JP2023136728A - 積層フィルムおよびその製造方法、該積層フィルムを用いたフィルム積層体 - Google Patents

積層フィルムおよびその製造方法、該積層フィルムを用いたフィルム積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】基材フィルムの少なくとも片面側に無機物層を備えた積層フィルムに関し、高いガスバリア性を得ることができ、しかも、無機物層に大きな無機物粒子が存在する部分においてもガスバリア性能を維持することができ、さらには、屈曲した際に、その屈曲部分のガスバリア性能も維持することができる新たな積層フィルムを提供する。【解決手段】基材フィルム(1)の少なくとも片面側に、無機物層と樹脂層とが交互に積層し、該無機物層を少なくとも2層以上有する構成を備え、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含む積層フィルムである。【選択図】なし

Description

本発明は、ガスバリア性に優れた積層フィルムおよびその製造方法、さらには該積層フィルムを用いたフィルム積層体に関する。
従来から、プラスチックフィルムを基材とし、無機酸化物蒸着層などの無機物を主材とする層(「無機物層」とも称する)を前記基材の表面に形成した構成のガスバリアフィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、例えば、食品や工業用品及び医薬品等の変質防止用包装に広く利用されている。
また、このガスバリアフィルムについては、包装用途以外にも、近年、液晶表示素子、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネル、EL用基板、カラーフィルターなど、新しい用途も注目されている。
このような無機物層を有するガスバリアフィルムに関しては、種々の改良検討がされている。
例えば、透明性及びガスバリア性と共に、デラミネーション等の発生がない耐ボイル性及び耐レトルト性を持たせる観点から、プラスチック基材の少なくとも片面に、官能基含有シランカップリング剤又はシランカップリング剤の加水分解物とポリオール及びイソシアネート化合物との複合物からなるプライマー層、及び厚さ5~300nmの無機酸化物薄膜層を順次積層してなる蒸着フィルムが開示されている(特許文献1)。
また、優れたガスバリア性及び構成層間の密着強度の観点から、基材フィルム/無機薄膜層/アンカー層/無機薄膜層からなり、アンカー層の厚さが0.1~10nmである極薄いガスバリア性積層フィルムが開示されている(特許文献2)。
さらに、プラスチック基材の片面又は両面に、酸化ケイ素膜(SiOx)をバリア層として積層してなるバリアフィルムにおいて、前記バリア層が少なくとも2層以上の酸化ケイ素膜で構成されており、前記酸化ケイ素膜1層あたりの膜厚が10nm以上50nm以下であり、前記2層以上の酸化ケイ素膜で構成されているバリア層の膜厚が20nm以上200nm以下であり、前記バリア層中の炭素原子の割合が10at.%以下である、ガスバリアフィルムが開示されている(特許文献3)。
さらに、無機物層及び架橋樹脂層がこの順に積層してなる構成を備えた積層フィルムにおいて、前記架橋樹脂層がアルカリ土類金属イオンまたはアルカリ金属イオンを含むことで、得られる積層フィルムのガスバリア性能が大幅に向上することが開示されている(特許文献4)。
特開2000-238172号公報 国際公開2007-034773号パンフレット 特開2009-101548号公報 特開2020-163857号公報
前記特許文献4に開示された積層フィルムは、ガスバリア性能が大幅に向上するものの、無機物層に大きな無機物粒子が混入することが稀にあり、その大きな無機物粒子が存在する部分のガスバリア性能が局所的に低下することが判明した。また、屈曲した際に、その屈曲部分のガスバリア性能が局所的に低下することも判明した。
本発明の目的は、基材フィルムの少なくとも片面側に無機物層を備えた積層フィルムに関し、高いガスバリア性を得ることができ、しかも、無機物層に大きな無機物粒子が存在する部分においてもガスバリア性能を維持することができ、さらには、屈曲した際に、その屈曲部分のガスバリア性能も維持することができる新たな積層フィルム及びその製造方法、さらには、該積層フィルムを用いたフィルム積層体を提供することにある。
本発明は、基材フィルム(1)の少なくとも片面側に、無機物層と樹脂層とが交互に積層し、該無機物層を少なくとも2層以上有する構成を備え、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含む積層フィルムを提案する。
本発明はまた、基材フィルム(1)の少なくとも片面側に、無機物層と樹脂層とが交互に積層し、該無機物層を少なくとも2層以上有する構成を備え、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含む積層フィルムの製造方法において、
水溶性又は水分散性のバインダー樹脂と、水溶性アルカリ土類金属化合物または水溶性アルカリ金属化合物とを含む架橋性樹脂組成物を塗布し架橋させて樹脂層を形成することを特徴とする積層フィルムの製造方法を提案する。
本発明はまた、基材フィルム(1)の少なくとも片面側に、無機物層と樹脂層とが交互に積層し、該無機物層を少なくとも2層以上有する構成を備え、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含む積層フィルムの製造方法において、
前記無機物層表面に、水溶性アルカリ土類金属化合物または水溶性アルカリ金属化合物を含む水溶液を塗布及び乾燥させた後、その表面に、バインダー樹脂を含む架橋性樹脂組成物を塗布し、架橋させた樹脂層を形成することを特徴とする積層フィルムの製造方法。
本発明はまた、上記積層フィルムの樹脂層表面に、接着剤層を介して、基材フィルム(2)が貼り合わされてなる構成を備えたフィルム積層体を提案する。
本発明はさらに、上記積層フィルムの樹脂層表面に、接着剤層を介して、基材フィルム(2)及び樹脂層を備えた積層フィルムの当該樹脂層が貼り合わされてなる構成を備えたフィルム積層体を提案する。
本発明が提案する積層フィルムは、当該積層フィルムがアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含むことにより、より高いガスバリア性を得ることができる。また、無機物層と樹脂層とが交互に積層し、少なくとも無機物層を2層以上有する構成であることから、無機物層に大きな無機物粒子が存在する部分においてもガスバリア性能を維持することができ、さらには、樹脂層がクッションの役割を果たして積層フィルム全体としての可撓性を高めるため、屈曲した際にも、その屈曲部分のガスバリア性能をも維持することができる。
よって、本発明が提案する積層フィルム及びこれを用いたフィルム積層体は、例えば、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、例えば、食品や工業用品及び医薬品等の変質防止用の包装材料として広く利用することができる。また、包装用途以外にも、液晶表示素子、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネル、EL用基板、カラーフィルターなど、各種部材に好適に利用することができる。
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
<<本積層フィルム>>
本発明の実施形態の一例に係る積層フィルム(「本積層フィルム」とも称する)は、基材フィルム(「本基材フィルム」とも称する)の少なくとも片面側に、無機物層と樹脂層とが交互に積層し、該無機物層を少なくとも2層以上有する構成を備え、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含む積層フィルムである。
(積層構成)
本積層フィルムは、本基材フィルム、無機物層及び樹脂層以外の他の層を備えることも可能である。例えば、本基材フィルムの裏面側や、本基材フィルムと無機物層又は樹脂層との間や、最表面などに「他の層」を備えていてもよい。一例としては、本基材フィルムと、無機物層又は樹脂層との間に、アンカー層を設けることも可能であるし、それ以外の層を設けることも可能である。
なお、本積層フィルムにおいて「表側」又は「表面側」とは、基材フィルム(1)の片面側に、無機物層及び樹脂層が交互に積層してなる構成を備えた積層フィルムにおいて、基材フィルム(1)から見て、無機物層及び樹脂層が交互に積層してなる構成側を意味し、「裏側」又は「裏面側」とは、その反対側を意味する。
本積層フィルムは、本基材フィルムの少なくとも片面側に、無機物層と樹脂層とが交互に積層し、該無機物層を2層以上有する構成を備えるものである。例えば、基材フィルム/無機物層/樹脂層/無機物層、基材フィルム/無機物層/樹脂層/無機物層/樹脂層、基材フィルム/樹脂層/無機物層/樹脂層/無機物層、基材フィルム/無機物層/樹脂層/無機物層/樹脂層/無機物層、基材フィルム/樹脂層/無機物層/樹脂層/無機物層/樹脂層、さらに無機物層と樹脂層とが交互に積層してなる多層構成などの積層構成を挙げることができる。また、前述したように、前記積層構成において、基材フィルムと無機物層又は樹脂層との間にアンカー層が介在した積層構成であってもよい。
(厚さ)
本積層フィルムの厚さに関しては、フィルム全体の厚さを調整することで、光透過性を確保しつつシワの発生などを抑制することができる。かかる観点から、本積層フィルムの全体厚さは20μm以上であるのが好ましく、中でも23μm以上或いは500μm以下、その中でも25μm以上或いは250μm以下、その中でも特に30μm以上或いは125μm以下であるのが好ましい。
本積層フィルムにおいて、各無機物層の厚さは、0.1nm~500nmであるのが好ましく、中でも1nm以上或いは300nm以下、その中でも5nm以上或いは100nm以下であるのがさらに好ましい。
本無機物層の厚さが前記範囲であれば、所望するガスバリア性を確保することが可能となる。
また、本積層フィルムの厚さ方向に沿った断面言い換えれば厚さ方向に切断した断面を見たとき、積層フィルム全体の厚さに対する、各無機物層の厚さの割合は0.005~1.00%であるのが好ましく、中でも0.03%以上或いは0.60%以下、その中でも0.08%以上或いは0.40%以下であるのがさらに好ましい。
また、本積層フィルムの厚さ方向に沿った断面言い換えれば厚さ方向に切断した断面を見たとき、積層フィルム全体の厚さに対する、無機物層の合計厚さの割合は0.01~1.00%であるのが好ましく、中でも0.05%以上或いは0.80%以下、その中でも0.10%以上或いは0.50%以下であるのがさらに好ましい。
