JP5215891B2 - 耐候性に優れたガスバリア性フィルム - Google Patents
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Description
このような無機薄膜を形成してなるガスバリア性フィルムには、無機薄膜の基材フィルムからの剥離、欠損により生ずるガスバリア性の低下を抑止するため、基材フィルムに表面処理を施し、無機薄膜の密着性向上が行われる。表面処理方法の例としては、コロナ処理、プラズマ処理、コート処理等があり、中でもコート処理は、無機薄膜の密着性向上のほか、基材フィルムからのブリードアウトの抑止効果も得られることから有用である。しかしながら、基材フィルムにコート処理を施し無機薄膜を形成したガスバリア性フィルムは、耐候性の点からは、以下のようにコート層に最も弱さが現れる。
これに対し、耐候性を改良するために、ポリエステル面にベンゾトリアゾール系反応性紫外線吸収剤とアクリルモノマーを共重合させてなる積層膜が開示されている(特許文献3)が、これは前記無機薄膜を有する系ではなく、また、コート層紫外線カット剤を用いる方法(特許文献4)が考えられるが、この場合、経時的に紫外線カット剤が溶出、移行することが容易に推察される。
更に、太陽電池用バックカバー材の防湿フィルム、バリアフィルムのアンカーコート層、プライマー層として、アクリルウレタン樹脂(特許文献5)やポリエステル樹脂とアクリル樹脂の混合樹脂(特許文献6)や、光電子素子用の基材フィルムについてはバリアー層とポリエチレンナフタレートフィルムとの接着性を向上する下塗層としてアクリル系樹脂とメラミン系化合物とを架橋したもの(特許文献7)が開示されているが、これらについても、紫外線照射による劣化や、高温高湿による加水分解が生じ、高いガスバリア性を維持できないという問題があった。また、アルミニウム箔層および熱可塑性樹脂未延伸フィルム層の間にアクリル系ポリマー層を設ける電子部品ケース用包材が開示されている(特許文献8)が、該ポリマー層は接着剤として用いられ、また耐候性の改善に関するものではない。
(1)基材フィルム、その少なくとも一方の面に形成された耐候性コート層、及び該コート層面に形成された無機薄膜を有するガスバリア性フィルムであって、該耐候性コート層が、紫外線安定性基、紫外線吸収性基、及びシクロアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基を有するアクリル系共重合体を含むガスバリア性フィルム、及び
(2)基材フィルムの少なくとも一方の面に耐候性コート層を形成し、該コート層面に無機薄膜を形成するガスバリア性フィルムの製造方法であって、上記耐候性コート層が、重合性紫外線安定性単量体、重合性紫外線吸収性単量体、及びシクロアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも一種を共重合させて得られるアクリル系共重合体を用いて得られるガスバリア性フィルムの製造方法、
に関する。
[基材フィルム]
本発明のガスバリア性フィルムの基材フィルムとしては熱可塑性高分子フィルムが好ましく、その材料としては、通常の包装材料に使用しうる樹脂であれば特に制限なく用いることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体などのポリオレフィン、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体部分加水分解物(EVOH)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、フッ素樹脂、アクリレート樹脂、生分解性樹脂などが挙げられる。これらの中では、フィルム物性、コストなどの点から、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンが好ましい。中でも、フィルム物性の点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが特に好ましい。
また、上記基材フィルムは、公知の添加剤、例えば、帯電防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤等を含有することができる。
かかる基材フィルムは、従来公知の方法により製造することができ、例えば、原料樹脂を押出機により溶融し、環状ダイやTダイにより押出して、急冷することにより実質的に無定型で配向していない未延伸フィルムを製造することができる。また、多層ダイを用いることにより、1種の樹脂からなる単層フィルム、1種の樹脂からなる多層フィルム、多種の樹脂からなる多層フィルムを製造することができる。
この未延伸フィルムを一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、フィルムの流れ(縦軸)方向又はフィルムの流れ方向とそれに直角な(横軸)方向に延伸することにより、少なくとも一軸方向に延伸したフィルムを製造することができる。延伸倍率は任意に設定できるが、150℃熱収縮率が、0.01〜5%、更には0.01〜2%であることが好ましい。
