JP2021169163A - 積層フィルムロール、それを用いたフィルム積層体ロール - Google Patents

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Abstract

【課題】基材フィルムの片面側にアンカー層及び無機物層を備えた積層フィルムに関し、より高いガスバリア性を実現することができる新たな積層フィルム及びその製造方法、さらには、該積層フィルムを用いたフィルム積層体を提供する。【解決手段】基材フィルム(1)の少なくとも片面に、アンカー層及び無機物層が順次積層してなる構成を備えた積層フィルムであって、熱機械分析(TMA)における105〜120℃の平均線膨張率が、長手方向−7×10-4〜0/℃であり、且つ幅方向−1×10-3〜0/℃である積層フィルムロールである。【選択図】なし

Description

本発明は、ガスバリア性に優れた積層フィルムロール、及び、それを用いたフィルム積層体ロールに関する。
従来から、プラスチックフィルムを基材とし、無機酸化物蒸着層などの無機物を主材とする層(「無機物層」と称する)を前記基材の表面に形成した構成のガスバリア性積層フィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、例えば、食品や工業用品及び医薬品等の変質防止用包装に広く利用されている。
また、このガスバリア性積層フィルムについては、包装用途以外にも、近年、液晶表示素子、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネル、EL用基板、カラーフィルターなど、新しい用途も注目されている。
このような無機物層を有するガスバリア性積層フィルムに関しては、種々の改良検討がされている。
例えば、透明性及びガスバリア性と共に、デラミネーション等の発生がない耐ボイル性及び耐レトルト性を持たせる観点から、プラスチック基材の少なくとも片面に、官能基含有シランカップリング剤又はシランカップリング剤の加水分解物とポリオール及びイソシアネート化合物との複合物からなるプライマー層、及び厚さ5〜300nmの無機酸化物薄膜層を順次積層してなる蒸着フィルムが開示されている(特許文献1)。
また、優れたガスバリア性及び構成層間の密着強度の観点から、基材フィルム/無機薄膜層/アンカー層/無機薄膜層からなり、アンカー層の厚みが0.1〜10nmである極薄いガスバリア性積層フィルムが開示されている(特許文献2)。
さらに、プラスチック基材の片面又は両面に、酸化ケイ素膜(SiOx)をバリア層として積層してなるバリアフィルムにおいて、前記バリア層が少なくとも2層以上の酸化ケイ素膜で構成されており、前記酸化ケイ素膜1層あたりの膜厚が10nm以上50nm以下であり、前記2層以上の酸化ケイ素膜で構成されているバリア層の膜厚が20nm以上200nm以下であり、前記バリア層中の炭素原子の割合が10at.%以下である、ガスバリア性積層フィルムが開示されている(特許文献3)。
他方、生分解性フィルムであるポリ乳酸フィルムのガスバリア性を高めるべく、種々の提案がなされている。
例えば、ポリ乳酸フィルムの結晶、非晶領域の割合を調整することで、密着性とガスバリア性との両立を図ることが開示されている(特許文献4)。
また、ポリ乳酸フィルムの面配向、結晶融解熱量を特定範囲にすることでガスバリア性と透明性との両立を図ることが開示されている(特許文献5)。
さらに、ポリ乳酸フィルム上にシランカップリング剤を含むアンカー層を設けることで層間密着性が良好であるガスバリア性フィルムが開示されている(特許文献6)。
特開2000−238172号公報 国際公開2007−034773号パンフレット 特開2009−101548号公報 特許4452574号公報 特開2006−69218号公報 特開2013−233658号公報
無機物層を有するガスバリア性積層フィルムに関しては、上述のように、ガスバリア性を高めるために種々の検討がなされてきた。しかし、フィルム製造工程において熱が掛かると、ガスバリア性が低下する場合が認められた。特にポリ乳酸フィルムやポリオレフィンフィルムなど、耐熱性に劣るフィルムを基材フィルムとして使用した場合、この傾向が強く、熱が掛かるとガスバリア性が低下するという課題が顕著であった。
本発明の目的は、基材フィルムの少なくとも片面側にアンカー層、無機物層を順次備えた積層フィルムロールに関し、ポリ乳酸フィルムなど、耐熱性に劣るフィルムを基材フィルムとして使用した場合であっても、ガスバリア性の低下を防ぐことができ、密着性(ラミネート強度)も良好である、新たな積層フィルムロール、並びに、これを用いたフィルム積層体ロールを提供することにある。
本発明は、基材フィルム(1)の少なくとも片面に、アンカー層及び無機物層が順次積層してなる構成を備えた積層フィルムであって、熱機械分析(TMA)における105〜120℃の平均線膨張率が、長手方向−7×10-4〜0/℃であり、且つ幅方向−1×10-3〜0/℃である積層フィルムロールを提案する。
本発明はまた、上記積層フィルムロールを構成する積層フィルムと、基材フィルム(2)とが、接着剤を介してラミネートされてなる構成を備えたフィルム積層体ロールを提案する。
本発明が提案する積層フィルムロールは、基材フィルム上にアンカー層及び無機物層を順次積層してなる構成において、熱処理時のフィルム変形量が小さいという特徴を有する。ゆえに、耐熱性に乏しい基材フィルムを用いた場合であっても、熱処理時における無機物層のクラック発生を防止することができ、所望するガスバリア性を得ることができる。よって、本発明が提案する積層フィルムロール及びこれを用いたフィルム積層体ロールは、例えば、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、例えば、食品や工業用品及び医薬品等の変質防止用の包装材料として広く利用することができる。また、包装用途以外にも、液晶表示素子、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネル、EL用基板、カラーフィルターなど、各種部材に好適に利用することができる。
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
<<本積層フィルムロール>>
本発明の実施形態の一例に係る積層フィルムロール(「本積層フィルムロール」と称する)は、基材フィルム(「本基材フィルム」と称する)の少なくとも片面側に、アンカー層および無機物層をこの順に積層してなる構成を備えた積層フィルムロールである。
なお、本積層フィルムロールは、長尺フィルムからなるロール体であるが、当該ロール体を適宜大きさにカットした積層フィルムについても、以下説明する本積層フィルムロールと同様である。よって、以下の説明における本積層フィルムロールを積層フィルムに置き換えることができる。
<平均線膨張率>
本積層フィルムロールは、本基材フィルムの少なくとも片面側にアンカー層及び無機物層を順次積層してなる構成において、ガスバリア性と密着性との両立を図るために、熱処理時のフィルム変形量を小さくする。そのため、本基材フィルム上にアンカー層および無機物層を設ける際の加工温度雰囲気下におけるフィルムの寸法変化を抑制するようにした。さらに本発明は、熱機械分析(TMA)の測定温度を条件1〜条件3の3区間に分けて、条件1を満足することを必須要件とするものである。それに加えて、条件2および/または条件3を満足するのが好ましく、最も好ましくは条件1〜条件3を同時に満足するのがよい。
条件1:熱機械分析(TMA)における105〜120℃の平均線膨張率を、長手方向−7×10-4〜0/℃とし、且つ幅方向−1×10-3〜0/℃とする。好ましくは、長手方向−6×10-4〜0/℃とし、且つ幅方向−1×10-3〜0/℃とする。
条件2:条件1を満足した上で、さらに、熱機械分析(TMA)における90〜105℃の平均線膨張率を、長手方向×10-4〜0/℃とし、且つ幅方向−3×10-4〜0/℃とするのが好ましい。中でも、長手方向−5×10-4〜0/℃とし、且つ幅方向−5×10-5〜0/℃とするのがより好ましい。
条件3:条件1および/または条件2を満足した上で、さらに、熱機械分析(TMA)における75〜90℃の平均線膨張率を、長手方向−2×10-4〜0/℃とし、且つ幅方向0〜2×10-4/℃とするのが好ましい。中でも、長手方向−1×10-4〜0/℃とし、且つ幅方向0〜2×10-4/℃とするのがより好ましい。
本積層フィルムロールにおいて、熱機械分析(TMA)における各温度範囲の平均線膨張率を上記範囲にするための具体的手段として、例えば、本積層フィルムロールを構成する本基材フィルムの各温度範囲の平均線膨張率を調整するのが好ましい。そのためには、本基材フィルム、特にポリ乳酸フィルムの製造条件に関して、比較的低い延伸条件下、例えば長手方向及び幅方向の延伸倍率を3.0倍以下とし、且つ、横方向の延伸倍率>長手方向の延伸倍率とし、さらには、高温で熱処理する、例えば100℃を超える温度で熱処理する方法などを例示することができる。但し、この方法に限定するものではない。
<本基材フィルム>
本積層フィルムロールを構成する本基材フィルムは、透明性を有し、且つ、必要十分な剛性を備えたフィルムであれば、材質及び構成を限定するものではない。
本基材フィルムは、単層構成であっても、多層構成であってもよい。
本基材フィルムが多層構成の場合、2層又は3層構成であってもよいし、4層又はそれ以上の多層であってもよい。
本基材フィルムが耐熱性に乏しいほど、本発明の効果をより享受できる。かかる観点から、本基材フィルムは、ガラス転移温度(Tg)が55〜65℃であるものが好ましく、中でも58℃以上或いは65℃以下、その中でも60℃以上或いは65℃以下であるものがさらに好ましい。
本基材フィルムは、上記と同様の観点から、例えばポリ乳酸フィルムまたはポリオレフィンフィルムであるのが好ましい。但し、これらに限定するものではない。
なお、本発明において、「ポリ乳酸フィルム」または「ポリオレフィンフィルム」とは、当該フィルムが単層構成であっても多層構成であっても、ポリ乳酸樹脂またはポリオレフィン樹脂を主成分樹脂とする層を備えたフィルムを意味する。好ましくは、ポリ乳酸樹脂またはポリオレフィン樹脂を主成分樹脂とする層が主層であるフィルムである。
その中でも、本基材フィルムが単層構成であっても、多層構成であっても、各層の主成分樹脂がポリ乳酸樹脂またはポリオレフィン樹脂であるものが好ましい。
