樹脂などの個体酸などが好ましい。好適な例としては、フッ化水素、塩酸、硝酸、硫酸;酢酸、マレイン酸に代表される有機酸;メチルスルホン酸、表面にスルホン酸基、又はカルボン酸基を有するカチオン交換樹脂などが挙げられる。加水分解触媒の量は、ケイ素原子上の加水分解性基1モルに対して0.001〜5モルの範囲内であることが好ましい。
【0121】
加水分解に使用する水の量は、塗膜の硬化性、液の安定性等から考慮すると、ケイ素原子上の加水分解性基1モルに対して0.001〜500モル、好ましくは0.05〜100モルの範囲内であることが好ましい。加水分解反応にはアルコール、ケトン、エステル等の極性溶剤、或いはトルエン、ヘキサン等の非極性溶剤を溶媒として用いるのが好ましい。またハロゲノシランを原料として使用する場合、加水分解後、十分水洗してハロゲン成分を除去する必要がある。
【0122】
コーティング組成物の溶媒又は分散媒には極性有機溶剤が使用可能であり、ゾルの安定性、入手し易さから水或いは低級アルコールであるメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、あるいはケトン類であるメチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)が好ましい。また、コーティング組成物を希釈する希釈剤には、水、及び有機溶剤すべてを使用することができる。有機溶剤としてはアルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類が適する。
【0123】
また、シリコーンレジンには、従来公知の硬化触媒を添加することができる。硬化触媒としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、酢酸ナトリウム、ぎ酸ナトリウム、酢酸カリウム、ぎ酸カリウム、プロピオン酸カリウム、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドのごとき塩基性化合物類;n−ヘキシルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、エチレンジアミン、ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンベンタミン、エタノールアミン類、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシランのごときアミン化合物;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネートのようなチタン化合物;アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、過塩素酸アルミニウム、塩化アルミニウムのようなアルミニウム化合物;錫アセチルアセトナート、ジブチル錫オクチレートのような錫化合物;コバルトオクチレート、コバルトアセチルアセトナート、鉄アセチルアセトナートのごとき含金属化合物類;リン酸、硝酸、フタル酸、p−トルエンスルホン酸、トリクロル酢酸のごとき酸性化合物類などが挙げられる。
【0124】
また、pHを調整するための緩衝剤となる酸・塩基性化合物の組み合わせ、例えば酢酸と酢酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムとクエン酸などを添加してもよい。その他、優れた被膜性能を付与する目的で顔料、染料、レベリング剤、保存安定剤なども添加することができる。
【0125】
コーティング液の安定性を向上させるために公知の界面活性剤、チタネート系カップリング剤、シランカップリング剤を添加することができる。
【0126】
更に、硬化被膜の硬度、耐擦傷性を向上させ、高屈折率化などの光学機能性を付与するために、金属酸化物微粒子を添加してもよい。金属酸化物としては、シリカ、アルミナ、酸化セリウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化鉄、酸化鉄或いは酸化ジルコニウムをドープした酸化チタン、希土類酸化物が挙げられる。特に、耐擦傷性を向上させるためにはシリカを添加するのが好ましい。
【0127】
本発明における、遊離シリコーンとしては、発明に用いたシリコーンレジンと同系統つまり、分子量などのみが違うシリコーンだけではなく、あらゆる種類のシリコーンを使用することができる。
【0128】
そのシリコーンとしては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン樹脂、及びこれらシリコーン樹脂に有機基を付与したシリコーン樹脂としてアミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、脂肪酸エステル変性等の変性シリコーン樹脂等があげられるがこれらに限定されるものではない。
【0129】
なお、遊離シリコーンとはシリコーンレジンとシリコーンとのポリマーの比率を調整することによって、基材樹脂表面にシリコーンレジンの層形成時にシリコーンが反応してしまわずにシリコーンレジン層形成後も遊離した状態で存在するものである。
【0130】
シリコーンレジン層のみであっても防汚性が高いが、遊離シリコーンが存在することにより、さらに防汚性が優れるようになる。
【0131】
この遊離シリコーンの量は増加するにしたがって防汚性能が向上するがシリコーンレジン層の軟化等、低表面エネルギー層の耐久性の低下が発生するため、好ましくはシリコーンレジン中に含まれる遊離シリコーンが、シリコーンレジン100wt%中に、5wt%から80wt%を含んだシリコーンレジンを使用した場合が耐久性と防汚性のバランスが良い。
【0132】
本発明の抗菌剤としては、無機系抗菌剤として、硝酸銀、硫酸銀、塩化銀等。銀、銅、亜鉛、錫を担持したゼオライト。銀、銅、亜鉛、錫を担持したシリカゲルなどが挙げられるが、これに限定するものではない。配合割合については基材樹脂100重量部に対し、0.1重量部未満では抗菌性が認められず、5重量部を越えると着色や劣化など樹脂組成物の特性を著しく損う。したがって、0.3〜3重量部であることが望ましい。
【0133】
有機系抗菌剤として、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール(以下TBZと略称)などイミダゾール誘導体、シクロフルアニドなどN−ハロアルキルチオ系化合物、10、10’−オキシビスフェノキサアルシンなどフェニルエーテル誘導体、セシルジメチルエチルアンモニウムブロミドなど第4級アンモニウム塩および2、3、5、6テトラコロル−4−(メチルスルホニル)ピリジンなどスルホン誘導体などが挙げられるが、これに限定するものではない。
【0134】
配合割合については、有機系防かび剤については、基材樹脂100重量部に対し、0.02重量部未満では防かび性はほとんどなく、5重量部を越えるとブルームするなど不具合が発生する。したがって、0.05〜1重量部の範囲であることが望ましい。
【0135】
便座の製造方法としては、成形型表面にシリコーンレジンを塗布する工程と、該成形型により基材樹脂を成形すると同時に、シリコーンレジンを成形型から基材樹脂表面に転写させることにより、基材樹脂表面にシリコーンレジン層を形成する工程を有する。
【0136】
本発明では、シリコーンレジンの成形型への塗布は、原液もしくは溶剤等の溶媒で任意の粘度に調整を行い、スプレーによる方法やワイピングによる方法等により塗布される。
【0137】
尚、塗布は、成形型内の製品面全面に均一に塗布してもよいし、成形型内の製品面で、低表面自由エネルギーを有する表面層による汚れの付着力を減少させる効果が、特に必要な任意部分にのみ塗布してもよい。
【0138】
基材樹脂の成形は、上記シリコーンレジンを塗布した成形金型により、射出成形、プレス成形等の成形方法で行われる。
【0139】
基材樹脂の成型と同時に基材樹脂表面への表面層の転写が行われる。表面自由エネルギーの小さい樹脂等で塗装する方法は、基材樹脂と塗膜との密着性等の耐久性が問題であったが、シリコーンレジンを基材樹脂の成形と同時に金型から転写することにより、基材樹脂表面とシリコーンレジンによる表面層との密着性が、アンカー効果、基材樹脂成形時の硬化等の影響等による物理的な付着力で大きくなり、耐久性が向上する。
【0140】
シリコーンレジンの硬化の制御のために発明の硬化を損なわない範囲で硬化促進触媒等を添加することもできる。これら硬化剤、触媒等の利用により、基材樹脂成形温度、成形型温度等に適した硬化をさせることも可能である。
【0141】
硬化促進触媒としては亜鉛、鉛、コバルト、錫、鉄、ジルコニウムなどの脂肪酸塩、アルミニウム、チタンなどのキレート類、各種のアミンやその塩類、アミノ系のCFシラン等が代表的であるがこれに限定されるものではない。
【0142】
さらに、シリコーンレジン表面層の形成のためにシリコーンレジンの成形型への塗布する工程で、シリコーンレジンを転写後の平均粒径が50μm以下の均一微細粒状になるように塗布する。原液もしくは溶剤等の溶媒で任意の粘度に調整を行い、スプレーによる方法等により塗布される。尚、塗布は、成形型内の製品面全面に均一に塗布してもよいし、成形型内の製品面で、低表面自由エネルギーを有する表面層による汚れの付着力を減少させる効果が、特に必要な任意部分にのみ塗布してもよい。この際、基材樹脂表面に覆うシリコーンレジン層の面積の割合が5%以上、特に10%以上であることにより、優れた防汚性が発揮される。
【0143】
また、転写後のシリコーンレジンを平均粒径50μm以上の場合は、ごく少量塗布であっても、優れた防汚性が発揮されるが、外観がわるくなるという欠点をもつ。
【0144】
尚、本発明は、防汚性に優れた便座の製造方法であってシリコーンレジンにより低表面自由エネルギー層を形成し、かつ、基材樹脂の抗菌性能、基材樹脂の性能および品質(外観(光沢・色調・透明性など)、表面硬さなど)等を低下させないことができる。
【0145】