中でもフィルム物性の点から、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムや、ポリエチレンテレフタレート及び/又はポリエチレンナフタレートと他のプラスチックの共押出二軸延伸フィルムが好ましい。
また、基材フィルムへのアンカーコート剤の塗布性、接着性を改良するため、アンカーコート剤の塗布前にフィルムに通常の化学処理、放電処理などの表面処理を施してもよい。
本発明のガスバリア性フィルムにおいては耐候性コート層を用いる。
一般に、プラスチックは、熱、水、光、酸素などにより、ポリマー鎖から水素が引き抜かれ、ラジカルが発生する。発生したラジカルは、酸素と結合して反応性が高いパーオキサイドラジカルになり、それが他のポリマー鎖の水素を引き抜いて、再びラジカルを発生すると同時に、ヒドロキシパーオキサイド基を形成する。ヒドロキシパーオキサイド基は、ヒドロキシラジカルとオイサイドラジカルに分解し、これらが他のポリマー鎖の水素を引き抜き、再びラジカルを発生させる。このような過程でプラスチックの劣化が生じる。
従って、プラスチックの劣化を防止するには、熱、水、光などによるラジカルの発生を抑制するか、分解過程を抑制する必要がある。
上記観点から、耐候性コート層を構成する樹脂としては、アクリル系共重合体を用いる。
また、紫外線吸収性基とは、照射される紫外線を吸収することにより、ラジカルの発生を抑制するものであり、この点から、具体的にはベンゾトリアゾール基及び/又はベンゾフェノン基が好ましく挙げられる。
シクロアルキル基は、耐候性コート層を構成するアクリル系共重合体等の樹脂に耐水性及び耐水蒸気透過性を付与する作用を有するものである。
上記アクリル系共重合体は、少なくとも、重合性紫外線安定性単量体、重合性紫外線吸収性単量体、及びシクロアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも一種を共重合させて得ることができる。
重合性紫外線安定性単量体は、ヒンダードアミン基を有するものが好ましく、より好ましくは、ヒンダードアミン基と重合性不飽和基をそれぞれ分子内に少なくとも1個有するものである。
重合性紫外線安定性単量体として、好ましくは下記式(1)又は(2)で表される化合物である。
R2及びR3の各々で表される炭素数1又は2の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基である。
本発明に用いられる重合性紫外線吸収性単量体としては、重合性ベンゾトリアゾール類及び/又は重合性ベンゾフェノン類が好ましく挙げられる。
重合性ベンゾトリアゾール類
本発明において、重合性ベンゾトリアゾール類としては、具体的には、下記式(3)で表される化合物が好ましい。
Yで表される置換基としては、水素;フッ素、塩素、シュウ素、ヨウ素などのハロゲン;R5で表される炭素数1〜8の炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘプトキシ基など炭素数1〜8の低級アルコキシ基;シアノ基;ニトロ基が挙げられ、反応性の点で、好ましくは水素原子、塩素原子、メトキシ基、t−ブチル基、シアノ基、ニトロ基である。
前記一般式(4)で表される紫外線吸収性単量体としては、たとえば、2−〔2' ヒドロキシ−5' −(β−メタクリロイルオキシエトキシ)−3' −t−ブチルフェニル〕−4−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2' ヒドロキシ−5' −(β−アクリロイルオキシエトキシ)−3' −t−ブチルフェニル〕−4−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2' ヒドロキシ−5' −(β−メタクリロイルオキシn−プロポキシ)−3' −t−ブチルフェニル〕−4−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2' ヒドロキシ−5' −(β−メタクリロイルオキシi−プロポキシ)−3' −t−ブチルフェニル〕−4−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾールが挙げられられ、紫外線吸収性の点から、好ましくは2−[2’−ヒドロキシー5’−(β−メタクリロイルオキシエトキシ)−3’−t−ブチルフェニル]−4−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾールである。一般式(4)で表されるこれら紫外線吸収性単量体は一種類のみを用いてもよく、また二種類以上を適宜混合してもよい