この際、「主層」とは、単層フィルムの場合には当該層であり、多層フィルムの場合には、フィルムを構成する層の中で最も厚み割合の大きな層を意味する。
また、「主成分樹脂」とは、各層を構成する樹脂のうち最も含有割合の多い樹脂を意味し、例えば各層を構成する樹脂のうち50質量%以上、特に70質量%以上、中でも80質量%以上(100質量%を含む)を占める樹脂である。
上記のポリ乳酸フィルムまたはポリオレフィンフィルムは、ポリ乳酸樹脂またはポリオレフィン樹脂を主成分樹脂とする層を備えていれば、ポリ乳酸樹脂またはポリオレフィン樹脂以外の樹脂或いは樹脂以外の成分を含有していてもよい。
(ポリ乳酸樹脂)
上記のポリ乳酸樹脂は、D−乳酸もしくはL−乳酸の単独重合体、またはこれらの共重合体である。すなわち、上記のポリ乳酸樹脂は、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、及び、L−乳酸とD−乳酸の共重合体であるポリ(DL−乳酸)のうちの何れか、又は、これらの混合樹脂であればよい。また、D−乳酸とL−乳酸との共重合比の異なる複数の上記共重合体の混合樹脂であってもよい。
上記L−乳酸とD−乳酸との共重合体は、D−乳酸とL−乳酸との共重合比(以下「D/L比」と略する。)は、好ましくは「3/97」〜「15/85」または「85/15」〜「97/3」であり、より好ましくは「5/95」〜「15/85」または「85/15」〜「95/5」であり、さらに好ましくは「8/92」〜「15/85」または「85/15」〜「92/8」であり、特に好ましくは「10/90」〜「15/85」または「85/15」〜「90/10」である。
D/L比が異なるポリ乳酸(「PLA」とも称する)をブレンドすることも可能であり、ブレンドした方がポリ乳酸樹脂のD/L比をより容易に調整できるので、より好ましい。この場合、複数の乳酸系重合体のD/L比を、平均した値が上記範囲内に入るようにすればよい。使用用途に合わせて、D/L比の異なるポリ乳酸樹脂を2種以上ブレンドし、結晶性を調整することで、耐熱性と熱収縮特性とのバランスを図ることができる。
上記ポリ乳酸樹脂は、上記PLAの本質的な性質を損なわない範囲内であれば、少量の共重合成分を共重合させてもよい。
当該共重合成分としては、例えば、乳酸以外のα−ヒドロキシカルボン酸、テレフタル酸等の非脂肪族ジカルボン酸、コハク酸等の脂肪族ジカルボン酸、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の非脂肪族ジオール、エチレングリコール等の脂肪族ジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
乳酸以外のα−ヒドロキシカルボン酸単位としては、例えばグリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類を挙げることができる。
また、前記ジオール単位としては、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール,1,4−シクロへキサンジメタノール等を挙げることができる。また、前記ジカルボン酸単位としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカン二酸等を挙げることができる。
乳酸と、乳酸以外のα−ヒドロキシカルボン酸等との共重合体における共重合比は特に限定されない。中でも、乳酸の占める割合が高いほど、石油資源の消費が少ないため好ましく、また後述するビカット軟化点の範囲を超えない程度の割合で共重合すると好ましい。
具体的には、乳酸と、乳酸以外のα−ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオール、または脂肪族ジカルボン酸との共重合体の共重合比は、乳酸/乳酸以外のα−ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオール、または脂肪族ジカルボン酸=「95/5」〜「10/90」、好ましくは「90/10」〜「20/80」、さらに好ましくは「80/20」〜「30/70」である。
共重合比が上記範囲内であれば、剛性、透明性、耐衝撃性などの物性バランスの良好なフィルムを得ることができる。また、これらの共重合体の構造としては、ランダム共重
合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が挙げられ、いずれの構造でもよい。但し、フィルムの耐衝撃性および透明性の観点から、ブロック共重合体またはグラフト共重合体が好ましい。
上記ポリ乳酸樹脂は、また、分子量増大を目的として、少量の鎖延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物等を含有することもできる。
ポリ乳酸樹脂の質量平均分子量は、20,000以上、好ましくは40,000以上、さらに好ましくは60,000以上であり、上限が400,000以下、好ましくは350,000以下、さらに好ましくは300,000以下である。ポリ乳酸樹脂の質量平均分子量が20,000以上であれば、適度な樹脂凝集力が得られ、フィルムの強伸度が不足する、または脆化を抑制できる。一方、質量平均分子量が400,000以下であれば、溶融粘度を下げることができ、製造、生産性向上の観点からは好ましい。
上記ポリ乳酸樹脂の重合法としては、縮合重合法、開環重合法など、公知の方法を採用することも可能である。例えば縮合重合法であれば、D−乳酸、L−乳酸、または、これらの混合物を直接脱水縮合重合して任意の組成を有するポリ乳酸樹脂を得ることができる。また、開環重合法では、乳酸の環状2量体であるラクチドを、必要に応じて重合調整剤などを用いながら、所定の触媒の存在下で開環重合することにより任意の組成を有するポリ乳酸樹脂を得ることができる。上記ラクチドには、L−乳酸の二量体であるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより、任意の組成、結晶性を有するポリ乳酸樹脂を得ることができる。
ポリ乳酸樹脂の代表例としては、Nature Works LLC社製の「Nature Works」等が商業的に入手できる。また、PLAとジオールとジカルボン酸とのランダム共重合体の具体例としては、例えば「GS−Pla」(三菱ケミカル社製)が挙げられ、またブロック共重合体の具体例としては、例えば「プラメート」(DIC社製)を挙げることができる。
(ポリオレフィン樹脂)
上記のポリオレフィン樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体などのエチレン系共重合体などを挙げることができる。中でも、熱収縮率と成形性との観点から、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、またはこれらの混合物を用いることが好ましい。
ポリエチレン樹脂としては、密度が0.92g/cm以上0.94g/cm以下の中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、密度が0.92g/cm未満の低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、および直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)を挙げることができる。この中でも延伸性、フィルムの耐衝撃性、透明性等の観点からは、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)が好適に用いられる。
直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)としては、エチレンと炭素数3以上20以下、好ましくは炭素数4以上12以下のα−オレフィンとの共重合体を挙げることができる。α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等が例示される。この中でも1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好適に用いられる。また、共重合するα−オレフィンは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン成分を含み、その含有率が70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上がより好ましい。70質量%以上であればフィルム全体の強度を維持することができる。
特に、ポリエチレン樹脂の密度は0.910g/cm以下であることが好ましく、0.905g/cm以下がより好ましく、0.900g/cm以下がさらに好ましい。また、下限は特に限定されないが0.800g/cm以上が好ましく、0.850g/cm以上がより好ましく、0.880g/cm以上がさらに好ましい。密度が0.910g/cm以下であれば、ポリ乳酸との親和性も向上し、さらに延伸性が維持され実用温度域(70℃以上90℃以下程度)の熱収縮率を充分得ることができる。一方、密度が0.800g/cm以上であればフィルム全体の腰(常温での剛性)や耐熱性を著しく低下させないため、実用上好ましい。
上記ポリエチレン樹脂は、メルトフローレート(MFR:JIS K 7210、温度:190℃、荷重:21.18N)が0.1g/10分以上10g/10分以下のものが好適に用いられる。MFRが0.1g/10分以上であれば、押出加工性を良好に維持でき、一方、MFRが10g/10分以下であれば積層フィルムロールの厚み斑や力学強度の低下を起こしにくく、好ましい。
上記のポリプロピレン樹脂としては、ホモプロピレン樹脂のほか、ホモプロピレン樹脂と比較して、柔軟性を有する軟質ポリプロピレン樹脂を挙げることができる。軟質ポリプロピレン樹脂としては、例えば、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、プロピレン−エチレンゴムなどを挙げることができる。これら中でも延伸性、耐破断性の観点から、ランダムポリプロピレン樹脂が特に好適に使用される。