本積層フィルムにおいて、各樹脂層の厚さは、無機物層に対する密着力及び緩衝性(クッション性)を確保する観点から、0.05μm以上であるのが好ましく、中でも0.1μm以上であるのが好ましく、中でも0.2μm以上であるのがさらに好ましく、0.5μm以上であるのが特に好ましい。一方、樹脂層を形成する際に溶媒の乾燥や架橋反応を十分行うための製造時間を短縮する観点から、35μm以下であるのが好ましく、中でも20μm以下、その中でも10μm以下がさらに好ましく、中でも5μm以下であるのが特に好ましい。
また、本積層フィルムの厚さ方向に沿った断面言い換えれば厚さ方向に切断した断面を見たとき、積層フィルム全体の厚さに対する、各樹脂層の厚さの割合は0.05~40.0%であるのが好ましく、中でも0.2%以上或いは30.0%以下、その中でも0.5%以上或いは20.0%以下であるのがさらに好ましい。
また、本積層フィルムの厚さ方向に沿った断面言い換えれば厚さ方向に切断した断面を見たとき、積層フィルム全体の厚さに対する、樹脂層の合計厚さの割合は0.1~50.0%であるのが好ましく、中でも0.5%以上或いは40.0%以下、その中でも1.0%以上或いは30.0%以下であるのがさらに好ましい。
本積層フィルムにおいて、積層フィルムの厚さ方向に沿った断面を見たとき、無機物層及び樹脂層の合計厚さに対する、無機物層の合計厚さの割合は、生産性の観点から、0.1%以上であるのが好ましく、中でも0.5%以上、その中でも1%以上であるのがより好ましい。他方、効能を発揮する量の金属イオンを添加する必要性の観点から、50.0%以下であるのが好ましく、中でも35.0%以下、その中でも25.0%以下であるのがより好ましい。
(アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素)
本積層フィルムは、いずれかの層にアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含むものである。
ここで、本積層フィルムにおける「アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素」が存在する典型的な例としては、例えば、無機物層を構成するSiOの結晶構造に、アルカリ土類金属イオン又はアルカリ金属イオン(カチオン)が嵌まり、その近傍に、例えばアニオン、例えば塩素イオンが存在する状態を想定することができる。この場合、SiO結晶に金属原子が嵌まることで水分子の浸透を阻害し、その結果、ガスバリア性能が高まるものと推察することができる。
例えば本基材フィルム、アンカー層、無機物層及び樹脂層のうちのいずれか一層又は二層以上が、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含む場合を包含する。中でも、無機物層及び/又は樹脂層がアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含むのが好ましい。
本積層フィルムの無機物層が、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含んでいれば、無機物層内の隙間、例えば無機物層を構成する無機物粒子間の隙間や、無機物結晶粒界、欠陥などに、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素が侵入して存在することで、ガスバリア性を高めることができる。
また、前記無機物層以外の層、中でも前記無機物層に接する層が、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含んでいても、当該アルカリ土類金属元素又はそのイオン、若しくはアルカリ金属元素又はそのイオンが無機物層内に拡散浸透して、上記のように無機物層内の隙間に元素又はアルカリ金属元素が侵入して存在するようになるため、ガスバリア性を高めることができる。
本積層フィルムはさらに、前記無機物層を2層以上有するため、前記無機物層が1層の場合に比べて、ガスバリア性をさらに高めることができる。
なお、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含んでいるか否かは、例えばEDSやXPSなどの元素分析法により元素分析することで判別することができる。例えば無機物層を構成するSiOx膜中にはそのような金属元素は存在しないはずであり、その層に金属元素が多量に含まれていた場合には意図的に含有されたものと判定することができる。
<本無機物層>
本積層フィルムを構成する無機物層(「本無機物層」とも称する)は、無機物、特に無機酸化物を主材として含有する層である。
該「主材」とは、本無機物層の50質量%以上、中でも70質量%以上、中でも80質量%以上、中でも90質量%以上(100質量%を含む)を占める材料という意味である。
本無機物層は、ガス透過を抑制する性質(「ガスバリア性」とも称する)、特に水蒸気バリア性を高めることができる層である。さらに本無機物層の場合は、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含むことで、より高いガスバリア性を得ることができる。このメカニズムを推論すると、前述したように、無機物層内の隙間、例えば無機物層を構成する無機物粒子間の隙間や、無機物結晶粒界、欠陥、例えばシリカ蒸着膜においてはシリカ結晶構造中の空隙などにアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素が侵入して該隙間を埋めることで、ガスの通り道を遮断することができ、ガスバリア性が高まるものと推定することができる。
本無機物層がアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含むようにするためには、後述するように、例えば本無機物層を形成した後、樹脂層を形成する前に、本無機物層の表面に、アルカリ土類金属イオンまたはアルカリ金属イオンを含む溶液、例えばアルカリ土類金属化合物またはアルカリ金属化合物を溶解させた溶液を塗布する表面処理をするようにすればよい。
また、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含むように該樹脂層を形成することによっても、前述のように拡散浸透するから、本無機物層がアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含むようにすることができる。つまり、本無機物層に隣接する層がアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含んでいれば、最初から本無機物層がアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含んでいる必要はない。
なお、本無機物層がアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含むようにする手法を、これらの方法に限定するものではない。本積層フィルムの何れかの層がアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含んでいても、本無機物層がアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含むようにすることができると考えることができる。
前記アルカリ金属元素としては、ナトリウム及びカリウムの何れか又はこれら両方を例示することができる。但し、これらに限定するものではない。
本無機酸化物中の前記アルカリ金属元素は、イオンの状態で存在してもよいし、アルカリ金属化合物の状態で存在してもよい。
当該アルカリ金属化合物としては、水溶性アルカリ金属、例えば水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、水酸化カリウム及び塩化カリウムのうちから選択される少なくとも1種類以上を挙げることができる。
また、前記アルカリ土類金属元素としては、マグネシウム及びカルシウムのうちの何れか又はこれら両方を例示することができる。但し、これらに限定するものではない。
本無機酸化物中の前記アルカリ土類金属元素は、イオンの状態で存在してもよいし、アルカリ土類金属化合物の状態で存在してもよい。
当該アルカリ土類金属化合物としては、水溶性アルカリ土類金属化合物、例えば塩化マグネシウム及び水酸化カルシウムのうちから選択される少なくとも1種類以上を挙げることができる。
ガスバリア性向上の観点から、アルカリ金属化合物を含むのがより好ましい。
本無機物層を構成する主材としての無機物としては、例えば酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、酸化炭化窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム及び酸化炭化アルミニウムからなる群から選択される1種又は2種以上の無機化合物を挙げることができる。
本無機物層は、例えば物理的気相蒸着(PVD)法により形成されたPVD無機物層、プラズマアシスト蒸着法により形成されたプラズマアシスト蒸着無機物層、化学蒸着(CVD)法により形成されたCVD無機物層、無機粒子を有機ポリマーに分散させて塗布する方法により形成されたコート無機物層などであるのが好ましい。
ここでは、本無機物層の代表例として、PVD無機物層、プラズマアシスト蒸着無機物層、及び、CVD無機物層について説明する。
(PVD無機物層)
本無機物層が、物理的気相蒸着法(PVD)により形成されたPVD無機物層を少なくとも1層備えていれば、より高いガスバリア性を発揮させることができる点で好ましい。
PVD無機物層の一例として、SiOx(1.0<x≦2.0)で表されるケイ素酸化物から構成された層を挙げることができる。この際、前記SiOxのxの値(下限値)が小さくなれば、ガス透過度が小さくなり、本無機物層のガスバリア性を高めることができる一方、ケイ素酸化物膜自体が黄色性を帯び、透明性が低くなる傾向がある。かかる観点から、前記SiOxにおけるxは、1.2≦x≦2.0であるのがより好ましく、その中でも1.4≦x≦2.0であるのがさらに好ましい。
上記組成であることはXPS分析などで確認することができる。
PVD無機物層形成時の好ましい圧力は、ガスバリア性と真空排気能力と製膜するSiOx層の酸化度の観点から、1×10-7Pa~1Paであるのが好ましく、中でも1×10-6Pa以上或いは1×10-1Pa以下、その中でも1×10-4Pa以上或いは1×10-2Pa以下であるのがさらに好ましい。
酸素の導入時の分圧は、全圧に対して10~90%の範囲であるのが好ましく、中でも20%以上或いは80%以下であるのがさらに好ましい。