重合性紫外線吸収性単量体として用いられる重合性ベンゾフェノン類としては、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン又は、2,2′,4−トリヒドロキシベンゾフェノンとグリシジルアクリレート又は、グリシジルメタクリレートを反応して得られる2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン等のモノマーが挙げられる。原料汎用性の点で、好ましくは2−ヒドロキシー4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノンである。
本発明においては、重合性紫外線吸収性単量体としては、共重合反応性の点から、前記ベンゾトリアゾール類が好ましい。
本発明に用いられるシクロアルキル(メタ)アクリレートは、得られるアクリル共重合体を特に二液ウレタン樹脂塗料用として使用する場合、塗膜の硬度、弾性、耐溶剤性、耐ガソリン性、耐候性の向上のために用いられる成分である。シクロアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレートなどを好ましく挙げることができる。これらは1種で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。該シクロアルキル(メタ)アクリレートは重合性単量体成分中、好ましくは5〜80質量%、より好ましくは10〜70質量%、更に好ましくは15〜50質量%の範囲で使用する。使用量が上記範囲内であれば、塗膜の硬度、耐候性等の性能が充分に発揮され、乾燥性及びレベリング性が両立して得られ好ましい。
上記耐候性コート層は、アクリル系共重合体が架橋性官能基を有し、架橋性化合物と架橋することにより形成されることが好ましい。これにより、上記アクリル系共重合体は架橋構造を有することになるため、コート層の物性や耐候性が向上し、その結果、優れた耐候性能が長期に渡って維持されることになる。
上記アクリル系共重合体が有する架橋性官能基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基又はその無水物、エポキシ基、アミド基等が挙げられる。これらの架橋性官能基は、アクリル系共重合体中に1種存在してもよく、2種以上存在してもよい。本発明においては、これらの架橋性官能基の中でも、水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の活性水素を有する基が、安定性の点で好ましい。
架橋性官能基を含有する重合性単量体は、得られるアクリル系共重合体にポリイソシアネートをはじめその他の架橋性化合物を配合して熱硬化型塗料用樹脂組成物とする場合に、それら架橋性化合物との反応に必要な成分であり、全重合性単量体成分中2〜35質量%、好ましくは3.5〜23質量%の範囲で使用する。上記使用量範囲であれば、得られるアクリル系共重合体中の架橋性官能基の量が適性であり、該アクリル系共重合体と架橋性化合物との反応性が維持され、架橋密度が十分となり、目的とする塗膜性能が得られる。また、架橋性化合物を配合した後の保存安定性も良好である。
本発明においては、アクリル系共重合体を形成するためのその他の重合性不飽和単量体を用いることができる。
本発明に用いられるその他の重合性不飽和単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N′−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、ビニルイミダゾールなどの窒素含有不飽和単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン含有不飽和単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族不飽和単量体;酢酸ビニルなどのビニルエステル;ビニルエーテル;(メタ)アクリロニトリルなどの不飽和シアン化合物などを挙げることができ、これらの群から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。
上記単量体を用いてアクリル系共重合体を得る方法は、特に限定されず従来公知の重合法を用いることができる。
例えば、溶液重合法を採用する場合、使用できる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレンやその他の高沸点の芳香族系溶剤;酢酸エチル,酢酸ブチルやセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルソブチルケトンなどのケトン系溶剤;イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノールなどの脂肪族アルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル類などを挙げることができ、これらの1種又は2種以上の混合物を使用することができる。
反応温度や反応時間などの反応条件としては、特に限定されず、例えば反応温度は室温から200℃の範囲、好ましくは40〜140℃の範囲である。反応時間は、単量体成分の組成や重合開始剤の種類に応じて、重合反応が完結するように適宜設定できる。