前記ランダムポリプロピレン樹脂において、プロピレンと共重合させるα−オレフィンとしては、好ましくは炭素数2以上20以下、より好ましくは炭素数4以上12以下のものが挙げられ、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどを例示できる。
中でも、延伸性、熱収縮特性、フィルムの耐衝撃性や透明性、剛性等の観点から、α−オレフィンとしてプロピレン単位の含有率が80質量%以上、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上のランダムポリプロピレンが特に好適に用いられる。また、共重合するα−オレフィンは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)は、通常、MFR(JIS K 7210、温度:230℃、荷重:21.18N)が、0.5g/10分以上、好ましくは1.0g/10分以上であり、かつ15g/10分以下、好ましくは10g/10分以下であることが望ましい。
市販品の具体例として、ポリエチレン樹脂として商品名「ノバテックLD、LL」「カーネル」「タフマーA、P」(日本ポリエチ社製)、「サンテックHD、LD」(旭化成ケミカルズ社製)、「HIZEX」「ULTZEX」「EVOLUE」(三井化学社製)、「モアテック」(出光興産社製)、「UBEポリエチレン」「UMERIT」(宇部興産社製)、「NUCポリエチレン」「ナックフレックス」(日本ユニカー社製)、「Engage」(ダウケミカル社製)などが例示される。
ポリプロピレン樹脂として商品名「ノバテックPP」「WINTEC」「タフマーXR」(日本ポリプロ社製)、「三井ポリプロ」(三井化学社製)、「住友ノーブレン」「タフセレン」「エクセレンEPX」(住友化学社製)、「IDEMITSU PP」「IDEMITSU TPO」(出光興産社製)、「Adflex」「Adsyl」(サンアロマー社製)、「VERSIFY」(ダウケミカル社製)などとして市販されている。
上記のポリオレフィン樹脂として、上記エチレンと共重合可能なモノマーとの共重合体も好適に用いることができる。エチレンと共重合可能なモノマーとの共重合体を例示すれば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体などを挙げることができる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体のエチレン含有率は70質量%以上、好ましくは75質%以上であり、かつ95質量%以下、好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下であるものが望ましい。エチレン含有率が70質量%以上であれば、フィルム全体の耐破断性と収縮特性を良好に維持できる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)の市販品としては、例えば、「エバフレックス」(三井デュポンポリケミカル社製)、「ノバテックEVA」(三菱化学社製)、「エバスレン」(DIC社製)、「エバテート」(住友化学社製)を挙げることができる。また、エチレン/エチルアクリレート共重合体(EEA)の市販品としては、例えば「エバフレックスEEA」(三井デュポンポリケミカル社製)、エチレン/メチルアクリレート共重合体としては「エルバロイAC」(三井デュポンポリケミカル社製)などがそれぞれ挙げられる。
エチレンと共重合可能なモノマーとの共重合体のMFRは、特に制限されるものではない。通常、MFR(JIS K 7210、温度:190℃、荷重:21.18N)が、下限が好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは1.0g/10分以上であり、上限が好ましくは15g/10分以下、より好ましくは10g/10分以下である。
ポリオレフィン樹脂は、質量平均分子量の下限値が好ましくは50,000以上、より好ましくは100,000以上であり、上限値が700,00以下、より好ましくは600,000以下、さらに好ましくは500,000以下である。ポリオレフィン樹脂の質量平均分子量が上記範囲内であれば、所望の機械物性や耐熱性等の実用物性を発現でき、また適度な溶融粘度が得られ、良好な成形加工性が得られる。
ポリオレフィン樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等、また、ラジカル開始剤を用いた塊状重合法等を挙げることができる。
(粒子)
本基材フィルムは、フィルム表面を粗面化して易滑性を付与する目的および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を含有してもよい。
当該粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではない。例えば、シリカ炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等を挙げることができる。これらは1種単独で用いても、これらのうちの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記粒子の形状は、特に限定されるわけではない。例えば球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれであってもよい。
また、上記粒子の硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
上記粒子の平均粒径は、5.0μm以下であるのが好ましく、中でも0.01μm以上或いは3.0μm以下、その中でも0.5μm以上或いは2.5μm以下であるのがさらに好ましい。当該粒子の平均粒径が5μm以下であれば、本基材フィルムの表面粗度が粗くなり過ぎることがないから、その点で本基材フィルムの表面にアンカー層乃至無機物層を形成する際の不具合が減らすことができる。
粒子含有量は、本基材フィルムの5質量%以下であるのが好ましく、中でも0.0003質量%以上或いは3質量%以下、その中でも0.01質量%以上或いは2質量%以下であるのがさらに好ましい。粒子含有量を前記範囲とすることで、フィルムの滑り性と透明性との両立が可能となるので好ましい。
本基材フィルムに粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用することができる。
(他の含有成分)
本基材フィルムは、必要に応じて、従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料、紫外線吸収剤などを含有することもできる。
(本基材フィルム厚み)
本基材フィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではなく、9μm〜100μmであるのが好ましく、中でも12μm以上或いは75μm以下、その中でも15μm以上或いは60μm以下であるのがさらに好ましい。
本基材フィルムは、例えば樹脂組成物を溶融製膜方法や溶液製膜方法によりフィルム形状にすることにより形成することができる。多層構造の場合は、共押出してもよい。
また、一軸延伸又は二軸延伸したものであってもよく、剛性の点から、二軸延伸フィルムであるのが好ましい。
(特性)
本積層フィルムロールに関して所定の温度範囲おける平均線膨張率を上記のように調整するための観点から、本基材フィルムについて、分析(TMA)の測定温度を条件2−1〜条件2−3の3区間に分けて、条件2−1を満足するのが好ましく、加えて、条件2−2および/または条件2−3を満足するのが好ましく、最も好ましくは条件2−1〜条件2−3を同時に満足するのがよい。
なお、本積層フィルムロールの条件1,2,3と、本基材フィルムの条件2−1、2−2、2−3はそれぞれ対応するものである。
条件2−1:熱機械分析(TMA)における105〜120℃の平均線膨張率を、長手方向−1×10-3〜0/℃とし、且つ幅方向−9×10-3〜0/℃とするのが好ましく、中でも、長手方向−7×10-4〜0/℃とし、且つ幅方向−1×10-3〜0/℃とするのがより好ましい。
条件2−2:条件2−1を満足した上で、さらに、熱機械分析(TMA)における90〜105℃の平均線膨張率を、長手方向−7×10-4〜0/℃とし、且つ幅方向−5×10-4〜0/℃とするのが好ましく、中でも、長手方向−5×10-4〜0/℃とし、且つ幅方向−3×10-4〜0/℃とするのがより好ましい。
条件2−3:条件2−1および/または条件2−2を満足した上で、さらに、熱機械分析(TMA)における75〜90℃の平均線膨張率を、長手方向−5×10-4〜0/℃とし、且つ幅方向0〜6×10-4/℃とするのが好ましく、中でも、長手方向−2×10-4〜0/℃とし、且つ幅方向0〜2×10-4/℃とするのがより好ましい。
本基材フィルムに関し、熱機械分析(TMA)における各温度範囲の平均線膨張率を上記範囲にするための具体的手段として、例えば、本基材フィルム、特にポリ乳酸フィルムの製造条件に関して、比較的低い延伸条件下、例えば長手方向及び幅方向の延伸倍率を3.0倍以下とし、且つ、横方向の延伸倍率>長手方向の延伸倍率とし、さらには、高温で熱処理する、例えば100℃を超える温度で熱処理する方法などを例示することができる。但し、この方法に限定するものではない。
(製法)
本基材フィルムの製造方法の一例を示す。
先ずは、公知の方法により、原料例えばポリ乳酸原料を溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上に加熱し、溶融ポリマーをダイから押し出し、回転冷却ドラム上でポリマーのガラス転移点以下の温度となるように冷却固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得るようにすればよい。
次に、当該未配向シートを、一方向、通常は長手方向にロール又はテンター方式の延伸機により延伸する。この際、延伸温度は、通常25〜120℃、好ましくは35〜100℃であり、延伸倍率は通常2.5〜5.0倍、好ましくは2.8〜4.0倍である。
次いで、一段目の延伸方向と直交する方向、通常は幅方向に延伸する。この際、延伸温度は通常50〜140℃であり、延伸倍率は通常2.6〜5.0倍、好ましくは2.6〜4.0倍である。
なお、熱機械分析(TMA)における各温度範囲の平均線膨張率を上記範囲にするためには、上述のように、上記範囲の中でも、長手方向及び幅方向の延伸倍率を3.0倍以下とし、且つ、横方向の延伸倍率>長手方向の延伸倍率とするのが好ましい。