本無機物層は、前述のように、PVD無機物層を少なくとも1層備えているのが好ましい。この際、本無機物層は、PVD無機物層からなる単層構成でもよいし、また、より高いガスバリア性確保のために、当該PVD無機物層上に、後述するCVD無機物層や、組成が同一もしくは異なるPVD無機物層が積層してなる複層(二層以上)構成としてもよい。例えば、PVD無機物層とCVD無機物層とが交互に形成された構成(例えば、PVD無機物層とCVD無機物層とPVD無機物層との3層構成等)とすることもできる。また、PVD無機物層上にCVD無機物層を形成することにより、PVD無機物層に生じた欠陥等の目止めが行われ、ガスバリア性や層間の密着性が向上する傾向にある。
(プラズマアシスト蒸着無機物層)
本無機物層が、プラズマアシスト蒸着無機物層から構成されていれば、ガスバリア性を低下させずに透明性を向上させることができる。
「プラズマアシスト蒸着法」とは、真空蒸着中に、プラズマにより蒸着材料をイオン化しながら蒸着する、或いは別に設けたイオン源から気体イオンを照射する方法をいう。
プラズマアシスト蒸着法により本無機物層を形成すれば、効率的に酸素を本無機物層に取り込むことができ、上述したように、ガスバリア性を低下させずに透明性を向上させることができる。
通常の真空蒸着による薄膜は、スパッタリングなどにおける薄膜と比べて、飛来する粒子のもつエネルギーが小さく、膜の強度や密度において有利ではない。一方、プラズマアシスト蒸着法によれば、蒸着物質がエネルギーを得るため、真空蒸着においても強度、密度の高い薄膜を形成することができる。また、プラズマ中の励起種は、反応性に富むため、酸素、窒素、アセチレンなどのガスを導入することで、蒸発源を任意に酸化、窒化、炭化させた薄膜形成が可能となる。該方法により本無機物層を設けることで、スパッタリングやプラズマCVD法よりも速く製膜できるという利点も有している。
プラズマアシスト蒸着無機物層の一例として、SiOx(1.0<x≦2.0)で表されるケイ素酸化物から構成された層を挙げることができる。上述のように、プラズマアシスト蒸着法により本無機物層に酸素ガスを導入すれば、酸化ケイ素の酸素モル比を高めることができるから、前記SiOxにおけるxを1.2≦x≦2.0とすることができ、さらには1.4≦x≦2.0とすることができるから、より透明性を高めることができる。なお、酸素モル比(x)が大きくなれば、ガスバリア性は低下するのが通常であるが、本積層フィルムに関しては優れたガスバリア性を維持することができる。
(CVD無機物層)
本無機物層が、CVD無機物層を少なくとも1層備えている場合、CVD無機物層は、金属、金属酸化物、金属窒化物及びケイ素化合物から選ばれる少なくとも一種を化学蒸着させてなる薄膜から構成されるのが好ましい。
前記金属酸化物又は金属窒化物としては、ガスバリア性、密着性の点から、前記金属の酸化物、窒化物及びこれらの混合物を用いるのが好ましい。また、有機化合物をプラズマ分解して得られる金属酸化物又は金属窒化物であってもよい。
また、ガスバリア性、密着性の点から、ケイ素、アルミニウム等の金属又は化合物を用いるのも好ましい。
本無機物層の好ましい一例として、酸化ケイ素、酸化炭化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化炭化窒化ケイ素、窒化ケイ素などのケイ素化合物、及び酸化アルミニウムから選ばれる少なくとも一種を化学蒸着させてなる薄膜からなる構成を挙げることができる。
上記ケイ素化合物としては、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn-ブトキシシラン、テトラt-ブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラキスジメチルアミノシラン、テトライソシアナートシラン、テトラメチルジシラザン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、トリエトキシフルオロシラン、アリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ベンジルトリメチルシラン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、1,4-ビストリメチルシリル-1,3-ブタジイン、ジ-t-ブチルシラン、1,3-ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン、フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン、プロパルギルトリメチルシラン、テトラメチルシラン、トリメチルシリルアセチレン、1-(トリメチルシリル)-1-プロピン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ビニルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、Mシリケート51等を挙げることができる。
CVD無機物層は、炭素を含有するのが好ましい。その際、CVD無機物層の炭素含有量は0.5at.%以上、好ましくは1at.%以上、より好ましくは2at.%以上であるのがよい。
CVD無機物層が炭素を微量含有することで、応力緩和が効率よくなされ、バリアフィルム自体のカールを低減することもできる。その一方、ガスバリア性の観点から、CVD無機物層における炭素含有量は20at.%未満であることが好ましく、中でも10at.%以下であるのがより好ましく、その中でも5at.%以下であるのが最も好ましい。
炭素含有量を上記範囲とすることで、無機物層の表面エネルギーが大きくなり、無機物層同士の間の密着性が良好となるため、バリアフィルムの耐折曲げ性、耐剥離性が向上する。
なお、「at.%」とは、原子組成百分率(atomic%)を示す。
また、組成に関してはXPS分析などで確認することが可能である。
CVD無機物層の形成は、例えば特開2013-226829号公報記載の方法により実施することができる。
例えば化学蒸着(CVD)法により、ケイ素酸化物からなる層を形成する場合、そのための原料としては、ケイ素化合物であれば、常温常圧下で気体、液体、固体いずれの状態であっても使用することができる。気体の場合には、そのまま放電空間に導入できる。液体、固体の場合は、加熱、バブリング、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用するのが好ましい。また、溶媒希釈してから使用してもよい。該溶媒としては、メタノール、エタノール、n-ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒を使用することができる。
化学蒸着(CVD)法を実施する際、10Pa以下の減圧環境下において、本基材フィルム、特にアンカー層を設けた本基材フィルムを、100m/分以上の速度で搬送しながら化学蒸着(CVD)法を実施するのが好ましい。
化学的気相蒸着法(CVD)により薄膜を形成する際の圧力は、緻密な薄膜を形成するため減圧下で行うことが好ましく、成膜速度とバリア性の観点から、10Pa以下であるのが好ましく、中でも1×10-2Pa以上或いは10Pa以下、その中でも1×10-1Pa以上或いは1Pa以下がより好ましい。
CVD無機物層には、耐水性、耐久性向上のため、必要に応じて、電子線照射による架橋処理を施してもよい。
(本無機物層の層構成)
本無機物層は、単層構成であっても、2層以上の複層構成であってもよい。
例えば、2層以上の複層構成の一例として、そのうちの一層を無機物、例えば無機酸化物のみからなる無機物層とし、他の一層を、無機物例えば無機酸化物と有機物、或いはさらに、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含む無機・有機混合層とする例を挙げることができる。
無機物に有機物を混合して本無機物層を形成することにより、本無機物層を比較的柔軟な層とすることができるため、このような柔軟な層を設けることにより、ガスバリア性を高めることができる場合がある。すなわち、基材フィルムの粗大突起部が起点となって、無機物層表面に、ピンホールと呼ばれる微小な欠陥が生じたり、加熱蒸着時に原料が塊となって飛来し付着して、無機物層表面に微小な欠陥が生じたりすることがあり、この欠陥による空隙をガスが通過することによってガスバリア性が低下することがある。そこで、前述のような柔軟な層を、前記表面に重ねて積層することで、前記欠陥を埋めることができ、ガスバリア性を高めることができる場合がある。
なお、ここで言う「柔軟な層」とは、例えばフレキシブル用途など、屈曲性が必要な用途に対応できるように、無機物層の応力を緩和する層の意味を包含するものである。
前記のように、柔軟な層を形成するために、前記無機物に有機物を混合して層を形成すればよく、その際の有機物としては、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコールなどの有機物のほか、有機系フィラーを挙げることができる。
<本樹脂層>
本積層フィルムを構成する樹脂層(「本樹脂層」とも称する)は、樹脂を含む層であり、本無機物層の表面凹凸を吸収する役割を有する。本樹脂層は、以下に挙げる理由より、樹脂が架橋してなる架橋構造を有する層であり、該架橋構造を基本骨格とする層(「架橋樹脂層」とも称する)であるのが好ましい。
本樹脂層は、本無機物層に比べて柔軟であるから、本無機物層の表面凹凸を吸収することができ、それによってガスバリア性を向上させることができる。さらに、本無機物層間に架橋樹脂層が介在することにより、架橋樹脂層がクッションの役割を果たして積層フィルム全体としての可撓性を高めるため、屈曲した際にも、その屈曲部分のガスバリア性能をも維持することができる。また、本無機物層に起因する黄色化抑制或いは黄褐色化抑制を図ることもできる。
本樹脂層はさらに、必要に応じて、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含有する。すなわち、アルカリ土類金属元素又はアルカリ土類金属イオン又はアルカリ土類金属化合物、若しくはアルカリ金属元素又はアルカリ金属イオン又はアルカリ金属化合物を含有するものであってもよい。
本樹脂層が、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含有する場合、アルカリ土類金属イオンまたはアルカリ金属イオンを本無機物層に供給する役割を有する。すなわち、本樹脂層がアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含有していると、本樹脂層と接する本無機物層中にアルカリ土類金属元素又はそのイオン、若しくはアルカリ金属元素又はそのイオンが拡散移動するため、本無機物層にアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を供給することができる。