具体的には、上記観点から、前記アクリル系共重合体は、少なくとも、以下の(1)〜(8)の組合せの官能基を有することが好ましく、(1)〜(4)の組合せの官能基を有することがより好ましく、(1)及び(2)の組合せの官能基を有することが更に好ましい。
(1)ヒンダードアミン基/ベンゾトリアゾール基/シクロアルキル基
(2)ヒンダードアミン基/ベンゾトリアゾール基/シクロアルキル基/架橋性官能基
(3)ヒンダードアミン基/ベンゾフェノン基/シクロアルキル基
(4)ヒンダードアミン基/ベンゾフェノン基/シクロアルキル基/架橋性官能基
(5)紫外線吸収性基/シクロアルキル基
(6)紫外線吸収性基/シクロアルキル基/架橋性官能基
(7)ヒンダードアミン基/シクロアルキル基
(8)ヒンダードアミン基/シクロアルキル基/架橋性官能基
架橋性化合物としては、上述した架橋性官能基と架橋硬化反応する官能基を1分子当たり2個以上含む化合物又は重合体であれば特に限定されず、上記アクリル系共重合体が有する官能基の種類に応じて1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
例えば、アクリル系共重合体が有する架橋性基が水酸基であれば、架橋性化合物として例えば、フェノール基、エポキシ基、メラミン基、イソシアネート基、ジアルデヒド基を持つ化合物又は重合体が例示される。架橋反応性、ポットライフの点で、エポキシ基、メラミン基、イソシアネート基を含有する化合物又は重合体が好ましく、ポットライフ制御の点から特にイソシアネート基が好ましい。
本発明においては、架橋性官能基が水酸基であり、架橋性化合物がイソシアネート化合物である組み合わせが二液反応性コート剤として、成分の反応性、及びそれに由来する耐候性、コート層の硬度・柔軟性の点で望ましい。
また、上記架橋性化合物は、架橋反応を促進させるために、塩類や無機物質、有機物質、酸物質、アルカリ物質等の架橋触媒を1種又は2種以上添加してもよい。例えば、架橋性化合物としてポリイソシアネート化合物を用いる場合、ジブチル錫ジラウレート、第3級アミン等の公知の触媒を1種又は2種以上添加が例示される。
また、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、安定剤、潤滑剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤等を含有したり、それらを上記樹脂と共重合させたものを使用することができる。
耐候性コート層は、公知のコーティング方法を適宜採択して形成することができる。例えば、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクタコーター、スプレイあるいは刷毛を用いたコーティング方法等の方法がいずれも使用できる。また、蒸着フィルムを樹脂液に浸漬して行ってもよい。塗布後は、80〜200℃程度の温度での熱風乾燥、熱ロール乾燥などの加熱乾燥や、赤外線乾燥などの公知の乾燥方法を用いて溶媒を蒸発させることができる。また、耐水性、耐久性を高めるために、電子線照射による架橋処理を行うこともできる。
また、耐候性コート層による基材フィルム表面の平坦化により、無機薄膜を形成する粒子が緻密に堆積し、且つ均一な厚さに形成しやすいことから、高いガスバリア性を得ることができる。
無機薄膜の形成方法としては、蒸着法、コーティング法などの方法がいずれも使用できるが、ガスバリア性の高い均一な薄膜が得られるという点で蒸着法が好ましい。この蒸着法には、物理気相蒸着(PVD)、あるいは化学気相蒸着(CVD)などの方法が含まれる。物理気相蒸着法には、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングなどが挙げられ、化学気相蒸着法には、プラズマを利用したプラズマCVD、加熱触媒体を用いて材料ガスを接触熱分解する触媒化学気相成長法(Cat−CVD)等が挙げられる。
本発明のガスバリア性フィルムにおいては、無機薄膜の最上層を保護するために、保護層を有してもよい。該保護層を形成する樹脂としては、溶剤性及び水性の樹脂をいずれも使用することができ、具体的には、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂系、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレンビニルアルコール系樹脂、ビニル変性樹脂、ニトロセルロース系樹脂、シリコン系樹脂、イソシアネート系樹脂、エポキシ系樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性スチレン系樹脂、変性シリコン系樹脂、アルキルチタネート等を単独であるいは2種以上組み併せて使用することができる。また、保護層としては、バリア性、摩耗性、滑り性向上のためシリカゾル、アルミナゾル、粒子状無機フィラー及び層状無機フィラーから選ばれる1種以上の無機粒子を前記1種以上の樹脂に混合してなる層、又は該無機粒子存在下で前記樹脂の原料を重合させて形成される無機粒子含有樹脂からなる層を用いることが出来る。