そして、引き続き100〜160℃の温度で緊張下又は20%以内の弛緩下で熱固定処理を行い、二軸配向フィルムとしての本基材フィルムを得ることができる。
熱機械分析(TMA)における各温度範囲の平均線膨張率を上記範囲にするためには、上述のように、100℃を超える温度で熱処理するのが好ましい。
なお、前記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。
<本アンカー層>
本積層フィルムロールを構成するアンカー層(「本アンカー層」と称する)は、本基材フィルムと本無機物層との接着性を高める機能を備えた層である。
アンカー層は、通常、アンカーコート剤から形成することができる。
当該アンカー層乃至アンカーコート剤の主成分樹脂としては、溶剤性又は水性のポリエステル、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート基含有樹脂、アルコキシル基含有樹脂、変性スチレン樹脂及び変性シリコーン樹脂等を挙げることができ、これらを単独或いは2種以上組み合わせて使用することができる。中でも、密着性及び耐熱水性の点から、ポリエステル、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート含有樹脂及びこれらの共重合体から選ばれる少なくとも1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。その中でも、ポリエステル、ウレタン樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂が好ましい。
なお、アンカー層乃至アンカーコート剤の主成分樹脂は、アンカー層乃至アンカーコート剤を構成する樹脂の40質量%以上、中でも50質量%以上、中でも60質量%以上、中でも70質量%以上、中でも90質量%以上(100質量%を含む)を占めるのが好ましい。
本アンカー層は、硬化性樹脂が硬化してなる硬化物をさらに含有するのが好ましい。当該硬化性樹脂としては、光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂を挙げることができ、中でもイソシアネート系化合物を含有するものが特に好ましい。
この際、本アンカー層におけるイソシアネート系化合物の含有量は、前記主成分樹脂100質量部に対して、1〜50質量部であるのが好ましく、中でも5質量部以上或いは40質量部以下、その中でも10質量部以上或いは30質量部以下であるのがさらに好ましい。
よって、本アンカー層は、硬化性樹脂を含有する樹脂組成物を本基材フィルム上にコートした後、硬化処理して形成してなる層であるのが好ましい。
本アンカー層の厚さが5.00μm以下であれば、滑り性が良好であり、アンカー層自体の内部応力による本基材フィルムからの剥離もほとんどなく、また、0.02μm以上の厚さであれば、均一な厚さを保持できるので好ましい。
かかる観点から、本アンカー層の厚さは0.02〜5.00μmであるのが好ましく、中でも0.03μm以上或いは3.00μm以下、その中でも0.05μm以上或いは1.00μm以下であるのがより好ましい。
本アンカー層は、動的粘弾性測定における損失正接(tanδ)のピーク温度が60.0℃以上であるのが好ましく、中でも70.0℃以上、その中でも80.0℃以上、その中でも特に85.0℃以上であるのがさらに好ましい。
本アンカー層に上記粘弾性を付与するためには、例えば、本アンカー層が、硬化性樹脂が硬化してなる硬化物を含有するようにするのが好ましい。よって、本アンカー層を、熱又は光硬化性樹脂を含有する樹脂組成物を本基材フィルム上にコートして、当該熱又は光硬化性樹脂を熱又は光で硬化させて形成するのが好ましい。但し、本アンカー層に上記粘弾性を付与する方法をこの方法に限定するものではない。
中でも、熱硬化性樹脂として、イソシアネート系化合物を選択して用いるのが特に好ましい。
上記のように、本積層フィルムロールを構成するアンカー層として、120℃における貯蔵弾性率が10.0MPa以上のものを、0.02μm以上5.00μm以下の厚さで積層することにより、ポリ乳酸(PLA)フィルムや延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムなど、耐熱性に乏しい基材フィルム上に無機物層を設けた際にも、良好なバリア性と密着性を得ることができる。
このように良好なバリア性を発現できるメカニズムは、次のように推測することができる。
一般的に、耐熱性に乏しい基材フィルムに無機物層を蒸着すると、蒸着時の熱ダメージにより、基材フィルムは収縮する傾向がある。
また、一般的に、アンカー層が基材と無機物層との間に介在する場合、往々にして基材フィルムと無機物層との密着性は良くなる傾向にある。そのため、基材フィルムが収縮しようとする力が、無機物層に直接伝播して、クラックなどを発生させることで、バリア性が低下する。
これに対し、本積層フィルムロールでは、基材フィルムおよびアンカー層、無機物層を設けた積層フィルムロールの平均膨張係数に着目し、該項目を一定範囲内に制御することにより、基材フィルムまたは積層フィルムロール自体の収縮しようとする力を抑制することで、無機物層のクラック発生を抑制することができ、加熱にも耐え得る良好なバリア性が得られるものと推察することができる。
<本無機物層>
本積層フィルムロールを構成する無機物層(「本無機物層」と称する)は、無機物、特に無機酸化物を主材として含有する層である。
該「主材」とは、本無機物層の50質量%以上、中でも70質量%以上、中でも80質量%以上、中でも90質量%以上(100質量%を含む)を占める材料という意味である。
本無機物層は、ガス透過を抑制する性質(「ガスバリア性」とも称する)、特に水蒸気バリア性を高めることができる層である。さらに本無機物層の場合は、アルカリ金属イオンを含むことで、より高いガスバリア性を実現することができる。
本無機物層を構成する主材としての無機物としては、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化珪素、酸化炭化窒化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム及び酸化炭化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種または2種以上の無機化合物を挙げることができる。
本無機物層としては、例えば物理的気相蒸着(PVD)法により形成されたPVD無機物層、プラズマアシスト蒸着法により形成されたプラズマアシスト蒸着無機物層、化学蒸着(CVD)法により形成されたCVD無機物層、無機粒子を有機ポリマーに分散させて塗布する方法により形成されたコート無機物層などであるのが好ましい。
ここでは、本無機物層の代表例として、PVD無機物層、プラズマアシスト蒸着無機物層、及び、CVD無機物層について説明する。
(PVD無機物層)
本無機物層が、物理的気相蒸着法(PVD)により形成されたPVD無機物層を少なくとも1層備えていれば、より高いガスバリア性を発揮させることができる点で好ましい。
PVD無機物層の一例として、SiOx(1.0<x≦2.0)で表されるケイ素酸化物から構成された層を挙げることができる。この際、前記SiOxのxの値(下限値)が小さくなれば、ガス透過度が小さくなり、本無機物層のガスバリア性を高めることができる一方、ケイ素酸化物膜自体が黄色性を帯び、透明性が低くなる傾向がある。かかる観点から、前記SiOxにおけるxは、1.2≦x≦2.0であるのがより好ましく、その中でも1.4≦x≦2.0であるのがさらに好ましい。
上記組成であることはXPS分析などで確認することができる。
PVD無機物層形成時の好ましい圧力は、ガスバリア性と真空排気能力と製膜するSiOx層の酸化度の観点から、1×10-7Pa〜1Paであるのが好ましく、中でも1×10-6以上或いは1×10-1Pa以下、その中でも1×10-4以上或いは1×10-2Pa以下であるのがさらに好ましい。
酸素の導入時の分圧は、全圧に対して10〜90%の範囲であるのが好ましく、中でも20%以上或いは80%以下であるのがさらに好ましい。
本無機物層は、前述のように、PVD無機物層を少なくとも1層備えているのが好ましい。この際、本無機物層は、PVD無機物層からなる単層構成でもよいし、また、より高いガスバリア性確保のために、当該PVD無機物層上に、後述するCVD無機物層や、組成が同一もしくは異なるPVD無機物層が積層してなる複層(二層以上)構成としてもよい。例えば、PVD無機物層とCVD無機物層とが交互に形成された構成(例えば、PVD無機物層とCVD無機物層とPVD無機物層との3層構成等)とすることもできる。また、PVD無機物層上にCVD無機物層を形成することにより、PVD無機物層に生じた欠陥等の目止めが行われ、ガスバリア性や層間の密着性が向上する傾向にある。
(プラズマアシスト蒸着無機物層)
本無機物層が、プラズマアシスト蒸着無機物層から構成されていれば、ガスバリア性を低下させずに透明性を向上させることができる。
「プラズマアシスト蒸着法」とは、真空蒸着中に、プラズマにより蒸着材料をイオン化ながら蒸着する、或いは別に設けたイオン源から気体イオンを照射する方法をいう。
プラズマアシスト蒸着法により本無機物層を形成すれば、効率的に酸素を本無機物層に取り込むことができ、上述したように、ガスバリア性を低下させずに透明性を向上させることができる。
通常の真空蒸着による薄膜は、スパッタリングなどにおける薄膜と比べて、飛来する粒子のもつエネルギーが小さく、膜の強度や密度において有利ではない。一方、プラズマアシスト蒸着法によれば、蒸着物質がエネルギーを得るため、真空蒸着においても強度、密度の高い薄膜を形成することができる。また、プラズマ中の励起種は、反応性に富むため、酸素、窒素、アセチレンなどのガスを導入することで、蒸発源を任意に酸化、窒化、炭化させた薄膜形成が可能となる。該方法により本無機物層を設けることで、スパッタリングやプラズマCVD法よりも速く製膜できるという利点も有している。