なお、前記アルカリ金属元素としては、ナトリウム及びカリウムの何れか又はこれら両方を例示することができる。但し、これらに限定するものではない。
前記アルカリ金属元素は、イオンの状態で存在してもよいし、アルカリ金属化合物の状態で存在してもよい。
当該アルカリ金属化合物としては、例えば水溶性アルカリ金属、例えば水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、水酸化カリウム及び塩化カリウムのうちから選択される少なくとも1種類以上を挙げることができる。
また、前記アルカリ土類金属元素としては、マグネシウム及びカルシウムのうちの何れか又はこれら両方を例示することができる。但し、これらに限定するものではない。
本無機酸化物中の前記アルカリ土類金属元素は、イオンの状態で存在してもよいし、アルカリ土類金属化合物の状態で存在してもよい。
当該アルカリ土類金属化合物としては、水溶性アルカリ土類金属化合物、例えば塩化マグネシウム及び水酸化カルシウムのうちから選択される少なくとも1種類以上を挙げることができる。
ガスバリア性向上の観点から、アルカリ金属化合物を含むのがより好ましい。
(本樹脂層の組成)
本樹脂層は、主成分樹脂としてのバインダー樹脂およびその他の成分、例えば硬化剤又は架橋開始剤などを含む架橋性樹脂組成物が架橋して硬化してなる架橋樹脂構造からなる層であるのが好ましい。
この際、「主成分樹脂」とは、本樹脂層を構成する樹脂の中で最も含有量(質量%)に多い樹脂の意味である。当該主成分樹脂の含有割合としては、本樹脂層を構成する樹脂100質量%に対して50質量%以上、中でも70質量%以上、中でも80質量%以上、中でも90質量%以上(100質量%を含む)を占める場合を想定することができる。
本樹脂層がアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含む場合は、主成分樹脂としてのバインダー樹脂として、水溶性又は水分散性のバインダー樹脂を含み、さらにアルカリ土類金属イオンを生じる水溶性アルカリ土類金属化合物またはアルカリ金属イオンを生じる水溶性アルカリ金属化合物と、必要に応じて溶媒と、必要に応じて硬化剤又は架橋開始剤とを含む架橋性樹脂組成物が架橋してなる架橋樹脂構造からなる層であるのが好ましい。
そして、このような架橋樹脂層を形成する際は、例えば、水溶性又は水分散性のバインダー樹脂と、水溶性アルカリ土類金属化合物または水溶性アルカリ金属化合物と、必要に応じて硬化剤又は架橋開始剤と、水性溶媒とを含む架橋性樹脂組成物を本無機物層又は本基材フィルムの表面上に塗布し、架橋させて架橋樹脂層を形成するのが好ましい。この際、架橋方法としては、熱架橋、光架橋のいずれを採用することもできる。
(バインダー樹脂)
前記の水溶性又は水分散性バインダー樹脂としては、例えば、次に説明する、水溶性エポキシ樹脂、水分散性ポリウレタン樹脂、水分散型ウレタンアクリレートなどを挙げることができる。
[水溶性エポキシ樹脂]
前記の水溶性エポキシ樹脂としては、末端にエポキシ基を有するプレポリマーである水溶性エポキシ樹脂を用いるのが好ましい。
中でも、プレポリマー鎖が芳香族系であるものが好ましい。具体例としては、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミン部位および/又はグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、レゾルシノールから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂などの樹脂を挙げることができる。これらの中でも、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂が特に好ましい。
[水分散性ポリウレタン樹脂]
前記の水分散性ポリウレタン樹脂としては、分子内にカルボキシル基を含まないポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させたポリウレタン化合物に界面活性を使用して水の中に強制乳化させて水分散性としたポリウレタン樹脂を挙げることができる。但し、これに限定するものではない。
[水分散型ウレタンアクリレート]
前記の水分散型ウレタンアクリレートは、ウレタンアクリレート原料と、乳化剤、例えばアニオン系および/又はノニオン系の反応性乳化剤と、油溶性重合開始剤とを混合して、乳化機、例えば、ホモミキサー、超音波分散機などで加熱処理をしながら、分散する要領にて乳化重合して得られる、水分散体のウレタンアクリレートを挙げることができる。但し、これに限定するものではない。
前記ウレタンアクリレート原料としては、1分子中にアクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有するラジカル重合性オリゴマーを用いることができる。
ウレタンアクリレートの市販品として、ビームセット505A-6(荒川化学社製)、Ebecryl270(ダイセル工業(株)製)、UA-160TM、UA-7100、(新中村化学工業(株))などが例示される。
前記乳化剤としては、乳化重合に使用できる乳化剤であれば特に限定されるわけではない。
前記アニオン系反応性乳化剤としては、市販品として、例えばアクアロンシリーズ:KH-05,KH-10、AR-10、AR-20(商品名:第一工業製薬製)、Antox-MS-60、Antox-MS-2N(日本乳化剤社製)、アデカリアソープシリーズ:SE-10N、SE―20N、SR-10(アデカ製)を挙げることができる。その中でも、スルホン酸塩からなるものが好ましい。
前記ノニオン系反応性乳化剤としては、市販品として、例えばアデカリアソープシリーズ:NE-10、NE-20、NE-30、ER-10、ER-20、ER-30、ER-40(アデカ製)、ラテムルシリーズ:PD-420、PD-430、PD-450(花王)などを挙げることができる。
前記油溶性重合開始剤としては、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-(2-メチルプロパンニトリル)、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルペンタンニトリル)、2,2’-アゾビス-(2-メチルブタンニトリル)、1,1’-アゾビス-(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス-(2-アミジノプロパン)ヒドロクロリド等のアゾ(アゾビスニトリル)タイプの開始剤、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過硫酸塩(例えば過硫酸アンモニウム)、過酸エステル(例えばt-ブチルペルオクテート、α-クミルペルオキシピバレート及びt-ブチルペルオクテート)等の過酸化物タイプの開始剤を例示することができる。
(水溶性アルカリ土類金属化合物または水溶性アルカリ金属化合物)
前記水溶性アルカリ金属化合物は、アルカリ金属イオン、例えばナトリウムイオン(Na)やカリウムイオン(K)を供給することができる化合物であればよい。具体的には、例えば、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化カリウムなどを挙げることができる。
前記水溶性アルカリ土類金属化合物は、アルカリ土類金属イオン、例えばマグネシウムイオン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)を供給することができる化合物であればよい。具体的には、例えば、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウムなどを挙げることができる。
前記水溶性アルカリ土類金属化合物または水溶性アルカリ金属化合物の添加量は、バインダー樹脂の全質量(100質量部)を基準として、0.0001質量部~5.0質量部であるのが好ましい。好ましくは0.001質量部~5.0質量部、その中でも0.01質量部~5.0質量部がよい。
(硬化剤又は架橋開始剤)
前記硬化剤又は架橋開始剤は、熱架橋及び光架橋のいずれの架橋方法を選択するか、さらにはバインダー樹脂として何を使用するかによって、適宜選択して使用するのが好ましい。
例えば、バインダー樹脂として水溶性エポキシ樹脂を用いる場合は、硬化剤として、アミン系化合物を用いるのが好ましく、中でも、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族アミンが好ましい。
架橋性樹脂組成物を光架橋させる場合は、光重合開始剤を配合するのが好ましい。
当該光重合開始剤としては、特に制限するものではなく、例えばケトン系光重合開始剤、アミン系光重合開始剤等を挙げることができる。
(溶媒)
前記水性溶媒としては、水又はアルコール溶媒を主溶媒として用いることができる。
アルコール溶媒の具体例として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどを挙げることができる。但し、これらに限定するものではない。
本発明の主旨を損なわない範囲において、必要に応じて、酢酸エチル、トルエンなどの有機溶媒を用いてもよい。
(その他成分)
本樹脂層は、上述の材料以外に、他の成分乃至材料を含有していてもよい。
該「他の成分乃至材料」としては、無機充填剤、酸素捕捉剤、カップリング剤、硬化促進剤などを挙げることができる。
上記無機充填剤としては、樹脂層のガスバリア性、耐衝撃性、耐熱性等の諸性能を向上させるために、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどの無機充填剤を含有していてもよい。また、トップコート層の透明性を考慮した場合には、無機充填剤が平板状であることが好ましい。
上記酸素捕捉剤としては、酸素捕捉機能を有する化合物であればよい。例えばヒンダードフェノール類、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等を挙げることができる。
上記カップリング剤は、本樹脂層と本無機物層との密着性向上あるいはガスバリア性向上の観点から、必要に応じて本樹脂層に含有させることができる。
カップリング剤としては、シランカップリング剤あるいはチタンカップリング剤などのカップリング剤を添加してもよい。