以下本発明の低表面エネルギー層の一実施形態(塗布)を詳細に説明する。本発明におけるシリコーンレジンの表面エネルギーは一般に10dyne/cm以上,28dyne/cm未満の値を示す。そのため本発明においては、基材樹脂表面に放電処理を施した後、表面自由エネルギーの小さいシリコーンレジン層を塗布することにより、基材樹脂表面に効率良く形成することができ、シリコーンレジン層の密着性も良く、ごく微少量のシリコーンレジンによる表面層で、基材の表面自由エネルギーに関わらず、表面自由エネルギーの小さい表面を形成することができ、汚れの濡れ性を低下させ、汚れの付着力を減少させることができる。
【0146】
従って、基材樹脂としては限定されるものではないが、28dyne/cm以上,45dyne/cm未満の樹脂を用いた方がより効果的であり、このような表面では、シリコーンレジンによる低表面自由エネルギー層を形成することにより、従来除去が困難であった、水垢汚れ等のように基材への密着力が強く、除去の困難な汚れを容易に除去する事ができる。
【0147】
本発明における表面自由エネルギー28dyne/cm以上,45dyne/cm未満の樹脂、シリコーンレジン、抗菌剤については、前述したものと同様のものを用いることができる。
【0148】
便座の製造方法としては、基材樹脂表面に所定の表面処理を施す工程とシリコーンレジンを塗布する工程により、基材樹脂表面に低表面自由エネルギー層を形成するものとする。
【0149】
本発明では、シリコーンレジンの基材樹脂への塗布は、原液もしくは溶剤等の溶媒で任意の粘度に調整を行い、スプレーによる方法やワイピングによる方法等により塗布される。
【0150】
基材樹脂の表面処理方法としては、放電処理ではコロナ処理,プラズマ処理,コロナ放電またはアーク放電を高周波の高電圧を発生させる電極と基材樹脂の裏側に設置された金属を対面電極として放電を生じさせることが好適であり、これらのいずれの放電処理を施しても本発明の優れた作用効果を発揮させることができるものである。
【0151】
すなわち、基材樹脂に放電処理を施すことにより、基材樹脂の表面を最適な状態に改質することができ、表面の濡れ性や反応性が著しく向上し、基材樹脂と後から塗布されるシリコーンレジンとの密着強度を著しく向上させることができるものである。
【0152】
ここで、コロナ処理としては高周波の高電圧を発生させる電極と基材樹脂およびその裏側に設置された金属を対面電極として放電を生じさせる方法を採用し得る。または、基材樹脂にコロナ放電、アーク放電をガス流により吹付ける方法により基材樹脂を改質させることができる。放電条件としては、通常、出力は10から1000W、処理時間は0.1から30sec程度である。
【0153】
プラズマ処理は、プラズマ中にイオン、電子、ラジカル、光、原子、分子などを利用して基材樹脂の表面改質を行うものであり、所定の圧力(低圧または大気圧)のガスに対し、直流または交流電界により放電を発生さしめ、その放電中または放電よりガス流の下流に基材樹脂を設置して放電処理を行う方法を採用し得るものである。この場合、放電条件は、通常、圧力は0.001から1000Torr、プラズマ励起電界周波数は、直流、50Hz等の定周波交流、1から100kHz程度の交流、13.56MHz等のラジオ波、2.45GHz等のマイクロ波等が利用できる。気体としてはアルゴンガス、酸素ガス、空気、窒素、ヘリウムガス、CF4等が用いられる。
【0154】
コロナ放電またはプラズマ放電の放電条件としては、放電部と被樹脂表面とを0.1から100mm離間し、処理時間は1から60sec程度であることが望ましい。
【0155】
なお、表面処理の方法としては、放電処理以外にも、ブラスト処理、薬品処理、脱脂、火炎処理、酸化処理、蒸気処理、紫外線照射処理、イオン処理等多様な処理方法を適用することができる。
【0156】
基材樹脂にシリコーンレジンを塗布する工程において、シリコーンレジンの表面層が、0.02〜10.00μmに形成され、且つ基材樹脂表面を覆うシリコーンレジン層の面積の割合が12%以上、最大粒径が80μm以下であるようにした。すなわち、基材の表面にシリコーンレジンを拡散させて塗布して、全面積の12%以上をシリコーンレジン層とするのである。
【0157】
この方法においては、基材樹脂表面すべてにシリコーンレジン層を形成せずとも、外観の良い製品が得られるため、ごく少量のシリコーンレジンによる表面層で、基材の表面自由エネルギーに関わらず、高い表面改質効果を得ることができる。
【0158】
また、防汚性を備えた便座の製造方法であって、シリコーンレジンを塗布させて、低表面自由エネルギー層を形成することで、基材樹脂の抗菌性能、基材樹脂の性能および品質(外観(光沢・色調・透明性など)、表面硬さなど)を低下させないことができる。
【0159】
また、散在して塗布するシリコーンレジンの量は0.01mg/cm2以上が有効である。
【0160】
シリコーンレジンの塗布方法は、均一な粒径、密度を実現するスプレー方法が好適であるがこれに限られたものではない。また、シリコーンレジンの塗布は、製品面全面に均一に塗布してもよいし、製品面で、低表面自由エネルギーを有する表面層による汚れの付着力を減少させる効果が、特に必要な任意部分にのみ塗布してもよい。
【0161】
シリコーンレジンの硬化の制御についても、前述したものと同様のものを用いることができる。
【0162】
さらに、シリコーンレジン表面層の形成のためにシリコーンレジンの基材樹脂への塗布する工程で、シリコーンレジンを塗布後の低表面自由エネルギー層が、0.02〜10.00μmの薄厚の層になるように塗布する。原液もしくは溶剤等の溶媒で任意の粘度に調整を行い、スプレーによる方法等により塗布される。
【0163】
尚、塗布は、製品面全面に均一に塗布してもよいし、製品面で、低表面自由エネルギーを有する表面層による汚れの付着力を減少させる効果が、特に必要な任意部分にのみ塗布してもよい。この際、基材樹脂表面に覆うシリコーンレジン層の面積の割合が5%以上、特に12%以上であることにより、優れた防汚性が発揮される。
【0164】
また、塗布後のシリコーンレジンを10.00μm以上の低表面自由エネルギー層を形成した場合は、ごく少量塗布であっても、優れた防汚性が発揮されるが、外観がわるくなるという欠点をもつ。また、成形サイクル上、希釈溶液などに溶剤を使用した場合には、サイクルが長くなることもある。
【0165】
尚、本発明は、防汚性を備えた便座の製造方法であってシリコーンレジンにより低表面自由エネルギー層を形成し放電処理の効果によって耐久性がよく、かつ、基材樹脂の抗菌性能、基材樹脂の性能および品質(外観(光沢・色調・透明性など)、表面硬さなど)等を低下させないことができる。
【0166】
さらに、シリコーンレジン表面層の形成のためにシリコーンレジンを成形型に塗布する工程で、シリコーンレジンを転写後の低表面自由エネルギー層が、0.02〜10.00μmの薄厚の層になるように塗布する。原液もしくは溶剤等の溶媒で任意の粘度に調整を行い、スプレーによる方法等により塗布される。尚、塗布は、成形型内の製品面全面に均一に塗布してもよいし、成形型内の製品面で、低表面自由エネルギーを有する表面層による汚れの付着力を減少させる効果が、特に必要な任意部分にのみ塗布してもよい。この際、基材樹脂表面に覆うシリコーンレジン層の面積の割合が5%以上、特に10%以上であることにより、すなわち基材樹脂の表面にシリコーンレジン層が基材の全体面積の5%以上、特に10%以上となるようにシリコーンレジンが拡散されて転写されることにより、優れた防汚性が発揮される。
【0167】
また、転写後のシリコーンレジンを10.00μm以上の低表面自由エネルギー層を形成した場合は、ごく少量塗布であっても、優れた防汚性が発揮されるが、外観がわるくなるという欠点をもつ。また、成形サイクル上、希釈溶液などに溶剤を使用した場合には、サイクルが長くなることもある。
【0168】
以下本発明の低表面エネルギー層の他の実施形態(塗装)を詳細に説明する。本発明におけるシリコーンレジンもしくはフッ素樹脂の表面エネルギーは一般に10dyne/cm以上,28dyne/cm未満の値を示す。そのため本発明においては、基材樹脂表面にシリコーンレジンもしくはフッ素樹脂を含んだ塗料で塗装することにより、基材の表面自由エネルギーに関わらず、表面自由エネルギーの小さい表面を形成することができ、汚れの濡れ性を低下させ、汚れの付着力を減少させることができる。
【0169】
従って、基材樹脂としては限定されるものではないが、28dyne/cm以上,45dyne/cm未満の樹脂を用いた方がより効果的であり、このような表面では、シリコーンレジンもしくはフッ素樹脂による低表面自由エネルギー層を形成することにより、従来除去が困難であった、水垢汚れ等のように基材への密着力が強く、除去の困難な汚れを容易に除去する事ができる。
【0170】
本発明における表面自由エネルギー28dyne/cm以上,45dyne/cm未満の樹脂、シリコーンレジン、抗菌剤については、前述したものと同様のものを用いることができる。
【0171】
フッ素樹脂については、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(PFEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロジオキソールコポリマー(TFE/PDD)が好ましい。
【0172】
フッ素樹脂の配合割合は、塗料100重量部に対し0.5〜15重量部、特に1〜10重量部であることが望ましい。フッ素樹脂を配合することにより、樹脂成形体の表面エネルギーが低下し、水に対する接触角が増大し、汚れ成分が付着しにくくなり防汚性能は高くなるが、その配合割合が高くなりすぎると、機械強度などの物理特性が悪化し、他の強度等便座に必要な特性が満足できなくなる。
【0173】
本発明のシリコーンレジンもしくはフッ素樹脂を含む塗料は、必要に応じ、顔料、染料等の着色剤をさらに含むことにより、調色可能である。
【0174】
使用できる顔料としては、特に限定はされないが、たとえば、カーボンブラック、キナクリドン、ナフトールレッド、シアニンブルー、シアニングリーン、ハンザイエロー等の有機顔料;酸化チタン、硫酸バリウム、弁柄、複合金属酸化物等の無機顔料がよく、これらの群から選ばれる1種あるいは2種以上を組み合わせて使用しても差し支えない。
【0175】
顔料の分散は、特に限定はされず、通常の方法、たとえば、ダイノーミール、ペイントシェーカー等により顔料粉を直接分散させる方法等でよい。その際、分散剤、分散助剤、増粘剤、カップリング剤等の使用が可能である。
【0176】