プラズマアシスト蒸着無機物層の一例として、SiOx(1.0<x≦2.0)で表されるケイ素酸化物から構成された層を挙げることができる。上述のように、プラズマアシスト蒸着法により本無機物層に酸素ガスを導入すれば、酸化ケイ素の酸素モル比を高めることができるから、前記SiOxにおけるxを1.2≦x≦2.0とすることができ、さらには1.4≦x≦2.0とすることができるから、より透明性を高めることができる。なお、酸素モル比(x)が大きくなれば、ガスバリア性は低下するのが通常である。本積層フィルムロールに関しては優れたガスバリア性を維持することができる。
(CVD無機物層)
本無機物層が、CVD無機物層を少なくとも1層備えている場合、CVD無機物層は、金属、金属酸化物、金属窒化物及びケイ素化合物から選ばれる少なくとも一種を化学蒸着させてなる薄膜から構成されるのが好ましい。
前記金属酸化物又は金属窒化物としては、ガスバリア性、密着性の点から、前記金属の酸化物、窒化物及びこれらの混合物を用いるのが好ましい。また、有機化合物をプラズマ分解して得られる金属酸化物又は金属窒化物であってもよい。
また、ガスバリア性、密着性の点から、ケイ素、アルミニウム等の金属又は化合物を用いるのも好ましい。
本無機物層の好ましい一例として、酸化ケイ素、酸化炭化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化炭化窒化ケイ素、窒化ケイ素などのケイ素化合物、及び酸化アルミニウムから選ばれる少なくとも一種を化学蒸着させてなる薄膜からなる構成を挙げることができる。
上記ケイ素化合物としては、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラキスジメチルアミノシラン、テトライソシアナートシラン、テトラメチルジシラザン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、トリエトキシフルオロシラン、アリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ベンジルトリメチルシラン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、1,4−ビストリメチルシリル−1,3−ブタジイン、ジ−t−ブチルシラン、1,3−ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン、フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン、プロパルギルトリメチルシラン、テトラメチルシラン、トリメチルシリルアセチレン、1−(トリメチルシリル)−1−プロピン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ビニルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、Mシリケート51等を挙げることができる。
CVD無機物層は、炭素を含有するのが好ましい。その際、CVD無機物層の炭素含有量は0.5at.%以上、好ましくは1at.%以上、より好ましくは2at.%以上であるのがよい。
CVD無機物層が炭素を微量含有することで、応力緩和が効率よくなされ、バリアフィルム自体のカールを低減することもできる。その一方、ガスバリア性の観点から、CVD無機物層における炭素含有量は20at.%未満であることが好ましく、中でも10at.%以下であるのがより好ましく、その中でも5at.%以下であるのが最も好ましい。
炭素含有量を上記範囲とすることで、無機物層の表面エネルギーが大きくなり、無機物層同士の間の密着性が良好となるため、バリアフィルムの耐折曲げ性、耐剥離性が向上する。なお、「at.%」とは、原子組成百分率(atomic%)を示す。また、組成に関してはXPS分析などで確認することが可能である。
CVD無機物層の形成は、例えば特開2013−226829号公報記載の方法により実施することができる。
例えば化学蒸着(CVD)法により、ケイ素酸化物からなる層を形成する場合、そのための原料としては、ケイ素化合物であれば、常温常圧下で気体、液体、固体いずれの状態であっても使用することができる。気体の場合には、そのまま放電空間に導入できる。液体、固体の場合は、加熱、バブリング、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用するのが好ましい。また、溶媒希釈してから使用してもよい。該溶媒としては、メタノール、エタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒を使用することができる。
化学蒸着(CVD)法を実施する際、10Pa以下の減圧環境下において、本基材フィルム、特にアンカー層を設けた本基材フィルムを、100m/分以上の速度で搬送しながら化学蒸着(CVD)法を実施するのが好ましい。
化学的気相蒸着法(CVD)により薄膜を形成する際の圧力は、緻密な薄膜を形成するため減圧下で行うことが好ましく、成膜速度とバリア性の観点から、10Pa以下であるのが好ましく、中でも1×10-2以上或いは5Pa以下、その中でも1×10-1以上或いは1Pa以下がより好ましい。
CVD無機物層には、耐水性、耐久性向上のため、必要に応じて、電子線照射による架橋処理を施してもよい。
(本無機物層の層構成)
本無機物層は、単層構成であっても、2層以上の複層構成であってもよい。
例えば、2層以上の複層構成の一例として、そのうちの一層を無機物、例えば無機酸化物のみからなる無機物層とし、他の一層を、無機物例えば無機酸化物と有機物とからなる無機・有機混合層とする例を挙げることができる。
無機物に有機物を混合して本無機物層を形成することにより、本無機物層を比較的柔軟な層とすることができるため、このような柔軟な層を設けることにより、ガスバリア性を高めることができる場合がある。すなわち、基材フィルムの粗大突起部が起点となって、無機物層表面に、ピンホールと呼ばれる微小な欠陥が生じたり、加熱蒸着時に原料が塊となって飛来し付着して、無機物層表面に微小な欠陥が生じたりすることがあり、この欠陥による空隙をガスが通過することによってガスバリア性が低下することがある。そこで、前述のような柔軟な層を、前記表面に重ねて積層することで、前記欠陥を埋めることができ、ガスバリア性を高めることができる場合がある。
なお、ここで言う「柔軟な層」とは、例えばフレキシブル用途など、屈曲性が必要な用途に対応できるように、無機物層の応力を緩和する層の意味を包含するものである。
前記のように、柔軟な層を形成するために、前記無機物に有機物を混合して層を形成すればよく、その際の有機物としては、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、PVAなどの有機物のほか、有機系フィラーを挙げることができる。
(無機物層の厚さ)
本無機物層の厚さ(無機物層が複層構成である場合はそれらの合計厚)は、0.1nm〜500nmであるのが好ましく、中でも1nm以上或いは300nm以下、その中でも5nm以上或いは100nm以下であるのがさらに好ましい。
本無機物層の厚さが前記範囲であれば、所望するガスバリア性を確保することが可能となる。
(本架橋樹脂層)
本積層フィルムロールは、必要に応じて、本無機物層上に更に架橋樹脂層(「本架橋樹脂層」と称する)を備えていてもよい。
本架橋樹脂層は、樹脂が架橋してなる架橋樹脂を含む層であればよく、架橋樹脂を基本骨格とする層であるのが好ましい。
本架橋樹脂層は、本無機物層に比べて柔軟であるから、本無機物層の表面凹凸を吸収することができ、それによってガスバリア性を向上させることができる。また、本無機物層に起因する黄色化抑制或いは黄褐色化抑制を図ることもできる。
(本架橋樹脂層の組成)
本架橋樹脂層は、主成分樹脂としてのバインダー樹脂およびその他の成分、例えば硬化剤又は架橋開始剤などを含む架橋性樹脂組成物が架橋して硬化してなる架橋樹脂構造からなる層であるのが好ましい。
この際、「主成分樹脂」とは、本架橋樹脂層を構成する樹脂の中で最も含有量(質量%)に多い樹脂の意味である。本架橋樹脂層を構成する樹脂の50質量%以上を占める場合、中でも70質量%以上、中でも80質量%以上、中でも90質量%以上(100質量%を含む)を占める場合を挙げることができる。
(バインダー樹脂)
前記バインダー樹脂としては、例えば、次に説明する、水溶性エポキシ樹脂、水分散性ポリウレタン樹脂、水分散型ウレタンアクリレートなどを挙げることができる。
[水溶性エポキシ樹脂]
前記の水溶性エポキシ樹脂としては、末端にエポキシ基を有するプレポリマーである水溶性エポキシ樹脂を用いるのが好ましい。
中でも、プレポリマー鎖が芳香族系であるものが好ましい。具体例としては、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、1、3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミン部位および/又はグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、レゾルシノールから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂などの樹脂を挙げることができる。これらの中でも、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂が特に好ましい。
[水分散性ポリウレタン樹脂]
前記の水分散性ポリウレタン樹脂としては、分子内にカルボキシル基を含まないポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させたポリウレタン化合物に界面活性を使用して水の中に強制乳化させて水分散性としたポリウレタン樹脂を挙げることができる。但し、これに限定するものではない。
[水分散型ウレタンアクリレート]
前記の水分散型ウレタンアクリレートは、ウレタンアクリレート原料と、乳化剤、例えばアニオン系および/又はノニオン系の反応性乳化剤と、油溶性重合開始剤とを混合して、乳化機、例えば、ホモミキサー、超音波分散機などで加熱処理をしながら、分散する要領にて乳化重合して得られる、水分散体のウレタンアクリレートを挙げることができる。但し、これに限定するものではない。
前記ウレタンアクリレート原料としては、1分子中にアクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有するラジカル重合性オリゴマーを用いることができる。