カップリング剤としては、市販品が使用できる。具体的には、チッソ(株)、東レ・ダウコーニング(株)、信越化学工業(株)等から入手可能な、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N、N’-ビス[3-トリメトキシシリル]プロピル]エチレンジアミン等のアミノ系シランカップリング剤、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート系シランカップリング剤、東レ・ダウコーニング(株)製のSH-6026、Z-6050などのアミノシラン系カップリング剤、信越化学工業(株)製のKP-390、KC-223などのアミノ基含有アルコキシシラン等を挙げることができる。
中でも、本樹脂層のバインダー樹脂組成物と反応する有機官能基を有するものが望ましい。
カップリング剤の添加量は、バインダー樹脂組成物の全質量を基準として0.01質量%~5.0質量%の範囲が好ましい。
上記硬化促進剤は、架橋性樹脂組成物を架橋させる際に、低温で架橋可能なように、N-エチルモルホリン、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸コバルト、塩化第一錫などの硬化促進触媒、ベンジルアルコールなどの有機溶剤、リン酸亜鉛、リン酸鉄、モリブデン酸カルシウム、酸化バナジウム、水分散シリカ、ヒュームドシリカなどの防錆添加剤、フタロシアニン系有機顔料、縮合多環系有機顔料などの有機顔料、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、カーボンブラックなどの無機顔料等の各成分を必要割合量添加することもできる。
(各成分の量)
架橋性樹脂組成物中の全固形成分(100質量部)に対するバインダー樹脂の割合は、20質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましく、一方、90質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがさらに好ましい。なお、バインダー樹脂を2種以上併用する場合、それらの合計量の割合が上記の範囲内であることが好ましい。なお、バインダー樹脂を2種以上併用する場合、それらの合計量の割合が上記の範囲内であることが好ましい。
架橋性樹脂組成物中の全固形成分(100質量部)に対する硬化剤又は架橋開始剤の割合は、5質量部以上であるのが好ましく、中でも10質量部以上、その中でも特に20質量部以上であるのがさらに好ましい。一方、上限は80質量部以下であるのが好ましく、70質量部以下であるのがさらに好ましく、その中でも60質量部以下であるのが特に好ましい。
架橋性樹脂組成物中の全固形成分(100質量部)に対するバインダー樹脂及び硬化剤又は架橋開始剤以外の固形成分の割合は0.01質量部以上10質量部以下であるのが好ましく、中でも0.1質量部以上或いは10質量部以下、その中でも1質量部以上或いは10質量部以下であるのがさらに好ましい。
(本樹脂層の形成方法)
本樹脂層の形成方法としては、前述した架橋性樹脂組成物を、本無機物層表面に塗布して架橋するのが好ましい。
この際、架橋性樹脂組成物の塗布方法としては、従来から公知のコーティング方法を採用することができる。例えば、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクタコーター、バーコーター、スプレイを用いたコーティング方法等のいずれの方法も採用可能である。これらの方法に限定するものではない。
架橋方法としては、熱架橋させる場合には加熱すればよいし、光架橋させる場合には紫外線などの光線を照射すればよい。また、耐水性及び耐久性を高めるために、必要に応じて、電子線照射など、活性エネルギー線照射による架橋を行うこともできる。
<本基材フィルム>
本積層フィルムを構成する本基材フィルム(後述する基材フィルム(1)(2)を包含する)は、透明性を有し、且つ、積層フィルムとして必要十分な剛性を備えたフィルムであれば、材質及び構成を限定するものではない。
本基材フィルムは、単層構成であっても、多層構成であってもよい。
本基材フィルムが多層構成の場合、2層又は3層構成であってもよいし、4層又はそれ以上の多層であってもよい。
本基材フィルムが単層構成であっても、多層構成であっても、各層の主成分樹脂がポリエステルであるのが好ましい。本発明では、各層の主成分樹脂がポリエステルであるフィルムを「ポリエステルフィルム」と称する。
この際、「主成分樹脂」とは、各層を構成する樹脂のうち最も含有割合の多い樹脂を意味する。当該主成分樹脂の含有割合としては、各層を構成する樹脂100質量%に対して50質量%以上、中でも70質量%以上、中でも80質量%以上、中でも90質量%以上(100質量%を含む)を占める場合を想定することができる。
本基材フィルムの各層は、ポリエステルを主成分樹脂として含有すれば、ポリエステル以外の樹脂或いは樹脂以外の成分を含有していてもよい。
上記ポリエステルは、ホモポリエステルであっても、共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。前記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などを挙げることができる。前記脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等を例示することができる。
他方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、セバシン酸などの1種又は2種以上を挙げることができ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の1種又は2種以上を挙げることができる。
本基材フィルムの主成分樹脂としてのポリエステルの具体例としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリアリレート類、ポリエーテルスルフォン、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエステル系液晶ポリマー、トリアセチルセルロース、セルロース誘導体、ポリプロピレン、ポリアミド類、ポリイミド、ポリシクロオレフィン類等を例示することができる。この中でも、PET、PEN等を主成分樹脂とするフィルムは取扱い性の点で特に好ましい。
本基材フィルムは、フィルム表面を粗面化して易滑性を付与する目的および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を含有してもよい。
当該粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではない。例えば、シリカ炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等を挙げることができる。これらは1種単独で用いても、これらのうちの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
上記粒子の形状は、特に限定されるわけではない。例えば球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれであってもよい。
また、上記粒子の硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
上記粒子の平均粒径は、5μm以下であるのが好ましく、中でも0.01μm以上或いは3μm以下、その中でも0.5μm以上或いは2.5μm以下であるのがさらに好ましい。当該粒子の平均粒径が5μm以下であれば、本基材フィルムの表面粗度が粗くなり過ぎることがないから、その点で本基材フィルムの表面にアンカー層乃至無機物層を形成する際の不具合が減らすことができる。
粒子含有量は、本基材フィルムの5質量%以下であるのが好ましく、中でも0.0003質量%以上或いは3質量%以下、その中でも0.01質量%以上或いは2質量%以下であるのがさらに好ましい。粒子含有量を前記範囲とすることで、フィルムの滑り性と透明性との両立が可能となるので好ましい。
本基材フィルムに粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができる。好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
本基材フィルムは、必要に応じて、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含有する。すなわち、アルカリ土類金属元素又はアルカリ土類金属イオン又はアルカリ土類金属化合物、若しくはアルカリ金属元素又はアルカリ金属イオン又はアルカリ金属化合物を含有するものであってもよい。
本基材フィルムが、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含有する場合、アルカリ土類金属元素またはアルカリ金属元素を本無機物層に供給する役割を有することができる。すなわち、本基材フィルムと本無機物層とが隣接している場合、本基材フィルムがアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含有していると、該アルカリ土類金属元素又はそのイオン、若しくはアルカリ金属元素又はそのイオンが本無機物層中に拡散移動するため、本無機物層にアルカリ土類金属元素またはアルカリ金属元素を供給することができる。
この際、アルカリ土類金属元素またはアルカリ金属元素については、本樹脂層において説明した内容と同様である。
また、本基材フィルムに、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含有させる手法としては、本基材フィルムの原料に、アルカリ土類金属イオンを生じるアルカリ土類金属化合物またはアルカリ金属イオンを生じるアルカリ金属化合物を混入させるようにすればよい。但し、この方法に限定するものではない。
本基材フィルムは、必要に応じて、従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料、紫外線吸収剤などを含有することもできる。
本基材フィルムの厚さは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではなく、9μm~100μmであるのが好ましく、中でも12μm以上或いは75μm以下、その中でも15μm以上或いは60μm以下であるのがさらに好ましい。
本基材フィルムは、例えば樹脂組成物を溶融製膜方法や溶液製膜方法によりフィルム形状にすることにより形成することができる。多層構造の場合は、共押出してもよい。
また、一軸延伸又は二軸延伸したものであってもよく、剛性の点から、二軸延伸フィルムであるのが好ましい。