顔料の添加量は、顔料の種類により隠蔽性が異なるので特に限定はされないが、たとえば、塗料全量中での全縮合化合物換算固形分100重量部に対して、好ましくは5〜80重量部、より好ましくは10〜70重量部である。顔料の添加量が5重量部未満の場合は隠蔽性が悪くなる傾向があり、80重量部を超えると塗膜の平滑性が悪くなることがある。
【0177】
使用できる染料としては、特に限定はされないが、たとえば、アゾ系、アントラキノン系、インジコイド系、硫化物系、トリフェニルメタン系、キサンテン系、アリザリン系、アクリジン系、キノンイミン系、チアゾール系、メチン系、ニトロ系、ニトロソ系等の染料が挙げられる。これらの群から選ばれる1種あるいは2種以上を組み合わせて使用しても差し支えない。
【0178】
染料の添加量は、染料の種類により隠蔽性が異なるので特に限定はされないが、たとえば、塗料全量中での全縮合化合物換算固形分100重量部に対して、好ましくは5〜80重量部、より好ましくは10〜70重量部である。染料の添加量が5重量部未満の場合は隠蔽性が悪くなる傾向があり、80重量部を超えると塗膜の平滑性が悪くなることがある。
【0179】
なお、レベリング剤、金属粉、ガラス粉、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等も、本発明の効果に悪影響を与えない範囲内で塗料に含まれていてもよい。塗料は、取り扱いの容易さから必要に応じて各種有機溶媒で希釈して使用できるし、また、同有機溶媒で希釈したものであってもよい。
【0180】
有機溶媒の種類は、シリコーンレジンの各成分の有する1価炭化水素基の種類、または、シリコーンレジンの各成分の分子量の大きさ等に応じて適宜選定することができる。このような有機溶媒としては、特に限定はされないが、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等の低級脂肪族アルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール誘導体;ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール誘導体;および、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトオキシム、ジアセトンアルコール等を挙げることができ、これらからなる群より選ばれた1種もしくは2種以上を使用することができる。有機溶媒での希釈割合は特に制限はなく、必要に応じて希釈割合を適宜決定すれば良い。
【0181】
塗料を塗布する方法は、特に限定されるものではなく、たとえば、刷毛塗り、スプレー、浸漬(ディッピング)、ロール、フロー、カーテン、ナイフコート、スピンコート等の通常の各種塗布方法を選択することができる。尚、塗布は、製品面全面に均一に塗布してもよいし、製品面で、低表面自由エネルギーを有する表面層による汚れの付着力を減少させる効果が、特に必要な任意部分にのみ塗布してもよい。
【0182】
塗料の塗膜の硬化方法については、公知の方法を用いればよく、特に限定はされない。また、硬化の際の温度も特に限定はされず、所望される硬化被膜性能や、基材の耐熱性等に応じて常温〜加熱温度の広い範囲をとることができる。
【0183】
塗料から形成される塗布硬化被膜の厚みは、特に制限はなく、たとえば、0.1〜100μm程度であればよいが、塗膜の各種機能をより効果的に発揮させるとともに、塗布硬化被膜が長期的に安定に密着、保持され、かつ、クラックや剥離が発生しないためには、10〜80μmが好ましく、20〜60μmがより好ましい。
【0184】
なお、塗布後のシリコーンレジンを100μm以上の低表面自由エネルギー層を形成した場合は、優れた防汚性が発揮されるが、塗装ムラの発生など外観がわるくなるという欠点をもつ。また、塗料の使用量も多くなる。
【0185】
本発明の塗料を基材に塗布する際に、基材の材質や表面状態によっては、そのまま本発明の塗料を塗布すると密着性や耐候性が得にくい場合があるので、必要に応じ、基材の表面に、本発明の塗料の塗布硬化被膜を形成させる前に予めプライマー層を形成させておいてもよい。
【0186】
プライマー層としては、特に限定はされないが、ナイロン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、有機変性シリコーン樹脂(たとえば、アクリルシリコーン樹脂等)、塩化ゴム樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂およびメラミン樹脂からなる群の中から選ばれた少なくとも1種の有機樹脂を固形分として10重量%以上含有する有機プライマー組成物の硬化樹脂層等が挙げられる。
【0187】
プライマー層の厚みは、特に限定はされないが、たとえば、0.1〜50μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましい。この厚みが薄すぎると密着性や耐候性が得られない恐れがあり、厚すぎると乾燥時に発泡等の恐れがある。なお、表面に上記のような有機プライマー層を少なくとも1層有する基材は、前記塗装基材の範疇に含まれる。すなわち、前記塗装基材が表面に有する前記被膜は上記プライマー層であってもよいのである。
【0188】
また、プライマー層には、必要に応じ、調色のために顔料、染料等の着色剤が含まれていてもよい。使用可能な着色剤としては、塗料に添加可能なものとして前述したものが挙げられる。プライマー層への着色剤の配合量の好ましい数値範囲についても、前述の、塗料の場合と同様である。ただし全縮合化合物換算固形分100重量部に対してではなくて、プライマー組成物全量中での全樹脂固形分100重量部に対して規定される。
【0189】
尚、本発明は、防汚性を備えた便座であってシリコーンレジンもしくはフッ素樹脂を含む塗料を塗装することにより低表面自由エネルギー層を形成し、かつ、品質(外観(光沢・色調・透明性など)、表面硬さなど)等を低下させないことができる。
【0190】
以下、本発明の低表面エネルギー層の他の実施形態(フィルム)を詳細に説明する。本発明のフィルムもしくはシート状の樹脂層は、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂を主成分とする着色可能な透明のクリアー層14とその下地に図柄インキ層15と接着層16が順次形成されたものである(図16〜20)。
【0191】
本発明の樹脂層を構成する、アクリル樹脂を主成分とする着色可能な透明なクリアー層14は、低い温度でも変形(伸長)するため、PETフィルムなどに比べ、樹脂層全体としての加工性が優れている。「加工性」が優れていることによる有利な点は、例えば、射出成形用金型17のキャビティ70内面の形状が、溝などが数多く形成された凹凸のような複雑な形状であったり、立ち上がりの深い凹部から成っている形状であったとしても、アクリル樹脂を主成分とする透明な樹脂シートをクリアー層14として用いた樹脂層は、加熱や真空吸引されることによって射出成形用金型17のキャビティ70内面の複雑な形状や立ち上がりの深い形状どうりに変形し、射出成形用金型17のキャビティ70内面の形状どうりの表面形状を呈するインサート成形品を得ることができる。
【0192】
該クリアー層14としては、ポリメタクリル酸メチルやポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチルなどの純粋なアクリル樹脂からなるアクリルフィルムや、アクリル樹脂と他の樹脂(たとえばフッ素樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、など)との共重合体からなる成分を主成分としたフィルムや、アクリルフィルムと他のプラスチックフィルム(たとえばフッ素フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレン酢酸ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルムなど)との積層フィルムなども含む。積層フィルムの積層方法としては、ダイレクトラミネートなどの各種ラミネート法やヒートシール法などがある。
【0193】
該クリアー層14には、必要に応じ、顔料、染料等の着色剤を添加することにより着色可能である。使用できる顔料としては、特に限定はされないが、たとえば、カーボンブラック、キナクリドン、ナフトールレッド、シアニンブルー、シアニングリーン、ハンザイエロー等の有機顔料;酸化チタン、硫酸バリウム、弁柄、複合金属酸化物等の無機顔料がよく、これらの群から選ばれる1種あるいは2種以上を組み合わせて使用しても差し支えない。
【0194】
顔料の分散は、特に限定はされず、通常の方法、たとえば、ダイノーミール、ペイントシェーカー等により顔料粉を直接分散させる方法等でよい。その際、分散剤、分散助剤、増粘剤、カップリング剤等の使用が可能である。顔料の添加量は、顔料の種類により隠蔽性が異なるので特に限定はされないが、たとえば、塗料全量中での全縮合化合物換算固形分100重量部に対して、好ましくは5〜80重量部、より好ましくは10〜70重量部である。顔料の添加量が5重量部未満の場合は隠蔽性が悪くなる傾向があり、80重量部を超えると塗膜の平滑性が悪くなることがある。
【0195】
使用できる染料としては、特に限定はされないが、たとえば、アゾ系、アントラキノン系、インジコイド系、硫化物系、トリフェニルメタン系、キサンテン系、アリザリン系、アクリジン系、キノンイミン系、チアゾール系、メチン系、ニトロ系、ニトロソ系等の染料が挙げられる。これらの群から選ばれる1種あるいは2種以上を組み合わせて使用しても差し支えない。染料の添加量は、染料の種類により隠蔽性が異なるので特に限定はされないが、たとえば、塗料全量中での全縮合化合物換算固形分100重量部に対して、好ましくは5〜80重量部、より好ましくは10〜70重量部である。染料の添加量が5重量部未満の場合は隠蔽性が悪くなる傾向があり、80重量部を超えると塗膜の平滑性が悪くなることがある。
【0196】
なお該クリアー層14の厚みは、10μm〜500μmであるが、フィルムインサ−トによる一体成形を行う場合には、十分な加工性を得るために300μm以下が好ましい。
【0197】