ウレタンアクリレートの市販品として、ビームセット505A−6(荒川化学社製)、Ebecryl270(ダイセル工業(株)製)、UA−160TM、UA−7100、(新中村化学工業(株))などが例示される。
前記乳化剤としては、乳化重合に使用できる乳化剤であれば特に限定されるわけではない。
前記アニオン系反応性乳化剤としては、市販品として、例えばアクアロンシリーズ:KH−05,KH−10、AR−10、AR−20(商品名:第一工業製薬製)、Antox−MS−60、Antox−MS−2N(日本乳化剤社製)、アデカリアソープシリーズ:SE−10N、SE―20N、SR−10(アデカ製)を挙げることができる。その中でも、スルホン酸塩からなるものが好ましい。
前記ノニオン系反応性乳化剤としては、市販品として、例えばアデカリアソープシリーズ:NE−10、NE−20、NE−30、ER−10、ER−20、ER−30、ER−40(アデカ製)、ラテムルシリーズ:PD−420、PD−430、PD−450(花王)などを挙げることができる。
前記油溶性重合開始剤としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2−メチルプロパンニトリル)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メチルブタンニトリル)、1,1’−アゾビス−(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)ヒドロクロリド等のアゾ(アゾビスニトリル)タイプの開始剤、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過硫酸塩(例えば過硫酸アンモニウム)、過酸エステル(例えばt−ブチルペルオクテート、α−クミルペルオキシピバレート及びt−ブチルペルオクテート)等の過酸化物タイプの開始剤を例示することができる。
(硬化剤又は架橋開始剤)
硬化剤又は架橋開始剤は、熱架橋及び光架橋のいずれの架橋方法を選択するか、さらにはバインダー樹脂として何を使用するかによって適宜使用するのが好ましい。
例えば、バインダー樹脂として水溶性エポキシ樹脂を用いる場合は、硬化剤として、アミン系化合物を用いるのが好ましく、中でも、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族アミンが好ましい。
架橋性樹脂組成物を光架橋させる場合には、光重合開始剤を配合するのが好ましい。
当該光重合開始剤としては、特に制限するものではなく、例えばケトン系光重合開始剤、アミン系光重合開始剤等を挙げることができる。
(溶媒)
水性溶媒としては、水又はアルコール溶媒を主溶媒として用いることができる。
アルコール溶媒の具体例として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどを挙げることができる。但し、これらに限定するものではない。
(その他成分)
本架橋樹脂層は、上述の材料以外に、他の成分乃至材料を含有していてもよい。
「他の成分乃至材料」としては、無機充填剤、酸素捕捉剤、カップリング剤、硬化促進剤などを挙げることができる。
上記無機充填剤としては、架橋樹脂層のガスバリア性、耐衝撃性、耐熱性等の諸性能を向上させるために、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどの無機充填剤を含有していてもよい。また、トップコート層の透明性を考慮した場合には、無機充填剤が平板状であることが好ましい。
上記酸素捕捉剤としては、酸素捕捉機能を有する化合物であればよい。例えばヒンダードフェノー類、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等を挙げることができる。
上記カップリング剤は、本架橋樹脂層と本無機物層との密着性向上あるいはガスバリア性向上の観点から、必要に応じて本架橋樹脂層に含有させることができる。
カップリング剤としては、シランカップリング剤あるいはチタンカップリング剤などのカップリング剤を添加してもよい。
カップリング剤としては、市販品が使用できる。具体的には、チッソ(株)、東レ・ダウコーニング(株)、信越化学工業(株)等から入手可能な、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N、N’−ビス[3−トリメトキシシリル]プロピル]エチレンジアミン等のアミノ系シランカップリング剤、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート系シランカップリング剤、東レ・ダウコーニング(株)製のSH−6026、Z−6050などのアミノシラン系カップリング剤、信越化学工業(株)製のKP−390、KC−223などのアミノ基含有アルコキシシラン等を挙げることができる。
中でも、本架橋樹脂層のバインダー樹脂組成物と反応する有機官能基を有するものが望ましい。
カップリング剤の添加量は、バインダー樹脂組成物の全質量を基準として0.01質量%〜5.0質量%の範囲が好ましい。
上記硬化促進剤は、架橋性樹脂組成物を架橋させる際に、低温で架橋可能なように、N−エチルモルホリン、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸コバルト、塩化第一錫などの硬化促進触媒、ベンジルアルコールなどの有機溶剤、リン酸亜鉛、リン酸鉄、モリブデン酸カルシウム、酸化バナジウム、水分散シリカ、ヒュームドシリカなどの防錆添加剤、フタロシアニン系有機顔料、縮合多環系有機顔料などの有機顔料、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、カーボンブラックなどの無機顔料等の各成分を必要割合量添加することもできる。
(各成分の量)
架橋性樹脂組成物中の全固形成分(100質量部)に対するバインダー樹脂の割合は、20質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましく、一方、90質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがさらに好ましい。なお、バインダー樹脂を2種以上併用する場合、それらの合計量の割合が上記の範囲内であることが好ましい。なお、バインダー樹脂を2種以上併用する場合、それらの合計量の割合が上記の範囲内であることが好ましい。
架橋性樹脂組成物中の全固形成分(100質量部)に対する硬化剤又は架橋開始剤の割合は、5質量部以上であるのが好ましく、中でも10質量部以上、その中でも特に20質量部以上であるのがさらに好ましい。一方、上限は80質量部以下であるのが好ましく、70質量部以下であるのがさらに好ましく、その中でも60質量部以下であるのが特に好ましい。
架橋性樹脂組成物中の全固形成分(100質量部)に対するバインダー樹脂及び硬化剤又は架橋開始剤以外の固形成分の割合は0.01質量部以上10質量部以下であるのが好ましく、中でも0.1質量部以上或いは10質量部以下、その中でも1質量部以上或いは10質量部以下であるのがさらに好ましい。
<本積層フィルムロールの積層構成>
本積層フィルムロールは、本基材フィルムの片面側(「表面側」と称する)に、アンカー層および無機物層がこの順に積層してなる構成を備えていればよいから、本基材フィルムの裏面側や、アンカー層と無機物層との間や、無機物層の表面側に例えば架橋樹脂層などの「他の層」を備えていてもよい。
<本積層フィルムロールの厚み>
本積層フィルムロールの全体厚みを調整することで、光透過性を確保しつつシワの発生などを抑制することができる。かかる観点から、本積層フィルムロールの全体厚みは10μm以上であるのが好ましく、中でも15μm以上或いは500μm以下、その中でも20μm以上或いは250μm以下、その中でも特に23μm以上或いは125μm以下であるのが好ましい。
<本積層フィルムロールの特性>
(水蒸気透過率(WvTR))
本積層フィルムロールは、温度40℃、相対湿度90%における水蒸気透過率(WvTR)を6.0g/m/day以下とすることができ、好ましくは4.0g/m/day以下、その中でも特に好ましくは2.0g/m/day以下とすることもできる。
(酸素透過率)
また、本積層フィルムロールは、温度25℃、相対湿度80%の条件下で酸素透過率(cc/(m・24hr・atm))を6.0cc/(m・24hr・atm)以下とすることができ、好ましくは、4.0cc/(m・24hr・atm)以下、その中でも特に好ましくは2.0cc/(m・24hr・atm)以下とすることもできる。
<本積層フィルムロールの製造方法>
本積層フィルムロールの製造方法の一例として、基材フィルムの片面に必要に応じてアンカー層を形成し、該アンカー層の表面に本無機物層を形成する方法を挙げることができる。但し、この方法に限定するものではない。
本アンカー層の形成は、基材フィルムの片面に、上述したアンカーコート剤を塗布し、必要に応じて乾燥させて形成することができる。
本無機物層の形成は、上述したように、例えば物理的気相蒸着(PVD)法、プラズマアシスト蒸着法、化学蒸着(CVD)法、或いは、無機粒子を有機ポリマーに分散させて塗布する方法などにより、形成することができる。
<<本フィルム積層体ロール>>
次に、本積層フィルムロールを用いた実施形態の一例として、本積層フィルムロールを用いたフィルム積層体ロール(「本フィルム積層体ロール」と称する。)について説明する。
なお、本フィルム積層体ロールは、長尺フィルムからなるロール体であるが、当該ロール体を適宜大きさにカットしたフィルム積層体についても、以下説明する本フィルム積層体ロールと同様である。よって、以下の説明において本フィルム積層体ロールをフィルム積層体に置き換えることができる。
本フィルム積層体ロールの一例として、本積層フィルムロールすなわち、本基材フィルム(「基材フィルム(1)」とも称する)の少なくとも片面側にアンカー層および無機物層が順次積層してなる構成を備えた積層フィルムロールの最表面すなわち本無機物層の表面又本架橋樹脂層の表面に、接着剤層を介して、基材フィルム(2)が貼り合わされてなる構成を備えたフィルム積層体ロールを挙げることができる。
<基材フィルム(2)>
基材フィルム(2)としては、基材フィルム(1)すなわち本基材フィルムとして説明したものを使用することができる。
また、基材フィルム(2)として、生分解性フィルム又はポリオレフィンフィルムを使用することができる。