<本アンカー層>
本積層フィルムを構成するアンカー層(「本アンカー層」とも称する)は、本基材フィルムと本無機物層又は本樹脂層との接着性を高めるための層であり、本基材フィルムと本無機物層又は本樹脂層との接着性を高めることができれば、その組成は任意である。
本アンカー層は、例えばアンカーコート剤から形成することができる。
当該アンカーコート剤としては、溶剤性又は水性のポリエステル、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート基含有樹脂、アルコキシル基含有樹脂、変性スチレン樹脂及び変性シリコーン樹脂等を挙げることができ、これらを単独或いは2種以上組み合わせて使用することができる。中でも、密着性及び耐熱水性の点から、ポリエステル、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート含有樹脂及びこれらの共重合体から選ばれる少なくとも1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが好ましく、その中でも、ポリエステル、ウレタン樹脂、アクリル樹脂の1種類以上と、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート基含有樹脂から選ばれる少なくとも1種を単独で又は2種以上と、を組み合わせて用いることが好ましい。
本アンカー層は、必要に応じて、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含有する。すなわち、アルカリ土類金属元素又はアルカリ土類金属イオン又はアルカリ土類金属化合物、若しくはアルカリ金属元素又はアルカリ金属イオン又はアルカリ金属化合物を含有するものであってもよい。
本アンカー層が、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含有する場合、アルカリ土類金属元素またはアルカリ金属元素を本無機物層に供給する役割を有することができる。すなわち、本アンカー層と本無機物層とが隣接している場合、本アンカー層がアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含有していると、該アルカリ土類金属元素又はそのイオン、若しくはアルカリ金属元素若しくはそのイオンが本無機物層中に拡散移動するため、本無機物層にアルカリ土類金属元素またはアルカリ金属元素を供給することができる。
この際、アルカリ土類金属元素またはアルカリ金属元素については、本樹脂層において説明した内容と同様である。
また、本アンカー層に、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含有させる手法としては、本アンカー層の原料に、アルカリ土類金属元素を供給するアルカリ土類金属化合物またはアルカリ金属元素を供給するアルカリ金属化合物を混入させるようにすればよい。但し、この方法に限定するものではない。
本アンカー層の厚さが5μm以下であれば、滑り性が良好であり、アンカー層自体の内部応力による本基材フィルムからの剥離もほとんどなく、また、0.005μm以上の厚さであれば、均一な厚さを保持できるので好ましい。
かかる観点から、本アンカー層の厚さは0.005~5μmであるのが好ましく、中でも0.01μm以上或いは1μm以下、その中でも0.02μm以上或いは0.5μm以下であるのがより好ましい。
<本積層フィルムの特性>
本積層フィルムは、温度40℃、相対湿度90%における水蒸気透過率(WvTR)を0.060g/m/day以下とすることができ、好ましくは0.050g/m/day以下、さらに好ましくは0.030g/m/day以下、さらに好ましくは0.020g/m/day以下、その中でも特に好ましくは0.010g/m/day以下とすることもできる。
なお、上記水蒸気透過率(WvTR)の測定方法は、後述する実施例で行った測定方法を採用すればよい。
本積層フィルムはさらに、表側の水蒸気透過率/裏側の水蒸気透過率の比率を0.5未満とすることができる。
従来使われていた積層フィルムには、測定面を表側とするか裏側とするかによって、水蒸気透過率が2倍以上の差を有するものがあり、積層フィルムを貼り合せるフィルム面の方向が常に制限される場合があり、不便さがあった。
これに対し、上記のように、表側の水蒸気透過率/裏側の水蒸気透過率の比率が0.5未満であれば、本積層フィルムを貼り合せるフィルム面の方向を気にすることなく、つまり表裏の方向に関係なく、好適に使用することができる。
<本積層フィルムの製造方法>
本積層フィルムの製造方法の一例として、樹脂層がアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含む場合の製造方法の一例について説明する。
例えば、本基材フィルムの片面に必要に応じて本アンカー層を形成し、該本アンカー層の表面に、前述のようにして本無機物層を形成した後、該本無機物層の表面に、水溶性又は水分散性のバインダー樹脂、水溶性アルカリ土類金属化合物または水溶性アルカリ金属化合物、および、硬化剤又は架橋開始剤を含む架橋性樹脂組成物を塗布及び架橋させて本樹脂層を形成し、当該本樹脂層の表面に前述のようにして本無機物層を形成し、その後必要に応じて本樹脂層の形成と本無機物層の形成を繰り返すようにすればよい。
また、本基材フィルムの片面に必要に応じて本アンカー層を形成し、該本アンカー層の表面に、水溶性又は水分散性のバインダー樹脂、水溶性アルカリ土類金属化合物または水溶性アルカリ金属化合物、および、硬化剤又は架橋開始剤を含む架橋性樹脂組成物を塗布及び架橋させて本樹脂層を形成し、当該本樹脂層の表面に前述のようにして本無機物層を形成し、その後本樹脂層の形成と本無機物層の形成を繰り返すようにすればよい。
但し、これらの方法に限定するものではない。
このようにして本樹脂層を形成すれば、本樹脂層にアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を存在させることができる。そして、本樹脂層中のアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素は、隣接する本無機物層内に拡散浸透して、本無機物層内にアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を存在させることができる。
本アンカー層の形成は、基材フィルムの片面に、上述したアンカーコート剤を塗布し、必要に応じて乾燥させて形成することができる。
本無機物層の形成は、上述したように、例えば物理的気相蒸着(PVD)法、プラズマアシスト蒸着法、化学蒸着(CVD)法、或いは、無機粒子を有機ポリマーに分散させて塗布する方法などにより、形成することができる。
次に、本積層フィルムの製造方法の他の一例として、無機物層がアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含む場合の製造方法の一例について説明する。
例えば、本基材フィルムの片面に必要に応じて本アンカー層を形成し、該本アンカー層の表面に、水溶性アルカリ土類金属化合物または水溶性アルカリ金属化合物を含む水溶液を塗布し乾燥させて本無機物層を形成した後、該本無機物層の表面に、水溶性又は水分散性のバインダー樹脂、および、硬化剤又は架橋開始剤を含む架橋性樹脂組成物を塗布及び架橋させて本樹脂層を形成し、当該本樹脂層の表面に前述のようにして本無機物層を形成し、その後必要に応じて本樹脂層の形成と本無機物層の形成を繰り返すようにすればよい。
また、本基材フィルムの片面に必要に応じて本アンカー層を形成し、該本アンカー層の表面に、水溶性又は水分散性のバインダー樹脂、および、硬化剤又は架橋開始剤を含む架橋性樹脂組成物を塗布及び架橋させて本樹脂層を形成し、当該本樹脂層の表面に、水溶性アルカリ土類金属化合物または水溶性アルカリ金属化合物を含む水溶液を塗布し乾燥させて本無機物層を形成し、その後、本樹脂層の形成と本無機物層の形成を繰り返すようにすればよい。
但し、この方法に限定するものではない。
この際、本無機物層の表面に塗布する水溶液に配合する水溶性アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属イオン、例えばナトリウムイオン(Na)やカリウムイオン(K)を供給することができる化合物であればよい。具体的には、例えば、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化カリウムなどを挙げることができる。
他方、本無機物層の表面に塗布する水溶液に配合する水溶性アルカリ土類金属化合物としては、アルカリ土類金属イオン、例えばマグネシウムイオンやカルシウムイオンを供給することができる化合物であればよい。具体的には、例えば、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウムなどを挙げることができる。
水溶性アルカリ土類金属化合物または水溶性アルカリ金属化合物の添加量は、水溶液全質量(100質量部)を基準として、0.01質量部~5.0質量部とするのが好ましい。
水溶性アルカリ土類金属化合物または水溶性アルカリ金属化合物を含む水溶液を塗布及び乾燥させた後は、前述した本樹脂層と同様に樹脂層を形成すればよい。すなわち、水溶性アルカリ土類金属化合物または水溶性アルカリ金属化合物を含む水溶液を塗布及び乾燥させた後の表面に、バインダー樹脂および硬化剤又は架橋開始剤を含む架橋性樹脂組成物を塗布及び架橋させた樹脂層を形成すればよい。そしてこの際、当該架橋性樹脂組成物は、前記水溶性アルカリ土類金属化合物または水溶性アルカリ金属化合物を含んでいても、含んでいなくてもよい。
<<本フィルム積層体>>
次に、本積層フィルムを用いた実施形態の一例として、本積層フィルムを用いたフィルム積層体(「本フィルム積層体」とも称する。)について説明する。
本フィルム積層体の一例として、本積層フィルムすなわち基材フィルム(1)の少なくとも片面側に本無機物層及び本樹脂層が順次積層してなる構成を備えた積層フィルムの本樹脂層表面に、接着剤層を介して、基材フィルム(2)が貼り合わされてなる構成を備えたフィルム積層体を挙げることができる。
なお、基材フィルム(1)(2)は本基材フィルムに包含されるものである。
また、本フィルム積層体の他例として、本積層フィルムの本樹脂層表面に、接着剤層を介して積層フィルム(1)が貼り合わされた構成を備えたれたフィルム積層体を形成することができる。
この際、積層フィルム(1)の一例として、基材フィルム(2)の片面側に樹脂層を備えた積層フィルムを挙げることができる。
また、積層フィルム(1)の他例として、基材フィルム(2)の片面側に無機物層及び架橋樹種層がこの順に積層してなる構成を備えた積層フィルムを挙げることができる。