図柄インキ層15の図柄としては、木目柄、大理石調柄、御影石調柄、文字、記号、数字などがあるがこれに限定するものではない。
【0198】
接着層16は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エチレンブチルアルコール樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などがあるがこれに限定するものではない。
【0199】
本発明の樹脂層を、便座シート、便座底板、便蓋、本体ケース、洗浄ノズル等の局部洗浄用便座の露出構成部品の表面に設ける製造方法としては、樹脂層を射出成形用金型内に配置し型閉めした後に溶融樹脂を金型内に射出させ、樹脂を固化させることにより樹脂成形品に樹脂層を接着するものである。
【0200】
別の製造方法としては、あらかじめ成形品の形状にそって作成されたシート状の基体に樹脂層を貼り付けたものを金型内に配置し射出成形するインモールド成形や成形後の樹脂成形品表面に樹脂層を貼付けるなどの方法がある。
【0201】
本発明の樹脂層を局部洗浄用便座の露出構成部品の表面に設ける製造方法に用いられる射出成形用金型17は、可動型と固定型とからなる。射出成形用金型内に樹脂層を配置する際、枚葉の樹脂層を1枚づつ送り込んで配置してもよいし、長尺の樹脂層の必要部分を間欠的に送り込んで配置してもよい。長尺の樹脂層を使用する場合、位置決め機構を有する送り装置を使用して、樹脂層の図柄層と成形用金型との見当が一致するようにするとよい。樹脂層を配置した後、真空吸引や加熱などにより樹脂層を可動型の凹部(キャビティ)の内面に密着させる。
【0202】
その後、射出成形用金型を閉じ、キャビティ70を形成する(図18)。固定型に設けた射出口18より溶融樹脂19をキャビティ70に射出充満させ、樹脂を固化させ、樹脂成形品10を形成するのと同時にその面に樹脂層を接着させる。樹脂成形品10を冷却した後、射出成形用金型を開いて樹脂成形品を取り出す。このようにして、本発明の成形品表面に低表面自由エネルギー有する防汚性を備え、かつ表面硬度が高く傷付きにくい便座を得ることができる。
【0203】
樹脂成形品10の射出成形に用いられる樹脂は、アクリロニトリルブタジエンポリスチレン共重合体樹脂(ABS)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリエチレンテレフタレ−ト樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレ−ト樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレ−ト樹脂、ポリアミド樹脂(PA)、ポリアセタ−ル樹脂(POM)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂(PFEP)テトラフルオロエチレン−パ−フルオロアルキルビニルエ−テル共重合体樹脂(PFA)、などがあるがこれらに限定されるものではない。
【0204】
本発明の樹脂層を形成するクリアー層14に含有させるシリコーンレジンとは、加水分解性のシラン誘導体モノマー及び/又は未硬化のシロキサンポリマーを部分的に加水分解・縮重合させることにより形成されるレジンである。
【0205】
シリコーンレジンとしては、例えばメチルフェニルシリコーンレジン、ジフェニルシリコーンレジン等のシリコーンレジン、およびそれらの変性樹脂としてアルキッド変性、ポリエステル変性、エポキシ変性、アクリル変性、フェノール変性、ウレタン変性、メラミン変性等の変性シリコーンレジン等があげられるがこれらに限定されるものではない。
【0206】
配合割合については塗料100重量部に対し、0.2〜15重量部、望ましくは0.5〜5重量部である事が良い。シリコ−ンレジンを配合することにより、樹脂の表面エネルギ−が低下し撥水性等の防汚性能が向上するがその配合割合が高くなり過ぎると、機械強度などの物理特性が悪化する。
【0207】
本発明の樹脂層を形成するクリアー層14に含有させるフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(PFEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロジオキソールコポリマー(TFE/PDD)が好ましい。
【0208】
配合割合については、塗料100重量部に対し0.5〜15重量部、特に1〜10重量部であることが望ましい。フッ素樹脂を配合することにより、樹脂成形体の表面エネルギーが低下し、水に対する接触角が増大し、汚れ成分が付着しにくくなり防汚性能は高くなるが、その配合割合が高くなりすぎると、機械強度などの物理特性が悪化し、他の強度等便座に必要な特性が満足できなくなる。
【0209】
尚、シリコーンレジンの詳細、抗菌剤については、前述したものと同様のものを用いることができる。
【0210】
【実施例】
以下、本発明をさらに具体的に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0211】
図1は本発明の実施形態の一例としての局部洗浄便座((a);便座を上から見た図、(b);便座を横から見た図)を示す。1は便座シート、2は便蓋、3は本体ケース、4は局部を洗浄する洗浄ノズルである。
【0212】
図2は本発明の実施形態の一例としての局部洗浄便座部品である便蓋の一部の断面図である。基材表面を表面自由エネルギー28dyne/cm未満の、シリコーンレジン等を含む表面層がおおっている。
【0213】
以下、図3に基づき説明する。
【0214】
実施例1 成形金型の製品面に、ヘプタン類で10倍に希釈した、メチル基をもつシリコーン樹脂をスプレー方法により塗布した。このシリコーン樹脂を塗布した成型金型を用いて、PP樹脂で射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の成形を行った。
【0215】
実施例2 成形金型の製品面に、ポリテトラフルオロエチレンを主体とするフッ素樹脂をスプレー方法により塗布した。このフッ素樹脂を塗布した成型金型を用いて、PP樹脂で射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の成形を行った。
【0216】
実施例3 成形金型の製品面に、ヘプタン類で10倍に希釈した、メチル基をもつシリコーン樹脂をスプレー方法により塗布した。このシリコーン樹脂を塗布した成型金型を用いて、ABS樹脂で射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の成形を行った。
【0217】
比較例1 十分にトルエンおよびアルコール類等の溶剤で十分に脱脂した成形金型を用いて、シリコーン樹脂およびフッ素樹脂を金型に塗布せずに、PP樹脂で射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の成形を行った。
【0218】
比較例2 十分にトルエンおよびアルコール類等の溶剤で十分に脱脂した成形金型を用いて、シリコーン樹脂およびフッ素樹脂を金型に塗布せずに、ABS樹脂で射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の成形を行った。次に試験について説明する。
【0219】
(1)水の接触角;水の接触角により、成形品表面の撥水性を調べた。接触角の測定は、協和界面科学製接触角計で行った。
【0220】
(2)テープ剥離試験;テープ剥離試験により、成形品表面の被粘着性を調べた。テープ剥離試験には住友スリーエム製メンディングテープ(幅12mm)を成形品から切り出した試験片表面にはりつけ、30cm/分の速度で90゜引きはがしを行った際の引きはがし力を測定した。
【0221】
(3)付着物汚染試験(墨汁);水溶性の疑似汚物により、成形品表面の疑似汚物の付着性を調べた。付着性をもつ水溶性疑似汚物として墨汁を用いた。墨汁を成形品から切り出した試験片表面に刷毛塗りにより塗布し、23℃50%RHの雰囲気で24時間放置し、乾燥させた。次に、乾燥した墨汁が付着した表面を摺動部1平方cm当たり1kgの加重で、乾いた綿布で5往復擦り、墨汁の除去の程度を目視にて観察した。評価は相対比較により行い、完全に墨汁が除去出来た場合を○、僅かに除去出来なかった場合を△、比較的多く除去出来なかった場合を×とした。
【0222】
(4)付着物汚染試験(水垢);成形品表面の水垢の付着性を調べた。水道水を成形品から切り出した試験片表面に滴下し、40℃の雰囲気で1時間放置し、乾燥させた。この水道水滴下後40℃1時間乾燥の手順を試験片表面の同じ箇所で50回繰り返し、試験片表面に水垢を付着させた。次に、水垢が付着した表面を摺動部1平方cm当たり1kgの加重で、乾いた綿布で5往復擦り、水垢の除去の程度を目視にて観察した。評価は相対比較により行い、完全に水垢が除去出来た場合を○、僅かに除去出来なかった場合を△、比較的多く除去出来なかった場合を×とした。
【0223】
図3に示す試験結果より、シリコーン樹脂もしくはフッ素樹脂を塗布した金型により成形を行ったPP樹脂とABS樹脂は、シリコーン樹脂もしくはフッ素樹脂を塗布していない金型により成形を行ったPP樹脂とABS樹脂にそれぞれ比較して、撥水性が高く、濡れ性が悪いことがわかる。また、テープ剥離試験においても引き剥がし力は小さな値を示し、粘着性が小さいことがわかる。さらに、乾燥した墨汁と水垢の固着性汚れの付着力が小さくなり、乾布拭きで除去が可能となることがわかる。
【0224】
このように、基材樹脂であるPP樹脂もしくはABS樹脂を射出成形すると同時に、金型から低表面自由エネルギー高分子を転写することにより低表面自由エネルギー層を形成すると、濡れ性を低下させ、汚れの付着力を減少させることができる。このような表面では、従来除去が困難であった、水垢汚れ等のように基材への密着力が強く、除去の困難な汚れを容易に除去する事ができることがわかる。
【0225】
以下、図4に基づき説明する。
【0226】
実施例4 成形金型の製品面に、ヘプタン類で10倍に希釈した、メチル基をもつシリコーン樹脂をスプレー方法により塗布した。このシリコーン樹脂を塗布した成型金型を用いて、PP樹脂で射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の成形を行った。尚、本実施例では、成形金型に塗布したシリコーン樹脂が、仮に便蓋成形品に全量転写されたと仮定すると、得られた成形体に対するシリコーン樹脂の割合は0.02重量%であった。