また、保護層として、ポリビニルアルコール及びエチレン・不飽和カルボン酸共重合体を含有する水性液を塗布してなる樹脂層を用いることができる。
本発明のガスバリア性フィルムの製造方法は、基材フィルムの少なくとも一方の面に耐候性コート層を形成し、該コート層面に無機薄膜を形成するガスバリア性フィルムの製造方法であって、上記耐候性コート層が、重合性紫外線安定性単量体、重合性紫外線吸収性単量体、及びシクロアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも一種を反応させて得られるアクリル系共重合体を用いて得られるものである。各構成層、耐候性コート層を形成するアクリル系共重合体については、前述の通りである。
また、前記耐候性コート層として、架橋性官能基を有する上記アクリル系共重合体、及び架橋性化合物を反応させて得られたものが好ましいことも前述の通りである。
本発明のガスバリア性フィルムの耐候性向上方法は、基材フィルム、その少なくとも一方の面に形成されたコート層、及び該コート層面に形成された無機薄膜を有するガスバリア性フィルムにおいて、該コート層に、紫外線安定性基、紫外線吸収性基、及びシクロアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基を有するアクリル系共重合体を用いるものである。各構成層、耐候性コート層を形成するアクリル系共重合体については、前述の通りである。また、前記コート層としては、架橋性官能基を有する上記アクリル系共重合体、及び架橋性化合物を反応させて得られたものが好ましい。
得られたガスバリア性フィルム、又は耐光試験後のガスバリア性フィルムの無機薄膜面に、ウレタン系接着剤(三井化学ポリウレタン(株)製「タケラックA543」と「タケネートA3」とを配合)を塗布、80℃で1分乾燥し、厚さ約10μmの接着樹脂層を形成し、この接着樹脂層上に、厚さ60μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績(株)製「パイレンフィルム−CT P1146」)をラミネート、40℃×3日エージングし、積層体を得た。
次いで、該積層体について、JIS Z1707に準じ、積層体を幅15mmの短冊状に切り出し、その端部を一部剥離させ、剥離試験機(島津製作所製、製品名EZ−TEST)により100mm/分の速度でT型剥離を行い、接着強度(g/15mm)を測定した。
耐光性試験前後のガスバリア性フィルムを各々用いたラミネート積層体について、JIS Z0222「防湿包装容器の透湿度試験方法」、JIS Z0208「防湿包装材量の透湿度試験方法(カップ法)」の諸条件に準じ、水蒸気透過率を測定した。
透湿面積7.0cm×7.0cm角のガスバリア性フィルムを2枚用い、吸湿剤として無水塩化カルシウム約10gを入れ四辺を封じた袋を作製し、その袋を温度40℃相対湿度90%の恒温恒湿装置に入れ、72時間以上間隔で質量増加がほぼ一定になる目安として14日間まで、質量測定(0.1mg単位)し、水蒸気透過率を下記式から算出した。
水蒸気透過率(g/m2/24h)=(m/s)/t
m; 試験期間最後2回の秤量間隔の増加質量(g)
s; 透湿面積(m2)
t; 試験期間最後2回の秤量間隔の時間(h)/24(h)
<高温高湿試験>
(1)得られたラミネート積層体を、60℃×90RH%下に30日間保管した。
(2)得られたラミネート積層体を、85℃×85RH%下に30日間保管した。
<耐光試験>
得られたガスバリア性フィルムを、無機薄膜面側をウエザロメーター(キセノン型スガ試験機製WBL 75XS)の光源へ向けて、面照射照度60W/m2、測定波長300〜400nm、ブラックパネル温度63℃、相対湿度50%の条件で200時間照射した。
得られたガスバリア性フィルムを樹脂に包埋し、その断面方法に超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡で観測した。
<無機薄膜の組成分析>
得られたガスバリア性フィルムの無機薄膜面について、島津製作所製ESCA−3400を用い元素組成を分析した。
基材フィルムとして、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン製、「Q51C12」)を用い、そのコロナ処理面に、下記のコート液を塗布乾燥して厚さ0.1μmのコート層を形成した。
次いで、真空蒸着装置を使用して1.33×10-3Pa(1×10-5Torr)の真空下でSiOを高周波加熱方式で蒸発させ、コート層上に厚さ20nmのSiOx(x=1.7)薄膜を有する薄膜ガスバリア性フィルムを得た。
コート液
攪拌機、温度計、冷却器、窒素ガス導入管のついた四つ口フラスコに窒素ガス気流下、酢酸エチル100質量部を仕込み、80℃に昇温した中に、表1−1に示す重合性単量体成分からなる原料とベンゾイルパーオキサイド1質量部の混合物を2時間かけて滴下し、更に80℃で4時間保持して、アクリル系共重合体の50質量%溶液を得た。