また、積層フィルム(1)のさらなる他例として、基材フィルム(2)の片面側にアンカー層、無機物層及び架橋樹種層がこの順に積層してなる構成を備えた積層フィルムを挙げることができる。
前記積層フィルム(1)の基材フィルム(2)、アンカー層、無機物層及び架橋樹種層はいずれも、本積層フィルムの基材フィルム(1)、アンカー層、無機物層及び架橋樹種層と同様であるのが好ましい。
また、本フィルム積層体の接着剤層は、公知の接着剤組成物を用いて形成することができる。接着性とバリア性との両立の観点からは、バインダー樹脂および硬化剤又は架橋開始剤を含む接着剤組成物を用いるのが好ましく、当該バインダー樹脂として、例えば水溶性エポキシ樹脂、水分散性ポリウレタン樹脂、水分散型ウレタンアクリレートオリゴマーなどを用いるのが好ましい。
<本フィルム積層体の厚さ>
本フィルム積層体の全体厚さを調整することで、光透過性を確保しつつシワの発生などを抑制することができる。かかる観点から、本フィルム積層体の全体厚さは40μm以上であるのが好ましく、中でも50μm以上或いは500μm以下、その中でも50μm以上或いは250μm以下、特に50μm以上或いは125μm以下が好ましい。
<本フィルム積層体の特性>
本フォルム積層体は、温度40℃、相対湿度90%における水蒸気透過率(WvTR)を0.060g/m/day以下とすることができ、好ましくは0.040g/m/day以下、その中でも特に好ましくは0.020g/m/day以下とすることもできる。
なお、上記水蒸気透過率(WvTR)の測定方法は、後述する実施例で行った測定方法を採用すればよい。
<<本積層フィルムおよび本フィルム積層体の用途>>
本積層フィルムおよび本フィルム積層体は、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする用途、例えば各種ガスの遮断を必要とする包装材料、例えば、食品や工業用品及び医薬品等の変質防止用包装材料として広く利用することができる。また、包装用途以外にも、液晶表示素子、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネル、EL用基板、カラーフィルターなど、各種部材に好適である。
<<語句の説明>>
本発明においては、「フィルム」とも称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」とも称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また、画像表示パネル、保護パネル等のように「パネル」と表現する場合、板体、シート及びフィルムを包含するものである。
本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
(1)物理的気相蒸着法(PVD)により形成した無機物層の膜厚
無機物層の膜厚の測定は、蛍光X線を用いて行った。この方法は、原子にX線を照射すると、その原子特有の蛍光X線を放射する現象を利用した方法で、放射される蛍光X線強度を測定することにより原子の数(量)を知ることができる。具体的には、フィルム上に既知の2種の厚みの薄膜を形成し、それぞれについて放射される特定の蛍光X線強度を測定し、この情報より検量線を作成した。そして、測定試料について同様に蛍光X線強度を測定し、前記検量線からその膜厚を測定した。任意5箇所の測定値の平均値を膜厚とした。
(2)樹脂層の層厚
樹脂層の層厚みの計測は、断面SEM観察法により実施した。具体的には、実施例及び比較例の積層フィルム(サンプル)を、ミクロトームで厚さ方向に切削して断面を切り出し、フィルム膜厚方向断面の走査型電子顕微鏡写真(断面SEM像、日立ハイテク製走査型電子顕微鏡SU3500により撮影)から直接層厚みを計測した。任意5箇所の計測値の平均値を層厚とした。
(3)水蒸気透過率(WvTR)
実施例及び比較例の積層フィルム(サンプル)の水蒸気バリア性は、JIS Z0222:1959「防湿包装容器の透湿度試験方法」、JIS Z0208:1976「防湿包装材量の透湿度試験方法(カップ法)」の諸条件に準じ、次の手法で評価した。
厚さ60μmの無軸延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(東洋紡(株)製「P1146」)の表面に、ウレタン系接着剤〔東洋モートン(株)製AD900とCAT-RT85を、D900:CAT-RT85=10:1.5(質量比)の割合で配合したもの〕を塗布し、次いで乾燥し、厚さ約3μmの接着剤層を形成した。
この接着剤層上に、実施例及び比較例の積層フィルム(サンプル)の基材側と逆側の層が接着剤層と隣接するようにラミネートし、水蒸気バリア性評価用の試料フィルムを得た。
透湿面積10.0cm×10.0cm角の(下記欠点箇所を含んでいない)各試料フィルムを2枚用い、吸湿剤として無水塩化カルシウム約20gを入れ四辺を封じた袋を作製し、その袋を温度40℃相対湿度90%の恒温恒湿装置に入れ、48時間以上間隔で質量増加がほぼ一定になる目安として14日間まで、質量測定(0.1mg単位)し、水蒸気透過率を下記式から算出した。
水蒸気透過率[g/m/day]=(m/s)/t
m;試験12日目から14日目における増加質量(g)
s;透湿面積(m
t;試験期間最後2回の秤量間隔の時間(h)/24(h)
(4)欠点箇所を含む領域の水蒸気透過率(WvTR)
実施例・比較例で得た積層フィルム(サンプル)において、顕著に大きな無機粒子(目安径2mm~3mm)が存在する部分を見つけ出し、その領域を含む部分を上記「(3)水蒸気透過率(WvTR)」と同様にして試料フィルムを得、さらに、その領域を含むように、該試料フィルムを10.0cm×10.0cm角にカットし、上記「(3)水蒸気透過率(WvTR)」と同様に水蒸気透過率を得た。
なお、実施例・比較例で得た積層フィルム(サンプル)のうち、顕著に大きな無機粒子が存在する部分が生じる確率は、積層フィルム(サンプル)全長1000mに1個以下の頻度であった。
(5)屈曲試験後の水蒸気透過率(WvTR)
実施例・比較例で得た積層フィルム(サンプル)を20.3cm×27.9cmの大きさに切断し、23℃で50%RH雰囲気下に24時間以上放置してコンディショニングし、ゲルボフレックステスター(理学工業社製「No.901型」(MIL-B-131Cの規格に準拠))を使用し、次のように屈曲試験処理した。そしてその後、前記「(3)水蒸気透過率(WvTR)」と同様にして水蒸気透過率を測定した。
ゲルボフレックステスターによる屈曲処理は、上記の長方形テストフィルムを長さ20.3cmの円筒状にし、当該巻架した円筒状フィルムの一端を上記のテスターの円盤状固定ヘッドの外周に、他端を上記のテスター円盤状可動ヘッドの外周にそれぞれ固定する。上記可動ヘッドを、上記の固定ヘッドの方向に、平行に対向した両ヘッド(固定ヘッドと可動ヘッドとは17.8cm隔てて対向している)の軸に沿って8.9cm接近させる間に440゜回転させた。続いて、回転させることなしに6.4cm直進させ、その後、これらの動作を逆に行わせ、上記可動ヘッドを最初の位置に戻すまでの行程を1サイクルとし、計10サイクルの屈曲処理を行った。
(6)剥離試験
実施例及び比較例で得た積層フィルム(サンプル)を用い、前記水蒸気透過率測定と同様にして無軸延伸ポリプロピレン(CPP)フィルムとドライラミネートした積層フィルムを調製した。次に、この積層フィルムを、40℃×3日間のエージングした後、引張試験機〔(株)オリエンテック製、STA-1150〕にて前記積層フィルムと無延伸ポリプロピレンフィルムのラミネート強度を測定した。測定条件は、ラミネートフィルム15mm幅のものを使用し、前記積層フィルム面から剥離して、T型剥離、剥離速度20mm/分で密着強度の測定を実施した。
密着強度は、200gf/15mm幅以上を「〇」と評価し、100gf/15mm幅以上200gf/15mm幅未満を「△」と評価し、100gf/15mm幅未満を「×」と評価した。
<実施例1>
基材フィルムとしての二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムF1(三菱ケミカル(株)製「ダイアホイル T600Eタイプ」、厚さ23μm、「ポリエステルフィルムF1」とも称する)上に、下記のように調製したアンカー層組成物を塗布量(乾燥後)が0.025g/mになるように塗布し、乾燥させてアンカー層を形成した。
(アンカーコート剤組成物の調製)
イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業(株)製「コロネートL」)と飽和ポリエステル((株)東洋紡績製「バイロン300」数平均分子量23,000)とを1:1質量比で配合し、アンカーコート剤を調製した。
(第1の無機物層形成)
次に、真空蒸着装置を使用して、SiO(純度99.9%以上)を加熱方式で蒸発させ、酸素を導入し、酸素分圧を3.5×10-3Paとし、5×10-3Paの真空下にて、前記アンカー層上に、厚さ40nmの酸化ケイ素からなるPVD無機物層、すなわち第1の無機物層を形成した。
この際、前記PVD無機物層を形成する過程において、プラズマアシスト法を併用することにより、無機物層内に酸素ガスを導入した。
(第1の樹脂層の形成)
次に、前記第1の無機物層表面に、下記のように調製した架橋性樹脂組成物1をバーコート方式で塗布し、次いで、80℃の熱風で60秒間乾燥させ、厚さ(乾燥後)3g/mの第1の樹脂層を形成した。
(架橋性樹脂組成物1の調製)
バインダー樹脂:変性ポリウレタン樹脂
(東洋モートン(株)製 LIS-7390) 15質量部
硬化剤:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂
(東洋モートン(株)製 LCR-1901) 1質量部
添加剤:塩化ナトリウム(水溶性アルカリ金属化合物)
溶媒:(3質量%濃度の塩化ナトリウム水溶液):イソプロピルアルコール
=3:97(質量%) 47.7質量部
上記配合により、13質量%の濃度に調整した。
(第2の無機物層形成)
次に、前記第1の樹脂層表面に、第1の無機物層と同様にして、第2の無機物層を形成し、基材フィルム/アンカー層/第1の無機物層/第1の樹脂層/第2の無機物層からなる厚さ23.5μmの積層フィルム(サンプル)を得た。
なお、表中の「「無機物層÷(無機物層+樹脂層)」における「無機物層」は第1の無機物層の厚みと第2の無機物層の厚みの合計値であり、「樹脂層」は第1の樹脂層の厚みと第2の樹脂層の厚みの合計値である。
<実施例2>
実施例1において、第2の無機物層表面に、第1の樹脂層と同様にして、第2の樹脂層を形成した以外、実施例1と同様に、基材フィルム/アンカー層/第1の無機物層/第1の樹脂層/第2の無機物層/第2の樹脂層からなる厚さ23.8μmの積層フィルム(サンプル)を得た。