【0227】
比較例3 PP樹脂に対し、メチル基をもつシリコーン樹脂2重量%を加え、二軸押出機により溶融混合し、コンパウンド樹脂ペレットを得た。得られたコンパウンド樹脂ペレットを比較例1と同じ方法で、局部洗浄便座部品である便蓋の成形を行った。
【0228】
試験は、実施例1から3および比較例1から2と同様の試験方法、評価方法により行った。
【0229】
図4に示す試験結果より、シリコーン樹脂を塗布した金型により成形を行ったPP樹脂は、僅かな量のシリコーン樹脂が基材表面に表面層を形成することにより、シリコーン樹脂を多量に添加して通常の成形を行ったPP樹脂に比較して、撥水性が高く、濡れ性が悪いことがわかる。また、テープ剥離試験においても引き剥がし力は小さな値を示し、粘着性が小さいことがわかる。さらに、乾燥した墨汁と水垢の固着性汚れの付着力が小さくなり、乾布拭きで除去が可能となることがわかる。
【0230】
このように、基材樹脂を射出成形すると同時に、金型から低表面自由エネルギー高分子を転写することにより、低表面自由エネルギー層を形成すると、低表面自由エネルギー高分子の量が微量であっても、効果的に表面改質効果が得られ、低表面自由エネルギー高分子を多量に添加した成形品に比べ、濡れ性を低下させ、汚れの付着力を減少させることができる。このような表面では、従来除去が困難であった、水垢汚れ等のように基材への密着力が強く、除去の困難な汚れを容易に除去する事ができることがわかる。
【0231】
以下、図5に基づき説明する。
【0232】
実施例5 実施例1で得られた便蓋から試験片を切り出し、濡らした綿布で試験片の表面を摺動部1平方cm当たり1kgの加重で100往復擦った後、24時間室温に放置して表面の乾燥を行った。
【0233】
比較例4 実施例1において用いた、ヘプタン類で10倍に希釈したメチル基をもつシリコーン樹脂を比較例1で得られた便蓋表面に、スプレー方法により塗布した。このシリコーン樹脂を塗布した便蓋から試験片を切り出し、濡らした綿布で試験片の表面を摺動部1平方cm当たり1kgの加重で100往復擦った後、24時間室温に放置して表面の乾燥を行った。
【0234】
試験は、実施例1から3および比較例1から2と同様の試験方法、評価方法により行った。
【0235】
図5に示す試験結果より、シリコーン樹脂を塗布した金型により成形を行ったPP樹脂は、濡らした綿布で表面を摺動部1平方cm当たり1kgの加重で100往復擦った後でも、撥水性が高く、濡れ性が悪いことがわかる。また、テープ剥離試験においても引き剥がし力は小さな値を示し、粘着性が小さいことがわかる。さらに、乾燥した墨汁と水垢の固着性汚れの付着力が小さくなり、乾布拭きで除去が可能となることがわかる。
【0236】
一方、通常の成形を行ったPP樹脂の便蓋は、成形後にシリコーン樹脂を塗布しても、濡らした綿布で表面を摺動部1平方cm当たり1kgの加重で100往復擦った後は、撥水性が低下し、テープの粘着性が比較的大きく、さらに墨汁と水垢の固着性汚れの付着力が大きいことがわかる。
【0237】
以上から、成形と同時に、金型からPP樹脂表面へシリコーン樹脂層を転写する方法は、シリコーン樹脂を成形後にPP樹脂表面に塗装する方法に比べ、表面シリコーン樹脂層の耐久性が向上していることがわかる。
【0238】
表面自由エネルギーの小さい樹脂層を基材樹脂の成形と同時に金型から転写することにより、基材樹脂表面と、表面自由エネルギーの小さい樹脂による表面層との密着性が、アンカー効果等による物理的な付着力で大きくなり、耐久性が向上することがわかる。
【0239】
本実施例においては、表面自由エネルギーの小さい樹脂層を基材樹脂の成形と同時に金型から転写することにより、基材樹脂表面に効率良く形成することができるため、ごく微少量の表面自由エネルギーの小さい樹脂による表面層で、基材の表面自由エネルギーに関わらず、表面自由エネルギーの小さい表面を形成することができる。
【0240】
低表面自由エネルギー層を形成することにより、汚れの濡れ性を低下させ、汚れの付着力を減少させることができる。このような表面では、従来除去が困難であった、水垢汚れ等のように基材への密着力が強く、除去の困難な汚れを容易に除去する事ができる。
【0241】
また、表面自由エネルギーの小さい樹脂等で塗装する方法は、基材樹脂と塗膜との密着性が悪く、耐久性が問題であったが、表面自由エネルギーの小さい樹脂層を基材樹脂の成形と同時に金型から転写することにより、基材樹脂表面と表面自由エネルギーの小さい樹脂による表面層との密着性が、アンカー効果等による物理的な付着力で大きくなり、耐久性が向上する。
【0242】
続いて、他の実施例(シリコーンレジンを詳細に説明したもの)を示す。
【0243】
以下、図6に基づき説明する。図6はシリコーンレジンを転写した表面の、撥水性の効果を水の接触角で、付着汚れの取れやすさをテープ剥離力、疑似汚物付着試験、水垢付着試験で評価したものである。
【0244】
実施例11 成形金型の製品面に、ヘプタン類で10倍に希釈した、メチルフェニルシリコーンレジン(メチルフェニルシリコーンレジン100wt%に対してメチルフェニルシロキサンが30%含有…以下シリコーンレジン)をスプレー方法により塗布した。このシリコーンレジンを塗布した成型金型を用いて、PP樹脂で射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の成形を行った。
【0245】
実施例12 成形金型の製品面に、ヘプタン類で10倍に希釈した、シリコーンレジンをスプレー方法により塗布した。このシリコーンレジンを塗布した成型金型を用いて、ABS樹脂で射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の成形を行った。
【0246】
比較例11 十分にトルエンおよびアルコール類等の溶剤で十分に脱脂した成形金型を用いて、シリコーンレジンを金型に塗布せずに、PP樹脂で射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の成形を行った。
【0247】
比較例12 十分にトルエンおよびアルコール類等の溶剤で十分に脱脂した成形金型を用いて、シリコーンレジンを金型に塗布せずに、ABS樹脂で射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の成形を行った。
【0248】
次に試験について、(1)水の接触角、(2)テープ剥離試験、(3)付着物汚染試験(墨汁)、(4)付着物汚染試験(水垢)は前述のものと同様である。
【0249】
図6に示す試験結果より、シリコーンレジンを塗布した金型により成形を行ったPP樹脂とABS樹脂は、シリコーンレジンを塗布していない金型により成形を行ったPP樹脂とABS樹脂にそれぞれ比較して、撥水性が高く、濡れ性が悪いことがわかる。また、テープ剥離試験においても引き剥がし力は小さな値を示し、粘着性が小さいことがわかる。さらに、乾燥した墨汁と水垢の固着性汚れの付着力が小さくなり、乾布拭きで除去が可能となることがわかる。
【0250】
このように、基材樹脂であるPP樹脂もしくはABS樹脂を射出成形すると同時に、金型からシリコーンレジンを転写することにより低表面自由エネルギー層を形成すると、濡れ性を低下させ、汚れの付着力を減少させることができる。このような表面では、従来除去が困難であった、水垢汚れ等のように基材への密着力が強く、除去の困難な汚れを容易に除去する事ができることがわかる。
【0251】
以下、図7に基づき説明する。図7はシリコーンレジンを転写した表面と、シリコーンレジンを内添した表面の、撥水性の効果を水の接触角で、付着汚れの取れやすさをテープ剥離力、疑似汚物付着試験、水垢付着試験で評価、シリコーンレジンの転写された表面積の違いによる表面の撥水性の効果を水の接触角で、付着汚れの取れやすさをテープ剥離力、疑似汚物付着試験、水垢付着試験で評価、転写後のシリコーンレジンの粒径による外観の違いを光沢度で評価したものである。
【0252】
実施例13 成形金型の製品面に、ヘプタン類で10倍に希釈した、シリコーンレジンをスプレー方法により塗布した。このシリコーンレジンを塗布した成型金型を用いて、PP樹脂で射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の成形を行った。尚、本実施例では、成形金型に塗布したシリコーンレジンが、仮に便蓋成形品に全量転写されたと仮定すると、得られた成形体に対するシリコーンレジンの割合は0.02重量%であった。この際、基材樹脂表面に覆うシリコーンレジン層の面積の割合が22%であり、シリコーンレジン表面層は約0.1μm、シリコーンレジン各粒子の粒径は平均35μmであった。
【0253】
実施例14 成形金型の製品面に、ヘプタン類で10倍に希釈した、シリコーンレジンをスプレー方法により塗布した。このシリコーンレジンを塗布した成型金型を用いて、PP樹脂で射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の成形を行った。尚、本実施例では、成形金型に塗布したシリコーンレジンが、仮に便蓋成形品に全量転写されたと仮定すると、得られた成形体に対するシリコーンレジンの割合は0.01重量%であった。この際、基材樹脂表面に覆うシリコーンレジン層の面積の割合が10%であり、シリコーンレジン表面層は約0.2μm、その凹部粒径、シリコーンレジン各粒子の粒径は平均35μmであった。
【0254】
比較例13 成形金型の製品面に、ヘプタン類で10倍に希釈した、シリコーンレジンをスプレー方法により塗布した。このシリコーンレジンを塗布した成型金型を用いて、PP樹脂で射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の成形を行った。尚、本実施例では、成形金型に塗布したシリコーンレジンが、仮に便蓋成形品に全量転写されたと仮定すると、得られた成形体に対するシリコーンレジンの割合は0.004重量%であった。この際、基材樹脂表面に覆うシリコーンレジン層の面積の割合が3%であり、シリコーンレジン表面層は約0.2μm、シリコーンレジン各粒子の粒径は平均33μmであった。