次いで、このアクリル樹脂溶液に、エポキシ系共重合体(ナガセケムテックス(株)製「デコナールEX622」)をカルボキシル基に対するエポキシ基の当量比が1:1になるように混合した。
表1−1に示す重合性単量体成分からなる原料を用いてアクリル系共重合体溶液を作製し、次いで、このアクリル系共重合体溶液に、イソシアネート樹脂(住友バイエルウレタン(株)製「スミジュールN−3200」を水酸基に対するイソシアネート基の当量比が1:1になるように混合した以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
実施例10のガスバリア性フィルムの無機薄膜面上に、メタクリル酸とメタクリル酸ブチル(質量比25:75)の共重合体のアンモニウム塩水溶液を塗布、乾燥させ厚さ0.3μmの保護層を形成した。
実施例10のガスバリア性フィルムの無機薄膜面上に、プラズマCVD装置を使用して、原料としてテトラエトキシシラン、反応ガスとして酸素、窒素、アルゴンを用い、8x10-2Torrの真空下において、13.56MHz高周波放電プラズマ源で1kW印加し、SiOxNy(x=1.6、y=0.2)膜、薄膜厚さ20nmのプラズマCVD膜を成膜した。次いで、プラズマCVD膜面上に、実施例1と同様にして真空蒸着膜を成膜し、無機薄膜3層のガスバリア性フィルムを得た。
コート液として、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業製「コロネートL」)と飽和ポリエステル(東洋紡績製「バイロン300」)とを1:1質量比で混合して得られるものを用いた以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
コート液として、アクリル系共重合体として三井化学ポリウレタン製「タケラックUA−902」、芳香族イソシアネートとしてトリレンジイソシアネート(TDI)(三井化学ポリウレタン製「コスモネート80」)を、水酸基価とイソシアネート基価の当量が1:1になるように混合して用いた以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
コート液として、ポリエステル樹脂として高松樹脂製「ペスレジンA−120」、アクリル樹脂としてジョンソンポリマー製「JDX−6500」を固形分比率1:1になるように混合して用いた以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
実施例2において、アクリル系共重合体溶液の原料単量体を表1−2に示すように代えた以外は、同様にしてコート液を作製し、ガスバリア性フィルムを得た。
実施例10の原料単量体において、単量体a−1とb−2を除き、ヒンダードアミン系紫外線安定剤(HALS)としてチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製「TINUVIN 123」を、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(UVA)としてチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製「TINUVIN PS」を樹脂固形分比としてそれぞれ2質量%、35質量%添加して、アクリル樹脂溶液を作製した。次いで、このアクリル樹脂溶液に、イソシアネート樹脂(住友バイエルウレタン(株)製「スミジュールN−3200」を、水酸基に対するイソシアネート基の当量が1:1になるように混合した以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
エチルアクリレート67.5ml、メチルメタクリレート66.4ml、イタコン酸21.3g、p−スチレンスルホン酸ナトリウム51gをイオン交換水250mlに溶解した水溶液、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム8mlを水100mlに溶解した水溶液、硫酸アンモニウム2gを水20mlに溶解した水溶液、イオン交換水505mlを用い、乳化重合法で、エチルアクリレート/メチルメタクリレート/イタコン酸/p−スチレンスルホン酸共重合体(37.5:37.5:10:15モル比)を作製した。上記アクリル共重合体3質量%と、界面活性剤としてICI製「Synperonic NP10」0.03%、メラミン系架橋性化合物として三井サイテック製「サイメル300」0.3%、p−トルエンスルホン酸アンモニウム10%水溶液0.03%を混合配合した以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
なお、上記実施例及び比較例において用いた単量体は以下の通りである。
(重合性紫外線安定性単量体)
a−1:4−メタクリロイルオキシー2,2,6,6、−テトラメチルピペリジン