<実施例3>
実施例2において、架橋性樹脂組成物1の代わりに、下記架橋性樹脂組成物2を用いて第1の樹脂層及び第2の樹脂層を形成した以外、実施例2と同様に、基材フィルム/アンカー層/第1の無機物層/第1の樹脂層/第2の無機物層/第2の樹脂層からなる厚さ23.8μmの積層フィルム(サンプル)を得た。
(架橋性樹脂組成物2の調製)
バインダー樹脂:変性ポリウレタン樹脂
(東洋モートン(株)製 LIS-7390) 15質量部
硬化剤:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂
(東洋モートン(株)製 LCR-1901) 1質量部
添加剤:塩化マグネシウム(水溶性アルカリ土類金属化合物)
溶媒:(3質量%濃度の塩化ナトリウム水溶液):イソプロピルアルコール
=3:97(質量%) 47.7質量部
上記配合により、13質量%の濃度に調整した。
<実施例4>
実施例2において、第1の樹脂層及び第2の樹脂層の厚さを、表1に示すように変更した以外、実施例2と同様に、基材フィルム/アンカー層/第1の無機物層/第1の樹脂層/第2の無機物層/第2の樹脂層からなる厚さ29.2μmの積層フィルム(サンプル)を得た。
<比較例1>
実施例1において、第2の無機物層を設けなかった以外、実施例1と同様に、基材フィルム/アンカー層/第1の無機物層/第1の樹脂層からなる厚さ23.4μmの積層フィルム(サンプル)を得た。
<比較例2>
実施例2において、第1の樹脂層を設けなかった以外、実施例2と同様に、基材フィルム/アンカー層/第1の無機物層/第2の無機物層/第2の樹脂層からなる厚さ23.5μmの積層フィルム(サンプル)を得た。
<比較例3>
実施例2において、第1の樹脂層及び第2の樹脂層に塩化ナトリウム(水溶性アルカリ金属化合物)を含有させなかった、すなわち、前記架橋性樹脂組成物1において、塩化ナトリウム(水溶性アルカリ金属化合物)を含まない架橋性樹脂組成物3を用いて第1の樹脂層及び第2の樹脂層を形成した以外、実施例2と同様に、基材フィルム/アンカー層/第1の無機物層/第1の樹脂層/第2の無機物層/第2の樹脂層からなる厚さ23.8μmの積層フィルム(サンプル)を得た。
<評価結果>
上記実施例および比較例で得られた、各積層フィルムの特性を下記表1に示す。
Figure 2023136728000001
<考察>
上記実施例・比較例の結果、並びに、これまで本発明者が行ってきた試験結果(例えば特開2020-163857号、特開2020-163858号の実施例などを含む)より、無機物層と樹脂層とが交互に積層し、少なくとも無機物層を2層以上有し、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含むことにより、少なくとも、無機物層と樹脂層とがそれぞれ一層である場合(比較例1)に比べて、より高いガスバリア性を得ることができ、さらに、無機物層に大きな無機物粒子が存在する部分においてもガスバリア性能を維持することができ、さらには、屈曲した際にも、その屈曲部分のガスバリア性能をも維持することができることが分かった。
なお、上記実施例は、樹脂層がアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含む場合であるが、無機物層がアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含む場合も同様の効果を得ることができることは、特開2020-163858号の記載内容からも理解できる。
また、無機物層に隣接する樹脂層がアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含んでいれば、アルカリ土類金属元素又はそのイオン、若しくはアルカリ金属元素又はそのイオンが無機物層に侵入して、無機物層内の隙間、例えば無機物層を構成する無機物粒子間の隙間や、無機物結晶粒界、欠陥などにアルカリ土類金属元素またはアルカリ金属元素が侵入して存在することで、ガスバリア性を高めることができるというメカニズムからすると、無機物層に隣接する基材フィルム又はアンカー層がアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含んでいる場合も、無機物層に隣接する樹脂層がアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含んでいる場合と同様の効果が期待することができる。
本発明の積層フィルムおよびフィルム積層体は、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、例えば、食品や工業用品及び医薬品等の変質防止用の包装材料として広く利用することができる。また、包装用途以外にも、液晶表示素子、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネル、EL用基板、カラーフィルターなど、各種部材にも好適に利用することができる。

Claims (22)

  1. 基材フィルム(1)の少なくとも片面側に、無機物層と樹脂層とが交互に積層し、該無機物層を少なくとも2層以上有する構成を備え、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含む積層フィルム。
  2. 温度40℃、相対湿度90%における水蒸気透過率(WvTR)が0.060g/m/day以下である、請求項1記載の積層フィルム。
  3. 基材フィルム(1)がポリエステルフィルムである、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
  4. 各樹脂層の厚さが0.05μm~35μmである、請求項1~3の何れか一項に記載の積層フィルム。
  5. 積層フィルムの厚さ方向に沿った断面を見たとき、積層フィルム全体の厚さに対する、無機物層の合計厚さの割合が0.01~1.0%の範囲である、請求項1~4の何れか一項に記載の積層フィルム。
  6. 積層フィルムの厚さ方向に沿った断面を見たとき、積層フィルム全体の厚さに対する、樹脂層の合計厚さの割合が0.1~50.0%の範囲である、請求項1~5の何れか一項に記載の積層フィルム。
  7. 積層フィルムの厚さ方向に沿った断面を見たとき、無機物層及び樹脂層の合計厚さに対する、無機物層の合計厚さの割合が0.1~50.0%の範囲である、請求項1~6の何れか一項に記載の積層フィルム。
  8. 前記無機物層、および/又は、前記樹脂層にアルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含む、請求項1~7の何れか一項に記載の積層フィルム。
  9. 前記樹脂層は、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素と、水溶性又は水分散性のバインダー樹脂とを含む架橋性樹脂組成物からなる架橋構造を有する層である、請求項1~8の何れか一項に記載の積層フィルム。
  10. 前記アルカリ金属元素がナトリウムおよび/又はカリウムであるか、又は、アルカリ土類金属元素がマグネシウムおよび/又はカルシウムである、請求項1~9の何れか一項に記載の積層フィルム。
  11. 前記アルカリ金属元素が水溶性アルカリ金属化合物由来の元素であるか、又は、前記アルカリ土類金属元素が水溶性アルカリ土類金属化合物由来の元素である、請求項1~10の何れか一項に記載の積層フィルム。
  12. 前記架橋性樹脂組成物は、バインダー樹脂100質量部に対して、水溶性アルカリ土類金属化合物または水溶性アルカリ金属化合物を0.0001質量部~5.0質量部含有する、請求項9に記載の積層フィルム。
  13. 前記水溶性アルカリ金属化合物が、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、水酸化カリウム及び塩化カリウムのうちから選択される少なくとも1種類以上であるか、又は、前記水性アルカリ土類金属化合物が塩化マグネシウム及び水酸化カルシウムのうちから選択される少なくとも1種類以上である、請求項11又は12に記載の積層フィルム。
  14. 基材フィルム(1)の少なくとも片面側に、無機物層と樹脂層とが交互に積層し、該無機物層を少なくとも2層以上有する構成を備え、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含む積層フィルムの製造方法において、
    水溶性又は水分散性のバインダー樹脂と、水溶性アルカリ土類金属化合物または水溶性アルカリ金属化合物とを含む架橋性樹脂組成物を無機物層の表面に塗布し架橋させて樹脂層を形成することを特徴とする積層フィルムの製造方法。
  15. 前記架橋性樹脂組成物は、水および/又はアルコールを主溶媒として含有する、請求項14に記載の積層フィルムの製造方法。
  16. 前記架橋性樹脂組成物は、バインダー樹脂100質量部に対して、水溶性アルカリ土類金属化合物または水溶性アルカリ金属化合物を0.0001質量部~5.0質量部含有する、請求項14又は15に記載の積層フィルムの製造方法。
  17. 基材フィルム(1)の少なくとも片面側に、無機物層と樹脂層とが交互に積層し、該無機物層を少なくとも2層以上有する構成を備え、アルカリ土類金属元素又はアルカリ金属元素を含む積層フィルムの製造方法において、
    無機物層の表面に、水溶性アルカリ土類金属化合物または水溶性アルカリ金属化合物を含む水溶液を塗布及び乾燥させた後、その表面に、バインダー樹脂を含む架橋性樹脂組成物を塗布し、架橋させた樹脂層を形成することを特徴とする積層フィルムの製造方法。
  18. プラズマアシスト蒸着法により、前記無機物層に酸素ガスを導入する、請求項14~17の何れか一項に記載の積層フィルムの製造方法。
  19. 請求項1~13の何れか一項に記載の積層フィルムの樹脂層表面に、接着剤層を介して、基材フィルム(2)が貼り合わされてなる構成を備えたフィルム積層体。
  20. 請求項1~13の何れか一項に記載の積層フィルムの樹脂層表面に、接着剤層を介して、基材フィルム(2)及び樹脂層を備えた積層フィルムの当該樹脂層が貼り合わされてなる構成を備えたフィルム積層体。
  21. 基材フィルム(2)及び樹脂層を備えた前記積層フィルムは、基材フィルム(2)、無機物層及び架橋樹種層がこの順に積層してなる構成を備えたものである、請求項20に記載のフィルム積層体。
  22. 基材フィルム(2)がポリエステルフィルムである、請求項19~21の何れか一項に記載のフィルム積層体。
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