【0255】
比較例14 成形金型の製品面に、ヘプタン類で10倍に希釈した、シリコーンレジンをスプレー方法により塗布した。このシリコーンレジンを塗布した成型金型を用いて、PP樹脂で射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の成形を行った。尚、本実施例では、成形金型に塗布したシリコーンレジンが、仮に便蓋成形品に全量転写されたと仮定すると、得られた成形体に対するシリコーンレジンの割合は0.025重量%であった。この際、基材樹脂表面に覆うシリコーンレジン層の面積の割合が19%であり、シリコーンレジン表面層は表面層が15μm以上、シリコーンレジン各粒子の粒径は平均98μmであった。
【0256】
比較例15 PP樹脂に対し、シリコーンレジン2重量%を混入して比較例1と同じ方法で、局部洗浄便座部品である便蓋の成形を行った。
【0257】
試験は、実施例11から12および比較例11から12と同様の試験方法、評価方法にに加え光沢度計を用いて光沢度の測定を行った。
【0258】
図7に示す試験結果より、シリコーンレジンを塗布した金型により成形を行ったPP樹脂は、僅かな量のシリコーンレジンが基材表面に表面層を形成することにより、シリコーンレジンを多量に添加して通常の成形を行ったPP樹脂に比較して、撥水性が高く、濡れ性が悪いことがわかる。また、テープ剥離試験においても引き剥がし力は小さな値を示し、粘着性が小さいことがわかる。さらに、乾燥した墨汁と水垢の固着性汚れの付着力が小さくなり、乾布拭きで除去が可能となることがわかる。
【0259】
このように、基材樹脂を射出成形すると同時に、金型からシリコーンレジンを転写することにより、低表面自由エネルギー層を形成すると、シリコーンレジンの量が微量であっても、効果的に表面改質効果が得られ、シリコーンレジンを多量に添加した成形品に比べ、濡れ性を低下させ、汚れの付着力を減少させることができる。このような表面では、従来除去が困難であった、水垢汚れ等のように基材への密着力が強く、除去の困難な汚れを容易に除去する事ができることがわかる。
【0260】
ここで、基材樹脂表面を覆うシリコーンレジン層とは0.01mg/cm2以上のことをいい、成形品表面に占めるシリコーンレジン層の面積の割合が10%程度であっても優れた防汚性が発揮される。また、転写後のシリコーンレジンが表面層が20μm以上、平均粒径50μm以上の場合は、ごく少量塗布であっても、優れた防汚性が発揮されるが、光沢度等の外観がわるくなるという欠点をもつことがわかる。
【0261】
以下、図8に基づき説明する。図8は抗菌剤を混入した基材樹脂を用いて、シリコーンレジンを転写した表面とその割合による防汚性と抗菌性の違いを防汚試験、抗菌試験で評価したものである。
【0262】
実施例15 成形金型の製品面に、ヘプタン類で10倍に希釈した、シリコーンレジンをスプレー方法により塗布した。このシリコーンレジンを塗布した成型金型を用いて、PP樹脂で射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の成形を行った。なお、このPP樹脂には抗菌剤として銀ゼオライト0.5重量部を配合している。また、本実施例では、成形金型に塗布したシリコーンレジンが、仮に便蓋成形品に全量転写されたと仮定すると、得られた成形体に対するシリコーンレジンの割合は0.02重量%であった。この際、基材樹脂表面に覆うシリコーンレジン層の面積の割合が22%であり、シリコーンレジン表面層は約0.2μm、シリコーンレジン各粒子の粒径は平均35μmであった。
【0263】
比較例16 成形金型の製品面に、ヘプタン類で10倍に希釈した、シリコーンレジンをスプレー方法により塗布した。このシリコーンレジンを塗布した成型金型を用いて、PP樹脂で射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の成形を行った。なお、このPP樹脂には抗菌剤として銀ゼオライト0.5重量部を配合している。また、本実施例では、成形金型に塗布したシリコーンレジンが、仮に便蓋成形品に全量転写されたと仮定すると、得られた成形体に対するシリコーンレジンの割合は0.1重量%であった。この際、基材樹脂表面に覆うシリコーンレジン層の面積の割合が95%であった。
【0264】
比較例17 十分にトルエンおよびアルコール類等の溶剤で十分に脱脂した成形金型を用いて、シリコーンレジンを金型に塗布せずに、PP樹脂で射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の成形を行った。なお、このPP樹脂には抗菌剤として銀ゼオライト0.5重量部を配合している。
【0265】
試験は、実施例11から12および比較例11から12と同様の試験方法、評価方法に加え、抗菌性の評価を行った。また、比較例1のサンプルについてはここで抗菌試験も実施した。
【0266】
次に抗菌性の評価について説明する。
【0267】
抗菌性については銀等無機抗菌剤研究会からだされている「銀等無機抗菌剤の自主規格および抗菌試験方法(1995年度版)」に記載されている「抗菌試験か構成品の抗菌試験方法I」に従って大腸菌と黄色ブドウ球菌について抗菌性を評価した。なお、接種菌量は0.5ml、懸濁液:1/500NB、放置温度35℃使用フィルム4.5cm×4.5cm角、回収液:SCDLP10mlで行った。
【0268】
図8に示す試験結果より、本実施例によれば、基材樹脂の抗菌性能等、基材樹脂の性能および品質を低下させないで防汚性を付与するすることことができるがわかる。また、このことから本実施例においては基材樹脂に含まれる抗菌剤等の量によって、基材樹脂の性能を損なわない程度のシリコーンレジン層の基材樹脂を覆う面積は異なるが、試験を行うことによっ基材樹脂の性能を損なわずに防汚性を発揮する最適のシリコーンレジン塗布量を調整することができることがわかった
【0269】
以下、図9に基づき説明する。図9はシリコーンレジンを転写した表面と、シリコーンレジンを成形後にスプレー塗装した表面をそれぞれ耐久性比較の為に水拭きした後、撥水性の効果を水の接触角で、付着汚れの取れやすさをテープ剥離力、疑似汚物付着試験、水垢付着試験で評価したものである。
【0270】
実施例16 実施例11で得られた便蓋から試験片を切り出し、濡らした綿布で試験片の表面を摺動部1平方cm当たり1kgの加重で100往復擦った後、24時間室温に放置して表面の乾燥を行った。
【0271】
比較例18 実施例11において用いた、ヘプタン類で10倍に希釈したシリコーンレジンを比較例1で得られた便蓋表面に、スプレー方法により塗布した。このシリコーンレジンを塗布した便蓋から試験片を切り出し、濡らした綿布で試験片の表面を摺動部1平方cm当たり1kgの加重で100往復擦った後、24時間室温に放置して表面の乾燥を行った。
【0272】
試験は、実施例11から12および比較例11から12と同様の試験方法、評価方法により行った。
【0273】
図9に示す試験結果より、シリコーンレジンを塗布した金型により成形を行ったPP樹脂は、濡らした綿布で表面を摺動部1平方cm当たり1kgの加重で100往復擦った後でも、撥水性が高く、濡れ性が悪いことがわかる。また、テープ剥離試験においても引き剥がし力は小さな値を示し、粘着性が小さいことがわかる。さらに、乾燥した墨汁と水垢の固着性汚れの付着力が小さくなり、乾布拭きで除去が可能となることがわかる。
【0274】
一方、通常の成形を行ったPP樹脂の便蓋は、成形後にシリコーンレジンを塗布しても、濡らした綿布で表面を摺動部1平方cm当たり1kgの加重で100往復擦った後は、撥水性が低下し、テープの粘着性が比較的大きく、さらに墨汁と水垢の固着性汚れの付着力が大きいことがわかる。
【0275】
以上から、成形と同時に、金型からPP樹脂表面へシリコーンレジン層を転写する方法は、シリコーンレジンを成形後にPP樹脂表面に塗装する方法に比べ、表面シリコーンレジン層の耐久性が向上していることがわかる。
【0276】
表面自由エネルギーの小さい樹脂層を基材樹脂の成形と同時に金型から転写することにより、基材樹脂表面と、表面自由エネルギーの小さい樹脂による表面層との密着性が、アンカー効果、基材樹脂成形時の硬化等による物理的な付着力で大きくなり、耐久性が向上することがわかる。
【0277】
以上図6から図9により本発明の構成は防汚性に優れるため、便座用の材料として非常に優れることがわかった。
【0278】
なお、上記実施例および比較例の成形品は便蓋であったが、便座シート、本体ケースあるいは洗浄ノズルであっても同様な結果が得られる。
【0279】
また、発明の効果を損なわない程度で、基材樹脂に適宜各種の添加剤を配合することができる。例えば、可塑剤、内部離型剤、加水分解防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、発泡剤、無機顔料、有機顔料等があげられる。
【0280】
以上説明したように本実施例の便座によれば次の効果が得られる。
【0281】
本実施例においては、表面自由エネルギーの小さいシリコーンレジン層を基材樹脂の成形と同時に金型から転写することにより、基材樹脂表面に効率良く形成することができるため、ごく微少量のシリコーンレジンによる表面層で、基材の表面自由エネルギーに関わらず、表面自由エネルギーの小さい表面を形成することができる。
【0282】
低表面自由エネルギー層を形成することにより、汚れの濡れ性を低下させ、汚れの付着力を減少させることができる。このような表面では、従来除去が困難であった、尿、水垢汚れ等のように基材への密着力が強く、除去の困難な汚れを容易に除去する事ができ、防汚性に優れた便座を提供することが出来る。
【0283】
また、表面自由エネルギーの小さいシリコーンレジン樹脂等で塗装する方法は、基材樹脂と塗膜との密着性が悪く、耐久性が問題であったが、シリコーンレジン層を基材樹脂の成形と同時に金型から転写することにより、基材樹脂表面と表面自由エネルギーの小さい樹脂による表面層との密着性が、アンカー効果、基材樹脂成形時の硬化等による物理的な付着力で大きくなり、耐久性が向上する。
【0284】
また、基材樹脂の抗菌性等、基材樹脂の性能、品質等を損なうことなく防汚性が付与できるため、基材樹脂の性能と耐久性に優れた防汚性を併せ持った、防汚性に優れた便座を提供することが出来る。