当該生分解性フィルムとは、当該フィルムが単層構成であっても多層構成であっても、生分解性樹脂を主成分樹脂とする層を備えたフィルムを意味する。好ましくは、生分解性樹脂を主成分樹脂とする層が主層であるフィルムである。その中でも、基材フィルム(2)が単層構成であっても、多層構成であっても、各層の主成分樹脂が生分解性樹脂であるものが好ましい。
ここで、生分解性樹脂とは、生分解性を有する樹脂の意味であり、当該「生分解性」とは、微生物の働きで最終的に水と二酸化炭素に分解される性質を言い、好ましくは、ISO16929又はJIS K6952記載の58℃の好気的コンポスト環境下、パイロットスケールで、12週間以内で100mm角のフィルムが、2mmのフルイ残り10%以内になることを満足する性質である。
生分解性樹脂としては、例えばポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート(PES)、3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート重合体(PHBH)などの生分解性脂肪族ポリエステル、例えばポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)などの生分解性脂肪族芳香族ポリエステルを挙げることができる。
基材フィルム(2)に用いるポリオレフィンフィルムは、基材フィルム(1)に用いるポリオレフィンと同様である。
基材フィルム(2)の構成及び厚さなどは、基材フィルム(1)と同様である。
<接着剤層>
本フィルム積層体ロールの接着剤層は、公知の接着剤組成物を用いて形成することができる。接着性とバリア性との両立の観点からは、バインダー樹脂および硬化剤又は架橋開始剤を含む接着剤組成物を用いるのが好ましく、当該バインダー樹脂として、例えば水溶性エポキシ樹脂、水分散性ポリウレタン樹脂、水分散型ウレタンアクリレートオリゴマーなどを用いるのが好ましい。
<本フィルム積層体ロールの厚み>
本フィルム積層体ロールの全体厚みを調整することで、光透過性を確保しつつシワの発生などを抑制することができる。かかる観点から、本フィルム積層体ロールの全体厚みは40μm以上であるのが好ましく、中でも50μm以上或いは500μm以下、その中でも50μm以上或いは250μm以下、特に50μm以上或いは125μm以下が好ましい。
<本フィルム積層体ロールの特性>
(水蒸気透過率(WvTR))
本フィルム積層体ロールは、温度40℃、相対湿度90%における水蒸気透過率(WvTR)を3.0g/m/day以下とすることができ、好ましくは2.0g/m/day以下、その中でも特に好ましくは1.0g/m/day以下とすることもできる。
(酸素透過率)
また、本フィルム積層体ロールは、温度25℃、相対湿度80%の条件下で酸素透過率(cc/(m・24hr・atm))を2.0cc/(m・24hr・atm)以下とすることができ、好ましくは、1.0cc/(m・24hr・atm)以下、その中でも特に好ましくは0.5cc/(m・24hr・atm)以下とすることもできる。
<<本積層フィルムロールおよび本フィルム積層体ロールの用途>>
本積層フィルムロールおよび本フィルム積層体ロールは、必要に応じて適宜の大きさにカットするなどして、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする用途、例えば各種ガスの遮断を必要とする包装材料、例えば、食品や工業用品及び医薬品等の変質防止用包装材料として広く利用することができる。また、包装用途以外にも、液晶表示素子、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネル、EL用基板、カラーフィルターなど、各種部材に好適である。
<<語句の説明>>
本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また、画像表示パネル、保護パネル等のように「パネル」と表現する場合、板体、シート及びフィルムを包含するものである。
また、本積層フィルムロール又は本フィルム積層体ロールにおいて、基材フィルム側を下側又は裏面側と称し、その反対側を上側又は表面側という。
本発明において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
また、下記実施例及び比較例で作製した積層フィルムロール又は積層フィルム体ロールについては、それぞれ適宜大きさにカットした積層フィルム又は積層フィルム体を、下記測定法および評価方法の測定サンプルとした。
(1)基材フィルムのTg
DSC測定装置(NETZSCH社製 DSC204F1)を使用して、0〜200℃の測定温度範囲にて、昇温速度10℃/分の条件下で測定して、ポリ乳酸フィルム(基材フィルム)のTg(ガラス転移温度)を求めた。
(2)アンカー層の厚み
アンカー層の表面をRuOで染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片を再度RuO染色し、アンカー層断面をTEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製「H−7650」、加速電圧100kV)を用いて、アンカー層の厚みを測定した。
(3)真空蒸着法(PVD)により形成した無機物層の膜厚
無機物層の膜厚の測定は、蛍光X線を用いて行った。この方法は、原子にX線を照射すると、その原子特有の蛍光X線を放射する現象を利用した方法で、放射される蛍光X線強度を測定することにより原子の数(量)を知ることができる。具体的には、フィルム上に既知の2種の厚みの薄膜を形成し、それぞれについて放射される特定の蛍光X線強度を測定し、この情報より検量線を作成した。そして、測定試料について同様に蛍光X線強度を測定し、前記検量線からその膜厚を測定した。
(4)平均線膨張率
ポリ乳酸フィルム又は積層フィルムについて、日立ハイテクサイエンス社製の熱機械的分析装置「TMA/SS7100」を用いて、昇温速度2℃/分、測定温度30〜165℃の条件でTMA測定を行い、75〜90℃、90〜105℃、105〜120℃における平均線膨張率をそれぞれ求めた。
(5)水蒸気透過率(WvTR)
実施例・比較例で得た積層フィルム又は実施例6で得たフィルム積層体を測定サンプルとして、水蒸気透過率測定を測定した。
積層フィルム又はフィルム積層体を、水蒸気透過率測定装置 DELTAPERM(Tech nolox社製)に積層フィルムが検出器側(基材フィルムが水蒸気暴露側)になる向きにセットし、温度40℃、相対湿度90%RHの条件で水蒸気透過率(g/m2/day)を測定した。
(6)酸素透過率
実施例6の生分解性フィルムとのラミネートしたフィルム積層体以外は、得られた積層フィルムと無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)をラミネートしたフィルム積層体を作製し、酸素透過率測定に用いた。
JIS K 7126 B法に準じ、酸素透過率測定装置(MOCON社製「OX−TRAN 2/21型酸素透過率測定装置」)により、各積層フィルム又はフィルム積層体について、温度25℃、相対湿度80%の条件下で酸素透過率(cc/(m2・24hr・atm))を測定した。
(7)ラミネート強度
ラミネート用フィルムとして、厚さ60μmの無軸延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(東洋紡(株)製「P1146」)を用いたガスバリア性積層体を幅15mmの短冊状に切り出し、端部を一部剥離し、引っ張り試験機((株)オリエンテック製「STA−1150」)を用いて、300mm/minの速度でCPPフィルムを180°剥離することにより、レトルト後のラミネート強度(g/15mm)を測定した。
酸素透過率の測定同様に、実施例6については、作製したフィルム積層体(サンプル)を測定サンプルとし、他の実施例及び比較例については、上記のように測定サンプルを作製した。
(ポリ乳酸フィルム1の作製)
第1層(表裏層)としてL−乳酸:D−乳酸=98.5:1.5の構造単位を持ち、ガラス転移点(Tg)58℃のポリ乳酸(商品名:NatureWorks4032D、米国カーギル・ダウ社製)25質量%、L−乳酸:D−乳酸=88:12の構造単位を持ち、ガラス転移点(Tg)56℃のポリ乳酸(商品名:NatureWorks4060D、米国カーギル・ダウ社製)75質量%を混合して、合計100質量部のポリ乳酸に乾燥した平均粒径1.4μmの粒状シリカ(商品名:サイリシア100、富士シリシア化学(株)製)0.10質量部混合して58mmφの同方向二軸押出機にて、脱気しながら210℃でマルチマニホールド式の口金より表裏層として押出した。
また、第2層(中間層)として上記L−乳酸:D−乳酸=98.5:1.5の構造単位を持つポリ乳酸重合体(商品名:NatureWorks4032D、米国カーギル・ダウ社製)100質量%を75mmφの同方向二軸押出機にて、上記口金より210℃で中間層として押出した。
表層、中間層、裏層の厚み比は1:10:1になるよう溶融樹脂の吐出量を調整した。この共押出シートを約35℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。続いて長手方向に76℃で2.5倍のロール延伸、次いで、幅方向にテンターで74℃の温度で2.9倍に延伸した。テンターの熱処理ゾーンは等間隔の3ゾーンあり、順番に90、140、120℃に設定し、3ゾーン合わせての熱処理時間は30秒になる。弛緩は熱処理の3ゾーン目で4%行った。最後に冷却して、熱処理したフィルムを作製した。
フィルム厚みは25μmとなるように押出機からの溶融樹脂の吐出量とライン速度を調整し、ポリ乳酸フィルム1を得た。
ポリ乳酸フィルム1のガラス転移温度(Tg)は62℃であった。
(ポリ乳酸フィルム2の作製)
第1層(表裏層)としてL−乳酸:D−乳酸=98.5:1.5の構造単位を持ち、ガラス転移点(Tg)58℃のポリ乳酸(商品名:NatureWorks4032D、米国カーギル・ダウ社製)25質量%、L−乳酸:D−乳酸=88:12の構造単位を持ち、ガラス転移点(Tg)56℃のポリ乳酸(商品名:NatureWorks4060D、米国カーギル・ダウ社製)75質量%を混合して、合計100質量部のポリ乳酸に乾燥した平均粒径1.4μmの粒状シリカ(商品名:サイリシア100、富士シリシア化学(株)製)0.10質量部混合して58mmφの同方向二軸押出機にて、脱気しながら210℃でマルチマニホールド式の口金より表裏層として押出した。