a−2:4−メタクリロイルオキシー2,2,6,6、−ペンタメチルピペリジン
a−3:1−メタクリロイルー4−メタクリロイルアミノー2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
b−1:2−ヒドロキシー4−(3−メタクリロイルオキシー2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン
b−2:2−[2’−ヒドロキシー5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール
b−3:2−[2’−ヒドロキシー5’−(Β−メタクリロイルオキシエトキシ)−3’−t−ブチルフェニル]−4−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール
(シクロアルキル(メタ)アクリレート)
c−1:シクロヘキシルメタクリレート
c−2:t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート
(水酸基を有する重合体不飽和単量体)
d−1:ヒドロキシプロピルアクリレート
d−2:ヒドロキシエチルメタクリレート
e−1:n−ブチルメタクリレート
e−2:n−ブチルアクリレート
e−3:2−エチルヘキシルアクリレート
e−4:メチルメタクリレート
e−5:エチルアクリレート
e−6:メタクリル酸
e−7:イタコン酸
e−8:p-トルエンスルホン酸
Claims (12)
- 基材フィルム、その少なくとも一方の面に形成された耐候性コート層、及び該コート層面に蒸着法で形成された厚さ0.1〜500nmの無機薄膜層を有するガスバリア性フィルムであって、該基材フィルムが、厚さ5〜500μmのポリエステルフィルムであり、該耐候性コート層が、少なくとも、紫外線安定性基、紫外線吸収性基及びシクロアルキル基を有するアクリル系共重合体を含むガスバリア性フィルム。
- 紫外線安定性基がヒンダードアミン基であり、かつ紫外線吸収性基がベンゾトリアゾール基及び/又はベンゾフェノン基である、請求項1記載のガスバリア性フィルム。
- 耐候性コート層が、前記アクリル系共重合体と架橋性化合物とを反応させて得られたものである、請求項1又は2に記載のガスバリア性フィルム。
- 耐候性コート層が、ヒンダードアミン基、ベンゾトリアゾール基及び/又はベンゾフェノン基、並びにシクロアルキル基と、水酸基とを有するアクリル系共重合体をイソシアネート化合物と反応させてなるものである、請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
- アクリル系共重合体が、少なくとも、重合性紫外線安定性単量体、重合性紫外線吸収性単量体、及びシクロアルキル(メタ)アクリレートを共重合させて得られるものである、請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
- 無機薄膜層が無機酸化物からなる、請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
- 無機薄膜層が少なくとも2層の無機薄膜層からなる、請求項1〜6のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
- 基材フィルムが、ポリエチレンナフタレートを含む二軸延伸フィルムである、請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
- 基材フィルムの少なくとも一方の面に耐候性コート層を形成し、該コート層面に蒸着法で厚さ0.1〜500nmの無機薄膜を形成するガスバリア性フィルムの製造方法であって、上記基材フィルムが、厚さ5〜500μmのポリエステルフィルムであり、上記耐候性コート層が、少なくとも、重合性紫外線安定性単量体、重合性紫外線吸収性単量体、及びシクロアルキル(メタ)アクリレートを共重合させて得られるアクリル系共重合体を用いるガスバリア性フィルムの製造方法。
- アクリル系共重合体が架橋性官能基を有する、請求項9に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
- 耐候性コート層が、架橋性官能基を有する前記アクリル系共重合体、及び架橋性化合物を反応させて得る、請求項10記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
- 基材フィルム、その少なくとも一方の面に形成されたコート層、及び該コート層面に蒸着法で形成された厚さ0.1〜500nmの無機薄膜を有するガスバリア性フィルムにおいて、該基材フィルムが、厚さ5〜500μmのポリエステルフィルムであり、該コート層に、少なくとも、紫外線安定性基、紫外線吸収性基及びシクロアルキル基を有するアクリル系共重合体を用いる、ガスバリア性フィルムの耐候性向上方法。
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