【0285】
続いて、他の実施例(シリコーンレジンを塗布したもの)を示す。
【0286】
以下、図10に基づき説明する。図10はコロナ放電処理後にシリコーンレジンを塗布した表面とプラズマ放電処理後にシリコーンレジンを塗布した表面および放電処理をせずにシリコーンレジンを塗布した表面の、撥水性の効果を水の接触角で評価、付着汚れの取れやすさをテープ剥離力、付着汚物試験(墨汁、水垢)で評価、実使用後の汚れのとれやすさを耐久試験で評価、塗布後の基材樹脂表面に覆うシリコーンレジン層の面積の割合、粒径による外観の違いを外観で評価したものである。
【0287】
実施例21 射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の基材樹脂がPP樹脂であり、その表面にコロナ放電処理を施した後、ヘプタン類で10倍に希釈したメチルフェニルシリコーンレジン(メチルフェニルシリコーンレジン100wt%に対してメチルフェニルシロキサンが30%含有…以下シリコーンレジン)が、基材樹脂表面全体に対して12%、最大粒径が80μmになるようスプレー方法により塗布した。
【0288】
実施例22 射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の基材樹脂がPP樹脂であり、その表面にプラズマ放電処理を施した後、ヘプタン類で10倍に希釈したシリコーンレジンが、基材樹脂表面全体に対して12%、最大粒径が80μmになるようスプレー方法により塗布した。
【0289】
比較例21 射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の基材樹脂がPP樹脂であり、その表面にコロナ放電処理を施さず、ヘプタン類で10倍に希釈したシリコーンレジンが、基材樹脂表面全体に対して12%、最大粒径が80μmになるようスプレー方法により塗布した。
【0290】
比較例22 射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の基材樹脂がPP樹脂であり、その表面にコロナ放電処理を施した後、ヘプタン類で10倍に希釈したシリコーンレジンが、基材樹脂表面全体に対して12%、最大粒径が120μmになるようスプレー方法により塗布した。
【0291】
比較例23 射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の基材樹脂がPP樹脂であり、その表面にコロナ放電処理を施した後、ヘプタン類で10倍に希釈したシリコーンレジンが、基材樹脂表面全体に対して24%、最大粒径が80μmになるようスプレー方法により塗布した。
【0292】
比較例24 射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の基材樹脂がPP樹脂であり、その表面にコロナ放電処理を施した後、ヘプタン類で10倍に希釈したシリコーンレジンが、基材樹脂表面全体に対して12%、最大粒径が50μmになるようスプレー方法により塗布した。
【0293】
比較例25 射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の基材樹脂がPP樹脂であり、その表面にプラズマ放電処理を施した後、ヘプタン類で10倍に希釈したシリコーンレジンが、基材樹脂表面全体に対して24%、最大粒径が80μmになるようスプレー方法により塗布した。
【0294】
比較例26 射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の基材樹脂がPP樹脂であり、その表面にプラズマ放電処理を施した後、ヘプタン類で10倍に希釈したシリコーンレジンが、基材樹脂表面全体に対して12%、最大粒径が50μmになるようスプレー方法により塗布した。
【0295】
次に試験について、(1)水の接触角、(2)テープ剥離試験、(3)付着物汚染試験(墨汁)、(4)付着物汚染試験(水垢)は前述のものと同様である。
【0296】
(5)耐久性試験;成形品表面へのシリコーンレジンの密着度を調べた。成形品から切り出した試験片表面を、1平方cm当たり60gの加重で、水道水を含ませた綿布で4000回擦った後、疑似汚物(油系のもの)に5s間浸漬後引き上げ、60s後の疑似汚物のはじき具合を目視にて観察した。評価は、完全に疑似汚物をはじいた場合を○、半分ほどしかはじかなかった場合を△、全くはじかなかった場合を×とした。
【0297】
(6)外観;成形品表面の外観を目視にて観察した。評価は、塗布されたシリコーンレジンが目立たないレベルを○、塗布されたシリコーンレジンが少し目立つレベルを△、塗布されたシリコーンレジンが目立ち、かつ光沢がないレベルを×とした。
【0298】
図10に示す試験結果より、基材樹脂表面に放電処理を施しシリコーンレジンを塗布することにより、形成された低表面自由エネルギー層は、濡れ性を低下させ、汚れの付着力を減少をさせることができ、放電処理の効果によって耐久性が保持されていることがわかる。また、基材樹脂表面を覆うシリコーンレジン層の面積の割合が12%およびシリコーンレジンの最大粒径が80μmの時、成形品表面の外観も良い。このような表面では、従来除去が困難であった、水垢汚れ等のように基材への密着力が強く、除去の困難な汚れを容易に除去する事ができるとともにその効果が持続することが確認された。
【0299】
以下、図11に基づき説明する。図11は抗菌剤を混入した基材樹脂を用いて、シリコーンレジンを塗布した表面とその割合による防汚性と抗菌性の違いを防汚試験、抗菌試験で評価したものである。
【0300】
実施例23 射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の基材樹脂がPP樹脂であり、その表面にコロナ放電処理を施した後、ヘプタン類で10倍に希釈したメチルフェニルシリコーンレジン(メチルフェニルシリコーンレジン100wt%に対してメチルフェニルシロキサンが30%含有…以下シリコーンレジン)が、基材樹脂表面全体に対して12%、最大粒径が80μmになるようスプレー方法により塗布した。なお、このPP樹脂には抗菌剤として銀ゼオライト0.5重量部を配合している。
【0301】
比較例27 射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の基材樹脂がPP樹脂であり、その表面にコロナ放電処理を施した後、ヘプタン類で10倍に希釈した、シリコーンレジンが、基材樹脂表面全体に対して90%になるようスプレー方法により塗布した。なお、このPP樹脂には抗菌剤として銀ゼオライト0.5重量部を配合している。
【0302】
比較例28 射出成形により局部洗浄便座部品である便蓋の基材樹脂がPP樹脂で、抗菌剤として銀ゼオライト0.5重量部を配合している。試験は、実施例21から22および比較例21から26と同様の試験方法、評価方法にに加え、抗菌性の評価を行った。また、比較例1のサンプルについてはここで抗菌試験も実施した。
【0303】
次に抗菌性の評価について説明する。試験は前述のものと同様である。
【0304】
図11に示す試験結果より、本実施例によれば、基材樹脂の抗菌性能等、基材樹脂の性能および品質を低下させないで防汚性を付与することができることがわかる。また、このことから本実施例においては基材樹脂に含まれる抗菌剤等の量によって、基材樹脂の性能を損なわない程度のシリコーンレジン層の基材樹脂を覆う面積は異なるが、試験を行うことによって基材樹脂の性能を損なわずに防汚性を発揮する最適のシリコーンレジン塗布量を調整することができることがわかった。
【0305】
以上図10と図11により本実施例の構成は防汚性に優れるため、便座用の材料として非常に優れることがわかった。
【0306】
なお、上記実施例および比較例の成形品は便蓋であったが、便座シート、本体ケースあるいは洗浄ノズルであっても同様な結果が得られる。
【0307】
また、発明の効果を損なわない程度で、基材樹脂に適宜各種の添加剤を配合することができる。例えば、可塑剤、内部離型剤、加水分解防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、発泡剤、無機顔料、有機顔料等があげられる。
【0308】
以上説明したように本実施例の便座によれば次の効果が得られる。
【0309】
本実施例においては、基材樹脂表面に所定の表面処理を施した後、表面自由エネルギーの小さいシリコーンレジン層を塗布することにより、基材樹脂表面に効率良く形成することができ、シリコーンレジン層の密着性も良く、ごく微少量のシリコーンレジンによる表面層で、基材の表面自由エネルギーに関わらず、表面自由エネルギーの小さい表面を形成することができる。
【0310】
低表面自由エネルギー層を形成することにより、汚れの濡れ性を低下させ、汚れの付着力を減少させることができる。このような表面では、従来除去が困難であった、尿、水垢汚れ等のように基材への密着力が強く、除去の困難な汚れを容易に除去する事ができ、防汚性に優れた便座を提供することが出来る。
【0311】
また、表面自由エネルギーの小さいシリコーンレジン樹脂等で塗装する方法は、基材樹脂と塗膜との密着性が悪く、耐久性が問題であったが、基材樹脂の表面を放電処理することにより官能基が形成され、基材樹脂表面と表面自由エネルギーの小さい樹脂による表面層との密着性が、化学的な付着力で大きくなり、耐久性が向上する。
【0312】
また、基材樹脂の抗菌性等、基材樹脂の性能、品質等を損なうことなく防汚性が付与できるため、基材樹脂の性能と耐久性に優れた防汚続いて、他の実施例(シリコーンレジンを塗装したもの)を示す。
【0313】
図12は本発明の実施形態の一例としての局部洗浄便座部品である局部を洗浄する洗浄ノズルの一部の断面図である。基材表面をシリコーンレジンを含む塗料の表面層がおおっている。
【0314】
以下、図13に基づき説明する。
【0315】
実施例31 射出成形により局部洗浄便座部品である洗浄ノズルの基材樹脂がABS樹脂であり、その表面にシリコーンレジンを含んだアクリルウレタン系樹脂の塗料をスプレー方法により塗布した。
【0316】
比較例31 実施例1において、シリコーンレジンを含まないアクリルウレタン系樹脂の塗料をスプレー方法により塗布した。