また、第2層(中間層)として、上記L−乳酸:D−乳酸=98.5:1.5の構造単位を持つポリ乳酸重合体(商品名:NatureWorks4032D、米国カーギル・ダウ社製)100質量%を75mmφの同方向二軸押出機にて、上記口金より210℃で中間層として押出した。
表層、中間層、裏層の厚み比は1:10:1になるよう溶融樹脂の吐出量を調整した。この共押出シートを約35℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。続いて長手方向に77℃で2.8倍のロール延伸、次いで、幅方向にテンターで78℃の
温度で3.3倍に延伸した。テンターの熱処理ゾーンは等間隔の3ゾーンあり、順番に85、115、100℃に設定し、3ゾーン合わせての熱処理時間は35秒になる。弛緩は熱処理の2ゾーン目で1%行った。最後に冷却して、熱処理したフィルムを作製した。フィルム厚みは25μmとなるように押出機からの溶融樹脂の吐出量とライン速度を調整し、ポリ乳酸フィルム2を得た。
ポリ乳酸フィルム2のガラス転移温度(Tg)は62℃であった。
(アンカーコート液1の調製)
非晶性ポリエステル樹脂(東洋紡(株)製 バイロン200)とイソシアネート化合物(東ソー(株)製 コロネートL)を10:10質量比になるように配合し、アンカーコート液1を調製した。
(アンカーコート液2の調製)
非晶性ポリエステル樹脂(東洋紡(株)製 バイロン200)とイソシアネート化合物(東ソー(株)製 コロネートL)を10:1質量比になるように配合し、アンカーコート液2を調製した。
(アンカーコート液3の調製)
アクリルポリオール(大成ファインケミカル(株)製 アクリット6AN-6000)とイソシアネート化合物(東ソー(株)製 コロネートL)を10:10質量比になるように配合し、アンカーコート液3を調製した。
(架橋樹脂層組成物の調製)
水添XDI(1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン)439.1g、ジメチロールプロピオン酸35.4g、エチレングリコール61.5g及び溶剤としてアセトニトリル140gを混合し、70℃の窒素雰囲気下で3時間反応させて、カルボキシル基含有ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次いで、このカルボキシル基含有ポリウレタンプレポリマー溶液を50℃で、トリエチルアミン24.0gにて中和させた。このポリウレタンプレポリマー溶液267.9gを、750gの水にホモディスパーにより分散させ、2−[(2−アミノエチル)アミノ]エタノール35.7gで鎖伸長反応を行い、アセトニトリルを留去することにより、固形分25質量%のポリウレタン系樹脂の水性分散液を得た。この水性分散液に、市販品の3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを質量比で4質量%添加し、架橋樹脂層組成物を調整した。
<実施例1>
ポリ乳酸フィルム1の片面にコロナ処理を行い、該コロナ面にアンカーコート液1を塗布、80℃、1分で乾燥させて、厚さ(乾燥後)0.03μmのアンカー層を形成した。
次いで、真空蒸着装置を使用して2×10−3Paの真空下でSiOを加熱方式で蒸発させ、アンカー層上に厚さ30nmのSiO層を形成し、積層フィルムロールを得た。
<実施例2>
実施例1において、アンカー層の厚み(乾燥後)を0.10μmとした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムロールを得た。
<実施例3>
実施例2において、アンカーコート液1の代わりにアンカーコート液2を用いた以外は、実施例2と同様にして積層フィルムロールを得た。
<実施例4>
実施例2において、アンカーコート液1の代わりにアンカーコート液3を用いた以外は、実施例2と同様にして積層フィルムロールを得た。
<実施例5>
実施例1において、SiO層上に架橋樹脂層組成物を塗布、100℃、1minで乾燥して、厚さ(乾燥後)0.5μmの架橋樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様にして積層フィルムロールを得た。
<実施例6>
実施例1の積層フィルムと、ラミネート用フィルムとして厚み30μmのポリブチレンサクシネート(PBS)フィルムを用いてラミネートを行い、フィルム積層体ロールを得た。
<比較例1>
実施例1において、ポリ乳酸フィルム1の代わりにポリ乳酸フィルム2を用いた以外は、実施例1と同様にして積層フィルムロールを得た。
<比較例2>
比較例1において、アンカー層の厚み(乾燥後)を0.10μmとした以外は、比較例1と同様にして積層フィルムロールを得た。
<比較例3>
比較例1において、アンカー層の厚み(乾燥後)を0.01μmにした以外は、比較例1と同様にして積層フィルムロールを得た。
<比較例4>
実施例1において、アンカー層を形成しないこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムロールを得た。
<評価結果>
上記実施例および比較例におけるポリ乳酸フィルム(基材フィルム)、積層フィルムおよびフィルム積層体の特性を下記表1〜表2
に示す。
Figure 2021169163
Figure 2021169163
<考察>
比較例1〜3は、積層フィルムの平均膨張係数が所定範囲を満足していないため、積層フィルムの収縮による影響を受け、バリア性が低下することがわかった。また、比較例4は、アンカー層を設けていないため、積層フィルムの平均膨張係数が所定範囲を満足しているが、アンカー層がないためにバリア性と密着性(ラミネート強度)が共に低下することがわかった。
これに対して、実施例1〜6はいずれも、アンカー層が存在し、積層フィルムの平均膨張係数が所定範囲を満足しているため、バリア性と密着性(ラミネート強度)が共に良好であった。
上記実施例及び本発明者がこれまで行ってきた試験結果から、熱機械分析(TMA)における105〜120℃の平均線膨張率が、長手方向と幅方向でそれぞれ−7×10-4〜0/℃及び−1×10-3〜0/℃である積層フィルムであれば、良好なバリア性と密着性(ラミネート強度)とを両立できることが分かった。
良好なバリア性を発現できるメカニズム(推測)としては、耐熱性の低い基材に蒸着すると、蒸着時の熱で基材フィルムは収縮する傾向にある。一方、アンカー層が基材フィルムと無機物層との間に存在すると基材フィルムと無機物含有層との密着性が良好なため、基材フィルムの寸法変化(収縮または膨張)の影響が無機物層に直接伝播し、クラックなどを発生させることで、ガスバリア性の低下につながるものと考えられる。ゆえに、無機物層を積層した後の積層フィルムの状態で、平均線膨張率を一定以下に抑制することで良好なバリア性が発現すると考えた。
予想通り、本積層フィルムでは、基材フィルムおよびアンカー層、無機物層を設けた積層フィルムの平均膨張係数を一定範囲内に制御することにより、基材フィルムおよび積層フィルム自体の収縮または膨張しようとする力を抑制することで、無機物層のクラック発生を防止することができ、加工工程中の加熱にも耐え得る良好なバリア性が得られるものと推察される。
本発明の積層フィルムロールおよびフィルム積層体ロールは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、例えば、食品や工業用品及び医薬品等の変質防止用の包装材料として広く利用することができる。また、包装用途以外にも、液晶表示素子、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネル、EL用基板、カラーフィルターなど、各種部材にも好適に利用することができる。

Claims (11)

  1. 基材フィルム(1)の少なくとも片面に、アンカー層及び無機物層が順次積層してなる構成を備えた積層フィルムであって、熱機械分析(TMA)における105〜120℃の平均線膨張率が、長手方向−7×10-4〜0/℃であり、且つ幅方向−1×10-3〜0/℃である積層フィルムロール。
  2. 熱機械分析(TMA)における90〜105℃の平均線膨張率が、長手方向−5×10-4〜0/℃であり、且つ、幅方向−3×10-4〜0/℃である請求項1に記載の積層フィルムロール。
  3. 熱機械分析(TMA)における75〜90℃の平均線膨張率が、長手方向−2×10-4〜0/℃であり、且つ、幅方向0〜2×10-4/℃である請求項1又は2に記載の積層フィルムロール。
  4. 基材フィルム(1)のガラス転移温度(Tg)が55〜65℃である請求項1〜3の何れかに記載の積層フィルムロール。
  5. 基材フィルム(1)がポリ乳酸フィルムである請求項1〜4の何れかに記載の積層フィルムロール。
  6. 前記アンカー層が、ポリエステル、ウレタン樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を主成分樹脂とする層である請求項1〜5の何れかに記載の積層フィルムロール。
  7. 前記アンカー層が、イソシアネート系化合物を含有する層である請求項1〜6の何れかに記載の積層フィルムロール。
  8. 前記無機物層が、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化珪素、酸化炭化窒化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム及び酸化炭化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の無機化合物を主材として含有する層である請求項1〜7の何れかに記載の積層フィルムロール。
  9. 前記無機物層上に更に架橋樹脂層を有する、請求項1〜8の何れかに記載の積層フィルムロール。
  10. 請求項1〜9の何れかに記載の積層フィルムロールを構成する積層フィルムと、基材フィルム(2)とが、接着剤を介してラミネートされてなる構成を備えたフィルム積層体ロール。
  11. 前記基材フィルム(2)が、生分解性フィルムである請求項10に記載のフィルム積層体ロール。
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