【0317】
比較例32 実施例1において、何も塗布していない。
【0318】
以上のように得られた洗浄ノズルの防汚性能を次のような方法で評価した。
<評価方法>
(1)水の接触角;水の接触角により、成形品表面の撥水性を調べた。接触角の測定は、協和界面科学製接触角計で行った。
【0319】
(2)油の接触角;油の接触角により、成形品表面の撥油性を調べた。接触角の測定は、協和界面科学製接触角計で行った。
【0320】
(3)疑似汚物付着試験(みそ);疑似汚物により、成形品表面の疑似汚物の付着性を調べた。付着性をもつ疑似汚物としてみそを用いた。みそを洗浄ノズル表面につけ、セルフクリーニング機構でどの程度落ちるか目視にて確認した。評価は相対比較により行い、完全にみそが除去出来た場合を○、僅かに除去出来なかった場合を△、比較的多く除去出来なかった場合を×とした。
【0321】
図13に示す試験結果より、基材樹脂表面にシリコーンレジンを含んだ塗料を塗布することにより、形成された低表面自由エネルギー層は、濡れ性を低下させ、汚れの付着力を減少させることが確認された。
【0322】
なお、上記実施例および比較例の成形品は洗浄ノズルであったが、便座シート、便蓋あるいは本体ケースであっても同様な結果が得られる。
【0323】
本実施例においては、基材樹脂表面に表面自由エネルギーの小さいシリコーンレジンを含む塗料で塗装することにより、シリコーンレジンを含む塗装表面層で、基材の表面自由エネルギーに関わらず、表面自由エネルギーの小さい表面を形成することができる。
【0324】
低表面自由エネルギー層を形成することにより、汚れの濡れ性を低下させ、汚れの付着力を減少させることができる。このような表面では、除去の困難な汚れを容易に除去する事ができ、防汚性に優れた便座を提供することが出来る。
【0325】
続いて、他の実施例(フィルムを用いたもの)を示す。図14は本発明の樹脂層をフィルムインサ−ト成形で製造する場合の、便座の露出構成部品から構成される局部洗浄用便座を配した便器装置を示す斜視図である。
【0326】
図14において、便器本体11の上面に局部洗浄用便座の本体ケース12が固定され、この本体ケース12には便座12a及び便蓋12bをそれぞれ開閉自在に取り付けている。本体ケース12の内部には局部洗浄のためのノズル装置と温水の供給配管系及び洗浄後の乾燥のための温風乾燥装置等が収納され、各機能部は本体ケース12に一体に備えた操作盤12cによって行われる。
【0327】
図15は便器のロータンクと一体化されたタイプの局部洗浄用便座を設備した別の様態の便器装置を示す斜視図である。
【0328】
本発明の樹脂層を設けた、局部洗浄用便座の露出構成部品とは、12本体ケース、12a便座、12b便蓋、13aノズルロッド、13bノズルヘッド、13cロータンク内蔵の本体ケース、12c操作盤、などの事である。
【0329】
樹脂層のクリアー層14はシ−ト母材樹脂100重量部に対して3重量部のシリコ−ンレジンと、シ−ト母材樹脂100重量部に対して1重量部の無機系抗菌剤ゼオライトを分散した、200μmの厚みのメタクリル酸メチルフィルムを用い、クリアー層の下地に、ポリ塩化ビニル樹脂からなる樹脂バインダーと、茶色顔料とからなる木目柄をグラビア印刷法で形成した。図柄インキ層下地に、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂からなる接着層をグラビア印刷法で形成して、木目柄のアクリル樹脂層を得た。
【0330】
以上のようにして得た木目柄のアクリル樹脂層を、便座を製造するための可動型と固定型とからなる射出成形用金型内に配置し、樹脂層を90℃で加熱しながら真空吸引し、可動型の凹部に密着させた。型閉めした後に、金型温度を50℃〜60℃に保ちながら、230℃〜250℃に加熱されたのアクリロニトリルブタジエンポリスチレン共重合体樹脂からなる溶融樹脂を金型内に射出し、樹脂を固化させた後、一部をトリミングして成形品を得た。
【0331】
本実施例の便座及び局部洗浄用便座の露出構成部品は、撥水性などの防汚性だけでなく抗菌性も有するクリアー層を有した樹脂層を樹脂成形品表面に設けることで、樹脂成形品の機械強度などを低下させる事無く、良好な防汚性、抗菌性を兼ね備えることが可能になる。また樹脂層のクリアー層14を透明にしてクリアー層14の裏面に図柄インキ層15と接着層16を設けることで、防汚性、抗菌性を損なうことなく便座、便蓋及び局部洗浄用便座の露出構成部品の3次曲面にも図柄を施すことができる。さらに、便座及び局部洗浄用便座の露出構成部品の素材色が外観に表れないためリサイクル材等の任意の色の素材を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の実施形態の一例を示す局部洗浄便座の外観図((a);便座を上から見た図、(b);便座を横から見た図)
【図2】 図2は、本発明の実施形態の一例を示す局部洗浄便座部品である便蓋の一部の断面図である。
【図3】 図3は表面改質樹脂を転写した表面の、撥水性の効果を水の接触角で、付着汚れの取れやすさをテープ剥離力、疑似汚物付着試験、水垢付着試験で評価したものである。
【図4】 図4は表面改質樹脂を転写した表面と、表面改質樹脂を内添した表面の、撥水性の効果を水の接触角で、付着汚れの取れやすさをテープ剥離力、疑似汚物付着試験、水垢付着試験で評価したものである。
【図5】 図5は表面改質樹脂を転写した表面と、表面改質樹脂を成形後にスプレー塗装した表面をそれぞれ耐久性比較の為に水拭きした後、撥水性の効果を水の接触角で、付着汚れの取れやすさをテープ剥離力、疑似汚物付着試験、水垢付着試験で評価したものである。
【図6】 図6はシリコーンレジンを転写した表面の、撥水性の効果を水の接触角で、付着汚れの取れやすさをテープ剥離力、疑似汚物付着試験、水垢付着試験で評価したものである。
【図7】 図7はシリコーンレジンを転写した表面と、シリコーンレジンを内添した表面の、撥水性の効果を水の接触角で、付着汚れの取れやすさをテープ剥離力、疑似汚物付着試験、水垢付着試験で評価、シリコーンレジンの転写された表面積の違いによる表面の撥水性の効果を水の接触角で、付着汚れの取れやすさをテープ剥離力、疑似汚物付着試験、水垢付着試験で評価、転写後のシリコーンレジンの粒径による外観の違いを光沢度で評価したものである。
【図8】 図8は抗菌剤を混入した基材樹脂を用いて、シリコーンレジンを転写した表面とその割合による防汚性と抗菌性の違いを防汚試験、抗菌試験で評価したものである。
【図9】 図9はシリコーンレジンを転写した表面と、シリコーンレジンを成形後にスプレー塗装した表面をそれぞれ耐久性比較の為に水拭きした後、撥水性の効果を水の接触角で、付着汚れの取れやすさをテープ剥離力、疑似汚物付着試験、水垢付着試験で評価したものである。
【図10】 コロナ放電処理後にシリコーンレジンを塗布した表面とプラズマ放電処理後にシリコーンレジンを塗布した表面および放電処理をせずにシリコーンレジンを塗布した表面の、撥水性の効果を水の接触角で評価、付着汚れの取れやすさをテープ剥離力、付着汚物試験(墨汁、水垢)で評価、実使用後の汚れのとれやすさを耐久試験で評価、塗布後のシリコーンレジンの密度、粒径による外観の違いを光沢度、外観で評価したものである。
【図11】 抗菌剤を混入した基材樹脂を用いて、シリコーンレジンを転写した表面とその割合による防汚性と抗菌性の違いを防汚試験、抗菌試験で評価したものである。
【図12】 本発明の実施形態の一例を示す局部洗浄便座部品である洗浄ノズルの一部の断面図である。
【図13】 基材樹脂表面にシリコーンレジンを含んだ塗料を塗布した表面とシリコーンレジンを含まない塗料を塗布した表面および何も塗布しない表面の、防汚性の効果を水の接触角、油の接触角で評価、付着汚れの取れやすさを疑似汚物付着試験(みそ)で評価したものである。
【図14】本発明の露出構成部品から構成される局部洗浄用便座を設備した便器装置の斜視図である。
【図15】 便器のロータンクと一体化されたタイプの局部洗浄用便座を設備した便器装置を示す斜視図である。
【図16】 本発明のフィルム状もしくはシート状の樹脂層をフィルムインサ−ト成形で製造する場合の製造工程を示す。
【図17】 本発明のフィルム状もしくはシート状の樹脂層をフィルムインサ−ト成形で製造した便座の一実施例を示す断面図である。
【図18】 本発明のフィルム状もしくはシート状の樹脂層を有する便座をフィルムインサート成形で製造する場合の製造工程の一つを示す断面図である。
【図19】 本発明のフィルム状もしくはシート状の樹脂層を有する便座をフィルムインサート成形で製造する場合の製造工程の一つを示す断面図である。
【図20】 本発明のフィルム状もしくはシート状の樹脂層を有する便座をフィルムインサート成形で製造する場合のフィルムインサート成形品を示す断面図である。
【符号の説明】
1…便座シート、2…便蓋、3…本体ケース、4…洗浄ノズル、5…操作部、10…樹脂成形品、11…便器、12…本体ケース、12a…便座、12b…便蓋、12c…操作盤、13a…ノズルロッド、13b…ノズルヘッド、13c…ロータンク内蔵の本体ケース、14…クリアー層、15…図柄インキ層、16…接着層、17…射出成形用金型、18…射出口、19…溶融樹脂

Claims (4)

  1. 基材樹脂表面に、前記基材樹脂の射出成形時において前記射出成形の成形型の表面からシリコーンレジンを転写することによって、0.02〜10.00μmの薄厚の低表面自由エネルギー層を形成し、基材樹脂表面に比べて低い10dyne/cm以上28dyne/cm未満の表面自由エネルギーを有する表面としたことを特徴とする熱可塑性樹脂成形体。
  2. 請求項1記載の熱可塑性樹脂成形体が、便座シート、便蓋等の便座の構成部品の少なくとも一部品であることを特徴とする熱可塑性樹脂成形体。
  3. 請求項1記載の熱可塑性樹脂成形体が、便座シート、便蓋、本体ケース等の局部洗浄便座の構成部品の少なくとも一部品であることを特徴とする熱可塑性樹脂成形体。
  4. 請求項1記載の熱可塑性樹脂成形体が、トイレ、浴室もしくは洗面所内の、カウンター、洗面ボール、手洗いボール等の水周りにて使用される部材であることを特徴とする熱可塑性樹脂成形体。
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